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レジストリデータを承認申請等に利用する場合の信頼性担保のための留意点(案)

2020年12月24日

1.本留意点の目的

本留意点は、申請者が、レジストリのデータ(以下、「レジストリデータ」という。)を、医薬品、医療機器及び再生医療等製品の承認申請や再審査/中間評価/使用成績評価申請、再評価申請、条件及び期限付承認後の申請に提出する資料(以下、「承認申請資料等」という。)のうち臨床成績に関する資料(評価資料)として利用する場合の信頼性担保のための留意点を示すものである。本留意点におけるレジストリは、新たに構築されるものだけではなく、これまでに構築され、データが集積されたものも含む。レジストリデータを活用することの意義及びその際の基本的考え方については、「承認申請等におけるレジストリの活用に関する基本的考え方について(仮)」(以下、「活用の基本的考え方について」という。)を参照されたい。

2.信頼性担保の考え方

レジストリは、特定の疾患、医薬品、医療機器、再生医療等製品等の曝露若しくは使用、又は特定の状態(例えば年齢、妊婦、特定の患者の特徴)により定義される患者集団に関する研究を行う目的で構築されたものである。それぞれのデータはレジストリ本来の目的に応じて収集されるため、データの信頼性を確保するためにとられている考え方や方法は一様ではない。また、レジストリデータを承認申請資料等で二次利用する場合、利用目的(「活用の基本的考え方」を参照)によって、データに求められる信頼性の水準は異なりうる。したがって本留意点で示す事項の全てについて、一律に担保を求めるものではなく、利用目的に応じ、個別に必要な事項を検討する必要がある。そのため、レジストリを承認申請等に利用する場合、申請者は、承認申請資料等におけるデータの信頼性を担保するために必要な事項等について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、「PMDA」という。)に相談することが推奨される。

3.レジストリデータを承認申請に利用する場合の信頼性担保の考え方

以下に、レジストリデータを利用して承認申請を行うにあたり、申請者自身が遵守すべき事項及び申請者がレジストリの信頼性を担保するにあたりレジストリ保有者における対応について留意すべき事項を示す。なお、再審査/使用成績評価等における製造販売後臨床試験についても参考とされたい。

(1)レジストリを利用する申請者における遵守事項

1)レジストリ保有者のデータの品質管理状況の確認

申請者は、レジストリデータの利用を検討するにあたり、当該データの品質を確認し、利用目的を十分果たしうるものであるか判断することが必要である。判断にあたっては、後述の「(2)承認申請資料に利用するレジストリにおける留意点」を参考にされたい。

前向きに収集されたレジストリデータの場合、申請者は、レジストリ保有者から提供されたデータについて、品質管理記録を確認すること等により、レジストリ保有者がレジストリの品質を管理していることを確認すること。また、後向きに収集されたレジストリデータやこれまでデータマネジメントを行っていなかったレジストリデータを承認申請に利用する場合は、そのデータの信頼性の確認方法を慎重に検討する必要があることから、PMDAに相談することが推奨される。

2)レジストリ保有者との契約

レジストリ保有者からデータセット、解析結果等を授受する場合、申請者は、レジストリ保有者と適切に契約を締結すること。その際、レジストリ保有者に業務手順、業務記録等の資料の提供を依頼するなどし、利用したレジストリデータの信頼性の担保方法について説明ができるようにすること。

3)統計解析

レジストリ保有者から受領したデータセットを用いて申請者が統計解析を行う場合、統計解析計画書等に定めるところにより、あらかじめ規定された手順及び計画に従って統計解析を実施すること。なお、レジストリ保有者が統計解析を行う場合も、同様にあらかじめ規定された手順及び計画に従って統計解析を実施すること。

4)承認申請資料の作成

申請者は、正確性及び網羅性に留意して、あらかじめ規定された手順に従って承認申請資料を作成すること。

5)記録の保存

レジストリデータを用いて承認申請資料を作成する場合、申請者は根拠資料をあらかじめ規定された手順に従って保存すること。また、レジストリ保有者における根拠資料の保管状況等について確認しておくこと。

 (2)承認申請資料に利用するレジストリにおける留意点

1)組織体制

レジストリ保有者において信頼性のあるデータが維持されるためには、個々のデータの適切な取扱いに加え、レジストリの継続的な維持・管理、レジストリ運営における透明性確保が重要である。

①運営・管理体制の構築

レジストリ保有者が、個別データを適切に取り扱い、レジストリを継続して運営・管理をするために、必要な業務、・手順が規定され、適切な管理・運営体制が構築されていること。

②透明性確保に関する方針

レジストリデータの収集、解析及びそれらの結果に基づく意思決定に及ぼす影響の観点から、レジストリ保有者により、レジストリの運営・管理に関わる透明性の確保のために必要な事項(利益相反、レジストリの運営主体等の構成、レジストリへの資金提供、レジストリの目的、データ等の開示)に関する方針が規定され、公表されていること。

 ③レジストリデータの閲覧に関する方針

レジストリには患者の健康状態や治療等に関わる機微情報が含まれているため、レジストリ保有者により、レジストリデータを利用する者(規制当局がデータを閲覧する場合も含む)のデータの閲覧方法、閲覧範囲及び閲覧できる権限について規定が設けられていること。また、必要に応じて下記の事項についても規定されていること。

  • レジストリデータを閲覧する際の申請方法
  • レジストリ保有者による閲覧申請内容の適切性を判断する基準

2)コンピュータシステム

レジストリにおけるデータ収集方法は様々であり、近年では各情報源とネットワークを繋ぎ、コンピュータシステムを利用して効率的に収集する場合もある。

申請者は、レジストリ保有者がコンピュータシステムを用いてレジストリデータを収集する場合、レジストリ保有者による①コンピュータシステムの品質管理、 ②患者の健康状態や治療等に関わる機微情報に対するセキュリティ保持、③データのバックアップ・リカバリーの3点の実施状況及びその内容を確認すること。

①コンピュータシステムの品質管理

コンピュータシステムを品質管理する方法は、個々のレジストリの目的等によって変わり得る。レジストリ保有者により、コンピュータシステムの構成に応じて下記の点について適切かつ効率的に行われていること。

  • コンピュータシステムの導入又は更新時における、リスク評価に基づくコンピュータシステムバリデーションの実施
  • 使用するコンピュータシステムの稼働状況の確認
  • コンピュータシステムの仕様及び運用方法による、電磁的記録の真正性・見読性・保存性の確立

なお、承認申請資料の根拠資料を電磁的記録として取り扱う際の留意事項である「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について」(平成 17 年4月1日付け薬食発第 0401022 号厚生労働省医薬食品局長通知)の別添(以下「ER/ES指針」という。)も参考にされたい。

②コンピュータシステムのセキュリティ

レジストリ保有者により、使用するコンピュータシステムのセキュリティ全般が規定され、手順に従って実施されていること。特に、下記の事項が規定されていること。

  • コンピュータシステムを使用するユーザに対するレジストリで取り扱うデータの内容に応じたアクセス権限の範囲
  • コンピュータシステムを利用する者に対するコンピュータシステム全体、セキュリティの要件、レジストリ固有の取扱いに関する教育訓練
  • ネットワークセキュリティ
③レジストリデータのバックアップ・リカバリー

レジストリ保有者により、レジストリデータのバックアップ方法、リカバリー方法が規定され、手順に従って実施されていること。

3)データの品質管理

レジストリデータの品質管理は、レジストリ保有者がレジストリ構築の目的に応じて行っているため、申請者は、レジストリ保有者が実施している品質管理の内容を確認し、自らの利用目的に適っているか判断すること。

以下に、レジストリデータの品質管理の内容を確認する際に留意する事項を例示する。なお、1.目的で記載したように、レジストリの利用目的、内容により、データに求められる信頼性のレベルは異なることから、レジストリデータを承認申請資料として利用することを決定した時点で、データの品質担保の方法について、レジストリ保有者と共にPMDAに相談することが推奨される。

① データ収集方法

レジストリにおけるデータの収集方法には、様々な方法が考えられる。データ収集手段にかかわらず、あらかじめ規定された調査項目を適切に収集する方法が規定され、手順に従って実施されていること。

確認事項の例示

  • データの記載・入力の手順
  • データの記載者・入力者の明確化
  • データの記載者・入力者への教育訓練
② 収集されたデータの取扱い

収集されたデータが、レジストリ保有者によりあらかじめ規定された手順に従って取扱われていること。また、情報源から収集されデータベースに入力されたデータが、あらかじめ規定した手順に従い固定された上で保管されていること。

確認事項の例示

  • レジストリには機微情報が含まれるため、閲覧及び利用者への提供におけるデータの匿名化に関する方法
  • データクリーニングの手順(データクリーニングを行った結果、発生した疑義事項を情報源に確認する手順も含む)
  • データの修正履歴を記録する手順
  • データをコード化する手順
  • データを固定する手順
③ モニタリング

レジストリ保有者によりモニタリングが実施されている場合、あらかじめ手順が規定され、手順に従って実施されていること。必要に応じ記録を確認することが望ましい。また、レジストリ保有者が直接又は情報源を介しレジストリにデータを提供している患者の同意を取得していること。

なお、実施手順については、「リスクに基づくモニタリングに関する基本的な考え方」(令和元年7月5日付け薬生薬審発 0705 第 7 号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)も参考となりえる。

④情報源の電子カルテ等からコンピュータシステムにデータを反映させる場合

情報源の電子カルテ等からコンピュータシステムにデータを反映させる仕組みがレジストリに構築されている場合、コンピュータシステムが設計とおりに稼働し、情報源のデータがコンピュータシステムに移行されていることを、レジストリ保有者が確認していること。また、情報源の電子カルテ等の更新、コンピュータシステムの入力項目の変更等がデータの反映に影響を及ぼしていないこと。

なお、レジストリ保有者による品質管理・品質保証については、「治験における品質マネジメントに関する基本的考え方について」(令和元年7月5日付け薬生薬審発 0705 第 5 号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)も参考になりえる。

4)レジストリの品質保証

レジストリの構築目的や得られるデータの品質に応じ、組織体制の維持やデータの品質管理を行っていることを、レジストリ保有者が確認していること。申請者は、必要に応じ、手順書や手順に従って実施された記録等を確認することが望ましい。

5)データの抽出及びデータセットの作成

レジストリデータを承認申請資料に利用する場合、レジストリ保有者がデータの抽出から統計解析まで行う場合もあれば、申請者がデータセットを受領し統計解析を行う場合もある。

いずれの場合においても、レジストリ保有者により、固定されたデータから利用するデータを適切に抽出する手順があらかじめ規定され、手順に従って実施されていること。

なお、申請者がデータセットを受領し統計解析を行う場合は、データの抽出にあたり、あらかじめレジストリ保有者に統計解析計画書等を提示し、データセットの作成範囲について合意しておくことが重要である。

4.個人情報の保護に関する配慮

個人情報の保護についてはデータの品質管理方法の如何に関わらず、配慮すべき事項である。レジストリデータが承認申請に用いられる場合、レジストリ保有者から申請者へレジストリデータが提供されることになるため、患者の個人情報の保護に関する配慮が必要である。

申請者は、レジストリ保有者により、個人情報の保護に関する法律、その他適用される規制及び法的要件に従って、同意に関する要件及び手順が規定されていることを確認すること。同意が取得される場合は、必要な情報を記載した説明文書が作成されていることを確認すること。

また、第三者(モニタリングを実施するモニター、監査を実施する監査担当者、規制当局等)が情報源に保管されている原資料等の閲覧をする可能性がある場合は、必要に応じて当該同意説明文書にその旨が記載されていることを確認すること。

5.レジストリデータを再審査又は使用成績評価等に利用する場合の信頼性担保の考え方

医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第171号)、医療機器の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(平成17年厚生労働省令第36号)又は再生医療等製品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(平成26年厚生労働省令第90号)に規定される製造販売後データベース調査にレジストリデータを利用する場合は、「医薬品の製造販売後データベース調査における信頼性担保に関する留意点について」(平成30年2月21日付け薬生薬審発0221第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)、「医療機器の製造販売後データベース調査における信頼性担保に関する留意点について」(平成30年12月19日付け薬生機審発1219第4号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)、「再生医療等製品の製造販売後データベース調査における信頼性担保に関する留意点について」(令和2年3月23日付け薬生機審発0323第6号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)及び「医薬品の製造販売後データベース調査における信頼性担保に関する留意点に係る質疑応答集(Q&A)について」(令和元年6月19日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課事務連絡)を参照すること。

6.その他

本留意点は、現時点で得られている知見を基にしたものであり、今後蓄積される事例、医療情報通信技術の進歩、国際的な議論の動向等を踏まえて適宜見直しを行うものとする。上記に含まれない個別の事象は、PMDA のレジストリ活用相談及びレジストリ信頼性調査相談等を活用することが推奨される。

7.用語の定義

本通知における各用語の定義については、以下のとおりとする。

レジストリ

特定の疾患、医薬品、再生医療等製品や医療機器等の曝露若しくは使用、又は特定の状態(例えば年齢、妊婦、特定の患者の特徴)により定義される集団に関する特定のアウトカムを評価するためにデータを収集する体系的なシステム。前向きにデータを取得する場合や後向きにデータを使用する場合を問わない。

レジストリ保有者

レジストリの管理・運営を中心となって行い、レジストリデータを保有する者

申請者

レジストリのデータを利用して、医薬品、医療機器又は再生医療等製品の承認申請等を行おうとする製造販売業者等

情報源

レジストリのデータをレジストリ保有者に対して提供している医療機関、検査機関等

原資料

診療録、検査ノート等の研究の事実経過の再現と評価に必要な記録

コンピュータシステム

レジストリのデータを電子的に収集し、管理するシステム全般

データクリーニング

データの削除・修正などによりレジストリを整備すること

コード化

データを効率的に処理するために、あらかじめ規定された数値等に置き換えること

データセット

承認申請資料等を作成するため、あらかじめ決められた抽出条件等に基づき、レジストリから抽出されたデータ

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