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世界で異なる医薬品営業の常識。MR・MSの役割を徹底解剖

2025年8月11日

皆さんは、医薬品の営業担当者と聞くと、どのような姿を思い浮かべるでしょうか。おそらく、病院や薬局を訪れ、自社の製品を熱心に紹介する姿を想像されるかもしれません。

しかし、その仕事内容は、国によって全く異なるということをご存じでしょうか。日本の医薬品卸で働く「MS(マーケティング・スペシャリスト)」という職種を理解するためには、一つの国の中だけを見ていては不十分です。

まず私たちにとって馴染み深い日本から見ていきましょう。日本では、「MS」と、製薬会社に所属する「MR(医薬情報担当者)」という二つの専門職が、まるで車の両輪のように協力し合って医療現場を支えています。MSは多くの製薬会社の製品を取り扱う「総合案内役」として、MRは自社製品の「専門家」として、それぞれが異なる役割を担いながら、連携しています。これは、日本の医療現場では当たり前の光景です。

しかし、一歩海外に目を向けると、この「当たり前」が当たり前でなくなることに気づかされます。アメリカでは、営業担当者は価格や契約条件を巡って、医療機関と交渉を繰り広げます。そこでは、日本のMSとMRが担う役割が一人の人物に統合され、さらに強力な交渉権限が付与されたような、全く異なる専門職が活躍しています。

そして、ヨーロッパでは、国ごとに制度が細かく分かれており、ある国では製薬会社が病院に直接医薬品を販売し、またある国では、新薬の価値を科学的・経済的に証明することが営業活動の核となるなど、まさに多様性を呈しています。

なぜ、これほどまでに役割が異なるのでしょうか。その答えは、それぞれの国が持つ医療制度という「見えざる設計者」の存在にあります。薬の価格を誰がどのように決めるのか(薬価制度)、そして、その薬がどのようにして患者さんの元へ届けられるのか(流通制度)。この二つの基本的な仕組みが、現場で働く人々の役割、求められるスキル、そして日々の業務内容まで、すべてを形作っているのです。

この記事では、まず日本のMSとMRがどのような制度の下で、どのような役割を担っているのかを深く掘り下げます。その上で、アメリカ、そしてヨーロッパの主要国へと視野を広げ、各国の制度とそこで活躍する専門家たちの姿を比較していきます。この旅を通して、私たちは、単に職種の違いを知るだけでなく、各国の医療に対する考え方や歴史的背景が、いかに現場の働き方にまで影響を及ぼしているのかを理解することができるでしょう。普段、私たちが病院や薬局で当たり前に薬を受け取れる、その裏側にある壮大な仕組みを一緒に見ていきましょう。

日本モデル―安定、サービス、そして協業の世界

国民皆保険と政府主導の薬価決定

日本の医薬品流通と、そこで働く専門家たちの役割を理解するための最初の鍵は、この国が築き上げてきた医療制度の根幹にあります。それは、1961年に実現した「国民皆保険制度」です 1。この制度は、「いつでも、どこでも、誰もが」安心して医療を受けられる社会を目指すという、戦後の日本が掲げた重要な社会政策の柱でした 1。この理念に基づき、すべての国民が公的な医療保険に加入し、収入に応じた保険料を負担することで、病気や怪我をした際には、少ない自己負担で質の高い医療サービスを受けられる体制が整えられました 4

この国民皆保険制度の公平性を担保するために、もう一つの重要な仕組みが導入されました。それが、医療用医薬品の価格、すなわち「薬価」を国(厚生労働省)が公的に決定する「薬価基準制度」です 5。一般的な商品のように、メーカーが自由に価格を設定し、市場の需要と供給によって価格が変動する自由市場とは異なり、日本の医療用医薬品の価格は、国が一元的に管理しています 7

国が薬価を決定する際には、主に二つの方式が用いられます。一つは「類似薬効比較方式」です。これは、新しく承認された薬と効能や効果が似ている既存の薬がすでにある場合に、その既存薬の価格を基準にして新薬の価格を算定する方法です 5。もう一つは「原価計算方式」で、これは他に比較対象となる薬がない、全く新しい画期的な薬の価格を決める際に用いられます。原材料費や製造経費、研究開発費などを積み上げ、そこに企業の営業利益などを加えて価格を算出します 7

こうして決められた薬価は、一度決まったら終わりではありません。日本の薬価制度のもう一つの大きな特徴は、原則として2年に一度、定期的に価格が見直される「薬価改定」が行われることです 6。この改定では、実際に医療機関や薬局が卸売業者から医薬品を購入している価格(市場実勢価格)が調査され、その結果に基づいて薬価が引き下げられるのが通例です。この仕組みは、医療費の増大を抑制する役割を果たしていますが、製薬会社にとっては、自社製品の価格が時間とともに下落していくという、絶え間ないプレッシャーにさらされることを意味します 10

このような制度的背景は、製薬企業の経営戦略に決定的な影響を与えます。価格が定期的に引き下げられるため、古い薬で利益を上げ続けることは困難です。その結果、企業は必然的に、より高い薬価が期待でき、かつ特許期間中は価格が維持されやすい「新薬」の開発へと経営資源を集中させることになります 11。特に、画期性や有用性が認められた新薬には「新薬創出・適応外薬解消等促進加算(PMP)」といった価格上の優遇措置が設けられており、これがイノベーションへの強力なインセンティブとなっています 10。つまり、日本の薬価制度は、その安定性と公平性の裏側で、製薬会社に対して常に新しい価値、すなわち革新的な医薬品を市場に投入し続けることを求める構造になっているのです。この構造こそが、後述するMRやMSの役割を方向づける、根本的な力となっています。

中心的な柱:「メガ卸」の役割

日本の医薬品流通システムを語る上で、製薬会社と医療機関の間をつなぐ「医薬品卸売業者(医薬品卸)」の存在は欠かすことができません。そして、現在の日本では、この医薬品卸業界が数社の巨大企業によって占められているという事実が、市場全体の構造を特徴づけています。度重なるM&Aや業界再編を経て、現在ではメディパルホールディングス、アルフレッサホールディングス、スズケン、東邦ホールディングスの4社が市場の大半を占める「メガ卸」として君臨しています 13。これらの企業の売上高はそれぞれ兆単位に達し、日本の産業全体の中でも有数の規模を誇ります 13

これらのメガ卸は、単に医薬品を倉庫に保管し、注文に応じて配送するだけの物流業者ではありません。彼らが担う機能は極めて多岐にわたります。第一に、最も基本的な「物流機能」です。全国に張り巡らされた高度な物流網を駆使し、数多くの製薬会社から多種多様な医薬品を仕入れ、全国約20万軒にのぼる病院、診療所、薬局へと正確かつ迅速に届けます 15

第二に、「販売機能」と「金融機能」です。メガ卸は製薬会社から医薬品を買い取り、自社の在庫として保有します。そして、医療機関に対して販売活動を行い、納品後の代金回収までを一手に引き受けます 15。これにより、製薬会社は多数の医療機関と個別に取引する手間や、代金未回収のリスクから解放されます。

そして第三に、日本の卸が持つ非常に重要な機能が「情報提供機能」です。卸の営業担当者であるMSは、特定の製薬会社に偏ることなく、複数のメーカーの製品に関する情報を医療機関に提供します。新薬の情報はもちろん、ジェネリック医薬品に関する情報、さらには医療制度の変更や関連法規の通達といった行政情報まで、幅広い情報を集約し、医療現場に伝達するハブとしての役割を果たしているのです 18

なぜ、日本ではこれほどまでに強力なメガ卸が中心的な役割を担うようになったのでしょうか。その背景には、前述した政府主導の安定的な薬価制度が深く関係しています。薬価が公的に定められ、価格変動のリスクが比較的小さい市場環境は、卸売業者が全国規模で大規模かつ効率的な物流・販売網を構築することを可能にしました。もし、アメリカのように価格が自由競争で激しく変動する市場であれば、これほど安定した全国一律の流通網を維持することは困難だったでしょう。

逆に、メガ卸の存在が、日本の安定した医薬品供給システムを支えているという側面もあります。彼らが持つ巨大な物流インフラと販売網があるからこそ、製薬会社は全国津々浦々の医療機関に自社製品を効率的に届けることができ、医療機関側も、数多くの製薬会社と個別に契約することなく、一つの窓口(卸)を通じて必要な医薬品を安定的に確保できるのです。このように、安定した薬価制度とメガ卸の存在は、互いに支え合い、日本の医薬品流通の根幹をなす、切っても切れない共生関係を築いています。この強力な中央集権的な流通構造は、ヨーロッパの一部で見られるようなメーカーから薬局への直接販売モデルなどが入り込む余地を少なくし、卸の担当者であるMSを、日本の医薬品流通における不可欠な存在へと押し上げているのです。

現場のサポーター:MSの役割

医薬品卸の中心的な役割を担うのが、MS、すなわちマーケティング・スペシャリストです。彼らは一般的に「営業担当者」と認識されていますが、その実態は、単に商品を売り込むセールスパーソンという言葉だけでは到底捉えきれない、極めて多面的な役割を担っています 18。日本のMSの仕事を最も的確に表現するならば、それは「現場密着型のサポーター」と言えるでしょう。

MSの価値は、彼らが何を「できない」か、という点から考えるとより鮮明になります。日本の薬価制度では、医薬品の公定価格は国が定めており、MSが医療機関と交渉する価格(市場実勢価格)の幅も限定的です 18。つまり、MSはアメリカの営業担当者のように、大幅な値引きを武器に販売を促進するという営業手法を取ることができません。価格交渉はMSの重要な業務の一部ではありますが 17、それが彼らの提供価値のすべてではないのです。

価格という強力な武器が制限されているからこそ、MSの役割は、価格以外の部分でいかに医療機関に貢献できるか、という方向へと進化しました。その中心にあるのが、徹底したサービスと問題解決です。MSは、特定の製薬会社に所属しているわけではないため、何千、何万という品目の中から、医療機関のニーズに最も合った製品を公平な立場で提案することができます 17。ある病院が特定の疾患の治療薬を探していれば、複数のメーカーの選択肢を提示し、それぞれの特徴を説明します。また、コスト削減を考えている薬局に対しては、品質が同等でより安価なジェネリック医薬品を提案することもあります 19

さらに、MSの仕事は医薬品の提案にとどまりません。彼らは医療現場の「何でも屋」であり、「困りごと」を解決する専門家でもあります。例えば、急な需要増で特定の薬の在庫が不足しそうになれば、自社の物流網を駆使して迅速に手配します。納品スケジュールの調整や、緊急時の医薬品供給など、安定供給を維持するためのロジスティクスの管理は、MSの最も重要な責務の一つです。時には、医師や薬剤師の開業支援や、医療機関の経営効率化のための医事システムの導入提案など、経営コンサルタントのような役割を担うことさえあります 17

考えてみてください。一つの病院や薬局は、日々、何十社もの製薬会社が製造する、何百、何千という種類の医薬品を必要とします。もしMSがいなければ、医療機関はこれらすべての製薬会社と個別に連絡を取り、発注し、納品スケジュールを管理し、代金を支払わなければなりません。これは膨大な管理コストと手間を要します。MSは、この複雑なプロセスをすべて一つの窓口に集約し、医療機関の管理負担を劇的に軽減しているのです。彼らは、医療機関と巨大な医薬品供給網とをつなぐ、いわば「人間API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」のような存在と言えるでしょう。

このように、日本のMSは、価格交渉という一点に特化するのではなく、物流の安定化、幅広い情報提供、そしてきめ細やかな問題解決という、総合的なサービスを提供することでその価値を発揮しています。彼らの存在が、医療現場の円滑な運営を支え、医師や薬剤師が本来の業務である患者の治療に専念できる環境を作り出しているのです。

情報のスペシャリスト:MRの役割

MSが医薬品流通の「現場」を支えるサポーターであるとすれば、製薬会社に所属するMR、すなわち医薬情報担当者は、医薬品に関する「情報」を専門的に扱うスペシャリストです。日本の医療制度において、MRの役割は法律や業界の自主規制によって厳格に定められており、その最大の特徴は、医薬品の販売活動や価格交渉に一切関与しないという点にあります 18。彼らはセールスマンではなく、「医薬情報担当者」という名の通り、情報の提供者なのです。

MRの主たる使命は、自社が開発・製造した医薬品が、医療現場で適正に、かつ効果的に使用されるよう、その品質、有効性、安全性に関する科学的根拠に基づいた情報を、医師や薬剤師などの医療従事者に正確に提供することです 24。彼らが医療従事者と面会する際に用いるのは、値引きの提案書ではなく、臨床試験のデータや学術論文、添付文書といった科学的な資料です 26。新薬がどのような患者に最も効果が期待できるのか、どのような副作用が報告されているのか、他の薬剤との併用で注意すべき点は何か、といった専門的な情報を深く、そして分かりやすく伝えることが、MRの腕の見せ所となります。

この役割は、日本の薬価制度と密接に結びついています。前述の通り、薬価は政府によって公的に定められているため、MRが価格について交渉する余地はそもそも存在しません。そのため、法律や業界の公正競争規約は、この現実を追認する形で、MRの活動を情報提供に特化させているのです。MRが医師の処方判断に影響を与えることができる唯一の手段は、提供する情報の質と、その情報に対する信頼性です。

したがって、MRに求められるスキルセットは、一般的な営業職とは大きく異なります。最も重要なのは、担当する疾患領域や自社製品に関する深い医学的・薬学的知識です 23。彼らは、医師や薬剤師といった高度な専門家と対等に議論できるだけの学術的な素養を身につけなければなりません。そして、その専門知識を基に、多忙な医療従事者との限られた時間の中で、的確かつ論理的に情報を伝達する高いコミュニケーション能力も不可欠です 25

また、MRの役割は一方的な情報提供に留まりません。彼らは医療現場で実際に自社の薬が使用された後の効果や副作用に関する情報を収集し、それを社内の開発部門や安全性管理部門にフィードバックするという重要な役割も担っています 24。この現場からの貴重な情報が、既存薬の改良や、未来の新薬開発へと繋がっていくのです。

このように、日本のMRは、価格という商業的な要素から切り離された、極めて専門性の高い職種として確立されています。彼らの仕事は、単に自社製品の採用を促すことではなく、長期的な信頼関係を構築し、科学的情報の提供を通じて医療の質の向上に貢献することにあります 28。この役割の純粋な専門性は、物流と販売を担うMSというパートナーが存在するからこそ可能になる、日本独自の分業体制の賜物と言えるでしょう。

「車の両輪」:MSとMRの連携

日本の医薬品流通システムを特徴づける最も興味深い側面の一つが、医薬品卸のMSと製薬会社のMRとの間に存在する、深く、そして協力的なパートナーシップです。この二つの異なる組織に属する専門家たちは、競合するのではなく、互いの専門性を尊重し、補完し合うことで、一つの大きな目標、すなわち「医薬品を安全かつ効率的に医療現場へ届ける」という目的を達成しています。この関係は、しばしば「車の両輪」と表現されますが、まさに的を射た言葉と言えるでしょう 21

この連携の仕組みは、それぞれの役割分担に基づいています。まず、情報の流れを見てみましょう。新薬が発売されると、その薬の専門家であるMRは、臨床データや安全性情報といった詳細な学術情報を、担当エリアのMSに対して提供します 18。MRは自社製品のプロフェッショナルですが、彼らが直接アプローチできる医療機関の数には限りがあります。一方、MSは担当エリア内のほぼすべての病院や薬局と日常的に接点を持っています。MRから専門的な情報提供を受けたMSは、その知識を活かして、幅広い顧客に対して新薬の紹介や情報提供を行うことができるのです 20

逆に、現場からのフィードバックの流れも非常に重要です。MSは日々の営業活動を通じて、医師や薬剤師から「この薬はこういう患者によく効いた」「こういう副作用が気になる」といった、生の声を収集します 18。これらの貴重な市場情報はMSからMRへと伝えられ、製薬会社のマーケティング戦略の修正や、さらなる安全性情報の収集へと繋がっていきます。時には、MSとMRが一緒に医療機関を訪問し、それぞれの専門性を活かして共同で情報提供や課題解決にあたることも珍しくありません 18

なぜ、このような緊密な連携が必要不可欠なのでしょうか。それは、日本の制度が「情報提供」と「物流・販売」という二つの機能を、MRとMSという異なる役割に明確に分離しているからです。製薬会社(MR)は、自社製品に関する深い専門知識を持っていますが、それを全国の隅々まで届けるための広範な物流・販売網を持っていません。一方、医薬品卸(MS)は、強力な物流・販売網を持っていますが、数万品目にも及ぶ全ての製品について、製薬会社レベルの深い専門知識を維持することは不可能です。

この、専門知識と広範な流通網との間に生じるギャップを埋めるのが、MRとMSの連携なのです。この連携は、単なる「協力した方が効率的だ」というレベルの話ではなく、システムが円滑に機能するための構造的な必要性から生まれています。MRがMSに情報を「売り込み」、MSがその情報を元に製品を「販売する」。この情報のバトンリレーこそが、専門性の高い医薬品を、一般の消費財とは異なる形で市場に浸透させていく、日本独自のメカニズムなのです。

この協業関係は、営業担当者が情報提供から価格交渉、契約までを一手に担うアメリカのSR(セールスレップ)や、各専門職がより独立して活動する傾向にあるヨーロッパのモデルとは一線を画す、日本市場の際立った特徴と言えるでしょう。

アメリカ―競争、交渉、そして仲介者

自由競争の市場

日本の安定と協調を重んじる世界から、太平洋を渡ってアメリカに目を向けると、私たちは全く異なる原理で動く医薬品市場に足を踏み入れることになります。そこは、政府による価格統制がほとんど存在せず、原則として自由な市場競争に委ねられた世界です。日本の国民皆保険制度や公定薬価制度のような、国が主導する統一的な仕組みはなく、民間の保険会社、製薬会社、卸売業者、そして医療機関が、それぞれの利益を追求しながら複雑に関わり合う、ダイナミックで競争的な環境が広がっています 32

この市場原理主義は、アメリカの医療制度全体の根底に流れる思想であり、医薬品の価格決定においても例外ではありません。その結果として現れる最も顕著な特徴が、医薬品価格の高さです。各種の調査によれば、アメリカにおけるブランド医薬品の価格は、他の先進国と比較して著しく高く、国によっては数倍に達することも珍しくありません 33。この価格差は、アメリカのシステムが、イノベーションを促進するためには高い価格設定も許容するという考え方に基づいている一方で、医療費の高騰という深刻な社会問題も生み出しています 36

しかし、注意しなければならないのは、アメリカの市場が「規制がない」わけではないということです。むしろ、政府による直接的な価格統制という「大きな規制」がないために、市場の力関係を調整するための、別の種類の複雑なルールと、そして何より強力な「民間の中間業者」が発達したのです。日本の市場では、価格という絶対的な基準を政府が設定してくれるため、プレイヤーはその枠内で安定的に活動できます。一方、アメリカではその基準が存在しないため、価格は交渉の産物となります。売り手である製薬会社と、買い手である医療機関や保険会社との間で、熾烈な価格交渉が繰り広げられるのです 37

この交渉の力学こそが、アメリカの医薬品市場を理解する上で最も重要なポイントです。巨大な製薬会社に対抗するため、買い手側もまた、その購買力を結集して交渉に臨む必要がありました。この必要性から、後述するPBM(薬剤給付管理者)やGPO(共同購入組織)といった、日本では見られないユニークで強力な組織が誕生したのです。彼らは、政府に代わって市場の価格形成に絶大な影響力を持つ、いわば民間の規制者とも言える存在です。

したがって、アメリカのシステムを単に「自由市場」と捉えるのは一面的な見方です。正しくは、政府によるトップダウンの規制の代わりに、強力な民間プレイヤー間の交渉と力関係によって秩序が形成される「交渉市場」と理解するべきでしょう。この根本的な思想の違いが、日本のMSやMRとは全く異なるスキルセットと役割を持つ、アメリカの営業担当者を生み出す土壌となっているのです。

パワーブローカー:PBMとGPO

アメリカの「交渉市場」を支配しているのは、二種類の強力な中間組織、PBM(Pharmacy Benefit Manager:薬剤給付管理者)とGPO(Group Purchasing Organization:共同購入組織)です。これらの組織は、日本の医薬品市場には存在しない、アメリカ特有のプレイヤーであり、彼らの役割を理解することなくして、アメリカの医薬品流通を語ることはできません。

まず、PBMについて見ていきましょう。PBMは、企業や公的機関が提供する医療保険プランの加入者に代わって、処方薬に関する給付管理を行う専門組織です 38。彼らの最大の権力は、「フォーミュラリ」と呼ばれる、保険でカバーされる医薬品の推奨リストを作成し、管理する点にあります 40。製薬会社にとって、自社の薬がこのフォーミュラリに掲載されるかどうかは、売上を左右する死活問題です。なぜなら、リストに掲載されなければ、患者は高い自己負担を強いられるか、あるいは全額自費での購入を余儀なくされ、医師も処方をためらうからです。

PBMは、このフォーミュラリへの掲載を交渉の切り札として、製薬会社から莫大な「リベート(割引)」を引き出します 37。数千万人規模の保険加入者を代表するPBMは、巨大な購買力を背景に、製薬会社に対して強力な価格交渉力を持ちます。つまり、PBMは単なる事務代行業者ではなく、どの薬が市場で成功するかを実質的に決定する、巨大なゲートキーパー(門番)なのです。近年では、大手PBMが大手保険会社や大手薬局チェーンと垂直統合を進めており、その市場支配力はますます強まる傾向にあります 42

次に、GPOです。GPOは、主に病院やクリニックといった医療機関が、医薬品や医療機器を共同で購入するために設立した組織です 43。個々の病院が単独でメーカーや卸と交渉するよりも、多数の病院の購買量を束ねて交渉した方が、より有利な価格や条件を引き出せる、という規模の経済の原理に基づいています 45。GPOは、メンバーである医療機関を代表して、製薬会社や卸売業者と価格交渉を行い、購買契約を締結します 46。病院で使われる医薬品の多くは、このGPOが定めた契約価格に基づいて購入されており、GPOもまた、病院市場における重要な価格決定者となっています。

これらのPBMやGPOの存在は、製薬会社の営業戦略を根本から変えました。日本のように、個々の医師に情報提供を行い、処方を促すだけでは不十分です。アメリカでは、まずPBMのフォーミュラリに自社製品を掲載させ、GPOの購買契約リストに加えてもらうという、組織対組織のハイレベルな交渉に勝利しなければ、市場への入り口に立つことすらできないのです。

この構造は、製薬会社にとっての「顧客」の定義を、単一の医師から、PBMやGPOといった巨大な組織へと拡張しました。その結果、営業活動は二層構造になります。本社レベルでは、コーポレート・アカウント・マネージャーのような専門職がPBMやGPOとの契約交渉を担当します。そして、現場レベルでは、後述するセールスレップ(SR)が、その契約の枠内で、個々の医師や病院に処方や採用を働きかけるのです。アメリカのSRの仕事は、常にこれらのパワーブローカーが設定したルールの上で行われる、ということを理解することが極めて重要です。

ディールメーカー:セールスレップ(SR)の役割

アメリカの医薬品市場で主役を演じる現場の専門家は、セールスレップ(Sales Representative)、略してSRと呼ばれます。日本のMR(Medical Representative)という呼称も通じますが、SRの方が一般的であり、その名称が示す通り、彼らの役割は明確に「セールス(販売)」に重点が置かれています 47。彼らは、日本のMSとMRの役割を一人でこなし、さらにそこに強力な「交渉」という要素を加えた、ハイブリッドな専門家、すなわち「ディールメーカー(取引をまとめる人)」です。

SRの第一の役割は、日本のMRと同様に、担当する医薬品に関する科学的・臨床的情報を医療従事者に提供することです。製品の有効性、安全性、競合品との違いなどを正確に伝え、医師が適切な処方判断を下せるようにサポートします 48。この点においては、高い専門知識が求められることに変わりはありません。

しかし、SRの仕事は情報提供だけでは終わりません。彼らの真骨頂は、そこから一歩踏み込んだ商業的な交渉にあります。SRは、病院や大規模クリニック、GPOといった顧客に対して、医薬品の価格、購入量に応じた割引、納入条件など、販売に関するあらゆる条件を直接交渉する権限を持っています。例えば、「この新薬を貴院の標準治療薬として採用していただけるなら、これだけの価格で提供します」といった、具体的な取引の提案を行うのです。これは、価格交渉が厳しく制限されている日本のMRには決してできない活動です。

このため、SRに求められるスキルセットは、日本の専門家とは大きく異なります。科学的知識はもちろんのこと、それ以上に、顧客のニーズを的確に引き出すヒアリング能力、自社製品の価値を魅力的に伝えるプレゼンテーション能力、そして何よりも、有利な条件を引き出すための交渉術やクロージングの技術といった、高度な営業スキルが不可欠です 50。彼らは、担当する地域(テリトリー)の売上目標を達成するために、どの医療機関に重点的にアプローチし、どのような提案を行うかという、地域全体の販売戦略を自ら立案し、実行する、いわば「テリトリーの経営者」なのです 52

さらに、SRは前述のPBMやGPOが作り出す複雑な市場環境の中で活動しなければなりません。担当する医師が処方したいと考えても、患者の保険(PBM)がその薬をカバーしていなければ意味がありません。病院が採用したくても、GPOの契約に含まれていなければ購入は困難です。したがって、SRは自社の薬がどの保険プランで優遇されているか、どのGPO契約に含まれているかを熟知し、その枠組みの中で最大限の成果を上げるための戦術を練る必要があります。

このように、アメリカのSRは、科学的知識を持つ情報提供者であると同時に、取引を成立させる交渉人であり、担当地域の戦略家でもあります。情報提供と販売・交渉が一体化したこの役割は、競争と交渉によって市場が動くアメリカの医療制度が必然的に生み出した、究極の商業的専門職と言えるでしょう。

報酬の方程式:コミッション主導のパフォーマンス

アメリカの医薬品市場の競争的な性質は、そこで働くセールスレップ(SR)たちの報酬体系に最も色濃く反映されています。彼らの報酬は、日本のMSやMRのように安定した給与が中心なのではなく、個人の販売実績に直接連動する「コミッション(歩合給)」やボーナスが大きな割合を占めるのが一般的です 53。この報酬体系こそが、アメリカのシステムを駆動させる強力なエンジンとなっています。

具体的には、SRの年収は、比較的安定した「ベースサラリー(基本給)」と、売上目標の達成度に応じて支払われる変動的な「インセンティブ(報奨金)」から構成されます 53。このインセンティブ部分が非常に大きく、トップクラスのSRともなれば、基本給をはるかに上回る額のコミッションを獲得し、極めて高額な年収を得ることも珍しくありません 54。ある調査によれば、製薬業界のSRの報酬のうち、3分の1以上がコミッションによるものであると報告されています 55

このコミッション主導の報酬体系は、単なる給与の支払い方法という以上の意味を持っています。それは、アメリカの医療制度が根底に持つ「競争原理」と「成果主義」という哲学の具現化です。システムがSRに求めるのは、安定したサービス提供や情報伝達だけではなく、何よりもまず「販売実績」という目に見える成果です。そして、その成果に対して、金銭的なインセンティブで直接的に報いることで、個々のSRの競争意欲とパフォーマンスを最大限に引き出そうとするのです。

この仕組みは、SRに対して、常に目標達成に向けた強いプレッシャーを与えます。しかし同時に、自らの努力と才覚次第で高い報酬を得られるという、強力なモチベーションにもなります。このハイリスク・ハイリターンな環境は、安定志向よりも、挑戦と成功を求める野心的な人材を引きつけやすいと言えるでしょう。

日本の制度と比較すると、その違いは明らかです。日本のMSやMRの評価は、個人の売上数字だけでなく、担当エリアの安定供給への貢献度や、医療従事者との信頼関係構築といった、定性的な要素も重視される傾向にあります。そのため、報酬も比較的安定した給与が中心となり、アメリカのような極端な成果主義はあまり見られません。

このように、報酬体系は、その国の医療システムが営業担当者にどのような行動を期待しているかを映し出す鏡です。アメリカのコミッション制度は、SRにアグレッシブな交渉とディールメーキングを促し、競争市場で勝利するための行動を強化する、システムの中核的なメカニズムなのです。それは単なる給与体系の違いではなく、根底にある価値観の違いそのものを示していると言えるでしょう。

ヨーロッパ―多様かつ規制された市場の集合体

多様な国家制度の連合

日本、アメリカと旅をしてきた私たちは、最後にヨーロッパ大陸へと向かいます。しかし、ここで一つ大きな注意点があります。それは、「ヨーロッパ」という単一の医薬品市場は存在しない、ということです。ヨーロッパは、国境を越えて人や物が自由に行き来するEU(欧州連合)という枠組みを持ちながらも、医療制度に関しては、それぞれの国が独自の歴史と価値観に基づいた、多様なシステムを維持しているのです。この複雑な二重構造が、ヨーロッパ市場の最大の特徴です。

まず、統一されている部分から見ていきましょう。ヨーロッパには、EMA(European Medicines Agency:欧州医薬品庁)という、医薬品の承認審査を一元的に行う規制当局が存在します 56。製薬会社が新薬を開発した場合、このEMAの中央審査手続きを経て承認を得れば、EU加盟国全体でその薬を販売する許可を得ることができます 57。これは、国ごとに個別の承認申請を行う必要がないため、製薬会社にとっては大きなメリットです。

しかし、問題はここからです。EMAの承認は、あくまで「販売する権利」を得たに過ぎません。その薬が、各国の公的医療保険でカバーされ、患者が実際に使えるようになるかどうか、そして、その薬にいくらの価格が付けられるのか(価格設定と償還)は、それぞれの国の政府や保険機関が個別に決定します 59。つまり、製薬会社は、EMAという大きな関門を一つ突破した後、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、スペインといった国々を一つひとつ回り、各国の「お財布」を管理する機関と、個別に交渉し、承認を得なければならないのです。

この構造は、製薬会社の営業・マーケティング戦略に、極めて高度なローカライゼーション(現地化)を要求します。日本やアメリカのように、全国一律の戦略を展開することは不可能です。ドイツで成功したアプローチが、フランスで通用するとは限りません。イギリスのNHS(国民保健サービス)を説得できたロジックが、スペインの地域政府には響かないかもしれません。

その結果、ヨーロッパで活躍する製薬会社の専門家は、国ごとに高度に専門化、細分化されています。ドイツの薬価制度「AMNOG」を熟知したキーアカウントマネージャー、フランスの価格決定委員会「CEPS」との交渉術に長けたマーケットアクセス・マネージャー、イギリスの費用対効果評価機関「NICE」に提出するエビデンスを構築する専門家など、それぞれの国の制度という「鍵穴」にぴったり合う、特殊な「鍵」を持った人材が必要とされるのです。

このように、ヨーロッパの医薬品市場は、EUという統一された枠組みと、多様な国家制度が織りなす、複雑なモザイク模様を呈しています。この章では、この多様性を理解するために、特徴的な制度を持ついくつかの国をケーススタディとして取り上げ、そこで求められる専門家の役割を探っていきます。

ケーススタディ・ドイツ:「付加的有用性」証明への挑戦

ヨーロッパの多様な市場を理解するための最初のケーススタディとして、大陸最大の経済大国であるドイツを見てみましょう。ドイツの医療制度は、国民皆保険を維持しつつ、医療費の抑制とイノベーションの促進という二つの命題を両立させるための、非常に精緻な仕組みを構築しています 60。その中核をなすのが、2011年に導入された「AMNOG(医薬品市場再編成法)」と呼ばれる法律に基づいた、新薬の価格決定プロセスです 61

ドイツでは、製薬会社は新薬を発売する際、最初の1年間は自由に価格を設定することができます 64。しかし、この自由な期間は長くは続きません。発売後、直ちに「早期有用性評価」という厳格な審査が開始されます。この審査では、連邦合同委員会(G-BA)という公的な評価機関が、その新薬が既存の標準的な治療法と比較して、どれだけの「付加的有用性(additional benefit)」をもたらすかを科学的に評価します 62。評価の尺度は、「顕著な付加的有用性あり」から「付加的有用性の証拠なし」、あるいは「既存薬より劣る」まで、段階的に設定されています 62

そして、この評価結果が、その後の価格交渉の行方を決定づけ_ます。G-BAによる評価が出た後、製薬会社は公的疾病金庫全国連合会(GKV-SV)という保険者の団体と、最終的な償還価格を巡る交渉に入ります 66。G-BAの評価が高ければ高いほど、製薬会社は交渉を有利に進めることができますが、逆に「付加的有用性なし」と判断されれば、価格は既存の安価な治療薬と同レベルまで引き下げられることになります 64

このような制度は、ドイツで活動する製薬会社の営業担当者の役割を根本的に変えました。彼らは、キーアカウントマネージャー(KAM)と呼ばれ、単なる製品のプロモーターではありません。彼らの主戦場は、医師への訪問営業ではなく、AMNOGプロセスという科学的・経済的な論争の場です 67。KAMとそのチームが持つべき最大の武器は、営業パンフレットではなく、「ベネフィット・ドシエ(有用性に関する資料集)」と呼ばれる、臨床試験データ、統計解析、費用対効果分析などを満載した、分厚く複雑な科学文書です 62

成功するためには、このドシエを基に、自社製品の価値をG-BAのような非常に批判的な専門家集団に対して、科学的かつ経済的に証明し、擁護する能力が求められます。したがって、ドイツのKAMには、医学・薬学の知識に加え、医療経済学や統計学に対する深い理解、そして論理的な交渉能力が不可欠です 66。彼らの仕事は、もはやマーケティングの領域を超え、科学的なディベートに近いものとなっています。AMNOGという制度自体が、伝統的な営業担当者を淘汰し、より科学的で分析的な能力を持つ新しいタイプの専門家を選別し、育成するフィルターとして機能しているのです。これは、商業的な交渉が中心のアメリカや、サービス提供が中心の日本とは全く異なる、ドイツならではの専門家の姿です。

ケーススタディ・フランス:国家との交渉術

ドイツの科学的評価システムとはまた異なる、興味深いモデルを持つのがフランスです。フランスの医薬品市場は、極めて中央集権的な性格を持っており、薬の価格は、製薬会社と一つの強力な政府機関との直接交渉によって決定されます 71。この国のシステムを理解する鍵は、「CEPS(Comité Économique des Produits de Santé:保健製品経済委員会)」という組織の存在です 72

新薬がフランスで保険償還の対象となるためには、まず高等保健機構(HAS)という機関によって、その薬の臨床的な価値(SMR)や既存薬に対する改善度(ASMR)が評価されます 71。この科学的な評価結果を踏まえた上で、製薬会社は価格決定の交渉のテーブルに着きます。その相手となるのが、CEPSです。CEPSは、保健省や経済・財務省などの代表者から構成される委員会であり、フランスの医療保険財政の番人として、薬の価格を厳しく査定します 72

この交渉は、まさに真剣勝負です。製薬会社側は、自社製品の臨床的価値や革新性を主張し、できるだけ高い価格での償還を目指します。一方、CEPS側は、国の医療費全体の予算を睨みながら、その薬の価格が妥当かどうか、費用対効果に見合うかを厳しく判断し、価格の引き下げを求めます 74。交渉が合意に至れば、その価格がフランスにおける公定価格となりますが、合意に至らない場合は、CEPSが一方的に価格を決定することもあります 72

このようなシステムは、製薬会社に特殊な専門家を求めることになります。それが、「マーケットアクセス・マネージャー」です 76。彼らの仕事は、フランス市場への参入障壁を取り除くことに特化しています。主な業務は、CEPSとの価格交渉に臨むための戦略を立案し、そのための経済的なエビデンスや資料(ドシエ)を準備し、そして実際に交渉の最前線に立つことです 75

彼らに求められるスキルは、現場の医師と関係を築くフィールドセールスの能力とは全く異なります。フランスの医療保険財政に関する深い知識、医療経済学の素養、そして何よりも、政府の官僚という手ごわい相手と渡り合うための高度な交渉術と戦略的思考が不可欠です 76。彼らの仕事は、企業の外交官や政府に対するロビイストのそれに近いと言えるでしょう。

フランスでは、このマーケットアクセス・マネージャーがCEPSとの交渉で勝ち取った価格が、その薬の国内における商業的なポテンシャルを決定づけます。現場で活動する営業担当者(MR)の役割は、その決定された価格の枠内で、医師に処方を促すことに限定されます。つまり、最も重要な「セールス」は、CEPSというたった一つの顧客に対して行われるのです。この、国との直接対決に特化したマーケットアクセスという役割の重要性は、フランスの中央集権的な価格決定システムが生み出した、際立った特徴です。

ケーススタディ・英国:NHSへの価値実証

ヨーロッパの旅の次なる目的地は、イギリスです。この国の医療は、NHS(National Health Service:国民保健サービス)という、税金を主な財源とする巨大な単一の公的組織によって提供されています 79。NHSは、国民に医療を無料で提供する一方で、その巨大な購買力を背景に、医薬品の価格と使用に対して強い影響力を持っています。イギリスのシステムを理解するためには、このNHSという唯一無二の存在を抜きにしては語れません。

イギリスで新薬が広く使われるようになるためには、NICE(National Institute for Health and Care Excellence:国立医療技術評価機構)という組織の評価を通過することが極めて重要です 80。NICEは、新しい医薬品や治療法が、既存の治療と比較してどれだけ費用対効果に優れているかを評価する専門機関です 81。NICEが「この薬は、その価格に見合うだけの価値がある」と推奨すれば、NHSは原則としてその薬を患者に提供する義務を負います。しかし、逆に「費用対効果が低い」と判断されれば、その薬がNHSで使われる道は事実上閉ざされてしまいます。

このNICEの評価プロセスは、イギリスで活動する製薬会社の営業・マーケティング活動の方向性を決定づけます。彼らの目標は、単に個々の医師に製品の臨床的な優位性を説明することだけではありません。それ以上に、自社の製品がNHSという「システム全体」にとって、いかに価値ある投資であるかを証明することが求められるのです。

ここで活躍するのが、イギリスのメディカル・セールス・レプリゼンタティブです。彼らの顧客は、目の前の医師であると同時に、その背後にいるNHSという巨大な組織です 82。したがって、彼らのセールストークは、製品の特性だけでなく、NHSが抱える課題、例えば予算の制約、患者の待ち時間、治療パスウェイの効率化といった、より大きな文脈に沿ったものでなければなりません。「この薬を使うことで、入院期間が短縮され、結果的にNHSのコスト削減に繋がります」といった、システムレベルでの価値提案が重要になるのです 83

これは、一種の「バリュー・ベースド・セリング(価値提案型営業)」ですが、その提案先が、予算に厳しく、効率性を常に追求する、単一の巨大な顧客(NHS)であるという点が特徴です。そのため、イギリスの営業担当者には、医療経済学の基本的な知識や、NHSの組織構造、運営方針に対する深い理解が求められます。

また、イギリスの薬価は、PPRS(医薬品価格規制スキーム)という、製薬業界と政府との間の自主的な協定によって、製薬会社の利益率に上限を設ける形でコントロールされています 84。この枠組みの中で、企業はある程度の価格設定の自由を持ちますが、最終的にその薬が広く使われるかどうかは、NICEの費用対効果評価と、NHSの予算という現実的な制約に大きく左右されます。

このように、イギリスの医薬品市場は、NHSという単一支払者(シングルペイヤー)の存在によって、システム全体への貢献度を証明することが求められる、独特の環境を形成しています。そこで働く専門家たちは、製品の価値を、患者一人ひとりの健康だけでなく、国民全体の医療システムの持続可能性という、大きな視点から語る能力を身につけなければならないのです。

多様な風景:地域の卸とダイレクトモデル

ドイツ、フランス、イギリスという大国の事例を見てきましたが、ヨーロッパの多様性はこれだけにとどまりません。大陸に広がる国々には、それぞれに異なる医薬品流通の形が存在し、それがまた、そこで働く人々の役割を多様なものにしています。この節では、その風景の豊かさをさらに理解するために、二つの異なるモデルに光を当ててみましょう。

一つは、南ヨーロッパのイタリアやスペインで見られる、地域に根差した流通プレイヤーの強い影響力です。これらの国々では、日本のメガ卸や、アメリカの三大卸のような全国規模の巨大企業が市場を完全に支配しているわけではなく、地域ごとの医薬品卸売業者や、薬剤師が共同で運営する協同組合が、流通において重要な役割を果たしています 85

例えばスペインでは、流通市場は多数の卸売業者で構成されており、その多くが薬剤師の協同組合です 85。イタリアでも、ロンバルディア州やカタルーニャ州(スペイン)といった特定の地域が製薬産業のハブとなっており、地域の経済や流通と密接に結びついています 87。また、イタリアの薬剤師会であるFederfarmaのような職能団体は、糖尿病のスクリーニングキャンペーンを主導するなど、単なる医薬品供給に留まらない公衆衛生上の役割も担っています 89

このような地域性の強い市場では、営業担当者の仕事もまた、ローカルな色彩を帯びてきます。全国一律の戦略だけでなく、各地域の有力な卸や協同組合、地域の医療事情やキーパーソンとの深い関係構築が、成功のための鍵となります。これは、より中央集権的な日本のシステムとも、組織的な交渉が中心のアメリカのシステムとも異なる、地域密着型のアプローチが求められる世界です。

もう一つの興味深い動きは、ヨーロッパの一部で導入が進んでいる「DTP(Direct-to-Pharmacy)」、すなわちメーカーから薬局への直接販売モデルです 59。これは、製薬会社が従来の卸売業者を介さずに、物流業者と契約して、自社の製品を直接薬局や病院に配送する仕組みです 59。このモデルは、特にイギリスでいくつかの大手製薬会社によって採用されています 91

メーカーがこのモデルを導入する狙いは、サプライチェーンに対するコントロールを強化し、流通コストを削減し、そして最終的には価格と利益率をより管理しやすくすることにあります 59。卸売業者を介さないことで、メーカーは自らが販売価格を決定し、どの顧客にどれだけ販売するかを直接把握することができます。しかし、これは同時に、これまで卸が担っていた在庫管理や代金回収のリスクを、メーカー自身が負うことを意味します。このモデルの導入は、メーカーと薬局との関係を根本的に変え、メーカーの営業担当者には、物流管理や需給予測といった、これまで以上に幅広い能力が求められるようになります。

このように、ヨーロッパでは、国や地域によって、また企業の戦略によって、流通の形は一つではありません。地域卸が力を持つ伝統的な市場と、メーカーが主導権を握ろうとする新しいモデルが混在しています。この多様性こそが、ヨーロッパ市場の特徴であると言えるでしょう。

なぜ制度が専門家を定義するのか

これまで、日本、アメリカ、そしてヨーロッパという三つの異なる医薬品市場を巡る旅をしてきました。私たちは、それぞれの土地で活躍する専門家たち、すなわち日本のMSとMR、アメリカのSR、そしてヨーロッパのKAMやマーケットアクセス・マネージャーの姿を見てきました。終わりに、各職種についてまとめてみましょう。

日本のMSは、安定した制度の下で、幅広い製品知識と物流の専門性を武器に、医療現場のあらゆる「困りごと」に応える「関係構築型のサポーター」です。彼の価値は、価格ではなく、きめ細やかなサービスと信頼によって測られます。そのパートナーであるMRは、価格交渉から完全に切り離され、ひたすら科学的情報の提供に徹する「学術的な情報提供者」として、その専門性を高めています。この二者の緊密な協業は、安定と調和を重んじる日本システムが生み出した、独特の芸術品とも言えるでしょう。

一方、アメリカのSRは、競争が支配する荒野を生き抜く「コミッション主導のディールメーカー」です。彼の世界では、価格、リベート、契約条件が最も強力な言語であり、PBMやGPOといった巨大なパワーブローカーが設定したゲームのルールの中で、いかにして自社のシェアを最大化するかが問われます。科学的知識と商業的交渉術を兼ね備え、個人の成果が直接報酬に結びつくこの役割は、競争とイノベーションを至上価値とするアメリカの理念を体現しています。

そして、ヨーロッパの専門家たちは、多様な国家制度が織りなすモザイク模様の中で、それぞれの国に最適化された「科学的・経済的な交渉人」です。ドイツのKAMは、AMNOGという厳格な評価システムを前に、データの力で「付加的有用性」を証明しなければなりません。フランスのマーケットアクセス・マネージャーは、CEPSという国家の代表を相手に、丁々発止の価格交渉を繰り広げます。イギリスの営業担当者は、NHSという巨大な単一の顧客に対して、費用対効果という観点からシステム全体への貢献を訴えかけます。彼らの仕事は、国が定める「価値」の基準を深く理解し、それに適応する知的な挑戦です。

これらの役割は、決して互換性のあるものではありません。日本のMSをそのままアメリカに連れて行っても、PBMとのリベート交渉はできないでしょう。アメリカのSRがドイツで同じように活動しようとしても、G-BAの科学的な評価の前では無力かもしれません。ヨーロッパの専門家が持つ国ごとの特殊な知識は、他の地域では直接役立たないかもしれません。

なぜなら、彼らの役割、スキル、日々の活動、そして成功の定義そのものが、それぞれの国が持つ医療制度という「見えざる設計者」によってデザインされているからです。その国の医療が、日本の「公平なアクセス」を最も重んじるのか、アメリカの「自由な競争とイノベーション」を追求するのか、あるいはヨーロッパの「財政的な持続可能性と費用対効果」を重視するのか。この根底にある社会的・経済的・哲学的な価値観が、薬価制度や流通制度という具体的な形を取り、最終的に現場で働く一人ひとりの専門家の姿を形作っているのです。

グローバルに事業を展開する製薬会社にとって、この事実は極めて重要な示唆を与えます。世界共通の「ベストな営業戦略」というものは存在しません。真のグローバル企業とは、画一的なモデルを世界に押し付けるのではなく、各市場に存在する「見えざる設計者」の意図を深く読み解き、その国の価値観に寄り添いながら、自社の製品がもたらす価値を柔軟に伝えていく能力を持つ企業なのでしょう。私たちが普段何気なく目にしている医薬品の営業担当者の姿は、実はその国の社会や文化そのものを映し出す、奥深い鏡なのです。

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  86. Non-Prescription Drug Distribution in Italy: The Role of Large-Scale Retailers - European Scientific Journal,  https://eujournal.org/index.php/esj/article/view/10203/9650
  87. The importance of the Life Sciences value chain in Lombardy | Assolombarda,  https://www.assolombarda.it/centro-studi/the-importance-of-the-life-sciences-value-chain-in-lombardy-2022
  88. Catalonia is the second region in the EU for Pharmaceutical employment,  https://catalonia.com/w/catalonia-is-the-second-region-in-the-eu-for-pharmaceutical-employment
  89. The role of community pharmacies in today's Europe,  https://www.ordemfarmaceuticos.pt/fotos/documentos/the_role_of_community_pharmacies_in_todays_europe_a_call_to_action_8596627295ab3c403b662c.pdf
  90. Federfarma to politics: to fully implement the service pharmacy - Agenzia Nova,  https://www.agenzianova.com/en/news/federfarma-alla-politica-dare-piena-attuazione-alla-farmacia-dei-servizi/
  91. Successfully Implementing a Direct to Pharmacy (DTP) Distribution Model - Pharma IQ,  https://www.pharma-iq.com/market-access/webinars/successfully-implementing-direct-pharmacy-dtp-distribution-model

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