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【テンプレート付】もう怖くない!臨床研究プロトコールの書き方ガイド

「この治療法、もしかしたらすごく良いかも!」

「普段の診療で感じてるこの疑問、研究でハッキリさせたいな…」

そんな素晴らしいアイデアが浮かんでも、多くの若手研究者や大学院生にとって最初の大きな壁になるのが、あの研究計画書(プロトコール)作りじゃないでしょうか。

何ページもある書類を前に、「何から手をつければいいの?」「これで本当に倫理審査の先生たちを納得させられるの…?」って、途方に暮れてしまいますよね。気持ちは、よーく分かります。

でも、安心してください!

プロトコールは、ただのお役所的な書類じゃありません。あなたの研究全体の設計図であり、成功へと導く最高の相棒なんです。しっかりしたプロトコールさえ作れれば、研究の質はグンと上がりますし、チームもスムーズに動く。そしてもちろん、論文への道もグッと近くなります。

この記事では、そんなプロトコールの書き方を、まるで隣にいる先輩に教わるような感覚で、一つひとつ丁寧に解説していきます。

  • なんでプロトコールって、そんなに大事なの?
  • 倫理審査で「おっ!」と思われるプロトコールの中身って?
  • 各項目で「何をどう書けばいいか」を、具体例たっぷりで解説!
  • コピペしてすぐ使える「魔法のテンプレート」も、もちろん用意しました。
  • みんながハマりがちな「落とし穴」と、その回避テクニック。

この記事を読み終わる頃には、プロトコール作成への不安が「よし、書いてみよう!」という自信に変わっているはず。さあ、あなたのその価値ある研究アイデアを、世界に通用する最高の計画書に仕上げていきましょう!

1. そもそもプロトコールって、なんでそんなに大事なの?

「プロトコールって、要は倫理審査を通すための書類でしょ?」と思っている方もいるかもしれません。半分正解ですが、半分は違います!プロトコールには、もっとたくさんの、とっても大事な役割があるんです。

まずは、あなた自身のため!【研究の羅針盤】

プロトコールを作る作業って、実は自分の頭の中を整理する最高の機会なんです。「研究の目的って、一言で言うと何だっけ?」「この検査、本当にこのタイミングで必要?」…そんなことを突き詰めて考えることで、アイデアの矛盾や「これ、無理じゃない?」って点に、研究が始まってしまう前に気づけるんです。完成したプロトコールは、研究中に迷ったときにいつでも立ち返れる、まさに「羅針盤」になります。

研究チームのみんなのため!【共通言語】

臨床研究はチームプレーですよね。先生、看護師さん、薬剤師さん、みんなが同じ方向を向いて進む必要があります。プロトコールは、そのための「共通言語」。「この患者さんは研究に入れていいんだっけ?」「次の検査っていつだっけ?」みたいな確認も、プロトコールを見れば一発で解決!「言った・言わない」のトラブルを防いで、チームを一つにしてくれるんです。

倫理審査の先生たちのため!【安心の証明書】

倫理審査委員会(IRBやRECと呼ばれます)の先生たちは、あなたの研究が「科学的にちゃんとしているか?」そして何より「患者さんの人権や安全が、しっかり守られているか?」を見ています。きちんと筋道の通ったプロトコールは、「僕(私)の研究は、科学的にも倫理的にも、ちゃんと考えて作られた信頼できる研究ですよ!」とアピールするための、最強の「証明書」になるんです。

未来の医療のため!【信頼のパスポート】

しっかりしたプロトコールに基づいて行われた研究は、その結果の信頼性が高まります。あなたの研究成果がいつか論文になり、新しい治療法のスタンダードになるかもしれない…。そう考えると、その大元となる設計図がいかに大事か、わかりますよね!

2. プロトコールの「骨格」を知ろう!

さて、いよいよ本題です!実際にプロトコールに何を書けばいいのか、一つずつ見ていきましょう。ここでは、国際的なスタンダードを参考に、プロトコールの「骨格」となる主要な構成要素を、分かりやすく解説していきますね。

0. 表紙 (Title Page)

ここは研究の「顔」です。パッと見て、誰が、何の、どのバージョンの計画書を書いたかわかるようにしましょう。

  • 研究課題名: 研究内容が伝わる、分かりやすい名前を!
  • バージョンと日付: 「Ver. 1.0」「2025年6月10日作成」みたいに。改訂したら必ず更新しましょう。
  • 研究責任者/研究分担者: あなたやチームのメンバーの名前と所属を。

1. 研究の背景と根拠 (Background and Rationale)

「なんで、この研究やるの?」に答える、最もアツいパートです。

  • これまでの話(既存の知見): 「今、この病気の治療は〇〇が主流です。でも、こんな問題点があって…」というように、現状を論文などを引用しながら説明します。
  • 足りないピース(Gap in Knowledge): 「だから、まだ誰もここについては調べていないんです!」という、研究で明らかにしたい「隙間」を提示します。
  • 僕/私の研究が、その隙間を埋めます!(Rationale): 「そこで、この研究で××を明らかにすれば、△△で困っている患者さんを助けられるはず!」という、あなたの研究の正当性を情熱的に語りましょう。

2. 研究の目的 (Objectives)

「この研究で、何を知りたいの?」を、ズバッと一言で宣言する部分です。

  • 一番知りたいこと (Primary Objective): 研究の「主役」です。一番重要な、たった一つの問いを書きましょう。「A薬はB薬より、1年後の生存率を改善させるか評価する」みたいに、具体的に書くのがコツです。
  • ついでに知りたいこと (Secondary Objectives): 「副作用はどうか?」「QOL(生活の質)は上がるか?」など、主役の問いに付随する、その他の疑問点を箇条書きにします。

3. 研究デザイン (Study Design)

研究目的を達成するための「作戦」を練る部分です。

  • 研究の種類: 「ランダム化比較試験(RCT)」なのか、「コホート研究」なのか。どの作戦(デザイン)を選ぶのかを書いて、「なぜなら、この作戦が一番目的に合っているからです!」と理由も添えましょう。
  • 具体的な介入内容: もし新しい治療法などを試すなら、そのやり方を、誰が読んでも寸分違わず同じことができるくらい、超・具体的に書きます。薬の量、タイミング、期間など、細かく決めましょう。

4. 研究対象 (Study Population)

「どんな患者さんを対象にするの?」を、明確に決めるパートです。

  • こんな人に参加してほしい! (選択基準): 「20歳以上で、〇〇という診断がついた方」のように、対象者の条件を具体的に書きます。
  • ごめんなさい、この方は対象外です (除外基準): 「重い腎臓の病気がある方」「妊娠中の方」など、安全のためや、データの解釈が難しくなるために、今回は参加を見送ってもらう人の条件を書きます。

5. 方法・手順 (Methods/Procedures)

一人の患者さんが参加してから、研究が終わるまでの「旅の流れ」を説明します。

  • 同意説明と登録: どうやって研究の説明をして、納得(同意)してもらって、研究に登録するのか。その手順を書きます。
  • 観察・検査のスケジュール: 「初日はこの検査、1ヶ月後はこの検査とアンケート…」というように、何をするのかをカレンダーみたいな表にすると、すごく分かりやすくなりますよ!
  • 中止するときのルール: もし副作用が強く出た場合や、ご本人が「やっぱりやめたい」と言った場合に、どうやって研究を中止するかのルールも決めておきます。

6. 評価項目 (Endpoints/Outcomes)

研究の目的が達成できたかどうかを測るための、「ものさし」を決めます。

  • 一番大事なものさし (Primary Endpoint): 「一番知りたいこと(Primary Objective)」を測るための、具体的な指標です。「登録してから亡くなるまでの期間」「治療開始から半年後の血糖値」など、客観的に測れるものにします。
  • その他のものさし (Secondary Endpoints): 「ついでに知りたいこと(Secondary Objectives)」を測るための指標です。「副作用が出た人の割合」「QOLアンケートの点数」などですね。

7. 統計解析 (Statistical Considerations)

ここ、ちょっと難しいですが、研究の信頼性を決める超重要パートです!

何人集めればいいの? (サンプルサイズ設計):

  • ここ、倫理審査の先生たちが一番厳しく見てるところかもしれません。「先行研究にならって、なんとなく100例で…」なんてのは、絶対にNGですよ!
  • 「これくらいの効果の差を、これくらいの確率で見つけたいから、計算すると〇〇人必要です!」というロジックをしっかり示す必要があります。
  • 最強のアドバイス: 正直、ここは専門家(生物統計家さん)に相談するのが一番の近道です!

どうやって分析するの? (解析計画):

  • 集めたデータを、どんな統計手法(t検定とか、カイ二乗検定とか)で分析するのか、あらかじめ計画を立てておきます。

8. 倫理的配慮 (Ethical Considerations)

「患者さんのことを、一番に考えています!」という姿勢を示す、とても大切なパート。

  • ルールは守ります宣言: 「ヘルシンキ宣言」とか、国の定める倫理指針とか、ちゃんとルールブックに則ってやります!と宣言します。
  • 個人情報は絶対守ります: 患者さんのデータが誰なのか分からなくする「匿名化」の方法や、データを保管する場所などを具体的に書いて、プライバシー保護が万全であることをアピールします。
  • メリットとデメリット: 研究に参加することで考えられるリスク(副作用など)と、期待されるメリット(医学への貢献など)を正直に書いて、リスクをできるだけ小さくする工夫を説明します。

3. 【コピペOK】研究プロトコール・テンプレート

お待たせしました!ここまで解説した内容をぜんぶ詰め込んだ、シンプルなテンプレートです。これをWordなんかにコピペして、[ ]の中をあなたの研究内容に書き換えていくだけで、プロトコールの骨組みがあっという間にできちゃいます!

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研究計画書

  1. 研究課題名
[ここに研究の正式名称をズバッと書く! 例:〇〇病の患者さんに対するA薬の本当の効果を見てみる研究]

 

  1. プロトコールバージョン・作成日

バージョン: [例:1.0]

作成日: [例:2025年6月10日]

 

  1. 研究責任者

氏名:

所属・職名:

連絡先 (Tel/E-mail):

 

  1. この研究をやろうと思ったワケ(背景)
[「今って、こういう状況ですよね。でも、ここがまだ分かってなくて困ってるんです。だから、この研究が必要なんです!」というストーリーを、論文とかを引用しつつアツく語るパート。]

 

  1. この研究のゴール(目的)

5-1. 一番のゴール (主要目的)

[この研究で、白黒ハッキリさせたい一番大事なことを1つだけ書く。]

5-2. その他のゴール (副次目的)

[一番のゴールに加えて、ついでに明らかにしたいことを箇条書きで。]

 

  1. 研究の作戦(デザイン)
[どんな研究デザイン(ランダム化比較試験とか)でやるかと、その作戦を選んだ理由を書く。]

 

  1. どんな人に参加してほしい?(研究対象)

7-1. ウェルカムな人 (選択基準)

[研究に参加してほしい人の条件を、箇条書きで分かりやすく。]

 

7-2. ごめんなさい、今回はダメな人 (除外基準)

[安全などの理由で、今回は参加を見送ってもらう人の条件を箇条書きで。]

 

 

  1. 具体的に何をするの?(研究方法)

8-1. 治療とか検査のやり方

[具体的にどんな治療や検査をするのか、誰が読んでも分かるように、めっちゃ詳しく書く。]

8-2. 同意とか登録のやり方

[どうやって研究の説明をして、納得してもらって、登録するかの流れを書く。]

8-3. スケジュール

[初日から終わりまで、いつ、何をするのかを表にすると最高に分かりやすい!]

 

  1. 結果を測る「ものさし」(評価項目)

9-1. 一番大事なものさし (主要評価項目)

[一番のゴールを測るための、具体的な「ものさし」を1つ決める。]

9-2. その他のものさし (副次評価項目)

[その他のゴールを測るための「ものさし」を箇条書きで。]

 

  1. データはどう料理する?(統計解析)

10-1. 何人必要?どう分析する?

[「これくらいの効果を見つけたいから、計算したら〇〇人必要です!」という、人数設定の根拠をしっかり書く。どうやって分析するかも宣言する。ここは統計の専門家に相談するのがオススメ!]

10-2. その他の分析

[その他の「ものさし」をどう分析するかの計画を書く。]

 

  1. 患者さんのことを一番に考えてます!(倫理的配慮)
[「ルールは守ります!プライバシーも守ります!リスクは最小限にします!」という、研究に参加してくれる方への誠意を、これでもかというくらい具体的に書く。]

 

  1. お金の話(研究資金)
[この研究のお金はどこから出ているのかを書く。もし会社から支援を受けているなら、その関係(利益相反)も正直に書く。]

 

  1. 参考にした本や論文(参考文献)
[本文で引用した文献をリストアップ。]

 

  1. 付録
[同意説明文書とか、アンケート用紙とかをくっつける場所。]

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4. みんながハマる「落とし穴」と成功のコツ

最後に、みんながやりがちな失敗と、それをひょいっと乗り越えるためのコツを、こっそりお教えしますね。

落とし穴1:目的がフワフワしている

「A薬の良さを見る」みたいなフワッとした目的。これ、やりがちですよね〜。

【コツ】 目的と「ものさし(評価項目)」は、いつもニコイチで考えましょう!「生存率を良くするか(目的)」→「そのものさしは、全生存期間(評価項目)」みたいに、セットで具体的に!

落とし穴2:参加人数が「なんとなく」

「まぁ、30人くらいかな…」これ、審査で一番つっこまれるやつです!

【コツ】 上でも書きましたが、こればっかりは統計の専門家を頼りましょう!その道のプロに相談するのが、結局一番の近道なんです。

落とし穴3:話のつじつまが合っていない

目的は「生存率」なのに、分析は「平均値の比較」になってる…みたいな矛盾、意外とやっちゃいます。

【コツ】 書き終わったら、一晩寝かせて、もう一度「目的」「ものさし」「人数」「分析方法」の4つがつながっているか、チェックしてみてください。

落とし穴4:計画が理想論すぎる

「こんなデータも、あんなデータも欲しい!」って気持ちは分かりますが、てんこ盛りにしすぎると、結局誰も集められなくて研究が止まっちゃいます。

【コツ】 「これ、本当に実行できるかな?」と、現場の目線で冷静に考えましょう。シンプルこそ、成功への鍵です。

成功への最大のコツは…?

それは、誰かに読んでもらうこと!

書き上がったら、指導医の先生や、仲間に「ちょっとこれ、読んでもらえませんか?」ってお願いしてみましょう。自分では完璧だと思っていても、他の人が読むと「ここ、意味がわからないよ」ってところが絶対見つかります。この一手間が、プロトコールの質を爆上げしますよ!

まとめ

どうでしたか?プロトコール作りって、正直言って大変な作業ですよね。でも、それはあなたの素晴らしい研究アイデアを、世の中に届けるための、とてもクリエイティブで大事な仕事なんです。

一つひとつの項目を、参加してくれる患者さんの顔を思い浮かべながら丁寧に埋めていけば、それはもうただの書類じゃなく、あなたの研究への情熱が詰まった最高の「作品」になります。

この記事のガイドとテンプレートが、あなたのその第一歩を後押しできたら、すごく嬉しいです。

さあ、もう怖くない!テンプレートを片手に、あなたの研究、今すぐ形にしちゃいましょう!

 

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