この記事では、データサイエンスをビジネスに活用したい人や統計学をこれから学びたい人を対象とした統計学の基礎を解説します。
記述統計ではデータの要約や可視化の考え方を、統計的推測では標本から母集団の性質を推測する考え方を説明します。
本記事を通して、ビジネスの意思決定に役立つ統計学の考え方や具体的な活用例の概観をつかんで頂けたら幸いです。
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ビジネスにおける記述統計と推測統計の目的の違い
ビジネスにおける記述統計と推測統計の目的の違いは、以下のように整理できます。
記述統計の目的
記述統計の主な目的与えられたデータセット全体を整理・要約し、最大値や最小値、中央値などの指標で整理したり、可視化したりすることで、データ全体の概要やパターンを把握し、意思決定につなげることです。
具体例として、商品の売上データから月ごとの売上平均や最大値を算出することが挙げられます。つまり、データそのものを描写することが記述統計の目的です。
推測統計の目的
推測統計の主な目的は、限られた標本(サンプル)データに基づいて、母集団の特性を把握したり、将来の予測を行ったりすることで、不確実性を伴う意思決定を支援することです。
例として、一部の顧客にアンケートを実施し、全顧客の満足度を推定することが挙げられます。推測統計は、限られた標本から母集団の特徴や変数の重みなどを推定するための方法です。
ビジネスの現場での使われ方は?
ビジネスの現場においては、記述統計は過去のデータを分析し、現状を理解するために用いられます。例えば、売上データの平均値や分布を把握することで、売れ筋商品や顧客の購買傾向を理解することができます。
一方、推測統計は、将来の意思決定のために、限られた情報から全体像を推測したり、効果を検証したりする際に用いられます。例えば、アンケート結果から全体の顧客満足度を推定したり、新しいマーケティング施策の効果を検証したりすることが可能です。
このように、記述統計と推測統計は、扱うデータの範囲と分析の目的において明確な違いがあります。記述統計は「今何が起こっているのか」を把握するのに対し、推測統計は「全体としてどうなのか」「今後どうなるのか」を予測し、より良い意思決定を支援することを目的としています。
記述統計の主な目的と具体例を深掘り!
記述統計の主な目的は、あらかじめ与えられた全てのデータを整理・要約し、最大値や最小値、中央値などの指標で整理したり、可視化したりすることで、データ全体の概要やパターンを把握し、意思決定につなげることです。記述統計はデータそのものを描写するための方法であるとも言えるでしょう。
ビジネスにおける記述統計の具体的な活用例として、以下のものが挙げられます。
- 商品の売上データから月ごとの売上平均や最大値を算出すること。これにより、売れ筋商品や売上の好調な時期などを把握できます。
- テストの平均点を計算すること。これは、クラス全体の学力レベルを一つの数値で示す記述統計の基本的な例です。
- 不動産の価格分析において、外れ値の影響を受けにくい中央値を使うこと。高額な物件が少数存在する場合、平均値は実態を反映しない可能性がありますが、中央値は市場の中心的な価格帯をより適切に示します。
- ビール飲料に関するアンケートデータを基に、各飲料の選択頻度を棒グラフで視覚化し、最頻値(最も選ばれた飲料)を確認すること。この最頻値に基づいて、主力商品のマーケティング予算を集中させたり、在庫管理を行ったり、売れ行きの低い商品を改善したりするなどの意思決定に繋げられます。
- 在庫のデータを分析する際に、分位数(四分位数など)を使用し、どの商品の在庫が過剰または不足しているかを判断すること。例えば、在庫数の上位25%はよく売れている商品、下位25%は過剰在庫の可能性があると判断し、次回発注数量を調整できます。
- 店舗ごとの売上をある階級ごとに分けて、各階級に属するデータ(度数)をカウントした度数分布表を作成すること。これにより、どの売上範囲の店舗が多いかなど、データ全体の分布や不均衡さを把握できます。
これらの例からわかるように、記述統計はビジネスにおける現状分析や基本的な傾向の把握に不可欠なツールであり、その結果が具体的なアクションや意思決定の材料となります。
推測統計の主な目的と具体例を深掘り!
ビジネスシーンにおける推測統計の主な目的は、標本(サンプル)データに基づいて、母集団の特性を把握したり、将来の予測を行ったりすることで、不確実性を伴う意思決定を支援することです。
推測統計は限られた標本から母集団の特徴や変数の重みなどを推定するための方法である、とも言えるかもしれませんね。
具体的な例として、以下のものが挙げられます。
- 一部の顧客にアンケートを実施し、全顧客の満足度を推定すること。これは、限られたサンプルから母集団全体の傾向を推測する、推測統計の典型的な活用事例です。
- 新商品の市場シェアを予測すること。過去のデータや市場調査などの標本情報をもとに、将来の市場全体における商品の占有率を推測することは、ビジネスにおける重要な推測統計の応用です。
このように、推測統計は、手元にある一部のデータから、より大きな集団全体の性質を推測し、将来の不確実な状況下での意思決定をサポートすることを目指しています。
記述統計がデータそのものを描写するのに対し、推測統計は標本という限られた情報に基づいて、見えない母集団の姿を推定するという点が大きな違いです。国勢調査のような全数調査が理想ではありますが、コストや計算量などの制約があるため、現実的には標本調査に基づいた推測が行われることが多いと述べられています。
まとめ
ビジネスにおける記述統計は、与えられたデータ全体を整理・要約し、概要やパターンを把握して意思決定に繋げることを主な目的とします。具体例として、売上データの平均や最大値算出があります。
一方、推測統計は、限られた標本データに基づいて母集団の特性を推測したり、将来予測を行ったりすることで、不確実な意思決定を支援します。一部顧客へのアンケートから全顧客の満足度を推定するなどが例です。
記述統計はデータを描写し、推測統計は標本から母集団を推定する、という使い分けを念頭にビジネスに活用しましょう!