認知症イノベーションアライアンスWG
令和3年度第1回
事務局資料
今後の認知症イノベーションアライアンスワーキンググループの取組みについて
経済産業省ヘルスケア産業課
Table of Contents
認知症イノベーションアライアンスWG:令和3年度協議内容
- 令和元年度・2年度の議論を令和3年度については、予防・共生の各事業の事業進捗及び、令和2年度に議論した3つの論点についての進捗を報告し、イノベーション創出(社会実装)に向けて課題を整理するとともに、必要とされる認知症施策について議論を行う。
令和3年度検討事項
共生・予防(進行抑制)両面から、以下の論点について具体的な検討を進めたい
① イノベーション創出に向けた「開発段階からの当事者参画の仕組み」
② 当事者等が適切に選ぶための「製品・サービスの評価指標」と流通のあり方
③ 「データ利活用(循環)」がもたらす持続可能な社会に向けた基盤づくり
令和3年度委員選定
- 座長・・・東京大学岩坪教授
- 委員・・・昨年度WG委員と同様(29名)
- オブザーバー・・・厚生労働省・消費者庁等
令和3年度開催方法・スケジュール
- 第1回:令和3年10月@書面開催
- 第2回:令和4年1~2月@ウェブ会議
各論点について(令和2年度資料より)
昨年度の議論では、令和3年度以降に、より詳細な検討を行っていくべき論点として以下の3点を挙げ、ご意見をいただいた。
論点① 当事者参加型の開発モデル
- 当事者参加型開発モデルのFS調査
モニター確保の仕組みを含めた当事者主導型研究のあり方検討
協力者候補:認知症未来共創ハブ
※【ヘルスケアサービス社会実装事業】事務局にて検討中
論点② 共生・予防等の評価指標
- 共通指標(ウェルビーイング・QOL)の開発
協力者:慶大佐渡専任講師・横浜市立大五十嵐准教授
※【認知症共生社会に向けた製品・サービスの効果検証事業】今年度から実施予定 - 予防指標(認知機能評価)の有用性調査
協力者:調整中
※【ヘルスケアサービス社会実装事業】事務局にて検討中
論点③ データ連携(循環)
- 実証基盤におけるデータ連携のあり方に関する検討
協力者:東京医歯大平川教授 世界経済フォーラム第4次産業革命センター
※【認知症対策官民イノベーション実証基盤整備事業】昨年度から検討を実施中
論点① 当事者参加型の開発モデル
開発段階からの当事者参画の仕組み(前回WG資料より)
- 認知症の人を中心としたマルチステークホルダーに対し、より質の高いソリューションを創出していくためには、開発段階から当事者と一緒になって品質を向上していくことが必要。
- 昨年度WG議論や既存事業の課題を踏まえ、開発段階で当事者との連携が可能となる仕組みを検討していくとともに、認知症分野での「当事者主導型研究」(User-led Research)について検討してはどうか。
「開発段階からの当事者参画の仕組み」が目指すもの(前回WG資料より)
- 本取組みが目指すのは、より質の高いソリューションを創出していくこと。
- それには他分野での「当事者主導型研究」でみられるような、研究者-被験者(提供者-消費者)という関係を超え、当事者が主導的に企業と「共創」を行える仕組みが必要。
- 「当事者が望むソリューションが、持続可能な形で社会実装される」ことを通じて、共生社会の実現に貢献することを目指す。
論点①に関する前回ワーキング(2021年3月5日)でのご意見(抜粋)
- 日本で「当事者」という言葉を使うとき、その定義が確立されたものになっていない。いずれにしろ、本人抜きの「当事者」はあり得ない。本プロジェクトで「当事者」というときにどこまでの範囲を含むものなのか、共通認識を作るべきである。
- 媒介機能を民間事業者が果たすことは可能であると考えている。どのような要件があれば、本人や家族等が安心して参加できるのかを今後検討していきたい。
- 認知症といっても軽度から重度までかなりのグラデーションがある。比較的重度な方の思いも確実に吸い上げることができる仕組みについても論点として検討すべきと考える。
- 自分の意見を発信することができる、話すことができる認知症の方だけが参加する枠組みは想定すべきではない。話すことができるかどうかを問わず、本人の意見を聞く方法は必ずあるはずである。本人、周辺の方、全ての方を取りこぼすことが無いようにしてほしい。
- ひとくくりに認知症といっても様々な人がおり、個性や得手不得手も異なっている。そのため、全ての方に満足してもらう商品やサービスというのは難しい。できるだけ多くの選択肢を当事者の方に提示して、好きなものを選べる環境を用意することが大切だと考えている。
- 企業、当事者、行政が共創するという共通の方向性に向けて、厚生労働省、経済産業省がより一層連携して取り組みを行うことが大きな成果につながると考える。
当事者参加型の開発モデル 基本方針
- 本取組みの目的は、本人のニーズに合致した、より質の高いソリューションを創出していくこと。そのために、開発段階から本人と企業が一緒に作り上げる(「共創」)ための仕組み作りを目指す。
- 同時に、「開発への協力」という形で本人の社会参画・活躍の場をふやすことも、本取組みの目的。
当事者参加型の開発モデル 実施事項
- 以下の実施事項ア)~エ)を、必要な機関と連携して実施する。
実施事項 | 取組概要 |
ア)関係者との対話や先行研究、国内事例等を基にした概念理念の整理 | 関係者との対話や先行研究、国内事例等を基にした概念理念の整理を実施 |
イ)認知症当事者と企業の共創を成り立たせる基盤の検討 | ステークホルダー(企業、自治体、介護事業者、当事者及びその関係者等)へのヒアリング調査等を通じて「認知症当事者と企業の共創」に関する課題認識や期待等を確認したうえで、認知症当事者と企業の共創を成り立たせる基盤のあり方について検討・整理を実施 |
ウ)共創プラットフォームの検討 | ア)~イ)を踏まえ、前提となる概念理念、共創プラットフォームのあり方、プラットフォームにおける各ステークホルダーの役割分担等について検討、整理を実施 |
エ)当事者参加型(当事者主導型)製品・サービス開発のプロトタイピングの作成に向けた検討 | ア)~ウ)を踏まえ、当事者参加型の開発モデルのプロトタイピングを作成 |
当事者参加型の開発モデル今年度の目標:プロトタイピングの着手
- 今年度は、参加者の属性、製品・サービスのテーマ、プラットフォームの運営主体について、可能な限り複数のバリエーション(3~4種類を想定)を設け、「共創プラットフォーム」のプロトタイピングの作成に向けた検討を実施。
- 多様な本人の声を反映する仕組みの実現に向けて、フィールドとして、基礎自治体、都道府県、介護事業者等に広く声掛けを実施中。
1.製品・サービスのテーマ
- 移動・外出
- 買い物
- 調理・食事
- 金融・財産管理
- 労働(就労・社会参画)
- 通院・通所、服薬
等
2.開発プロセスの進捗度
- アイデア創出段階
=一緒にアイデアから考える - コンセプトテスト段階
=ある程度出来上がったアイデアに意見をもらう - 試作品テスト段階
=試作品を使ってみる、実証に参加して意見を言う
3.プラットフォームの運営主体(フィールド)
- 基礎自治体(政令市/その他)
- 都道府県
- 介護事業者
- 企業等
等
様々なケースで「共創(共に創る)」を試行し、ケースごとのノウハウやポイントを整理する
当事者参加型の開発モデル 実施状況
- 現在、「アイデア探究」から「製品コンセプト開発」までのプロトタイピングの実践に向けて、検討テーマの選定、企業等へのアプローチを実施中。2021年度終了時点までに、特定テーマに関する具体的なソリューション仮説の創出を目指す。
当事者や企業等の声を基にした検討テーマの選定
- 当事者及びその関係者や企業、自治体等との対話を通じて、ソリューション開発を行う検討テーマを選定。
- 現時点では「外出・移動」、「買い物」、「調理」を有力テーマとして想定。
- 自治体(京都府、福岡市等)と連携した複数企業へのアプローチと経済産業省等のネットワークを活用
した個別企業へのアプローチの2手法で参画企業を募集中。
特定テーマに関する当事者との対話の場等の設定
- 検討テーマに関する生活課題の抽出、アイデア探究、アイデアのスクリーニング・練り上げ等を目的として、当事者及びその関係者と企業の「対話の場」を設置。
- 「対話の場」は、ワークショップ、インタビュー、当事者とともに活動する体験会等、多様な方法を検討。
具体的なソリューション仮説の創出
- 検討テーマに関連する当事者ニーズを満たす製品・サービスの開発可能性や具体的な製品・サービスのコンセプトについて検討を行い、具体的なソリューション仮説を創出。
当事者参加型の開発モデル アウトプットイメージ
- 今年度及び来年度のプロトタイピングを通じて、持続可能な「共創プラットフォーム」のあり方を明確にするとともに、当事者参加型の開発を進める際のノウハウや留意点を整理する(ガイドラインや手引き等)
当事者参加型の開発モデル 先行研究からの示唆
- 先行研究からの示唆を踏まえると、認知症領域における当事者参加型モデル構築にあたっての課題及び検討すべき点として、以下に列挙する項目が挙げられる。
- 詳細は、「特定非営利活動法人日本医療政策機構理事・事務局長乗竹委員提出資料」参照
当事者参画型プロジェクトにおいてよく見受けられる課題
- 当事者参画の定義が不明瞭であり、当事者の関与の度合いに大きな差がある
- 参画者側の視点の不足(パワーバランスの不均等)
- 情報の取り扱いの難しさ
- 当事者の声がうまく活かされない、それゆえ継続しない
- 当事者との信頼関係の構築
認知症領域における当事者参画型モデル構築にあたって検討すべき点
【安心感と居心地の良さが整った参画環境】
- 認知症当事者の安全の確保(リスクを最小限に抑える方法)
- 認知症当事者が安心して協力できる空間・環境づくり
- 家族や介護関係者、施設、専門家などとの緊密した協力体制の構築
- 積極的関与が期待できる認知症当事者の協力を継続して得るための仕組みづくり
- 認知症の多様性を踏まえた、個々人の能力や特性を活かす参画手法
【当事者とのコミュニケーション】
- 同意における意思決定に関する規定
- 認知症当事者ヘのプロジェクトに関する情報提供の方法や環境
- 「認知症」などの当事者とのコミュニケーションにての表現方法への配慮
【ステークホルダーの役割】
- 言語情報のみに頼らないデータの取集と分析手法の調査と開発
- 認知症の人たちと向き合うことによる、デザイナー、技術者などへの心理的負担への対策
- 認知症に対する先入観をもつステークホルダーの意識改善
- 商品・サービスの購買について意思決定を行う人々(介護関係者、施設の職員等)に偏らない「認知症当事
者」の参画価値に対する認識の共有
当事者参加型の開発モデル 募集企業の要件
- 以下の要件に合致する企業について、自治体とも連携しながら募集を行っているところ。
募集対象
- 認知症の方への理解を深め、認知症の方を対象とした製品・サービスの開発を、今年度から来年度にかけて取り組む意欲がある企業
- 今年度:複数回(2~3回程度)の実施を想定する当事者との対話の場に、参加いただく。
- 今年度~来年度以降:上記の中から具体的な製品・サービスのテーマが設定できた場合には、当事者との対話を重ねながら、開発に取り組んでいただく。
事務局としてのご支援内容
- 自治体や介護施設等のフィールドと連携して、事務局にて認知症当事者の参画を募集します。
- 検討中の製品・サービスについて、以下のような形で認知症当事者のご意見を伺っていただけます。
アイデア創出段階=一緒にアイデアから考える
コンセプトテスト段階=ある程度出来上がったアイデアに意見をもらう
試作品テスト段階=試作品を使ってみる、実証に参加して意見を言う - 当日の運営は事務局がコーディネートし、必要に応じて認知症当事者との対話をサポートいたします。
論点② 共生・予防等の評価指標
認知症共生・予防等の評価指標 目的
- 従来の医療・介護分野のみならず幅広い生活産業が連携し、日常の中で認知症との「共生」や「予防」に資する質の高いソリューションの普及を目的として、当事者等がこれを適切に選ぶための評価指標や流通のあり方を検討する。
論点②に関する昨年度WGでのご意見(抜粋)
- 当事者や家族が商品やサービスを選択する際の分かりやすさは非常に重要であると考えている。先進的な取組を参考に、今後の課題として検討すべきと考える。
- 製品やサービスの注意表示が認知症当事者を悲しませたり、偏見を生んだりする可能性がある。
「誰もが安心して選択できる流通環境」を考える際には、製品やサービスの表示のあり方も論点に入れるべきと考える。 - 民間企業の立場としては、できるだけ複雑な評価指標にはして欲しくない。ユーザーへの説明にかかるコミュニケーションコストが大きくなると評価指標は活用されない可能性が高い。エビデンスの精緻さとユーザビリティのバランスを考慮して、ベストな落としどころを探ることが必要と考える。
- 評価指標の確立によりお墨付きがなされることは消費者の安心につながる一方で、その指標を盲目的に信じてしまう懸念がある。その指標の意味や位置づけをしっかりと周知し、消費者に正しい理解をいかに促すかについても重要な論点として検討すべきと考える。効果があることを企業が謳うためには長い年数をかけて認証を得ることが必要となると、認証取得が企業にとってハードルとなる可能性がある。
- アウトカム指標としては、本人の尊厳の保持と自立支援を中核とすべきであろう。それに伴うものとして、経済的・社会的インパクトを考える姿勢が必要である。本人QOLの評価指標としてEQ-5D-5Lが用いられているが、QOLという概念はそれだけではないので、広く検討して欲しい。予防に関する検討においては、認知症施策推進大綱の「予防」の定義との整合性について留意が必要。
- 評価の精度と現場での使いやすさはトレードオフの関係にある。実際に現場で使えるのかという点も含めて、検討を進めていく必要がある。簡単に使えても、精度が低いと意味がない。逆もまたしかりである。
- 評価指標の整備により、研究開発が進むことを期待している。認知症の方へどのようにアプローチすべきかという論点に関連して、予防という観点では、認知症の手前の方等、対象をどのように設定するかについても本ワーキンググループにおいて検討しても良いかと思う。
- 認知症の方や家族は身近な自治体から必要な情報を得ていることが多く、民間企業からの情報には接する機会が乏しいというのが実態であると思う。そのような状況を前提にすると、やはり行政の果たすべき役割が大きい。
認知症共生・予防等の評価指標 実施事項の全体像
論
点(課題) |
実施事項 | 実施時期 |
評価指標の充実 |
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対象者像・ソリューションごとに適した指標の整理 |
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ソリューションの評価と市場価値を結びつける考え方の整理 |
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論点③ データ連携(循環)
データ連携(循環) 目的
- 民間事業者が利用しやすい認知症データベースを構築することを目的として、DB事例調査と民間企業のデータ利活用に対するニーズ把握を今年度は実施する。また、持続可能なデータベースの管理体制の在り方を今年度、次年度で検討予定。
データ連携 目指す姿
- 認知症に係る各種研究・実証事業等で収集したデータが一元的にに蓄積されていき、民間企業が自社事業推進に必要なデータを購入し、利用できる体制構築を目指す
データ連携(循環) 実施事項の全体像
- 論点③の具体実施事項について、今年度は、ア)継続的なデータベース管理体制構築のための基礎調査およびイ)民間企業のデータ利活用ニーズ把握を実施予定。なお、ウ)に関しては、本年度ヒアリング及びデスク調査を基に、次年度以降具体的な実施事項として進める予定。
実施事項 | 実施時期・到達目標 | |
持続可能なデータ利活用事例調査 |
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民間企業のデータ利活用ニーズ把握 |
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具体的なデータ管理体制構築検討 |
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参照
令和3年度第1回 認知症官民協議会 認知症イノベーションアライアンスワーキンググループ(書面開催)