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EfficacyとEffectiveness―日本語ではどちらも「有効性」ですが―

2021年2月28日

ヘルスケア業界に限らず厄介なのが、英語と日本語の対応が必ずしも一対一対応していない場合。

英語の微妙なニュアンスの違いが、日本語訳されると消えてしまって、英語を母国語とする人達との会話の中で認識がずれて噛み合わないという場面は珍しくないでしょう。

表題の Efficacy と Effectiveness もその一つ。

英和辞典では、どちらも「有効性」「効率」「効能」「効果」などといった言葉が並んでおり、その違いが読み取れません。

一方で、ヘルスケア分野では Efficacy と Effectiveness の違いは米国の規制当局であるFDAが使い分けしているほど、厳密に区別されています。

そこで本記事ではその違いについて取り上げます。参照にしている文献は本記事の終わりをご覧ください。

Efficacy とは

Efficacy とは一言でいうなら 「理想的な環境や条件下における、診療行為の有効性」です。

何らかの診療行為のEfficacyを調べるというのは、「その診療行為そのものの有効性」を調べる、ということを指します。

診療行為自体に注目しており、それ以外のもの、周辺の雑音のようなものを除いた純粋な有効性を見たものが Efficacy をも言えます。

どんな風に理想的かという条件は、大きく次の3つです。

  1. 診療行為が明確に指定され標準化されている
  2. 診療行為が実施される場面や状況が標準化されている
  3. 診療行為を受ける対象者が、その診療行為を完全に受け入れており、厳格に指示に従っている

診療行為が明確に指定され標準化されている

どういうことかというと、診療行為の中には、AかBかどちらでも臨床的に大きな差はないと考えられているものがあります。

分かりやすいところなら、ジェネリック医薬品ですね。

医師が一般名処方を行った場合、調剤を行う薬剤師側で、どのジェネリック医薬品を使うかを選ぶことができます。

厳密には製造工程や製剤の細かい部分に違いがありますが、臨床的に大きな差はないと考えられているものの一つです。

Efficacy を検証するうえでは、そうした違いも厳格に考慮して、同一性を極力高めることが求められます。

診療行為が実施される場面や状況が標準化されている

実際の診療現場では、医師からの指示に対して患者さん側の選択の幅はそれなりに広い場合があります。

例えば、「では、次の来院は2か月後を目安に来てください」というものです。

他には「熱っぽかったり、身体がだるかったりと、症状の辛いときに飲んでくださいね」という指示も風邪薬等で経験した方もいるのではないでしょうか。

実際の生活に寄り添えば寄り添うほど、患者さん側の生活に合わせた臨機応変な診療は好まれますし、そうあるべきだともいえます。

一方、Efficacy を検証するうえでは、そうした「臨機応変さ」「ゆるさ」は極力排除しなければなりません。

診療行為を受ける対象者が、その診療行為を完全に受け入れており、厳格に指示に従っている

端的に言えば「アドヒアランスが100%である」という状態です。

医師の指示を完全に守っている状態ということですね。

現実的には、非常に稀とは言わないにしても、アドヒアランス100%を達成し続けられる人はそう多くはないでしょう。

うっかり飲み忘れてしまったり、勝手に自己判断して服用を止めてしまうケースも、決して好ましくはありませんが実際問題として発生し得るものです。

交通事故等の突発的な事象によって、服用したくても出来なくなってしまう状況もあるかもしれません。

Efficacy を検証するさいには、そうしたイレギュラーな要素は排除し、アドヒアランスが100%である状況下での有効性に注目する必要があります。

Effectiveness とは

Effectiveness とは一言でいうなら 「現実的な環境や条件下における、診療行為の有効性」です。

  1. 診療行為は、そこまで厳密に指定され標準化されていなくても、(臨床上問題がなければ)よしとする。
    • 例)ジェネリック医薬品などの製造工程レベルの差は許容する。
  2. 診療行為が実施される場面や状況が標準化されていなくても、(臨床上問題がなければ)よしとする。
    • 例)患者さん側の生活に合わせた臨機応変な診療も許容する。
  3. 診療行為を受ける対象者が、その診療行為を完全に受け入れたり厳格に指示に従っていなくても、(臨床上問題がなければ)よしとする。
    • 例)アドヒアランスが100%であることは求めない。

まとめ

Efficacy とは 「理想的な環境や条件下での有効性」、Effectiveness とは「現実的な環境や条件下での有効性」と覚えておきましょう。

そして、Efficacy は Effectiveness に欠かすことが出来ません。

ですが、Efficacy があっても、それだけでは Effectiveness を達成するには不十分という点も肝に銘じておきましょう。

参照文献

Efficacy and effectiveness trials (and other phases of research) in the development of health promotion programs

Preventive Medicine

Volume 15, Issue 5, September 1986, Pages 451-474

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0091743586900241

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