規制

生命・医学系指針の見直しについて(第48回生命倫理・安全部会)

見直しの経緯

  • 2021年5月令和2年及び令和3年に行われた個人情報保護法の改正を踏まえ、「生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱いに関する合同会議」において、指針の見直しの検討開始
    • 文部科学省科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会
      -人を対象とする医学系研究等の倫理指針に関する専門委員会
    • 厚生労働省厚生科学審議会科学技術部会
      - 医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会再生医療等評価部会
      - 遺伝子治療等臨床研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会
    • 経済産業省産業構造審議会 商務流通情報分科会バイオ小委員会
      - 個人遺伝情報保護WG
  • 10月26日見直しの方向性をとりまとめ
  • 10月27日~11月2日指針改正案(概要)を生命倫理・安全部会等で書面審議
  • 11月8日~12月7日指針改正案(概要)についてパブリック・コメントを実施

指針の主な改正内容

Ⅰ.指針の体系

1. 用語の整理 【指針第2 】

① 指針における生存する個人に関する情報についての用語は、改正後個情法における用語に合わせる 。

② 死者の情報に関する用語の定義は置かず、死者の試料・情報を用いる研究については、生存する個人の情報と同様に取り扱う旨の規定を置く。

③ 「匿名化」の用語は用いない。 匿名化されている情報については、改正後個情法上の該当する各用語を当てるとともに、仮名加工情報、匿名加工情報のいずれにも該当しない加工された情報(統計情報を除く。)は、個人情報として取り扱う。

④ 「対応表」の用語は用いない。 個人情報保護法における「匿名加工情報」「仮名加工情報」の加工方法や加工に係る削除情報等についての法の規定との対応関係が明確になるよう整理を行う。

2. 指針の範囲の見直し 【指針第3の1 】

特定の個人を識別できない試料・情報(既に作成された匿名加工情報、個人に関する情報に該当しない既存の情報を除く。)のみを用いる研究も指針の対象とする。

3. 個人情報の管理主体

個人情報の管理主体は、研究機関の長

※又は既存試料・情報の提供のみを行う者が所属する機関の長とする。

※研究機関の長:研究が実施される 法人の代表者 若しくは 行政機関の長 又は研究を実施する 個人事業主 をいう。研究機関の長は、当該研究機関において定められた規定により、この指針に定める権限又は事務を当該研究機関内の適当な者に委任することができる。

Ⅱ.インフォームド・コンセント IC )を受ける手続等

1. 研究対象者から新たに試料・情報を取得して研究を実施する場合 【指針第8の1⑴ 】

① 試料を用いる研究

変更なし

② 試料を用いない研究
<要配慮個人情報を取得する場合>
  • 研究対象者から新たに要配慮個人情報を取得して研究を実施する場合については一律に原則 IC 又は適切な同意を取得する。
  • 改正後個情法の学術例外その他の本人同意原則の例外の要件に該当する場合で、次のいずれの要件にも該当する場合は、 IC 等を受ける手続( IC 手続)を適切な形で簡略化できるものとする。
    1. 研究の実施等について研究対象者等が拒否する機会を保障
    2. 研究対象者の不利益とならない
    3. 簡略化しなければ、研究の実施が困難であり、又は研究の価値を著しく損ねること
<要配慮個人情報以外の情報を取得する場合>
  • 研究対象者から新たに取得した情報(要配慮個人情報を除く。)を共同研究機関に提供する場合の IC 手続について、見直し後の指針に定める既存の個人情報(要配慮個人情報を除く。)を他の研究機関に提供する場合のIC 手続と同様とする。

2. 自機関での保有する既存試料・情報を用いて研究を実施する場合 【指針第8の1⑵ 】

① IC 手続を行うことなく利用できる既存試料・情報を次のとおりとする。

  • 既に特定の個人を識別できない状態に管理されている試料(当該試料から個人情報が取得されない場合)
  • 既存の仮名加工情報
  • 匿名加工情報( IC 取得が困難な場合)
  • 個人関連情報

<試料を用いる研究>

② 社会的に重要性が高い研究に既存試料・情報を用いる場合については、研究対象者等に所要の通知をした上で適切な同意を受けるものとし、改正後個情法の学術例外その他の本人同意原則の例外の要件に該当する場合は、オプトアウトを許容する。

<試料を用いない研究>

③ 当該研究に用いることについて研究対象者等の同意を得ていない既存試料・情報については、研究対象者等に所要の通知をした上で適切な同意を受けるものとし、改正後個情法の学術例外その他の本人同意原則の例外の要件に該当する場合は、オプトアウトを許容する。

3. 他の研究機関に既存試料・情報を提供する場合 【指針第8の1⑶ 】

① IC 手続が困難な場合に、 IC 手続を行うことなく提供することができる既存試料・情報を次のとおりとする。

・特定の個人を識別できない状態に管理されている試料(当該試料から個人情報が取得されない場合)
・個人関連情報(提供先となる研究機関が個人情報として取得しない場合)
・匿名加工情報

② 試料又は要配慮個人情報を提供する場合は、原則 IC を取得するものとする。改正後個情法の学術例外その他の本人同意原則の例外の要件に該当する場合で、可能な限り提供について拒否する機会を設けるよう努め、研究対象者の不利益とならないこと等の所要の要件を満たす場合は、 IC 手続を簡略化できるものとし、それ以外の提供は、オプトアウトによる提供を許容する。

③ オプトアウトにより、既存試料・情報を提供する際に研究対象者等へ通知又は公開する事項について、利用する者の範囲については、研究代表者と当該者が所属する研究機関のみでよいものとし、提供先における既存試料・情報の管理責任者を削除するとともに、提供される試料・情報の取得の方法、提供を行う機関の名称等を加える。

④ 個人関連情報を提供する場合であって、提供先となる研究機関が個人情報として取得する場合は、改正後個情法に準じた取扱いとし、提供先の研究機関において 自機関で保有する既存試料・情報を用いて研究を実施する場合の IC の規定(第8の1⑵)に準じた手続が行われ、研究対象者等の同意が得られていることを確認するものとする。

4.既存試料・情報の提供を受けて研究を実施する場合【指針第8の1⑸ 】

個人関連情報の提供(個人情報として取得する場合に限る。)を受けて研究を実施しようとする研究者等は、研究を実施するに当たっては、 自機関での保有する既存試料・情報を用いて研究を実施する場合の IC の規定(第8の1⑵ ) に準じた手続を行うものとする。

① 外国にある第三者に提供する場合には、引き続き、現行指針の規定を維持し、原則として、適切な同意を求めることとし、 改正後個情法 の学術例外その他の本人同意原則の 例外 の要件 に該当す る場合 であっても、
(ア)本人の同意を得た場合
(イ)個人情報委員会が定める基準に適合する体制を整備している者に対する提供である場合
(ウ)我が国と同等の水準国にある者に対する提供である場合
に限り提供できるものとする。

② 改正後個情法 の学術例外その他の本人同意原則の例外の要件 に該当する 場合 であって ①の (イ)及び(ウ)に該当し ない場合で、かつ 、本人同意の取得が困難な場合にあっては、倫理審査委員会の意見を聴いた上で、オプトアウトを許容することとする。

③ 改正後個情法 の学術例外その他の本人同意原則の例外の要件 に該当する場合であっても(ア)の場合には、同意取得に当たっては、外国の名称等の情報を本人に提供する必要があるものとする。

④ 改正後個情法 の学術例外その他の本人同意原則の例外の要件 に該当する場合 であっても (イ)の場合には、相当措置の継続的な実施を確保するために必要な措置を講ずるとともに、本人の求めに応じて当該必要な措置に関する情報を本人に提供する必要があるものとする。

Ⅲ.現行指針第9章の見直し

① 生存する個人に関する情報、死者の試料・情報、人体から取得された 試料 の保護に関して規定する章とする 。

② 生存する個人に関する情報については、指針に規定しない改正後個情法の規定の取扱いを含め、改正後個情法 の 規律や 条例等の適用を受ける事項に ついては、指針のほか、それら規律を遵守 する 旨の規定をおく。

③ 死者の試料・情報につい ても、 特定 の個人を 識別 する ことができるもの は、生存する個人に関する情報と同様に、指針のほか、改正後個情法や条例の規定に準じて適切に取り扱う旨の規定をおく。

④ 人体から取得された試料について、指針を遵守するほか、改正後個情法や条例等の規定に準じて取り扱う旨の規定をおく。

⑤ 現行指針第18の2、第19、第20及び第21に定める個人情報等及び匿名加工情報の取扱いについては、改正後個情法が適用することになるため、指針から削除する。

Ⅳ.経過措置

現行指針及びそれ以前の指針の規定により実施中の研究については、個人情報保護関連法令及びガイドラインの 規定 が遵守され る場合 に限り 、な お従前の例によることができることとする。

参照

ライフサイエンスの広場HOME審議会TOP科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会第48回(令和4年1月20日)議事次第資料48-1-1 生命・医学系指針の見直しについて

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