臨床試験

ICH-E6 (R2) GCP 治験における品質マネジメントに関する基本的考え方

2021年4月17日

治験における品質マネジメントに関する基本的考え方

1.背景

モニタリング及び監査に代表される品質管理及び品質保証は、治験の品質を確保するに当たって重要な役割を担っている。そして、品質管理及び品質保証をより効果的に活用して治験の品質を担保するためには、適切な体制を構築し、これらを包括的なプロセスのもとで実施すること(品質マネジメント)が必要である。また、品質マネジメントにおいては、簡潔な治験実施計画書の作成、関係者への適切な教育訓練等により、治験の計画段階から品質の確保を行うことも重要である。

今般改定されたICH-E6(R2)ガイドラインにおいても、品質管理及び品質保証を包括する概念として品質マネジメントの考え方が整理され、治験依頼者及び自ら治験を実施する者における治験の計画段階からの効率的・革新的な品質確保への取組が奨励されている。

2.品質マネジメントの実施

品質マネジメントの前提として、以下の点に留意すること。

  • 治験のあらゆる局面において実行可能であることを保証するとともに、不必要な複雑さ、手順及びデータ収集を回避すること
  • 治験実施計画書、症例報告書の様式その他業務関連文書は、簡潔明瞭で一貫したものにすること

治験の品質マネジメントシステムでは、以下に記載するリスクに基づく取組を利用するものとする。

(1)重要なプロセス及びデータの特定

治験実施計画書の作成において、被験者保護及び治験結果の信頼性確保のために重要なプロセス及びデータを特定する。

(2)リスクの特定

治験の重要なプロセス及びデータに対するリスクを特定する。リスクは、システムレベル(標準業務手順書、電子データ処理システム、人員等)及び治験レベル(治験デザイン、データの収集、同意取得プロセス等)の両レベルで検討する。

(3)リスクの評価

以下の点を考慮して、既存のリスクコントロールを前提として、特定したリスクについての評価を行う。

① エラーが発生する可能性

② 当該エラーが検出される可能性

③ 当該エラーが被験者の保護及び治験結果の信頼性に及ぼす影響

(4)リスクのコントロール

低減すべきリスク及び(又は)受入れ可能なリスクを決定する。受入れ可能なレベルまでリスクを低減するために実施する取組は、リスクの重要性に見合ったものとする。リスクの低減措置は、治験実施計画書のデザイン及び実施、モニタリング計画書、役割及び責務を規定する当事者間の合意、標準業務手順書の遵守を確保する体系的な措置並びにプロセス及び手順に関するトレーニングに組み込むことができる。

被験者の安全性及び治験結果の信頼性に影響を及ぼす可能性がある体系的な問題を特定するため、変数の医学的特性及び統計学的特性並びに治験の統計学的デザインを考慮し、品質許容限界を事前に規定する。規定された品質許容限界からの逸脱の検出は、低減措置の必要性を検討する契機となる。

(5)リスクコミュニケーション

品質マネジメント活動を文書化する。治験の実施期間中におけるリスクレビュー及び継続的な改善を促進するため、品質マネジメント活動に係る関係者及び当該活動により影響を受ける者に対し、品質マネジメント活動の内容を伝達する。

(6)リスクレビュー

履行した品質マネジメント活動の効果及び妥当性が維持されているか否かを確認するため、最新の知識及び経験を踏まえて、リスクコントロール手段を定期的にレビューする。

(7)リスク報告

総括報告書において、治験で履行した品質マネジメントの取組を説明し、事前に規定した品質許容限界からの重要な逸脱及び講じられた措置の要約を記載する(「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」(平成8年5月1日付け薬審第 335 号厚生省薬務局審査課長通知)の「9.6データの品質保証」)。

備考 治験における品質マネジメントに関する基本的考え方について

薬生薬審発 0705 第5号
令 和 元 年 7 月 5 日

医薬品の治験等の実施の基準に適合した治験等の円滑な実施に当たって参考となるガイダンス(以下「GCPガイダンス」という。)については、「「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについて」(平成 24 年 12 月 28 日付薬食審査発 1228 第7号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)の別添として示しています。

今般、医薬品規制調和国際会議(以下「ICH」という。)の合意に基づき、ICH-E6(R2)ガイドラインが取りまとめられ、品質管理及び品質保証を包括する概念である「品質マネジメント」に係る記載が盛り込まれたこと等に伴い、GCPガイダンスを改正しました(令和元年7月5日付け薬生薬審発 0705 第3号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)。

これに併せ、改正後のGCPガイダンスにおける「品質マネジメント」に関する基本的な考え方について、別添のとおり取りまとめましたので、御了知の上、貴管下関係業者、医療機関等に対して周知いただきますよう御配慮願います。

参照

ICH-E6 GCP(医薬品の臨床試験の実施基準)

https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0028.html

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