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用語集
ベイズ流の方法 Bayesian Approaches
一部のパラメータ(例えば、試験治療の効果)について、観察されたデータとパラメータの事前確率分布から事後確率分布を与えるデータ解析の方法。得られた事後分布を、統計的推測の基礎とする。
偏り(統計的及び運営上の) Bias (Statistical & Operational)
臨床試験の計画、実施、解析及び結果の評価と関連した因子の影響により、試験治療の効果の推定値と真の値に系統的な差が生じること。試験実施中の逸脱によって起こる偏りを「運営上の」偏りとよび、それ以外の原因によって起こる偏りを「統計的」偏りとよぶ。
盲検下レヴュー Blind Review
試験完了(最後の被験者の最終観察)から割付を明らかにするまでの間に予定した解析を固定する目的で実施するデータの評価と点検。
内容的妥当性 Content Validity
ある変数(例えば、評価尺度)で測定しようとしているものを、どれだけ間違いなく測定しているか、その程度。
ダブルダミー Double-Dummy
臨床試験で二つの試験治療の区別がつく場合に、医薬品投与時の盲検を維持する技法。試験治療Aについて、実際の製剤と共にそれと区別不能なプラセボを用意し、また試験治療Bについても、実際の製剤と共にそれと区別不能なプラセボを用意する。被験者は二組の試験治療(一つはAの実際の製剤とBのプラセボ、もう一つはAのプラセボとBの実際の製剤)のどちらかを受ける。
脱落 Dropout
治験実施計画書が要求する最終観察以前に、何らかの理由で臨床試験の継続ができない被験者。
同等性試験 Equivalence Trial
二つ以上の試験治療に対する反応が、臨床的に重要な意味を持つほど異ならないことを示すことが主要な目的の試験。このことは、通常臨床的に許容できる差である上側同等限界と下側同等限界の間に、試験治療間の真の差が存在する可能性が高いことを示すことにより証明される。
頻度論的方法 Frequentist Methods
有意性検定及び信頼区間といった統計的方法であり、その意味は同一実験状況下という仮説的な繰り返しのもとで起こるある結果の頻度という観点から解釈できる。
最大の解析対象集団 Full Analysis Set
Intention-to-treat の原則に可能な限り近づけた被験者集団。最大の解析対象集団は、ランダム化が行われた全被験者から、除くべき理由のある最低限の被験者を除外した集団である。
一般化可能性、一般化 Generalisability, Generalisation
臨床試験で得た知見を、その試験に参加した被験者からより広い患者集団とより広い医療現場へ外挿することが信頼をもってできる程度。
総合評価変数 Global Assessment Variable
被験者の疾患の状態又は疾患の状態の変化についての客観的変数と治験責任(分担)医師の全体的な印象を統合した、通常、順序カテゴリの評価尺度である単一の変数。
独立データモニタリング委員会/効果安全性評価委員会(データ及び安全性モニタリング委員会、モニタリング委員会、データモニタリング委員会) Independent Data Monitoring Committee (IDMC) (Data and Safety Monitoring Board, Monitoring Committee, Data Monitoring Committee)
臨床試験の進行状況、安全性データ及び重要な有効性評価項目を何回かにわたって評価するとともに、治験依頼者に試験の継続、修正、又は中止を勧告するために、治験依頼者が必要に応じて設立する委員会。
Intention-To-Treat の原則 Intention-To-Treat Principle
治療に用いる治療方針により得られる効果は、実際に受けた試験治療ではなく、被験者を治療しようとする意図(予定した試験治療規定)に基づくことにより最もよく評価できる、ということを主張する原則。この原則から、一つの試験治療グループに割付けられた被験者は、予定した試験治療のコースを遵守したかどうかにかかわらず、割付けられたグループのまま追跡され、評価され、解析されるべきであることが導かれる。
交互作用(質的及び量的) Interaction (Qualitative & Quantitative)
試験治療の対比(被験薬と対照薬との差など)が、他の要因(施設など)により変わる状況。量的な交互作用とは、要因のレベルが異なるとそれに応じて対比の大きさが変わることであり、質的な交互作用とは、要因のレベルの少なくとも一つにおいて、対比の方向までもが変わることである。
評価者間信頼性 Inter-Rater Reliability
異なる評価者が異なる機会に評価をする場合、同じ結果を与える特性。
評価者内信頼性 Intra-Rater Reliability
同一評価者が異なる機会に評価をする場合、同じ結果を与える特性。
中間解析 Interim Analysis
試験の正式な完了以前に、有効性又は安全性に関して試験治療群間を比較することを意
図して行われるあらゆる解析。
メタアナリシス Meta-Analysis
同じ問題を扱う二つ以上の試験から得られる定量的な証拠について形式に則って行う評価。最も一般的なメタアナリシスでは、様々な試験の要約統計量を統計的に結合するが、生データを結合する場合もメタアナリシスと呼ぶ場合がある。
多施設共同治験 Multicentre Trial
単一の治験実施計画書に基づいて、二つ以上の施設で、したがって二人以上の治験責任医師によって実施される臨床試験。
非劣性試験 Non-Inferiority Trial
被験薬への反応が比較薬剤(実薬又はプラセボ)よりも臨床的に劣らないことを示すことが主要な目的の試験。
基本語及び慣用語 Preferred and Included Terms
MedDRAのような階層的医学辞書では、慣用語とは治験責任医師の記述がコード化される最下層の辞書用語である。基本語とは、発生頻度を報告するために用いられるものであり、慣用語をグループ化するレベルである。例えば、「左腕に痛み」という治験責任医師の記述は、慣用語では「関節痛(Joint Pain)」としてコード化され、基本語レベルでは「関節痛(Arthralgia)」として報告される。
治験実施計画書に適合した対象集団(妥当例、有効性サンプル、評価可能被験者サンプル) Per Protocol Set (Valid Cases, Efficacy Sample, Evaluable Subjects Sample)
データの集合であり、そのデータは基礎となる科学的モデルに従い試験治療の効果をよく示すと十分考えられる程度に治験実施計画書を遵守した部分集団から得られる。遵守には、試験治療への曝露、測定値の利用可能性及び大きな治験実施計画書違反がないことが含まれる。
安全性及び忍容性 Safety & Tolerability
医療用医薬品の安全性は、臨床試験では通常臨床検査(臨床化学、血液学を含む)、バイタルサイン、臨床的有害事象(疾患、徴候、症状)、その他特別な安全性検査(心電図、眼科学など)によって評価される、被験者の医療上のリスクに関するものである。医療用医薬品の忍容性とは、明白な有害作用が被験者にとってどれだけ耐えうるかの程度を示す。
統計解析計画書 Statistical Analysis Plan
統計解析計画書とは、治験実施計画書に記されている解析の主要な特徴のより技術的な詳細を述べた文書であり、主要変数、副次変数、その他のデータに関する統計解析を実行するための詳細な手順を含むものである。
優越性試験 Superiority Trial
被験薬への反応が比較薬剤(実薬又はプラセボ)よりも臨床的に優れることを示すことが主要な目的の試験。
代替変数 Surrogate Variable
臨床的効果を直接測定することが実際的でない場合に、効果の間接的な測定値を示す変数。
試験治療の効果 Treatment Effect
臨床試験における試験治療の効果。ほとんどの臨床試験では、関心のある試験治療の効果は、二つ以上の試験治療間の比較(又は対比)である。
試験治療下での発現 Treatment Emergent
試験治療前には存在しておらず試験治療期間に出現した事象、又は試験治療前の状態に比べて悪化した事象。
試験統計家 Trial Statistician
本ガイドライン中の原則を実行するために、十分な理論又は実地の教育及び経験を併せ持ち、かつ当該試験の統計的側面に責任を持つ統計家。
参照
https://www.pmda.go.jp/files/000156112.pdf
医薬審 第1047号 平成10年11月30日
各都道府県衛生主管部(局)長 殿
厚生省医薬安全局審査管理課長
「臨床試験のための統計的原則」について
近年、優れた新医薬品の地球的規模での研究開発の促進と患者への迅速な提供を図るため、承認審査資料の国際的ハーモナイゼーション推進の必要性が指摘されている。このような要請に応えるため、日・米・EU三極医薬品規制調和国際会議(ICH)が組織され、品質、安全性及び有効性の3分野でハーモナイゼーションの促進を図るための活動が行われている。
別添の「臨床試験のための統計的原則」(以下「本ガイドライン」という。)は、ICHにおける合意に基づき、臨床試験における統計的原則について記載したものであり、臨床試験から得られる結果の偏りを最小にし、精度を最大にすることを目標としている。特に、計画段階から試験統計家が参加すること、治験実施計画書の作成に当たっては解析方法等について妥当性も含め事前明記すること等が強調されており、多施設共同試験における施設の捉え方及び施設当たりの症例数の設定に関する考え方、総合評価変数を用いる際の留意点等についても記載されている。また、検証的位置づけの試験を行う際の有意水準(第一種の過誤)については従来明確にされていなかったが、規制上の観点から、本ガイドラインの施行に伴い、原則として片側仮説を検証する場合は2.5%、両側仮説の場合は5%とすることとした。これらについては、ガイドラインの該当個所及び関係する質疑応答を参照されたい。
本ガイドラインは、本通知の日以降施行し、これに伴い、「臨床試験の統計解析に関するガイドライン(平成4年3月4日薬新薬第20号)」(以下「旧ガイドライン」という。)は廃止する。ただし、治験実施計画書の作成にかかる事項については、既に治験実施計画書が作成され、実施されている臨床試験もあることから、このような場合に配慮し、臨床試験の実施に先立って治験実施計画書が確定される日が平成10年12月31日以前の場合は、被験者数の決定方法も含め旧ガイドラインを参考とした事項があっても差し支えないが、そのような場合であっても、治験実施計画書の改訂又は統計解析計画書の作成を含め、本ガイドラインの趣旨に添って適切と考えられる事項については可能な限り適用することとされたい。
以上の点を御了知の上、貴管下関係者に対し周知方ご配慮願いたい。