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Integrating RCTs into Routine Clinical Practice: FDA Guidance

この 米国食品医薬品局(FDA) の ドラフトガイダンス は、医薬品および生物学的製剤 の ランダム化比較試験(RCT) を 日常の臨床診療 に 統合 するための 業界向け の 提言 を示しています。この文書では、治験依頼者、医療機関、治験責任医師、地域の医療従事者 の 役割、臨床診療との整合性を図るためのRCTの効率化、および 品質バイデザイン(QbD)アプローチ の 適用 について議論しています。ガイダンスは、対象集団の特定、インフォームドコンセントの取得、適切な治験薬の選択、ランダム化と盲検化、併存疾患と併用薬、研究のエンドポイント、有害事象、データプライバシーとセキュリティ、査察 などの 重要な考慮事項 を概説しています。最終的な目標は、患者の利便性とアクセス を 向上 させ、より代表的な集団 の 登録 を可能にすることで、治験結果の一般化可能性 を 高める ことです。 日常診療へのRCT統合における主要な課題と機会、FDAの推奨事項は以下の通りです。

主要な課題

標準化されたデータ収集の確保

従来のRCTと比較して、日常診療におけるデータ収集の手順、方法、タイミング、および文書化の形式が異なる場合があるため、研究に必要な情報を一貫して収集することが課題となります 。

多様な患者集団と併用薬の管理

日常診療には、様々な併存疾患を持ち、複数の薬剤を併用している患者が含まれる可能性があり、臨床試験の実施において併用禁忌薬の使用を確実に防ぐことが困難となる場合があります 。電子カルテ(EHR)での自動警告メッセージの利用などが考えられますが、管理が難しい場合は日常診療への統合には不向きとなる可能性があります 。

測定頻度のばらつきによるデータ収集の不均衡

日常診療では、疾患のコントロール状況に応じて臨床検査や生理学的測定の頻度が医師の判断で変更される可能性があり、プロトコルで規定された測定間隔とのずれが生じ、データ収集に不均衡が生じる可能性があります 。プロトコルで一貫した測定頻度を確保する対策が必要です 。

複雑な臨床アウトカム評価(COA)の統合

患者の機能状態や症状を評価するために研究固有の評価ツールやタイミングが必要となるCOAは、日常診療への統合が難しい場合があります 。日常診療で収集される情報と一貫性のあるCOAの使用、簡潔なデータ入力、複雑な患者評価や広範なデータ収集を必要としないCOAの利用が推奨されます 。

盲検化の複雑さ

盲検化はバイアスを制御するために重要ですが、試験薬の供給やデリバリーの面で複雑さを増し、費用や時間が増加する可能性があり、日常診療への統合を困難にする場合があります 。盲検化が不可能な場合は、バイアスの潜在的な原因を特定し、可能な範囲で試験デザインにそれらに対処する対策を組み込むことが重要です(例:盲検化された独立中央評価委員会によるアウトカム評価、客観的なアウトカム指標の使用)。

プロトコル遵守の確保

ローカルヘルスケアプロバイダー(HCP)が試験固有の知識や訓練、研究に関する専門知識を必要としない業務を行う場合でも、プロトコルに従って業務が実施されることを保証する必要があります 。

インフォームドコンセントの取得

日常診療のワークフローの中で、臨床試験参加のためのインフォームドコンセントを適切に取得する必要があります 。EHRにインフォームドコンセント文書を組み込むなどの方法が考えられます 。

安全性報告と有害事象の管理

日常診療の現場で発生する可能性のある有害事象を適切に特定し、報告する体制を構築する必要があります 。EHRシステムでの自動通知機能の活用などが考えられます 。

データプライバシーとセキュリティ

EHRを利用する場合、患者データのプライバシーとセキュリティを確保するための対策が必要です 。

治験実施施設の査察

FDAは、被験者の権利、安全性、福祉を保護し、FDAに提出された臨床試験データの正確性、信頼性、完全性を検証するために査察を実施します 。日常診療に統合されたRCTも同様に査察の対象となります。

主要な機会

参加者の利便性とアクセス性の向上

試験関連の活動を患者の自宅や他の都合の良い場所で行う分散型臨床試験と同様に、日常診療への統合は参加者の利便性とアクセス性を向上させ、より代表的な集団の登録を可能にし、試験結果の一般化可能性を高める可能性があります。

迅速な登録

確立された医療機関と医療コミュニティにおける既存の臨床専門知識を活用することで、試験の開始時間を短縮し、登録を迅速化できます。

より一般化された試験結果

より幅広い患者層を登録できる可能性があり、試験結果の一般化可能性が高まります。

専用の治験施設の必要性の低減

適切な状況下では、日常診療でのデータ収集により、専用の治験施設が不要になる場合があります 。

EHRの活用

情報技術の進歩とEHRの普及により、日常診療で得られたリアルワールドデータ(RWD)へのアクセスが容易になり、臨床研究と臨床ケアの統合のための新たな機会が提供されます 。EHRシステムが、RCTで使用される症例報告フォームの形式に合わせて標準化された形式で医療情報を記録できるように設計することで、統合を強化できます 。

迅速なエビデンス創出

データ収集が簡略化された試験では、迅速な登録とエビデンスの創出が可能です 。

FDAの推奨事項:

FDAは、このガイダンスにおいて拘束力のある法的責任を確立するものではありませんが、日常診療へのRCT統合を成功させるために、以下の点を含む推奨事項を示しています 。

  1. プロトコルの合理化: 必須データ収集に焦点を当てた、合理化されたプロトコルと手順を用いること。
  2. Quality by Design(QbD)アプローチの採用: 参加者の権利、安全性、福祉、および結果の信頼性に有意義な影響を与える可能性のある重要な品質要素を特定し、主要な目標に貢献しない手順やプロセスを排除することにより、臨床試験の設計に品質を組み込むこと 。
  3. 適格基準の簡素化と日常診療でのデータとの整合: 試験対象集団を適切に特定する能力を損なうことなく、適格基準を最小限かつ直接的なものとし、日常診療でルーチンに得られるデータと一致させるよう努めること 。
  4. 選択的な安全性データ収集の検討: FDA承認済みの薬剤など、安全性プロファイルが十分に確立されている薬剤については、重篤な有害事象、特に注意すべき有害事象、および薬剤の中止または試験からの脱落につながる有害事象など、選択的に安全性データを収集することを検討すること 。
  5. プロトコルの柔軟性の確保: 日常診療におけるデータの収集や臨床ケアの実施の潜在的な違いに対応するために、臨床診療の全部または一部で実施される試験プロトコルに適切な柔軟性を持たせること 。
  6. EHRシステムの活用: データ収集、プロトコル関連情報のフラグ付けなどにEHRシステムを活用すること 。
  7. ローカルHCPの役割の明確化と適切な委任: 試験固有の専門知識を必要としない業務については、ローカルHCPを関与させること 。
  8. スポンサー、治験責任医師、ローカルHCPの役割と責任の明確化: 関係者間の責任を明確にすること。
  9. スポンサーと医療機関/ローカルHCP間の適切な契約: 実施される業務と責任を文書化した契約を締結すること 。
  10. データの品質、完全性、正確性の確保: 治験データの品質を保証すること 。
  11. リスクに基づいたモニタリングの実施: 信頼性の高い結果を生み出し、参加者の安全を確保するために重要な品質要素に対処する、リスクに基づいたモニタリングを実施すること 。
  12. FDA規制とGood Clinical Practice(GCP)の遵守: 関連するFDA規制とGCP要件を遵守すること 。
  13. データプライバシーとセキュリティの確保: 患者データの保護を重視すること 。
  14. FDAの要求に応じた原資料の利用可能性の確保: 治験データを裏付ける原資料をFDAが要求に応じてレビューできるようにすること 。

FDAは、QbDアプローチを用いてプロトコルを設計する際に、早期にFDA、臨床医、患者、その他の関係者と試験デザイン、データ品質の考慮事項、および運用上の問題について議論することを推奨しています 。

参照

GUIDANCE DOCUMENT - Integrating Randomized Controlled Trials for Drug and Biological Products Into Routine Clinical Practice - Draft Guidance for Industry (September 2024)

https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/integrating-randomized-controlled-trials-drug-and-biological-products-routine-clinical-practice

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