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「2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方」答申(案)

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はじめに

我が国は、「第5期科学技術基本計画」(平成28年(2016年)1月22日閣議決定)において、ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(「超スマート社会」(Society 5.0))の実現をビジョンとして掲げ、産学民官が連携し、2030年頃までにSociety 5.0が実現されるべく取組を進めている。総務省においても、こうした強靱で活力があり、Inclusive(誰もが活躍できる)、Sustainable(持続的に成長する)、Dependable(安心して活動できる)社会の実現に向け、Society 5.0を支える情報通信インフラ整備や環境整備など、これまでもさまざまな取組を行ってきたところである。

令和2年(2020年)以後のコロナ禍は、テレワークの急速な普及やインターネットトラヒックの急増など、Society 5.0の実現に向けてデジタル化が大きく進展する契機となったが、一方で国民生活や経済活動における情報通信の利用の増大に伴い、セキュリティの確保や違法•有害情報、偽情報等への対応が一層重要な政策課題となっている。他方、我が国の情報通信市場においては、コンテンツ、サービス、端末、機器といったレイヤーにおいて海外のプラットフォーム事業者やベンダの存在感が高まっている。また、近年の米中の緊張関係などの国際情勢の変化により、サプライチェーンリスク等の経済安全保障上の新しい政策課題が顕在化している。

こうした背景をもとに、総務省は、令和3年(2021年)9月30日、「2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方」について情報通信審議会に諮問を行った。同審議会から本件を付託された情報通信政策部会において、同部会の下に新設された総合政策委員会で調査検討を行うことが適当であるとされ、総合政策委員会においては、令和3年11月4日から主査ヒアリングを含め計14回の会合を開催し、有識者や事業者、関係団体からのヒアリング等を通じて調査検討を行ってきた。本書は、Society 5.0の実現や経済安全保障の確保に向けた情報通信政策の方向性や早急に取り組むべき事項などを取りまとめ、提言を行うものである。

第1章 ICTの現状・動向

第1章では、2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方を検討する前提として、ICTの現状・動向を俯瞰する。ICTは、利用者の接点となる機器・端末、電気通信事業者や放送事業者などが提供する「ネットワーク」、「クラウド・データセンター」、さらに「コンテンツ・サービス」などに分けられる。また、「クラウド・データセンター」と「コンテンツ・サービス」の間など、レイヤー間を機能的につなぐ「ソフトウェア」や利用者に付与される「ID」が果たす役割、横断的領域に「データ」が含まれる点にも留意が必要である。

本章においては、概況としてICTの全体像を俯瞰した上で、分野別の現状・動向を整理していくが、全体の状況として、世界の情報通信産業はデジタル化の進展等を背景に高い成長率が継続していることや、時価総額のランキングが示すとおり、コンテンツ•サービス、クラウド等の上位レイヤーを中心に米国等の海外企業が市場を席巻していることについても認識しておくことが必要である。

1 概況

(1) 情報通信産業のGDP

我が国のGDPは約530兆円(令和元年(2019年))であり、そのうち情報通信産業のGDPは約1割の52.5兆円である。情報通信産業のGDPのうち、通信業・放送業が約2割(12.1兆円。うち通信業が10.2兆円)を占める。

(2)情報通信産業の従業者数

情報通信産業の従業者数は405万人(令和元年(2019年))であり、近年は横ばいで推移している。このうち通信業・放送業の従業者数は、5.2%(21.2万人)である。通信業・放送業は設備産業であり、情報通信産業全体に占める従業者数の割合は、前出のGDPに占める割合と比べて低い。

(3)情報通信産業の労働生産性

情報通信産業の労働生産性は、他の産業の労働生産性と比べて高く、また、令和元年(2019年)までの10年間に30ポイント近く向上している。他方、我が国の情報通信産業の労働生産性(時間当たり付加価値)を海外と比較すると、米国を100としたときに日本は13.6、独国を100としたときに日本は36.5(いずれも数値は平成29年(2017年))に留まるとの指摘があった。

(4)情報化投資

民間設備投資額は令和元年(2019年)までの10年間に約25%増加しているが、そのうち情報化投資は、横ばいの傾向にある。

情報化投資を日米で比較すると、我が国の横ばいの傾向に対して、米国では右肩上がりで増加する傾向にある。情報化投資の内容を日米で比較すると、我が国は、顧客行動や市場の分析強化や事業内容の拡大といった「攻めの投資」が米国と比べて少なく、費用削減などの「守りの投資」が中心となっていることが示されている。

(5)企業研究費

企業研究費の総額は14.2兆円(令和元年(2019年))であり、平成22年(2010年)からの10年間で約20%増加しているが、同じ期間の情報通信産業の研究費は約4兆円の水準で横ばいの傾向にある。

また、企業研究者の数は約50万人(令和元年(2019年))であり、平成22年からの10年間概ね横ばいで推移しているが、情報通信産業の研究者は約17万人(令和元年(2019年))であり、同じ期間中に微減となっている。

(6)ICTの財・サービスの輸出入

ICTの財・サービスの輸出入については、2010年代から、財・サービスともに輸入超過が拡大しており、需給ギャップ(供給不足)の可能性が指摘されている。

財については、スマートフォンやPCの輸入の増加、サービスについては、情報処理サービスに関する輸入の増加が顕著である。外国企業のクラウドサービスの利用も、情報処理サービスに該当するものと考えられる。

2 分野別の現状・動向

(1)ネットワーク、電気通信事業

① ブロードバンドの状況

我が国のインターネットトラヒックは、コロナ禍直前の令和元年(2019年)11月から令和3年(2021年)5月までの1年半の間に約2倍に増加している。これは、それ以前の増加のペース(年率約20%)を大きく上回るものである。移動通信のトラヒックについても、月平均・契約あたりの平均いずれもトラヒックが継続的に増加している。

我が国のブロードバンドは、①固定ブロードバンド回線に占める光回線の割合、②モバイルブロードバンドサービスの普及率のいずれを見てもOECD各国の平均を大きく上回り、世界トップクラスの整備状況にある。

② 電気通信事業の状況

電気通信事業については、売上高の合計は14.9兆円(令和元年(2019年))であり、その内訳を見ると、過去10年間で音声伝送の割合が減少し、データ伝送及びその他の割合が増加している状況にある。

MNO3社の売上高を見ると、平成30年(2018年)から令和2年(2020年)までの期間においては、わずかに減収が続いている。

また、この期間には、関係の法改正が行われたことを含め、総務省による公正な競争環境の確保に向けた取組等により、携帯電話料金が大幅に引き下げられ、世界的に見ても、遜色のない水準となっている。

(2)ネットワーク高度化の動向

① 5G及び次世代ネットワーク

5Gは令和2年(2020年)に商用サービスが開始されたところであり、MNO各社がネットワークの構築を進めている。令和2年度(2020年度)末の人口カバー率は30%台にとどまっていたところであるが、今後は総務省が令和4年(2022年)3月29日に公表したデジタル田園都市国家インフラ整備計画(以下「整備計画」という。)に沿った人口カバー率の向上とともに、5Gのサービスの普及が期待される。Beyond 5Gを巡る国際的な研究開発競争は年々激化しており、我が国としても、これまでの研究開発戦略や知財・国際標準化戦略をさらに具体化した上で産学官が一体となってこれを推進することによって、開発成果の社会実装や市場獲得等の実現と、我が国の国際競争力強化や経済安全保障の確保につなげていくことが必要とされており、情報通信審議会でも、令和3年(2021年)9月に「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」について諮問を受け、我が国が重点的に取り組むべき研究開発課題やその推進方策を含むBeyond 5Gに向けた研究開発戦略の具体化を進めており、令和4年夏に答申を取りまとめる予定である。

この研究開発戦略については、Beyond 5Gの技術開発を我が国がリードし、大阪・関西万博を起点として令和7年(2025年)以降順次、情報通信インフラの超高速化と省電力化(光ネットワーク技術や光電融合技術)、陸海空をシームレスにつなぐ通信カバレッジの拡張(衛星やHAPS3等の非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network :NTN)技術)、利用者にとって安全で高信頼な通信環境(セキュアな仮想化・オーケストレーション技術)等を実現する開発成果の社会実装と国際標準化を強力に推進する方向性で具体化が進められている。

② 光ネットワーク

我が国のFTTHの世帯カバー率は、令和2年度(2020年度)末で99.3%(39万世帯が未整備)であり、世界トップレベルの整備状況を誇る。今後も整備計画に沿って未整備世帯における整備が進展することが期待される。また、インターネットをはじめ海外との通信のために敷設されている海底ケーブルについては、アルカテルサブマリンネットワーク、サブコム、日本電気株式会社(以下「NEC」という。)の3社がシェアを争う構図になっている。

近年のデータ通信量の爆発的な増加とそれに伴う消費電力の爆発的な増加に対し、半導体の微細化による性能向上が限界に近付いてきており、今後は通信とコンピューティングの双方において革新的な能力向上が必要とされている。そのような中で、我が国では、日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)を中心として、ネットワーク、コンピューティング、半導体の全てに光ベースの技術を導入した技術革新の実現に向けた取組が進めてられており、パラダイムシフトや近い将来のゲームチェンジャーとして期待されている。

③ 宇宙ネットワーク等

HAPS、衛星コンステレーションを含む衛星通信、宇宙コンピューティングネットワーク等の非地上系のネットワーク(以下「宇宙ネットワーク等」という。)は、既存の地上系のインフラではカバレッジが難しい場面(例:離島や山間部等の条件不利地域や、海上、上空で通信を行う場合、災害等によって地上系のネットワークが寸断される場合等)においても安定的な通信を確保する手段としてのみならず、より精度の高い測位や資源探査等のセンシングにも活用されることが期待されている。

宇宙ネットワーク等の構築に向けては、ソフトバンク株式会社とその子会社であるHAPSモバイル株式会社が「HAPSアライアンス」を通じて成層圏通信プラットフォームの構築を目指している。低軌道衛星を活用した衛星コンステレーションの導入については、KDDI株式会社がスペースX、ソフトバンク株式会社がOneWeb、楽天モバイル株式会社は米国の新興衛星通信事業者ASTとの協業を通じてサービスエリアの拡張を計画している。NTTとスカパーJSAT株式会社は、静止衛星軌道上にデータセンター機能を持つ衛星を配備する宇宙データセンター事業や宇宙RAN等に関する事業を行う宇宙衛星事業の中核となる合弁会社「株式会社Space Compass」を令和4年(2022年)7月に設立することを発表している。

海外においては、既に宇宙空間を活用したインターネット接続サービスが本格化しており、スペースXのスターリンクは衛星コンステレーションを用いてブロードバンドアクセスをグローバルに提供しようとしている。また、米国は、国家防衛宇宙体系(NDSA: National Defense Space Architecture)の構想を具体化し、最大1,200基の衛星によりデータ通信とミサイル監視を行う衛星コンステレーションの構築を進めている。一方、欧州委員会は、令和4年(2022年)2月、欧州全域の市民・企業向けに信頼できるネットワークへのアクセスを保証するため、令和12年(2030年)までに60億ユーロの予算を投入して衛星コンステレーション等の宇宙インフラを構築する構想を公表している。

④ Open RAN

携帯電話ネットワークについては、Open RANとして、オープンなインターフェース仕様に基づいて機能を分離しマルチベンダ化を可能としたり、仮想化技術(vRAN)により柔軟な機能拡張や運用等を可能としたりする取組が進展しており、ベンダロックインとサプライチェーンリスクの双方を回避するためのソリューションとして期待されている。現にNECや富士通株式会社などの我が国のベンダが、海外の通信事業者からの受注について発表しているところである。

他方、これまでは通信事業者がコアネットワークを自前で構築・運用することが一般的であったが、最近では、海外を中心に、通信事業者が、仮想化されたコアネットワークを提供する企業のソリューションを活用するケースが増加してきている。実際にハイパースケール事業者がアウトソース先として仮想化コアやOSS/BSSを担う事例も出てきているところである。
コアネットワークの仮想化については、4Gのネットワークではあるが、楽天モバイル株式会社が世界で初めてオープンで完全仮想化されたアーキテクチャを採用し、複数のベンダから機器を調達し、仮想化されたネットワークを実装している。これによって設備投資は従来の40%、運用コストは30%削減できたとされている。楽天モバイル株式会社は現在、NECの5G無線機を採用し、完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークプラットフォーム「楽天Symphony」を自社の5G基盤として構築している。

(3)端末・機器

通信機器市場に関しては、ネットワーク関連製品及び移動体通信基地局関連製品は今後堅調に推移するものの、スマートフォンの普及の進展に伴う新規需要の減少、移動体通信端末の買い替えサイクルの長期化、音声関連製品におけるスマートフォン利用の増加に伴う固定電話端末需要の減少により、全体としては減少が緩やかに続くという見通しが指摘されている。

移動体分野では、携帯電話基地局の国別シェアは、大手のベンダを抱える中国、スウェーデン、フィンランドの順に、スマートフォンの国別シェアは、米国、中国、韓国の順になっており、我が国のシェアは、いずれも低い。

固定分野では、ルータやスイッチ等の通信機器は、米国のシェアが圧倒的に高く、中国がこれに続いている。反面、画像センサーRF半導体等のデバイスや産業用ロボットスマートメーター等のIoT関連機器は、通信機器と比べ、我が国が世界市場で競争力を有している。

(4)クラウド・データセンター

世界市場で見ると、データセンターやクラウドサービスは地域を問わず成長産業となっている。世界全体でのインターネットの通信量の増加がこれを支えている。国別シェアで見ると、サーバやストレージを含め、米国のシェアが圧倒的である。

我が国のクラウドサービスについては、グローバルに事業を展開しているハイパースケール事業者の伸張が続く一方、従来のSIerをはじめとするITサービス事業者や、不動産やヘルスケア等の業界特化型のサービスを提供する我が国の事業者も活発に事業を展開している。パブリッククラウドのサービスについては、今後もハイパースケール事業者が市場を牽引していくものと予想されている。

我が国のデータセンターについては、ハイパースケール事業者が建設を進めており、ハイパースケール事業者のデータセンターの総ラック/稼働ラックは令和7年(2025年)までに2倍以上に増加すると予測される一方、ハイパースケール事業者以外のデータセンターの総ラック/稼働ラックは、老朽化や採算性の悪化したデータセンターの閉鎖により、減少が予測されている。

今後もハイパースケール事業者がパブリッククラウドの市場を牽引していくことが予想されているが、我が国の事業者は、事業展開の規模等の面では劣るものの、プライベートクラウドの構築をはじめ、きめ細やかな設計や利用者対応等の点で優位なものもあることが指摘されている。また、データセンターについては、近年の国際情勢の変化を受け、香港を拠点とするデータセンターの事業戦略の見直しが進む中で、我が国にもアジアのハブとしての拠点構築・誘致の機会があり、我が国の事業者においても、増床や自然災害のリスクを踏まえた分散化の検討すべきタイミングにあることが指摘されている。

(5)サービス・ソリューション

① eコマース市場、電子決済市場の状況

我が国のeコマース(電子商取引)市場の規模は約12.2兆円(令和2年(2020年))であり 、対前年比+21.7%であった。このうち、楽天グループ株式会社の流通総額が4.5兆円(対前年比+19.9%)、Zホールディングス株式会社の流通総額が3.2兆円(対前年比+24.4%)を占める。これに次いで、アマゾンジャパン合同会社の流通総額が204億6,100万ドル(約2.5兆円(1ドル125円換算)、対前年比27.8%)となっており、この3社でeコマース市場の8割超を占めているのが現状である。

また、我が国のEC化率(全ての商取引額(商取引市場規模)に対する電子商取引市場規模の割合)については、8.08%(令和2年(2020年))となっており、これは中国(30%程度で推移)や米国(14%程度で推移)と比べて低く、我が国のeコマース市場の規模にはまだ成長の余地があると考えられる。

我が国のキャッシュレス決済の比率は年々上昇しており、令和2年(2020年)には、29.7%となっている。キャッシュレス決済の内訳として、クレジットカード、コード決済、デビッドカードについて比較すると、それぞれの利用額は、クレジットカードが最も多く74兆円であり、コード決済が4.2兆円、デビッドカードが2.2兆円であった。

また、普段の支払手段(複数回答可)に関する調査結果によると、「現金」が84.8%と最も多く、クレジットカード(69.6%)、タッチやQRコードを含むスマホ決済(43.6%)、カード型の交通系電子マネー(24.4%)、カード型の交通系以外の電子マネー(20.2%)、デビットカード(7.4%)と続いている。「最も利用しているQRコード決済」では、「PayPay」が45.4%、「d払い」と「楽天ペイ」がそれぞれ16.7%、「au PAY」(13.5%)、「メルペイ」(3.0%)と続いている。

キャッシュレス決済の比率を諸外国と比較すると、我が国のキャッシュレス決済比率は主要国と比べてまだまだ低い。これに対し、「成長戦略フォローアップ」(令和元年(2019年)6月21日閣議決定)においては、「2025年6月までに、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す」としているところである。

② ネットサービス市場(ポータル・検索、SNS、ネットニュース等)の状況
(a) ポータル・検索等

モバイル・タブレットのOSではiOSとAndroidでほぼ100%、ブラウザではChromeとSafariで約8割、検索サービスではGoogleが約75%となっており、我が国のこれらの市場は、いずれも外国のサービスによる寡占状況にある。

(b) SNS・ネットニュース

総務省が令和3年(2021年)8月に公表した「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の結果によると、テレビの視聴時間が横ばいで推移する一方、インターネットの利用時間が増加している。また、テレビの視聴時間とインターネットの利用時間は、年代によって異なり、30代まではインターネットの利用時間のほうが長く、それ以上の年代ではテレビの視聴時間のほうが長くなっている。

インターネットの利用時間の内訳については、動画投稿・共有サービスやSNS(ソーシャルメディアサービス)に充てられる時間が多くなっている。また、SNSの利用については、最もサービスの利用率が高かったのはLINEで90.3%、TwitterとInstagramが42.3%、Facebookが31.9%などとなっている。

インターネットニュースは、76.4%の者が見ており、そのアクセス先としては、「ポータルサイト」(81.8%)が突出して多く、「SNS」(36.6%)、「キュレーションアプリ」(16.8%)、「新聞社・通信社・テレビ放送局の公式サイト」(15.7%)の順となっている10。年代別に見ると、30代以上では「ポータルサイト」、20代以下では「SNS」が最も多くなっている。

ポータルサイトのニュースアプリの利用率については、Yahoo!ニュースが63.5%、スマートニュースが56.2%と、この二つのアプリが大きな割合を占めている。以下、LINE NEWS(37.0%)、グノシー(19.6%)、Googleニュース(19.5%)と続いている。

③ 5G・IoTソリューションの動向

5Gの商用サービスは令和2年(2020年)に開始されており、今後は、SA(スタンドアロン)やミリ波帯の活用により、5Gの特長である多数同時接続・超低遅延・超高速を最大限発揮することが期待されている。特に、令和4年(2022年)前半に仕様策定を完了予定の「リリース17」では、産業用の機能が追加される予定であり、それにより、5Gによる測位を改善し、FA(ファクトリーオートメーション)や物流、リモート制御のアプリケーションに不可欠なレイテンシを低減する機能も導入される。これらの機能は、特に遠隔制御や遠隔操縦のほか、ARやXRの領域での活用が期待される。

こうしたサイバー空間とフィジカル空間が高度に融合し、低消費電力、リアルタイム、高信頼、超セキュアなIoTシステムを構築することは、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足や社会インフラの維持・強化など、持続型社会を実現するためのソリューションを提供するものとなる。これらのシステムは、センサー、コントローラー(AI)、アクチュエーター、これらをつなぐ通信ネットワークから構成されるものであり、そのうちセンサーとアクチュエーターは「第1章2(3)端末・機器」でも触れたとおり我が国が国際競争力を有する領域である。また、こうしたシステム構築に当たってのきめ細やかな擦り合わせの部分は我が国がこれまでも強みとしてきたところである。

こうしたIoTシステムの構築に向けて、通信事業者は、オープンイノベーション拠点を設置し、パートナープログラムを通じ、研究機関やスタートアップ企業などとの協業を進めており、今後の5Gの高度化に合わせ、こうした協業を通じたソリューションの提供が行われることが期待される。

④ Web 3.0、ブロックチェーン・NFTの動向

ブロックチェーンは、暗号、P2P、分散合意形成などの技術を基盤とするものであり、情報を共有しても改ざんされないこと、価値流通の仕組みを作ることができること、価値のトレーサビリティを担保することができることなどの特徴がある。インターネットが世界中の計算機や機器をつなげることで誰もが簡単に情報を発信・検索・活用できる「情報伝達のプラットフォーム」となったのに対し、データの真正性を保証して価値の共有と交換が簡単にできる基盤を提供することにより誰もがそこにある情報を信用できる「信頼のプラットフォーム」となる可能性があるものと指摘されている。

ブロックチェーンについては、サプライチェーンの信頼性向上に向けて、貿易管理(発送、通関、荷役、受取などの手続)、車両や航空機の利用状況管理、ダイヤモンドなどの高級品の真贋証明、食品のトレーサビリティなどで活用されている事例があり、現在も、その特色を活かしたアプリケーションの実証が行われているが、暗号資産への適用を除けば、多くはブロックチェーンの要素技術の適用は一部にとどまるものである。

これに対し、近年は、ブロックチェーンを基盤とする分散化されたネットワーク上で、特定のプラットフォームに依存することなく自立したユーザーが直接相互につながる新たなデジタル経済圏が構築されようとしており、電子メールとウェブサイトを中心とした「Web 1.0」、スマートフォンとSNSに特徴付けられる「Web 2.0」に続く次世代のフロンティアとして「Web 3.0」とも言われている。

Web 3.0時代のデジタル経済圏を力強く拡大していく起爆剤と考えられているのが、Non-Fungible Token(NFT:非代替性トークン)であり、ブロックチェーン上で発行される唯一無二(非代替)のデジタルトークン(証票)である。改ざんが困難であり、取引の真正性を証明できることから、コミュニティの会員証明や報酬、決済手段として利用することで、多様なステークホルダーの参加が可能となる分散型の自律的な新しい組織(DAO, Decentralized Autonomous Organization) が国内でも生まれはじめており、地方活性化や社会課題解決の新たなツールとなる可能性が注目されている。

こうした取組は、これまでの中央集権的なデータやユーザーの囲い込み及び株主中心の資本主義とは異なる、著作者や個人対個人の繋がり、コミュニティに焦点を当てた新しい成長と分配の在り方を具体化する基盤となり得るものとして期待されている。

⑤ メタバースの動向

メタバースとは、インターネット上の仮想空間であり、利用者はアバターを操作して他者と交流するほか、仮想空間上での商品購入といった試験的なサービスも行われている。令和3年(2021年)10月、SNS大手のフェイスブックが社名をMeta(メタ)に変更し、VRを活用したサービスを提供している。また、米Epic Gamesの「Fortnite」は、ゲームの他にコミュケーションツールも提供しており、昨今のブームの火付け役の一つとして挙げられる。

国内では、グリー株式会社がメタバース事業への参入を発表し、今後2~3年で100億円規模の事業投資を行う計画である。我が国最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」は、テーマパークやスポーツイベントを手掛け、公開イベント数は年間1,500以上、1,000万人超を動員している。

経済産業省の報告書(「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析」報告書)によると、メタバースの今後の活用としては、①病院の手術や火災現場の消火活動の疑似体験によって訓練等を効率化する、②仮想空間の商業施設「バーチャルマーケット」等を通じたアバターやデジタルアイテムの販売、③消費者との接点づくりやコミュニケーションへの活用、といった用途が想定されているところである。

(6)コンテンツ・放送関連市場

我が国の放送事業者の売上高は、近年は約3.5兆円で横ばいとなっている。また、放送事業者の営業利益率は、特に地上放送事業者において、近年低下してきている。

放送の視聴動向については、「1日15分以上TVを見る人の割合」は全体的に減少傾向にあり、その中でも、20代で減少幅が大きい。

また、我が国の広告費は、平成30年(2018年)に、インターネット広告が地上波TVを上回り、その後差が拡大している。

世界の動画配信サービスの市場規模は、近年、毎年大幅に増加してきている。そのシェアの過半は米国が占めており、我が国のシェアは低い。

我が国の動画配信サービスの状況については、令和3年(2021年)の調査では、利用経験がある者の割合は61.2%、そのうち月額料金を支払って利用している者の割合は62.3%であった。現在月額料金を支払って利用している動画配信サービスは、「Amazon Prime Video」のシェアが高く、「Netflix」、「Hulu」が続いており、外国の事業者のサービスが上位を占めている。

(7)サイバーセキュリティ

国立研究開発法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。)では、大規模サイバー攻撃観測網であるNICTERにおいて、未使用のIPアドレス30万個(ダークネット)を活用し、グローバルにサイバー攻撃の状況を観測している。観測されたサイバー攻撃関連の通信パケット数は、平成30年(2018年)には年間2,169億パケットであったものが、令和3年(2021年)には5,180億パケットとなるなど、3年間で約2.4倍に増加していることが見て取れる。また、観測された通信を分析すると、IoT機器を狙ったとみられる通信の割合が依然トップである一方で、対象ポートが多様化している様子が伺える。

(8)ICT人材

令和3年版情報通信白書では、日本、米国、ドイツの3か国の企業モニター調査の結果を示し、DXを推進する上でのデジタル人材不足の深刻化を指摘している。人材不足はいずれの国でも上位の課題として位置付けられており、特に我が国では「人材不足」を感じる企業が5割を超え、米国の約2倍となっている。実際に、生産性の向上や需要動向にもよるが、令和12年(2030年)に最大で79万人のICT人材が不足するという試算もある。

さらに、「不足しているデジタル人材の確保・育成に向けて各企業がどのように取り組んでいるか」という問いに対し、我が国では「社内・社外研修の充実」を挙げる企業が多い一方、「特に何も行っていない」との回答比率も高い。この点については、我が国の企業の人的投資(OJTを除くOFF-JTの研修費用)は、平成22年(2010)-平成26年(2014年)に対GDP比で0.1%にとどまり、米国(2.08%)やフランス(1.78%)など先進国に比べて低い水準にあり、かつ、近年さらに低下傾向にあることが指摘されている。

企業による人的投資については、機関投資家を中心に企業に対して人材マネジメント・人的資本の情報開示を求める動きが加速している。米国証券取引委員会(SEC)は上場企業に対して「人的資本の情報開示」を義務づけると発表しており、ドイツ銀行のように国際標準化機構(ISO)の国際規格「ISO 30414」に即したHRレポートを公開している企業も出てきている。

なお、ICT人材の現状については、以下のような指摘もある。

  • 令和元年(2019年)時点で日本の労働者10,000人あたりのデジタル専門家は62人に対し、米国は156人であり、日本は令和7年(2025年)までに43万人以上のデジタル専門家を追加する必要がある。
  • OECDが平成30年(2018年)に発表したPISA指標では、日本は数学で世界6位、科学で第5位であった反面、令和元年(2019年)のある調査では日本の学部生でコンピュータサイエンス系の授業を履修していた割合は1%であるに対し米国は4%であった。
  • 日本は歴史的に機械及び電気工学に焦点を当てた学位を重要視、高品質な製品を提供することに重点を置いたエンジニアリング文化があり、ソフトウェアとサービスが後回しになっているのではないか。

また、ICT人材の育成・確保に向けた取組として、他国でも人材格差への対処として海外からの専門家の誘致が行われており、我が国においても、令和2年(2020年)6月時点で推定24,000人が高度専門職ビザを保持し、多くの活動に従事しているとの指摘や、宗教・文化に配慮したダイバーシティに向けた取組を行い、64か国の外国人を採用し従業員の外国人比率56.1%となっている通信事業者の事例もある。

ICTの人材育成のためには、リカレント教育や情報リテラシーの向上に向けた取組をはじめ、包括的に取り組んでいくことが必要であり、これらの取組については、現在、デジタル田園都市国家構想実現会議等の政府会議の場においても議論されているところである。

第2章 情報通信分野の政策の動向

第2章では、情報通信政策の方向性の検討に当たり踏まえるべきものとして、情報通信政策が関係する政府全体の戦略について概観する。

1 デジタル田園都市国家構想実現会議(議長:内閣総理大臣)

デジタル田園都市国家構想実現会議は、地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、構想の具体化を図るとともに、デジタル実装を通じた地方活性化を推進するため、令和3年(2021年)11月に設置された。

構想の具体化に向けた論点として、①地方の課題を解決するためのデジタル実装(地方創生テレワーク、スマート農業、情報コードの統一化等)、②デジタル人材の育成・確保(地域で活躍するデジタル人材の確保等)、③地方を支えるデジタル基盤の整備(データ連携基盤、5G、データセンター等世界最高水準のインフラ整備の加速)、④誰一人取り残されない社会の実現(高齢者等へのデジタル活用支援等)が挙げられている。

内閣府では、デジタル田園都市国家構想推進交付金や地方創生推進交付金等を活用して地方のデジタル実装を支援している。総務省では、デジタル田園都市国家構想の実現のためには光ファイバ、5G、データセンター/海底ケーブル等のデジタル基盤の整備が不可欠であることから、一体的かつ効果的な対策を推進するため、前出の整備計画を策定し、公表している(令和4年(2022年)3月29日)。

2 デジタル臨時行政調査会(会長:内閣総理大臣)

デジタル臨時行政調査会は、デジタル化の急速な進展が世界にもたらす根本的な構造変化、発展可能性の拡大を踏まえ、デジタル改革、規制改革、行政改革に係る横断的課題を一体的に検討し実行することにより、国や地方の制度・システム等の構造変革を早急に進め、個人や事業者が新たな付加価値を創出しやすい社会とすることを目的として、令和3年(2021年)11月に設置された。

同調査会では、デジタル化の力を最大限発揮することで経済成長を実現するとともに、現場の人手不足の問題を解消し、生産性を高め、所得の向上につなげ、先端的な技術を迅速に所管省庁の現場が取り込むことで社会全体のDXを加速するため、デジタル原則に基づき、4万以上の法令についてアナログ的な規制を洗い出し、3年間でデジタル原則への適合を目指すこととしている。

3 デジタル社会推進会議(議長:内閣総理大臣)、デジタル社会構想会議(座長:村井純 慶應義塾大学教授)

デジタル社会推進会議は、令和3年(2021年)9月1日のデジタル社会形成基本法及びデジタル庁設置法の施行に伴い、これまで高度情報通信ネットワーク社会形成基本法を根拠に内閣に設置されていた「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)」が廃止されたことを受けて設置されたものであり、①デジタル社会の形成のための施策の実施を推進すること、②デジタル社会の形成のための施策について必要な関係行政機関相互の調整をすること、の事務を司ることとされている。

デジタル社会構想会議は、令和3年9月1日施行のデジタル社会形成基本法の趣旨を踏まえ、我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与するデジタル社会の形成に向け、同法に基づく重点計画等について調査審議を行うために設置された。

同会議では、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年(2021年)12月24日閣議決定)の策定や改定に向けた審議のほか、データ戦略の推進やマイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本改善等の個別のテーマに係る検討が行われている。

【参考】デジタル社会の実現に向けた重点計画の概要

重点計画は、デジタル社会形成基本法に基づき、デジタル社会の実現に向けて、政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を明記し、関係府省庁が構造改革や個別の施策に取り組み、それを世界に発信・提言する際の羅針盤となるものである。

デジタル社会形成のための基本原則として、デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(令和2年(2020年)12月25日)に掲げられた10原則(①オープン・透明、②公平・倫理、③安全・安心、④継続・安定・強靱、⑤社会課題の解決、⑥迅速・柔軟、⑦包摂・多様性、⑧浸透、⑨新たな価値の創造、⑩飛躍・国際貢献)や、国の行政手続のオンライン化(デジタル手続法)に係るデジタル3原則(デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッドワンストップ)、関係府省庁が情報システムの整備を行う際に徹底すべき「クラウド・バイ・デフォルト原則」などが挙げられ、基本戦略としては、①デジタル社会の実現に向けた構造改革、②デジタル田園都市国家構想の実現、③国際戦略の推進、④安全・安心の確保、⑤包括的データ戦略の推進、⑥デジタル産業の育成が挙げられている。

4 総合科学技術・イノベーション会議(議長:内閣総理大臣)

総合科学技術・イノベーション会議は、我が国全体の科学技術を俯瞰し、関係省庁より一段高い立場から、総合的・基本的な科学技術政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的として設置され、内閣総理大臣等の諮問に応じ、①科学技術の総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策、②科学技術に関する予算、人材等の資源の配分の方針、その他の科学技術の振興に関する重要事項、③研究開発の成果の実用化によるイノベーションの創出の促進を図るための環境の総合的な整備、等の事項について調査審議を行っている。

「科学技術基本計画」(第5期、平成28年(2016年)1月22日閣議決定)では、ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を示すSociety 5.0という新しいコンセプトを打ち出し、Society 5.0に向けた科学技術イノベーション政策を強力に推進するための総合的な計画が定められている。

「科学技術・イノベーション基本計画」(第6期、令和3年(2021年)3月26日閣議決定)においては、Society 5.0の実現に向けて、①サイバー空間とフィジカル空間の融合による持続可能で強靱な社会への変革、②新たな社会を設計し、価値創造の源泉となる「知」の創造、③新たな社会を支える人材の育成、の3点に重点的に取り組むこととし、具体的な取組がまとめられている。

総務省では、科学技術・イノベーション基本計画に関し、関係省庁と連携し、①デジタル社会に対応した次世代インフラやデータ•AI利活用技術の整備・研究開発に係る取組、②Beyond 5Gの実現に資する要素技術を確立するための研究開発基金の活用等による研究開発の促進、③価値共創型の新たな産業を創出する基盤となるイノベーション・エコシステムの形成に向けた、企業における詳細な研究開発動向を把握するための統計整備の方法に関する検討、④次世代に引き継ぐ基盤となる都市と地域づくりに向けた、スマートシティセキュリティガイドラインの随時改訂・国内展開などを実施している。

5 統合イノベーション戦略推進会議(議長:内閣官房長官)

統合イノベーション戦略推進会議は、イノベーションに関連が深い司令塔会議である総合科学技術・イノベーション会議、知的財産戦略本部、健康・医療戦略推進本部、宇宙開発戦略本部及び総合海洋政策本部並びに地理空間情報活用推進会議について、横断的かつ実質的な調整を図るとともに、「統合イノベーション戦略」(平成30年(2018年)6月15日閣議決定)を推進するために設置された。
同戦略は、それまでの科学技術イノベーション総合戦略に代わり、各年の科学技術・イノベーション政策の具体化・重点化を行うものであり、直近では、「統合イノベーション戦略2021」(令和3年(2021年)6月18日閣議決定)が策定・公表されている。

特に量子技術に関しては、イノベーション政策強化推進のための有識者会議「量子技術イノベーション」(量子技術イノベーション会議)が、平成31年(2019年)2月、統合イノベーション戦略推進会議の下、統合イノベーション戦略の推進に関する専門の事項を調査することを目的として設置された。

同会議では、調査審議の結果として、令和2年(2020年)1月、「量子技術イノベーション戦略」を取りまとめ、公表した。同戦略では、量子技術イノベーション創出に向けて、①重点領域の設定、②量子拠点の形成、③国際協力の推進、を掲げ、量子コンピュータのソフトウェア開発や量子暗号などで世界トップを目指すこととしている。また、同戦略策定以降も、量子技術に関する国際競争の激化など、量子技術を取り巻く環境が大きく変化していることを踏まえ、量子技術を活用し未来社会を見据えて社会全体のトランスフォーメーションを実現していくため、令和4年(2022年)4月に新たな戦略として「量子未来社会ビジョン」を策定した。本ビジョンにおいては、量子技術を社会経済システム全体に取り込み、従来型(古典)技術システムとの融合により(ハイブリッド)、我が国の産業の成長機会の創出・社会課題の解決、最先端の量子技術の利活用促進(量子コンピュータ・通信等のテストベッド整備等)、量子技術を活用した新産業・スタートアップ企業の創出・活性化等を目指し、取組を推進することとしている。
NICTでは、量子暗号通信の適正な社会実装を加速するため、実利用を想定した検証環境を整備し、様々な観点からの試験を実施しているほか、ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)等において、我が国の量子暗号ネットワーク技術の国際標準化に向けた取組を主導している。

6 サイバーセキュリティ戦略本部(本部長:内閣官房長官)

サイバーセキュリティ戦略本部は、今後3年間のサイバーセキュリティに係る諸施策の目標と実施方針を示す、サイバーセキュリティ戦略(令和3年(2021年)9月28日閣議決定)を公表した。同戦略では、それまでのサイバーセキュリティ戦略で掲げた5つの原則(①情報の自由な流通の確保、②法の支配、③開放性、④自律性、⑤多様な主体の連携)を堅持しつつ「自由、公正かつ安全な」サイバー空間を確保することを基本理念とし、(1)デジタルトランスフォーメーションとサイバーセキュリティの同時推進、(2)公共空間化と相互連関・連鎖が進展するサイバー空間全体を俯瞰した安全・安心の確保、(3)安全保障の観点からの取組強化、に向けた施策を推進することとしている。

総務省では、同戦略を踏まえ、ICTインフラやサービス全般のサイバーセキュリティ確保が極めて重要な政策課題であるとの考えの下、IoT・5Gにとどまらず、広くICTインフラ・サービス等に関する対策を踏まえた「ICTサイバーセキュリティ総合対策2021」(令和3年(2021年)7月)を策定し、(1)電気通信事業者における安全かつ信頼性の高いネットワークの確保のためのセキュリティ対策の推進、(2)COVID-19への対応を受けたセキュリティ対策の推進、(3)デジタル改革・DX推進の基盤となるサービス等のセキュリティ対策の推進、(4)サイバーセキュリティ情報に関する産学官での連携・共有等の促進、の4つを重点的に推進すべき施策として取り組むこととしている。

7 経協インフラ戦略会議(議長:内閣官房長官)

経協インフラ戦略会議は、平成25年(2013年)3月、世界各地の現場で働く邦人の安全を最優先で確保しつつ、我が国企業によるインフラ・システムの海外展開や、エネルギー・鉱物資源の海外権益確保を支援するとともに、我が国の海外経済協力(経協)に関する重要事項を議論し、戦略的かつ効率的な実施を図るために設置された。

「インフラシステム海外展開戦略2025」(令和2年(2020年)12月10日経協インフラ戦略会議決定、令和3年(2021年)6月17日改訂)は、インフラ海外展開を取り巻く急速な環境変化や相手国・地域のビジネス・投資環境を含めた様々な課題を踏まえ、従来のインフラシステム輸出戦略を抜本的に見直し、令和3年(2021年)以降のインフラ海外展開の方向性を示すため、今後5年間を見据えた新たな目標を掲げた戦略を策定したものである。同戦略では、政府として達成を目指すものとして、①カーボンニュートラル、デジタル変革への対応等を通じた産業競争力の向上による経済成長の実現、②展開国の社会課題解決、SDGs達成への貢献、③質の高いインフラの海外展開の推進を通じた「自由で開かれたインド太平洋」の実現等の外交課題への対応、の3本柱を挙げている。

また、我が国企業によるインフラシステムの海外展開等を推進するための経協インフラ戦略会議を補佐し、「インフラシステム海外展開戦略 2025」(令和2年(2020年)12月10日経協インフラ戦略会議決定)に基づく具体的施策の在り方等について議論を行うため、「インフラシステム海外展開戦略2025の推進に関する懇談会」(座長:高橋進 株式会社日本総合研究所チェアマン・エメリタス)が設置された。

総務省では、「総務省海外展開行動計画2020」に基づき、デジタル分野や公共・防災分野のより実質的な海外展開を推進すべく、移動体通信網や海底ケーブルなどのデジタルインフラや、医療・農業分野等でのデジタル利活用に係るプロジェクトに加え、郵便、デジタル・ガバメント(電子政府)、統計、消防、行政相談などの国民サービス向上に資する重点プロジェクトを推進することとしている。

8 デジタル市場競争本部(本部長:内閣官房長官)

デジタル市場競争本部は、令和元年(2019年)9月、グローバルで変化が激しいデジタル市場における競争やイノベーションを促進するため、競争政策の迅速かつ効果的な実施を目的として、内閣に、デジタル市場の評価並びに競争政策の企画及び立案並びに国内外の関係機関との総合調整を行うために設置された。本部の下には、デジタル市場に関する重要事項の調査審議等を実施するデジタル市場競争会議(議長:内閣官房長官)や、現状の分析をはじめ、専門的、多角的な検討を深めていくデジタル市場競争会議ワーキンググループ(座長:依田高典 京都大学大学院経済学研究科教授)等が設置されている。

同本部では、オンラインモールやオンライン広告等、デジタルプラットフォーム事業者(以下「DPF事業者」という。)を巡る市場の健全な発達のため、これらの事業における競争環境の調査を行い、その結果を踏まえて、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(令和2年(2020年)法律第38号。以下「透明化法」という。)が制定され、令和3年(2021年)2月1日に施行されている。令和4年(2022年)5月現在、一定の規模以上のオンラインモールやアプリストアを運営するDPF事業者が透明化法の適用対象となっている。

同本部は、透明化法の成立後、モバイルOSを基盤とするレイヤー構造がデジタル市場の競争環境に与える影響やモバイル・エコシステム、ボイスアシスタント及びウェアラブル端末の市場の状況等について調査を行い、令和4年(2022年)4月に、その結果を取りまとめた中間報告を公表した。

9 知的財産戦略本部(本部長:内閣総理大臣)

知的財産戦略本部は、令和3年(2021年)7月13日、「知的財産推進計画2021~コロナ後のデジタル・グリーン競争を勝ち抜く無形資産強化戦略~」を策定、公表した。同計画は、DXによる産業構造の転換、コンテンツ産業を取り巻く環境変化、知財を巡る競争の熾烈化といった現状を踏まえ、①知財の投資・活用を促す資本・金融市場の機能強化、②市場拡大に向けた標準の戦略的な活用の推進、③データの活用促進に向けた環境整備、④デジタル時代に適合したコンテンツ戦略、⑤スタートアップ・中小企業/農業分野の知財活用強化、⑥クールジャパン戦略の再構築、に向けた戦略がまとめられている。

②の標準の戦略的な活用については、重点分野としてBeyond 5Gとスマートシティを選定し、関係府省庁を含む産学官の関係者で構成する特別チームを設置することとし、「Beyond 5G新経営戦略センター」等の関係機関・組織と連携し、必要な取組を推進していくこととしている。また、同計画の重点項目の工程表においては、③のデータの活用促進については情報銀行の社会実装の推進に向けた取組、④のコンテンツ戦略についてはオンラインの効果的な活用を含めた放送コンテンツの海外展開の推進が含まれている。

10 経済安全保障推進会議(議長:内閣総理大臣)

経済安全保障推進会議は、社会経済構造の変化、国際情勢の複雑化等により、安全保障の裾野が経済分野に急速に拡大する中、経済安全保障の取組を強化・推進するために設置されたものである。

本会議においては、大きな方向性として、①自律性の向上(基幹インフラやサプライチェーン等の脆弱性解消)、②優位性ひいては不可欠性の確保(研究開発強化等による技術・産業競争力の向上や技術流出の防止)、③基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持・強化が挙げられ、戦略的な国際連携や産学官の連携を含む、各種の政策手段を通じて政府一体となって対応を進めていくこととしている。また、我が国の経済安全保障を強化するために早期の法制化が必要な課題として、①重要物資や原材料のサプライチェーンの強靱化、②基幹インフラ機能の安全性・信頼性の確保、③官民で重要技術を育成・支援する枠組み、④特許非公開化による機微な発明の流出防止の4つが示されている。

法制化に向けては、「経済安全保障法制に関する有識者会議」が開催され、「経済安全保障法制に関する提言」が公表されている(令和4年(2022年)2月1日)。この提言を踏まえ、内閣官房から、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案が第208回通常国会に提出されている(令和4年(2022年)2月25日)。

第3章 情報通信政策に対する提言

1.総論

(1)基本的な考え方

近年のめまぐるしい国際情勢の変化の中で、我が国の経済面での独立、生存及び繁栄を確保するためには、他国に対する過度な依存を避けつつ、明確な戦略を打ち立て、主導的に取組を進めていくことが必要である。
我が国は、2030年頃に向けて、ICTを最大限活用し、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(超スマート社会(Society 5.0))の実現を目指しており、こうした強靱で活力があり、Inclusive(誰もが活躍できる)、Sustainable(持続的に成長する)、Dependable(安心して活動できる)な社会の実現に向けて産学民官が連携して取り組む必要がある。

また、デジタルと現実世界が融合していくSociety 5.0においては、パーソナルデータを含む膨大な量のデータが流通し、様々な分野でミッションクリティカルなアプリケーションが実装されていくことになる。こうした中で、情報通信インフラは、国民生活の存立、国家機能の継続と今後の社会経済の発展を支える基幹インフラとして、これまで以上に大きな役割を担うことになる。我が国の経済安全保障の確保のためには、今後、戦略基盤産業としての役割が増す情報通信産業の戦略的自律性の確保と戦略的不可欠性の獲得を目指すことが必要である。

具体的には、我が国が2030年頃に向けてSociety 5.0の実現を目指す過程を通じ、情報通信インフラの高度化と維持に取り組み、研究開発、ソリューション、人材等の整備により情報通信産業全体の国際競争力の強化を図るとともに、その前提となる我が国における自由でかつ信頼性の高い情報空間の構築が必要である。

(2)取組の方向性

戦略の策定に当たっては、まず、2030年頃に我が国が直面していることが想定される社会的な課題を見据えるとともに、我が国の情報通信産業が「デジタル敗戦」とも言われるに至った要因についての振り返りを行うことが必要である。

我が国が直面する社会的な課題としては、まず国内の生産年齢人口の減少が挙げられる。我が国の生産年齢人口は、令和12年(2030年)には6,875万人(平成27年(2015年)比11%減)、令和42年(2060年)には4,793万人(同38%減)になると予想されている。生産年齢人口の減少に伴い、日本経済の相対的な地位の低下が懸念されるとともに、特に地方において物流、公共交通、医療・介護等の生活必需サービスの従業者やそのインフラを支える人員の不足が深刻化することが想定される。また、社会インフラの老朽化や自然災害の激甚化といった課題が顕在化することも想定される。

次に、我が国は「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指して脱炭素社会の構築に取り組んでいるが、社会・経済のデジタル化の進展に伴う通信トラヒックの急増により、令和32年(2050年)にはICT関連の消費電力が平成28年(2016年)比で4,000倍以上に爆発的に増加することが予想されており、SDGsの取組としても重要な課題であり、カーボンニュートラルの実現に向けてICT関連の電力消費量の削減により、グリーンICTを進めることが急務となっている。

また、増加の一途であるサイバー攻撃の脅威や、インターネット上の偽情報や違法・有害情報の増加に対する対応も喫緊の課題となっている。

我が国の情報通信産業の「デジタル敗戦」の要因としては、①ネットワークレイヤーより収益性が高い上位レイヤーのサービスを外国勢に押えられてしまったこと、②投資の回収期間が長い産業構造の中で投資負担に堪えられるシェアや事業規模を維持できなかったこと、③ハードウェア、あるいはシステムをコントロールするソフトウェアの開発で後手に回ってしまったこと、④情報化・デジタル化に向けた投資が十分に行われてこなかったこと等が挙げられる。

2030年頃に向けては、これらの課題や要因をきちんと踏まえた上で、Society 5.0の実現や我が国の国際的なポジションの維持・向上に向けた取組を進めていく必要がある。そのための取組の方向性としては、以下の5つが挙げられる。

まず、生産年齢人口の減少をはじめとする課題解決に向けた研究開発や新技術の実装など、第1章でも触れた「攻めの投資」に転じることである。5GをはじめとするSociety 5.0を支えるインフラやIoT、AI、ビックデータを活用したオートメーションやスマートシティ等のソリューション、それらを支える人材の育成に向けた積極的な投資が必要である。

次に、他国に先んずる先端的な技術開発については、必要となる投資額の大きさにかんがみ、我が国の強み・弱みを分析して投資対象の適切な絞り込みを行うこととともに、国際的な連携体制を構築していくことである。こうした取組を通じ、光電融合技術などのゲームチェンジャーとなり得る新技術の開発・導入を進めて行くことが適当である。

3つ目に、ICTは技術開発のスピードが速く、国際競争が熾烈な分野であり、「技術で勝ってビジネスで負ける」ことにならないよう、国際的な政治・経済の情勢やビジネス・エコシステムの変化を踏まえ、研究開発から実証、実装、海外への展開といった顧客・市場を起点とした「稼ぐ」事業展開のサイクルをきちんと回すことである。なお、経済安全保障の観点からは、国際情勢の動向に絶えず目を光らせ、サプライチェーンの維持・確保等に十分配意する必要がある。

4つ目に、先端技術の開発のみならず、我が国の優れた「ものづくり」の技術とデジタル基盤の融合を通じ、社会課題の解決に向けたソリューションの実装に向けた地方自治体等による取組を積極的に支援することである。テレワークを通じた就労機会の拡大をはじめ、地方からのデジタルの実装とICTのグリーン化に向けた取組を着実に進めることにより、SDGsの実現を図り、国際貢献と日本経済の持続的な成長を実現することが求められる。

最後に、これらの取組の前提となるものとして、自由でかつ信頼性の高い情報空間を構築していくことである。日常生活や経済活動に密接不可分な放送の社会的役割の維持・発展や安心・安全なインターネット環境の構築に向けた取組を続けていくことが求められる。

これらの方向性に沿った取組を実施するためには、ステークホルダーや関係府省庁、総務省の部局間といった全てのインターフェースにおいて、それぞれの役割(縦割り)と横断的な取組(横串)が有機的に連携することが必要であり、総務省においても、体制づくりを検討すべきである。

2. 重点的に取り組むべき事項

基本的な考え方に基づき、当面、以下の8つの領域について重点的に施策を展開することが適当である。施策の立案・実行に当たっては、可能な限り数値的な目標(KPI)と期限を設定し、PDCAサイクルを回すことによって確実な実行を担保する必要がある。

(1) 5Gの普及と高度化、海外展開

5Gは令和2年(2020年)に商用サービスが開始されたが、Society 5.0のベースインフラとしての5Gは機能的にも人口カバー率の面でも発展途上の段階にある。一方で、2030年頃に向けてBeyond 5Gの研究開発も進められている。5Gに関連する技術、機器、システムに関して研究開発、実証、実装、海外展開の各ステージにおける取組を強化するとともに、全体を俯瞰した戦略に基づくリソースの重点的な配分と国際連携の強化が求められる。

国内においては、5Gの人口カバー率の向上に取り組むとともに、用途や地域のニーズに応じ、非居住地域も含めたインフラ整備を進め、SA方式の導入やミリ波帯の活用等による5Gの機能の高度化を通じて、スマート工場、スマート農業、遠隔医療、インフラ監視、自動配送等のソリューションの社会実装を、海外での展開をも視野に入れながら進める必要がある。

また、携帯電話の基地局やネットワークについては、従来から垂直統合型の事業展開が行われており、基地局設備の調達先が特定のメーカーに限られ、通信事業者がこれらのメーカーに依存せざるを得なくなる懸念がある。このため、国内外の通信事業者を中心に携帯電話ネットワークのオープン化(Open RAN)や仮想化(vRAN)の取組が進められている。総務省としても、我が国の5Gインフラの戦略的自律性を確保するとともに5G関連市場における我が国企業の活動を後押しする観点から、有志国と連携してOpen RANやvRANの取組を促進する必要がある。

(1-1) 5Gの人口カバー率の向上

前出の総務省が策定した整備計画では、5Gの親局の全国展開を進めるとともに、5Gの人口カバー率を令和5年度(2023年度)末までに全国95%、令和7年度(2025年度)末までに全国97%、各都道府県90%程度以上を目指すこととしている。総務省では、この目標が達成されるよう、新たな5G用周波数の割当て、補助金等による整備支援、インフラシェアリングの推進、地域協議会を通じた整備ニーズの具体化などを行うこととしている。

5Gの人口カバー率については、整備計画に照らして各社の取組をフォローするとともに、整備計画の着実な実現に向け、総務省においても振興と規制の両面から取り組んでいくことが適当である。

(1-2) 5Gの高度化に係る技術基準の策定等

5Gの効率的な通信エリアの拡大や屋内の通信環境の向上のため、現在総務省では、5Gの中継局やフェムトセル基地局、高出力端末の導入に向けた技術的条件について、令和4年(2022年)秋頃までに結論が得られるよう、検討を実施しているところである。

ローカル5Gについては、さまざまなニーズが顕在化していることから、柔軟な運用を可能とするため、他者土地利用の考え方の再整理、広域利用の検討、免許手続の簡素化等について、令和4年度(2022年度)中に結論が得られるよう、制度改正等に向けた検討を実施しているところである。

このほか、携帯電話をドローンに搭載して上空で利用する際の新たなニーズ(地上高150m以上での利用等)については、令和5年度(2023年度)内に結論が得られるよう、利用を可能とするための検討を実施することとしている。総務省においては、これらの例に限らず、5Gの高度化や利用拡大に向け、必要に応じて制度改正を迅速・適確に行っていくことが必要である。

(1-3) 5GにおけるOpen RANの導入促進と海外展開

携帯電話の基地局やネットワークについては、垂直統合型の事業展開が行われており、例えば基地局設備の調達先が特定のメーカーに限られ、通信事業者がこれらのメーカーに依存せざるを得なくなる懸念がある。この点、国内外の通信事業者は、5Gの導入に当たり、携帯電話ネットワークのオープン化(Open RAN)に向けた取組を進めているところであり、総務省においても、低コストで信頼性の高い携帯電話ネットワークの構築に向けて、異なるメーカーの多様な基地局機器の相互接続性・相互運用性を検証するためのテストベッドの構築や、事業者間の連携に対して積極的な支援を行うとともに、柔軟な機能拡張や運用等を可能とする仮想化技術(vRAN)の研究開発や、O-RAN Alliance等の標準化団体への提案を推進していくべきである。

総務省では、現在多国間の国際会議や二国間の政策対話の機会等を捉え、Open RANに関する政府レベルでの認識の共有や成果文書の策定などを進めるとともに、調査研究や実証実験を通じた我が国企業の具体的な海外展開を支援しているところであり、今後も予算事業を通じた現地調査や実証実験に加え、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(以下「JICT」という。)の活用も視野に入れた取組の強化を図ることが適当である。

(1-4) 5Gソリューションの実証・実装等と海外展開

生産年齢人口の減少をはじめとする社会課題に直面する地方においてこそ、新たなデジタル技術を活用するニーズがあり、地方からデジタルの実装を進め、持続可能な経済社会を実現することで、ボトムアップの成長を図っていくことが重要である。

総務省では、令和4年度(2022年度)中に20件の実施を目指し、ローカル5Gの現実の利活用場面を想定した開発実証や、多数の基地局・端末等が存在する環境下における技術実証を行うこととしている。こうした取組を通じ、各種のソリューションの一層の社会実装に向け、非居住地域も含めて用途や地域のニーズに応じた5Gのアクセス網の整備が進むことが望ましい。

また、デジタル田園都市国家構想の実現のためには、携帯電話事業者が提供する5Gだけでなく、ローカル5G・Wi-Fi・LPWAなどのデジタル基盤を展開した上で、当該基盤を活用したソリューションの導入を進めることが必要である。このため、導入コストや求められる機能等を踏まえつつ、地域の実情に応じた最適な形で、5Gなどのデジタル基盤を活用したソリューションの実装を推進することが適当である。

5Gソリューションの海外展開については、令和3年度(2021年度)から、東南アジアや中南米において、工場や医療分野におけるOpen RANを活用したローカル5Gのソリューションの実証を行うなど、我が国企業の現地基礎調査や実証実験等の取組を支援するとともに、令和3年(2021年)2月に発足した「デジタル海外展開プラットフォーム」を活用した情報共有等を行っているところである。

このほか、総務省においては、JICTの支援基準を令和4年(2022年)2月に改正し、JICTが5Gソリューションを含むICTサービス事業についても支援することを可能としたところである。

こうした5Gソリューションは、我が国が強みとしてきたセンサーネットワーク等のデジタル基盤と組み合わせ、我が国が優位性を確保することが期待できる分野であり、測位衛星による精度の高い測位情報の活用や国内における5Gシステムの実証の成果も踏まえた我が国企業の製品・システムの海外展開を支援するなど、「インフラシステム海外展開戦略2025」に掲げる目標達成に向けて取り組むことが適当である。

(2) ブロードバンドの拡充等

居住世帯向けサービスのための光ファイバは、令和3年度(2021年度)末に世帯カバー率が99.7%(未整備世帯約17万世帯)となる見込みであるが、地域によって整備状況に差があり、更なる整備を進めることが必要である。

また、光ファイバ等によるブロードバンドが、今後のデータ流通量の急速な増大や社会経済のデジタル化の進展等に対応して、ブロードバンド関連基盤の整備と技術の高度化、非居住地域・海洋・宇宙等へのネットワーク拡張に取り組む必要がある。そのための開発を進め、その成果を設備更新のタイミングで適切に実装していくことが必要である。

さらに、衛星通信システム等を活用した災害時のバックアップ回線や携帯電話の不感地帯などを解消するための通信回線、船舶・航空機への通信サービスへの提供など、現行ネットワークを拡張した様々な場面での利活用を進めていくことが必要である。

(2-1) 光ファイバの整備・維持、日本を周回する海底ケーブル・地方のデータセンターの整備促進等

整備計画においては、世帯カバー率を令和9年度(2027年度)までに99.9%とすることとされ、総務省では、ブロードバンドサービスに関するユニバーサルサービス交付金制度の創設による不採算地域での光ファイバ等の維持管理費の支援や、地域協議会を通じた整備ニーズの具体化などを行うこととしている。

加えて、日本を周回する海底ケーブル(「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」)を令和7年度(2025年度)までに完成させるとともに陸揚局の地方分散を促進し、また、地方のデータセンターについては、経済産業省と連携しつつ、全国各地で十数カ所の地方拠点を5年程度で整備する計画となっている。自然災害に対するネットワークの強靱化に加え、国際海底ケーブルの我が国への敷設を一層促進し、我が国がデータ・ハブとなることを目指すためにも、円滑に整備を進めていくことが適当である。

このほか、国際光海底ケーブルの敷設については、各国の需要が増加の一途であり、国際通信ネットワークにおけるアジアへの入り口としての我が国の地政学的なポジションを強化するとともに海外の旺盛な需要を獲得するため、アジア・インド太平洋地域を中心に、JICTの活用も視野に入れて、光海底ケーブルの敷設及びその支援を推進することが適当である。

(2-2) ブロードバンド関連技術の開発成果の実装・国際標準化・海外展開の推進

コロナ禍における生活様式の変化等による通信トラヒックの増大等の喫緊課題に対応して、総務省の研究開発成果により、速やかに伝送用チップや光伝送装置・コンポーネントとして製品化を実現し、大容量化が進む世界市場を先導していく必要がある。

具体的には、通信事業者やデータセンター向けに、現在の主要市場である100Gbps/200Gbpsの光コヒーレント伝送機器市場に加え、今後急速に市場が立ち上がることが見込まれる400Gbps以上の光コヒーレント伝送機器市場への海外展開を推進し、我が国のICTの国際競争力の維持・強化を図ることが必要である。

また、光が伝搬する「コア」を光ファイバ中に複数設けることで従来の光ファイバの容量限界を打破する「マルチコアファイバ」の早期実用化に向け、量産化技術や運用保守技術等の技術開発を推進し、2020年代後半に4コアファイバ等を収容した3,000km級のマルチコア光海底ケーブルシステムの実用化を目指す。あわせて3,000km級の光海底ケーブルシステムでカバー可能なアジア等への展開を推進する必要がある。

これらの技術開発と両輪で、実用化後の円滑な普及・展開に向け、ITU-TやOptical Internetworking Forum (OIF)等における国際標準化活動を強力に推進する必要がある。

(2-3) 宇宙ネットワーク等の非地上系ネットワークのイノベーション推進

宇宙ネットワーク等の最大の特徴はそのカバレッジであり、地上系ネットワークのエリア拡張、移動体への通信サービス提供(ドローン、空飛ぶクルマ、ロボット、車両、鉄道等)、海洋・宇宙・極地等における活動支援等に利用されることが見込まれるところであり、今後社会経済や安全保障における重要性がますます高まる重要なフロンティアである。このため、総務省は、宇宙ネットワーク等の実用化やイノベーションを重要施策と位置づけ、セキュリティに十分配慮した形で地上ネットワークとのシームレスかつ信頼性の高い通信サービスを提供できるよう、先進的なユースケースの開発や実証を積極的に推進すべきである。

また、宇宙ネットワーク等は、自然災害をはじめ非常時のバックアップや辺地向けのバックホール回線としてきわめて有用であり、地上系だけでは実現できない機能を効果的に提供することが期待される。我が国の電気通信事業者の宇宙ネットワーク等への取組については第1章で触れているとおりであり、我が国のネットワーク全体の冗長化や強靱化の観点からも、宇宙ネットワーク等のさらなる活用を促進すべきである。

さらに、宇宙ネットワーク等のインフラやサプライチェーンの構築、サービス提供において、他国への過度の依存を避けるための取組も必要である。この点、事業者等との積極的な対話を通じ、案件の掘り起こしを行うことや制度上の課題を迅速に把握して制度的対応を検討すること、「小型衛星等の無線局相談窓口」を通じた支援の継続や「小型衛星通信網の国際周波数調整手続きに関するマニュアル」の不断の改善を行うことなど、関連の取組を総合的に進めていくことが望ましい。

(3) 次世代ネットワークに向けた研究開発と実装、国際標準化

次世代の情報通信技術であるBeyond 5Gについては、戦略的不可欠性の獲得の観点から、従来の移動通信システム(無線技術)の延長上だけで捉えるのではなく、ネットワーク全体で超低消費電力化を可能とし、固定網、移動網、宇宙ネットワークまでシームレスにつながり、これらをセキュアに最適制御できる統合的な次世代ネットワークの実現を目指すことでグローバルな通信市場でのゲームチェンジを起こし、これを構成する先端技術の研究開発において世界で主導的な地位を確保していくことが必要である。

このため、我が国として、次世代ネットワークの実現に必要となる光電融合技術等のオール光ネットワーク技術、衛星・HAPS等の非地上系ネットワーク技術、セキュアな仮想化・統合ネットワーク技術などの重点技術分野について、国費を集中投入して研究開発を加速化するとともに、その開発成果等について、無線通信分野に閉じない標準化機関やフォーラム等において我が国が国際標準化活動を主導し、標準必須特許をはじめ知的財産を戦略的に取得・活用することにより、研究開発戦略と知財・国際標準化戦略を一体的に推進していく必要がある。

また、研究開発の段階からその成果の実装や海外展開を見据え、実装が可能なものについては実装を進めるとともに、海外にも積極的に展開する等、我が国を挙げて次世代ネットワークで「稼ぐ」意識を持って取り組んでいくことが必要である。

このため、重点技術分野の研究開発成果について、令和7年(2025年)以降順次、国内ネットワークへの実装と市場投入を進めていくとともに、その有用性を世界にいち早く発信してグローバルなデファクト化を推進し、主要なグローバルベンダとも連携しつつ、各国の通信事業者への導入を促進していく必要がある。

また、宇宙ネットワーク等の分野においては、我が国の企業がシステム、コンポーネント、部品、サービス、ソリューションといったそれぞれの得意領域に特化して事業を展開している現状を踏まえ、また、既に地上ネットワークでパラダイムシフトが進展しているように2030年代にかけて宇宙ネットワーク等のオープン化を促進し、高い国際競争力を有するシステムの開発・実用化、海外展開を目指すことが適当である。

このような考え方を基本とし、情報通信審議会における「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」の検討において取りまとめられた新たな戦略に基づき、取組を具体化し、強力に推進していく必要がある。

これらの取組により、Beyond 5Gにおいて標準必須特許10%と国際市場30%を確保し、通信ネットワーク全体の電力使用効率を2倍、2040年の情報通信分野のカーボンニュートラル実現、陸海空含め国土100%をカバーするデジタル田園都市国家インフラの実現を目指す必要がある。

(4) 放送の将来像と放送制度の在り方の検討

放送は、災害時の迅速な情報提供や地域情報の発信をはじめ、社会経済に密着したソーシャルキャピタルとしての役割を果たしてきた。しかし、放送を巡る環境は、オンラインの動画配信の伸張等によるテレビ離れなど、大きく変化している。他方、インターネット空間においてアテンションエコノミーが形成され、偽情報等の問題も顕在化する中で、取材と編集に裏打ちされた情報発信によって情報の正確性や論点の多角性を提供することにより、情報空間全体のインフォメーション・ヘルスと民主主義の健全な発展を確保していくという点で、放送が果たすべき役割はむしろ重要性を増していることも指摘されており、今後もこうした放送の社会的役割を維持し、自律的な発展を支援していくことが必要である。

現在、総務省において開催されている「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」で、令和4年(2022年)3月に「放送の将来像と制度の在り方に関する論点整理」が公表されたところであるが、放送の将来像と制度の在り方については、放送を取り巻く環境の変化を踏まえ、引き続き中長期的な視点から柔軟に検討を行い、必要な措置を講じていくべきである。

具体的には、放送事業者が豊かで良質な放送コンテンツの制作に注力できる環境を整備する観点から、経済合理性の観点も取り入れつつ、放送用無線局や番組送出設備等の放送設備に係る固定費の圧縮に積極的に取り組んでいくことが適当である。例えば、設備の共用化の推進、一部の中継局等のブロードバンドへの置き換え、IP化やクラウド化といったデジタル技術の導入を進めていくことが考えられる。

また、インターネットを含めた情報空間全体におけるインフォメーション・ヘルスの確保の観点から、放送コンテンツの価値をインターネット空間に浸透させていくことも重要になってくる。このため、放送コンテンツのインターネット配信は各放送事業者の経営判断によって行われるものであるが、地域情報や災害情報の発信、視聴履歴の適切な取扱い等、放送に準じた公共的な取組を行う配信サービスについては、視聴者保護及び民主主義の健全な発展の観点から、視聴者がそれらの配信サービスにより容易にアクセスできるようにするための施策を講じていく必要がある。

さらに、放送が今後もその社会的役割への期待に応えていく環境を整備する観点から、放送制度を所管する総務省においては、マスメディア集中排除原則の見直しや複数の放送対象地域における放送番組の同一化等、必要な制度改正に柔軟に取り組んでいくことが適当である。

(5) 安心・安全なインターネット利用環境の構築

インターネットは、様々な主体が情報の発信者となり、様々な情報が流通し、様々な主体がそれらの情報を取得できることにより、民主主義を支える情報基盤としても重要な役割を果たすようになっている。一方で、インターネット上での違法・有害情報の流通が課題となっており、近年では、前述のようにアテンションエコノミーが形成されることにより、偽情報の流通や「フィルターバブル」、「エコーチェンバー」等による社会的な分断、プラットフォーム事業者による利用者の膨大な情報の収集・分析・活用等の新たな課題が生じている。このような中で、自由かつ信頼性の高い情報空間の構築に向けて、不適切な情報の流通への対応や利用者の情報の適正な取扱いに向けた対応が強く求められるようになっている。

近年プラットフォーム事業者がインターネット上のコンテンツの流通に中心的な役割を果たすようになっており、プラットフォーム事業者を中心に、情報の流通の適正化に向けた取組も行われている。総務省においても、欧州でのデジタルサービス法案の成立に向けた動きなど海外の動向を踏まえつつ、イノベーションと利用者保護や安心・安全なインターネット環境を両立するためのプラットフォーム事業者等に関する政策を進めていくことが必要である。

また、違法・有害情報の流通、偽情報等への対策に関し、民間の自主的な取組を基本としつつ、プラットフォーム事業者をはじめとする取組の検証・評価等を継続的に行っていくことが必要である。さらに、事業者が保有する利用者に関する情報の適正な取扱いに関し、ガイドラインに基づく事業者の対応の状況について定期的にモニタリングを行うとともに、関連の規定を盛り込んだ電気通信事業法の一部を改正する法律案の具体的な運用について、官民が連携して検討を進めていくことが重要である。

モバイルOSに関しては、総務省においても、電気通信分野における公正な競争環境の確保や利用者保護の観点から、課題の洗い出しを行うとともに、必要となる対応について検討を進めていくことが適当である。

(5-1) プラットフォーム事業者等に関する政策

SNSや検索サービス等を提供するプラットフォーム事業者は、インターネット上のコンテンツの流通や利用者に関する情報の収集・分析・活用において中心的な役割を果たしており、国民・社会・国家にとって安心・安全なインターネット環境を構築する観点からプラットフォーム事業者による取組の重要性が増加している。欧州では、違法・有害情報への対応等を盛り込んだデジタルサービス法案の成立に向けて欧州議会・欧州理事会・欧州委員会の三者が合意したところである。我が国においても、イノベーションを進めながら利用者を保護し安心・安全なインターネット環境を実現するため、プラットフォーム事業者等に関し、モバイルを含むインターネット上の情報流通における課題を継続的に把握することが必要である。

(5-2) 違法・有害情報の流通に対応した取組

インターネット上のコンテンツの流通の増加や、プラットフォーム事業者が提供するサービスの特性などにより、偽情報や誹謗中傷をはじめとする違法・有害情報の流通に対する対応が課題となっている。我が国では、こうした違法・有害情報に対しては、利用規約やポリシー等に基づく民間による自主的な取組を基本とした対策を進めてきているところであり、その自主的な取組の検証・評価等を継続的に行っていくことが必要である。

これらの課題については、今後も状況の変化等を踏まえて適時に措置を講じていくことが必要であり、前出の欧州におけるデジタルサービス法案をはじめとする海外の取組も参考にしつつ、総務省においては、プラットフォーム事業者による取組の透明性やアカウンタビリティの確保に向けて制度的な対応を含めたさらなる取組の必要性について、継続的に検討を進めていくことが望ましい。
また、インターネット上の誹謗中傷等による権利侵害について、より円滑に被害者救済を図るため令和3年(2021年)4月に成立した「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律」を適切に施行するとともに、同法により導入される新たな裁判手続をはじめ同法による改正後の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の運用状況を適確に把握し、5年後の見直しに向けて必要となる対応等について検討を進めていくことが望ましい。

(5-3) 偽情報等への対応

インターネット上においても、民主主義の根幹を支える表現の自由や表現の多様性が守られながら国民が信頼できる情報が提供される環境を維持していくことが重要である。インターネットを通じた情報流通において大きな役割を果たしているプラットフォーム事業者においては、各社のポリシーに基づき、アーキテクチャ上の工夫を含め、近年特に必要性が指摘されている偽情報等への対応を適切に行っていくことが極めて重要である。総務省においては、海外における取組も参考にしつつ、これらのプラットフォーム事業者による取組の透明性・アカウンタビリティを確保する観点から、その取組について定期的にモニタリングを行い、必要とされる対応を検討していくことが求められる。

(5-4) 利用者に関する情報の適切な取扱いの確保

インターネットをはじめ、ICTを活用したサービスの多様化やグローバル化に伴い、情報の漏洩・不適正な取扱い等のリスクが高まる中で、事業者が保有する利用者に関する情報の適正な取扱いが一層不可欠なものとなっている。そのため、総務省においては、プラットフォーム事業者に対し、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン等に基づき、利用者の情報の取扱いの状況について定期的にモニタリングを行い、必要とされる対応を検討していくことが重要である。

特に、大量の利用者情報を取り扱う電気通信事業者が提供するサービスの信頼性の確保や利用者の端末情報とそれに紐付けられる情報の適切な保護が喫緊の課題となっていることを踏まえ、総務省は、利用者情報の取扱いに関する情報取扱規程の策定等の義務づけや利用者の情報の外部送信について利用者への確認の機会を与えること等を内容とする電気通信事業法の一部を改正する法律案を令和4年(2022年)3月に国会に提出したところであり、その具体的な運用については官民が連携して検討を進めていくことが重要である。

(5-5) モバイルOSに関する課題の整理

スマートフォンを起点とする現在のモバイル・エコシステムは、この10年あまりの間に急速な発展を遂げた一方、近年は公正競争や利用者保護の観点からスマートフォンのOS(モバイルOS)の寡占に起因する弊害が指摘されている。我が国においては、第2章で触れたとおりデジタル市場競争本部が「モバイル・エコシステムに関する競争評価」の中間報告を取りまとめたところであり(令和4年(2022年)4月)、また、総合政策委員会においては、携帯電話事業者から違法・有害情報のフィルタリングにおけるモバイルOSとの関係について指摘があったところである。

総務省においては、電気通信分野における公正な競争環境の確保や利用者保護の観点から、モバイルOSに関する課題の洗い出しを行うとともに、必要となる対応について検討を進めていくことが適当である。

(6) コンテンツ・サービスの振興

情報通信インフラの上で展開されるコンテンツやサービスの分野については、情報通信インフラと比べて、国際競争における立ち後れや、検索エンジンやモバイルOSに代表される海外のプラットフォーム事業者による寡占や利用者データの囲い込み、そのサービスへの依存が指摘されている分野である。この分野での立ち後れは、我が国事業者が国内シェアを獲得できないだけでなく、国内の利用者のデータが海外のプラットフォームに囲い込まれる点に留意が必要であり、健全な競争環境の確保と利用者利益の保護を図る観点から、戦略的に取組を進めていくことが必要である。

コンテンツに関して、動画配信サービスの伸張に対応していくため、国内コンテンツの海外展開のための取組を強化していく必要がある。また、データの共有に関して、利用者情報を適正に保護するなどの措置を講じつつ、我が国が唱道する「Data Free Flow with Trust (以下「DFFT」という。)」の理念の1つのモデルとして、「情報銀行」の普及を進めていくことなどにより取組を進めていくことが必要である。

我が国ではキャッシュレス決済の普及が遅れており、消費者の利便性向上や店舗の効率化などを図るため、JPQRの取組などにより、キャッシュレス化を進めていく必要がある。また、クラウドサービスに関して、海外のハイパースケール事業者のサービスと国内の事業者によるサービスとを場面により使い分けていくことを念頭に、その普及と活用の取組を進めていくことが必要である。

第1章で触れたWeb 3.0やメタバースなど、新たな技術革新やサービスがもたらす機会と課題を適確に把握し、適切に対応できるように取り組んでいくことが必要である。

その他、コンテンツ市場等における公正な競争環境と消費者の選択肢を確保する観点から、特定のアプリ・コンテンツの利用に関し使用データ通信量にカウントしないゼロレーティングサービスについて、状況のモニタリングを継続的に行っていくことが必要である。

(6-1) 放送コンテンツの海外展開のためのオンライン共通基盤の構築、人材育成

我が国のコンテンツ産業において大きな比重を占め、海外においても効果的な発信が可能な放送コンテンツについて、我が国では、官民が協力して海外展開に取り組んできており、拡大する海外市場の成長を取り込むとともに、その発信力を活かし、我が国のソフトパワーの強化・地域の活性化を図ってきたところである。

一方、近年のOTT(Over The Top)事業者等による動画配信サービスの伸張に伴い、視聴者がコンテンツを放送経由で「受ける」環境に対し、インターネット経由で「選ぶ」環境が急速に拡大している。放送コンテンツがこうした環境においても視聴者から選ばれるためには、動画配信ビジネスのグローバルなトレンドを踏まえたものとすることが不可欠となっている。また、新型コロナウイルス感染症の影響等により、国際的なコンテンツ取引のオンライン化が進展するなど、放送コンテンツの海外展開を取り巻く環境は劇的に変化している。

このことから、総務省においては、海外展開に積極的に取り組む放送事業者や制作会社等との連携の下、我が国コンテンツの海外への効果的な訴求を可能とするオンライン共通基盤の整備や、グローバルな視点を持ったコンテンツ人材の育成等、新たな環境の変化を踏まえた方策を検討し、放送コンテンツの海外展開及びそれを通じたソフトパワーや地域からの情報発信を強化すべきである。

これらの取組を通じ、我が国の放送コンテンツ関連海外売上高の成長率を、世界の映像コンテンツ市場(年平均成長率約8%(予測))以上に引き上げ、令和7年度(2025年度)までに海外売上高を1.5倍(対令和2年度(2020年度)比)に増加させることを期待する。

(6-2) JPQRの普及等を通じたキャッシュレス化の推進

第1章でも触れたとおり、我が国はキャッシュレス化が他国と比べて進展しておらず、現金の流通の確保に係るコスト削減等からもキャッシュレス化の推進が急務である。クレジットカード等をはじめ、多様なキャッシュレスの決済手段が利用されているが、QRコード決済は他の手段と比べ手数料が低廉であること、決済のための端末が不要であること、比較的高い入金頻度が確保できることから、地域の中小店舗においても導入しやすい決済手段であり、キャッシュレス化の進展に貢献することが期待されている。

反面、QRコード決済を提供する事業者が多数参入したため、総務省は、MPM型のQRコード決済における消費者の利便性向上と店舗の負担軽減のため、令和元年(2019年)、国内の統一QRコード「JPQR」を導入し、その普及や利用の促進を図ってきたところである。

コロナ禍において接触機会を回避する必要性も一因となった近年のQRコード決済の利用額の急速な増加に比べると、JPQRの普及は進展していない。総務省においては、QRコード決済に係る民間事業者の対応が進んでいない自治体のマイナポイントや地域通貨等との連携、医療機関や行政機関への公金納付におけるJPQRの導入推進を図るべきである。

(6-3) 信頼性の高いデータの共有・活用モデルとしての情報銀行の普及推進

「情報銀行」は、個人の関与の下でパーソナルデータの共有・活用を進め、新しいサービスの創出を通じて国民生活の利便性の向上などを図る仕組みであり、情報通信審議会の答申も踏まえ、一定の要件を満たした者に対する民間団体等の任意の認定制度によって普及を図ることが適当とされた。これまで一般社団法人日本IT団体連盟が7者のサービスを認定しているが、実際にサービスを提供しているのは4者にとどまる等、必ずしも普及が進展しているとは言えない状況である。

情報銀行は、パーソナルデータの共有・活用における信頼性の高いスキームとして、我が国が唱道する「DFFT」の一つのモデルとなり得るものである。総務省においては、要配慮個人情報の取扱いの可否及び条件についての認定指針の改定や、自治体が保有するデータや準公共分野(健康・医療、防災、教育等)のデータの利活用に関するガイドライン作成等のルール整備を行う等、情報銀行の普及促進のため、信頼性の高いスキームの定着に向けた取組を行うことが適当である。

(6-4) 多様な用途・ニーズに応えるクラウドサービスの普及推進

クラウドサービスは、Society 5.0が標榜するサイバー空間とフィジカル空間の高度な融合を支えるものであるほか、政府が令和3年(2021年)に「クラウド・バイ・デフォルト原則」を定めているとおり、社会生活や企業活動の基盤となるものであり、テレワークをはじめとするコロナ禍を経た新しい働き方や企業のDXの進展に伴い今後も成長が予想される分野である。こうした状況を踏まえ、我が国においては、海外のハイパースケール事業者が提供するパブリッククラウドに加え、国内事業者が提供するハイブリッドクラウドやマルチクラウド、プライベートクラウド型のサービスなど、多様な選択肢を通じ、取り扱う情報の機密性の程度や用途に応じたサービスを利用者が選択できる環境を確保することにより、クラウドサービス市場の健全な発達を目指すべきである。

我が国の民間部門のDXについては、総合政策委員会において、海外と比べて大きく後れをとっているものではないとの指摘があった一方、地方及び中小の企業のDXが進展していないという指摘もあったところである。全国でのクラウドサービスの普及進展のため、総務省においては、クラウドサービスの優良事例の周知・広報や、クラウドサービスの事業展開及び利用の障害となる規制等の見直しについて、業界団体との連携等を通じて取り組んでいくことが必要である。

(6-5) 新しいサービス等への対応

第1章でも触れたとおり、Web 3.0やNFT、メタバースといったICT分野の新しいサービスが台頭し、関連市場も急速な成長を見せている。我が国においても、こうした動きを我が国ICTの強みが発揮できる機会と捉え、新しいサービスの開発や市場の創出に向けた支援の在り方について検討を行うことが適当である。

また、こうした新しいサービスの台頭に合わせ、新たな対応の検討を要する課題が指摘されている。例えば、NFTについては、さまざまなコンテンツに関するトークンが発行されているが、権利者以外の者が無許諾で発行している事例が見受けられ、権利侵害や消費者被害の発生・拡大が懸念される。メタバースについては、ユーザー間での仮想アイテムの売買をはじめ、仮想空間での体験が現実に近くなるほど権利処理が複雑になることが考えられ、サービスを提供する事業者等において自主的なガイドラインの策定等が行われているところである。

これらの新しいサービスについても、普及の進展とともに安全な利用環境の構築が必要となることは言を俟たないが、イノベーションと事業者の負担のバランスに十分留意した制度設計が必要である。総務省においても、これらのサービスの動向を注視しつつ、今後の制度の在り方について検討を進めていくことが適当である。

その際、我が国で提供されるサービスやビジネスモデルに合わせ、我が国が海外に先駆けてルール作りを行い、発信していくことが、我が国の事業者にとって新しい市場への足がかりになることも考えられる。これまでも、我が国はDFFTやAIの分野での国際場裡におけるルール作りを主導してきたところであり、今後もこうした国際的なルール作り等の議論について、二国間・多国間を問わず、積極的な参加・貢献、発信を行っていくことが必要である。とりわけ、今年の後半から来年にかけ、我が国が議長国を務める関連会合(GPAI、G7、IGF)の開催が予定される中、我が国が積極的にルール作りに向けて取り組んで行くことが期待される。

(6-6) 郵便局におけるデジタル利活用の促進

人口減少が進むにつれて、公的な地域拠点の維持が困難となりつつあるところ、郵便局は全国に約24,000局のネットワークを有し、地域の生活インフラとしての役割が期待される。地域の住民向けサービスを維持するための拠点として、デジタル技術を活用した行政事務受託やスマートスピーカーを活用した地域の高齢者の見守りなどの取組を広げていくことが考えられる。

郵便局におけるデジタル活用にあたっては、総務省においても、「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」等を通じ、日本郵政グループの取組を支援していくことが適当である。

(7) サイバー空間全体を俯瞰したサイバーセキュリティの確保

サイバー空間は、人々に豊かさや多様な価値実現の場をもたらし、国民の日々の生活や経済活動を支えるとともに、自由主義や民主主義を形作り、文化の発展を促進する、我が国にとって不可欠な基盤である。サイバー空間における脅威が増大する中、我が国の目指す「自由、公正かつ安全なサイバー空間」を実現するためには、その根幹となる情報通信ネットワークの安全性や信頼性について、総務省をはじめとする官民が連携し、主体的に確保していくことが必要である。総務省にはこうした観点に立ってサイバーセキュリティ政策を進めていくことが求められる。

現在、サイバーセキュリティに関する情報や製品はその多くを海外に依存している状況であるとともに、国内のセキュリティ人材も不十分であるとの指摘がある。こうした中、我が国のサイバーセキュリティを自律的に確保できるようにするためには、サイバーセキュリティ情報の収集・解析などをNICT等で行える中核拠点の確立を進めるべきである。また、情報通信ネットワークの安全性・信頼性を強化し、利用者の安心を確保するためには、電気通信事業者とともに積極的・能動的なセキュリティ確保に向けた取組を進めることが適当である。さらに、情報通信ネットワークに影響を及ぼすサイバー攻撃の発生源となり得る、脆弱なIoT機器に関する対策については、より一層の強化が求められる。加えて、サイバー空間で取り交わされるデータの真正性や完全性の確保のため、制度化も進展するトラストサービスの普及や更なる活用が鍵となる。そして、こうした取組を、価値観を共有する同盟国や有志国との連携により国境を越えて広め、「自由、公正かつ安全なサイバー空間」の国際的実現を目指すべきである。

(7-1) サイバーセキュリティの産学官の中核拠点の確立

我が国のサイバー空間を守るためのサイバーセキュリティ製品は、その技術の多くを海外に依存している。優れた製品開発にはサイバー攻撃に関する実データが必要となるが、海外製品によって国内で得られた実データの多くは、国内にとどまらず海外に送信され、海外ベンダの製品開発のみに使われてしまう。その結果、国産製品の研究開発は進まず、海外製品に負けてしまうという「データ負け」のスパイラルに陥っている。こうした現状を打破するためには、我が国の産学官が結集し、情報・技術・産業・人材それぞれの側面から我が国のサイバーセキュリティを自律的に確保できるようにするため、サイバーセキュリティ情報を大規模に収集し、NICTや関係事業者等によるデータ共同解析や国産脅威情報の生成、高度人材の育成などの活動を支援する必要があり、その中核拠点を確立する必要がある。

(7-2) ネットワークの安全性・信頼性を強化し、利用者の安心を確保するための電気通信事業者による取組

大規模化・巧妙化・複雑化するサイバー攻撃や脅威の中には、電気通信事業者の積極的・能動的な対策によって被害や影響を軽減できるものがあるが、現状においては、技術的にも制度的にもこうした対策を十分には講じることができていない。また、電気通信事業者は、自らのネットワークを通じて行われるサイバー攻撃について、これを防止することのインセンティブを必ずしも有していない。情報通信ネットワークの安全性や信頼性を強化し、利用者の安心を確保していくため、今後は電気通信事業者による積極的・能動的な対策を推進していくことが急務である。

このためには、攻撃者のC&Cサーバをネットワークのフロー情報から検知する技術の実証や悪性のWebサイトを自動的・機械的に検知し共有する技術の実証、国際標準化もされているにも関わらず我が国で導入がなかなか進まないネットワークサイバーセキュリティ技術の導入実証等を通じ、技術的な課題を解決するとともに、制度的な課題の洗い出しを行い、対策に関する費用負担の在り方、必要に応じて制度改正の必要性などについて、検討を行うことが適当である。

(7-3) IoT機器に係るサイバーセキュリティの一層の確保

総務省は、平成31年(2019年)に端末設備等規則を改正し、ネットワークに直接接続するIoT機器に対してサイバーセキュリティに係る一定の機能の具備を技術基準として義務づけたほか、「NOTICE」や「NICTER」を通じた利用者ヘの注意喚起により、脆弱なID・パスワードを使っているIoT機器やマルウェアに感染したIoT機器を減らしていく対策を進めているものの、ベンダによるユーザーサポートが終了してしまっている等、利用者のみでは対処が困難なIoT機器もあり、ネットワークの安全性や信頼性の上で大きな課題となっている。総務省において、NOTICEによる注意喚起等の現在の取組を強化するとともに、脆弱性が放置されているIoT機器のセキュリティの確保に向けた技術的な対策や制度的な検討を進めることが適当である。

(7-4) トラストサービス

「電子署名」、「eシール」、「タイムスタンプ」及び「eデリバリー」等のトラストサービスについては、サイバー空間におけるデータの真正性や完全性を確保するための制度整備等を行うことにより、普及を進め、我が国の電子取引の信頼性を高めることが必要である。

そのためには、包括的データ戦略(令和3年(2021年)6月18日閣議決定)を踏まえ、「タイムスタンプ」や「eシール」等の既存のトラストサービスについてはデジタル庁と連携して一層の普及と活用を図るとともに、データの電子的な送達を証明できる仕組みである「eデリバリー」については、配達証明付き内容証明郵便の電子化への利用可能性を含めた調査等を進めることが適当である。

(7-5) 「自由、公正かつ安全なサイバー空間」の国際的な実現と我が国のサイバーセキュリティの確保

国家を背景としたサイバー攻撃や我が国と価値観の異なる国によるサイバー空間に対する影響力が増加している現状に対し、我が国のサイバーセキュリティを確保するとともに、我が国が目指す「自由、公正かつ安全なサイバー空間」を国際的にも実現していくためには、価値観をともにする同盟国・有志国との二国間・多国間での枠組みを通じた連携を強化していくことが必要である。

具体的には、QUADを通じた日米豪印の連携、AJCCBC(AJCCBC:ASEAN-Japan Cybersecurity Capacity Building Centre)を通じたASEANとの関係強化等によって、サイバーセキュリティ分野におけるインド太平洋地域との連携や協力関係を強化することが適当である。また、国連やOECD、ITU等における議論や取組に積極的に参画し、サイバー空間に関する国際的なルールや秩序の形成、国際標準化等に我が国の主張が採り入れられるよう取組を強化することが適当である。

(8) 人的基盤の強化と利活用の促進

第1章でも触れたとおり、ICT人材の不足が課題となっており、その解消が急務である。特に、セキュリティに係る高度な人材や地域からのボトムアップを支える人材など専門分野の人材確保について、取組を継続・強化する必要がある。

また、我が国の社会の一人ひとりが自律的にICTやデジタルに向き合い、これらの技術を活用して社会に参画していくことが「Inclusive」な「Society 5.0」の基本理念であり、それを実現していくため、誰もがデジタル化の恩恵を享受できるようにするとともに、国民全体の情報リテラシーを向上させるための取組を強化する必要がある。
さらに、国民が安心してICTを利活用することができるよう、偽情報等の不適切な情報の流通に関して、様々な関係者による対応が行われてきている中で、それらの対応を総合的に促進していくための検討が必要である。

(8-1) 情報アクセシビリティの向上等

総務省では、「誰でもデジタルの恩恵を享受できる「取り残されない」デジタル社会を実現」するため、令和3年度(2021年度)から、「デジタル活用支援推進事業」を通じ、デジタル活用に不安のある高齢者等に対し、オンラインによる行政手続などのスマートフォンの利用方法に対する説明・相談等の支援を行っている。講習会の実施箇所を令和3年度(2021年度)の約2,000箇所から令和4年度(2022年度)は約3,000箇所に拡大することに加え、令和4年度(2022年度)は携帯電話ショップのない市町村を念頭に講師を派遣するなど、取組を拡充することとしている。

我が国においてデジタルを十分に活用できていない高齢者は約2,000万人いると推定され、さらなる支援に向けて取組を拡充するとともにデジタル技術へのアクセスを総合的に支援していくことが必要である。

また、「誰一人取り残されない」デジタル社会の実現のためには、障がい者等の情報アクセシビリティの向上が必要である。現在政府においては、企業等が開発するICT機器・サービスが情報アクセシビリティ基準を満たしているかを自己評価する様式(日本版VPAT)の普及展開や、電話リレーサービスの更なる普及促進に取り組んでいるところであり、今後も障がい者等の利便の増進に資するICT機器・サービスの開発・普及を促進していく必要がある。

(8-2) 偽情報等への対応

(5)でも触れたとおり、インターネット上における不確かなままの情報や悪意のある偽情報の流通・拡散による被害が課題となっている。また、インターネット上を流通する膨大な情報から利用者が実際に取得する情報に偏りが生ずる「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」等と言われる課題も指摘されている。これらの課題への対応として、利用者がインターネット上の情報をうのみにせず、また、取得する情報が偏っている可能性があることをきちんと認識することが必要であり、総務省としては、若年層のみならず利用者全般に対し、偽情報等に関する情報リテラシー向上に向けた啓発を積極的に行うべきである。

利用者が偽情報を認識するためには、民間によるファクトチェックの果たすべき役割が大きい。我が国においてもファクトチェックの取組が進められているものの、ファクトチェックの担い手や社会的認知度・理解度が十分ではなく、ファクトチェックの取組と利用者による活用が進むような環境整備に取り組むことが必要である。

偽情報や違法・有害情報の流通に関しては、これらの情報リテラシーやファクトチェックに関する取組と、(5-3)で触れた安心・安全なインターネット利用環境の構築のための取組との連携を図りながら、継続的に検討を進めていくことが望ましい。

(8-3) メディア情報リテラシーの向上(デジタル・シティズンシップ)

我が国においてはGIGAスクール構想の下で「1人1台端末」が実現する一方、インターネットを取り巻く環境の変化に合わせ、ICTリテラシー教育についても進化が必要になっている。これまでの「情報モラル」教育は、ネットの長時間利用やSNSへの書込み等、インターネットの危険性について教えているが、どちらかと言えばインターネットの使用を抑制するものであり、今後は、自律的なデジタルの利活用を通じて様々な相手とコミュニケーションを行い、多様な社会活動に参画し、よりよいデジタル社会の形成に寄与する「デジタル・シティズンシップ」を育むための教育を行うことが必要となる。

総務省におけるICTリテラシー向上に関する施策は、今後はこうしたデジタル・シティズンシップの育成にシフトすべきであり、関係機関・関係団体とも連携しつつ、地域の公共的な施設を用いた講座等を通じて成年層・高齢層がICTを活用して学びや創造、社会参加をするための考え方やスキルを学ぶことができる環境や、青少年がICTの活用を通じてデジタルコンテンツの作成といった創造性を発揮する能力を育むことができる環境等を整備すること等、その具体的な仕組みや全国への普及方策について検討を進めることが必要である。

(8-4) 地方公共団体におけるDX人材の確保に対する支援

政府は、「デジタル・ガバメント実行計画」を改訂し(令和2年(2020年)12月25日)、自治体の情報システムの標準化・共通化や地方公共団体における行政手続のオンライン化等を一層進めることとしている。総務省では、「デジタル・ガバメント実行計画」の中で、自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化するとともに、総務省及び関係省庁による支援策等を取りまとめ、「自治体DX推進計画」を策定し(令和2年(2020年)12月25日)、デジタル社会の構築に向けた取組を全自治体において着実に進めていくこととしている。

自治体DXの推進に当たっては、専門的な知識を持つデジタル人材の確保が必要となるが、自治体では、外部のデジタル専門人材の登用が進んでいない。

総務省では、外部のデジタル専門人材に求められるスキルや経験などを類型化するとともに、一定のスキルや経験を有する民間の人材に対して自治体の業務や情報システムに関する研修を実施すること、自治体による外部人材の確保の支援を行うことなど、自治体DX推進計画の着実な実行を進めていくことが適当である。

(8-5) サイバーセキュリティを担う人材の育成

我が国に向けたサイバー攻撃は増加の一途であり、その脅威は我が国の社会経済基盤を揺るがす事態となっている。国内におけるこうしたサイバー攻撃に対処できる人材不足の解消は喫緊の課題であり、適切な能力を有する人材の育成・確保が急務である。

総務省では、平成29年(2017年)から、NICTにナショナルサイバートレーニングセンターを設置し、「CYDER」や「SecHack365」等のプログラムを通じ、セキュリティ人材の育成に当たってきた。

これらの人材育成の取組については、今後も継続・強化することが必要である。また、東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて関連組織のセキュリティ担当者等の実践的な演習を行った「サイバーコロッセオ」(令和2年(2020年)12月に事業終了)については、演習内容を東京大会のレガシーとしてCYDERのプログラムに組み込むとともに、「サイバーコロッセオfor万博(仮)」として、東京大会時よりさらに高度化・多様化すると見込まれるサイバー攻撃に備え、令和7年(2025年)開催の大阪・関西万博の適切な運営を確保するため、高度な攻撃にも対処可能な人材の育成を、関連組織のセキュリティ担当者等を対象として行うことが適当である。

また、地域の中小企業や医療機関などについては、サイバーセキュリティに関するリスクの増大を認識していなかったり、対策が不十分であったりする場合が多く、最近では、ランサムウェア攻撃や情報を窃取するマルウェアの感染事例が多数報告されている。このため、これらの者が有効なサイバーセキュリティ対策をとるための人材育成・普及啓発の機会や情報共有の枠組みである、地域レベルでのコミュニティ(地域SECUNITY(セキュニティ))における、インシデント対応演習の開催などの取組を支援することが適当である。

(8-6) テレワークの推進

テレワークとは、「ICTを利用し、場所や時間を有効に活用できる柔軟な働き方」のことであり、「雇用型」と「自営型」に大別される。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う出勤抑制の手段としてテレワークの導入が急速に進展した一方、地域間、業種間では導入状況に差が生じている。新型コロナの感染状況が落ち着くと通常のオフィス勤務に戻るのではないかとの指摘もあり、テレワークが広く定着したとまでは言い切れない状況である。

さらに総務省においては、関係府省庁と連携しつつ、テレワークを導入しようとする企業等に対する「テレワーク・ワンストップ・サポート事業」や先進的な取組を行う企業への表彰を通じ、テレワークの導入が進んでいない地域、業種を含めて「雇用型テレワーク」の定着を図ることが必要である。

地方への移住促進や都市部と地方の二地域居住の推進の観点から、関係府省庁が連携して地方におけるサテライトオフィスの整備・活用や「ワーケーション」の促進等に取り組む必要がある。

自営型テレワークは、障がい者、介護者を含め、ライフスタイルやライフステージに合わせた就労機会を提供することが期待されるものである。自営型テレワークを通じ、地域のデジタル人材の育成や移住を含めた地方への人の流れが促進されることから、総務省としても、このような地域における雇用機会の確保やデジタル人材の育成の観点からテレワークの推進に向けた支援を検討すべきである。

おわりに

米中の緊張関係やロシアのウクライナ侵略など、めまぐるしく変化する国際情勢の中で、我が国の独立、生存及び繁栄を確保するために何をすべきか。課題先進国でもある我が国が国際連携を図りながら5Gをはじめとする高度なICTを最大限活用するソリューションを導入・実装していくことが戦略的な自律性の確保に向けた第一歩である。また、光電融合技術をはじめ、世界をリードする技術を梃子として戦略的な不可欠性を獲得し、国際的なポジションを強化していくことが必要である。

こうした戦略が成果を挙げるためには、ステークホルダーや関係府省庁、総務省の部局間といった全てのインターフェースにおいて、それぞれの役割(縦割り)と横断的な取組(横串)が分野をまたいで有機的に連携し、従前のやり方に囚われない「新しい取組」が必須である。総務省においても、変化を恐れない進取の気性をもった取組と組織づくりに期待する。

技術革新とともに絶え間なく進化を続けるインターネットについて、違法・有害情報への対応をはじめとする安心・安全な利用環境の確保はもとより、自由で開かれたインターネットをどう維持していくのか、我が国の「正しい情報」を国内外にどのように発信していくのかという点についても問題提起がなされた。これらの課題については、Web 3.0やメタバースといった新しいサービスの動向を注視するとともに、引き続き検討を進めていくことが必要である。

近年の国際情勢を見れば、地政学的にモードが変わりつつあることは明らかである。我が国の平和と安全を守るため、サイバーセキュリティ等に関してこれまでの延長線にとどまらない議論を行うことも検討すべきである。また、自由でかつ信頼性の高い情報空間の構築に向けたデータガバナンスの確立や、人工知能の分野をはじめ我が国の次世代のイノベーションを担う人材の育成についても、関係府省庁をはじめ関係者と連携し、検討を進めていくことが必要である。

参照

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