ここでは、疫学研究における基本的な注意点を紹介します。
言われて見ればアタリマエのことですが、小難しい表現が使われると途端に頭に入ってこなくなるので注意しましょう。
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1. 研究の対象集団が曖昧になっていないか?
研究の外的妥当性・一般化可能性を高めたい、という思いから、幅広い多種多様な集団を研究対象に含めたい、と思う人は少なくありません。
それ自身は素晴らしい姿勢なのですが、一歩間違えると「何を見ているのか分からない」という、ピンぼけに陥ることもあります。
「幅広い多種多様な集団を研究対象に含める」ということは、「研究対象集団がぼやける」ということと表裏一体なわけなんですね。
帯に短し襷に長し、にならないようにしましょう。
2. 臨床的に意義のないわずかな差を拾っていないか?
疫学研究において、適切なサンプルサイズの設定も欠かせません。
サンプルサイズが小さすぎると、高い精度の分析を行えず、偶然検出された差なのか、真に差があるのかがわかりません(いわゆるβエラー)。
一方で、サンプルサイズが大きくなりすぎる、すなわち検出力が上がり過ぎることにもデメリットがあります。
臨床的には意義のないわずかな差であっても、統計的に有意な差があるとして検出してしまいます。
言い換えるなら「シグナルではなくノイズを拾ってしまう」ということです。
ノイズをシグナルと区別できれば良いのですが、臨床面での専門家出ない限り難しく、専門家であっても容易ではないことが少なくありません。
適切なサンプルサイズにより、ノイズを拾い上げないように出来るかも、疫学研究を設計する上での腕の見せどころです。
3. 曝露の有無を正確に測れているか?
疫学研究において、曝露の有無を正確に測れているかどうかは、永遠の課題とも言えます。
曝露の誤測定には、大きく以下の2つがあります。
- 本当は曝露されていないのに、曝露されている、と誤って判断される(例:医薬品を処方されているが、きちんと服用していない)
- 本当は曝露されているのに、曝露されていない、と誤って判断される(例:観察開始時点よりも前に、医薬品を使った経験があった)
研究対象者を四六時中、常に監視し続けることは困難ですし、現実的ではありません。
ある程度の曝露の誤測定は想定しながら、出来る限り正確に捉えるための研究デザインが求められます。
4. アウトカムを正確に測れているか?
疫学において、曝露と対をなす重要な要素がアウトカムです。
曝露を正確に測定することが容易ではないのと同じクラス、アウトカムの測定にも独特の難しさがあります。
疫学において、曝露は原因、アウトカムは結果に位置するものです。
そのため、時系列でいえばアウトカムは曝露の後に位置します。
治験や臨床試験のような介入研究では、アウトカム判定のための独立組織を設定されることがあります。
そして、研究計画書で定義された条件に基づいてアウトカム判定が行われる、という労力をかけてアウトカムを出来る限り正確に評価しています。
一方で、疫学研究で用いられるデータには、多種多様なものがあります。
研究に用いられるデータが「誰によって」「どんなインセンティブに基づいて」作られているか、に注意しましょう。