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経済財政運営と改革の基本方針 2021(仮称)(原案)令和3年6月9日

経済財政運営と改革の基本方針2021(仮称)

目次

第1章 新型コロナウイルス感染症の克服とポストコロナの経済社会のビジョン

1.経済の現状と課題

(日本を取り巻く環境変化)

昨年戦後最悪の落ち込みを経験した世界経済は、再び前に向かって動き出している。単なる景気回復に留まらず、カーボンニュートラルの実現に向けた動き、デジタル化やデータ活用の急速な進展、国際的な取引関係や国際秩序の新たな動きなど、世界全体の経済構造や競争環境に大きな影響を与える変化がダイナミックに生じている。各国とも、いち早く経済を正常化させるとともに、これらの変化に対処すべく、最大限の政策対応を行っている。

我が国においても、昨年度の3次にわたる補正予算及び本年度予算における予備費の活用を始め、新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」という。)による厳しい影響から国民の命と暮らし、雇用を守る万全の対応を行い、国民生活と経済を支え、失業率を主要先進国で最も低い水準に抑えてきた。

その一方で、人口動態としては少子高齢化が一層進むことが見込まれ、今後も、感染症に対して万全の対応を行うとともに、このような世界全体の急速かつ大きな変化に、スピード感をもって果断に対応していくことが求められている。

それは決して容易なことではないが、世界の主要なプレーヤーとして着実に成果を上げながら、一人ひとりが豊かさを実感できる経済社会を実現していくため、本基本方針に沿って、改革のスピードを一層速めていく必要がある。

(当面の経済運営の課題)

今後とも、感染拡大防止に全力を尽くし、機動的なマクロ経済運営によって事業や雇用、国民生活を支えながら、医療提供体制の強化やワクチン接種を促進していく。こうした取組が経済活動を拡大するための確固たる基盤となり、感染症を乗り越えて、更なる需要や成長に向けた投資意欲を呼び起こす。その上で、世界経済の回復ペースが加速していることを踏まえ、デフレに決して戻さないとの強い決意の下、外需を取り込みながらあらゆる政策を総動員して経済回復を確実なものとしていく。雇用を確保しつつ成長分野への円滑な労働移動を促進するとともに、賃上げモメンタムを維持・拡大し、成長と雇用・所得拡大の好循環を目指したマクロ政策運営を行っていく。

同時に、感染症により厳しい影響を受けた女性や非正規雇用の方々、生活困窮者、孤独・孤立状態にある方々などへのきめ細かい支援を継続し、コロナ禍が格差の拡大・固定化につながらないよう、目配りの効いた政策運営を行っていく。

2.未来に向けた変化と構造改革

今回の感染症は我々に大変厳しい試練を与えている一方で、デジタル技術を活用した柔軟な働き方やビジネスモデルの変化、環境問題への意識の高まり、東京一極集中が変化する兆しなど、未来に向けた変化が大きく動き始めている。ともすれば硬直的とも言われてきた日本経済の構造や我々の意識の変化、とりわけ若い世代やベンチャーを始めとする若い企業を中心に、過去の成功体験にとらわれない自由な発想による変化への挑戦が生まれており、これまで進められなかった課題を一気に進めるチャンスが到来している。

世界的にも、グリーン投資やデジタル投資の加速とそれに対応した経済・産業構造の急速な変化、感染症のようなグローバルショックに対しても強靱な経済構造の追求、経済安全保障の視点を重視したサプライチェーンの見直しなど、これまでの延長線上にない変化が生じており、将来を見据えた戦略的な産業政策が求められている。

こうした内外の変化を捉え、我が国経済の構造改革を戦略的に進め、ポストコロナの持続的な成長基盤を作っていかなければならない。そのためにも、TPP11 協定を始めとする経済連携を積極的に活用して海外需要を取り込み、内外の直接投資も拡大して我が国の稼ぐ力を向上させ、経常収支が安定的に黒字化する状況を維持してショックに強いマクロ経済構造を保持していく。

(成長を生み出す4つの原動力の推進)

菅内閣発足以降、2050 年カーボンニュートラルの宣言、デジタル改革の司令塔となるデジタル庁の創設、不妊治療の保険適用を始めとする少子化対策や子育て支援、地方の所得向上を重視した地方活性化など、日本が進めるべき改革の大きな方向性を示してきた。

次なる課題は、こうした改革の方向性に沿って政策を具体化して強力に推進し、ポストコロナの持続的な成長につなげる投資を加速することである。このため、グリーン化、デジタル化、地方の所得向上、子供・子育て支援を実現する投資を重点的に促進し、長年の課題に答えを出し、力強い成長を実現して世界をリードしていく。これにより、民間の大胆な投資とイノベーションを促し、経済社会構造の転換を実現する。

あわせて、新たな時代に向けた人材育成、働く人がやりがいと生産性を共に高められる働き方改革、セーフティネットの強化、強靱なサプライチェーンの構築など成長を支える基盤づくりを進める。我が国の付加価値生産性を高めるとともに、誰一人として取り残されない包摂的な社会を構築していく。

(財政健全化の堅持)

「経済あっての財政」との考え方の下、デフレ脱却・経済再生に取り組むとともに、財政健全化に向けしっかりと取り組む。新たな成長の原動力となる分野への重点投資、民間の資金・人材の活用、ワイズスペンディングの徹底等により、経済成長を促す。あわせて、団塊世代の後期高齢者入りを踏まえ、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、全世代型社会保障改革を引き続き推進し、社会保障の持続可能性を確保するとともに、感染症で顕在化した課題である、緊急時にも柔軟に対応できる医療提供体制の構築、国・地方の役割分担の見直しを含め、経済・財政の一体的な改革を引き続き推進する。こうした取組を通じ、600 兆円経済の早期実現と財政健全化目標の達成を目指す。

本基本方針で示す政策については、年内の予算編成過程や制度改正、中長期的な施策についても年度内等に方向性の結論を得るなど、早期実行に向けて政府全体で取り組む。施策担当府省庁においては、進捗状況について経済財政諮問会議等に報告する。また、将来のあるべき経済社会に向けた構造改革・対外経済関係の大きな方向性について、国民及び経済社会全体で共有するための基本的考え方を、今後経済財政諮問会議に専門調査会を設置し、明らかにしていく。

3.ポストコロナの経済社会のビジョン

コロナを機に世界は大きく、急速なスピードで変化している。グリーン、デジタルなどの分野で進む変化や経済安全保障などの新たな課題は、世界全体の経済構造や競争環境をダイナミックに変えつつある。また、日本社会においても、デジタル技術を活用した働き方の変化、環境問題への意識の高まり、地方での暮らしへの関心の高まりなど、未来に向けた変化が大きく動き始めているほか、若い人や若い企業が世界で活躍するなど、新しい動きやチャレンジも出ている。一方で、感染症によりデジタル化の遅れなど我が国が抱える様々な課題が顕在化した。潜在成長率が高まらず、世界を牽引するイノベーションも生まれてこないなど、従来から抱えてきた課題についても解決の道筋を明確に示せず、結果を出せていない。「後はない」との危機感をもって、従来型の経済社会システムをスピード感を持って大胆に変革しなければ、活力にあふれ、豊かさを実感できる日本の未来は拓けず、世界の繁栄をリードすることもできない。

このため、グリーン、デジタル、人材活躍といった動きを個人や家庭、企業の意識や行動などミクロレベルで浸透させるとともに、時代に合わなくなった企業組織や働き方、人材育成の在り方など、社会全体の仕組み・構造を、多様性と変化への柔軟な対応、レジリエンスを持ったものへと転換し、ポストコロナに向けた動きを一気に加速する。

その際、特に、我が国の最大の資源である人材の力を引き出していくことが重要となる。政府が呼び水となる人材への投資と制度改革を大胆に行う「ヒューマン・ニューディール」を通じ、民間の創意工夫や投資を促し、社会全体で人材を育成する大きなうねりを起こしていく。意欲と能力のある若者が活躍でき、多様な経験を積みながらキャリアアップを行えるようにする。女性のキャリアアップ支援の強化等を通じ男女の賃金格差を解消するとともに、理系分野を始め多様な分野での女性の活躍を促す。誰もがいつでも学び直しを行えるようリカレント教育の抜本的な拡充を図り、キャリアアップをしながら、転職や起業などを通じて、年功序列や生え抜き主義といった慣行にとらわれず様々な場での活躍を選択できるようにし、国際的に通用する人材を育成していくことが重要である。

こうした視点に立ち、これまで述べた経済財政運営と構造改革を進めることにより、次のような経済社会を目指す。

○強い経済をつくりあげ、改革・イノベーション志向であり続ける社会

グリーンとデジタルにおけるイノベーションや変革、女性や若者等多様な人材の活躍を通じ、強い経済をつくりあげ、改革・イノベーション志向の国であり続ける。人類全体で解決すべき脱炭素化に各国と連携して取り組み、国際社会の持続可能な成長を主導する中で2050 年カーボンニュートラルを実現する。最先端のデジタル国家になるとともに、サイバーセキュリティを確保しつつ自由で開かれたデジタル空間を発展させ、Society5.0 を実現する。全世代型社会保障の構築、待機児童解消、不妊治療支援等を着実に進め、結婚・出産の希望を叶え、安心して子育てしやすい社会を実現する。多様で柔軟な働き方が進むとともに、いつでも学び直しが可能となる中で、女性や若者、中高年を始め多様な人材がそれぞれの能力を発揮し、エンゲージメントを高めながら活躍するとともに、活力ある地方創りにより、全国どこでも豊かでゆとりある生活ができる。

○誰一人として取り残さない包摂的な社会

様々なセーフティネットを強化し、格差の拡大・固定化を防ぐとともに、誰一人として取り残さない包摂的な社会を構築する。正規・非正規という働き方の区分をなくし、誰もがいつでも何度でも学び直しと新たな挑戦ができるようにすることにより、社会全体で雇用の安定化を図る。NPO等の役割が大きく拡大し地方自治体との連携が進むことにより、共助・公助の担い手が多様化し、生活困窮者や孤独・孤立状態にある方などに対し、一人ひとりに寄り添ったきめ細かなサービスを提供する。デジタルデバイドを解消するとともに、デジタルの徹底活用により、困っている方々にプッシュ型でそれぞれの事情に合った支援をタイムリーに提供する。

○ポストコロナの国際秩序やグローバルなルールづくりに指導力を発揮する国

グリーン化やデジタル化を軸とした世界経済の構造変化に戦略的に対応するとともに、国際社会の中で法の支配を確立する。気候変動等の地球規模の課題への対応やポストコロナの国際秩序の形成、デジタル分野等におけるグローバルなルールづくりに指導力を発揮する。自由で公正な経済秩序を広げ、ルールに基づく多角的自由貿易体制の更なる強化に取り組み、強靱なサプライチェーンを構築するとともに、世界経済の発展を積極的に成長に取り込む。「自由で開かれたインド太平洋」を実現し、自由で開かれた海洋秩序を維持・強化し、世界の平和と繁栄をリードする。

4.感染症の克服と経済の好循環に向けた取組

(1)感染症に対し強靱で安心できる経済社会の構築

感染症への対応に当たっては、社会経済活動を継続しつつ感染拡大を防止し、重症者・死亡者の発生を可能な限り抑制することを基本に対策を徹底する。感染症対応の医療提供体制を強化し、相談・受診・検査~療養先調整・移送~転退院・解除まで一連の対応が目詰まりなく行われ、病床・宿泊療養施設が最大限活用される流れを確保する。

緊急時対応は、より強力な体制と司令塔の下で推進する。今後、感染症が短期間で急増するような事態が生じた場合は、昨冬の2倍程度等を想定した患者数に対応可能な体制に緊急的に切り替える。また、感染症患者を受け入れる医療機関に対し、減収への対応を含めた経営上の支援や病床確保・設備整備等のための支援について、診療報酬や補助金・交付金による今後の対応の在り方を検討し、引き続き実施する。都道府県の要請に基づき、公立・公的、民間病院の病床を活用できる仕組みや都道府県を超えて患者に対応できる仕組みを構築する。

各地域の病床の効率的な運用を促すため、医療機能3に応じた役割分担の徹底や補助も活用した医師等派遣、地域の実情に応じた転院支援等を進める。G-MISにより、重症度別の空床状況や人工呼吸器等の保有・稼働状況、人材募集状況等を一元的に把握し、迅速な患者の受入調整等に活用するほか、地域別や機能別、開設種別の病床稼働率など医療提供体制の進捗管理・見える化を徹底する。

ワクチンについて、感染症の発症を予防し、死亡者・重症者の発生をできる限り減らすため、医療従事者等への接種を進め、大規模接種も活用して、高齢者への接種を本年7月末を念頭に完了させるとともに、基礎疾患を有する者や高齢者施設等の従事者への接種を進め、その他の希望する国民への接種を本年6月中に開始する。国内の全ての接種対象者に必要な量は本年9月末までに確保する。引き続き効果的な治療法・治療薬や国産ワクチンの開発・生産体制の強化を進めるとともに、新たな感染症に備え、国内のワクチン開発・生産体制の強化のため、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」を着実に推進する。

感染症を巡る状況を踏まえつつ、個々の医療機関の経営リスクに配慮しながら、病床や医療人材の確保に関する協力を国や自治体が迅速に要請・指示できるようにするための仕組みや、平時からの開発支援を含め治療薬やワクチンについて安全性や有効性を適切に評価しつつ、より早期の実用化を可能とするための仕組み、ワクチンの接種体制の確保など、感染症有事に備える取組について、より実効性のある対策を講じることができるよう法的措置を速やかに検討する。あわせて、行政の体制強化に取り組む。

今後も小さな流行の波は発生しうるが、これを大きな流行にしないよう、感染拡大期の経験や国内外の知見を踏まえ、効果的な感染防止策を継続・徹底する。感染リスクが高い飲食におけるガイドラインの徹底や第三者認証による認証制度の普及・活用、AIシミュレーション等の活用、QRコード等の積極的な活用、クラスターの大規模化等を防ぐ観点からの高齢者施設等や大学、高校等及び職場での抗原簡易キットの活用による軽症状者に対する積極的検査、感染リスクの高い繁華街等における無症状者へのモニタリング検査、感染拡大の予兆を検知した場合の重点的なPCR検査の実施等のクラスター対策などの戦略的サーベイランスを推進しつつ、営業時間短縮要請等の措置を機動的に活用する。変異株対策については、スクリーニング検査やゲノム解析を用いた全国的な監視体制やHER-SYSも活用した積極的疫学調査を一層強化するとともに、水際対策を強化する。

人の流れを抑制する観点から、テレワーク活用等による出勤者数削減について、各事業者の実施状況の公表を促すとともに、幅広く周知することにより、見える化を進める。感染症に起因する偏見・差別等に係るSNSの活用等による人権相談や啓発を強化する。

(2)経済好循環の加速・拡大

日本経済をデフレに後戻りさせず、経済の好循環を加速・拡大させるため、まずは感染症の厳しい経済的な影響に対し、引き続き、重点的・効果的な支援策を躊躇なく講じ、事業の継続と雇用の確保、生活の下支えに万全を期す。その上で、民需主導の自律的な経済回復の実現に向け、技術革新・イノベーションを起こしつつ、グリーン・デジタルなど成長分野への民間需要を大胆に喚起しながら、新分野への展開等の事業者の前向きな取組や、人材への投資、成長分野への円滑な労働移動を強力に推進するなど守りから攻めへと重心を移し、経済全体の生産性を高め、最低賃金の引上げを含む賃金の継続的な上昇を促す。世界経済が回復していく中で、国際経済連携を強化しつつ、中小企業の輸出や農水産物輸出の振興、インバウンドの再生等を通じて、外需を日本の成長に取り込んでいく。また、ワクチンの接種証明について、不当な差別につながらないこと等に留意しつつ、速やかに検討を進め、成案を得る。

事業者への支援については、感染拡大防止の局面では、引き続き、営業時間短縮要請等に応じる事業者に対する規模に応じた協力金のできる限り迅速な支給や当面本年末まで継続する政府系金融機関による実質無利子・無担保融資等により事業継続を支える。また、特に深刻な影響を受けている事業者に対し、資本性資金を通じた財務基盤の強化を着実に実行する。同時に、感染防止対策やテレワークを含む感染リスクの低いビジネスモデルへの転換を図る投資等の取組を重点的に支援するとともに、ポストコロナの新しい経済に対応する事業再構築やDXに向けた企業の挑戦に対し、補助金や税制、金融支援の着実な実行を通じて強力に後押しする。感染状況が落ち着いている地域では、感染防止対策を徹底した上で、まずは県内観光の割引事業等の支援により、感染症により甚大な影響を受けた需要の回復を図る。

雇用と生活への支援として、雇用調整助成金の特例措置等については、厳しい業種に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら段階的に縮減していく一方で、在籍型出向を通じた雇用確保を支援する助成の活用促進やマッチング支援の強化、感染症の影響による離職者のトライアル雇用への助成等による成長分野への円滑な労働移動や、セーフティネットとしての求職者向けの支援、働きながら学べる環境の整備、リカレント教育等の人的投資支援を強力に推進する。非正規雇用労働者など感染症のより厳しい影響を受け、生活に困窮する方々に対しては、住まいの確保を含め生活を下支えする重層的なセーフティネットによる支援に万全を期すとともに、デジタル分野等の新たなスキルの習得に向けた職業訓練の強化等を通じ自立を支援する。女性を中心とする自殺者の増加に対するSNSを含むきめ細かい相談支援のほか、望まない孤独・孤立を抱える方々に対する民間団体等を通じた寄り添い型の支援を引き続き強力に後押しする。

引き続き、感染状況や経済的な影響を注視し、状況に応じて、新型コロナウイルス感染症対策予備費の活用により臨機応変に必要な対策を講じていくとともに、我が国経済の自律的な経済成長に向けて、躊躇なく機動的なマクロ経済政策運営を行っていく。

5.防災・減災、国土強靱化、東日本大震災等からの復興

(1)防災・減災、国土強靱化

発災から 10 年を迎えた東日本大震災で得られた経験も教訓に、切迫化する大規模地震災害、相次ぐ気象災害、インフラ老朽化等の国家の危機に打ち勝ち、国民の命と暮らしを守り、社会の重要な機能を維持するため、国土強靱化基本計画に基づき、自助・共助・公助を適切に組み合わせ、本年、具体化される気候変動への取組強化、防災・減災、国土強靱化新時代等の新たな動きと歩調を合わせて、女性、高齢者や障害者など多様な視点を踏まえながら、ハード・ソフト一体となった取組を強力に推進する。

気候変動の影響により激甚化・頻発化する水害・土砂災害や高潮・高波への対策として、堤防・ダム・砂防堰堤・下水道・ため池の整備、森林整備・治山対策、ダムの事前放流・堆砂対策、線状降水帯等の予測精度向上、グリーンインフラの活用、災害リスクも勘案した土地利用規制等を含むまちづくりとの連携など、流域全体を俯瞰した流域治水を推進する。令和2年度豪雪も教訓に豪雪時の道路交通確保対策を強化する。本年2月の福島県沖を震源とする地震被害も踏まえ、災害に強い道路、鉄道、海上交通ネットワークの構築等を推進する。無電柱化、インフラ老朽化対策等を加速するとともに、TEC-FORCE10等防災の体制・機能の拡充・強化、消防団を含む消防防災力の充実、学校など避難拠点の防災機能強化、複合災害や熱中症対策など地域特性を考慮した避難所の環境改善、防災ボランティアや気象防災アドバイザーの充実、次期気象衛星や防災デジタルプラットフォーム及び防災IoT等デジタル技術を活用した災害関連情報の高度化、要配慮者避難の促進、防災教育、医療体制の強化13等による地域防災力の向上を図りつつ、事前復興の観点を含め行政と住民等との災害リスクコミュニケーションを推進する。

中長期的な目標の下、取組の更なる加速化・深化を図るため、追加的に必要となる事業規模等を定めた「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」14を推進し、引き続き、災害に屈しない国土づくりを進める。

(2)東日本大震災等からの復興

新たな復興期間においても、「『第2期復興・創生期間』以降における東日本大震災からの復興の基本方針」15等に基づき、内閣の最重要課題として、政治の責任とリーダーシップの下、復興庁を司令塔に、復興に取り組む。地震・津波被災地域では、被災者の心のケアなど残された課題に取り組む。福島の復興・再生は中長期的対応が必要であり、今後も国が前面に立って取り組む。東京電力福島第一原発の廃炉及び環境再生を安全かつ着実に進める。ALPS処理水16の処分方針に沿って理解醸成に取り組み、不測の風評影響への懸念払拭に向け、追加対策を含め万全の対応を図る。住民の帰還促進と併せ、移住等の促進を図る。たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、特定復興再生拠点区域の整備を進めるとともに、地元の意見を丁寧に伺いながら、拠点区域外の避難指示解除に向けた方針の検討を加速する。

福島イノベーション・コースト構想に基づき、産業発展や制度の整備等に資するよう、空飛ぶクルマの実証等を進める。国際教育研究拠点については、「国際教育研究拠点の整備について」17に基づき、既存施設との相乗効果・可能な限りの統合を目指すとともに、財源・人員面での長期・安定的な運営を可能とする仕組みの設計等を進め、本年秋までに新法人の形態を決定し、本年度内に基本構想を策定する。改定した福島新エネ社会構想に基づき、再生可能エネルギーの更なる導入拡大と水素の社会実装を進めるとともに、未来志向まちづくりを推進する。また、営農再開を加速するとともに、風評払拭に向け、放射線等に係る正確な情報発信、科学的・合理的見地から食品等に関する規制等の検証等を行う。また、災害からの復旧・復興に全力を尽くす。

第2章 次なる時代をリードする新たな成長の源泉~4つの原動力と基盤づくり~

1.グリーン社会の実現

我が国は「2050 年カーボンニュートラル」を宣言し、世界の脱炭素を主導し、経済成長の喚起と温暖化防止・生物多様性保全との両立を図り、将来世代への責務を果たす。また、2030 年度の温室効果ガス排出削減目標を 2013 年度比 46%減という新たな目標とした。さらに、50%減の高みに向け、挑戦を続ける。この実現に向け、①脱炭素を軸として成長に資する政策を推進する、②再生可能エネルギーの主力電源化を徹底する、③公的部門の先導により必要な財源を確保18しながら脱炭素実現を徹底する、という3つの考えの下で推進する。

(1)グリーン成長戦略による民間投資・イノベーションの喚起

上記目標の実現に向け、経済と環境の好循環を生み出す脱炭素化を推進するため、地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画を見直す。

また、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長と国民生活のメリットにつなげていくため、グリーン成長戦略19に基づき、あらゆる政策を総動員し、洋上風力、水素、蓄電池など重点分野20の研究開発、設備投資を進める。

グリーンイノベーション基金21による野心的なイノベーションに挑戦する企業への 10 年間の継続支援、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の活用等、企業の脱炭素化投資を後押しするとともに、新技術の導入に資する規制改革や国際標準化に取り組む。また、3,000 兆円ともいわれる世界の環境投資資金を我が国に呼び込み、グリーン、トランジション、イノベーションに向かう資金の流れを作る。このため、TCFD22等に基づく開示の質と量の充実、グリーンボンド等の取引が活発に行われるグリーン国際金融センターの実現、一足飛びでは脱炭素化が難しい産業向けのトランジション・ファイナンスの推進等に取り組む。また、グリーンGDP(仮称)などの研究・整備を進める。

(2)脱炭素化に向けたエネルギー・資源政策

2050 年カーボンニュートラル及び 2030 年度の温室効果ガス排出削減目標の実現を前提に、エネルギー基本計画を見直す。エネルギー政策の原則である3E+S(安全、安定供給、経済効率性、環境適合)の考え方を大前提に、政策連携や取組の強化を図る。

こうした考え方の下、電力部門の脱炭素化に向け、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す。立地規制の見直し、系統制約の克服、EVを含めた蓄電池やディマンドレスポンスの活用等による柔軟性の確保や電力市場制度の大胆な改革を進める。また、必要な送配電網・電源への投資を着実に実施し、コスト効率化や、分散型エネルギーシステムなど真の地産地消にも取り組むよう促す。火力については、CCUS/カーボンリサイクルを前提とした利用や水素・アンモニアによる発電を選択肢として最大限追求する。原子力については、可能な限り依存度を低減しつつ、安全最優先の原発再稼働を進めるとともに、実効性ある原子力規制や原子力防災体制の構築を着実に推進する。安全性等に優れた炉の追求など将来に向けた研究開発・人材育成等を推進する。

電力部門以外は、炭素生産性が欧州に比べ劣っている中、省エネルギーを徹底しつつ、供給側の脱炭素化を踏まえた電化を中心に進める。電化できない熱需要については、水素などの脱炭素燃料やカーボンリサイクルも活用していく。自動車については、EV充電設備や水素ステーションの整備等を進め、普及が遅れている電動化を戦略的に推進するとともに、サービスステーション(SS)の総合エネルギー拠点化等を進める。住宅・建築物については、規制的措置を含む省エネルギー対策を強化し、ZEH・ZEB等の取組を推進するとともに、森林吸収源対策を実施する。特に、2030 年度目標の実現のため、複数年度にわたる取組を計画的に実施する新たな仕組みを検討する。「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、地域・暮らしの分野における自治体や国民の取組を推進し、2030 年までに脱炭素先行地域を少なくとも 100 か所創出するとともに、全国で重点対策を実施し、脱炭素ドミノを起こす。また、プラスチック資源循環を始め循環経済への移行を推進する。

脱炭素社会への円滑な移行を進めつつ、エネルギー・鉱物資源の安定供給の確保に取り組む。

(3)成長に資するカーボンプライシングの活用

市場メカニズムを用いる経済的手法(カーボンプライシング等)は、産業の競争力強化やイノベーション、投資促進につながるよう、成長戦略に資するものについて、躊躇なく取り組む。

クレジット取引については、企業ニーズの高まりを踏まえ、非化石証書やJクレジット29に係る既存制度を見直し、自主的かつ市場ベースでのカーボンプライシングを促進する。その上で、炭素税や排出量取引については、負担の在り方にも考慮しつつ、プライシングと財源効果両面で投資の促進につながり、成長に資する制度設計ができるかどうか、専門的・技術的な議論を進める。国境調整措置については、我が国の基本的考えを整理した上で、戦略的に対応する。

2.官民挙げたデジタル化の加速

デジタル時代の官民インフラを今後5年で一気呵成に作り上げる。デジタル庁を核としたデジタル・ガバメントの確立、民間のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促す基盤整備を加速し、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を構築する。

(1)デジタル・ガバメントの確立

「デジタル・ガバメント実行計画」30に従い行政のデジタル化を強力に推進する。デジタル庁は各府省庁への勧告権等を活用し総合調整機能を果たす。そのため、各府省庁や民間から有為の人材を登用する。また、各府省庁は国家公務員採用総合職試験「デジタル」区分合格者を積極的に採用するとともにデジタル庁・NISCによる職員育成・研修の充実を図る。

2022 年度末にほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指すとの方針の下普及に取り組む。マイナンバーカードの健康保険証、運転免許証との一体化などの利活用拡大、スマホへの搭載等について、国民の利便性を高める取組を推進する。

政府のデータ戦略に基づき、政策課題に対応するデータを特定・発掘し、その活用・共有を前提としたデータ設計・整備を行い、整備されたデータの最大限の利活用を図る。デジタル庁は、個人情報保護と両立する形での自治体保有データも含む行政データ提供のワンストップ化の仕組みを構築する。医療・介護、教育、インフラ、防災に係るデータ・プラットフォームを早期に整備する。

給付事務等への活用を念頭に行政機関間の情報連携を推進する。住民情報の連携について、マイナンバー制度の活用を図る。法整備も視野に入れ、本年中に給付事務用やGビズID発行事務用等を含めた国の行政機関間の全ての商業登記情報連携を無償化するとともに、独立行政法人及び地方自治体との間の全ての連携についても本年度中の無償化を目標に作業を進める。これによりデジタルで手続を完結させ、紙の登記事項証明書の添付省略を促進する。会社法上の決算公告義務の履行を確保しつつ、経済産業省及び国立印刷局は、契約情報・会社決算情報等の官報掲載情報のGビズインフォ32との情報連携を本年中に開始する。記帳等の経理事務のデジタル化及び記帳水準の向上を図るなど民間部門の経理・行政事務のDXを推進する。デジタル庁は、ベース・レジストリ33の構築・管理・運営において知見のある国立印刷局等の公的機関の協力を求め、その早期構築に取り組む。

オンライン化されていない行政手続の大部分を、5年以内にできるものから速やかにオンライン化し、オンライン化済のものは利用率を大胆に引き上げる。

(2)民間部門におけるDXの加速

デジタル基盤整備を加速し、マイナンバー制度等これまで構築した基盤も活用しながら、民間部門全体におけるDXやデジタル投資の加速に官民一体で取り組み、経済社会全体の生産性を徹底的に引き上げていく必要がある。

このため、DXの基盤である5Gの整備計画を税制支援も通じて加速し、地域カバー率を2023 年度末に 98%まで高めるとともに、ローカル5Gの開発実証等を進める。先端半導体の製造基盤強化やサプライチェーン強靱化を推進するとともに、ポスト5Gの情報通信システム開発を進め、「Beyond5G」の研究開発とともに、知的財産取得・国際標準化を推進する。さらに、光ファイバ整備を確実に進めるとともに、ブロードバンドのユニバーサルサービス化35に向けた所要の措置を講ずる。携帯電話市場における、公正な競争環境の整備を進め、料金の低廉化を図る。大規模災害等への対応のため、インターネットエクスチェンジの地方分散やデータセンターの国内立地・新規拠点整備等に取り組む。また、クラウドサービスの信頼性向上、相互接続性や強靱性の確保を図る。このほか、地理空間(G空間)情報の高度活用37及び衛星データの利活用を図る。

新たな時代のルール整備として、デジタル・プラットフォーム取引透明化法の対象にデジタル広告市場を追加するなど、競争政策強化に関する必要な制度上の措置等を講ずる。こうした基盤整備を追い風にし、地方における中小企業も含めて非対面型ビジネスモデルへの変革や新産業モデルを創出する。このため、企業全体で取り組むデジタル投資を税制により支援し、特に中小企業においては、IT導入サポートを拡充し、そのDX推進を大胆に加速するほか、標準化された電子インボイスや、金融機関による支援等も通じた中小企業共通EDI40等の普及促進を図る。また、物流DXや標準化等を通じて、サプライチェーン全体の徹底した最適化を図る。加えて、AI、IoTやビッグデータを活用し、新たな付加価値の創造をしていく。例えば、無人自動運転等の先進MaaSを始めとする Connected Industriesを構築する。

CBDCについて、政府・日銀は、2022 年度中までに行う概念実証の結果を踏まえ、制度設計の大枠を整理し、パイロット実験や発行の実現可能性・法制面の検討を進める。

(3)デジタル人材の育成、デジタルデバイドの解消、サイバーセキュリティ対策

社会全体で求められるデジタル人材像を共有して人材育成・確保を図るため、経済界や教育機関等と協力して、教育コンテンツやカリキュラムの整備、実践的な学びの場の提供等を行うデジタル人材プラットフォームを構築し、地方におけるデジタル人材育成の取組とも連携する。さらに、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が、経済界との協力を含む体制整備を行い、各種デジタル人材43のスキルを評価する基準を作成する。

全国の大学・高等専門学校・専門学校等において数理・データサイエンス・AI教育の充実や、デジタル関連学部や修士・博士課程プログラムの拡充・再編を図ることとし、モデルカリキュラムの普及、国際競争力のある分野横断型の博士課程教育プログラムの創設、ダブルメジャー等を推進する。デジタル人材の裾野拡大のため、職業訓練と教育訓練給付のデジタル人材育成への重点化を図ることとし、デジタル関連プログラムの拡充等の強化を行う。「誰一人取り残さない」という理念の下、「デジタル・ガバメント実行計画」に基づき、ITリテラシーやスキルの底上げ・再生などのデジタルデバイド対策を推進する。特に地域で育成したデジタル人材を積極的に活用し、デジタル活用に不安のある高齢者等にオンラインサービスの利用方法等に関して講習会・出前講座等の助言・相談を行うとともに、行政窓口等でのサポートに努めるなど、支援の仕組みの充実を図る。生体認証技術等を活用した簡便なオンライン上の本人確認の仕組みの普及促進を図る。

さらに、健全な情報通信社会の実現に向けて不可欠なサイバーセキュリティ対策の強化のため、政府の次期サイバーセキュリティ戦略を2021 年中に策定する。加えて、サイバー攻撃に対応する技術開発、人材育成、産学官連携拠点の形成を図る。また、関係府省庁、電気通信事業者等重要インフラ事業者による積極的なセキュリティ対策を推進するほか、サイバーセキュリティに係るサプライチェーンリスク45への対策を強化する。

3.日本全体を元気にする活力ある地方創り~新たな地方創生の展開と分散型国づくり~

感染症を契機とした地方への関心の高まり、テレワーク拡大、デジタル化といった変化を後押しして地方への大きな人の流れを生み出し、新たな地方創生を展開し、東京一極集中を是正する。活力ある地方を創り、地方の所得を引き上げ、日本全体を元気にしていく。

(1)地方への新たな人の流れの促進

地方の中小企業等への就業、就農、事業承継、起業等をきっかけとして、地方をフロンティアと捉える都市部人材が地方に移住・定着できるよう取り組む。このため、地域経済活性化支援機構の人材リストを早期に1万人規模へ拡充しつつ、地銀等の人材仲介機能を強化し、地域活性化起業人制度等と連携する。地域おこし協力隊等を推進し、地方自治体の移住支援体制を強化する。地方でテレワークを活用することによる「転職なき移住」を実現するため、サテライトオフィスの整備・利用促進、立地円滑化を推進する。

関係人口の拡大に向けて、ふるさと納税等の地域の取組46を後押しする。多様な二地域居住・多拠点居住を促進するため、保育・教育等の住民票・居住地と紐づいたサービスの提供や個人の負担の在り方を整理・検討し、地方自治体向けのガイドラインを本年度中に策定するとともに、空き家・空き地バンクの拡大・活用等を推進する。

(2)活力ある中堅・中小企業・小規模事業者の創出

感染症の影響下の変化に対応し、経済の底上げを図る地域を中心に、生産性向上等に取り組む中小企業・小規模事業者に対し思い切った支援を行う。支援策の申請手続の電子化、支援機関や専門家の見える化、民間の支援ビジネスとの連携による経営支援体制の整備を行う。デジタル等の無形資産投資、EC活用や信用供与等を通じた輸出などの海外展開の促進や人材の確保・育成等により、中小企業の規模拡大を支援し、活力ある中堅・中小企業等の創出を促す。また、地域の女性起業家、社会起業家等を支援するとともに、中小企業等の事業承継・再生の円滑化のための環境を整備すること等により、地域コミュニティの持続的発展を支援する。こうした中小企業支援策について効果的・効率的に行うとともに、中小企業への周知の強化を図る。

下請中小企業における労務費等の上昇を取引価格に円滑に転嫁できるよう、大企業と中小企業のパートナーシップ構築47を推進するとともに、特定の期間を設定して下請取引の特別調査を行うこと等により下請取引の価格交渉を推進する。あわせて、官公需において労務費の円滑な価格転嫁を図るため、官公庁が最低賃金額の改定を踏まえて契約金額に関して必要な確認を行う措置を適切に講ずる。

(3)賃上げを通じた経済の底上げ

民需主導で早期の経済回復を図るため、賃上げの原資となる企業の付加値創出力の強化、雇用増や賃上げなど所得拡大を促す税制措置等により、賃上げの流れの継続に取り組む。我が国の労働分配率は長年にわたり低下傾向にあり、さらに感染症の影響で賃金格差が広がる中で、格差是正には最低賃金の引き上げが不可欠である。雇用維持との両立を図りながら賃上げしやすい環境を整備するため、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組みつつ、最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績48を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均 1000 円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む。

また、本年4月に中小企業へ適用が拡大した「同一労働同一賃金」に基づき、非正規雇用の処遇改善を推進するとともに、非正規雇用の正規化を支援する。

(4)観光・インバウンドの再生

観光関連産業は約900 万人が従事し、地方を支えている。我が国の自然、気候、文化、食といった魅力は失われておらず、観光立国実現に官民一丸で取り組む。

Go To トラベル事業は、今後の感染状況等を踏まえて取扱いを判断することとし、宿泊施設・観光地等での感染拡大防止策を徹底した上で、地域観光事業支援を実施する。ワーケーションや休暇取得促進等により旅行需要平準化を図り、混雑を低減させる。

観光客が戻るまでの時間を活用し、観光業や観光地の再生のため、宿泊施設や飲食、土産物店等の施設改修や廃屋撤去、経営力底上げやDX推進等による収益性・生産性向上、金融機関等と連携した宿泊施設再生、自治体等の観光施設への民間活力導入等に取り組む。

地域内の縦割りを超えた観光業と異業種の連携によるコンテンツ造成や、デジタル技術も活用した観光資源の磨き上げ、スノーリゾート整備や国立公園の滞在環境上質化、古民家等の歴史的資源の面的活用、文化観光拠点等の整備や三の丸尚蔵館の美術品等の地方展開等を進める。日本酒、焼酎・泡盛等のユネスコ無形文化遺産への登録を目指す。

多言語表記やバリアフリー、CIQ等の受入環境整備、観光地への交通の充実、上質なサービスを求める観光客誘致のための取組を進める。国内外の感染状況等を見極めながら、小規模分散型パッケージツアーの試行等により、安心・安全な旅行環境整備を目指す。IR整備は、厳格なカジノ規制の実施を含め、所要の手続を着実に進める。

(5)輸出を始めとした農林水産業の成長産業化

人口減少に伴う国内市場縮小や農林漁業者の減少、気候変動等に対応するため、農林水産業全般にわたる改革49を力強く進め、成長産業としつつ、所得の向上、活力ある農山漁村の実現、食料安全保障の確立を図る。

輸出戦略に基づき、マーケットインやマーケットメイクの推進51に向け、品目団体の組織化等による海外での販売力強化、農産物特有のリスクに対応し事業者の後押し等の施策を講じ、所要の法52改正も含め検討する。加工・業務用野菜の国産切替えを進める。

「みどりの食料システム戦略」53の目標達成に向け、革新的技術・生産体系の開発・実装、グリーン化に向けた行動変容を促す仕組みを検討するとともに、国際ルールづくりに取り組む。

中山間地域等を含めた生産基盤の確保・強化に向け、スマート農林水産業の実装加速化、支援サービス事業の育成等を推進するほか、農地バンクの機能強化等による農地の集約と最大限の利用、多様な人材確保と担い手育成、新たな農業・農村ビジネス展開を大胆に進める仕組みを検討する。土地改良事業や家畜疾病対策を推進するとともに、広域捕獲等の鳥獣対策を強化する。食品産業の強化に向け、自動化、データ連携等の推進、新しい生活様式に対応した業態転換等を進める。

新たな森林・林業基本計画に基づき、エリートツリーによる再造林等適正な森林管理、持続的な経営体の育成、都市での木材利用促進等を進める。

新漁業法57に基づく新たな資源管理や養殖業の成長産業化、漁業者の経営安定、不漁問題に対応した持続的な水産業を推進する。

(6)スポーツ・文化芸術の振興

2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の多様なレガシーを創出する。全ての国民が気軽にスポーツできる環境を整備し、その価値を実感できる社会を実現する。民間資金の一層の活用等により、指導者や活動団体を育成し、地域スポーツの普及・発展を図る。このため、現行スポーツ基本計画の成果を精査した上で、スポーツ・健康まちづくりの推進も含めた次期計画を年度内に策定し、政府一体となってこれを推進する。

文化財、日本遺産等の地域の文化資源の持続可能な活用を促進するため、文化財の匠プロジェクト59の検討や国立文化施設の機能強化等を図りつつ、保存・活用を一体的に推進できる体制を強化する。子供たちの鑑賞・体験活動の充実、アート市場の活性化、DX時代に対応した著作権制度の構築等の文化DX60の推進等を含む政策パッケージを関係府省庁と連携して年内に策定するなど、文化芸術活動の感染症からの力強い復興と発展を支援する。

(7)スマートシティを軸にした多核連携の加速

政令指定都市及び中核市等を中心にスマートシティを強力に推進し、住民満足度の向上、グリーン化など多様で持続可能なスマートシティを2025 年度までに 100 地域構築する。このため、政府内の推進体制を強化し、ハード・ソフト両面での一体的な支援によりスマートシティの形成を進める。

具体的には、スマートシティの整備を加速させるためスーパーシティを起点に、スマートシティ重点整備地域を選定し、都市間・分野間連携の基盤となる都市OSの早期整備によって、多核連携の実現を後押しする。サービスの開発・運用の更なる促進を図るため、街区内の包括的な脱炭素化推進やゼロカーボンシティに向けた取組等のグリーン化との協調を図るとともに、MaaS等の実装段階にあるサービスの横展開を加速する。

さらに、スマートシティの機能や水準を具体化するとともに、スマートシティ形成に寄与する評価指標の精査、デジタルとまちづくりを兼ね備えた人材の育成、BIDを含め運営資金回収モデルの確立など、マネジメントの強化を進め、持続可能なスマートシティの構築を支える。

また、3D都市モデル等のデジタル技術やデータの利活用を行いつつ、職住遊などの機能が充実した都市のコンパクト化を図った上で、ユニバーサルデザインの街づくり、利用者負担の枠組みも活用した鉄道等のバリアフリー化、モーダルコネクト強化、自転車利用環境の充実を含む移動環境の整備等とスマートシティが融合し、多様な働き方・暮らし方を促進し、QOLの向上を目指す。

スマートシティの国際戦略については、日本の都市インフラ整備等の経験やデータ管理のノウハウを官民が連携して海外へ展開するとともに、国際標準の活用・構築及びFS調査・国際実証事業等を推進する。

(8)分散型国づくりと個性を生かした地域づくり

地方における付加価値の高い雇用の創出に向けて、地域の個性を生かし、インバウンド再生、中小企業や農業の輸出促進等により戦略的に外需を取り込むことに加え、ヘルスケアやグリーン分野を産業化し、サプライチェーン再編を契機とした内需再構築に取り組む。

地域活性化に向けた環境整備のため、高規格道路、整備新幹線、リニア中央新幹線、港湾等の人流・物流ネットワークの早期整備・活用を進めるとともに、感染症の影響により危機的状況にある航空・地域公共交通サービスの活性化・持続可能性の確保を図る。また、造船・海運業等の競争力強化を図る。地域の特色を生かした多様なスマート化を進めるとともに、道路や公園等の都市インフラや民間施設の利活用等を通じ、ゆとりがあり居心地が良く歩きたくなるまちづくりを推進する。

地域の知と人材が集積する地方大学の力を強化する政策パッケージを本年度中に策定し、STEAM教育を中心とした人材育成や研究開発により地方の産業創出を推進する。

地方への資金の流れを拡大するため、人材派遣型を始め企業版ふるさと納税の更なる活用を促進する。企業の本社機能の移転等に向け、地方拠点強化税制の活用促進を図る。産学金官連携により、地域の経済循環を担う地域密着型企業の立ち上げを促進する。地域経済の回復等を支えるため、地域金融機関の経営基盤強化に係る改革を支援する。地域づくり人材の確保や農山漁村体験を推進し、過疎地域等の条件不利地域対策に取り組む。

これまでの沖縄振興策の検証結果も踏まえ、現行沖縄振興特別措置法期限後の沖縄振興の在り方について検討を進めつつ、沖縄が日本の経済成長の牽引役となるよう、観光等の各種産業の振興、基地跡地の利用を含め、国家戦略として沖縄振興策を総合的・積極的に推進する。

ゼロカーボン北海道66、食と観光、北方領土隣接地域の振興等、北海道開発に取り組む。ウポポイを充実させるとともに、アイヌの人々の歴史、文化の一層の国民理解を図る等、その人々の誇りが尊重される社会の実現に取り組む。

4.少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現

出生数の減少が進行し人口減少に歯止めがかからない一方で、児童生徒の自殺者数が増加し、児童虐待や重大ないじめの問題は深刻化している。こうした危機的状況の下で、「少子化社会対策大綱」等に基づき、不安に寄り添いながら、安心して結婚、妊娠・出産、子育てができる環境整備に取り組むなど長年の課題であった少子化対策を前に進め、「希望出生率 1.8」と結婚、妊娠・出産、子育てを大切にするという意識が社会全体で深く共有され地域全体で子育て家庭を支えていく社会の実現を目指す。また、子供の視点で、子供に関する政策を抜本的に見直し、家庭、地域、幼稚園、保育所、学校、自治体を始め、親や就労環境など子供を取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、ジェンダーギャップ解消への取組も含め、子供の命や安全を守る施策を強化する。子供の成育、成長過程の全体について、予算、人材等の資源を投入し、待機児童問題を解消するとともに、児童虐待や重大ないじめへの対応を強化し、子供の貧困等の様々な課題の解決を目指す。

その際、将来の子供たちに負担を先送りすることのないよう、応能負担や歳入改革を通じて十分に安定的な財源を確保しつつ、有効性や優先順位を踏まえ、速やかに必要な支援策を講じていく。安定的な財源の確保にあたっては、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組みについても検討する。

(1)結婚・出産の希望を叶え子育てしやすい社会の実現

賃上げや正規・非正規の格差是正など少子化の背景として指摘される雇用環境の改善に取り組むとともに、社会全体で男性が育児休業を取得しやすい環境の整備を進める。結婚支援、不妊治療への保険適用、出産費用の実態を踏まえた出産育児一時金の増額に向けた検討、産後ケア事業の推進、「新子育て安心プラン」の着実な実施、病児保育サービスの推進、地域での子育て相互援助の推進、子育てサービスの多様化の推進・情報の一元的提供、虐待や貧困など様々な課題に対応する包括的な子育て家庭支援体制、ひとり親世帯など困難を抱えた世帯に対する支援、育児休業の取得の促進を含めた改正育児介護休業法の円滑な施行、児童手当法等改正法附則に基づく児童手当の在り方の検討などに取り組む。子供・子育て支援の更なる「質の向上」を図るため、消費税分以外も含め、適切に財源を確保していく。今般の感染症下における対応を踏まえ、これまでの各種施策を総点検した上で、KPIを定めつつ包括的な政策パッケージを年内に策定し推進する。

(2)未来を担う子供の安心の確保のための環境づくり・児童虐待対策

子供の貧困、児童虐待、重大ないじめなど子供に関する様々な課題に総合的に対応するため、年齢による切れ目や省庁間の縦割りを排し、妊娠前から、妊娠・出産・新生児期・乳幼児期・学童期・思春期を通じ、子供の視点にたって、各ライフステージに応じて切れ目ない対応を図るとともに、就学時に格差を生じさせない等の教育と福祉の連携、子供の安全・安心の確保、データ・統計の充実等を行い、困難を抱える子供への支援等が抜け落ちることのないような体制を構築することとし、こうした機能を有する行政組織を創設するため、早急に検討に着手する。

児童虐待防止対策について、児童福祉法等改正法附則に基づき、子供の支援に携わる者の資質の向上に向けた資格の在り方、司法関与の強化も含めた一時保護の適正手続きの確保、子供の権利擁護、家庭養育優先原則の徹底等について、検討に基づき必要な措置を講じる。児童の健全育成推進や虐待予防の観点から、支援を要する子育て世帯に支援が行き渡るよう、未就園児の効果的な把握や母子保健と児童福祉のマネジメント体制の再整理などについて検討し、所要の措置を講ずるとともに、児童相談所を含めた子供や家庭の支援体制を充実強化する。

子供の貧困の解消を目指し、こども食堂・こども宅食への支援、あらゆる場や機会に応じた食育の充実等を図る。

子供にわいせつ行為を行った教員に対する措置について、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」に基づく取組を着実に進める。さらに、保育士における同様の対応のほか、教育・保育施設等や子供が活動する場で、有償、無償を問わず職に就こうとする者から子供を守ることができる仕組みの構築等について検討し、子供をわいせつ行為から守る環境整備を進めるなど、海外の先進事例を踏まえ、子供の安心の確保のための様々な課題について検討する。

5.4つの原動力を支える基盤づくり

(1)デジタル時代の質の高い教育の実現、イノベーションの促進

デジタル時代にふさわしい質の高い教育を実現するため、通学時等を含む安全・安心な教育環境を整備67しつつ、デジタル教科書の普及促進、小学校における 35 人学級や高学年の教科担任制の推進、外部人材の活用を図るなど、GIGAスクール構想68と連動した教育のハード・ソフト・人材の一体改革を推進する。あわせて、これらの取組を通じて個人と社会全体の Well-being の実現を目指す。1人1台端末をフル活用し、データ駆動型の教育への転換を図り、EdTech等も活用しながら、個々の教育的ニーズや理解度に応じた学習、STEAM教育等の教科等横断的な学習などを進め、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を早急に実現する。この中で、本年3月に明確化した方針70に基づき、児童生徒等の発達の段階に応じてオンラインを活用して、時間・場所・教材等に制約されない質の高い教育を実現する。非認知能力の育成に向け、幼児期からの学びの基盤づくりや体験的な活動を推進する。ICTも効果的に活用して、いじめ・不登校・自殺への対応や特別支援教育の推進を図る。デジタル時代で求められる教師の役割や質の変化等に対応するため、外部人材の登用を含む教員免許制度等に関する抜本改革を検討し、結論が出たものは年度内から見直す。高度人材教育や起業家教育を強化するため、企業等と連携・協働した教育プログラムの実施、高等専門学校の高度化・国際化、大学の学部段階における文理融合教育、キャンパスの共創拠点化等を推進する。感染症による影響を含め、高等教育無償化等の実施状況の検証を行い、中間所得層における大学等へのアクセス状況等を見極めつつ、その機会均等について検討する。

世界トップレベルの研究基盤の構築に向け、本年度中に運用を始める大学ファンドについて、経営と教学の分離の推進、外部資金の拡大等の参画大学の要件を年内に具体化するとともに、大学改革の制度設計等を踏まえつつ、10 兆円規模への拡充について、本年度内に目途を立てる。研究の生産性を高めるため、研究DXを推進するとともに、研究を支える専門職人材の配置を促進する。基礎研究を始めとする研究力の強化に向け、優れた研究者や留学生が世界中から集まる多様性に富んだ国際研究拠点の形成や国際共同研究等の充実により、感染症で停滞した国際頭脳循環を推進する。社会課題の解決に向け、研究成果を社会実装につなげるために、スタートアップの創出や産学官の共創によるイノベーション・エコシステムの全国的な形成を促進する。スタートアップを生み出し、その規模を拡大する環境の整備を進めるため、兼業の仕組みを改革するとともに、資金調達環境の整備や大企業との取引適正化を始めとした包括的な支援策を講じていく。知財戦略74を推進するとともに、官民が連携し、先端技術・システム等の標準活用戦略を加速する。破壊的イノベーションの創出に向けた優れた人材の発掘、創発的研究の推進、ムーンショット型研究開発の抜本的な強化とともに、我が国における重要分野の研究開発を推進する。

(2)女性の活躍

今般の感染症の拡大によって顕在化した配偶者等からの暴力や性暴力の増加・深刻化の懸念や女性の雇用・所得への影響、女性の自殺者の増加等は、男女共同参画の重要性を改めて認識させることとなった。支援を必要とする女性が誰一人取り残されることのないよう、今ほど男女共同参画の視点が求められている時代もない。

全ての女性が輝く令和の社会を実現するために、「第5次男女共同参画基本計画」及び「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」77に基づき、女性デジタル人材育成、ひとり親に対する職業訓練、「生理の貧困」への支援など女性に寄り添った相談支援、妊産婦への支援といったコロナ禍で大きな影響を受けている女性への支援、養育費の不払い解消、女性の登用・採用の拡大を含めた幅広い分野における政策・方針決定過程への女性の参画拡大、性犯罪・性暴力対策の強化などの取組みを推進する。また、緊急避妊薬を処方箋なしに薬局で適切に利用できるようにすることについて、本年度中に検討を開始し、国内外の状況等を踏まえ、検討を進める。感染症に伴う配偶者等からの暴力の増加、深刻化の懸念を踏まえ、相談体制の充実などの取組みを引き続き推進する。また、非正規雇用労働者に女性が多いことを踏まえ、非正規雇用労働者の待遇改善を図るとともに、出産後に女性の正規雇用比率が低下するいわゆるL字カーブの解消に向け、女性の正規化への重点的な支援、男性の育児休業取得促進を図る。さらに、安全・安心な親子の面会交流のための具体策の検討を進める。

IT分野を始めとした理工系分野において、特に女性の身近なロールモデルを創出するとともに、本分野の女性教員の割合を向上する取組を進める。学校推薦型選抜や総合型選抜に女子を対象とする枠の設定やオープンキャンパスの実施、女子学生向けのSTEAM 教育拠点の整備、理系分野で優れた業績を残している女性研究者の話を聞くことができる機会の充実等の総合的な支援策を講ずることにより、地方大学を含めた理工系学部における女子学生の割合の向上を促す。

(3)若者の活躍

若者のキャリア形成を支えるため、ジョブ型雇用の推進などにより多様な働き方の実現を図るとともに、公的職業訓練やリカレント教育を、デジタル化等の産業構造の変革に対応できる人材や、その変革をリードする人材を育成できるものへ強化していく。

若手研究者の活躍を促進するため、安定的な経済的支援による博士課程学生の処遇向上や研究に専念できる環境の確保、競争的研究費における効果的な枠設定等による若手研究者への重点化や手続の簡素化・効率化、より多くの若手研究者が活躍する大学への運営費交付金の重点配分を行う。産業界への就職、起業といった様々なキャリアパスを円滑に歩むことができる官民連携教育プログラムを拡大する。研究者の起業や兼業を促すためのガイドラインを充実するとともに、大学に対し、勤務時間外だけの兼業を認める規則等の見直しや手続きの簡素化・迅速化を含め、研究者等の起業を総合的に支援する体制の整備を促す。加えて、高校卒業者の就職に係る一人一社制79の在り方について、各都道府県における検討を促す。

また、政策決定過程において、とりわけ若年世代や世代間合意が不可欠な分野の施策について、若者の意見が積極的かつ適切に反映されるよう、各種審議会、懇談会等の委員構成に配慮する。

(4)セーフティネット強化、孤独・孤立対策等

(求職者支援制度等のセーフティネットの強化)

今般の感染症の影響を踏まえ特例措置を講じた、第2のセーフティネットである求職者支援制度や、高等職業訓練促進給付金について、更なる拡充も見据え、その成果や課題を検証した上で、財源の在り方も含めて見直す。就労経験のない職業に就くことを希望する方をトライアル雇用で受け入れた企業への支援について、進捗管理を適切に行いながら引き続き効果的に実施し、活用状況や課題の検証を踏まえ、必要な改善を検討する。非正規雇用労働者等やフリーランスといった経済・雇用情勢の影響を特に受けやすい方へのセーフティネットについて、生活困窮者自立支援制度や空き家等を活用した住宅支援の強化を含めその在り方を検討するとともに、被用者保険の更なる適用拡大及び労災保険の特別加入の拡大を着実に推進する。社会福祉法人の「社会福祉充実財産」を地域公益事業に積極的に振り向ける方策を講ずる。

マイナンバー制度を活用し、リアルタイムで世帯や福祉サービスの利用状況、所得等の情報を把握することにより、プッシュ型で様々な支援を適時適切に提供できる仕組みの実現に向けた工程を次期デジタル・ガバメント実行計画で具体化する。

(孤独・孤立対策)

孤独・孤立対策については、電話・SNS相談の 24 時間対応の推進や人材育成等の支援、アウトリーチ型支援体制の構築、支援情報が網羅されたポータルサイトの構築、タイムリーな情報発信、いわゆる「社会的処方」80の活用、支援の求め方に関する教育啓発、孤独・孤立の実態把握の全国調査とPDCAの取組を推進する。これらを含め、関連する分野・施策との連携に留意しつつ、孤独・孤立対策の重点計画を年内に取りまとめ、安定的・継続的に支援する。特に、孤独・孤立対策に取り組むNPO等の活動へのきめ細かな支援や政策立案に当たってのNPO等との対話を推進する。また、ひきこもり支援について、現状の支援施策を再点検した上で、ひきこもりに至った要因と将来も考慮した息の長い支援の実施、良質な支援者の育成と支援手法の開発等の取組を推進する。こうした官・民・NPO等の取組の連携強化の観点から、各種相談支援機関、NPO等の連携の基盤となるプラットフォームの形成を支援し、人と人とのつながりを実感できる地域づくりや社会全体の機運醸成を図りつつ、官民一体で取組を推進する。

(共助・共生社会づくり)

SDGs実現を含む社会的課題に取り組む民間の活動に対し、民間の寄附や資金、人材を広く呼び込む多様な社会的ファイナンスの活用を促進する。特に、休眠預金の更なる利活用を促進すべく、必要な運営面の強化・改善と合わせ、事業規模の段階的拡大や年度途中の予期せぬ事態等にも迅速に対応できる仕組みの改善・充実等について検討を進め、速やかに実行に移す。NPO法81に基づく各種事務のオンライン化の促進を含め、NPO法人の活動促進に向けた環境整備を進めるとともに、官民連携による協働の促進を図る。

感染症下において、複雑化する社会的課題を官民連携により効率的、効果的に解決していくため、SIB82を含む、複数年にわたる成果連動型民間委託契約方式(Pay For Success:PFS)を幅広い分野で積極的に活用する。また、同事業実施効果としての社会的便益、社会的コスト等に係るデータの整備、提供を行う。

「認知症施策推進大綱」に基づく施策を実施するとともに、成年後見制度の利用を促進する。ヤングケアラーについて、早期発見・把握、相談支援など支援策の推進、社会的認知度の向上などに取り組む。医療的ケアが必要な子供を含む障害のある子供の学びの環境整備や障害者の生涯学習を推進する。性的指向、性自認に関する正しい理解を促進するとともに、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進める。

(就職氷河期世代への支援等)

現在主に 30 代半ばから 40 代後半の就職氷河期世代は、不本意ながら不安定な仕事に就いている方々も多く、感染症の影響などにより厳しい状況にある中、3年間の集中的な取組により正規雇用者を 30 万人増やすとの目標の実現を目指し、就労や社会参加を強力に支援する。

就職氷河期世代支援の推進に向けた全国プラットフォームの開催や都道府県プラットフォームの運営に加え、市町村プラットフォームの本年度内の設置・運営を目指すほか、地域就職氷河期世代支援加速化交付金を活用して、2020 年度から3年間、就職氷河期世代の支援に取り組む地方自治体を強力に後押しし、地域における取組を広げていく。

就職氷河期世代の就職につなげるステップとして期待される社会人インターンシップに関する実態調査を本年度に実施し、その結果を踏まえて適切に対応する。

さらに、公務員での採用を推進するため、国では、2020 年度から3年間、国家公務員中途採用者選考試験(就職氷河期世代)を実施するほか、既存の経験者採用等の取組についても着実に継続する。地方でも、地方自治体の実情を踏まえた積極的な地方公務員としての採用が行われるよう、国として引き続き要請していく。

また、感染症の影響の下、第二の就職氷河期世代を作らないよう83、新卒者及び3年以内既卒者に対する就職支援のため、採用意欲のある中小企業とのマッチング促進等に加え、新卒応援ハローワーク等における相談支援を強力に推進する。

(5)多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践、リカレント教育の充実

(フェーズⅡの働き方改革、企業組織の変革)

感染症の影響からテレワークの拡大などの変化を後戻りさせず、働き方改革を加速させる。「新たな日常」の象徴であるテレワークについては、ワンストップ相談窓口の設置等、企業における導入を支援するとともに、ガイドライン84の普及に取り組む。労働時間削減等を行ってきた働き方改革のフェーズⅠに続き、メンバーシップ型からジョブ型の雇用形態への転換を図り、従業員のやりがいを高めていくことを目指すフェーズⅡの働き方改革を推進する。

ジョブ型正社員の更なる普及・促進に向け、雇用ルールの明確化や支援に取り組む。裁量労働制について、実態を調査した上で、制度の在り方について検討を行う。兼業・副業の普及・促進のため、ガイドライン86の周知、取組事例の横展開等に取り組む。選択的週休3日制度について、育児・介護・ボランティアでの活用、地方兼業での活用などが考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促し、普及を図る。また、フリーランスについて、ガイドライン87を踏まえ、関係法令88の適切な適用等を行うとともに、事業者との取引について書面での契約のルール化などを検討する。これらの取組により、多様で柔軟な働き方を選択でき、安心して働ける環境を整備する。あわせて公的職業訓練における在職者の訓練の推進、教育訓練休暇の導入促進等を含め、働きながら学べる仕組みを抜本的に見直すとともに、周知を徹底することにより、その活用を図る。また、民間求人メディア等についてマッチング機能の質を高めるためのルール整備やハローワークとの情報共有の仕組みの構築に取り組む。

コーポレートガバナンス改革を進め、我が国企業の価値を高めていく。女性、外国人、中途採用者の管理職への登用について測定可能な目標の開示を促進する。トップ経営者の多様性を確保し、若者を抜擢し、転職・起業を応援するなど、企業組織・企業文化の変革を働きかける。

国家公務員について、能力・実績主義の人事管理を徹底し、民間人材の活用を含む適材適所の人材配置を行う。業務効率化・デジタル化及びマネジメント改革を徹底し、長時間労働の是正につなげるとともに、定年引上げに当たり、各年齢層の職員の能力発揮につながる業務分担の在り方等に係る方針を本年度末までに策定し、働き方改革を推進する。

(リカレント教育等人材育成の抜本強化)

年代・目的に応じた効果的な人材育成に向け、財源の在り方も含め検討し、リカレント教育を抜本的に強化する。企業を通じた支援のみならず、個人への直接給付も十分に活用されるよう、教育訓練給付の効果検証により、その内容が労働市場のニーズによりマッチするよう不断の見直しを行うなど、その活用を推進する。企業や訓練機関の教育訓練において、一人ひとりの目的・状況に応じたプログラムの柔軟化・多様化を推進する。

博士号・修士号の取得を促すとともに、これらを有する企業人材やデジタル人材等の高度人材の育成を図る。このため、産学官連携の下、時代や企業のニーズに合ったリカレントプログラムを大学・大学院・専門学校等において積極的に提供する。企業、受講者、大学等に対する具体的なインセンティブ措置を検討89し、必要な施策を講じてリカレント教育を推進する。博士号取得者の採用拡大に向け、企業との集中的なマッチング機会を支援する。

40 歳を目途に行うキャリアの棚卸しや起業、地方企業への転職、NPO等での活躍等に向け、資格取得やキャリアコンサルティング、マッチング等の支援を強化する。オンラインや土日・夜間の講座の拡大を図るとともに、内容の検索機能や情報発信を充実する。

時代が変わる中で非正規の離職者等が市場ニーズにあった技能を身に付けた上で再就職できるよう、求職者支援制度や高等職業訓練促進給付金を不断に見直し、デジタル教育などの能力開発や資格取得を支援する。

(6)経済安全保障の確保等

安全保障の裾野が経済・技術分野に急速に拡大するとともに、コロナ禍によりサプライチェーン上の脆弱性が国民の生命や生活を脅かすリスクが明らかになる中、経済安全保障の取組を強化・推進する。このため、経済安全保障に係る戦略的な方向性として、基本的価値やルールに基づく国際秩序の下で、同志国との協力の拡大・深化を図りつつ、我が国の自律性の確保・優位性の獲得を実現することとし、こうした観点から重要技術を特定し、保全・育成する取組を強化するとともに、基幹的な産業を強靱化するため、今後、その具体化と施策の実施を進める。

以下の緊急を要する課題については、順次、対応方針を固め、既存事業との整理等を行いつつ、必要な取組を進める。

経済安全保障の強化推進のため、シンクタンク機能も活用しながら、先端的な重要技術について実用化に向けた強力な支援を行う新たなプロジェクトを創出するとともに、重要な技術情報の保全と共有・活用を図る仕組みを検討・整備する。

外為法90上の投資審査・事後モニタリングについて、関係府省庁の連携強化を進めつつ、執行体制の強化を図るとともに、指定業種の在り方に係る検討を行う。既存の国際輸出管理レジームを補完する新たな安全保障貿易管理の枠組みの早期の実現を目指す。外為法上のいわゆる「みなし輸出」の管理強化について、2022 年度までに実施する。留学生・研究者等の受入れの審査強化に資する体制整備等を推進する。特許の公開制度について、各国の特許制度の在り方も念頭に置いた上で、イノベーションの促進と両立させつつ、安全保障の観点から非公開化を行うための所要の措置を講ずるべく検討を進める。競争的研究費申請時に外国資金等の受入れ等の開示を求めるなど、研究インテグリティに資する必要な取組を進める。

基幹的なインフラ産業について、経済安全保障の観点も踏まえつつ、インフラ機能の維持等に関する安全性・信頼性を確保するため、機器・システムの利用や業務提携・委託等を通じたリスクへ対処するための所要の措置を講ずるべく検討を進める。

我が国のサプライチェーンを強靱化していく観点から、半導体、レアアースを含む重要鉱物、電池、医薬品等の先行的な重点項目について必要な措置を実施するとともに、電力、ガス、石油、通信、航空、鉄道、海上物流、医療を始めとする重要業種について必要な対策を講ずるべく分析を進める。

我が国の経済安全保障の強化推進のための先端的な重要技術に係る研究開発力を強化するとともに、サプライチェーン上の重要技術・物資の生産・供給能力など戦略的な産業基盤を国内に確保するため、主要国の動向も念頭に、中長期的な資金拠出等を確保する枠組みも含めた支援の在り方を検討し、早期の構築を目指す。経済安全保障の取組を関係府省庁が一層連携して実施していく観点から、推進体制を整備するとともに、関係府省庁における体制を強化する。インテリジェンス能力を強化するため、情報の収集・分析・集約・共有等に必要な体制を整備する。

これらの経済安全保障の取組について、今後、施策を推進していく上で必要となる制度整備を含めた措置を講ずるべく検討を進める。

また、我が国の基幹的な産業が抱える複雑化したリスクに対応するため、経済社会情勢の動向を注視しつつ、引き続き、これらの脆弱性等を点検・把握し、必要な対策を講じる取組を継続・深化していく。

(7)戦略的な経済連携の強化

(グリーン・デジタルを始めとする戦略的国際連携)

グリーン化やデジタル化を軸とした世界経済の構造変化に戦略的に対応し、官民がより効果的に連携して、国際的なルール作りに指導力を発揮する。

本年4月の日米首脳会談で立ち上げられた「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」に基づき、①半導体等のサプライチェーン強靱化を含む競争力・イノベーション、②感染症対策・グローバルヘルス・健康安全保障、③グリーン成長・気候変動、の3つの分野を中心に、米国との連携・取組を強化する。

本年4月の気候サミットで各国が示した排出削減目標の引上げや気候変動対策の強化等の国際的な動向を踏まえ、国内の2050 年カーボンニュートラルに向けた取組とともに、我が国が誇る技術を最大限活用した世界の脱炭素移行への支援等を通じ、COP26 及びその先に向け、脱炭素化のリーダーシップをとる。

デジタル時代の「信頼性のある自由なデータ流通94」のためのルール作りに向け、我が国が共同議長国を務めるWTO電子商取引交渉等を通じリーダーシップを発揮する。デジタル経済に対応した国際課税上の対応について、解決策の国際的な合意に向け積極的に貢献するとともに、国際的議論等も踏まえ、我が国企業の競争力強化、経済活性化に資する公正な課税の在り方を検討する。

質の高いインフラ投資を推進し、ポストコロナを見据えた「インフラシステム海外展開戦略 2025」に基づく施策を着実に進める。

SDGsについては、我が国として官民が連携して社会全体の行動変容に取り組み、国際ルールづくりを主導し、イノベーションや関連投資・事業を強化する。特に、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現・具体化を始め、環境・気候変動・エネルギー、水循環等の分野で関連する取組や投資を強化し、世界をリードする。女性、防災、教育、デジタル化等の分野でも取組を進める。保健分野では、グローバルヘルスに関する戦略を策定し、官民資金の拡充を図りつつ、国際的な感染症予防体制強化95など世界の保健課題の解決に貢献し、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の達成を目指す。

2025 年大阪・関西万博を始め、今後予定される大規模国際大会等に向け着実に準備を進める。

(TPP等経済連携の拡充・強化)

多国間主義を重視し、TPP11 やRCEP協定等で推進してきた自由で公正な経済圏の拡大、ルールに基づく多角的貿易体制の維持・強化に取り組み、世界経済の発展を我が国の経済成長に取り込むとともに、望ましい経済秩序の形成に主導的役割を果たす。

インド太平洋地域での協力等を通じ、経済連携をさらに推進し、自由で公正な貿易・投資ルールの実現を牽引する。また、WTO改革に積極的に取り組む。

TPP11 については、本年のTPP委員会議長国として、着実な実施及び拡大に向けた議論を主導していく。また、RCEP協定の早期発効及び履行の確保に取り組む。米国、EU及び英国とは、日米貿易協定、日EU・EPA及び日英EPA等を通じ経済関係をさらに強化する。

総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく施策を実施する。投資関連協定やODAを活用し、企業の海外展開を促進する。

(8)成長力強化に向けた対日直接投資の推進、外国人材の受入れ・共生

(対日直接投資の推進)

海外から高度な人材・技術・資金を取り込み、我が国の技術力・研究開発力と結び付け、イノベーション創出、サプライチェーン強靱化等につなげていくため、対日直接投資を一層推進する。このため、「対日直接投資残高を2030 年に 80 兆円、GDP比で 12%とすることを目指す」ことを新たなKPIとして設定する101。将来的には、可能な限り、更なる高みを目指して必要な取組を進める。KPIの達成に向け、先端半導体や洋上風力関連機器といったデジタル、グリーン分野等における外国企業の生産拠点立地や日本企業との協業の促進、スタートアップ、大学発ベンチャーの創出など創造的で活力のあるイノベーション・エコシステムの構築、観光・農林水産品など地域の強みを活かした投資の促進等を官民連携の下、着実かつ一体的に実行する。その際、対日直接投資が国の安全等を損なうおそれがないよう、安全保障上の観点から万全の取組を実施する。

(国際金融センターの実現)

世界に開かれた国際金融センター実現のため、新規参入の海外銀行・証券会社への金融行政の英語対応や、高度金融人材の特性に応じた在留資格上のポイント付与等の円滑化・迅速化に向けた環境整備を行うとともに、年金等国内の大規模運用機関の運用方針を含む海外金融機関の関心が高い情報を戦略的に発信する。

(外国人材の受入れ・共生)

感染症の影響を踏まえ、感染拡大防止策を講じつつ、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」102の施策を着実に実施する。高度外国人材の受入れや活躍を推進するほか、特定技能制度の受入分野追加は、分野を所管する行政機関が人手不足状況が深刻であること等を具体的に示し、法務省を中心に適切な検討を行う。技能実習制度について人権への配慮等の運用の適正化103を行う。これらを含めて、施行2年後の制度の在り方に関する見直しの検討を行う。加えて、不法滞在者に対する長期収容等の課題解消に取り組む。また、在留カードとマイナンバーカードの一体化の検討を進めるとともに、外国人が暮らしやすい地域社会づくり、在留手続におけるデジタル化の推進等の施策の充実を図る。さらに、外国人の支援団体への支援の在り方を含め、外国人との共生社会の在り方とその実現に向けて取り組むべき中長期的な課題及び方策等を示し、推進する。

(9)外交・安全保障の強化

「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米同盟を基軸としつつ、ASEAN、豪州、インド、欧州、太平洋島しょ国など基本的価値を共有する国・地域との協力を深化させる。法の支配を確立する取組等を推進し、国際機関邦人職員の増強、国際裁判を含む紛争処理制度の効果的活用を図る。現下の国際情勢を踏まえ、我が国らしい人権外交を主体的かつ積極的に進める。

第8回アフリカ開発会議に向け、官民一体で諸課題の解決に貢献する。

北朝鮮との関係については、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指す。国際社会における軍縮・不拡散の取組に積極的に貢献する。

ODAによる開発協力を強化する104。戦略的対外発信の更なる強化を行う。また、親日派・知日派の拡充に取り組む。

現地の感染症の状況等を踏まえ、邦人保護に係る領事体制の更なる強化を図る。

これらの取組の基盤として、人的体制、在外公館の整備やデジタル化等を図り、外交実施体制の整備を推進する。

周辺各国が防衛費の大幅な増額等により軍事力の強化を図るなど、我が国周辺の安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増す中、国家安全保障戦略等に基づき、弾薬の確保や装備品の維持整備、宇宙・サイバー・電磁波といった新領域を含む統合運用、多様な経空脅威への対処能力等、こうした変化への対応に必要な防衛力を大幅に強化する。あわせて、防衛分野での技術的優越の確保等のため、研究開発や防衛産業基盤を強化する。質の高い自衛隊員の十分な確保や処遇改善等を通じた人的基盤の強化、在日米軍再編事業の推進等を図る。抑止力の強化について、引き続き政府において検討を行う。

また、海洋状況把握の能力強化のほか、十分な装備を保有した巡視船の増強、老朽代替の促進、無操縦者航空機による新技術を活用した監視能力の強化、人材育成等海上保安体制を強化する。

(10)安全で安心な暮らしの実現

良好な治安確保のため、関係府省庁間で必要に応じ連携し、テロの発生の未然防止やサイバーセキュリティ対策等を着実に進めるとともに、金融業界の検査・監督体制等の強化や共同システムの実用化の検討・実施を含め、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の強化に取り組む。

再犯防止対策について、保護司等の民間協力者と協働した満期釈放者対策等や性犯罪に係る支援事業を充実させる。総合法律支援の充実・強化を図るほか、司法分野におけるデジタル化を推進する。インターネット上の誹謗中傷等の人権侵害への対策を充実・強化する。「第4次犯罪被害者等基本計画」に基づき、犯罪被害者等施策を推進する。京都コングレスの成果展開等の「司法外交」を外交一元化の下推進し、国際法務人材育成を進める。

安全・安心な消費者取引の環境整備のため、デジタル広告における表示の適正化やデジタル・プラットフォーム事業者における自主的な取組の促進等を進める。また、相談体制や被害救済手続の整備を図るとともに、消費者志向経営や食品ロス削減等を推進する。

第3章 感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革

1.経済・財政一体改革の進捗・成果と感染症で顕在化した課題

(経済・財政一体改革の進捗と評価)

「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、骨太方針 2018において策定された新経済・財政再生計画では、経済と財政の一体的な再生を目指し、全ての団塊世代が75 歳になるまでに、財政健全化の道筋を確かなものとする必要があると示した。2025 年度の国・地方を合わせたPB黒字化と、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す財政健全化目標を設定するとともに、「基盤強化期間」(2019 年度~2021 年度)、歳出の目安、主要分野ごとの改革の基本方針・重要課題を策定・設定し、「改革工程表」による具体化を行うなどの取組を進めてきた。

経済面では、感染症による危機前までは概ねプラス成長が続いたものの、世界経済の減速や生産性上昇率の低迷等により、財政健全化に必要とされた実質2%程度、名目3%程度を上回る成長は実現できていない。

歳出面では、目安が目標達成のための財政規律としての役割を果たしてきた。消費税率引上げに伴う経済変動に対しては臨時・特別の措置で対応するとともに、感染症・災害に対し補正予算等により機動的なマクロ経済運営を行ってきた。このように政策の優先順位付けを厳正に行いつつ、時々の課題に迅速に対応する枠組みは、国民負担の抑制や需要変動の抑制等を通じ、持続的な経済成長に寄与したと考えられる。歳入面では、2019 年 10 月に消費税率を8%から 10%に引上げた。国・地方税収は2018 年度に過去最高の104.4 兆円に達した。

(感染症の影響と顕在化した新たな課題)

「基盤強化期間」の半ばに発生した感染症に対応するため経済対策を適時適切に講じた結果、失業率や所得水準などの面で、わが国経済の落ち込みは主要先進国に比べ小さなものとなったが、経済は依然として感染症前の水準を下回っている。財政面では、感染症後の税収減及び関連補正予算等の歳出増により、PB対GDP比は足元で改善軌道から大きく乖離する見込みである。ワクチン接種等を通じて経済の正常化が進み、税収が回復し一時的な歳出増が剥落すれば、感染症前の状況に近づくものの、感染症が中長期的な経済財政に与える影響は未だ不透明な状況にある。

感染症は、経済・財政一体改革を進める上でも、緊急時・平時の間での医療人員・資源の配分の在り方、国民の必要とする行政のデジタル化やオンライン教育についての自治体間の格差、ルール・仕様等の標準化の必要性など様々な課題を浮き彫りにした。ポストコロナも見据えて、こうした課題に対応できる体制を構築・強化していくとともに、感染症の状況も見極めながら、地方財政も含め財政構造を平時モードに戻していく必要がある。

2.社会保障改革

(1)感染症を機に進める新たな仕組みの構築

今般の感染症対応での経験を踏まえ、国内で患者数が次に大幅に増えたときに備えるため、また、新たな新興感染症の拡大にも対応するため、平時と緊急時で医療提供体制を迅速かつ柔軟に切り替える仕組みの構築が不可欠である。このため、症状に応じた感染症患者の受入医療機関の選定、感染症対応とそれ以外の医療の地域における役割分担の明確化、医療専門職人材の確保・集約などについて、できるだけ早期に対応する。

あわせて、今般の感染症対応の検証や救急医療・高度医療の確保の観点も踏まえつつ、地域医療連携推進法人制度の活用等による病院の連携強化や機能強化・集約化の促進などを通じた将来の医療需要に沿った病床機能の分化・連携などにより地域医療構想を推進するとともに、かかりつけ医機能の強化・普及等による医療機関の機能分化・連携の推進、更なる包括払いの在り方の検討も含めた医療提供体制の改革につながる診療報酬の見直し、診療所も含む外来機能の明確化・分化の推進、実効的なタスク・シフティングや看護師登録制の実効性確保110並びに潜在看護師の復職に係る課題分析及び解消、医学部などの大学における医療人材養成課程の見直しなどにより、質が高く効率的で持続可能な医療提供体制の整備を進める。オンライン診療を幅広く適正に活用するため、初診からの実施は原則かかりつけ医によるとしつつ、事前に患者の状態が把握できる場合にも認める方向で具体案を検討する。また、引き続き、安心・安全な産科医療の確保及び移植医療を推進する。

予防・健康づくりサービスの産業化に向けて、包括的な民間委託の活用や新たな血液検査等の新技術の積極的な効果検証等が推進されるよう、保険者が策定するデータヘルス計画の手引の改定等を検討する。また、同計画の標準化の進展にあたり、アウトカムベースでの適切なKPIの設定を推進する。革新的な医薬品におけるイノベーションの評価の観点及びそれ以外の長期収載品等の医薬品について評価の適正化を行う観点から薬価算定基準の見直しを図るとともに、OTC類似医薬品等の既収載の医薬品の保険給付範囲について引き続き見直しを図る。感染症を踏まえた診療報酬上の特例措置の効果を検証するとともに、感染症患者を受け入れる医療機関に対し、減収への対応を含めた経営上の支援や病床確保・設備整備等のための支援について、診療報酬や補助金・交付金による今後の対応の在り方を検討し、引き続き実施する。後発医薬品に係る新目標111についての検証、品質及び安定供給の信頼性確保、保険者の適正化の取組にも資する医療機関等の別の使用割合を含む実施状況の見える化を早期に実施し、バイオシミラーの目標設定の検討、新目標との関係を踏まえた後発医薬品調剤体制加算等の見直しの検討、フォーミュラリ112の活用等、更なる使用促進を図る。多剤・重複投薬への取組を強化する。症状が安定している患者について、医師及び薬剤師の適切な連携により、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討し、患者の通院負担を軽減する。

サプライチェーンの実態把握や非常時における買い上げの導入など緊急時の医薬品等の供給体制の確立を図る。緊急時の薬事承認の在り方について検討する。

医療・特定健診等の情報を全国の医療機関等で確認できる仕組みや民間PHRサービスの利活用も含めた自身で閲覧・活用できる仕組みについて、2022 年度までに、集中的な取組みを進めることや、医療・介護分野におけるデータ利活用やオンライン化の加速、科学的介護・栄養の取組みの推進、今般の感染症の自宅療養者に確実に医療が全員に提供されるよう医療情報を医療機関等と共有する仕組みの構築(必要な法改正を含め検討)、審査支払機関改革の着実な推進など、データヘルス改革に関する工程表を踏まえ、改革を着実に推進する。

全ゲノム解析等実行計画を着実に推進し、治療法のない患者に新たな個別化医療を提供するべく、産官学の関係者が幅広く分析・活用できる体制整備を進める。患者の治験情報アクセス向上のためデータベースの充実を推進する。

医療法人の事業報告書等をアップロードで届出・公表する全国的な電子開示システムを早急に整え、感染症による医療機関への影響等を早期に分析できる体制を構築する。同様に、介護サービス事業者についても、事業報告書等のアップロードによる取扱いも含めた届け出・公表を義務化し、分析できる体制を構築する。レセプトシステム(NDB)の充実、G-MISの今般の感染症対策以外の長期的な活用、COCOAの安定的な運営等について、デジタル庁の統括・監理の下、デジタル化による効率化、利便性の向上を図る。あわせて、医療・介護データとの連携や迅速な分析の環境の整備を図る。

全身との関連性を含む口腔の健康の重要性に係る国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診、オーラルフレイル対策・重症化予防にもつながる歯科医師、歯科衛生士による歯科口腔保健の充実、歯科医療専門職間、医科歯科、介護、障害福祉機関等との連携を推進し、飛沫感染等の防止を含め歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。今後、要介護高齢者等の受診困難者の増加を視野に入れた歯科におけるICTの活用を推進する。

(2)団塊の世代の後期高齢者入りを見据えた基盤強化・全世代型社会保障改革

骨太方針 2020114等の内容に沿って、社会保障制度の基盤強化を着実に進め、人生 100 年時代に対応した社会保障制度を構築し、世界に冠たる国民皆保険・皆年金の維持、そして持続可能なものとして次世代への継承を目指す。

2022 年度から団塊の世代が 75 歳以上に入り始めることを見据え、全ての世代の方々が安心できる持続可能な全世代型社会保障の実現に向けた取組について、その実施状況の検証を行うとともに、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、保険料賦課限度額の引上げなど能力に応じた負担の在り方なども含め、引き続き、医療、介護、年金、少子化対策を始めとする社会保障全般の総合的な検討を進める。

効率的な医療提供体制の構築や一人当たり医療費の地域差半減に向けて、地域医療構想のPDCAサイクルの強化や医療費適正化計画の在り方の見直しを行う。具体的には、前者について、地域医療構想調整会議における協議を促進するため、関係行政機関に資料・データ提供等の協力を求めるなど115環境整備を行うとともに、都道府県における提供体制整備の達成状況の公表や未達成の場合の都道府県の責務の明確化を行う。また、後者について、都道府県が策定する都道府県医療費適正化計画(以下「都道府県計画」という。)における医療に要する費用の見込み(以下「医療費の見込み」という。)については、定期改訂や制度別区分などの精緻化を図りつつ、各制度における保険料率設定の医療費見通しや財政運営の見通しとの整合性の法制的担保を行い、医療費の見込みを医療費が著しく上回る場合の対応の在り方など都道府県の役割や責務の明確化を行う。また、医療費の見込みについて、取組指標を踏まえた医療費を目標として代替可能であることを明確化するとともに、適正な医療を地域に広げるために適切な課題把握と取組指標の設定や、取組指標を踏まえた医療費の目標設定を行っている先進的な都道府県の優良事例についての横展開を図る。都道府県計画において「医療の効率的な提供の推進」に係る目標及び「病床の機能の分化及び連携の推進」を必須事項とするとともに、都道府県国保運営方針においても「医療費適正化の取組に関する事項」を必須事項とすることにより、医療費適正化を推進する。あわせて保険者協議会を必置とするとともに、都道府県計画への関与を強化し、国による運営支援を行う。審査支払機関の業務運営の基本理念や目的等へ医療費適正化を明記する。これらの医療費適正化計画の在り方の見直し等について、2024 年度から始まる第4期医療費適正化計画期間に対応する都道府県計画の策定に間に合うよう、必要な法制上の措置を講ずる。国保財政を健全化する観点から、法定外繰入等の早期解消を促すとともに、普通調整交付金の配分の在り方について、引き続き地方団体等と議論を継続する。中長期的課題として、都道府県のガバナンスを強化する観点から、現在広域連合による事務処理が行われている後期高齢者医療制度の在り方、生活保護受給者の国保及び後期高齢者医療制度への加入を含めた医療扶助の在り方の検討を深める。

一人当たり介護費の地域差縮減に寄与する観点から、都道府県単位の介護給付費適正化計画の在り方の見直しを含めたパッケージを国として示し、市町村別にその評価指標に基づき取組状況を見える化する。また、調整交付金の活用方策について、第8期介護保険事業計画期間における取組状況も踏まえつつ、引き続き地方団体等と議論を継続する。

3.国と地方の新たな役割分担等

(今回の感染症対策で直面した課題等への対応)

今回の感染症対応で明らかとなった医療提供体制の広域的対応の遅れ、特に大都市圏における広域的対応の未進捗に対処する必要がある。このため、厚生労働省は、大都市圏における第3次医療圏を超えた医療機関・保健所サービスの提供等について、広域的なマネジメントや自治体間の役割分担の明確化を図る。総務省は、内閣官房及び厚生労働省等の協力を得て、国と都道府県の関係、大都市圏における都道府県間の関係及び都道府県と市町村(政令市や特別区を含む)との関係について、今回の感染症対応で直面した課題等を踏まえ、地方制度調査会等において検討を進め改善に向けて取り組む。さらに、国と地方の新たな役割分担について、行政全般の広域化についての具体的推進、自治体間の役割分担の明確化の観点から、法整備を視野に入れつつ検討を進める。

(自治体間の補完・連携等)

人口減少が著しい地方部では、行政サービスの確保に向けて、デジタル技術等を活用しながら、市町村間の広域連携や都道府県による小規模市町村の補完等の対応を進める必要がある。このため、厚生労働省は、介護保険事務のうち事業所の指導・監査等について、都道府県による小規模自治体の支援を推進するため必要な措置をとる。文部科学省は、教育のデジタル環境整備に向け、イニシアティブを取って、教育データ、デジタル教科書、統合型校務支援システム等の標準化・統一化やプラットフォームの提供を進めるなど、都道府県等とも連携し市町村間の格差を防止・解消する取組を強化する。総務省及び各府省庁は、自治体が必要とする専門人材の育成や活用・派遣について、広域連携や都道府県による補完を推進する。また、市町村が策定する計画は特段の支障がない限り原則として共同策定を可能とする。このため、内閣府及び総務省は各府省庁に対し制度・運用の見直し等必要な措置の検討を求める。立地適正化・地域公共交通計画について、一体的・広域的策定を推進する。

(地方財政改革及び地方行財政の「見える化」改革)

自治体業務改革・デジタル化、地方公営企業改革、上下水道の広域化・料金の適正化、地方財政改革及び地方行財政の「見える化」改革を引き続き推進する。感染症対応として実施された地方創生臨時交付金などの自治体の自由度が高い予算措置について、事業の使途等の比較検証を行うとともに、感染収束後、早期に地方財政の歳出構造を平時に戻す。総務省は、デジタル化等による地方公会計の財務書類等を始めとする地方財政データのより迅速な公表に取り組む。

4.デジタル化等に対応する文教・科学技術の改革

教育・研究環境のデジタル化の遅れや関連する社会課題への対応を加速するため、教育内容・制度の転換を迅速に図りつつ、科学技術・イノベーション政策を戦略的に推進する。GIGAスクール構想や小学校における 35 人学級等の教育効果を実証的に分析・検証する等の取組を行った上で、今後の学校の望ましい教育環境や指導体制の在り方を検討するとともに、感染症により対面教育が困難な地域を含め、災害等が生じた場合にいつでもオンライン教育に移行できる態勢を年内に全国で整える。以上の進捗状況と今後の工程管理を年内に示し、教育の質の向上と学習環境の格差防止に取り組む。

デジタル化に伴う学生の多様な学びのニーズに対応するため、施設等の基準、定員管理、授業方法等に関する大学設置基準等の見直しについて年度内に結論を得て、順次改訂する。国は、真に独立した、個性的、戦略的自律経営を行う、世界に伍する国立大学を実現するため、国立大学との新たな自律的契約関係の法的枠組みにつき、年内に結論を得る。ガバナンス抜本改革等と合わせ、法制化を行う。手厚い税制優遇を受ける公益法人としての学校法人に相応しいガバナンスの抜本改革につき、年内に結論を得、法制化を行う。国立大学法人運営費交付金について、客観・共通指標による成果に基づく配分の見直しをさらに進めながら、新たな配分ルールを年度内に策定し、私学助成等を含めた大学への財政支援の配分のメリハリを強化する。国公私立の枠を超えた大学の連携・統合を促進する。

Society5.0 の実現や社会課題の解決に向け、民間資金を拡大しつつ、第6期科学技術・イノベーション基本計画をエビデンスに基づき着実に実行する。世界の学術フロンティア等を先導する国際的なものを含む大型研究施設119の戦略的推進や官民共同の仕組みで大型研究施設の整備・活用を進める。競争的研究費の一体的改革や情報インフラ120の活用促進、施設・設備の共用化等による基盤構築を図り、生産性向上を目指す。

5.生産性を高める社会資本整備の改革

社会資本整備重点計画等に基づき、デジタル化や脱炭素化を図りつつ、生産性向上に資する取組を進めるとともに、新技術等の導入促進や集約・再編等の広域的取組による公的ストック適正化も含め予防保全型のメンテナンスへの早期転換を図る。設計、施工、維持管理等の自動化・AI活用等による効率化などインフラDXを進め、特に、中小建設業等のICT施工の利活用環境の充実等により i-Construction を推進する。個別施設計画の内容充実、公共施設等総合管理計画の見直しを促進するとともに、メンテナンスサイクルの実行状況を把握・公表する。遅れの見られる地方自治体の取組を促すとともに、維持管理費縮減の取組等を促進する優先的支援を行う。また、受益者負担や適切な維持管理の観点から、財源対策等について検討を行う。災害対応力の強化や生産性向上等に資するよう、費用便益分析の客観性・透明性の向上を図りつつ、ストック効果の高い事業への重点化を図る。その際、財政投融資も適切に活用する。

PPP/PFIなどの官民連携手法を通じて民間の創意工夫を最大限取り入れる。特に、人口 20 万人未満の地方自治体への優先的検討規程の導入要請や策定支援等により、PPP/PFI導入促進を図る。その上で、公共事業の効率化等を図り、中長期的な見通しの下、安定的・持続的な公共投資を推進しつつ戦略的・計画的な取組を進める。

建設キャリアアップシステムや施工時期の平準化等により建設産業の担い手の育成・確保を図る。

既存住宅市場を活性化させるため、長期優良住宅など住宅ストックの良質化や、空き家における先進的取組や活用・除却への支援等を推進するとともに、不動産IDなどの不動産関連データの連携促進等を進める。

所有者不明土地等対策について、基本方針等に基づき、関係機関の体制整備も含めた所有者不明土地の円滑な利活用・管理を図るための仕組みの充実等を行う。

6.経済社会の構造変化に対応した税制改革等

少子高齢化、働き方・ライフコースの多様化、デジタル化・グローバル化を背景とした新たな経済活動の拡大など、感染症の影響もあり、経済社会の構造変化が加速している。このような構造変化を踏まえ、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環を実現するとともに、応能負担の強化等による再分配機能の向上を図りつつ経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から、税体系全般の見直し等を進める。骨太方針2020 及び税制調査会答申や国際的動向等を踏まえつつ、働き方・ライフコースの多様化を踏まえた公平で中立的な税制の構築や格差の固定化防止等の観点から、引き続き税制改革等を推進する。適正・公平な課税の実現による税に対する信頼の確保、社会全体のコスト削減、企業の生産性向上等の観点から、適切な所得等の把握のための環境整備、記帳水準の向上、税務手続の電子化等の促進など、制度及び執行体制の両面からの取組を強化する。経済のデジタル化に対応した国際課税ルール見直しにつき国際合意に向け貢献する。

7.経済・財政一体改革の更なる推進のための枠組構築・EBPM推進

(基本的考え方)

「経済あっての財政」との考え方の下、引き続き、感染症の影響など経済状況に応じた機動的なマクロ経済運営を行うとともに、生産性の向上と賃金所得の拡大を通じた経済の好循環の実現、海外需要の取り込み等を通じ、デフレ脱却・経済再生に取り組み、実質2%程度、名目3%程度を上回る成長、600 兆円経済の早期実現を目指す。それに向け、ワイズスペンディングの徹底と4つの成長の原動力への予算の重点配分、広く国民各層の意識変革や行動変容につながる見える化、先進・優良事例の全国展開、インセンティブ改革、公的部門の産業化、PPP/PFIや共助も含めた資金・人材面での民間活力の最大活用などの歳出改革努力を続けていく。あわせて応能負担の強化などの歳入改革を進めて行く。

(財政健全化目標と歳出の目安)

デフレ脱却・経済再生に向け全力で取り組むとともに、将来世代の不安を取り除くためにも、社会保障の持続可能性を確保し、全ての団塊世代が 75 歳以上になるまでに財政健全化の道筋を確かなものとする。そのため、骨太方針2018 で掲げた財政健全化目標(2025 年度の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す)を堅持する。ただし、感染症でいまだ不安定な経済財政状況を踏まえ、本年度内に、感染症の経済財政への影響の検証を行い、その検証結果を踏まえ、目標年度を再確認する。歳出の目安がこれまで財政規律としての役割を果たしてきたことを踏まえ、機動的なマクロ経済運営を行いつつ成長力強化に取り組む中で、2022 年度から 2024 年度までの3年間127について、これまでと同様の歳出改革努力を継続することとし、以下の目安に沿った予算編成を行う。

  • ① 社会保障関係費については、基盤強化期間においてその実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す方針とされていること、経済・物価動向等を踏まえ、その方針を継続する。
  • ② 一般歳出のうち非社会保障関係費については、経済・物価動向等を踏まえつつ、これまでの歳出改革の取組を継続する。
  • ③ 地方の歳出水準については、国の一般歳出の取組と基調を合わせつつ、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額について、2021 年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する。
(経済・財政一体改革の点検、EBPMの推進等)

こうした枠組みも含め、新経済・財政再生計画等に基づき、経済・財政一体改革を引き続
き推進し、本年末までに改革工程の具体化を図るとともに、毎年改革の進捗管理・点検・評
価を行う。また、感染症対応でどの程度の支出が生じたか、効果的・効率的な支出となって
いたか等について、別途、把握・フォローアップを行う。
経済・財政一体改革の進捗については、歳出の目安に沿った予算編成を行う最終年度とな
る 2024 年度において点検を行い、財政健全化目標達成に向け、その後の歳出・歳入改革の
取組に反映する。

エビデンスによって効果が裏付けられた政策やエビデンスを構築するためのデータ収集等に予算を重点化するとともに、行政機関及び民間が保有するデータを活用し、政策効果をデータで検証する仕組みの構築に向け、本年年央までに経済・財政一体改革エビデンス整備プラン(仮称)を策定する。EBPMの基盤であるデータ活用を加速するため、全ての基幹統計をデータベース型で原則公表するよう、データ公表様式の標準化方針を策定する。感染症等の社会経済のリアルタイムデータを迅速に収集し、分析能力を向上させ、きめ細やかな政策立案につなげる。こうした取組の一環として、政府の各種の基本計画等について、Wellbeing に関するKPIを設定する。

8.将来のあるべき経済社会に向けた構造改革・対外経済関係の在り方

新たな国際経済秩序の下で、戦略的な対外経済関係の構築、経済社会生活面でのデジタル活用、2050 年カーボンニュートラル実現に向けた経済社会構造の展開、民間活力活用・共助の仕組みの拡充など、21 世紀半ば頃を見据えて、将来のあるべき経済社会に向けた構造改革・対外経済関係の基本的考え方を、経済財政諮問会議に有識者議員を中心として専門調査会を設置し、取りまとめる。

第4章 当面の経済財政運営と令和4年度予算編成に向けた考え方

1.当面の経済財政運営について

政府は、決してデフレに戻さないとの決意を持って、経済をコロナ前の水準に早期に回復させるとともに、成長分野で新たな雇用や所得を生み、多様な人々が活躍する「成長と雇用の好循環」の実現を目指す。

当面は、感染症の感染拡大防止に引き続き万全を期す中で、厳しい経済的な影響に対して、雇用の確保と事業の継続、生活の下支えのための重点的・効果的な支援策を講じ、国民の命と暮らしを守り抜く。さらに、グリーン・デジタルなど成長分野への民間需要を大胆に呼び込みながら、人材への投資と円滑な労働移動を強力に進めることにより、生産性を高め、賃金の継続的な上昇を促し、民需主導の自律的な成長軌道の実現につなげる。このため、令和2年度第3次補正予算を含む「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」130及び令和3年度予算を迅速かつ適切に執行する。引き続き、感染状況や経済的な影響を注視し、状況に応じて、新型コロナウイルス感染症対策予備費の活用により臨機応変に必要な対策を講じていくとともに、我が国経済の自律的な経済成長に向けて、躊躇なく機動的なマクロ経済政策運営を行っていく。

日本銀行においては、企業等の資金繰り支援に万全を期すとともに、金融市場の安定を維持する観点から、金融緩和を強化する措置がとられている。日本銀行には、感染症の経済への影響を注視し、適切な金融政策運営を行い、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。

2.令和4年度予算編成に向けた考え方

  • ① 前述のように、感染症の影響等の経済状況に応じて、躊躇なく機動的なマクロ経済政策運営を行うことにより、経済の下支え・回復に最優先で取り組むとともに、生産性向上と賃金所得の拡大を通じた経済の好循環の実現を図る。
  • ② 団塊の世代の 75 歳入りも踏まえ、将来世代の不安を取り除くため、全世代型社会保障改革を進めるとともに、経済・財政一体改革を着実に推進し、社会保障関係費、一般歳出のうち非社会保障関係費、地方の歳出水準について、第3章で定める目安に沿った予算編成を行う。
  • ③ グリーン、デジタル、地方活性化、子供・子育てへの重点的な資源配分(メリハリ付け)を行う。
  • ④ 歳出全般について、徹底したワイズスペンディングを実行するとともに、歳入面での応能負担を強化するなど、歳出・歳入両面の改革を着実に実行していく。

参照

令和3年第8回経済財政諮問会議 経済財政運営と改革の基本方針2021(仮称)原案

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/0609/agenda.html

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