デジタルヘルス

Society 5.0 時代のヘルスケアⅢ ~オンラインの活用で広がるヘルスケアの選択肢~

2022年1月22日

Ⅰ.はじめに

デジタル革新(DX)は、多様な人々のwell-beingの実現と社会の全体最適を両立させる可能性を秘めている。人生100年時代に、最後まで健康で生きがいを感じながら過ごすことは多くの人々に共通する願いであり、とりわけヘルスケアはDXの恩恵が幅広く享受され得る分野である。経団連は2018年3月の提言「Society 5.0 時代のヘルスケア」で、デジタル技術とライフコースデータを活用した、未病・予防段階からの個別化された個人主体のヘルスケアにより、健康寿命が延伸する未来のヘルスケア像を打ち出し、その実現に向け政府や関係業界、医療界等との連携を深めてきた。

こうした中、2020年初からの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大により、わが国のヘルスケア分野のDXの遅れが顕在化した。経団連は同年7月の提言「Society 5.0時代のヘルスケアⅡ~DXによるCOVID-19対応とその先の未来~」で、足元の新型コロナ対策と、その先のSociety 5.0時代のヘルスケアの実現に向けた中長期の取り組みの両面において、ライフコースデータの連携・活用とヘルスケアのデジタル化を加速する必要性を指摘した。 他方、新型コロナ下でオンラインでの診療・服薬指導が時限的に初診から解禁されるなど、遅れていたヘルスケア領域のDXを加速する契機ともなった。健康に対する国民の関心の高まりを受けて、経済界においても新たな形のヘルスケアソリューションを創出し社会実装する機運が高まっている。この機運をSociety 5.0 時代のヘルスケアの実現につなげるためには、制度面の整備と同時に社会受容性を醸成する必要がある。

そこで、本提言では、新しい選択肢としてデジタル技術を活用したオンラインによるヘルスケアに焦点を当てて、実現したい姿とそのメリットを具体的にわかりやすく描き、そのために必要な施策を提案することとした。なお、本提言は、上述「Society 5.0時代のヘルスケアⅡ」のうち、主に「医療介護提供体制のDX」をさらに掘り下げたものである。その内容は同提言の「個人起点のヘルスケアのDX」に示したライフコースデータの連携・活用と一体不可分であり、車の両輪として進めることで、「Society 5.0時代のヘルスケア」以来、繰り返し示してきた未来のヘルスケア像を実現することが可能になる。したがって、本提言は従来の提言を置き換えるものではなく、経団連としては本提言を含めた3つの提言の実現を一体的に進めていく所存である。

Ⅱ.全体像

オンラインヘルスケアとは、カメラやセンサー、デジタル端末などのデジタルデバイスや、通信、データ処理等のデジタル技術を活用して、利用者から離れた場所から、対面することなく提供されるヘルスケアを指す。オンラインヘルスケアの活用により、健康管理から受診、治療まで、個別のものではなく、すべてプラットフォーム上で一連の流れとして捉え、管理することが可能になる。

私たちは生まれてから亡くなるまで、ライフコースのさまざまな場面で、健康診断や診療、服薬、手術、治験、介護等、その時々のニーズに応じたヘルスケアを利用する。これらのヘルスケアは従来、対面で提供されることがほとんどであったが、オンラインヘルスケアの登場により、これまで十分に満たされていなかった多様なニーズに対し、新たな解決策を提供する可能性が生まれる。 たとえば、仕事が忙しくてもう何年も健康診断を受けていない人も、オンライン健康診断を自宅から受診して早めに異常を発見し、オンライン診療ですぐに治療できる。病気の乳幼児を連れて病院や薬局で長時間待たされる親の負担は、オンライン診療や服薬指導で軽減できる。居住地の近隣に専門的な医療機関がなく、電車や飛行機を乗り継いで通院しなければならない難病の患者や家族の負荷も、オンライン診療や遠隔手術で軽減できる。治験を実施する病院が近くにない患者も、オンラインで治験に参加する機会が拓ける。このように、オンラインヘルスケアは、従来の対面でのヘルスケアを置き換えるものではなく、現状の課題に対する新たなソリューションを提供するものであると共に、利用者の多様なニーズに合わせて選択肢を多様化するものである。もちろん、利用者のニーズ次第で、対面とオンラインを適宜組み合わせることも可能である。

また、サービスを提供する側の医師や薬剤師、介護職員など医療・介護従事者にとっても、オンラインを積極的に活用することで、手術や手技指導のための遠隔地への移動時間・コストの削減、在宅勤務の実現など働き方の改善・多様化が期待される。その結果、専門性を活かし、対人コミュニケーションにより比重を置いた、より質の高いサービスの提供を実現できる。オンラインヘルスケアの推進は厚生労働省が示す三位一体改革(地域医療構想・医師の働き方改革・医師の偏在対策)にも貢献するものであり、わが国が今後目指す地域医療提供体制の構築においても重要となる。 さらには、わが国のヘルスケア産業の新たな成長領域として、こうしたオンラインヘルスケアで世界を牽引する可能性もあると考えられる。

Ⅲ.各論

1.健康管理・増進

(1)目指す姿

ライフコースのさまざまな場面で、適切なヘルスケアを容易に選択し、利用できるように、対面、オンライン双方を含めた一気通貫のプラットフォームを構築する。スマートフォンのアプリ等で、ウェアラブル端末から取得した日々の健康データや運動データ、食事データ、服薬データのほか、マイナポータルと連携して過去・現在の疾患名や治療歴、健康診断データ、カルテデータ、処方データなどもすべて確認することができる。健康診断や予防接種の予約、オンラインと検体の郵送を組み合わせての健康診断の受診、健康データから体調異常が疑われた際のオンライン健康相談、その結果に応じた診療の予約、必要に応じてオンラインによる受診、処方箋の薬局への送信、オンラインによる服薬指導やその後の服薬状況の確認まで可能であり、医薬品の配送を行うことで自宅にて一気通貫の環境が整うことになる。

利用者は、日々の健康管理から受診、治療まで、個別のものではなく、すべてプラットフォーム上で一連の流れとして捉え、過去の履歴と共に管理することができる。その時々の状況にあった適切なレコメンドが行われ、判断に迷うことなく健康管理ができる。

(2)社会的意義

一気通貫のプラットフォーム上でのデータに基づく適切なレコメンドにより、特段高い健康意識やリテラシーを持たない人々にとっても、必要なヘルスケアにアクセスするハードルが下がる。 さらに、高品質なオンライン健康医療相談やオンライン完結型健康診断などオンラインヘルスケアサービスの浸透 によって、疾患の早期発見・治療に加え、個々人の未病・予防に対する意識の高まりと行動変容による更なる健康増進が期待できる。そして、未病・予防に対する意識の高まりが、オンラインヘルスケアサービスのさらなる浸透につながる好循環を生む。 新型コロナ禍における感染症への懸念や、仕事上の制約等により、医療機関への訪問による健康医療相談や健康診断を躊躇している人々にとっても、新たな選択肢となる。疾病の早期発見と医療機関への早期受診による重症化予防も期待でき、自治体・企業 にとっても、住民・社員の医療費抑制や労働生産性向上などにつながる。

(3)現状・課題

新型コロナの感染拡大等に伴い、スマートフォンのアプリなどを通して手軽にアクセスできるオンライン健康医療相談やオンライン完結型健康診断サービスといった、オンラインヘルスケアサービスに対するニーズが拡大しており、新たにサービスを提供開始する企業も増加している。一方、健康に関する指導内容や助言の根拠などサービスの品質にはばらつきがあり、利用者が安心してサービスを選択できる状況にはなっていない。また、住民の健康増進や企業の健康経営の取り組みは、成果を短期的に可視化することが難しいという特性を持つ。そのことが、予算的な制約がある自治体や企業にとって、これらのサービスを導入する際の障壁となっている。

(4)提言

①オンラインヘルスケアサービスを対象とした新たな認定制度の創設

政府もしくは政府が委託する第三者機関が、健康の維持・増進や予防に関するエビデンスレベル等に応じて、非医療機器に該当するオンライン健康医療相談などの医療・健康アプリを通じたオンラインヘルスケアサービスを認定する制度を新設すべきである。これにより、利用者は自分に最適なサービスを安心・信頼して選択できるようになる。サービスを提供する企業にとっても、自社のサービス品質を向上させるインセンティブになる。

②オンラインヘルスケアサービスを導入・利用する際の費用の助成

自治体・企業が住民の健康増進や健康経営において、オンライン健康医療相談などのオンラインヘルスケアサービスを積極的に活用できるよう、導入・利用に必要な費用の助成を求める。その際、質の高いサービスの導入・利用を促すために、前述の認定制度において認定されたサービスのみを補助の対象とすることも検討すべきである。

③特定健診におけるオンライン完結型健診サービスの活用

オンライン完結型の健診サービスが特定健診の完全な代替となり得るかは議論が必要であるが、少なくとも、特定健診事業に関連した取り組みとして評価される仕組みを導入すべきである。我が国の特定健診の受診率の低さは憂慮すべき状態にあり3、新型コロナによる受診抑制の影響も懸念されている。オンライン完結型健診サービスを、特定健診事業の一環として評価することで、保険者にとっても同サービス活用の動機づけになり、特定健診対象者にとっては特定健診を受診するハードルが下がって受診率の向上が期待される。

2.診療

(1)目指す姿

多くの医療機関が情報通信機器を用いたオンライン診療を選択肢の一つとして提供している。患者が、初診・再診を問わず、また疾患の種類を問わず、医師と相談のうえ、自身の生活スタイルや疾病の状況に応じて、対面診療とオンライン診療を適切に選択できる仕組みと環境が整備されている。また、対面診療・オンライン診療にかかわらず、デジタル療法を行う医療アプリ等の最新の技術を活用した診療も行われている。 オンライン診療を活用することで、生活の中でさまざまな制約があっても診療を受けやすくなる。例えば、医療機関への交通アクセスが良くない地域に暮らしていても、年齢・疾病によって移動に困難を伴う場合であっても、子育てや介護あるいは仕事の事情で時間を確保しづらい場合であっても、簡便に適切な診療を受けることができる。緊急性がある疾患等の場合を除いて、通院に時間的、経済的、身体的負担を感じる患者にとっては、病院に行く回数が少なくて済む。家族に付き添ってもらう必要もない。待合室で診察の順番を待ったり、診療後に会計手続きを待ったりする必要もない。患者自身の生活スタイルに合わせた都合の良い時間・場所で受診することができる。

(2)社会的意義

オンライン診療は、新型コロナ対策のみならず、診療待ち時間の短縮や、通院負担の軽減、医療従事者の負担軽減を可能とし、国民の医療へのアクセスを向上させる仕組みである。オンライン診療という新たな選択肢を従来の対面診療と組み合わせて活用し、さらに医療アプリ等の最新の技術も活用することで、患者一人ひとりのニーズに寄り添った、より質の高い医療の提供が行われる。これにより、地域的制約や時間的制約を有する国民の医療アクセスが改善され、予防・医療が強化される。 また、難病・希少疾病領域など限られた専門医が有する高度専門医療の提供や、看護師を含む多職種連携機能を進化させることにより、医療資源を有効活用することにつながり、医療の均てん化と各地域で目指す最適な医療提供体制の構築にも寄与する。難病・希少疾病の患者の適切な診断や治療にもつながる。

(3)現状・課題

新型コロナの感染拡大を契機とした特例措置により、疾患の種類を問わず初診を含めたオンライン診療が時限的に解禁されている。にもかかわらず、オンライン診療を提供する医療機関は少ない5。また、実施件数の過半数は電話診療(音声のみ)が占めている。診療報酬上、オンライン診療が対面診療に比べて低い水準で評価されていることが、普及の妨げとなっている。世界的にはオンライン診療の報酬が対面と同等、もしくはそれ以上となっている国も多い。わが国においても、2021年6月に閣議決定された規制改革実行計画に、初診からのオンライン診療の恒久化、普及が盛り込まれた。また、同年11月に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」においては、オンライン診療の特例措置の恒久化等を通じて受診から薬剤の受領までの一連の過程をオンラインで完結できるようにすること、また、診療報酬上の取扱いを含め、オンライン診療の適切な普及・促進を図るための取組を進めることが盛り込まれた。オンライン診療の更なる活用に向けて、オンライン診療の適切な実施に関する指針、ならびに診療報酬に関する議論が進められている。 デジタル療法を行う医療アプリについては、デジタル技術の進歩のスピードに制度が追い付いておらず、機会損失が発生している。

(4)提言

①オンライン診療の特例措置の恒久化

国民の利便性向上を第一に考え、より質の高い医療提供を目指すためにも特例措置を恒久化すべきである。具体的には、診療報酬上の取り扱いも含め、対象疾患の制限を撤廃すべきである。また、初診を含め制限なく認めるべきである。3か月の対面診療実績、3か月に1回の対面診療、緊急時に30分以内等に対面可能との要件も、患者の安心・安全を確保する措置を講じることを条件に撤廃すべきである。オンライン診療料が各月1割以下との施設基準も撤廃すべきである。

②オンライン診療の診療報酬を対面診療と同等水準に評価

医療機関のオンライン診療の導入と積極的な活用を促進するため、診療報酬上、初診・再診料、医学管理料、加算等について、オンライン診療においても対面診療と同内容・同水準で実施されるものについては、同等水準で評価・算定可能とすべきである。

③D to P with D や D to P with N の評価

難病・希少疾病領域等におけるD to P with D(患者が医師といる場合のオンライン診療)の評価を拡大すべきである。また、在宅診療等におけるD to P with N(患者が看護師等といる場合のオンライン診療)の評価の新設や、オンライン専門ナースの育成に取り組む必要がある。これにより、難病・希少疾病領域など限られた専門医が有する高度専門機能や、看護師を含む多職種連携機能の活用が推進される。

④オンライン診療前相談においてヘルスケアアプリ等の情報を活用

オンライン診療初診前のいわゆる診療前相談については、普及が進むPHRアプリやWeb問診などデジタルで取得できる情報も活用の対象にするべきである。また、国民がオンライン診療の初診を積極的に活用できるよう、診療前相談については簡易で容易な運用とするべきである。これらのデータを有効に活用することで、患者・医療機関の双方が簡便に安心してオンライン診療を行うことができるようになる。

⑤医療アプリの早期承認制度の新設

デジタル技術の進歩のスピードに見合う医療アプリの早期承認制度を新設するとともに、製品価値を適切に評価する制度についても、診療報酬制度における位置づけも含めて検討すべきである。

3.調剤・服薬指導

(1)目指す姿

オンライン服薬指導の活用によって、患者は手持ちのスマートフォン等から都合の良い時間・場所で薬剤師の服薬指導を受けることができる。オンライン診療と合わせて活用することで、医師の診察から薬剤師の服薬指導、そして薬の受け取りまで全てを自宅で行うことができる。また、対面診療の後も、オンライン服薬指導と自宅への薬の配送を利用することにより、薬局に立ち寄る時間や手間を省くことができる。薬を受け取ったあとも、服薬による病状の変化や体調等について、必要なときに気軽にオンラインで薬剤師と相談できる。薬局は、店舗毎の特徴を活かした機能分化・連携を強化し、一包化等の対物業務については、機械化が進む薬局に外部委託するなどして効率化を図る。薬剤師は、重複投薬や飲み合わせ等の処方箋内容チェック、医師への処方箋内容の照会、より丁寧な服薬指導、在宅訪問での薬学管理、効果や副作用あるいは服薬状況の有無に関するフィードバック、処方提案や残薬の解消等、専門性を活かした対人業務に集中し、患者に寄り添った付加価値の高い服薬指導を実施する。また、一般用医薬品等のインターネット販売については、柔軟な物流網展開により、患者が自身の必要な医薬品を、家にいながら購入し、迅速に受け取って服薬できるだけでなく、薬剤師のフォローにより安全性も担保する。

(2)社会的意義

オンライン服薬指導の普及によって、オンライン診療とシームレスに連携した一気通貫のオンライン医療を実現できる。患者は薬局での待ち時間なく服薬指導を受けることができる。 薬局・薬剤師の対物業務が効率化され、対人業務に集中できるようになることによって、患者はより丁寧かつ有用な服薬指導を受けることができる。薬局外からの服薬指導などにより在宅勤務が可能になるなど、働き方改革にも資する。 また、一般用医薬品等の購入においても、患者は薬局に出向かなくとも、迅速に必要な医薬品を手に入れることができ、薬局へのアクセスが困難だった患者にとっての有効な選択肢となる。事業者側にとっても、物流の非効率が解消され、負担軽減が図られる。

(3)現状・課題

オンライン診療と同様、新型コロナを契機とした特例措置によってオンライン服薬指導の要件が時限的に緩和されている。患者のオンライン服薬指導の利用意向は高いにも関わらず、実際の利用率は低い。また、オンライン診療と同様、オンライン服薬指導の大半は電話(音声のみ)を使ったものとなっている。要因としては、薬局がオンライン服薬指導に必要な情報通信機器等を整備できていないことが大きい13。処方箋のやりとりにおいて、写しをFAXで送付したうえで後から原本も送付することが求められており、医療機関・薬局の負担になっている現状もある。厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」では、薬剤師に対して、対物の仕事も適切に行いながら、より対人の仕事に重心を移していくことを求めている。調剤・服薬指導に関するさまざまな規制が、薬局・薬剤師の対物業務の効率化や対人業務の拡充を阻んでいる。 一般用医薬品の販売業は、店舗販売業の許可を得る必要があり、当該許可を得た店舗においてのみインターネット販売が可能とされている。店舗構造や開店時間といった当該許可の基準が、対面販売を前提としており、インターネット販売のみを行う販売業態が想定されていない。このため、インターネット販売のみを行おうとする場合であっても、対面販売を前提とした構造設備や開店時間等の基準を満たすための過大なコスト負担を強いられ、事業展開・参入の妨げとなっている。

(4)提言

①オンライン服薬指導の特例措置の恒久化

オンライン診療と同様、オンライン服薬指導についても、国民の利便性を第一に考え、特例措置を恒久化すべきである。具体的には、初回の服薬指導や対面診療後の服薬指導も対象とし、原則として全ての薬剤について認めるとともに、同一薬剤師の要件、オンライン服薬指導が各月1割以下との施設要件を撤廃すべきである。

②一包化を含む調剤外部委託の容認

処方箋を受け取った薬局が、一包化等の調剤業務を、同一社内外を問わず高度に機械化の進んだ別の薬局に委託できるようにすべきである。一包化等の対物業務を、高度に機械化の進んだ薬局へ外部委託することで、かかりつけ薬剤師は対人業務により集中することが可能となる。受託側薬局においては、集約化・機械化/ICT化等による業務効率化に資する。ダブルチェックとしての受託側薬剤師の処方箋監査や、ITシステムを活用した調剤薬監査などにより、監査の質的向上も期待できる。

③一薬剤師当たりの処方箋40枚規制撤廃

平均取扱処方箋数40枚あたり1人以上の薬剤師配置基準を、撤廃も含めてより柔軟な基準へと見直すべきである。機械化による効率化が進んだ薬局においては、当該規制によって処方箋の取扱いが過剰に抑制され、また、過剰な薬剤師に係る人件費の確保を強いられる結果、効率的な薬局経営が妨げられる可能性がある。

④薬局外からのオンライン服薬指導の容認

通信環境およびセキュリティ、患者のプライバシーが確保されていることを前提として、当該薬局の薬剤師が、自宅等の当該薬局外においても薬剤師が服薬履歴や処方箋内容、服薬状況等を閲覧・管理し、オンラインで服薬指導を行うことができるよう、服薬指導場所の条件を緩和すべきである。薬局外からオンライン服薬指導ができるようになれば、かかりつけ薬剤師が当該薬局に滞在していないテレワーク中や、薬局が閉まっている夜間・休日等においても、患者が指導を希望する適切なタイミングでオンライン服薬指導を行うことができる。これにより、患者にとっても薬剤師との相談・意見交換等が容易となることで、利便性や服薬アドヒアランスの向上につながるとともに、薬剤師の労務環境の改善、出産・育児期の薬剤師の活躍促進に資する。

⑤オンライン服薬指導と調剤等の機能に特化した、対面機能を持たない薬局の設置・活用

初回からのオンライン服薬指導の恒久化を前提として、対面機能を持たない構造の薬局を許容すべきである。オンライン服薬指導と調剤等の機能に特化した、対面機能を持たない薬局の開設が認められれば、事業の負担軽減・効率化、参入障壁の引下げ、新たな形態の事業展開が促進されるほか、例えば薬剤師が置かれている医薬品卸売販売業の営業所を薬局として有効活用するといった可能性も拡大する。また、オンライン服薬指導の普及につながることで、感染症拡大防止、顧客の利便性向上にも資する。

⑥電子処方箋の速やかな普及

医療機関・薬局双方にとって処方箋の写し・原本のやりとりは手間となっており、電子処方箋を普及させるための策を速やかに講じるべきである。医師や薬剤師の本人確認や電子文書の授受等において、保健医療福祉分野の公開鍵基盤であるHPKIカードの利用を前提とするならば、国としてその普及率向上を早急かつ強力に推進すべきである。あるいは、HPKIカード以外の利用可能な手段を早急に確保すべきである。医師による電子カルテの利用が前提の電子カルテシムテムに入るには認証が必要であるため、電子処方箋を発行する際に再度認証を要求することを不要とも考えられる。オンライン診療・服薬指導を円滑に進めるためにも電子処方箋の普及は必要不可欠である。また、お薬手帳の電子化により、個人単位で処方に係る情報を蓄積し、よりきめの細かい服薬指導が可能になる。

⑦処方箋医薬品以外の薬局医薬品や要指導医薬品のオンライン服薬指導の容認

服薬指導が必要な医薬品のうち、処方箋医薬品以外の薬局医薬品や要指導医薬品も、オンラインでの服薬指導を認めるべきである。処方箋医薬品のオンラインでの服薬指導が可能となるなかで、国民の利便性を考えた場合、処方箋医薬品に比して人体に対する影響が緩やかなこれらの医薬品をオンライン服薬指導の対象としない理由はない。

⑧一般用医薬品のインターネット販売に特化した業態の容認、他店舗や倉庫からの発送の容認

対面販売を行うことを前提とせず、インターネット販売に特化した販売業態を許容すべきである。また、他店舗や倉庫からの配送を許容するべきである。新型コロナの流行に伴いインターネット販売の需要が高まる中、非対面・非接触を可能とするコロナ時代に即した新たなビジネス展開に向けたインターネット販売の活用が期待できる。さらに、事業の負担軽減・効率化、参入障壁の引下げ、新たな事業形態の促進、迅速な配送による顧客利便の向上、非対面・非接触による感染拡大の防止、インターネット販売の普及による購買履歴データの蓄積・活用等の効果が期待される。

4.手術

(1)目指す

姿遠隔医師が術者として手術ロボットを操作し現地医師を支援する「遠隔手術支援」の仕組みが普及している。熟練した医師が存在しない地域においても、遠隔手術システムを活用することで、患者は居住医療圏の施設にいながら質の高い手術を受けることができる。 地方に勤務する経験年数の少ない医師は、遠隔手術システムを通して、勤務地にいながら熟練した医師からの指導を受けることができる。手術に関する新しい技術を、遠隔手術システムを通して効率的に取得することができる。

(2)社会的意義

遠隔手術支援の社会実装について、地域住民にとっては、居住医療圏で受けられる医療の選択肢が増えるとともに、長距離移動に伴う肉体的・精神的・経済的負担が軽減される。地方に勤務する外科医にとっては、熟練した医師から手術支援を受けることができ、地域病院に勤務しながら継続して手術指導を受けることができる。このことは、地方に勤務している経験年数の少ない外科医のモチベーションや手術手技の向上にもつながり、医師の地域偏在の解消にも寄与する。指導医にとっても、手術指導に伴う長距離移動の負担が軽減され働き方改革につながる。地域医療の維持に好循環が生まれ、質の高い外科医療の均てん化、新しい技術の速やかな社会浸透を可能とする。

(3)現状・課題

従来の遠隔から口頭・図示で指導する「遠隔手術指導」に加えて、遠隔医師が術者として手術ロボットを操作し現地医師を支援する「遠隔手術支援」も可能な時代を迎えつつある。高速大容量通信ネットワークや高圧縮・低遅延伝送技術の発達により、通信遅延の問題が解消されたことが大きい。オンライン診療の適切な実施に関する指針が改訂され、遠隔手術の実施に向けた法的整備も進められている。コロナ禍に対応したデジタル化の推進も追い風となっている。各国で新たな遠隔手術対応ロボットの開発が進められている。日本外科学会が中心となり、関連省庁・企業と連携して遠隔手術推進プロジェクトを立ち上げ、日本医療研究開発機構(AMED)が公募・採択した事業として、遠隔手術の社会実装に向けた実証研究を重ねるとともに、実施要件等を盛り込んだガイドラインの策定が進められている16。通信環境や情報セキュリティ管理、責任分界の明示、適応術式など遠隔手術の提供・実施に必要な体制、さらには診療報酬上の評価、手術ロボットや通信の費用負担のあり方など、社会実装に向けて検討すべき事項は多い。

(4)提言

①従来の手術と同等水準の診療報酬上の評価

遠隔手術支援は、それを必要とする患者に対して、従来の手術と同等のアウトカムを、より高い利便性をもって提供できる可能性が高い。遠隔手術支援の普及のためにも、従来の手術と同等水準の診療報酬上の評価がされるべきである。

②システム導入・維持や通信費用負担を軽減する制度設計

遠隔手術支援システムの導入・維持のためのコスト負担を軽減する公的な補填を含めた制度設計が必要である。遠隔手術では支援する側の費用と、通信回線の接続費用が新たに発生するため、実施する地域・施設にとってこれらの費用は大きな負荷となる。遠隔手術支援の普及は、地域医療の維持・格差是正に資するものであるから、特に医療資源の乏しい地域の住民が遠隔手術支援を積極的に活用できるよう、医療機関が遠隔手術支援の導入と維持に必要な費用ならびに利用時に発生する通信費用の公的助成を求める。

5.介護

(1)目指す姿

全国の介護現場でテクノロジーならびにデータの活用が進む。これまで全て人の手によって提供してきた介護サービスを、テクノロジーを活用することで、より高品質かつ効率的に提供できている。例えば、介護予定・記録システムの活用により、職員が自身の業務スケジュールと記録をスマホで完結でき、間接業務の効率化につながる。見守りセンサーの活用により、2時間に1回の巡回から常時見守りが可能となり、利用者の睡眠を妨げず、夜間の職員の負荷軽減や必要人員数の削減が可能になる。 また、テクノロジーの活用から得られたさまざまなデータを活用することで、データドリブンな重症化予測、自立支援介護が提供できている。例えば、見守りセンサーが取得する呼吸状態のデータなどから、入居者の呼吸・眠りの変化を捉えることで、体調の変化を早期に捉えることができる。不活性による廃用症候群の要因をデータドリブンで捉えて予後予測を行い、一人ひとりに最適なリハビリプランを提供できる。

(2)社会的意義

介護分野のテクノロジーやデータの活用により、介護の質を落とさずに介護業務が効率化され、将来わが国で必要とされる介護職員数を確保することができる。介助者の身体的・心理的負荷の軽減にもつながる。介護の専門性が高まり、仕事のやりがい・魅力が向上する。利用者の異変に早期かつ適切に介入することが可能となり、重症化予防や入院抑制につながる。

(3)現状・課題

将来の要介護認定者数の増加に対応するため、介護職員を大幅に増員する必要がある。厚生労働省の試算によると、2040年度までに、2019年度時点と比べて約69万人の介護職員を追加で確保しなければならない。生産年齢人口が減少するなかで非常に厳しい状況にある。この問題の解決策として、テクノロジーを活用した介護業務の効率化、さまざまな医療・介護データを活用した重症化予防や自立支援介護が注目されている。一方、わが国の介護の現場は、多くの小規模な事業者によって支えられており、一定の導入・運用コストが発生するテクノロジーの活用やデジタル化が進みにくい状況もある。

(4)提言

①介護事業所で使用するデジタルデバイスの標準化

介護事業所で使用する各種業務システム、見守りセンターや介護ロボットなどデジタルデバイスの安全基準や性能基準、出力仕様については、政府もしくは政府が委託する第三者機関による標準化を進めるべきである。標準化によって、サービス連携・データの一元化において、特定の機器やサービスに律速しない形で、介護業務支援システムの構築が可能となる。全国の介護事業所のデジタルデバイスの普及も促進され、より質の高い介護サービスの提供につながる。

②テクノロジー活用を積極的に評価する新たな介護品質評価基準の策定

介護ロボットやICTの導入が介護の質向上や効率化に寄与することが明らかになってきた。テクノロジーを活用しながら人が関わる業務の質の向上に取り組んでいる介護事業者に対して、積極的に評価する新たな介護品質評価基準の策定を求める。

③介護施設人員基準3:1の見直し

利用者にとっての品質確保、職員の負担軽減が図られ、テクノロジー・データ活用による業務時間の削減効果が認められる場合、その改善効果の範囲で配置すべき員数を見直すべきである。

6.治験

(1)目指す姿

被験者が医療機関に来院して実施する従来の治験の手法に加えて、オンライン診療やデジタルデバイスなどを活用し、被験者が医療機関に来院せず、自宅等にいながら必要な診療や評価・検査を実施できる治験(以下、DCT)の手法が普及している。インターネット上で被験者が能動的に臨床試験情報を収集し、治験担当医師とのコミュニケーションによる内容理解や不明点等の解消後、eConsent(電子版説明文書・同意文書)を活用して非対面および遠隔で電子的に同意署名を行う。治験薬は自宅等へ直接送付される。訪問看護によって、自宅等に居ながら治験に必要な検査や薬剤の投与等も受けられる。ウェアラブルデバイス、ePRO(Electronic Patient Reported Outcome:電子患者報告アウトカム)等による遠隔でのデータ収集が行われる。実際には、治験の対象となる疾患や薬、必要な検査項目、患者のニーズなどに応じて、治験の各プロセスにおいて、来院と自宅等での診療・評価を適切に組み合わせた形で実施される。

(2)社会的意義

DCT の普及によって、治験実施医療機関が自宅等の近くにない被験者や、仕事の都合や身体的な問題で定期的な通院が困難な被験者であっても、必要な情報を入手・理解した上で治験への参加を検討できるようになる。結果として、より短期間に治験に参加する被験者を集めることができ、開発期間が短縮されることで、最終的には社会が必要とする薬をより早く患者に届けることにつながる。従来型の治験では参加者を集めることが困難で実施を断念していた治験も実施できるようになる。

(3)現状・課題

治験に参加する被験者の中には、医療機関への通院を負担に感じている方も多い。オンライン診療をはじめとした遠隔医療や、場所や時間の制限なく健康情報を収集できるIoT機器等の実用化の進展に伴い、これらのテクノロジーを活用した医療機関への来院に依存しない臨床試験手法であるDCTの実現が注目されている。一方、医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)においては、治験は医療機関への来院が前提になっていると思われ、DCTの実施に関する記載がない。一例として、非対面および遠隔での本人確認や同意取得、治験依頼者等から被験者の自宅等への治験薬の直接配送など、DCTの手法に関する規制当局の見解が明文化されていないといった課題がある。また、治験データの保存・管理などDCTを実施するために必要なITインフラの整備も十分ではない。被験者自身が自宅等でITシステムを操作することも想定されており、新たに発生する治験対応を負担と感じさせない技術面・心理面での丁寧なケアが治験依頼者に求められる。 世界でDCTの普及が進む中、日本で普及が進まない状況が続けば、将来的に国際共同治験参入の障壁になり、新薬の承認申請が他国と比べて遅れてしまうリスクもある。

(4)提言

①治験薬保管施設(デポ)から被験者宅等への治験薬直接配送を容認

治験依頼者の治験薬保管庫等から被験者宅等への治験薬の直接配送ができるよう、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)のガイダンスやQ&A等での明確化を求める。その上で、実施医療機関の治験薬管理責任を充足しながら直接配送する際に配慮すべき点等の明示を求める。現状、実施医療機関から被験者の自宅等への治験薬の配送は認められているが、治験依頼者の治験薬保管庫等から被験者の自宅等への直接配送の可否は不明確となっている。

②DCT における訪問看護の担い手を確実に確保するための環境整備

DCT における訪問看護の担い手を確実に確保するための環境整備を求める。一例としては、治験施設支援機関(SMO)等の看護師も、DCTにおける訪問看護を担うことができるよう、担当医師の指示下での治験に関わる業務について、治験施設支援機関(SMO)に所属する看護師を含め、治験実施医療機関に所属する看護師以外の看護師による訪問看護をどのように活用しうるかを整理し、必要な措置を講じるべきである。現状、DCTにおいて訪問看護を実施できる看護師が限定されていると認識しており、多くの被験者へ訪問看護を活用することが困難である。

③非対面および遠隔での本人確認と同意取得の容認

非対面および遠隔での本人確認並びに同意取得が可能となるよう、GCP省令やガイダンス等での明文化を求める。その上で、民間事業者が非対面および遠隔で行う際の要件や実務上の留意点等の明示を求める。現状、実施の可否や留意点を判断できないため、非対面および遠隔での治験説明並びに同意取得を行うことは難しい。

Ⅳ.基盤

1.ラストワンマイル

オンラインヘルスケアの普及において、患者の手元に医薬品を届けるためのラストワンマイルの整備は欠かせない。オンラインヘルスケアサービスを利用した患者が、必要な医薬品を確実に簡便に手にできる体制が求められる。 例えば、宅配業者による宅配ロッカーへの処方箋薬の配送が可能であることを明確にすべきである。現在は自治体によって可否の判断が分かれている状況にある。コロナ禍を契機に、薬局に行かずに薬を受け取りたいというニーズが高まっている。宅配ロッカーへの処方箋薬の配送を宅配業者が担うことができれば、患者は好きな時に何処の宅配ロッカーからでも処方箋薬を受け取ることができ、利便性が向上する。さらに、処方箋薬の非対面での受け取りが進むことで、感染リスクの低下に寄与する。新たな医薬品輸送の手段として、ドローンの活用も期待される。オンライン診療・オンライン服薬指導およびドローン配送を組み合わせることで、離島に住む患者の医薬品アクセスを向上し、地域医療課題の解決に貢献できる。初期にドローンの活用が検討されている離島山間地域は、事業の対象となる人口が少ないため、事業化の初期段階においては国や自治体による継続的なサポートも欠かせない。 なお、医薬品授受の際の本人確認については、生体認証技術等の活用も含めて適切なあり方の検討が必要である。

2.データ活用

オンラインヘルスケアのメリットを最大化させるためには、その活用によって得られるさまざまな健康・医療データを連携・活用できる仕組みが必要不可欠である。 健康・医療分野においては、取り扱うデータの多くが要配慮個人情報を含む機微なデータであるほか、医療機関で取得されたデータは医療機関において管理されており、本人であってもアクセスが容易でないことが多く、十分なデータ活用がなされていない。個人のヘルスケアに関するライフコースデータをID で連携し、本人同意のもと、医療機関間で情報連携することにより、適切な医療の提供や、民間PHRの蓄積情報を活用したアプリによる健康管理、個人に合わせた予防行動が可能となる。政府が推進しているデータヘルス改革を工程表21に沿って着実に実行するとともに、電子カルテ情報を含む医療情報をマイナポータルで閲覧できる仕組みを整備し、APIを通じて民間PHRへ早急に連携することで、自身の健康・医療情報に障壁なくアクセス・利活用できるようにすべきである。なお、ライフコースデータの連携にあたっては、データの標準化が不可欠であり、電子カルテデータの標準化については、政府において社会実装の見通しを明らかにするとともに、普及施策について早急に議論を進め、実現に向けて結論を急ぐべきである。 また、健康・医療分野においても情報銀行の活用が促進されるよう、情報銀行における要配慮個人情報の取り扱いに関する議論を進めるべきである。 保健医療分野の公的データベースに関しては、2020年10月よりNDBと介護DB との連結解析および民間利用が可能となり、データ利活用に向けた環境整備が着実に進められているが、保険医療分野の他の公的DB(全国がん登録DB、難病・小児DB等)および死亡情報との連結を着実に実現するとともに、データ提供までの手続きの迅速化や、オンサイトセンターではなくクラウドで利活用できる仕組みの整備など、データ利活用が促進されるようさらなる環境整備を進めるべきである。クラウドでの利活用については、公的なクラウド基盤(いわゆるHIC:Healthcare Intelligence Cloud)の利用のみならず、研究者自身が用意するクラウド環境での利用を認める仕組みや法整備も肝要である。

産学官医連携のもと、厚労省で進めている全ゲノム解析等実行計画を着実に進めて全ゲノムデータベースを整備し、新たな治療法の開発や個別化医療に向けた取り組みを進めるべきである。なお、産業育成の観点からも、匿名化されたデータについては、より民間での利活用が進むような政策設計に加え、システムの利便性の向上が求められる。 治験については、患者主体の治験参画スキームの確立を目的に、患者が自らの情報を登録し、候補治験の提示や実施施設との調整・支援を行う情報基盤の構築も求められる。 優れたヘルスケアサービスの開発には、データに基づいた研究が不可欠である。データ利活用の重要性が増すなか、わが国では、データに関する各倫理審査委員会の知識・経験の差や、法律等の解釈の違いによって、個人情報取り扱いやインフォームドコンセントを受ける手順に関する各委員会の判断が分かれることがある。このような判断の違いにより、研究の機会損失を招いたりデータ利活用を阻害しないよう、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」におけるQ&Aの事例や研究素材の充実等、倫理審査委員会の質の均てん化の取り組みが必要である。その際には、次世代医療基盤法に基づく認定事業を始めとして、各事業で蓄積されている知見を活かすことも重要である。

3.オンラインヘルスケアに対する国民理解の醸成

新しいサービスが広く社会に受け入れられるためには、単に技術的な課題だけでなく、社会的合理性や経済的合理性も含めて検証していかなければならない。国民が一人ひとりのニーズに合わせて積極的にオンラインヘルスケアを活用できるようにするためには、オンラインヘルスケアに対する国民一人ひとりのコンピテンシー向上が不可欠であり、事例の共有などを通じて、産官学医が一体となった意義・メリットと受益者負担についての丁寧な説明と周知が必要である。同時に、国民の個人データ活用への理解醸成と、それに基づくデータ活用と更なるサービス向上のエコシステムの構築が求められる。その際、セキュリティの担保についても十分な考慮が必要である。 産業界は、新たな製品・サービスの開発・実装を加速することで、具体的な価値を提示し、国民理解の醸成に貢献していく。

Ⅴ.おわりに

優れたデジタルデバイスや通信、データ等の技術と、国民皆保険制度をベースとする全国民の良質なヘルスケアデータの蓄積を有するわが国にとって、ヘルスケアDXは世界を牽引する可能性のある有望な分野のひとつである。少子高齢化が世界で最も進展する日本では、高齢者の健康寿命の延伸や医療の高度化・効率化といった社会課題の解決が急務であり、オンラインヘルスケアや医療データの利活用を含むヘルスケアDXはその社会課題解決には不可欠である。オンラインと対面を柔軟に組み合わせた新たな形の利便性の高いヘルスケアを国内でいち早く実現し、国民のwell-beingを向上させると同時に、グローバルに展開することにより、「すべての人々の健康な生活を確保する」というSDGs目標の達成に貢献し、ヘルスケア産業を、わが国の成長産業とすることが期待される。 この分野は諸外国でも成長が著しく、デジタルプラットフォーマーが着々と進出しつつある。わが国の環境整備が遅れると、国民がヘルスケアDXの恩恵から取り残されるばかりか、成長分野で比較優位を失い、グローバル展開に出遅れるおそれがある。 経団連は、この提言に描いたビジョンをわが国でいち早く実現するために、関連する業界や政府、地方公共団体、医療界等と連携し、制度面での環境整備と社会受容性の醸成に努めていく。

参照

http://www.keidanren.or.jp/policy/2022/005.html

-デジタルヘルス

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