事務連絡
令和3年10 月4日
各 都道府県, 保健所設置市 衛生主管部(局), 特別区 御中
厚生労働省医政局総務課
厚生労働省医政局医療経営支援課
厚生労働省医政局研究開発振興課
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課
新型コロナウイルス感染症に係る検査並びにワクチン及び治療薬の治験体制整備のための医療法上の取扱いについて
新型コロナウイルス感染症に係る巡回診療の医療法(昭和23 年法律第205 号。以下「法」という。)上の取扱いについては、「新型コロナウイルス感染症の対応に係る巡回診療の医療法上の手続について」(令和2年3月25 日付け厚生労働省医政局総務課事務連絡)等においてお示ししてきたところです。
上記に加えて、新型コロナウイルス感染症に係る検査体制の整備並びにワクチン及び治療薬の開発推進のため、新型コロナウイルス感染症に係る検査(以下「コロナ検査」という。)並びにワクチン及び治療薬に係る治験の経過観察(ワクチン及び治療薬の投与から一定の期間が経過した後に行う、血液検査、尿検査等をいう。以下「経過観察」という。)を巡回診療として行う場合の医療法における取扱い等について、下記のとおりまとめましたので、内容を御了知の上、管内医療機関へ周知をいただくとともに、その実施に遺漏なきようお願いいたします。
なお、これらの取扱いについては、新型コロナウイルス感染症の検査体制整備並びにワクチン及び治療薬開発を推進するための臨時的・特例的なものである旨、御留意願います。
記
Table of Contents
1.巡回診療として実施する場合の医療法上の取扱いについて
新型コロナウイルス感染症の検査体制並びにワクチン及び治療薬に係る治験体制の整備のため、コロナ検査及び経過観察を巡回診療として行う場合は、「巡回診療の医療法上の取り扱いについて」(昭和37 年6 月20 日医発第554 号厚生省医務局長通知。別添参照)で定める「医療法の運用上特別の処置を講じてその実施の円滑化をはかることが適当であると考えられる」場合に該当するため、当該通知に沿い、取り扱って差し支えないこと。
この場合における上記通知の取扱いについては、
- コロナ検査及び経過観察については、一定の継続した期間実施することが想定されることから、別添記第一の二の「移動診療施設以外の施設を利用して行なわれる巡回診療であって、定期的に反復継続(おおむね毎週二回以上とする。)して行なわれることのないもの又は一定の地点において継続(おおむね三日以上とする。)して行われることのないもの」とする要件は、柔軟に取り扱って差し支えないこととすること
- 別添記第二の二の(一)の「実施計画」は、必ずしも巡回診療の実施場所を追加する度に提出する必要はなく、適切な時期に事後的に行うこととして差し支えないこととすること
について併せて御留意願いたい。
2.患者が看護師等といる場合のオンライン診療における医療法上の取扱いについて
患者が看護師等といる場合のオンライン診療(以下「D to P with N」という。)の形で、経過観察を巡回診療として実施する際は、巡回診療通知の記第二の二の(一)のウにおいて規定する「各場所毎の医師又は歯科医師である実施責任者」は、不要として差し支えないが、下記の点に留意されたい。
- 医師が、オンライン上では、患者の状態等について十分に必要な情報が得られていると判断できない場合には、直接の対面診療を行うこと。
- 巡回診療先に赴く看護師等は巡回診療を実施する医療機関に所属することを原則とし、鼻咽頭拭い液の採取や採血など一定の技量が必要となる行為を実施する場合には、適切に医師の指示・指導の下で実施すること。なお、その際、「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」(2021 年8月6日改訂国立感染症研究所)等に記載のとおり、看護師等は感染防護具を装着すること。
- 初診から「D to P with N」の形で巡回診療を実施する場合、「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月10 日事務連絡)の記1(1)初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施について等に則った診療を行うこと。
※ コロナ検査については、「新型コロナウイルス感染症に係る検査における巡回診療の医療法上の取扱いについて」(令和3年6月9日付け厚生労働省医政局総務課事務連絡)を参照。
3.新たに診療所を開設する場合の医療法上の取扱いについて
コロナ検査及び経過観察の実施について、既存の病院又は診療所の事業として行われるものでない場合や既存の病院又は診療所が所在する都道府県外の施設において実施する場合などにおいては、実施場所ごとに診療所開設の手続が必要となるところであるが、コロナ検査や経過観察のために、新たに診療所を一時的に開設しようとする場合には、法に基づき医療機関を開設している者、以前に開設していた者、指定管理者制度により医療機関の管理を行う者等地域医療の提供に関する一定の実績を有する者が、適正かつ安全な医療を提供するための法に規定する義務(施設・人員・構造設備基準、医療安全等)を履行することが可能であると認められることを、都道府県知事等が確認した上で、法第7条第1項又は第8条の規定に基づく診療所の開設に係る許可の申請又は届出は適切な時期に事後的に行うこととして差し支えないこと。
また、この場合の取扱いについて、下記のとおりとするので、ご留意いただきたい。
- 現に運営している病院又は診療所の管理者が、コロナ検査や経過観察のために設置する診療所を管理する場合には、医療法施行規則(昭和23 年厚生省令第50 号。以下「則」という。)第9条第3項第2号で定める「その他都道府県知事が適当と認めた場合」に該当し、法第12 条第2項に規定する都道府県知事等の許可を行うことができること。また、この場合において、管理者がその管理する医療機関及びコロナ検査や経過観察のために設置する診療所の運営に支障を来すことなく、医療の安全が十分確保されることを都道府県知事等が確認した上で、法第12 条第2項に規定する許可は、事後の適切な時期に行うこととして差し支えないこと。
- 医療機関の管理者については、法に規定する管理者の責務を果たす必要があることから、原則として常勤であることが求められるが、コロナ検査や経過観察のために設置する診療所については、常時連絡を取れる体制を確保する等、その責務を確実に果たすことができるようにする場合には、常勤する医師でなくとも管理者となることができること。
- 現に運営している病院又は診療所の管理者が、コロナ検査や経過観察のために設置する診療所の管理者となること等を理由として、現に運営している病院又は診療所において一定期間診療に従事しない場合には、当該管理者が必要に応じて一時的に管理者に代わる医師を確保する(複数の医師による協力を得て開院日毎に管理者に代わる者を確保することを含む。)とともに、あらかじめ医療の提供に係る責任を明確にするときは、医療法施行令(昭和23 年政令第326 号)第4条第3項及び第4条の2第2項で規定する届出は行わずに当該病院等における診療の継続を認めることとして差し支えないこと。
さらに、医療法人が診療所を新たに開設する場合には、本来、定款又は寄附行為の変更に係る手続きが必要であるが、コロナ検査又は経過観察の実施に当たり、医療法人が新たに診療所を一時的に開設しようとする場合には、法の規定に基づく定款又は寄附行為の変更について、省略して差し支えないこととする。
ただし、この取扱いは、コロナ検査及び経過観察の体制整備を迅速に進めることの重要性に鑑み、医療法人が新たに診療所を一時的に開設する必要が生じた場合に適用される臨時的・特例的なものであること、一時的に開設した診療所が常態化する場合には、法の規定に基づく定款又は寄附行為の変更を行わなければならないことを申し添える。
4.診療時間等の変更に係る医療法上の取扱いについて
病院若しくは診療所内でコロナ検査若しくは経過観察を実施する場合、又はコロナ検査若しくは経過観察のために設置する診療所の運営に係る業務に従事するため、現に運営している病院若しくは診療所の診療時間及び診療日を一時的に変更する場合には、法に基づく当該変更の届出は省略して差し支えないこと。
5.診療所の構造設備の変更に係る医療法上の取扱いについて
コロナ検査又は経過観察のため、則第1条の14 第1項第8号(医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の定員)、第9号(敷地の面積及び平面図)、第11 号(建物の構造概要及び平面図(各室の用途を示し、精神病室、感染症病室、結核病室又は療養病床に係る病室があるときは、これを明示するもの。))及び第12 号(病院における診察室等の施設の有無及び構造設備の概要)に掲げる事項を変更しようとする場合には、法第7条第2項の都道府県知事等の許可及び令第4条第3項の都道府県知事等に対する届出は、事後の適切な時期に行うこととして差し支えないこと。
別添
○巡回診療の医療法上の取り扱いについて(昭和37 年6月20 日医発第554 号厚生省医務局長通知)
いわゆる巡回診療(巡回診療において行われる予防接種も含む。)については、その実施の方法に種々の態様のものがみられるが、これらはいずれも一定地点において公衆又は特定多数人に対して診療が行なわれるものであり、原則として医療法上は診療所の開設に該当するものと解される。しかしながら、無医地区における医療の確保又は地域住民に対して特に必要とされる結核、成人病等の健康診断の実施等を目的として行なう巡回診療であつて、巡回診療によらなければ住民の医療の確保、健康診断の実施等が困難であると認められるものについては、医療法の運用上特別の処置を講じてその実施の円滑化をはかることが適当であると考えられるので、今後これらの巡回診療に関しては、左記のとおり取り扱つて差し支えないこととしたので通知する。
なお、この取り扱いは、巡回診療が特に必要である場合に認められるものであるので、巡回診療実施計画、実施主体の定款又は寄附行為及び実施主体の既存の病院又は診療所における通常の診療に支障の生じないこと等について十分確認のうえ適用することとし、これが必要と認められなくなつた場合には直ちにこの取り扱いを中止することとされたい。
記
第一 この取り扱いは、次のいずれかに該当する場合にのみ認められるものであること。
一 巡回診療車又は巡回診療船であつて当該車輛又は船舶内において診療を行なうことができる構造となつているもの(以下「移動診療施設」という。)を利用する場合。
二 移動診療施設以外の施設を利用して行なわれる巡回診療であつて、定期的に反覆継続(おおむね毎週二回以上とする。)して行なわれることのないもの又は一定の地点において継続(おおむね三日以上とする。)して行なわれることのないもの。
第二 医療法及びこれに基づく法令の適用並びにこれに関する指導監督については次のとおりとすること。
一 巡回診療が病院又は診療所の事業として行われるものでない場合。
(一) 巡回診療の実施主体毎に診療所開設の手続をとるものとすること。
(二) この場合医療法施行規則第一条に基づく開設の許可申請又は届出にあたつては、次のとおりの取り扱いとすること。
ア 実施主体が当該都道府県内に所在しない場合は、開設者の住所については、実施主体の住所に併せて、当該都道府県内の連絡場所を記載させること。
イ 開設の場所に代えて、おおむね三箇月から六箇月までの期間毎に巡回診療を行なう場所並びに各場所毎の医師又は歯科医師である実施責任者の氏名及び診療を担当する医師又は歯科医師の氏名及び担当診療科目を記した実施計画を提出させること。
これを変更したときも同様とすること。
ウ 開設の目的及び維持の方法については診療報酬の徴収方法を併記させること。
エ 敷地及び建物の状況にかえて移動診療施設を利用する場合はその構造設備の概要を記載させること。なお、これを変更した場合には変更許可又は届出の手続をとらせること。
(三) (二)のイに記した医師又は歯科医師である実施責任者をもつて管理者とみなして差し支えないこと。なお、この場合に医療法第一二条第二項の規定に基づく許可は要しないものとして差し支えないこと。
(四) 医療法施行令第四条の二第一項及び第二項の規定に基づく届出は、行なわなくて差し支えないこと。
(五) 医療法第八条及び医療法施行令第四条第三項の規定に基づく医療法施行規則第四条第三号の規定に基づく届出は、行わなくて差し支えないこと。
(六) 開設の許可をなすにあたつては、当該巡回診療を行なうためにのみ許可されること及び(二)のイに記した実施計画が引き続き提出されない場合であつて、正当な休止の理由のない場合には、廃止されたものとする旨申請者に承知させること。
(七) 巡回診療を行なうにあたつては、衛生上、防火上及び保安上安全と認められる場所を選定し、かつ、清潔を保持するよう留意させること。
二 巡回診療が病院又は診療所の事業として当該病院又は診療所の所在する都道府県内で行なわれる場合
(一) 新たに診療所開設の手続を要しないものとするが、当該病院又は診療所から次に掲げる事項の提出を求めること。
これを変更したときも同様とすること。
ア 当該病院又は診療所の開設者の名称及び主たる事務所の所在地
イ 当該病院又は診療所の名称及び所在地
ウ おおむね三箇月から六箇月までの期間毎に巡回診療を行なう場所並びに各場所毎の医師又は歯科医師である実施責任者の氏名及び診療を担当する医師又は歯科医師の氏名及び担当診療科目を記した実施計画
エ 診療を行なおうとする科目
オ 巡回診療実施の目的及び維持の方法並びに診療報酬の徴収方法
カ 移動診療施設を利用する場合は、その構造設備の概要
キ 当該病院又は診療所の開設者が公益法人等である場合には定款又は寄附行為
(二) (一)のウに記した医師又は歯科医師である実施責任者をして当該病院又は診療所の管理者の指揮監督のもとに医療法及びこれに基づく法令の管理者に関する規定に則つて巡回診療を管理させること。
(三) 巡回診療の実施に関しては、医療法施行令第四条又は第四条の二第一項若しくは第二項の規定に基づく許可又は届出を要しないものとして差し支えないこと。
(四) 巡回診療を行なうにあたつては衛生上、防火上及び保安上安全と認められる場所を選定し、かつ、清潔を保持するよう留意させること。
三 巡回診療が、病院又は診療所の事業として行なわれる場合であつても、当該病院又は診療所が巡回診療を行なう都道府県内に所在しない場合
一と同様の取り扱いとすること。