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選択する未来 2.0 報告「10 年かかる変革を一気に進めるために」(2021年6月4日)

はじめに ― 10 年かかる変革を一気に進めるために

「 選択する未来 2.0 」 (以下、「 本懇談会 」という。) の 中間報告 2020 年7月1日では、新型感染症の下で現れた国民意識・行動の変化などの新たな動きを後戻りさせず社会変革の契機と捉え、通常であれば 10 年かかる変革を一気に進める ことを 提案した。しかし、この1年間の動向を見ると、変革に向けた動きは加速したものも見られるが、全く十分とは言えない 。 新型感染症の影響により若者や女性 は 一層 厳しい状況に置かれている 。デジタルを十分に活用することができず、新型感染症のためのワクチンを 現状では 国内で開発 できていない ことは、 我が国のイノベーション力に課題があること を 改めて明らか にした。危機感をもって現状の課題を突破する具体的な取組が必要である 。

中間報告では、社会全体で 徹底したデジタル化に向けた投資を集中的に実施するデジタル・ニューディールグリーン化への対応を含めたSDGs 等のグローバルな課題でのリーダーシップ発揮 の必要性を訴えた。これらについては、菅内閣の下で具体的な取組が動き出している

「 デジタル 」 については、 国全体のデジタル化を主導 するデジタル庁が 2021年9月に 創設 される。行政のデジタル化を実現するため、今後5年で全国の自治体のシステムの統一・標準化を目指すこととされている。また、 2030 年頃の導入が見込まれる6G ビヨンド5G については、欧米企業等と国際連携しながら、産学官の総力を挙げて の取組が始まっている。

「 グリーン 」 については、 2020 年末に 「グリーン成長戦略」 が策定され た。2050 年のカーボンニュートラル の 実現に向け、 2030 年度に温室効果ガスを 2013年度から 46 %削減 し、 さらに、 50 の高み に向け て 取 り 組 む こととされて おり、10 年間で2兆円の基金の活用等を通じ た グリーン イノベーション 創出に向けた取組が動き出している 。

こうした状況を 踏まえ、 我々「選択する未来 2.0」は、中間報告でも重要性を指摘した「人」に焦点を当てて議論を深めた。 具体的には、我々は、最終報告に向けて、 人材への投資により 目指すべき経済社会の姿 とその実現のための 方策について幅広く議論を行った。 また、 同時に、西村 経済財政政策担当 大臣の下で 、「人」に関する議論を深めるため、 「若者円卓会議」と「企業組織 の 変革に関する研究会」 が開催され、 「若者円卓会議」 では日本の未来を切り拓く若者自身の視点 から 若者の活躍促進に向けた取組について、 「企業組織の変革に関する 研究会」 では 人材の多様性と個性の発揮に向けた組織変革について検討が行われ 、報告や論点整理が 取りまとめられた。

新しい時代を迎え、グリーン、デジタルなどの分野において大きな変化 が速いスピードで進んでいる。本懇談会の中間報告のキーワードは「多様性」と「変化への対応」である 。多様性こそがイノベーションを生み、変化への対応力を高める。 その多様性の源は「人」にある。我が国の最大の資源である人材の力を引き出し、大きな変化に戦略的に対応していくことが今こそ必要である 。

終身雇用・正規雇用を前提に個別企業による人材育成のみ に依存するこれまでの仕組みは画一的な正社員と非正規雇用を生み、人材の潜在力を十分に引き出せていない。 2020 年4月から 大企業で導入された 同一労働同一賃金 は、正規・非正規 という区分をなくしていくための大きな一歩である。この歩みを 更に 進め、 多様な人材が 多様化・複線化されたキャリアパスの中で それぞれの 能力とやりがいを高めながら活躍する場を 選択できる ように する ための新しい仕組みが必要である。

コロナ危機の中で、新たな動きやチャレンジが生まれている。若い世代の日本人が国内外で活躍し、 2020 年 には リーマンショック前の 2007 年以来の高水準となる 102 社 が新規上場した。 米国では 431 社が新規上場しており、日米の経済規模を踏まえれば遜色ない水準となっている。 経済社会の ダイナミズムを復活させ、 活力にあふれ、豊かさを実感できる 未来 を築くには、全ての人々、とりわけこれまで十分な機会が得られてこなかった若者と女性の飛躍的な活躍が欠かせない。未来に向けて、呼び水となる人材への投資と制度改革を国が大胆に行う。こうした「ヒューマン・ニューディール」により、民間の創意工夫や投資を促し、企業だけでなく社会全体で人材を育成する大きなうねりを起こしていく

今、求められる未来への選択こそが人材への大胆な投資である。

参照

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