【Ⅲ4-1 子どもを持ちたいという方々が安心して有効で安全な不妊治療を受けられるよう にするための 適切な医療の評価 ② 】
②生殖補助医療に係る評価の新設
Table of Contents
第1 基本的な考え方
子どもを持ちたいという方々に対して有効で安全な不妊治療を提供する観点から、生殖補助医療に係る医療技術等について、新たな評価を行う。
第2 具体的な内容
1.生殖補助医療 の 実施 に当たり 必要な医学的管理及び療養上の指導等を行った場合の評価を新設する。
(新)生殖補助医療管理料
1 生殖補助医療管理料1 300 点
2 生殖補助医療管理料2 250 点
[対象患者]
(1)入院中の患者以外 の患者であって、 生殖補助医療 を実施している不妊症の患者 。
(2)不妊症の患者 とは、特定のパートナーと 共 に 不妊 症と診断された者をいう。
[算定要件]
(1)別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして 地方厚生局長 等 に届け出た保険医療機関において、入院中の患者以外の不妊症の患者であって、生殖補助医療を実施しているものに対して、 当該 患者の同意を得て、計画的な医学管理を継続して行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合に、当該基準に係る区分に従い、月1回に限り算定する。
(2)区分番号A000に掲げる初診料を算定する初診の日に行った指導又は当該初診の日 の同月 内に行った指導の費用は、初診料に含まれるものとする。
(3)不妊症の患者であって、生殖補助医療を実施しているもの(実施するための準備をしている者を含み、当該患者又はそのパートナー(当該患者と共に不妊症と診断された者をいう。以下同じ。)のうち女性の年齢が当該生殖補助医療の開始日において 43 歳未満である場合に限る。) に対して、生殖補助医療に係る医学的管理及び療養上必要な指導等を行った場合に算定する。
(4)治療計画を作成し、当該患者及びそのパートナーに説明して同意を得るとともに、当該患者に対する毎回の指導内容の要点を診療録に記載すること。なお、治療計画の 作成 に当 たっては、当該患者及びそのパートナーの病態、就労の状況を含 む社会的要因、薬物療法の副作用や合併症のリスク等を考慮すること 。
(5)少なくとも6月に1回以上、当該患者及びそのパートナーに対して治療内容等に係る同意について確認する とともに、必要に応じて治療計画の見直しを行うこと。
(6)治療 計画の作成 に当たっては、 関係 学会から示されているガイドラインを踏まえ、薬物療法等の治療方針について適切に検討すること。また、治療が奏効しない場合には、治療計画の見直し を行うこと。
(7)当該管理料の初回算定時に、当該患者及び そのパートナーを不妊症と診断した理由について、診療録に記載すること。
(8)治療計画を作成し、 当該患者及びそのパートナー に説明して同意を得た年月日を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること 。 また、2回目以降の 胚移植術に向けた治療計画を作成した場合には、その内容に ついて 当該患者及びそのパートナーに説明して同意を得た 年月日を 診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
(9)治療に当たっては、 当該 患者の状態に応じて、必要な心理的ケアや社会的支援について検討し、適切なケア ・支援の提供又は当該支援等を提供可能な他の施設への紹 介等を行うこと 。
(1 0 )当該管理料の初回算定時に、以下のいずれかに該当することを確認すること 。
ア 当該患者及びそのパートナーが、婚姻関係にあること。
イ 当該患者及びそのパートナーが、治療の結果、出生した子について認知を行う意向があること。
[施設基準]
(1)当該保険医療機関が産科、婦人科 、 産婦人科 又は泌尿器科 を標榜している 保険 医療機関であること 。
(2)産科、婦人科 若しくは 産婦人科について合わせて5年以上 又は泌尿器科について5年以上 の経験を有し、かつ、生殖補助医療に係る2年以上の経験を有する常勤の 医師が1名以上配置されていること。
(3)日本産科婦人科学会の体外受精・胚移植に関する登録施設にお ける 生殖補助医療に係 る1年以上の経験を有する常勤の医師が1名以上配置されていること 。
(4)配偶子・胚の 管理 に係る責任者が1名以上配置されていること 。
(5)関係 学会による配偶子・胚の 管理 に係る研修を受講した者が1名以上配置されていることが望ましい。
(6)生殖補助医療管理料1 を算定する施設に つ いては、以下の体制を有していること。
ア 看護師 、 公認心理師 等の患者からの相談に対応する 専任の担当者を配置していること 。
イ 社会福祉士等の保健医療サービス及び福祉サービスとの連携調整を担当する者を配置していること 。
ウ 他の保健医 療サービス及び福祉サービスとの連携調整及びこれらのサービスに関する 情報提供 に努めること 。
(7)採卵を行う専用の室を備えているとともに、 患者の緊急事態に対応するため緊急手術が可能な手術室を有していること。
(8)培養を行う専用の室を備えていること 。
(9)凍結保存を行う専用の室を備えていること。また、凍結保存に係る記録について、診療録と合わせ て保存すること。
(10)当該保険医療機関において、医 療 に係る 安全管理 を行う 体制が整備されていること。
(11)安全管理のための指針が整備されていること。 また、 安全管理に関する基本的な考え方、医療事故発生時の対応方法等が文書化されていること。
(12)安全管理のための 医療事故等の院内報告制度が整備されていること。 また、報告された 医療事故、インシデント等 について 分析を行い、 改善策 を講ずる 体制が整備されていること。
(13)安全管理の責任者等で構成される委員会が月1回程度開催されていること。なお、安全管理の責任者 の 判断 により 、当該委員会を対面によらない方法で開催し ても差し支えない。
(14)安全管理の体制確保のための職員研修が 定期的に 開催されていること。
(15)配偶子・胚の 管理を専ら担当する複数の常勤の医師又は配偶子・胚の管理に係る責任者が確認を行い、 配偶子・胚 の 取り違えを防ぐ体制が整備されていること。
(16)日本産科婦人科学会の体外受精・胚移植に関 する登録施設であること 。 また、日本産科婦人科学会のART症例登録システムへの症例データの入力を適切に実施すること。
(17)緊急時の対応のため、時間外・夜間救急体制 が整備されている 又は時間外・夜間救急体制 が整備されて いる 他の保険医療機関との連携体制を 構築 していること 。
(18)胚移植を実 施した患者の出産に係る経過について把握する体制を有していること 。
(19)精 巣内精子採取術に係る届出を行っている又は精巣内精子採取術に係る届出を行っている他の保険医療機関と連携していること が望ましい 。
(20)国が示す 不妊症に 係る医療機関の情報提供に関する 事業に協力すること。
(21)毎年7月において、前年度における治療件数等を把握するため、所定の様式により届け出ること 。
[経過措置]
令和4年3月31 日 時点で 特定治療支援事業の実施医 療機関として指定を受けている保険医療機関については、 同 年9月 30 日までの間に限り、 (2)から 21 )までの 基準 を 満たしている ものとする 。
2.不妊症の患者に対して、 調節卵巣刺激療法におけるゴナドトロピン投与量の判断を目的に実施される、血漿中の抗ミュラー管ホルモン測定に係る評価を新設する。
(新)内分泌学的検査抗ミュラー管ホルモン(AMH)600 点
[算定要件]
(1)不妊症の患者に対して、調節卵巣刺激療法におけるゴナドトロピン投 与量の判断を目的として実施した場合に、6月に1回に限り算定する 。
(2)抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、不妊症の患者に対して、調節卵巣刺激療法におけるゴナドトロピン投与量の判断のため に、CLEIA法又はECLIA法により測定した場合に算定できる 。
3.不妊症の患者に対して、 採卵を実施した場合の評価を新設する。
(新)採卵術 3,200 点
注
イ 1個の場合 2,400 点
ロ 2個から5個までの場合 3,600 点
ハ 6個から9個までの場合 5,500 点
ニ 10 個以上の場合 7,200 点
[算定要件]
(1)別に厚生 労働大臣が定める施設基準 を満たす保険医療機 関において、不妊症の患者に対して行われた場合に限り算定する。
(2)採取された卵子の数に応じ、 注 に掲げる 点数を それぞれ1回につき所定点数に加算 する 。
(3)当該患者又はそのパートナーが次のいずれかに該 当する 場合 であって 、体外受精又は顕微授精に用いることを目的として 、治療計画に従って 実施した場合に算定する。
ア 卵管性不妊
イ 男性不妊(閉塞性無精子症等)
ウ 機能性不妊
エ 人工授精等の一般不妊治療が無効であった場合
(4)採卵術の実施前に、排卵誘発を目的として用い た薬剤の費用は別に算定できる。
(5)治療に当たっては、関 係 学会から示されているガイドライン等を踏まえ、治療方針について適切に検討し、患者の同意を得た上で実施すること。
[施設基準]
(1)当該保険医療 機関が産科、婦人科又は産婦人科を標榜する保険医療機関であること。
(2)生殖補助医療管理料に係る届出を行っている保険医療機関であること。
4.不妊症の患者に対して、 体外受精又は顕微授精を実施した場合の評価を新設する。
(新)体外受精・顕微授精管理料
1体外受精 4,200 点
2顕微授精
イ1個の場合 4,800 点
ロ2 個から 5個 まで の場合 6,800 点
ハ6 個から 9個 まで の場合 10,000 点
ニ10 個以上の場合 12,800 点
[算定要件]
(1)別に厚生労働大臣が定める施設基準 を満たす 保険医療機関において、不妊症の患者に対して、体外受精 又は顕微授精 及び必要な医学管理を行った場合に算定する。
(2)体外受精 及び 顕微授精 を同時に実施した場合は、 1の所定点数の100 分の 5 0 に相当する点数及び2の所定点数を合算した点数により算定する。
(3)精巣内精子採取術により採取された精子を用いる場合は、採取精子調整加算として、 5 ,000 点を所定点数に加算する。
(4)1については、 体外 受精 及び 必要 な 医学管理 を行った場合 に 算定し、 2については、顕微授精及び必要な医学管理を行った場合に、顕微 授精 を実施した卵子 の個数に応じて算定する。
(5)当該患者又はそのパートナーが次 のいずれかに該当する 場合であって 、当該患者及びそのパートナー(当該患者と 共に 不妊症と診断された者をいう。以下同じ。)から採取した卵子及び精子を 用いて、受精卵を作成することを目的として 治療 計画に従って 実施した場合に算定する。
ア 卵管性不妊
イ 男性不妊(閉塞性無精子症等)
ウ 機能性不妊
エ 人工授精等の一般不妊治療が無効であった場合
(6)体外受精又は顕微授精の実施に当たっては、密度勾配遠心法、連続密度勾配法又はスイムアップ法等により、精子の前処置を適切に実施すること。なお、前処置に係る費用は 所定点数に含まれ 、 採取精子調整加算 を除き、別に算定できない。
(7)体外受精又は顕微授精の実施に当たり、未成熟の卵子を用いる場合には、卵子を成熟させるための前処置を適切に実施すること。なお、前処置に 係る費用は 所定点数に含まれ 、別に算定できない。
(8)治療に当たっては、関 係 学会から示されているガイドライン等を踏まえ、 治療方針について適切に検討し、当該患者の同意を得た上で実施すること 。
(9)体外受精又は顕微授精の実施前の卵子又は精子の凍結保存に係る費用は、所定点数に含まれる 。
[施設基準]
(1)当該保険医療機関が産科、婦人科又は産婦人科を標榜 する保険医療機関であること。
(2)生殖補助医療管理料に係る届出 を行っている保険医療機関であること。
5.顕微授精によ る受精卵の作成に当たり、卵子活性化処 理を実施した場合の評価を新設する。
(新)卵子調整加算 1,000 点
[算定要件]
受精卵の作成に当たり、受精卵作成の成功率を向上させることを目的として卵子活性化処理を実施した場合は、卵子調整加算と して、1 ,000点を顕微授精の所定点数に加算する。
6.体外受精又は顕微授精により作成した受精卵の培養等の管理に係る評価を新設する。
(新)受精卵・胚培養管理料
1 1個の場合 4,500 点
2 2 個から 5個 までの場合 6,000 点
3 6個から9個までの場合 8, 400 点
4 10 個以上の場合 10,500 点
注
イ 1個の場合 1,500 点
ロ 2個から5個までの場合 2,000 点
ハ 6個から9個までの場合 2,500 点
ニ 10 個以上の場合 3,000 点
[算定要件]
(1)別に厚生労働大臣が定める施設基準 を満たす 保険医療機関において、不妊症の患者に対して、体外受精又は顕微授精により作成された受精卵から初期胚又は胚盤胞を作成することを目的として 、受精卵及び胚の培養並びに必要な医学管理を行った場合に算定する。
(2)胚盤胞 の作成を目的として管理を行った胚 の数 に応じ、 注に掲げる点数をそれぞれ1回につき所定点数に 加算する 。
(3)当該患者及びそのパートナーから採取した卵子及び精子を用いて作成された初期胚又は胚盤胞 について 、胚移植術を目的として 治療計画に従って 培養 及び必要な医学的管理を行った 場合に 、培養した受精卵及び胚の数に応じて 算定する。
(4)受精卵・胚培養管理料には、受精卵及び胚の培養に用いる培養液の費用その他の培養環境の管理に係る費用等が含まれる。
(5)治療に当たっては、関係学会から示されているガイドライン等を踏まえ、 治療方針について適切に検討し、当該患者の同意を得た上で実施すること。
[施設基準]
(1)当該保険医療 機関が産科、婦人科又は産婦人科を標榜する保険医療機関であること。
(2)生殖補助医療管理料に係る届出を行っている保険医療機関であること。
7.受精卵の培養により作成された初期胚又は胚盤胞の凍結保存に係る医学的管理に係る評価を新設する。
(新)胚凍結保存管理料
1 胚凍結保存管理料(導入時)
イ 1個 の場合 5,000 点
ロ 2個から5個までの場合 7,000 点
ハ 6個から9 個までの場合 10,200 点
ニ 10 個以上の場合 13,000 点
2 胚凍結保存維持管理料 3 ,500 点
[算定要件]
(1)別に厚生労働大臣が定める施設基準 を満たす 保険医療機関において、不妊症の患者に対して、凍結・融解胚移植に用いることを目的として、初期胚又は胚盤胞の凍結保存及び必要な医学管理を行った場合に 限り算定する。
(2)1については、凍結保存を開始した場合に、凍結する初期胚又は胚盤胞の数に応 じて算定し、2に ついては、凍結保存の開始から1年を経過している場合であって、凍結 胚の保存に係る維持管理を行った場合に、当該凍結保存の開始日から起算して3年を限度として 、1年に1回に限り算定する。
(3)当該患者及びそのパートナーから採取した卵子及び精子を用いて作成された初期胚又は胚盤胞について、胚移植術を目的として、治療計画に従って凍結保存及び必要な医学的管理を行った場合に算定する。
(4)胚凍結保存管理料には、初期胚又は胚盤胞の凍結保存に用いる器材の費用その他の凍結保存環境の管理 に係る 費用等が含まれる。
(5)治療に当たっては、関 係 学会から示されているガイドライン等を踏まえ、治療方針 について適切に検討し、 当該 患者の同意を得た上で実施すること。
(6)妊娠等により不妊症に係る治療が中断されている場合であって、患者及びそのパートナーの希望により、凍結保存及 び必要な医学管理を継続する場合には、その費用は患家の負担とする 。
[施設基準]
(1)当該保険医療機関が産科、婦人科又は産婦人科を 標榜する保険医療機関であること。
(2)生殖補助医療管理料に係る届出 を行っている保険医療機関であること。
8.不妊症の患者に対して、 胚移植を実施した場合の評価を新設する。
(新)
胚移植術
1 新鮮胚 移植の場合 7,500 点
2 凍結・融解胚移植の場合 12,000 点
[算定要件]
(1)別に厚生労働大臣が定める施設基準 を満たす保険医療機関において、不妊症の患者に対して行 われた場合に限り算定する。
(2)当該患者の治療開始日の年齢が 40 歳未満 である場合は、患者1人につき6回 に限り、 40 歳以上 43 歳未満である場合は、患者1人につき3回に限り算定する(ただし、次の児の妊娠を目的として胚移植を実施した場合には、その治療開始日 の年齢が 40 歳 未満である場合は、患者1人につき6回に限り、 40 歳以上 43 歳未満である場合は、患者1人につき3回に限り算定する 。) 。
(3)当該患者及びそのパートナーから採取した卵子及び精子を用いて作成された初期胚又は胚盤胞 について 、妊娠を目的として 治療計画に従って 移植した場合であって、新鮮胚を用いた 場合については1を、凍結胚を融解したものを用いた場合については 2を算定する。
(4)胚移植術の実施のために用いた薬剤の費用は別に算定できる 。
(5)凍結・融解胚移植の実施に当たっては、胚の融解等の前処置を適切に実施すること。なお、前処置に係る費用は 所定点数に含まれ 、別に算定できない 。
(6)治療に当たっては、関連学会から示されているガイドライン等を踏まえ、 治療方針について適切に検討し、当該患者の同意を得た上で実施 すること。
(7)治療開始日 の年齢とは、初回の胚移植術については 、当該採卵に係る 治療計画を作成した日 における年齢をい う。また、 2回目以降の胚移植術 のうち、改めて採卵を実施しないもの については、当該胚移植術に係る 治療計画を作成 した 日 における年齢をい い 、2回目以降の胚移植術 のうち 、改めて採卵を実施 するもの に ついて は、当該採卵に係る 治療計画を作成した日 における年齢をいう。
[施設基準]
(1)当該保険医療 機関が産科、婦人科又は産婦人科を標榜する保険医療機関であること。
(2)生殖補助医療管理料に係る届出 を行っている保険医療機関であること。
9.胚移植術を実施する患者に対して、着床率の向上を目的として実施する治療に係る評価を新設する。
(新)胚移植術
注4 アシステッドハッチング 1,000 点
注5 高濃度ヒアルロン酸含有培養液 1,000 点
[算定要件]
(1)胚移植術 において、アシステッドハッチングを実施した場合は、1 ,000 点を所定点数に加算する。
(2)胚移植術において、高濃度ヒアルロン酸含有培養液を用いた前処置を実施した場合は、 1,000 点を所定点数に加算する 。
参照
厚生労働省ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)> 第516回 中央社会保険医療協議会 総会 議事次第