Table of Contents
医学教育モデル・コア・カリキュラムの考え方
1. 大学教育における位置づけ
モデル・コア・カリキュラムの整理
モデル・コア・カリキュラムは、各大学が策定する「カリキュラム」のうち、全大学で共通して取り組むべき「コア」の部分を抽出し、「モデル」として体系的に整理したものである。このため、従来どおり、各大学における具体的な医学教育は、学修時間数の3分の2程度を目安にモデル・コア・カリキュラムを踏まえたものとし、残りの3分の1程度の内容は、各大学の入学者受入れの方針、教育課程編成・実施の方針、卒業認定・学位授与の方針等に基づき、大学が自主的・自律的に編成するものとする。
こうした取組の実行可能性を高めるために、基本的にはモデル・コア・カリキュラムをスリム化する方針で整理をしたが、併せて、医学や医療の進歩に伴う知識や技能について、全てを卒前教育において修得することを目指すものではなく、生涯をかけて修得していくことを前提に、卒前教育で行うべきものを精査する必要があることも強調しておきたい。また、今後の情報・科学技術の更なる進歩に加え、新興・再興感染症等も含めた予測困難な時代において、患者・生活者や社会の抱える様々な課題の解決に向けて保健医療を実践することが期待されるこれからの医師の養成にあたっては、自ら考える力やリーダーシップを身に付ける必要があり、カリキュラムの過密化は必ずしも望ましい状態ではないことを付言する。
なお、臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験(以下「共用試験」という。)の出題基準は、一義的には共用試験の実施主体において検討されるものであるが、基本的内容を精選して各大学共通の学修目標を掲載したモデル・コア・カリキュラムを参照して策定されているという実態があり、後述する共用試験の公的化によって、モデル・コア・カリキュラムの意義はさらに重要なものとなる。
診療参加型臨床実習の更なる促進
令和3年5月21日に成立した、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(令和3年法律第49号)」において、医師法(昭和23年法律第201号)の改正が行われ、大学において医学を専攻する学生であって、共用試験に合格した医学生は、臨床実習において医師の指導監督の下、医師として具有すべき知識及び技能の修得のために医業を行うことができることとされた(令和5年4月1日施行)。臨床実習における医学生の医業が法的に位置づけられることにより、実践的な診療参加型臨床実習の充実を促し、卒前教育の更なる質の向上が期待される。診療参加型臨床実習は、単に臨床経験を積み、技能を向上させるのみならず、診療チームの一員として診療業務を分担し、主体性を持ち積極的に診療に参加することで、患者の背景や価値観、経済的な要因、家族との関係性など、全人的・総合的な医療に必要な視座を高め、医師の職業的な知識・思考法・技能・態度の基本的な部分を学ぶ機会となること等が期待されている。
したがって、大学においては、臨床実習に参加する学生の適性と質を保証し、患者の安全とプライバシー保護に十分配慮した上で、診療参加型臨床実習を更に促進することが求められ、診療参加型臨床実習実施ガイドラインを含むモデル・コア・カリキュラムがその一助となることを期待する。
2. 基本理念と背景
キャッチフレーズ「未来の社会や地域を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成」
このたび、新型コロナウイルス感染症の流行や、人口知能等の情報・科学技術の活用等による医療技術の高度化、超高齢社会での多疾患併存患者の増加等による医療の在り方の変化等を踏まえ、医学・歯学・薬学教育のモデル・コア・カリキュラムを同時に改訂することした。今回の改訂では、変化し続ける未来の社会や地域を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成を目指し、医学・歯学・薬学教育の3領域で統一したキャッチフレーズを採用した。
人口構造の変化、多疾患併存、多死社会、健康格差、医師偏在、増大する医療費、新興・再興感染症や災害リスク等様々な問題に直面し、これらの社会構造の変化は、年を経るにつれ更なる激化が見込まれている。
医療者としての根幹となる資質・能力を培い、多職種で複合的な協力を行い、多様かつ発展する社会の変化の中で活躍することが求められる。また、患者や家族の価値観に配慮する観点や利他的な態度が重要である。医療や技術が高度化され、医療を取り巻く環境は大きく変化している中、さらには、人口知能等の情報・科学技術を含めた医療分野で扱う情報は質も量も拡大・拡張しており、これらを適切に活用した社会への貢献も求められる。
このような社会の中で状況を的確に把握し、時代の変化や予測困難な事項に多職種と連携、協力しながら柔軟に対応し、生涯にわたって活躍できる医療人を養成するために、上記キャッチフレーズを念頭に本改訂を実施した。
2040年以降の社会も想定した医学・歯学・薬学において共通して求められる資質・能力
医師養成には、6年間の卒前教育に加えて、臨床研修や専門研修等、一定期間の時間を要する。このため、これらの専門教育を経て、学生が医療人として活躍する2040年以降の社会も想定し、モデル・コア・カリキュラムを改訂する必要がある。2040年頃、日本の高齢人口はピークを迎えるが、それ以降も高齢化率は上昇を続けると予測されている。これに伴い、多疾患の併存や、また様々な社会的背景を有する患者等の割合の増大が見込まれ、これらの患者・生活者を総合的にみる姿勢が、医療人として求められる。さらに、生産年齢人口の減少と相まって、今後日本においては、生産年齢人口負担がますます増加することが予測されるとともに、地理的にみると、全国の居住地域の約半数で人口が半減すると予測されており、この急激な人口構造の変化に応じて、大幅な医療需要の変化に対応できる医療人の養成が、社会的に重要である。加えて、将来医療現場において活用されうる新規科学技術について、先んじて全てを卒前教育にモデル・コア・カリキュラムとして盛り込むことには限界があるものの、倫理を含めて基盤となる情報・科学技術を活かす能力について、その素養を身に付ける必要がある。このため、平成28年度改訂版医学教育モデル・コア・カリキュラム(以下、「旧版」という。)の資質・能力に、新規に「総合的に患者・生活者をみる姿勢」、「情報・科学技術を活かす能力」の2つを加えた。
また、医療人として求められる基本的な資質・能力は、専門分野に関わらず共通している。そこで、今回の改訂では「求められる基本的な資質・能力」に関して原則として医学・歯学・薬学の3領域で共通化した。多職種の卒前段階の教育の水平的な協調を進め、医療人として価値観を共有することは重要である。
卒前・卒後の一貫性
卒前教育(共用試験や国際認証を含む)、国家試験、臨床研修、生涯教育等との一貫性について関係機関等と協議を行い、卒前から卒後までのシームレスな教育を見据えて改訂を行ったことを付言するとともに、関係各位に謝意を表する。医師養成をめぐる関連制度(共用試験の公的化及び医学生の医業の法的位置づけの明確化、国家試験出題基準、臨床研修到達目標等)との整合性を担保するための方策を具体化することとし、卒前・卒後の一貫したシームレスな医師養成の更なる推進を図る。
3. 医学生に求めたいこと
今回の改訂のキャッチフレーズである「多様な場や人をつなぎ活躍できる」ことを達成するためには、医学・医療の概念を幅広く捉えることが求められる。
例えば、今日の医師に求められる役割の一つとして、予防医療がある。すなわち、医療全体を考えるにあたっては、病気の診断や治療だけではなく病気の背景を考え、また健康の社会的決定要因、スポーツ・運動や栄養・食育の重要性についても認識することが必要である。また、幅広い視野を持つという観点では、患者一人一人がそれぞれに社会生活を営んでおり、在宅医療を含め医療現場で目にするのは患者の生活の一場面に過ぎないということを認識することも重要である。これらを意識しながら臨床実習をはじめとする学修に臨めば、より有意義な成果が得られることだろう。
「多様な場や人をつなぎ活躍できる」ということは、これから起こる多様な求めや変化に応えるという受動的な側面だけでなく、医師として多様なキャリアパスが形成でき、多様なチャンスがあるということも意味する。実際に、現在の医師の大半は臨床に従事しているが、基礎医学や社会医学に加え、法医学や矯正医療、検疫といった社会機能維持、保健所を含む行政、学校保健や他領域も含めた教育といった多様な領域に進んでいる医師もいる。また、臨床医であっても日々の診療だけでなく、市民向け講座や政策検討、国際保健・医療に参画するなど多様な社会貢献を果たしている。人生100年時代において、卒業段階での選択だけではなく、卒後も様々な段階で多様な選択肢があることを付言する。
また、多様な選択肢の中から自身の進む道を選んだ後においても、医学的関心を幅広く持つことは生涯にわたって求められる。例えば、臨床医になっても診療を行う上でリサーチマインドを絶えず意識し、あるいは研究医になっても新たな医学的発見を目指す上で常に臨床現場を意識することを努力し続けることが求められる。また、異なる立場や場面を意識したり、他の選択肢を選んだ医師と連携したりすることを求められることは容易に想像できる。さらには、医師の間だけで関係性を築くのではなく、医学・医療に関わる多くの人々と積極的に関係を築き、自らも社会の一員として関心を持ち関与することも、「多様な場や人をつなぎ活躍できる」という目的の達成のためには必要不可欠なことであろう。
最後に、学問は先人の積み重ねの上に成り立つものであることから、入学した最初の授業から学問の尊さを感じ取り、また、生命は太古の昔からの生活の営みが紡ぎ出すものであることから、臨床体験・実習や解剖学実習では生命の厳かさや生と死の意味するものを感じ取りながら、学修に臨んでいただきたい。また、医学生の学修環境は、大学の教職員だけではなく、患者や学外の医学教育関係者など多くの方々の協力の上に成り立っていることを忘れてはならない。そのため、自己を理解し、様々な人の支えによって医学を学ぶ機会が得られたことへの感謝と敬意の念を持ち学修の成果を社会に還元するとともに、地域のリーダーの役割を担い、更に次世代における医学や医療の発展につなぐために、生涯にわたって精進していただきたい。そして何より、一人の社会人として高い倫理観と教養を持つことを強く求める。
4. 医学教育に携わる各関係者にお願いしたいこと
診療参加型臨床実習や学生の動機づけとしての早期体験実習の実施を含め、医師会、病院団体や地域医療対策協議会等の行政を含む関係機関との連携を大学に期待したい。特に、今回の改訂で新規に追加した「総合的に患者・生活者をみる姿勢」に係る資質・能力の教育を実現・充実するため、地域の医療機関等に、在宅医療や各種保健活動も含め、各大学の実習等へ協力いただければ幸いである。医学教育とりわけ臨床実習は、今後、今まで以上に医師の地域・診療科偏在や地域包括ケアシステムを意識した内容を含むことが期待される。
また、卒後の医療現場では、チーム医療や多職種連携の観点から、医療系・資格系職種に限らず、多くの職種との協働が求められる。このため、卒前の段階からこれらを意識した教育が実施できるよう、医療関係者におかれては様々な形でご協力いただきたい。各大学におかれては、必要な学修内容が十分担保できるよう、十分な実験・実習時間の確保に配慮いただきたい。
なお、教育に当たっては、上記「医学生に求めたいこと」で示した内容についても考慮いただければ幸いである。
5. 患者・市民への周知や協力の依頼
改正医療法等により、医学生が行う医業については、法的な位置付けをもって実施することとなった。上記「医学生に求めたいこと」でも述べたとおり、診療参加型臨床実習の円滑かつ安全な実施にあたっては、患者として関わる市民の理解が必要不可欠である。実習における患者からの同意については、本書に収録されている「診療参加型臨床実習実施ガイドライン」でも示しているが、診療参加型臨床実習への市民の協力を広く請うために、各大学で工夫して次の「患者・市民の皆様へのお願い」文面例を利用するなどして、医学教育の必要性と重要性について周知を図ることが望ましい。
また、文部科学省及び厚生労働省は、市民や大学病院等を受診する患者に対し、教育機関として大学病院等が果たす役割について周知・啓発し、患者の理解を醸成し、臨床実習を円滑に行うための環境を整備していくことが求められる。また、大学病院以外で臨床実習を受け入れている病院等においても、同様に適切な同意取得や啓発活動を進める必要がある。
「患者・市民の皆様へのお願い」文面例
患者・市民の皆様へのお願い
医療者を養成するにあたっては、患者さんご自身やご家族の協力が欠かせません。令和3年には医師法の改正が行われ、大学において医学を専攻する学生であって、当該学生が臨床実習を開始する前に修得すべき知識及び技能を具有しているかどうかを評価するために大学が共用する試験(以下「共用試験」という。)※を合格した医学生は、臨床実習において医師の指導監督の下、医業を行うことができることとされました。医学生は、臨床実習を中心に、様々な形で患者、要介護者等に直接接することによって、必要な資質・能力を身に付けていきます。皆様にご協力いただくことにより、将来的に、皆様により良い医療や医学・医療の進歩といった形で「お返し」できるものですので、大学病院等で医学生を一緒に育ててくださいますよう、ご協力をお願いします。 ※ 第三者機関である公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構(CATOカトー)が、知識を問うコンピュータによる試験(Computer-Based Testing: CBTシービーティー)と模擬患者さんのご協力を得て技能や態度を評価する試験(Objective Structured Clinical Examination: OSCE、オスキー)を実施しています。 |
医学教育モデル・コア・カリキュラム改訂の概要
モデル・コア・カリキュラムの改訂においては、以下7つの基本方針に基づき改訂した。
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I. 改訂の方針
1. 20 年後以降の社会も想定した資質・能力の改訂
- 今回の改訂にあたり、医学・医療をとりまく社会の変革や科学技術の進歩などを考慮にいれた 「医師として求められる資質・能力(以下、「資質・能力」という。)は、生涯にわたり研鑽して獲得する、医療人としての資質・能力と位置づけて、将来の医師像を明確に示し 、第 1 章に記載した。
- 我が国の人口構造はいわゆる 2040 年問題として少子高齢化がさらに進み、多疾患併存患者などへの対応が今後一層求められる。専門分化する医学 ・医療 のなかで、患者の心理及び社会文化的背景や家族・地域社会との関 係性を踏まえることのできる能力の重要性が増している 。
- モデル・コア・カリキュラム (以下、コアカリと省略する。 の改訂が行われた後、各大学のカリキュラムが変更されて卒業生を輩出し、臨床研修・専門研修などを経て社会の中心で医師として活躍するには、おおよそ 15 20 年程度の年月を必要とすることからも、コアカリの目指す医学・医療は 20 年後の社会を想定しておくことが望まれる 。
- 情報・科学技術の進歩 において 20 年先を想定することは容易ではないが、発展し続ける情報社会のなかで、人工知能( AI )などを含めた科学技術を適正に 活用して医療 と 医学研究を行っていく能力は、背後にある倫理性も含めて極めて重要である
2. アウトカム基盤型教育のさらなる展開(学修目標の再編成と方略・評価の整理)
今回の改訂で、最も大きな変更の一つである。
- 従来、科目・教科の順次性に沿ったコアカリであったものを、アウトカム基盤型教育の考え方に則った資質・能力ごとの記載へと改変した。
- 第 2 章を「学修目標」、第 3 章を「学修方略・評価」としてそれぞれ第 1 章に展開した資質・能力に紐づけて記載している。
- 学修目標
- 学修者(医学生)が教育の修了時(卒業時)に「どのような能力を身につけていることが望まれるか」(企図されたアウトカム)を原点として、 1. に示した資質・能力ごとに学修目標を策定した。
- 学修目標の記載を 4 層とし、以下の記載とした。
- 第 1 層を資質・能力として、アルファベットの頭文字 2 文字をとった(例:Professionalism の PR )。第 1 層には資質・能力の概要(目的)を短文で記載した。
- 第 2 層には、各資質・能力の構成要素をいくつかの「名詞」で表し(例: PR-01 信頼)、学修者がどのようなことを出来るようになるかを文章で記載している。
- 第 3 層に、具体的な能力を「名詞」で表現した。(例: PR-01-01 誠実さ)
- 最後の第 4 層に、学修目標を具体的な行動を表す「文」とした。(例: PR-01-01-01 患者や社会に対して誠実である行動とはどのようなものかを考え、そのように行動する)
- これにより、旧版での A 〜 G の構造は発展的に解消している。
- 学修目標の抽象度(粒度)は従来の コアカリ を基本的に維持した。
- 発展する医学・医療の現状から、コアカリで は肥大化しやすい傾向が強い。後述するスリム化の検討とともに、総量を増加させないように強く留意した。
- 学修方略・学修者評価
- カリキュラムの重要な構成要素である学修方略および学修者評価について、初めて章を立てて記載した。学修方略と学修者評価は対として考えることが多いことから、方略・評価を一つの章としている。
- 学修方略においては、有用な概念やモデル( SPICES モデル、 Kolb の経験学修モデル 等 )や資源について記述し、教員や学生が聞き馴染みのない用語を紹介した。反転学修やロールプレイなど採用されつつある学修方法に加えて、昨今進化している情報通信技術( ICT )についても触れている。なお、臨床実習での方略については診療参加型臨床実習実施ガイドラインに記載されるため、第 3 章では臨床実習前の学修方略を中心に記載している。
- 学修者評価では、「学修者評価の考え方」として重要な概念である Miller のピラミッド、資質・能力の評価、形成的評価と総括的評価、評価の妥当性・信頼性、評価におけるブループリント、評価の規 準と基準について解説した。「学修者評価の方法」の項では、筆記試験(客観試験、記述試験)、 Workplace based assessment /観察評価、 OSCE 、ポートフォリオ評価について解説するとともに、「共用試験」と「医師国家試験」についてそれぞれ独立した項目として記載した。重要な概念として世界的に注目されている Programmatic assessment についてもGood Practice として記載した。また、「学修者評価についての問い」の項を設け、よりよい学修者評価に向けての観点を提供することを目 的とした。「問い」の答えは一つではないことに留意しつつ、各大学の実情に合わせて参考にしていただきたい。
- より実践的な例として「方略と評価の Good Practice 」を記載した。アウトカム基盤型教育の実践の一例として参考にして大学の実情に応じて修正・発展させていただきたい。これらの事例は、各大学での実施を必須とするものではなく、あくまで参考例として掲載した。
3. 医師養成をめぐる制度改正等との整合性の担保に向けた方策の検討
- 共用試験との整合
- 医療系大学間共用試験実施評価機構( Common Achievemen t Tests Organization、以下 「 CATO 」 と いう。 )の CBT 及び OSCE の問題(課題)策定に コアカリが 利活用されてきた実績がある。
- 今回の改訂で、コアカリの構造(資質・能力を中心とした記載)を大きく変更するにあたり、 CATO との調整を重ね、旧版との学修目標の対照表を作成することによって大学や CATO で混乱を生じないように調整を行なった(文部科学省ホームページに掲載)。
- 令和 3 年に、医学生の臨床実習における医業が法的に位置付けられたことを受け(法施行は令和 5 年) 、厚生労働省において「医学生が臨床実習で行う医業の範囲に関する検討会」が開催され、報告書が出された。コアカリ改訂においてはこの検討会委員及び事務局である厚生労働省と緊密な情報交換を行い、診療参加型臨床実習実施ガイドライン等に反映させた。
- 医師国家試験との整合
- 令和 2 年 11 月には、厚生労働省の医道審議会 医師国家試験改善検討部会において「医師国家試験改善検討部会 報告書」が出され、出題基準などに関して記載されている。
- 医師国家試験の内容が、大学の医学教育に大きな影響を与えるのは自明である。
コアカリは医師国家試験と整合をとるべきであるという考えにたち、上記報告書に記載がある「(国家試験の)ブループリントの各論について出題する疾患を厳選すること」に配慮してコアカリに記載する疾患について検討を加えた。 - コアカリの改訂が行われて翌年に大学のカリキュラムが変更されることが多いこと(令和 2 年度 医学教育モデル・コア・カリキュラムの次期改訂に向けた 調査・研究 による)、カリキュラム変更後の学生が卒業するまでに 6 年を要して医師国家試験を受験することを考慮して、 引き続き、 モデル・コア・カリキュラム と医師国家試験出題基準の整合について 継続的な見直しを行っていくことが重要である 。
- シームレスな診療参加型臨床実習の推進
- 旧版コアカリにおいて、卒後の臨床研修の目標との整合が図られ、卒前実習 2 年+卒後研修 2 年のスコープが示された。
- 今回のコアカリ改訂においても、臨床実習と臨床研修が連続した一貫性のあるものとして理解を深めるように、臨床研修制度を所管する厚生労働省などと連携するとともに、診療参加型臨床実習実施ガイドラインのなかでその一貫性について触れられている。
- 国際標準への対応
- 国際的な医学教育認証を行なっている日本医学教育評価機構( Japan Accreditation Council for Medical Education 、 以下 「 JACME 」 とする 。 )は、大学の医学教育に大きな影響を与えている。領域 2 の教育プログラム、領域 3 の学修者評価に対する JACME による 評価は、コアカリに基づく各大学のカリキュラムへの 認証 評価の構造となっているため、 JACME とコアカリの整合をとることは、大学および学修者にとって重要である。
- このため、JACME と複数回の協議を行い、お互いの整合をとった記載に努めた。
4. スリム化の徹底と読み手や利用方法を想定した電子化
- スリム化
- コアカリのスリム化は従前からの課題であり、医学と医療の進歩によって新規の学修目標が増加していく中で、厳選すべき学修目標について、専門のチームを編成して全体で取り組んできた。
- 希少疾患の削減は有用な 視点 である。それぞれの資質・能力が「卒業時」のアウトカムを想定した記載とした経緯からも、専門医レベルの記載が必要かどうかの検討を行った。知識領域( 専門知識に基づいた問題解決能力:PS)においては、旧版コアカリに記載された疾患について、医師国家試験の出題基準を含めた包括的な検討を加えた。
- コアカリの学修目標では、主な 疾患、身体診察、主要症候、主要な臨床・画像検査、基本的臨床手技等を別表化して整理することにより、読み手にとって理解しやすい構成を目指した。
- 電子化
- さまざまな文書の電子化は時代の流れであり、コアカリを利用する人たちの利便性を増すことは優先度が高い。一方で、冊子体として発刊する重要性は失われていないと考えた。
- コアカリを利活用する具体的な対象として、大学のカリキュラム開発者、大学等の教員・指導医、行政機関、学生などを想定し、電子化することによるメリットを検討した。改訂版のコアカリの電子化では、タグ機能で目的とする章や項目に容易に到達できること、検索機能が使用できることを目標とした。
5. 研究者育成の視点の充実
- 医学研究の重要性とリサーチマインドの醸成、基礎医学・臨床医学・社会医学の研究が医療の実践の基盤にあることを重視した。
- 詳細は II 1. ⑥の 科学的探究(Research : RE)を参照されたい。
6. 根拠に基づいたコアカリ内容
医学教育にあるベストエビデンスと教学データに基づいた科学的なアプローチからコアカリ改訂を進めた 。
- 資質・能力の改訂について
- 資質・能力の改訂においては、モデル・コア・カリキュラム改訂に関する調査研究チームの構成員および、協力員、有意抽出された医学生および一般国民を対象に修正 Delphi 法による評価を実施し、合意を形成した(計 2 回、平均 40 名)。
- 海外の状況を参照しつ つ 、本国の文化に沿ったコアカリとすることを心がけた。
- 知識分野の学習目標にかかる動詞や診療参加型臨床実習の実施等について、医学教育学会において調査を実施し、調査結果を根拠としたコアカリ改訂を行った。
- 主要症候について
- 主要症候については、医学生が卒業までに経験することが望ましい症状・症候を再検討するため、卒前教育(平成 30 年度版医師国家試験出題基準)・卒後教育(臨床研修到達目標)・生涯教育( 2021 年度日本医師会生涯教育制度)といった医師養成課程における一貫性を保つよう、症状・症候を選定し、一般国民における自覚症状の訴えの多さ( 2019 年国民生活基礎調査)によ り重み付けを行った。その上で、中でも鑑別診断の候補となる疾患が多臓器にまたがるものを表に列挙した。
また、 H28 年度版の症状・症候の鑑別疾患候補一覧に対しては修正 Delphi 法による妥当性検証が実施され、その結果を踏まえて各症状・症候の鑑別診断の候補となる疾患を改訂した。 - 特に方略・評価の章において、医学教育における現在の知見を表現するとともに、医学教育研究の結果と現場で用いる教育者との間の橋渡しとなるよう Good Practice を記載してカリキュラム開発への参考となるように心がけた。
- 主要症候については、医学生が卒業までに経験することが望ましい症状・症候を再検討するため、卒前教育(平成 30 年度版医師国家試験出題基準)・卒後教育(臨床研修到達目標)・生涯教育( 2021 年度日本医師会生涯教育制度)といった医師養成課程における一貫性を保つよう、症状・症候を選定し、一般国民における自覚症状の訴えの多さ( 2019 年国民生活基礎調査)によ り重み付けを行った。その上で、中でも鑑別診断の候補となる疾患が多臓器にまたがるものを表に列挙した。
7. 歯学・薬学教育コア カリとの一部共通化
- 「 改訂医学教育モデル・コア・カリキュラムの 考 え方 」に記載した 内容を再度示す。
- 医療人として求められる基本的な資質・能力は、専門分野に関わらず共通している。今回の改訂では「求められる基本的な資質・能力」に関して 原則として 医学・歯学・薬学の 3 領域で共通化した。
- 多職種の卒前段階の教育の水平的な協調を進め、医療人として価値観を共有することは重要である と考えたためである。
II. 改訂の各論
1. 改訂された 資質・能力
コアカリの第1 章を「資質・能力」として、 10 の資質・能力を掲げた。第 2 章に記載した 学修 目標との関連も含め、その概要は以下のとおりである。
① プロフェッショナリズム(Professionalism : PR)
- 「 人の命に深く関わり健康を守るという医師の職責を十分に自覚し、多様性・人間性を尊重し、利他的な態度で診療にあたりながら、医師としての道を究めていく。」という医師としての目的を最初に明示した。
- 学修 目標として「信頼」「思いやり」「社会正義」「教養」「医の倫理」を挙げ、アウトカムを示している。
② 総合的に患者・生活者をみる姿勢(Generalism: GE)
- 今回の改訂で新たに追記した資質・能力である。専門・細分化に進む傾向にある医学・医療の中で、医学生及び医師にとって重要な資質・能力であると考えた。「 患者の抱える問題を臓器横断的に捉えた上で、心理社会的背景も踏まえ、ニーズに応じて柔軟に自身の専門領域にとどまらずに診療を行い、個人と社会のウェルビーイングを実現する。」と、「総合的」の意味するところを目標に明示した。
- 具体的には、第 2 層で「 全人的な視点とアプローチ」「 地域の視点とアプローチ」「 人生の視点とアプローチ」「 社会の視点とアプローチ」の 4 つの視点から提示した。
- 「 全人的な視点とアプローチ」では、臓器横断的な診療、患者中心の医療、緩和医療など包括的な視点とともに、根拠に基づいた医療( EBM )や行動科学についても扱った。
- 「 地域の視点とアプローチ」では医療・介護・保険・福祉の観点からプライマリ・ケアを重視した。
- 「 人生の視点とアプローチ」では、人生のプロセス(ライフサイクル)に沿って、小児期から老年期・終末期に至る視点をもとに学修することを提示した。
- 「 社会の視点とアプローチ」は文化的、社会科学的な文脈から総合的 に臨床実践に活用することについて述べた。社会医学の各論については、後述の ⑩ 社会における医療の役割の理解(Medicine in Society : SO)に記載している。
③ 生涯にわたって共に学ぶ姿勢(Lifelong Learning : LL)
- 「 安全で質の高い医療を実践するために絶えず省察し、他の医師・医療者と共に研鑽しながら、生涯にわたって自律的に学び続け、積極的に教育に携わっていく。」という 目的 を明示した。
- 生涯学習として、新たな医学情報へのアクセスと省察する姿勢、学修者のキャリア構築に触れた。
- 自身が学び続けると同時に、同僚や後進等への医学教育を実践することの重要性を述べている。
④ 科学的探究(Research : RE)
- 「 医学・医療の発展のための医学研究の重要性を理解し、科学的思考を身に付けながら、学術・研究活動に関与して医学を創造する。」という目的を掲げ、科学的探究心をもって日常診療に取り組む臨床医の養成も視野に、研究者育成の視点を充実化した。
- 医学・医療の発展のための医学研究の重要性およびリサーチマインドの醸成という観点を重視し、基礎医学・臨床医学・社会医学の研究が医療の実践の基礎にあることを理解する構造とした。
- 研究の発信と研究倫理についても学修項目を設定している。
⑤ 専門知識に基づいた問題解決能力(Problem Solving : PS)
- 「 医学および関連する学問分野の知識を身に付け、根拠に基づいた医療を基盤に、経験も踏まえながら、患者の抱える問題を解決する。」として、単なる記憶による表面的な知識だけでない、より高いレベルでの専門知識の応用を目的とした。
- 旧版で「C医学一般」の項目の中に散在して表現されていた「基礎医学」を第2層に明示し、今の時代に必要な基礎医学の知識について再構成を行なった。
- 旧 版コアカリの「D 人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療」 に記載されていた「臓器毎及び全身におよぶ疾患」を別表化して理解しやすくするとともに、基本となる疾患に「●」を付して明示した。基本疾患については、医師 国家試験の必修の基本的事項を参考にしつつ、高頻度疾患、複数の領域ないし深い基礎医学の知識が必要な重要病態、頻度は低いが見逃してはならない疾患などを、医学部 卒業時に求められる レベルを考慮して選定している。
- 旧版コアカリの 「 D 人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療」 に記載されていた「人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療」を、主に臓器別に別表化して全体像を理解しやすくした。
- 同じく旧版の「E 全身に及ぶ生理的変化、病態、診断、治療」 に記載されていた成長と発達(改訂版では小児)、遺伝医療・ゲノム医療、免疫アレルギー、感染症、腫瘍などについても同じ構造で表記し、別表化した。
⑥ 情報・科学技術を活かす能力(Information Technology : IT)
- 今後ますます 情報・科学技術の医療・医学への活用が進むこと を考慮して新設された医学生の資質・能力である。
- 「 発展し続ける情報化社会を理解し、人工知能等の情報・科学技術を活用しながら、医療・医学研究を実践する。」と学修の目的を設定した。
- この前提のもと、「情報・科学技術に向き合うための倫理観とルール」、「医療とそれを取り巻く社会に必要な情報・科学技術の原理」、「診療現場における情報・科学技術の活用」の三つの観点に整理して学修目標を設定した。
⑦ 患者ケアのための診療技能(Clinical Skills : CS)
- 「 患者の苦痛や不安感に配慮し、確実で信頼される診療技能を磨き、患者中心の診療を実践する。」を目的とした。
- 「診療技能とは何か」という問いから出発し、「患者の情報収集」、「患者情報の統合、分析と評価、診療計画」、「治療を含む対応の実施」、「診療経過の振り返りと改善」の 4 つに学修 目標 を整理して、診療技能の内容とは何かを明確化した。
- 「身体診察」、「基本診療科」、「主要症候」、「主要な臨床・画像検査」、「基本的臨床手技」を別表化して読みやすくする工夫をした。
- 安全で質の高い医療の実践という重要な観点にもとづき、「医療の質と患者安全」の項目を配置し、安全で質の高い医療の 実践が診療技能における学修目標であることを明確化した。
⑧ コミュニケーション能力(Communication : CM)
- 「 患者及び患者に関わる人たちと、相手の状況を考慮した上で良好な関係性を築き、患者の意思決定を支援して、安全で質の高い医療を実践する。」とし、「コミュニケーション能力」の目標は第一義的に「患者とのコミュニケーション」にあることを示した。
- 「言葉遣い・態度・身だしなみ・配慮」、「患者の意思決定支援とわかりやすい説明」、および「患者・家族のニーズ把握と配慮」を 3 つの柱として構成している。
⑨ 多職種連携能力(Interprofessional Collaboration : IP)
- 「 保健、医療、福祉、介護など患者・家族に関わる全ての人々の役割を理解し、お互いに良好な関係を築きながら、患者・家族・地域の課題を共有し、関わる人々と協働することができる。」とし、医療者間のコミュニケーションは「⑧コミュニケーション能力」から本項に移動した。
- 「保健、医療、福祉、介護」及び「患者・家族・地域」の2点をキーワードとしている。
⑩ 社会における医療の役割の理解(Medicine in Society : SO)
- 「 医療は社会の一部であるという認識を持ち、経済的な観点・地域性の視点・国際的な視野等も持ちながら、公正な医療を提供し、健康の代弁者として公衆衛生の向上に努める。」という目的を掲げた。
- 旧版コアカリの「 B 社会と医学・医療」の主要な学修目標 を本項に 移動し、社会の中の医療という視点を重視して 5 つの項目( 社会保障、疫学・医学統計、法医学、社会の構造や変化から捉える医療、国内外の視点から捉える医療)を立 てた。
2. 診療参加型 臨床実習ガイドラインについて
- 章立て
- 1. 序章、 2. 実施体制・実施環境、 3. 学修目標、 4. 方略、 5. 評価、 6. 学修と評価の記録、 7.EPA とした。
- 序章
- 診療参加型臨床実習の充実を図る意義を記述し、説明図を改訂した。
- 実施体制・実施環境
- 安全かつ円滑に医学生を診療に参加させるための組織作りや事前に検討し定めておく必要がある事項の指針を記述した。
- 医学生が臨床実習 で 行う医業の範囲に関して、改正医師法・施行令(令和 5 年 4 月1 日施行)および医学生が臨床実習で行う医業の範囲に関する検討会報告書(令和4 年 3 月 15 日)に基づき、各大学の実習統括部門が定める際の指針ならびに患者同意取得の指針を改訂し、患者相談窓口の設置を追加した。
- 改正医師法により臨床実習で医学生の守秘義務が発生することを追加した。
- 学生の安全管理に放射線被ばく管理の指針を新たに記述した。
- 学修目標
- 旧版コアカリの G 臨床実習に記述されていた臨床実習の学修目標をガイドラインに移し、令和 4 年度改訂版コアカリの学修 目標に基づいて改訂した。
- 方略
- 旧版コアカリの G 臨床実習に記述されていた臨床実習の方略(実習を行う診療科など)をここに移し、臨床実習を行う診療科等と実習期間を改訂した。( II. 改訂の詳細の 5. 臨床実習における「経験すべき診療科」を参照されたい)
- 評価
- 実習現場での観察評価として、簡易型臨床能力評価( mini CEX )、症例の担当に関する評価( CbD )に加え、直接観察による臨床手技の評価 DOPS )を記述した。
- アンプロフェッショナルな学生への対応を改訂した。
- 実習活動の記録の電子化として、 CC EPOC を記述した。
- その他(Entrustable Professional Activities : EPAs)
- 学生を信頼し任せられる役割(EPAs)の概念を説明した。
- 一つの EPA が 10 の資質・能力のどの組み合わせを表す行為か、について例示を行った。
- EPA を評価のために使用する場合、臨床実習のローテート例、評価に用いるツール例、指導監視なしで当該行為を実施するために必要となる条件、 EPA の行為に至るまでのトレーニ ング等について例を示した。
- 旧版コアカリで、学生を信頼し任せられる役割として G 臨床実習に記述されていたものは、共用試験実施評価機構( CATO )が定める「臨床実習終了までに修得すること」として、令和 4 年度コアカリ改訂版の評価の章に移動して記述した。
- 学修と評価の記録
- 各種評価表をコアカリ令和 4 年度改訂版の学修目標に基づいて改訂した。
- 実習現場での観察評価として、 DOPS を追加した。
3. 感染症に関する記載について
- これまでの感染症に関する記載について
- 旧版では、 A 6 医療の質と安全の管理、 B 1 集団に対す る医療、 C 3 個体の反応、E 2 感染症、 F 2 基本的診療知識などに感染症に関する記載が散在していた。
- 新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により、旧版コアカリに基づく医学教育の課題が浮き彫りとなった。
- 令和 4 年度版における感染症に関する学修目標(項目)の整理と厳選
- 本事業による令和 2 年度の調査・研究報告書で、「感染症の考え方」を十分に身につけられていない点が指摘された。
- 平成 28 年度版では「微生物」を中心とする記載が主体であり、実臨床での「思考プロセス」の順序とは異なっていた。実臨床では、患者の訴え(症状またはプロブレム)を聴取し、病態を想定し、感染症が鑑別診断に挙がる場合には主たる「臓器」と「原因微生物」を想定するスキルが重要である。実臨床での思考プロセスを学べるように、学修項目の記載に配慮した。
- 具体的な改訂の根幹は、重要な感染症疾患を体系的に学べるように、包括的に「市中感染症」、「医療関連感染」と記載し、それに含まれる個別疾患で高頻度、重要なものを厳選して別表に提示し た。
- 実臨床で必要な「考え方のステップ」を提示するため、 PS 01 03 微生物の総論でその微生物が起こす感染症の疫学、感染経路、リスク因子、臨床症状、身体所見、診断、治療を包括的に学修できるように掲載した。
4. 臨床実習における「基本診療科」について
- 臨床実習にお ける 診療科については、 旧版 (診療参加型臨床実習 実施 ガイドライン)に記載があるとともに、 当時の JACME の領域 2.5 の日本版注釈にも記載があった。
- 学修者および各大学でのカリキュラム作成者に混乱をきたさないように、 JACME と協議の場を持ち、内容の整合を図った。
- 「診療参加型臨床実習」を推進するためには、 1 診療科あたり連続して一定期間以上の配属が必要である。ただし、すべての診療科について一定期間以上の配属を求めることは、大学の自由度の観点からも望ましくないことから、診療科を限定することとした。
- 診療科については、日本専門医機構が基本にあげている 19 の診療科を「基本診療科」として記載した。
- 内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、総合診療科の 6 診療科を「原則 1 診療科あたり連続 3 週間以上」、救急科を「原則 3 週間以上」とした。
- 「ただし、全人的な診療能力・態度を涵養する目的で、 4 週間以上連続して配属する診療科を 1 診療科以上確保することが重要」と推奨を加えている。
- 学外施設における診療参加型臨床実習も、大学での実習を補完するものとして可能とすることとした。