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アナフィラキシーとは
アナフィラキシーは、以前に感作された人が再びその抗原に曝露されたときに起こる、IgEを介した急性のアレルギー反応です。生命が脅かされるほど重症化する可能性もあります。
Anaphylaxis is an acute, potentially life-threatening, IgE-mediated allergic reaction that occurs in previously sensitized people when they are reexposed to the sensitizing antigen.
つづり
英語では anaphylaxis と書きます。
アナフィラキシーのフィの部分は、fi でも phi でもなく、phy です。
アナフィラキシーのキシーの部分は、xy でも xi でもなく、xis です。
二重で引っ掛けてくるとは強者の英単語ですね。医療用語の英単語テストを作るときは、この単語を入れておくと差がつきやすいかもしれません。
さて、巷ではワクチン絡みでアナフィラキシー、アナフィラキシーショック、アナフィラキシー○○といった表現を目にする機会が増えました。
中には少々不正確な表現もあるので、いい機会ということで整理してみます。
アナフィラキシー反応 (Anaphylactic reactions)
Anaphylactic reactions are sudden, widespread, potentially severe and life-threatening allergic reactions.
アナフィラキシー反応とは、アレルギー反応の一種です。急に発症し、広い範囲にわたって現れるもので、場合によっては生命を脅かすほど重症化する可能性もあります。
あれ?アナフィラキシーとどう違うの?と思いますよね。
その通りで、アナフィラキシー反応=アナフィラキシー、です。
英語表現では、Anaphlaxis は名詞であり、Anaphylactic は形容詞です。
アナフィラキシー反応は頭痛が痛い、に近い気持ち悪さがありますが、英語上は成り立ってしまっているので受け入れましょう。
アナフィラキシー反応とはどんなもの?
典型的には、アレルゲンにさらされてから15分以内に次のような症状がみられるとされます。
- 心臓の拍動が速くなる。
- 不安になったり興奮したりする。
- 血圧が下がって失神したり、危険な状態にまで下がることがある(ショック)。
- その他、めまい、かゆみ、皮膚の紅潮、せき、鼻水、くしゃみ、じんま疹、皮下組織の腫れ(血管性浮腫)といった症状がみられる。
- のどや気道が収縮したり腫れたりするため呼吸困難になり、喘鳴も起こり得る。
- 吐き気、嘔吐、腹部けいれん、下痢がみられることもある。
アナフィラキシー反応の誘因となるのは?
アナフィラキシー反応の誘因として代表的なものは以下がありますが、その他にも様々なアレルゲンがアナフィラキシー反応を起こす可能性があります。
- 薬(ペニシリンなど)
- 虫刺され
- 動物の毒
- 食物(特に卵、魚介類、ナッツ類)
- ラテックス(天然ゴム)
アナフィラキシー様反応 (Anaphylactoid reaction)
アナフィラキシー反応とよく似た表現に、アナフィラキシー様反応というものがあります。
重要な違いとして、アナフィラキシー様反応はアレルギー反応ではありません。これはアレルギー反応に関与する抗体であるIgEが原因ではないためです。
Anaphylactic and anaphylactoid reactions during the perioperative period
アナフィラキシー様反応は、ある物質に初めてさらされたときに起こることがあります。アナフィラキシー様反応においては、外来物質自体が直接原因となります。
アナフィラキシー様反応の誘因として、代表的なものを挙げてみましょう。
- ヨウ素を含有する造影剤
- アスピリンなどの非ステロイド系抗炎症薬
- オピオイド
- モノクローナル抗体
- 運動
アナフィラキシーショック (Anaphylactic shock)
アナフィラキシーショックとは、アナフィラキシー反応の中でも、ショック(ショック症状)を伴う場合を指します。
ショックとは、何らかの原因によって、体のそれぞれの臓器や組織に十分な血液が届かなくなってしまい、臓器の機能障害や意識障害などが起こってしまう状態を指します。
臓器の機能障害や意識障害の種類や程度によっては、最悪の場合、命を落としてしまうこともあり得ます。
ショックの中にはいくつか種類がありますが、アナフィラキシーショックは「血液分布異常性ショック」に分類されます。
どういうことかというと文字通り「血液分布に異常が生じたために引き起こされるショック」です。
アナフィラキシー(アナフィラキシー反応)はアレルギー反応であり、アレルギー反応が起きると一般に末端の血管が拡張します。
すると、血液が身体の中心から末端へと移動し、身体の中心、すなわち臓器などの中や近くに存在する血液が減ってしまうことになります。
すなわち、臓器や組織に十分な血液が届かないことになり、血液が不十分ということは供給される酸素の量も減ってしまうことで、臓器の機能に障害が起きることになります。脳への酸欠は意識障害へと繋がり得ます。
Shock is a life-threatening condition in which blood flow to the organs is low, decreasing delivery of oxygen and thus causing organ damage and sometimes death. Blood pressure is usually low.
アナフィラキシー症状という表現は✖
アナフィラキシー症状という表現を見かけた時には注意しましょう。
ニュースのタイトル等で見かけることがありますが、不正確な表現です。
https://www.news24.jp/articles/2021/03/07/07835367.html
好意的に解釈するなら、アナフィラキシー症状とはアナフィラキシー反応で見られる諸症状のことを言いたいのかもしれません。
ただし、その場合は「アナフィラキシー反応でみられる諸症状」と表現した方が正確です。
まとめ
- アナフィラキシーとアナフィラキシー反応は同義です。
- また、アナフィラキシーショックとはアナフィラキシー反応の中でもショック症状がみられる場合を指します。
- アナフィラキシー様症状はアレルギー反応ではありません。
- アナフィラキシー症状という言葉は使わないようにしましょう。