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DCTとは?バーチャル治験、遠隔治験とも呼ばれます

2021年1月18日

オンライン診療を始めとする遠隔医療の浸透に伴い、治験や臨床試験においても医療機関を訪問しなくても実施できないか?という検討が進められています。

その中で出てくるのが、DCT (Decentralized Clinical Trial) です。

DCTとは

DCTは、分散化臨床試験、分散型臨床試験、分散型治験と日本語訳が色々ありますが、本記事ではDCTと表現します。

なお、類似する表現として、Virtual Clinical Trial(バーチャル臨床試験)もあります。

他にも、DCTやバーチャル臨床試験に比べてマイナーな表現ですが、Remote Clinical Trial(遠隔治験)、Site-less Clinical Trial、Web-based Clinical Trialなどの表現もあります。

臨床試験や治験という表現の区別はおいおい解説するとして。

つまるところ、DCTとは、「ICTやIoT技術を使って遠隔で情報収集やコミュニケーションを実施していこう」というコンセプトの臨床試験と言えます。

DCTのメリット

医療機関の来院に伴う負荷を減らせる

DCTのメリットはいくつかありますが、その最たるものが来院頻度の減少でしょう。

来院のためには、試験参加者の時間を使うのは当然ながら、交通費もかかりますし、来院のために身体を動かすという負荷もかかります。

試験参加のハードルを下げる

参加者に起因するハードル

健康な人であれば身体を動かすこと自体に大きな負荷を感じることは少ないかもしれませんが、臨床試験の場合、何らかの疾患を有する方が参加の条件だったりします。

その場合、身体を動かすということ自体に相当の負荷を生じている可能性があることは忘れてはなりません。

疾患の種類や状態によっては、誰かが付き添わなければ来院すること自体が困難あるいは不可能な場合もあります。

身体の筋肉を動かすのが困難な疾患であったり、あるいは視覚に障害があり移動が難しかったりと、そのシチュエーションは様々です。

医療ニーズの高い傷病ほど、新しい治療法の検討は必要ですが、そうした方々はそもそもが研究参加のためのハードルが高いというジレンマに陥りやすいんですね。

試験施設との距離に起因するハードル

また、治験を実施するような施設は都市部に設けられていることが多くあります。

そのため、施設からはなれば場所に住む患者さんや、交通手段がない患者さんなどは、地理的な影響を大きく受け、試験参加が難しいという状況に陥りがちです。

多忙な生活を送っている場合は、時間的制約から試験参加を躊躇してしまうかもしれません。

この地理的・時間的な課題は、治験参加者の均一性を引き起こす可能性があります。

近くに住んでいて、時間的に余裕があり、定期的な通院に抵抗の低い人達、ということですね。

そしてこの参加者の均一性は、すなわち研究参加者が偏ってしまっているということになり、出てきた結果を広い集団に当てはめることが難しくなる恐れがあります。

小難しく言うなら、結果の一般化可能性の低下に繋がりかねない、ということですね。

DCTは、これらの「研究参加者に起因するハードル」や「試験施設との距離に起因するハードル」を軽減する一役を担ってくれる、そんな期待や可能性がある手法になります。

試験継続のハードルを下げる

いったん臨床試験に参加したとしても安心はできません。

一回だけ来院すればよいという臨床試験はほとんどなく、通常はそれなりの期間、定期的に医療機関を訪問して状態確認や何らかの検査や治療などを受けることになります。

検査や治療は医療機関でないと出来ない場合が少なくありませんが、状態確認だけの訪問というものもあります。いわゆる経過観察というものですね。

経過観察は臨床試験の重要な要素の1つですが、受診のための移動にはそれなりに負荷がかかりますから、この定期的な受診の負担が原因で研究参加を途中で断念してしまう方もいます。

この場合、試験からの drop out (脱落)として扱い、研究計画に応じて途中までのデータを解析に含めたり、あるいはその方のデータを解析から除外しなければならなかったりします。

いずれにしても、研究を途中で止めてしまうというのはせっかく研究参加の意思表示をしたのにもったいないところがあるでしょう。

DCTは、そうした試験継続のハードルを下げるためにも一役買ってくれます。

全てのステップを遠隔で実施することは難しいでしょうが、経過観察の部分を重点的に遠隔実施にすることで受診の頻度を下げて、「定期的な受診が大変だ」という理由での脱落を減らすことが期待されます。

医療スタッフと研究参加者間のコミュニケーション補助となる

DCTには、モバイルデバイスやウェアラブルデバイス、あるいはパソコンを使いウェブブラウザ上での入力を行う等の手法が用いられます。

それらのツールの中には、機能として研究に関わっている医療スタッフと、研究参加者の間でのコミュニケーションを行う機能を組み込むことも技術的に可能です。

試験の中には、例えばチャットツール等によって自由にコミュニケーションを取られてしまうと、試験に関わる重要な情報がチャットの中で行われて、情報を取りこぼしてしまうという恐れがあるということで機能制限が行われることもあるかもしれません。

とはいえ、技術的にはモバイルデバイスやパソコンを用いて連絡を取るということは可能です。

むしろ技術はすでにあるのですから、情報を取りこぼさないような対策をとることで、新しい技術の可能性を潰さずに活用する方向へエネルギーを注ぐと良いかもしれませんね。

DCTのデメリット

デバイスを適切に利用できるかどうかに依存する

DCTはモバイルデバイスやウェアラブルデバイス、あるいはパソコンといった電子機器を用いるため、それらの操作に抵抗があったり拒否反応を示すような方は参加できません。

そのため、試験参加の基準として、そのDCTで使われるデバイスを使えることという項目が追加になります。

今は各ツールが世の中に浸透してきているため、使い方さえ学べばそこまで操作が難しいということはないでしょうが、それでも試験参加の基準の1つにはなります。

デバイスを使えたとしても、研究の途中で故障してしまったり、充電を忘れてしまったりといったデバイスに起因するトラブルもあるでしょう。

一概に「デバイスが悪い」や「使い方が悪い」などと断言することは難しいのですが、いずれにせよ「試験参加中、デバイスを適切に利用し続けられるか」は重要な要素です。

データや結果の解釈にデバイスの要素が絡む

いざデータが集まったり、解析が終了したりした後は、それらのデータや解析結果の解釈の段階に入ります。

例えばある参加者のデータが丸一日欠けてしまっていた場合、それは次のうちどれでしょう。

  1. 本当に入力するデータが発生していなかった
  2. 試験参加者の入力忘れ
  3. 入力は覚えていたし本人は入力したはずなのに、機器の不具合でデータが適切にサーバーに送信されなかったのか

もちろん他にも様々な可能性があるでしょう。

ですが、何が原因かは「ある参加者のデータが丸一日欠けてしまっていた」という事実のみでは判断ができません。

従来の手法でもデータが欠けてしまっていることはありますが、DCTの場合は従来手法には無かった「デバイスに起因する欠損」を考慮する必要が出てきます。

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