ビジネス全般

データ利活用によるインクルーシブな社会の実現(令和2年7月17日)

近年、スマートフォンやタブレットの普及、5Gをはじめとしたネットワークの高度化、センサー等の発達によるIoTの実現等により、データの流通量は飛躍的に拡大している。また、AIなどの最新技術の進化・普及により、データを効率的に収集し、効果的に活用することが可能となってきており、データを安心・安全に利活用することで、様々な場面での国民生活の向上が期待されている。

デジタル時代の競争力の源泉であり「21世紀の石油」と呼ばれているデータは、我々が従来想定していなかったような新しい価値創造をもたらす可能性を秘めている。データを最大限に活用することで、よりスマートな社会の構築を促進し、経営資源にも乏しい日本が経済的に成長する原動力となるとともに、各種の格差や障壁を起因とする社会課題が縮小され、多様な価値観や立場の人々がその個性をいかしながら参画し活躍できる、インクルーシブな社会の実現を目指すことが可能となる。

政府においては、国民の誰もがデータ利活用による便益を実感できる社会の実現に向けて、「個人や法人の権利利益の保護」と「円滑なデータ流通」の両立の確保に向けた各種環境・制度整備を推進している。

1 安全・公正なデジタル市場のルール形成

世界各国では、データ管理に関するルール整備や、企業等における国際的なデータ移転に関する枠組みが急速に進展している。また、国内においても、データを利活用した各種サービス等がますます普及していく中で、特に影響力の大きなデジタルプラットフォームにおける取引の透明性や公正性に対する懸念が高まってきている。

こうした状況を踏まえ、我が国においても、「デジタル時代の新たなIT政策大綱」(令和元年6月7日IT総合戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)に掲げた取組等を柱に、引き続き、自由かつ公平なルールを基本としつつ、個人及び法人の権利利益や国の安全等が損なわれることのないように最善を尽くす必要がある。

(1) 国際的なデータ流通の推進及び枠組みの構築

急速に進行するデジタル化の潜在力を最大限活用するためには、データ流通、電子商取引を中心としたデジタル経済に関する国際的なルール作りが急務となっている。

このような問題認識の下、我が国が初めて開催国となった昨年のG20大阪サミットにおいて、プライバシーやセキュリティ等に関する消費者や企業の信頼を確保することによって自由なデータ流通を促進する「Data Free Flow with Trust(DFFT)」のコンセプトに合意した。また、同サミットの機会に開催したデジタル経済に関する首脳特別イベントにおいて、27か国の首脳及びWTOをはじめとする国際機関参加の下、我が国主導で、「デジタル経済に関する大阪宣言」を発出し、デジタル経済、特にデータ流通や電子商取引に関する国際ルール作りを進めていくプロセスである「大阪トラック」を創設した。

この「大阪トラック」の下、今後もOECDなどの国際機関や産業界等の多様なステークホルダーを交え、様々な場面においてルール作りを加速させていく。特にWTO電子商取引交渉については、80以上の加盟国が参加する中で、我が国は、シンガポール及びオーストラリアと共に共同議長国として、データの自由な流通を含む具体的なルールの交渉を牽引してきており、引き続き積極的に取り組んでいく。

また、今後、国際的なデータ流通がより増大していくことを踏まえると、国際的制度調和の重要性が更に増していくことになる。個人情報・プライバシーの領域では、近年、途上国を含め世界の国々で個人情報保護関連法制に動きがみられる中、一部に管理的規制が出現しつつある。こうした現状を踏まえ、個人情報保護委員会が良好な関係を築いてきた米欧を中心とした関係国・機関と共に国際的な議論を引き続きリードし、個人情報保護に関する国際的な指針の見直し及びそれらに基づく国際的な制度調和を図り、その下で、適切な形での個人データの保護と円滑な流通の確保につなげていく必要がある。

具体的には、信頼性が確保された個人データ流通のための国際的な枠組みの維持・構築に向け、令和3年初頭を目途に日EU間の枠組みについてレビューを行うとともに、日米欧三極において、既存の枠組みを活用した個人データ流通の更なる促進や相互運用可能な新たな企業認証制度の構築に向けた議論を推進する。また、個人情報保護を巡るデータローカライゼーション及び無制限なガバメントアクセスといった新たなリスクを踏まえたOECDプライバシーガイドラインの見直しに関する国際的な議論を主導する。

(2) デジタル市場における透明性・公正性の確保に向けた取組

グローバルで変化が激しいデジタル市場における競争やイノベーションを促進するため、競争政策の迅速かつ効果的な実施を目的として、昨年9月に内閣官房にデジタル市場競争本部が設置され、政策分野横断的な観点からデジタル市場のルール整備に関する検討を進めてきた。

さらに、デジタル市場の健全な発展に向け、その透明性・公正性を一層確保する観点から、以下のような具体的施策を講ずることとする。

① デジタルプラットフォーム取引透明化法の整備

取引関係の透明化に対応しつつ、イノベーションを阻害しない形で、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(令和2年法律第38号)が成立した。本法律の施行を通じ、大規模なオンラインモール・アプリストアを対象に、デジタルプラットフォーム事業者と利用事業者の取引関係の透明化を図る。

② デジタル広告市場

デジタル広告費は、日本の広告費全体の3割を占めるまでに成長している。他方、デジタル広告市場では、プラットフォーム事業者による寡占化が進行する中で、システムやルールに関する突然の変更、取引内容の不透明性、閲覧数の水増し対策への不満など、様々な課題が指摘されている。

デジタル広告市場の健全な発展を図るためには、取引内容の公正性の確保や透明性の向上により、一般消費者を含めた、市場関係者の「選択の可能性」を確保することが必要である。利用者視点に立ち返り、信頼される公正なデータ管理をプラットフォーム事業者に求める必要がある。

その際、変化が速い市場であることに鑑み、イノベーションを過度に阻害せず、イノベーションによる課題解決を促す枠組みとすること、横断的な視点(競争政策的な視点とプライバシー保護の視点)を踏まえた対応が必要である。

プラットフォーム事業者に対し、以下を求めるなどのルール整備を進めていく。

  • サービスの透明性の向上
    閲覧数の水増し対策などサービスの「質」の実態に関する分かりやすい情報開示や、広告表示の回数等に関する第三者による測定等を求めることで、サービスの「質」を巡る競争を促す。
  • データを巡る公正な競争の促進
    自社の検索エンジンを通じて得られた豊富なデータによって圧倒的な競争優位を得ているプラットフォーム事業者について、消費者が検索エンジンのデフォルト設定を容易に選択できるようにすることや、広告主に広告への反応データを提供することをプラットフォーム事業者に対して求めることで、データを巡る公正な競争を促す。
  • 垂直統合の懸念への対応
    プラットフォーム事業者が、広告を仲介するサービスにおいて、他社のサイトよりも、自社の動画等のサイトを有利に選択するとの懸念があることを踏まえ、社内規律・システム上の手当や、そうした措置の開示を求めることで、公正性と透明性を確保する。
  • 手続面の公正性の確保
    プラットフォーム事業者によるシステム変更やルール変更について、事前に十分な説明がなく行われることがあるといった声があることを踏まえ、変更時の事前通知・理由開示を求める。また、集客を左右する検索エンジンの主要なパラメータの開示を求める。これらを通じて、手続面での公正性を担保する。
  • 個人データの取得・利用に係る懸念への対応
    個人データの取得・利用について、本人への説明やそれを前提とする本人同意が実質的に機能しているかという問題があることを踏まえ、個人データの内部での管理状況等に関する情報開示やプライバシーポリシーの分かりやすい開示を求める。

③ 「Trusted Web」の実現

「デジタル市場競争に係る中期展望レポート」に基づき、データの利活用における信頼の基盤を再構築するため、データを分散型で個人・法人等が管理し価値をマネージできる「Trusted Web」の実現を目指し、令和2年中に官民の推進体制を立ち上げ、技術的な設計図や工程の策定を行うとともに、個人・法人等が自ら発行し、データ管理の中核となる「分散型ID」等のTrusted Webの構成要素として考えられる技術の実用化についての検証を進める。

(3) 個人情報の安全性確保

個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第65号)に設けられた「いわゆる3年ごと見直し」に関する規定(附則第12条)に基づき、検討を行い、改正法案を第201回通常国会に提出し、個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(令和2年法律第44号。以下「改正個人情報保護法」という。)が成立した。

同法公布後2年以内の施行に向けて、個人情報の保護と有用性のバランスを図る観点から、多様なステークホルダーの意見を十分に聴取しつつ、仮名加工情報の加工基準に関する規定や利用停止等の請求に関する具体的事例等を盛り込んだ政令・規則・ガイドラインの整備を進めるとともに、同法の周知広報に取り組む。

2 官民連携による円滑なデータ流通に向けた環境整備

データを利活用したビジネスやサービスは、企業の産業競争力強化や個人の利便性向上に繋がり、国民生活に欠かせない存在となりつつある。一方、我が国では、企業と企業との間、あるいは企業と個人との間でのデータ流通をめぐり、様々な課題、特に個人情報を含むデータ(以下「パーソナルデータ」という。)の取扱いに関する問題等が顕在化するなど、依然としてプライバシーやコントローラビリティ等に対する企業や個人の不安が払拭されていない状況にある。

今後、パーソナルデータをはじめとしたデータを円滑に流通させるためには、特定の分野、あるいは分野を超えて、各プレーヤー(個人、データ保有者及びデータ活用者)の間のデータの取扱いや機能、品質及び信頼性等に関する共通認識を持つことが必要不可欠であり、このため、政府においては、円滑なデータ流通に資する指針・ガイドラインや共通ルールの策定、情報銀行などのデータ利活用モデルの策定等が積極的に進められている。

このように、政府が枠組みを作り、その枠組みを通じて民間企業が自主的にサービス等を運営するなど、官と民が適切な役割分担の下で連携していくことが、今後我が国においても世界をリードするビジネス展開が実現されるために重要な取組となる。

(1) 日本発のパーソナルデータ等利活用モデルの加速

PDS・情報銀行は、日本発のパーソナルデータ活用の仕組みとして、観光や金融(フィンテック)、医療・介護・ヘルスケア、人材などの様々な分野において、パーソナルデータを本人が自らの意思に基づき活用することを支援し、その便益を本人に還元することにより、官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号。以下「官民データ基本法」という。)第12条に定められる「個人の関与の下での多様な主体による官民データの適正な活用」の拡大に資することが期待されており、関係府省庁及び民間事業者等による取組が進められている。

平成30年6月に総務省と経済産業省が公表した「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」(令和元年10月に「情報信託機能の認定に係る指針ver2.0」を公表)に基づき、一般社団法人日本IT団体連盟が情報銀行の認定事業を開始し、令和元年6月には第一弾となる民間事業者に対する情報銀行認定が行われた。その後、情報銀行認定は令和2年3月時点で計5社に対して行われる等、取組が着実に普及・拡大している。

今後も、情報銀行認定の運用状況や認定事業者による取組状況を踏まえつつ、「情報信託機能の認定に係る指針ver2.0」の見直し等を含め、関係府省庁において、情報銀行の更なる社会実装の加速に向けた必要な環境整備に取り組む。特に、令和2年度中に情報銀行における要配慮個人情報の取扱いや提供先第三者の選定基準の明確化等に向けた検討を行い、その検討結果を踏まえて令和3年度中に認定指針の見直しを行う。また、情報銀行の展開を促進するため、個人が複数の情報銀行を利用する場合のルール整備や情報銀行と他のデータ取扱事業者の間のデータ提供契約のひな型や標準APIなどデータ連携の方策等について令和3年度中に取りまとめる。さらに、情報銀行のビジネスモデル、認定スキームについて、国際標準化を推進する。

また、データ保有者と当該データの活用を希望する者を仲介し、売買等による取引を可能とする仕組みであるデータ取引市場について、内閣府が実施し国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が管理法人を務める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」に関する研究項目「スマートシティ実証研究/スマートシティにおけるパーソナルデータと産業データのデータ取引市場による共有基盤の実証」において実証研究が行われる等、社会実装に向けた取組が進められている。また、一般社団法人データ流通推進協議会(DTA:Data Trading Alliance)等により、IEEEにおける検討グループの設置に向けた取組等、国際標準化に関する活動も展開されている。

(2) 分野間データ連携の実現に向けたルール整備

各府省庁で進められてきている各種IT施策の多くは、当該府省庁の所掌分野でのデータ活用にとどまっており、今後、デジタル化による社会全体としてのイノベーションを加速する観点からも、分野をまたがるシステム連携やデータ流通等を前提とした制度設計の最適化を行うことが必要である。

このため、内閣官房情報通信技術総合戦略室(以下「IT総合戦略室」という。)が中心となり、各府省庁のIT施策に横串を通す取組を強化し、統合イノベーション戦略推進会議の下、関係府省庁と連携した府省庁横断的な検討体制として、デジタル社会構築タスクフォースを令和2年1月に設置した。当該タスクフォースにおいては、府省をまたがるIT施策のうち、特にデジタル化の進展によるイノベーションを期待する個別分野に対し、システム開発や業務見直しに関するIT総合戦略室の知見も活用して、制度設計や研究開発方針等の最適化に向けた検討を行っており、具体的には、「初等中等教育のICT化」、「ドローン(登録システム、情報セキュリティ施策)」及び「5Gと交通信号機の連携による次世代の社会インフラの構築」を対象としている。そして、分野横断テーマとして、包括的データ戦略を策定すべく、農業、防災・減災、インフラ、物流、自動運転など、様々な分野で進められている官民のデータ連携の取組の棚卸を行い、分野を超えた連携を可能とするために必要となるデータ形式・構造、ルール等について、現状・課題を整理し、すでに実施されている取組例や取組の方向性を取りまとめた。

今後は、デジタル社会構築タスクフォースにおいて取りまとめた取組の方向性をもとに、各分野において、分野を超えたデータ連携を可能とするための具体的なルールや体制等の整備を促す。

(3) 官民一体的なデータ利活用促進に向けた制度整備

現行の個人情報保護法制については、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個人情報保護法」という。)、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)及び各地方公共団体における個人情報保護条例により、それぞれ民間、行政機関、独立行政法人等、地方公共団体に係る個人情報の保護に関して規定されているところ、データを保有する主体によってデータ流通に関する法律上のルールが異なる等、規制の不均衡や不整合が存在している。

このような規制の不均衡や不整合を可能な限り是正するため、3つの法律の規定を集約・一体化し、これらの制度を個人情報保護委員会が一元的に所管する方向で検討を進め、令和3年の通常国会に必要な法案の提出を目指す。また、地方公共団体の個人情報保護制度についても、地方公共団体等との懇談会等における、条例の法による一元化を含めた規律の在り方等に係る実務的論点の整理を踏まえ、地方側と十分調整の上、上記の個人情報保護制度の一元化と歩調を合わせて、具体的な検討を行う。その際、国際的な制度調和の動きを踏まえつつ、個人情報保護の総合的かつ一体的な推進の観点から、地方公共団体の個人情報の取扱いに係る国の役割等についても必要な検討を行う。

また、医療情報に関しては、個人の権利利益の保護に配慮しつつ、匿名加工された医療情報を安心して円滑に利活用する仕組みを整備するため、既に、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(平成29年法律第28号。以下「次世代医療基盤法」という。)が平成30年5月に施行されている。同法の下、個人情報保護に関する各法律等の規定の相違にかかわらず、医療情報の一体的な利用の促進に向けた取組が可能となっている。

同法に基づき、令和元年12月には、同法施行後初となる認定匿名加工医療情報作成事業者(医療情報を取得・整理・加工して匿名加工医療情報を作成・提供する事業者)及び認定医療情報等取扱受託事業者(認定匿名加工医療情報作成事業者の委託を受けて医療情報等又は匿名加工医療情報を取り扱う事業者)が認定された。以降も複数事業者が認定を受け、令和2年7月現在で2法人が認定匿名加工医療情報作成事業者として、3法人が認定医療情報等取扱受託事業者として認定を受けている。今後、広報・啓発による国民の理解の増進を行うとともに、産業界を含む幅広い主体による匿名加工医療情報の医療分野の研究開発への利活用を推進する。

(4) 民間部門のデジタルトランスフォーメーションの促進等

デジタル時代のビジネスにおいては、サービスやオペレーションを管理するシステムのスピードや柔軟性又はセキュリティ対応の差が競争力を決定する要因の一つとなり、企業の経営改革、レガシーシステムからの脱却等を促進し、貴重なIT人材や資金をより先端的な分野に振り向けていくことが求められる。また、少子高齢化が進展する中、水道などの社会インフラ部門においても、デジタル化による効率化やベテラン人材の不足などの課題解決が求められる。

このため、IoT、AIをはじめ、最先端の技術動向の調査・分析、新しい技術の指針や「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」(平成30年12月公開。以下、DX推進ガイドラインという。)等を整備し、国民・企業の役に立つ形で情報を発信する。また、国内外におけるDXの取組を調査・分析しベンチマークの策定等を行い、システムの共通化を推進する業界等を支援する機能・体制を整備する。

さらに、企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をデジタルガバナンス・コードとして令和2年度中に取りまとめるとともに、様々な業界団体と連携して普及を図る。また、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応する企業を国が認定する制度を設け、東京証券取引所と経済産業省が実施している「DX銘柄」の選定の前提として活用する等、令和3年度から両者の連動を図る。

また、事業者向け行政手続について、ユーザー視点でデジタルサービスを開発することで、官民双方の業務負担を軽減するとともに、データ利活用環境を整備し、デジタル・ガバメントへの変革を推進する。1つのID、パスワードで様々な行政手続の認証を可能とするGビズID、ワンストップ・ワンスオンリーで他省庁及び地方公共団体も利用可能とするJグランツ等、既に開発しているものにとどまらず、継続してデジタル化を実施する。

社会インフラ部門に関し、上水道事業向けの水道情報活用システムについて、全国の水道事業体に対し導入支援を実施するとともに、組込みソフトウェア関連調査の結果も含めた非競争領域における共通システムの事例として、他の社会インフラへの展開を目指し、情報共有範囲等の整理やデータ形式の標準化を令和2年度から実施する。

データ駆動型社会の社会実装として、Connected Industriesの重点5分野(「自動走行・モビリティサービス」「ものづくり・ロボティクス」「素材・バイオ」「プラント・インフラ保守」「スマートライフ」)を中心に、非競争領域における企業間でのデータ連携・共有のためのプラットフォーム開発を行う民間事業者の支援を行う。

(5) モビリティ関連データの利活用拡大

自動運転の市場化・サービス化に向けて、制度整備及び様々な走行環境における実証実験などの技術開発等を進めている。データ利活用の観点から、ダイナミックマップの整備や走行映像データの共有化など、協調すべき領域を特定して支援することで、自動車メーカー等の研究開発を促進してきた。

今後、自動運転技術を含むモビリティサービスの高度化とともに、複数の交通手段と各種サービスとがデータで連携するMaaSの進展が期待される。モビリティ分野で創出された様々なデータが、防災、インフラ計画維持管理、小売・観光産業などモビリティ以外の分野で横断的に利活用され、地域が抱える社会課題の解決や新たな価値・サービスを創出することで、Society 5.0の実現に貢献することが期待される。

政府としては、Society 5.0のデータ連携基盤アーキテクチャを踏まえて、モビリティシステムのリファレンスアーキテクチャを策定し、多様・多数な関係者間でのデータ連携・活用を促進する環境整備に取り組む。

(6) シェアリングエコノミーの更なる推進

シェアリングエコノミーは、個人等が保有する活用可能な資産等をインターネット上のプラットフォーム等を介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動であり、我が国に散在する遊休資産や十分に活用されていない個人のスキル等を可視化し、その有効活用を進めるとともに、潜在需要を喚起し、イノベーションと新ビジネスの創出に貢献する役割が期待されている。また、遠隔地における提供者と需要者をリアルタイムでマッチングできるという特性をいかし、災害時などの非常時における新たな支援の在り方にも資するものである。

シェアリングエコノミーについて、消費者等の安全を守りつつ、イノベーションと新ビジネスの創出及び非常時における支援の多様化を促進する観点から、その普及促進を図ることが重要であり、地域課題の解決に向けたシェアリングエコノミーの活用を促進するための地方公共団体向けハンドブックを作成し、モデル的取組の事例創出・横展開を行う。更なる社会への浸透に向け、地方公共団体、シェア事業者等が連携を図る際に必要となる事項の整理を行い、防災分野も含むモデル連携協定、事業者向けハンドブックをシェアリングシティ推進協議会等と連携しながら作成する。

また、国は、サービスの安全性・信頼性を確保するため、民間団体等による自主的ルールの普及を促すモデルガイドラインを平成29年11月に作成し、令和元年5月に改定したところであり、サービスの提供者となるシェアワーカーにおいても同様に、裾野拡大とスキルアップ等に向けた研修・認証の基本的考え方、順守すべき事項等を国において示した上で、民間団体等による研修・認証制度を本年度中に開始する。また、事業者団体の主導するオンライン紛争解決(ODR)の取組について進捗を注視し、必要に応じてモデルガイドラインへの反映を検討する。

こうした取組を通じ、共助と価値共創を強みとした日本発のシェアリングエコノミーモデルを構築し、官民一体となった社会実装を推進するとともに、ISOにおける国際的なルール作りの場において我が国が主導し、市場創出を念頭に置きながら国際標準化を進める。

3 オープンデータの更なる深化

我が国においては、平成23年3月11日の東日本大震災以降、政府、地方公共団体や事業者等が保有するデータの公開・活用に対する意識が急速に高まったことをきっかけに、政府において、オープンデータに関する各種政策を推進してきた。

具体的には、公共データは国民共有の財産であるとの認識を示した「電子行政オープンデータ戦略」(平成24年7月4日IT総合戦略本部決定)に始まり、以後、データの公開から活用を前提とした課題解決型のオープンデータの推進を目指す「新たなオープンデータの展開に向けて」(平成27年6月30日IT総合戦略本部決定)、官民一体となったデータ流通の促進を目指して策定された「オープンデータ2.0」(平成28年5月20日IT総合戦略本部決定)など、オープンデータの公開にとどまらず、利活用促進の側面からも各種制度整備の充実を図ってきた。

また、官民データ基本法においては、官民データ活用の推進により国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することを目的としており、国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データの容易な利用等について規定されている。

さらに、それまでの取組を踏まえ、オープンデータ・バイ・デザインの考えに基づき、今後、国、地方公共団体及び事業者が公共データの公開及び活用に取り組む上での基本指針をまとめた「オープンデータ基本指針」(平成29年5月30日IT総合戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定。令和元年6月7日改正。)を策定した。

これらの取組の結果、政府のデータカタログサイト「DATA.GO.JP」のデータセット数は順調に増加し、また地方公共団体についても、全国のオープンデータの取組率は令和2年3月時点で約40%にとどまるものの、大・中規模都市を中心に取組が加速しており、人口カバー率では約76%まで到達している。また、オープンデータの世界的なベンチマークであるOECD 2019 OURdata Indexにおいて、日本は第4位に順位している。

このように、データの公開に関しては着実な進展及び成果が見られる一方で、データの利活用に目を向けると、オープンデータを利用してビジネス展開する国内企業の活動が活性化しているとは言い難く、またOECD 2019 OURdata Indexによれば、「オープンデータが成熟した国においては、更なる利活用の促進が必要」との課題認識も示されているところである。

これらの状況を踏まえ、我が国においては、オープンデータの取組のフェーズが公開から利活用に大きく変容しているという認識の下、更なるオープンデータの利活用を促進する取組を加速させていくものとする。

具体的には、更なる官民連携によるオープンデータの取組強化、オープンデータの質の向上及び地域におけるオープンデータの利活用の推進を重点取組として推進していく。

(1) 更なる官民連携によるオープンデータの取組強化

政府においては、オープンデータの公開・活用を希望する民間事業者等と、データを保有する府省庁が直接対話する場を設けることにより、よりニーズにマッチしたオープンデータ化やデータ利活用を促進し、データの価値向上と多様なサービスの創出に貢献する取組として、「オープンデータ官民ラウンドテーブル」(以下「ラウンドテーブル」という。)を平成30年1月より開始している。

政府のラウンドテーブルにおいては、これまで、官民データ活用推進基本計画に定める重点分野を基に、議論するテーマの設定及び公開・活用ニーズの公募を行い、合計4回開催している。また、政府のラウンドテーブルの取組を参考に、各府省庁や地方においても、自主的なラウンドテーブルが開催される等、取組が着実に拡大している。

今後は、我が国でも実践の進む証拠に基づく政策立案(EBPM)等の観点も踏まえ、各府省庁が取り組む政策課題についてデータを活用して解決することに焦点を当てながら、民間事業者等からその解決策の提案を積極的に取り入れるための議論や検討の場としてこのラウンドテーブルを位置付け、取組を深化させることにより、官民連携したオープンデータの利活用を促進する。

その際、オープンデータ関係団体など、国と民間事業者との仲介的な役割を担う外部組織の機能を有効に活用し、データ利活用者となり得るスタートアップ等との連携やコミュニケーションの強化を図っていくものとする。

また、2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)に向け、大会期間中の訪日外国人をはじめとした滞在者や、障害者を含む住民のアクティビティ、生活の利便性向上のため、官民のオープンデータ公開及び活用に取り組んでおり、その一つとして、公共交通機関における運行情報、駅構内図、施設情報等のオープンデータ化を推進するため、オープンデータを活用した情報提供の実証実験を官民連携して進めている。

(2) オープンデータの質の向上

今後のオープンデータの利活用促進に向けては、公開するデータの量のみならず、データの質の向上を図ることが重要であり、質の高いデータの提供により、民間事業者等によるアプリの開発や行政機関自身によるデータ分析、政策立案等の促進が期待できる。

我が国の「オープンデータ基本指針」においては、国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネットを通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、オープンデータの定義を定めており、その定義の一つとして、機械判読性(コンピュータプログラムが自動的にデータを加工、編集等できること)を規定している。

また、地方公共団体等に対しては、政府として公開を推奨するデータと、公開するデータの作成に当たり準拠すべきルールやフォーマット等を取りまとめた「推奨データセット」を平成29年12月から公開しており、オープンデータの形式や項目等の標準化の促進にも取り組んでいる。

これらのルールや取組を踏まえ、より機械判読に適した形式でのデータの公開や、地方公共団体における「推奨データセット」に準拠したデータの公開、また行政機関内におけるオープンデータの推進体制(行政機関内におけるオープンデータに関わるルールや組織の整備、啓発活動の促進等)など、データの質の向上に関わる一定の評価指標を令和2年度中に新たに設計し、当該評価指標を参考とした行政機関における取組を積極的に推奨していくことで、民間事業者等や国、地方公共団体自身が更にオープンデータを利活用しやすい環境の整備を促進する。あわせて、各府省庁や地方公共団体におけるオープンデータのAPIによる提供を試行的に実施し、その効果を検証する。

(3) 地域におけるオープンデータの利活用の推進

今般、多くの地方公共団体が少子高齢化に直面する中、厳しい財政状況の下で住民の理解を得ながら効率的に利便性の高い行政サービスを提供することが求められるようになっており、地方公共団体がより多くの質の高いオープンデータを公開し、民間事業者等によるアプリ開発や行政機関自身によるデータ分析、政策立案等の利活用に繋げていくことで、地域における諸課題の解決に資することが期待されている。

官民データ基本法においては、国と同様に、地方公共団体についてもオープンデータの取組が義務付けられた。これを受け、初めて策定された官民データ活用推進基本計画である「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成29年5月30日閣議決定)において、令和2年度までに地方公共団体のオープンデータ取組率100%を目標として掲げている。

このため、政府においては、関係府省庁や都道府県と連携し、地方に対する各種支援策を積極的に講じてきており、具体的な支援策として、「推奨データセット」の拡充及び地方公共団体への普及啓発、地方公共団体職員向けの研修の実施、オープンデータ伝道師や地域情報化アドバイザーの地方公共団体への派遣、「オープンデータ100」などの優良取組事例の充実を行うとともに、地方公共団体の参考となる、オープンデータ化によって生じる効果等に関する事例の収集、横展開等に取り組んできた。

これらの取組の結果、地方公共団体におけるオープンデータ取組率は、都道府県は平成30年3月に100%を達成し、また市区町村についても、大・中規模都市を中心に取組が着実に進展しているところである。

このような中、今後は、引き続き地方公共団体のオープンデータ取組率100%に向けて、特に市町村を中心に取組を加速させるともに、ますます進行する地域における諸課題の解決に資するため、地方公共団体がより質の高いオープンデータを公開し、民間事業者等によるアプリ開発や行政機関自身による政策立案等を実現する、オープンデータの「利活用」に関する取組についても強化していくことが重要となる。

このため、政府においては、今後も関係府省庁や都道府県との連携を図りつつ、プッシュ型によるオープンデータ伝道師の派遣や地域情報化アドバイザーによる研修の充実などの人的支援を積極的に実施するとともに、地方公共団体や地域住民に対し、オープンデータのメリットや効果、利活用事例等についてより分かりやすく、実践的に示していくため、引き続き「推奨データセット」や「オープンデータ100」などの各種ツールの充実や展開などの物的な支援を推進していくものとする。

加えて、地域におけるオープンデータの普及活動の担い手となる人材創出を新たに進めるものとし、オープンデータ伝道師による人材の育成及び認定の仕組みの検討・導入や、当該人材による地方公共団体や地元企業、NPO法人等との連携、オープンデータに関する市民活動や地域コミュニティへの参画等を進めることで、地域により根差したオープンデータの普及拡大を促進する。

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