デジタルヘルス

デジタル改革関連法案ワーキンググループ作業部会とりまとめ

2020年12月31日

Table of Contents

Ⅰ.はじめに

1.現状と課題

今般の新型コロナウイルスへの対応において、国、地方公共団体や社会におけるデジタル化の遅れや人材不足、不十分なシステム連携に伴う非効率さ、煩雑な手続や給付の遅れなどの課題が明らかとなった。

政府においては、現在、内閣官房IT総合戦略室(以下「IT室」という。)が、IT による国民の利便性向上などに係る政策の企画立案・総合調整を担っているものの、各府省を通じた個別の取組は、次のように必ずしも十分に進められているとはいえない。

  • IT室は、国の情報システムについて、一元的なプロジェクト管理を開始しているが、横串をとおした整備・運用を徹底するには至っていないほか、技術の進展により、国や地方公共団体相互のシステム連携基盤を構築する意義が高まっているが、そのための体制は整備されていない。
  • マイナンバー、法人番号や電子署名などのデジタル基盤に関しては、その制度や手続の所掌が区々であり、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(デジタル手続法)も所管するIT室の、手続のオンライン化や事業者の利活用促進などの働きかけや、制度の企画に関与することが困難であった。
  • 準公共部門や民間分野においては、各府省による所管業界のデジタル化を推進する取組は限定的であり、総務省・経済産業省による各府省への側面支援(モデル事業や支援ツールの開発等)も、例えば各府省の制度に組み込まれて普及を後押しするには至っていない。

このように、個々の主体によるデジタル化の取組の限界が明らかになったほか、システムについては今後、データベースの分散管理とアクセスコントロールを前提に、共通基盤上に各種アプリを構築するといった、新たな手法に転換していくなど、社会全体のデジタル化の進め方を抜本的に改める必要がある。

2.目指す姿・トータル・デザイン

我が国の持続可能な発展のためには、社会全体のデジタル化を進めることにより、生産性向上を阻むくびきから解き放ち、新たな価値を創出することが求められている。また、少子高齢化や地域の課題解決のため、デジタル技術の活用、データ連携を可能とする取組が必要である。

社会全体のデジタル化を進めるには、まずは国・地方の「行政」が、自らが担う行政サービスにおいて、デジタル技術やデータを活用して、ユーザー視点に立って新たな価値を創出するデジタル・トランスフォーメーションを実現し、「あらゆる手続が役所に行かずにできる」、「必要な給付が迅速に行われる」といった手続面はもちろん、規制や補助金等においてもデータを駆使してニーズに即したプッシュ型のサービスを実現するなど、ユーザー視点の改革を進めていくことが必要である。これにより、あらゆる世代、あらゆる産業を対象とする行政サービスを通じて、社会全体にデジタル化によるメリットを、誰も取り残さない形で、広くいきわたらせていくことを目指す。

また、行政が有する様々なデータを、国民・企業が活用できるような形で連携できるデータ連携基盤を提供し、民間において様々なデジタル・ビジネスを創出するなど、社会全体のデジタル化のための基盤を構築していく。

こうした行政サービスの改革、データ連携基盤の提供のための改革により、次のような情報システムのトータル・デザインを実現する。すなわち、バラバラでつながっていないデータを連携させ、ニーズの変化にスピーディーに対応でき、リアルタイムのデータの活用が可能で、ユーザー視点を重視したシステム設計とすべく、国と地方公共団体で一体となって推進していくことを目指す。このため、個人、法人、不動産等の社会の基本的なデータベースとなるベース・レジストリと、データ連携基盤の整備を行うとともに、2025 年(令和7年)へ向けて自治体の情報システム標準化・共通化を推進し、段階的なクラウド環境へ移行する等して、リアルタイムの情報連携に移行していく。

3.デジタル庁(仮称)の機能と業務

これらを踏まえ、社会全体のデジタル化をリードする強力な推進主体として、デジタル庁(仮称、以下単に「デジタル庁」という。)を内閣に設置する必要があり、内閣の事務を直接に助け、デジタル社会の形成に関する司令塔として、各府省の施策の統一を図るための総合調整機能(勧告権を含む)を有することとする必要がある。デジタル庁はデジタル社会の形成に関する基本方針を策定するなど、デジタル政策の企画立案を行い、国、地方公共団体、準公共部門等の情報システムを統括・監理し、重要なシステムについては自ら整備する。これにより行政サービスを抜本的に向上させていくことが求められる。

具体的には、デジタル庁は、次のような事務をつかさどることとなる。

① 国の情報システム

政府情報システムの統合・一体化を促進し、民間システムとの連携を容易にしつつ、ユーザー視点での行政サービスの改革と業務システムの改革を一体的に進めることで、国民・事業者の更なる利便性向上を図る。

そのために、デジタル庁は国の情報システムの整備・管理の基本方針を策定し、政府情報システムを①デジタル庁システム、②デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システム、③各府省システムの区分に分類し直した上で、これらのシステムに関する事業を統括・監理し、情報システムの標準化や統一化により相互の連携を確保する。国の情報システムに関する予算(令和2年度で合計約8千億円)については、デジタル庁に一括計上し、各府省に配分して執行する仕組みを目指すこととし、これを踏まえて、令和3年度から①デジタル庁システム及び②デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システムの整備・運用等予算をデジタル庁に段階的に一括計上するとともに(令和3年度は要求額で3千億円規模の見込み)、①デジタル庁システムについては自ら整備・運用を進める。

② 地方共通のデジタル基盤

地方公共団体の情報システムのうち、住民に関する事務に係る情報システムで、相互に連携が行われているシステム(住民基本台帳、地方税等)について、人的・財政的負担の軽減と、サービスの利便性向上を図る。

そのため、全国規模のクラウド移行に向けて、デジタル庁が総務省と連携し標準化・共通化に関する企画と総合調整を行い、政府全体の方針の策定と推進を担うほか、補助金の交付されるシステムについて統括・監理を行う。

③ マイナンバー

官民の各種手続について、国民が添付書類を省略してオンラインでワンストップに行うことができ、行政からプッシュ型で各種サービスを受けられるなど、利便性と公平性の向上を図る。

そのためデジタル庁がマイナンバー、マイナンバーカード、公的個人認証などのマイナンバー制度全般の企画立案を一元的に行う体制を構築し、市区町村等との連絡調整などの実施事務を担う総務省と連携し、マイナンバーカードの普及の加速化等を強力に推進する。また、地方公共団体情報システム機構(JLIS)の体制を国(デジタル庁及び総務省)の責任と関与の下で抜本的に強化する。

④ 民間のデジタル化支援

中小企業を始め企業の生産性の向上や新たな産業分野における重複投資の
排除と成長の加速化を図るため、改正IT基本法において、国・地方・事業者のデジタル化に向けた役割を規定し、デジタル社会の形成に関し国が定める重点計画で具体的な施策と達成時期等を明記し、業種を超えた情報システムの相互連携のための標準の整備・普及や行政手続や規制の見直しや合理化等により、民間デジタル化を促進することで、事業の高度化による付加価値増大やあらたな形態の経済活動の創出を推進する。

⑤ 準公共部門のデジタル化支援

官民連携によるデータ活用が促進され、医療、教育、防災など、生活に密接に関連していることから国民からの期待が高い分野において、様々な民間サービスの開発・提供が進められる上で必要な環境整備を図ることによりサービスの多様化及び質の向上を図るため、デジタル庁が、医療、教育、防災等の準公共部門の情報システムに関する整備方針を関係府省とともに策定・推進するとともに、当該情報システムの整備を統括・監理するほか、緊急的な整備が必要なシステム等については、デジタル庁と各府省が共同で整備を行う。

⑥ データ利活用

ベース・レジストリ(個人、法人、不動産などの社会の基本的なデータベース)の整備により、手続のワンスオンリー実現を図るため、デジタル庁は、法人番号など法人や個人を一意に特定し識別する ID 制度や、電子署名、商業登記電子証明書などの情報とその発信者の真正性などを保証する制度の企画立案を関係法の所管府省と共管しユーザー視点での改革と普及を担うとともに、制度所管府省、地方公共団体とともにベース・レジストリとして整備すべき情報の明確化とその整備を担う。

4.期待される効果

デジタル庁が創設され、社会全体のデジタル化をリードする強力な推進主体となることで、次のような効果が生まれ、国民と社会全体の厚生が高まることが期待される。

  • デジタル庁の指揮の下、データ・システムの標準化、クラウド活用促進が進み、政府内におけるシステム連携が図りやすくなることが期待される。特にデジタル庁システムについて更にシステム統合・一体化が促進され業務の効率化が図られるほか、情報システムの開発手法や新技術の共有、民間との連携も容易になること、行政手続オンライン化などの国の方針の加速により、国民・事業者の更なる利便性が向上することが期待される。また、2025 年度(令和7年度)までに政府情報システムの運用経費等の3割削減目標(対2020 年度(令和2年度))が着実に達成されることが期待される。
  • 地方公共団体のシステムの標準化・共通化を進めることにより、システムの維持管理や制度改正時の人的・財政的負担が減る。また、新たな制度改正や住民の利便性を向上させるサービス提供等を迅速に全国に展開できるようになることが期待される。さらに、全国規模のクラウドへの移行により、国・地方を通じた一体的なサービス提供等をより円滑化し、割り勘効果を十分発揮させることができることが期待され、これらにより運用経費等の3割削減目標が着実に達成されることが期待される。加えて、こうした取組により、標準化・共通化部分の重複投資を排し、標準化・共通化された基盤の上で、各地方公共団体が創意工夫によりサービスの質を高め合うこと、そういった領域に人的・財政的リソースを振り向けることができるようになることが期待される。
  • マイナンバー制度による情報連携及びマイナンバーカード・マイナポータルの利用により、国民が人生の様々な場面における官民の各種手続について添付書類を省略してオンラインでワンストップに行うことができ、行政側からもプッシュ型で各種サービスの提供が可能となるとともに、公平・公正な負担と給付が実現されている社会が実現することが期待される。
  • 国・地方公共団体への申請手続のオンライン化やデジタルを前提とした規制改革等が進むとともに、政府におけるデータ連携基盤が整備されることにより、幅広い産業分野での民間企業のデジタル・トランスフォーメーション推進につながることが期待される。また、国・地方公共団体による重複投資を排することで、我が国 IT 産業・デジタル産業の人的・資金的リソースが、より付加価値の高い分野にシフトすることが期待される。
  • 教育、医療、防災など国民に身近な分野において、官民連携によるデータ活用が促進され、様々な民間サービスを開発・提供可能な環境が整う。個人の健診情報等の生涯を通じた管理(PHR)や学習データの活用、災害時の医療に係る情報など、データ連携基盤を通じた様々な住民サービスが提供可能と
    なることが期待される。
  • ベース・レジストリの整備により、適切に分散管理されアクセスコントロールの施されたデータベースや資格情報をワンストップで更新可能になり、手続のワンスオンリーが実現する。

Ⅱ.デジタル化に向けた課題の検討状況

1.国の情報システム

(1)現状と課題

これまでの政府情報システムについては、各府省が縦割りで整備・運用を行い、予算・調達が細分化されており、また、専門的な人材を十分に有していない、システム連携が不十分という問題が指摘されてきた。

これからのシステムは、システムのデータベースを分散管理することを前提に共通基盤上に構築し、データベースへの適切なアクセスコントロールをしながら各種アプリを構築するといった構築手法の抜本的な転換が必要と指摘されている。

こうした問題に対応するため、デジタル庁は、政府全体の IT ガバナンスの
司令塔として、(ⅰ)行政サービスの改革や政府情報システムの整備・管理についての基本的な方向性を提示し、(ⅱ)統一的視点から総合調整を行うとともに、(ⅲ)重要なものについては、自ら整備等を行うこととする。

(2)見直しの方向性

政府情報システムの統合・一体化を促進し、民間システムとの連携を容易にしつつ、ユーザー視点での行政サービスの改革と業務システムの改革を一体的に進めることで、国民・事業者の更なる利便性向上を図る。そのために、デジタル庁は、政府情報システムの整備及び管理の基本的な方針(整備方針)を策定するものとする。

デジタル庁は、政府情報システムに関する事業を統括・監理するものとし、政府情報システムが整備方針に沿ったものであるか等について、整備・管理の執行プロセスを通じて内容審査を行い、下記の取組と併せて、行政サービスの改革と一体的に、システムの整合的な整備、見直しを推進する。

さらに抜本的に政府情報システムの見直しを行う場合は、デジタル庁が行う総合調整により、基本的な方針を企画立案し、当該方針に基づき各府省にシステムの新設、統廃合等を実施させることとなる。

デジタル庁は、国の行政機関が共用する情報システムなどの政府情報システムの整備・管理に関する事業について、必要な予算を一括要求・確保し、整備方針等に基づき整備・管理の全部・一部を自ら行い、又は、各府省が行うこと等により、執行するものとする。

このため、各府省の政府情報システムについて、現行の府省共通システム、各府省重点システム、その他システムの区分を廃止し、以下の基準により、デジタル庁システム、デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システム、各府省システムの区分に分類し直し、次のとおり取り扱うこととする。個別の政府情報システムの分類については、以下の基準に基づき、デジタル庁が指定するものとする(当該指定は、柔軟に改定できるものとする。)。

① デジタル庁システム

  • 各府省が共通で利用するシステム
  • 各府省がシステム構築する上で基盤となるシステム
  • 他のシステムとの連携によりセキュリティ面や業務効率性に効果があるシステム(見込みを含む。)

② デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システム

  • デジタル庁の技術的知見や共通基盤を活かした整備を要するシステム(レガシーから今後構築するガバメント・クラウドに載せていくことが必要となるもの等)
  • 各府省が共通で利用するシステム等のうち、制度所管府省が責任をもって固有事務と密接不可分に運用しているシステム等
  • 一定の規模(運用経費、開発経費等から総合的に判断)があるシステム

③ 各府省システム(①及び②以外のシステム)

これらの区分ごとの取り扱いは次のとおりとする。

① デジタル庁システム

デジタル庁システムについては、デジタル庁が、整備・運用について、契約主体、責任主体となり、財産管轄(所有権)もデジタル庁とする。

予算については、整備、運用に係る経費を一括してデジタル庁に計上し、デジタル庁が執行する(令和3年度からデジタル庁に予算計上。ただし、特別会計で管理している経費など、現時点で各府省のシステムとは別に特定の事業と一体的に整備、運用されているシステムについては、各府省に予算計上。)。

上記のとおり、デジタル庁は整備段階、運用段階を通じて責任主体となることから、デジタル庁システムに係る各府省の定員は、すべてデジタル庁に振り替える。

② デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システム

デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システムについては、整備、運用の段階を通じて、デジタル庁、各府省は共同で整備、運用を実施する。システムの業務フローにおいて、整備と運用は、通常、別個の契約となっている。したがって、整備と運用は、契約単位で切り分けることを基本とし、契約主体、責任主体は、整備段階においてはデジタル庁、運用段階においては各府省と分けることとする(財産の管轄(所有権)は、運用段階で各府省に移すことを想定しているが、手続等の煩雑さの問題も考えられるため、今後検討することとする。)。なお、運用の契約の中で行われている改修は、運用として整理する。

今後、システムの業務フローにおいて、整備と運用が一体として契約され、実施されることが想定される。その場合は、契約主体は、業務と密接不可分である運用側の各府省になるケースが多くなり、責任主体、財産管轄も各府省となる。一方、その場合でも、デジタル庁のプロジェクト管理の下、デジタル庁の職員を各府省に併任して、各府省の職員と共同で整備、運用を実施する。

予算については、原則、整備、運用に係る経費を一括してデジタル庁に計上する。このうち整備に係る予算はデジタル庁が執行し、運用に係る予算はデジタル庁が各府省に配分(移替)し、各府省が執行する。各府省は、予算の執行に際して、運用に係る予算の配分(移替)、実施計画について、デジタル庁の承認を受ける(令和3年度からデジタル庁に予算計上。ただし、特別会計で管理している経費など、現時点で各府省のシステムとは別に特定の事業と一体的に整備、運用されているシステムについては、各府省に予算計上。)。

定員については、デジタル庁は整備段階の、各府省は運用段階の責任主体となることから、各府省の情報システムに係る定員は、原則、整備と運用に切り分けて、整備分をデジタル庁に振り替えることとする。ある程度の規模のシステムであれば、係単位で整備と運用の担当を分けていると考えられる一方、規模の小さいシステムであれば、整備と運用の担当が同じであることが多いと考えられ、整備と運用の切り分けが困難な場合には、各府省からのヒアリングを通じて一定の基準を整理した上で、振り替える定員を調整する。

整備段階では、デジタル庁の職員(民間人材を含む。)とともに、必要な各府省のシステム担当者をデジタル庁に併任して、整備に従事させる(なお、各府省のシステムの基となる制度に携わる担当者もデジタル庁における整備に参画するものとする。)。

運用段階では、各府省の職員とともに、デジタル庁の職員(民間人材を含む。)を各府省に併任して運用に従事させる。

③ 各府省システム

各府省システムについては、以下のとおり、デジタル庁による統括・監理の下に、各府省が整備、運用を実施する。是正が必要な場合は、デジタル庁が担当府省と協議し調整を行う。

予算については、整備、運用に係る経費を各府省に計上する。整備、運用に係る予算は各府省が執行する(令和3年度については上記のとおり。令和4年度以降の取扱いについては、デジタル庁による一括計上の方向で今後検討。)。

上記のとおり、各府省は整備段階、運用段階を通じて責任主体となることから、各府省システムについて、各府省からデジタル庁への定員の振替は行わない。

(3)システムの監査

デジタル庁は、情報システムの統括・監理として、システムに係る予算の要求前、要求時、執行段階の各段階で評価を実施する。

具体的にはデジタル庁は、予算の要求前において、システムの内容の基本方針等について妥当性を確認し、予算の要求時には、概算要求額の積算の妥当性を確認する。さらに、執行段階では、当該システムの仕様が整備方針等を満たしているか審査を行うとともに、システムの整備時には、事前に審査した仕様どおりに整備されているか仕様書、設計書等により確認する。さらに、システムの運用開始後も、投資対効果の分析、システムの有効性等について評価する。

その上で、デジタル庁は、システムの安定的・継続的な稼働によるサービス保証や有効性・効率性などの観点から、システム監査に関する基準を策定する。

さらにデジタル庁は、①主にデジタル庁システム及びデジタル庁・各府省共同プロジェクト型システムのうち、一定のメルクマール(停止すると国民の生活に重大な影響を及ぼす等)に該当するものを指定し、②上記基準に沿って、安定的・継続的なサービス提供が可能な状態であるか等についてシステム稼働前に検証・監査を実施する。さらに必要があれば、運用後も監査を実施する。

監査についてはデジタル庁が責任を有するが、必要に応じてシステム監査を担う監査法人などの外部リソースも活用する。また、システムの性質上、民間の外部リソースの活用が適切でない場合には、必要に応じて独立行政法人情報処理推進機構(IPA)を活用する。監査を実施できる人材が有限であることも踏まえ、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)とデジタル庁において効率的な運用を検討する。

(4)実現される効果

上記の改革によって、デジタル庁の指揮の下、データ・システムの標準化が進むとともに、クラウド活用が促進され、政府内におけるシステム連携が図りやすくなることが期待される。特にデジタル庁システムについて更にシステム統合・一体化が促進され業務の効率化が図られるほか、情報システムの開発手法や新技術の共有、民間との連携も容易になること、行政手続オンライン化等の政府方針の加速により、国民・事業者の更なる利便性が向上することが期待される。

(5)独立行政法人の情報システム

① 独立行政法人制度の仕組みについて

独立行政法人制度は、主務大臣があらかじめ法人の業務運営に係る目標を策定し、独立行政法人が当該目標に基づいて計画を作成して主務大臣の認可を受け、業務を実施し、その業務の実績について、毎年度、主務大臣の評価を受ける仕組みとなっている。

なお、主務大臣は、当該目標を変更することができ、独立行政法人は、当該計画を変更することができる。また、予算面では、基本的に運営費交付金が措置されており、施設整備費補助金が措置される場合もある。

このように、主務大臣が、目標策定、評価や予算等を通じて独立行政法人の運営に関与する仕組みを踏まえ、デジタル庁による独立行政法人の情報システムに対する関与については、以下の対応が考えられる。

② 独立行政法人の情報システムの整備及び管理の基本的な方針について

デジタル庁は、独立行政法人のシステムについて、整備及び管理の基本的な方針(整備方針)を策定する。

整備方針には、情報システムの効率化、国、独立行政法人等の相互の連携を確保するための基盤の構築等について記載する。

整備方針は、主務大臣による独立行政法人のマネジメントの指針として機能し、デジタル庁は、下記③の仕組みにより、主務大臣を通じて独立行政法人の情報システムに関与する。

③ 独立行政法人の目標策定等への関与について

改正IT基本法に基づく重点計画において、主務大臣が独立行政法人に対して目標策定、評価を実施する際に(独立行政法人評価制度委員会の意見を聴く前に)、整備方針に基づく目標策定、評価を推進する観点から、デジタル庁が総合調整機能の一環として主務大臣の協議を受ける仕組みを設ける。

※ 総務省は、独立行政法人評価制度委員会の調査審議や指針に明記することを通じて、整備方針に基づく目標策定、評価の実施を推進する。

デジタル庁は、上記の取組の推進状況を踏まえ、整備方針に沿ったシステムの効率化等が必要な場合など、是正が必要な場合には主務大臣と協議し調整を行うこととする。

また、独立行政法人の情報システムのうち、例えば緊急的な整備が必要なものや、デジタル庁の技術的知見・共通基盤を活かした整備を要するものなどの重要なシステムに係るデジタル庁の関与の仕組みについて、その具体化について検討する。

※ デジタル庁が独立行政法人のシステム整備について技術的助言を直接行えるような仕組みを設けることの要否、法令面の手当等について引き続き検討。

④ システム監査について

独立行政法人の情報システムについての監査は、外部統制の観点から重要な取組と考えられる。

上記の仕組みを通じて独立行政法人の情報システムに関与するデジタル庁
が独立行政法人のシステム監査を担うことについて、主務大臣との関係、サイバーセキュリティ戦略本部が実施しているセキュリティ監査との関係を整理しつつ、その具体化について検討する。

2.地方共通のデジタル基盤

(1)現状と課題

基幹系情報システム(住民基本台帳、地方税等)について、2025 年度(令和7年度)末までに各地方公共団体が標準準拠システムに移行するように、以下の役割分担で対応している。

① IT室:標準化・共通化に関する総合調整、各府省の標準仕様の検討の支援。

② 総務省:システム標準化・共通化の方向性の策定、標準準拠システムの利用を義務付ける法制の検討等。

③ 各府省:所管する基幹系情報システムに係る標準仕様の作成。

地方公共団体の情報システムは、各団体による個別の開発やカスタマイズが重複投資を生み、各団体にとって人的・財政的負担になるとともに、新たなサービスの迅速な展開に課題がある。

基幹系情報システムの標準化・共通化の取組により、標準準拠システムの導入が進められ、全国規模のクラウドの移行に向けた素地は作られるが、各団体のシステム構築環境の違い等により、当然に全国規模のクラウドへの移行が進むわけではないため、移行しやすい環境をどのように作っていくかが課題となっている。

(2)見直しの方向性

① 標準化・共通化とクラウド化の推進

地方公共団体の情報システムのうち、国民生活に直接関係する事務に係る情報システムで、相互に連携が必要なシステム(17 事務に係る情報システム)を対象に、標準化・共通化を進め、2025 年度(令和7年度)までに基準(標準仕様)に適合した情報システムへの移行を目指す(標準化を進めることでクラウドに移行しやすい環境を創出する。)。

標準化・共通化については、地方公共団体が処理する事務が適切かつ効率的に行われるように、それぞれの事務ごとに詳細な検討を深めた上で、デジタル庁が整備方針や後述する標準化法の基本方針の下に全体を調整しつつ 17 事務について推進する。

クラウド化については、迅速かつ効率的に進めるため、地方公共団体が利用できるプラットフォームを、国が提供する。その際、国と地方公共団体の役割分担、デジタル庁の関与の在り方を検討する必要がある。また、クラウドサービスの選定基準や選定数、クラウドに構築する共通システムの範囲、クラウドへの移行時期等をどのように設定するか、等については、業務の特性や地方公共団体の情報システムの状況によって異なる。これらの検討課題について、標準化・共通化の議論を進めながら、同時に検討し、その結果を踏まえクラウド化を推進する。

なお、標準化・クラウド化の効果を踏まえ、地方公共団体の情報システムの運用経費等については、標準準拠システムへの移行完了予定後の 2026 年度(令和8年度)までに 2018 年度(平成 30 年度)比で少なくとも3割の削減を目指すこととする。また、国の削減目標は 2025 年度(令和7年度)までに 2020 年度(令和2年度)比で3割削減であることを踏まえ、削減目標のさらなる上積みを目指す。

② デジタル庁と各府省の基本的な役割

デジタル庁は、a)国、地方公共団体等の情報システムの整備及び管理の基本
的な方針(整備方針)の策定、b)国、地方公共団体等の情報システムが相互の連携を確保するための基盤(基盤)の整備及び管理を担う(このため、デジタル庁には、既存の人員の振替だけでなく、新規の人員の確保が必要。)。

総務省は、地方公共団体のデジタル担当部門との連絡調整の役割を担う。

制度所管府省(地方公共団体が処理する事務の制度を所管する府省をいう。)は、地方公共団体の当該事務実施部門による情報システムを活用した適正かつ効率的な事務処理を促す役割を担う。

③ 地方公共団体の情報システムの標準化・共通化を推進するための法制(新法)における役割分担(国による基本方針の策定)

デジタル庁は整備方針や基盤との整合性の確保の観点から、総務省は地方公共団体の連絡調整の観点から、制度所管府省とともに、関係行政機関の長に協議、知事会・市長会・町村会から意見聴取の上、基本方針(標準化の対象とする事務、基準に定めるべき項目や定める方法等を記載)の案を作成する。(成案は閣議決定)

(情報システムの基準(標準仕様)の策定)

制度所管府省は、基本方針を踏まえ、所管する事務の処理に利用される地方公共団体の情報システムの基準(標準仕様)を策定する。

デジタル庁と総務省は共同で、地方公共団体の情報システムに共通する事項についての基準(標準仕様)を策定する。

(基準(標準仕様)に準拠したシステムの導入推進)

制度所管府省は、各地方公共団体に対し、策定した基準(標準仕様)に沿った情報システムの導入を推進する。

総務省は、各地方公共団体に対し、共通事項についての基準(標準仕様)に沿った情報システムの導入を推進する。

(標準化・クラウド化のための財政支援措置)

標準化及びクラウド化を推進するため、次に掲げる経費が必要となると見込まれる。今後、国が地方に対しシステム更新の義務付けや加速化を求めること等を踏まえ、国が予算措置するべき部分を精査する。

(a) 基準(標準仕様)に適合する情報システムに移行するための経費
(b) 基盤を整備及び管理するための経費、及び基準(標準仕様)に沿った地方公共団体の情報システムを基盤に接続するための経費
(c) 基盤上に構築することが安全で効果的かつ効率的になる共通システムを
整備及び管理し、地方公共団体の情報システムに接続するための経費

(3)実現される効果

地方公共団体のシステムの標準化・共通化を進めることにより、各地方公共団体におけるシステムの維持管理や制度改正時の個別対応の人的・財政的負担が減る。また、新たな制度改正や住民の利便性を向上させるサービス提供等を迅速に全国に展開できるようになることが期待される。

さらに、全国規模のクラウドへの移行を進めることにより、国・地方を通じた一体的なサービス提供等をより円滑化し、割り勘効果を十分発揮させることができることが期待される。

(4)補論

(国(デジタル庁)が、地方公共団体の情報システムの整備及び管理の基本的な方針を策定することについて)

① 以下の国と地方公共団体の役割分担等に鑑みれば、地方公共団体が事務処理に利用する情報システムの構築は、地方公共団体が行うことが基本であり、その整備及び管理の方針についても個々の地方公共団体が策定することが基本。

※ 国と地方公共団体の一般的な役割分担(地方自治法1条の2)。

  • 国は、国が本来果たすべき以下のような役割を重点的に果たす。
    1. 国際社会における国家としての存立にかかわる事務
    2. 全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動又は地方自治に関する基本的な準則に関する事務
    3. 全国的な規模で又は全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施
  • 地方公共団体は、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役
    割を広く担う。
  • 国は、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。

② 一方で、情報システムの効率化等の観点からは、これまでは、近隣の地方公共団体間での共同利用が想定されていたが、クラウド技術の進展により、今や全国的な規模で共同利用することが可能となっている。さらに、データベースを分散管理することを前提に、データベースへの適切なアクセスコントロールをしながら、クラウドを基盤としたプラットフォームを構築することにより、安全かつ効率的に、相互に情報を連携することを可能とするデジタル技術が主流となってきている。

③ このような技術の進展を背景に、デジタル庁において、安全かつ効率的に、国、地方公共団体等の相互の連携を確保するための基盤(クラウドを基盤としたプラットフォーム)を構築することを検討している。

④ ③については、①cの「全国的な規模で又は全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施」に該当すると解されることから、国が策定する基本的な方針に、

  • 国、地方公共団体等の相互の連携を確保するための基盤の構築
  • その前提となる地方公共団体の情報システムの標準化・共通化やクラウド利用の促進等を記載することは許容されると考えられる。

⑤ なお、情報システムの整備及び管理と同じように、国と地方公共団体が同種の取組を行うことが想定される場合に、法律に基づき、国が基本方針を策定しているものとして以下のようなものがある(内容としては、国の方針を定めた上で、地方公共団体は国の取組を参考とすること等を求めている。)。

  • 民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針
  • 個人情報保護に関する基本方針
  • 公共サービス改革基本方針
(基準(標準仕様)に準拠したシステムの導入推進に関するデジタル庁の関与について)

基準に沿ったシステムの導入の推進に当たっては、デジタル庁において導入推進策の企画立案、補助金等の一括計上による予算確保等を行い、制度所管府省、総務省が地方公共団体へ助言し、補助金等の執行を行うこととする。

(地方公共団体のクラウド利用を促進させるための担保策について)

2025 年度(令和7年度)までの国、地方公共団体等の相互の連携を確保するための基盤(クラウドを基盤としたプラットフォーム)の構築を見据えて、次期通常国会提出予定の地方公共団体の情報システムの標準化法案において、地方公共団体が標準準拠システムへ段階的に移行する際、全国的な規模で共同利用が可能なものとして提供されることが見込まれるクラウドによる運用を原則とする旨の努力義務規定を置くこととする。

その上で、デジタル庁において、民間事業者が提供するサービスの競争性を保ちつつ、安価、かつ、各地方公共団体にとって使い勝手がいい、クラウドを基盤としたプラットフォームの構築・提供を目指す。

3.マイナンバー

(1)現状と課題

マイナンバー制度は、国民が人生の様々な場面において官民の各種手続について添付書類を省略してオンラインでワンストップに行うことができるようにすることにより、国民の利便性の向上、行政事務の効率化、公平・公正な負担と給付の実現を図るため導入されている。

  1. 内閣官房:マイナンバー制度全般の企画立案、総合調整。
  2. 内閣府:マイナンバー制度全般の進捗管理・関係機関との調整、広報、マイナンバーの利用拡大の検討、マイナポータルの運用。
  3. 総務省:マイナンバーカードに関する施策の推進、情報提供ネットワークシステムの設置・管理。
  4. 各省庁:マイナンバーカードを利用した各種事業の推進、マイナンバーを活用した情報連携による添付書類の省略の推進。

上記に加えて、地方共同法人 J-LIS が、マイナンバーの通知やマイナンバー
カードの発行に係る事務、関係システムの整備・運用を担っている。

また、マイナンバーカードについては、令和4年度末にはほぼ全国民に行き渡ることを目指し、カードの普及策を加速する必要があるが、以下の課題がある。

  • カードの利活用範囲の拡大(例:オンラインによる各種行政手続への活用、各種資格証のカードへの一体化)
  • 広報・普及啓発(例:健康保険証などの利用用途の拡大、誤解の払拭)
  • カード機能の高度化(例:スマホへの機能搭載、生体認証の活用、次期カード仕様の設計)

(2)見直しの方向性

① 基本的考え方

マイナンバー関連業務(マイナンバー、マイナンバーカード、公的個人認証)及びその基盤となっている住民基本台帳業務については、デジタル社会をつくる基盤としての制度的な業務の側面と、それ自体が住民に対するサービスという事務的な業務の側面がある。

そこで、デジタル社会構築に必要なマイナンバー関連業務について、基本方針の策定、制度の具体設計など企画立案、国その他の業務システムの統一的な管理を行う観点から、関連するシステム開発・管理やそれに関する予算の計上・配賦はデジタル庁が担い、こうした制度の運用として、市区町村等との連絡調整を含めた実施事務については総務省が行うことを基本として役割分担を整理する。

具体的には国の業務に関し、

  1. 住民基本台帳に関する業務は市区町村業務の根幹であり、従来通り、企画立案機能を含め、総務省の下で行う。
  2. マイナンバーに関する業務に関し、マイナンバーの生成・付番、通知、利用範囲、特定個人情報の提供範囲の規定のうち、デジタル庁は企画立案を担い、総務省は実施事務を担うこととする。加えてデジタル庁は、情報提供ネットワークシステムの設置・管理、マイナポータルの設置・運用を担うこととする。
  3. マイナンバーカード(カード)に関する業務に関し、「カードの交付」、「カードの発行、失効管理」、「IC チップ空き領域の利活用」に関する企画立案はデジタル庁が、実施事務は総務省が担う。
  4. 公的個人認証に関する業務に関し、「電子証明書の交付」、「電子証明書の発行、失効管理」、「電子証明書の失効情報の提供」に関する企画立案はデジタル庁が、その実施事務は総務省が行うこととする。なお、マイナンバーカードの交付等の事務とあわせ、市区町村が行う電子証明書関係の事務は合わせて「法定受託事務」とし、国の関与を明確化する。
② J-LIS の在り方

以上の役割分担の下で、J-LIS については、マイナンバー関連業務に関する
体制を抜本的に強化するため、以下の措置を講ずる。

  1. 全く新たな法人形態である、国と地方公共団体が共同で管理する法人(「国・地方管理法人」(仮称))へ転換し、デジタル庁 5
    と総務省で共管する。代表者会議に国の選定する者を加え、理事長の任免を国が認可するなど、国のガバナンスを抜本的に強化する。
  2. マイナンバー関連業務について、デジタル庁及び総務省による目標設定・計画認可に関する規定を整備する。目標等の実施に関して国が改善措置命令を行えるようにし、命令違反の場合は理事長の解任を求め、解任されない場合は国が解任するなど、法律上国の関与を明確化する。
  3. システム整備については、マイナンバー関係事務はもちろん、LGWAN、住基ネットも含め、トータル・デザインの下、抜本的な見直しを行う。また、カード管理システム、JPKIシステム設置運用経費(国負担分)については、国の業務システムを一括して統括・監理するデジタル庁に予算計上し、デジタル庁から法人へ支出する。これにより、デジタル庁が実質的にシステム企画及び調達に関与する。JPKIシステム設置運用経費(地方負担分)については、引き続き総務省が財政措置を行う。

また、上記の整理の実効性を確保するためには、デジタル庁、総務省、J-LISの組織体制の強化についても考えていくことが必要である。

(3)実現される効果

このような取組を通じて、マイナンバー制度による情報連携及びマイナンバーカード・マイナポータルの利用により、国民が人生の様々な場面における官民の各種手続について添付書類を省略してオンラインでワンストップに行うことができ、行政側からもプッシュ型で各種サービスの提供が可能となるとともに、公平・公正な負担と給付が実現されている社会が実現することが期待される。

4.民間のデジタル化支援・準公共部門のデジタル化支援

(1)基本的な考え方

国民生活の利便性向上のためには、行政システムの高度化に加えて、民間分野のデジタル化を促進することで、社会全体のデジタル化を進める必要がある。

他方で、デジタル社会の形成のために各府省が行う取組は限定的であり、総務省・経済産業省による各府省に対する側面支援(モデル事業や支援ツールの開発等)も、例えば各府省の制度に組み込んで普及させる取組にまで至っておらず、十分に機能しているとは言えない。

このため、改正IT基本法において、目指すべき社会として「デジタル社会」を規定するとともに、

  • 国及び地方公共団体は、デジタル社会の形成に向けた責務を負う
  • 事業者は、自ら積極的にデジタル社会の形成の推進に努める
  • 事業者は、国又は地方公共団体が実施する、デジタル社会の形成の推進のための標準化・共通化などの基盤整備等に関する施策に協力するよう努める

等とすることで、国としての取組の位置付けを明確にする。

その上で、デジタル社会の形成のために各府省が行う取組を着実に推進するような仕組みを以下のとおり構築する。

① 重点計画の策定・フォローアップ
  • 改正IT基本法に基づく重点計画において、デジタル社会の形成のために各府省が行う具体的な施策、その目標及び達成時期を定める。
  • その上で、デジタル庁に設置するデジタル社会推進会議(仮称)において、重点計画で定めた目標の達成状況を確認する。
② 重点計画で定めた施策のうち重要なものについてのデジタル庁による推

・ デジタル庁は、重点計画で定めた施策のうち、デジタル社会の形成のために特に重要なものについて、下記のとおり、重要なシステム整備・標準策定のデジタル庁と各府省共同での実施や、目標達成に向けて是正が必要な施策の担当府省との協議・調整、目標の達成状況の公表等を行う。

(2)準公共部門における重要政策の推進

① 現状

現在、医療・教育・防災といった準公共部門において、情報システムが準拠すべき基本的な方針が示されないまま各情報システムがバラバラに整備されており、IT室の関与も助言にとどまっている。このため、情報システムの相互連携が不十分であり、国民向けサービスの質の向上が停滞している。

② 見直しの方向性

デジタル庁は、重点計画において、①生活に密接に関連しているため国民からの期待が高く、国による関与(予算措置等)が大きく他の民間分野への波及効果が高い分野を「準公共部門」として指定し、②当該準公共部門におけるデジタル社会の形成に特に必要な施策を示す。

デジタル庁は、上記施策の実施のために必要な情報システムについて、整備及び管理の基本的な方針(整備方針)を各府省と共同で策定する。その上で、当該情報システムに係る事業を統括、監理するものとし、当該情報システムが整備方針を満たす内容となっているか審査し、是正が必要な場合やシステムの整備上規制や制度面の制約がある場合には担当府省と協議し調整を行う(政府情報システムにおける「③各府省システム」と同様)。

上記情報システムのうち、例えば緊急的な整備が必要なものや、デジタル庁の技術的知見・共通基盤を活かした整備を要するものについては、その度合いに応じてデジタル庁と各府省が共同で整備することができることとする。

また、情報システムの導入による効果を最大化するためには、それを阻害する規制・制度の合理化の課題を洗い出し、必要な見直しを、担当府省と協議し調整しつつ実現することが極めて重要である。

そのため、デジタル庁は、情報システムに係る事業を統括、監理する中で、こうした課題の特定をした上で、内閣府規制改革推進室等と連携・分担しつつ、当該規制・制度を所管する府省と必要な調整を行い、その合理化を推進する。

(※)準公共部門における重要な情報システムの例

  • GIGA スクール構想におけるオンライン教材や学習データ・校務データの連携・利活用のための情報システム
  • 病院・保健所におけるコロナ感染者情報を国・地方公共団体等で共有するための情報システム(HER-SYS)で必要とされたような、全国の医療機関等と国や地方公共団体との情報連携を行うための情報システム
  • 避難所の開設状況や被災地の状況をリアルタイムで把握・公開するための情報システム等

(3)民間における業種を超えた相互連携が重要な分野(相互連携分野)における重要施策の推進

① 現状

現在、複数の府省の所掌にまたがる分野(MaaS 等)において、情報システム間の相互連携がなされればより良い製品・サービスの提供が可能となるところ、各所管府省の制度で定められた基準などが区々で不統一であったり、相互連携のための標準の整備・普及が不十分である等により、国民にとって必要な製品・サービスが十分に提供されているとは言えない。

② 見直しの方向性

デジタル庁は、重点計画において、①業種を超えた情報システム間の相互の連携が重要な分野を「相互連携分野」として指定し、②当該相互連携分野におけるデジタル社会の形成に特に必要な施策を示す。

上記施策の実現に必要な情報システムは、民間企業が自らの判断で整備・管理するものであり、その整備方針を国が策定することは適切でない。他方で、上記施策の実現のためには情報システム間の相互連携を確保する必要があることから、各府省は、そのために必要な情報システムの連携のための標準の整備方針(標準に係る整備方針)を策定する。デジタル庁はその進捗を評価し、是正が必要な場合には担当府省と協議し調整を行う。

また、上記標準のうち、例えば、緊急的な策定が必要なものや、デジタル庁の技術的知見を要するものについては、その度合いに応じて、デジタル庁と各府省が共同で整備することができることとする。その際、システムの全体設計やデータ構造に関する標準化についての知見が蓄積されている IPA 等に検討を要請することもできるようにする。

各府省は、所管する業界の事業者が当該標準に準拠するよう、補助金等の交付や税制措置の要件、各種事業法の計画の認定・認可等の要件に組み込むなどの制度設計を行う。デジタル庁はその進捗を評価・公表し、是正が必要な場合には担当府省と協議し調整を行う。

※MaaS の例

  • シームレスな移動の実現のためには、鉄道、バス、タクシー、カーシェアといった複数の交通手段について、時刻表や運行ルート、所要時間、料金等のデータを連携することで、目的地への到達のための最適な手段が分かるようにすることが重要である。
  • 加えて、精度を高めるためには、鉄道・バスの遅延状況や道路の混雑状況といったリアルタイムのデータとの連携も必要。
  • さらに、利便性向上の観点からは、決済データや ID との連携についても検討が必要となる。

(4)デジタル化促進のための行政手続・規制の高度化における重要施策の推進

① 現状

デジタル化に対応するための行政手続の見直しは進められているが、書面での手続も選べるような制度設計になっており、中長期的には完全なデジタル化に向けた対応が必要。

デジタル化を踏まえた規制の見直しも進められているが、主に足元の個別規制の緩和にとどまっており、デジタル技術を活用して規制を合理化するといった検討は十分には進められていない。

② 見直しの方向性

デジタル庁は、内閣府規制改革推進室とも連携して、重点計画において、①デジタル化促進のために見直すべき行政手続・規制を指定し、②当該行政手続・規制の見直しにおけるデジタル社会の形成に特に必要な施策を示す。

(ⅰ)行政手続の完全デジタル化の推進

  • 各府省は、上記のとおり重点計画において示した施策を実施し、行政手続の完全デジタル化を進める(例:申請手続や領収書・請求書などの会計手続等について、デジタルの活用を前提とした制度に変更した上で、民間事業者が当該変更に対応するための補助金を時限的に措置することも検討する。)。
  • デジタル庁はその進捗を評価し、是正が必要な場合には担当府省と協議し
    調整を行う。

(ⅱ)デジタル技術を活用した規制の合理化

  • デジタル庁は、前述のとおり、情報システムを統括、監理する中で、情報システムの導入による効果を最大化するために必要となる規制・制度上の課題の洗い出しとその見直しを内閣府規制改革推進室や関係府省と連携して推進する。
  • また、デジタル庁と各府省は、デジタル技術を活用した規制の合理化のために必要な実証事業を実施し、その検証結果を、内閣府規制改革推進室に提供することなどを通じて規制の合理化につなげる。

※現在、以下の規制の精緻化について、経済産業省が実証予算を確保し、事業者及び業所管府省と実証事業を行っているところ。

  • モビリティ分野:国が自動車メーカーに対して行っている型式指定監査について、検査データを遠隔から常時確認・分析するシステムの構築することができれば、制度を見直す。
  • 金融分野:事業者間で疑わしい取引の届出のデータおよびその候補データを共有できるようにすることで、事業者単体のみならず共有事業者間におけるマネー・ローンダリング対策に資する情報として活用できるようになり、関連する規制の精緻化と、共有した情報を AI を活用した基盤にて利活用することにより、社会全体で効率的かつ実効的なマネー・ローンダリング対策の実現を目指す。
  • 建築分野:建築物の外壁の調査について、赤外線装置を搭載したドローンを用いて、従来の方法と同等ないしそれ以上の精度で問題箇所を検出する性能を確認できれば、規制をドローン活用でも代替可能とするよう見直す。

5.データ利活用

(1)基本的な考え方

デジタル社会の形成には、高度情報通信ネットワークを利用して、電磁的記録に記録された多様かつ大量の情報を①効率的かつ②安全・安心に活用することが不可欠である。

このため、デジタル社会では、

  1. デジタル社会を構成する様々な主体がいる中で、その個人・団体を一意に特定し識別する機能(いわゆる ID)により、行政機関等が保有する社会の基本情報が容易に参照され、活用されること
  2. 高度情報通信ネットワークを通じて流通する情報の発信者の真正性や、情報そのものの真正性、完全性等を保証するための機能が提供されること

などが必要である。

① 個人・団体を一意に特定し識別する機能(いわゆる ID)

デジタル社会の形成に当たっては、このような情報の活用の前提となる機能を、国民生活を支える社会基盤として整備することが重要であるが、個人・団体を一意に特定し識別する機能(いわゆる ID)に関しては、マイナンバー、法人番号や、(図書館)利用者番号、介護保険事務所番号などといった様々な IDが存在している。

これらの ID のうち、マイナンバーや法人番号といった網羅性や不変性の高
い ID については、取引や行政手続を効率的に行うために重要であり、国民生活を支える社会基盤としてデジタル社会の形成に不可欠なものである。

この点、マイナンバーと法人番号については、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関が保有する個人・団体の情報が同一人の情報であることを確認する等のため、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下「番号法」という。)で必要な措置が定められている。

② 情報の真正性等

オンラインによる様々な取引や行政手続がある中で、情報の発信者の真正性や、情報そのものの真正性、完全性等を保証することは、安全・安心なデジタル社会の形成に重要である。そのために、これまで、

  • 電子署名や電子委任状に関する法令の整備、
  • 商業登記電子証明書、
  • 法人共通認証基盤(GビズID)の整備・運用

の措置が行われてきたが、普及の途上にある。

③ 見直しの方向性について

①や②の措置等については、十分にその利用が普及していないところ、デジタル社会の形成に当たっては、普及を強力に進める必要がある。

特に、普及を加速するためには

  •  マイナンバーや電子署名等を各府省等の手続や制度において利用できるよう各府省の手続や制度の改正を進めていくこと
  • マイナンバーや電子署名などの制度やその運用面の利便性(UI・UX)を高めるための改正を進めること

の両方を一体的に進めることが重要であり、制度の普及と制度自体の企画をデジタル庁が一体的に担うことが効果的であると考えられる。

これまでは、マイナンバーや電子署名などのデジタル基盤を担う制度とそれを利用する各府省の手続や制度の所掌がバラバラであり、相互の調整が不十分であったと考えられる。また、IT室はデジタル手続法等を所管し、各府省等の手続や制度のオンライン化や事業者による利活用促進等を働きかけてきたが、その権限も不十分であり、かつ、マイナンバーや電子署名などのデジタル基盤を担う制度側の企画にも十分な権限をもってこなかった。

そのため、今後は、マイナンバーや電子署名などのデジタル基盤を担う制度とそれを利用する各府省の手続や制度及び事業者への普及の両方をデジタル庁が所掌し、強力な権限をもって進めることが適切であると考えられる。

また、現在、ID と認証と電子証明書がそれぞれ別の制度(ID は法人番号、認証はGビズID、電子証明書は商業登記電子証明書)として提供されており、それらの制度を一体的に立案することの重要性が高まっていると考えられる。

加えて、例えば法人番号については Web-API 等の連携の仕組みについて、現状利用が進んでいるところではあるが、将来的に新しいデジタルテクノロジーがでてきたときに電子証明書等を含めて、ユーザーの利便性の向上のために制度運用を見直す必要がある。

このように、それぞれの制度の経緯や趣旨を踏まえ、全体を所管するものと制度企画部分を共管する等の対応が必要であり、この点を以下それぞれの制度について検討する。

(2)電子証明等(電子署名法)に係る整理について

① 現行制度

電子署名及び認証業務に関する法律(以下「電子署名法」という。)は、電子署名に関し、電磁的記録の真正の成立の推定や、一定の基準に適合する方式の電子署名について、その利用者の当人認証結果を他人に証明する業務である特定認証業務に関する認定の制度等について定めているものである。

これについて、総務省・法務省・経済産業省は、(ⅰ)電子署名の法的効果※1(真正な成立の推定)や(ⅱ)特定認証業務の認定等※2を規律する法律を所管している。

※1 民事訴訟法第 228 条第4項(私文書の成立の真正の推定)に相当する規定

※2 一部法務省を除く。

* 電子証明書(有効枚数)は約 35 万枚(2018 年度(平成 30 年度)末時点)

② 見直しの方向性

総務省・経済産業省に関して、(1)のとおり、電子署名法に基づく電子証明書を普及するためには、その普及と制度の企画をデジタル庁が一体的に担うことが効果的であること、総務省・経済産業省の関与はデジタル政策に関するものであること等を踏まえ、今後は、その両方をデジタル庁が強力な権限をもって進めることとし、総務省・経済産業省の権限はデジタル庁に移管することが適当である。

法務省に関しては、電子署名の法的効果に関する規律が民事訴訟法の私文書の成立の真正に関する規律と同様の効果を規定するものであることや、そのような効果を認めるにふさわしい電子署名はどのようなものかを政策的に判断するに当たっては、電子署名及び認証業務の制度全体を熟知している必要があることを踏まえると、現行のとおり、(ⅰ)及び(ⅱ)について法務大臣が主務大臣に含まれていることが適当である。

(3)電子証明等(電子委任状法)に係る整理について

① 現行制度

電子委任状の普及の促進に関する法律(以下「電子委任状法」という。)は、電子委任状取扱業務の認定等や、認定時における電気通信事業法の特例について定めているものである。

これについて、総務省と経済産業省は、電子委任状取扱業務の認定等を行い、総務省は、認定時における電気通信事業法の特例に係る審査を行っている。

② 見直しの方向性

総務省・経済産業省に関して、(1)のとおり、電子委任状法に基づく電子委任状を普及するためには、その普及と制度の企画をデジタル庁が一体的に担うことが効果的であること、総務省・経済産業省の関与はデジタル政策に関するものであること等を踏まえ、今後は、普及と制度の企画をデジタル庁が強力な権限をもって進めることとし、総務省・経済産業省の権限はデジタル庁に移管することが適当である。

なお、認定時における電気通信事業法の特例に係る審査については、電気通信業の発達、改善及び調整に関することを所管し、電気通信事業法を所管する総務省が行うことが適切であることから、引き続き総務省が担うことが適当である。

(4)電子証明等(商業登記電子証明書)に係る整理について

① 現行制度

商業登記電子証明書※は、商業登記法第 12 条の2の規定に基づき、登記官
が発行している。

※ 登記所が管理する登記情報に基づき,会社・法人の代表者等に対して、発行される電子証明書。証明の請求は、管轄の登記所を経由される。

これについて、法務省は

  1. 電子証明書の発行申請等や、電子証明書の発行等に係る事務を行うという事務的な側面と、
  2. これに係る制度的な側面(企画立案)

という二つの側面を担っている。

* 電子証明書(有効枚数)は約3万枚(平成 30 年2月末時点。なお、平成 30 年末法人数は約 270 万社)

② 見直しの方向性

商業登記電子証明書は必ずしも普及しているとはいえないところ、商業登記電子証明書の普及を加速するためには、その普及と制度の企画をデジタル庁が一体的に担うことが効果的であり、その両方をデジタル庁が強力な権限をもって進める必要がある。

ただし、(ⅰ)に関しては、電子証明書の発行申請等は、印鑑が提出されている管轄登記所を経由して行われていること※1、また、電子証明書の発行等に係る事務として、登記官が電子証明書の証明を行っていること※2を踏まえると、デジタル庁が行うことは困難である。

(ⅱ)に関しては、電子証明書の発行等に係る制度設計については、商業登記法に基づく商業登記制度全般と整合性を図った上で行う必要がある※3。そのため、(ⅱ)については、法務省も引き続き所掌することが必要である。

以上を踏まえると、(ⅰ)については、法務省の所掌とし、(ⅱ)については、デジタル庁と法務省の共管とすることが適当である。

※1 電子証明書の発行申請等は、印鑑が提出されている管轄登記所を経由して行うこととされているところ、これは、電子証明書の発行申請等における本人確認には登記事項や提出印鑑との照合が不可欠であるためである。こうした現行制度を前提とした場合、電子証明書の発行申請等に係る事務は、登記事務そのものと密接不可分である。

※2 電子証明書の発行等に係る事務として、登記官が電子証明書の証明を行っている。登記官はその職務の執行に当たっては、自己の権限において独立して行うものであり、また、個々の登記に関する事項について、行政組織法上の指揮命令権を持つ法務局等の長の指揮にも服さない存在であるところ、このような登記事務を責任もって担う登記官が電子証明書の内容を電子署名により証明すること等によって、商業登記法に基づく電子証明書を保証しているものと考えられる。

※3 商業登記の機能を十分発揮するためには、商業登記は常に正確・明瞭・迅速であることが要求されているところ、このような要求は、商業登記に基づく電子証明書にも求められるものであり、仮に電子証明書の発行の手段等によって、電子証明書の正確・明瞭・迅速性が損なわれる可能性がある場合は、商業登記が果たしてきた機能が損なわれる可能性がある。

(5)ID 管理(法人番号)に係る整理について

① 現行制度

法人番号は、番号法第 39 条の規定に基づき、国税庁が指定・通知・公表している。

これについて、国税庁は(ⅰ)法人番号の指定・通知・公表という事務的な側面と、(ⅱ)これに係る制度的な側面(企画立案)という二つの側面を担っている。

※ 利用状況

  • 法人基本3情報*のダウンロード件数:約 40~50 万件/年
  • 法人番号システム Web-API リクエスト件数:約 7,000 万~9,000 万件/年(増加傾向)

* 1商号又は名称、2本店又は主たる事務所の所在地、3法人番号

② 見直しの方向性

(1)のとおり、網羅性や不変性の高い ID については、取引や行政手続を効率的に行うために重要であり、国民生活を支える社会基盤としてデジタル社会の形成に不可欠なものであることから、今後、普及と制度の企画をデジタル庁が一体的に担うことが効果的であるところ、その両方をデジタル庁が強力な権限をもって進める必要がある。

制度の企画として想定されるのは、

  • ID と認証と電子証明書がそれぞれ別の制度(ID は法人番号、認証はGビズID、電子証明書は商業登記電子証明書)として提供されており、それらを重複なく整合的に制度を立案することの重要性が高まっていると考えられる。
  • また、制度の運用によって、法人番号については Web-API 等の連携の仕組みについて、現状利用が進んでいるところではあるが、将来的に新しいデジタルテクノロジーがでてきたときにユーザーの利便性の向上のために制度運用を見直す必要がある。

ただし、(ⅰ)に関しては、法人番号の指定等の事務は、税務署に提出された届出書等に基づき指定されており、国税庁の事務と密接であること※1から、デジタル庁が担うことは困難である。

(ⅱ)に関しては、法人番号は税法に基づく納税義務者等を指定するものであること※2から、税制度全般と整合性を図った上で行う必要がある。そのため、(ⅱ)については、国税庁も所掌とすることが必要である。
以上を踏まえ、(ⅰ)については、国税庁の所掌とし、(ⅱ)については、デジタル庁と国税庁の共管とすることが適当である。

※1 国税庁は、法人番号の指定に際して、設立の登記がある場合は、法務省から提供される登記情報に基づき法人番号を指定し、設立の登記がない場合は、税務署に提出された届出書等に基づき法人番号を指定している。

※2 法人番号は、社会保障・税制を含む各種行政分野において手続の当事者等となっている国の機関、地方公共団体及び設立登記法人並びにこれらの法人以外の法人又は人格のない社団等であって、税法により法人税や消費税の申告納税義務が課される者や、その支払給与につき原則として所得税の源泉徴収義務が課される者を的確に指定し、分野横断的に広く法人等をカバーする特定の法人等を識別するものである。

(6)本人認証(GビズID)に係る整理について

① 現状

GビズIDは、法人・個人事業主が1つの ID・パスワードで様々な行政サービスにログインできる認証サービスである。本サービスの ID は法人の場合、法人番号と紐付いているほか、政府の本人確認ガイドラインに準拠して構築されており、二要素認証(パスワードと SMS)を採用している。

これについて、経済産業省は、予算を活用し整備及び運用しており、既に補助金申請システムや厚生労働省の社会保険手続、農林水産省の共通申請システムなど他府省の行政手続も含め利用されている。今後も他府省の手続システムと連携を拡大していく予定。

※ 利用状況

  • GビズID発行者数:23 万者(2020 年(令和2年)1 月~11 月現在)
  • GビズIDによるログイン総数:167 万件(2020 年(令和2年)1 月~9 月)。うち補助金申請 104 万件(8 省 23 自治体)、企業の社会保険手続:54 万件(厚生労働省) 等
② 見直しの方向性

(1)のとおり、GビズIDの在り方を検討し、その普及とサービスの企画をデジタル庁が一体的に担うことが効果的であること、経済産業省の関与はデジタル政策に関するものであることなどを踏まえ、今後は、その両方をデジタル庁が強力な権限や予算をもって進めることとし、経済産業省の予算はデジタル庁に移管することが適当である。

なお、GビズIDは、各府省が共通で利用するシステムであることから、デジタル庁システムとして、デジタル庁が整備及び運用を実施することと整理している。

(7)ベース・レジストリ

① 基本的な考え方

現在、個人、法人(法人登記)や不動産(不動産登記)などの情報は、各制度所管府省や地方公共団体がそれぞれ管理している。こうした情報を他の行政手続等においても参照可能なものとすることができれば、行政手続における住民の大幅な利便性向上(一度提出した情報は二度と提出しないワンスオンリー)、給付金の迅速な支給や行政機関におけるコスト削減が期待できる。

そのため、マイナンバー制度による情報連携などの既存のインフラも十分活用しながら、制度所管府省や地方公共団体が管理する個人、法人、不動産等の情報を適切なアクセスコントロールの下で他の行政機関が参照できるようにしたベース・レジストリを整備するとともに、これらベース・レジストリの情報を連携させるシステムを整備することが重要である。

(ベース・レジストリは米国、英国、オランダ、デンマーク、インド、エストニア等が整備している。例えば英国、オランダ及びデンマークは、個人、法人、土地、不動産、住所等をベース・レジストリの対象としている。)

そこで、

  1. デジタル庁は、改正IT基本法に基づく重点計画において、ベース・レジストリの整備を行う対象やその整備の方針を定め、当該方針のもとで制度所管府省、地方公共団体と共にベース・レジストリを整備する。また、それらベース・レジストリを連携させるシステムを整備する。
  2. 制度所管府省や地方公共団体は、デジタル庁と共にベース・レジストリを整備する。

ベース・レジストリについての方針の策定及び整備にあたっては、情報の管理及び連携に関する各制度及びシステムの見直しの必要性について十分に精査する。また、法令が制度所管府省や地方公共団体に対象情報の管理を求める本来の目的と比較衡量の上で、根拠となる作用法の必要性について検討する必要がある。

② 見直しの方向性

(ⅰ)デジタル庁は、制度所管府省と連携して、重点計画においてベース・レジストリの考え方、対象及びその整備についての方針を定める。

  • ベース・レジストリに含むべき個人、法人、不動産等の情報を特定
  • ベース・レジストリ及びベース・レジストリの情報を連携させるシステムの整備に関する計画の策定

(ⅱ)デジタル庁は、ベース・レジストリを整備するために必要となる予算を一元的に要求し、制度所管府省とともに執行する(政府情報システムにおける②デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システムに相当)。

  • 制度所管府省や地方公共団体が有する情報を他の行政機関等において利用できるようにするため、必要な法整備、データの標準化(データの様式を統一すること)やデータクレンジング(定められた様式にデータを変換すること)の実施
  • 情報を管理するシステムについて、当該情報を他の行政機関等に使用させるために必要となる API の提供等の改修の実施
  • 情報へのアクセス権等についての運用ルールの策定・実装
  • セキュリティや個人情報保護の確立
  • 情報の利用を妨げる制度の見直し

(ⅲ)デジタル庁は、制度所管府省や地方公共団体が有する情報を連携させるために必要となるデータ連携基盤システムを整備及び管理する(政府情報システムにおける①デジタル庁システムに相当)。

  • 制度所管府省や地方公共団体が管理する情報に関するアクセスコントロールや API 等を含めたシステムの整備及び管理

(ⅳ)制度所管府省は、引き続き制度を所管し(制度はデジタル庁に移管しない。)、当該制度のもとで情報を管理する。その際、制度所管府省は

  • デジタル庁が確保した予算を活用し、同庁とともにデータの標準化及び情報を管理するシステムの改修を実施
  • 地方公共団体が管理する情報に関し、デジタル庁が定める重点計画に即したデータの標準化やシステム改修が進むことを促すための取組を実施
  • デジタル庁とともに情報の利用ルールを策定

(8)実現される効果

ベース・レジストリの構築により、教育、医療、防災など国民に身近な分野において、官民連携によるデータ活用が促進され、様々な民間サービスを開発・提供可能な環境が整う。

個人の健診情報などの生涯を通じた管理(PHR)や学習データの活用、災害時の医療に係る情報など、データプラットフォームを通じた様々な住民サービスが提供可能となることが期待される。

6.サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティについては、デジタル庁が作成する情報システムに関する整備及び管理の基本的な方針(整備方針)において、サイバーセキュリティに関する基本的な方針を示すこととし、当該部分については、サイバーセキュリティ戦略本部が作成している「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」を活用する形で同本部と緊密に連携して作成する。

デジタル庁に、セキュリティの専門チームを置き、デジタル庁が整備・運用するシステムの安定的・継続的な稼働によるサービス保証等の観点から検証・監査を実施するとともに、NISC がその体制を強化しつつ、デジタル庁が整備・運用するシステムを含めて国の行政機関等のシステムに対するセキュリティ監査等を行う。

NISC は、引き続き、地方自治体、重要インフラ事業者等について、安全基準の策定への支援等を通じて、サイバーセキュリティの確保を図る。これらにより、国民の重要な情報資産を保護する。

なお、各府省等からのインシデント報告への対応や海外連携については引き続き NISC が対応する。

7.デジタル人材の確保と育成

デジタル庁の設置に際しては、デジタル庁においても、また他の政府部門においてもデジタル改革を牽引していくことのできるデジタル人材を確保する。

また民間、自治体、政府を行き来しながらキャリアを積める環境を整備し、海外の事例も参考に職員育成のための研修プログラムを作成する。

併せて、行政と民間のデジタル人材の効果的な連携により業務を進める組織文化を醸成する。

Ⅲ.デジタル庁創設に向けたスケジュール

来年中にデジタル庁を発足させることとし、本年末のデジタル庁創設に向けた基本方針の策定に向け、必要な準備を進める。

デジタル庁は、①各府省等に対する総合調整権限を有する強力な司令塔機能と、②政府全体のシステムを企画立案し、統括・監理するとともに、自らが予算を計上し、重点的なシステムの整備・管理等の事務執行をする機能を併せて有するものとし、その組織体制の在り方について、予算編成過程で検討を進め、成案を得る。

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