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デジタル社会の実現に向けた重点計画(案)2021年6月15日 第1部

この計画は、デジタル社会形成基本法の施行(令和3年(2021年)9月1日)を見据え、同法第37 条第1項に規定する「デジタル社会の形成に関する重点計画」に現時点において盛り込むべきと考えられる事項を示しつつ、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法第36 条第1項に規定する重点計画及び官民データ活用推進基本法第8条第1項に規定する官民データ活用推進基本計画として策定するものであり、官民データ活用推進基本法第8条第8項において準用する同条第6項の規定に基づき、国会に報告するものである。

第1部 我が国が目指すデジタル社会と推進体制

1.今後のデジタル改革に向けて

(1)デジタル改革の経緯

我が国では、インターネットを中心とした情報通信技術(IT)の活用により世界的規模で生じていた急激かつ大幅な社会構造の変化(いわゆるIT 革命)に適確に対応する観点から、平成12 年(2000 年)、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12 年法律第144 号。以下「IT 基本法」という。)が制定された。

IT 基本法では、インターネット等の「高度情報通信ネットワーク」を整備し、国民が「容易にかつ主体的に利用する機会」を有することで、産業の国際競争力の強化、就業の機会の創出、国民の利便性の向上といった「あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展」がなされるとの考えの下、所要の施策を推進することとされた。

その後、高度情報通信ネットワークの整備が相当程度進展した一方、インターネットを通じて流通するデータの多様化や大容量化の進展に伴い、IT 基本法が重点を置いていたインターネット等の高度情報通信ネットワークの整備に加え、今日では、データを最大限に活用していくことが不可欠となっている。その間、政府は、「e-Japan 戦略」以降、主にインフラ整備とIT 利活用を推進し、その後、「データ利活用」と「デジタル・ガバメント」を戦略の柱として推進してきた。

こうした状況の中、多様・大量なデータ流通による負の側面も顕在化しており、デジタル技術の活用のみならず、個人情報の保護や必要なリテラシーを育むことの重要性が増加している。また、新型コロナウイルス感染症への対応において、官民においてデジタル化を巡る様々な課題が明らかになった。今後、大規模地震災害をはじめとする自然災害や感染症等の国民の生命・身体・財産に重大な被害が生じ、又は生ずるおそれがある事態に際しての強靱性(レジリエンス)の確保や、少子高齢化等の社会的な課題への対応のためにも、データの活用は緊要なものとなっている。

こうした状況を踏まえ、政府は、行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行するための突破口としてデジタル庁を創設することを柱としたデジタル改革について検討を加え、令和2年(2020 年)12 月25 日、IT 基本法の見直しの考え方やデジタル庁設置の考え方について政府の基本的な方針を盛り込んだ「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(以下「デジタル改革基本方針」という。)を閣議決定した。

その後、この方針等を踏まえ、デジタル改革関連法案が、本年2月9日に閣議決定され、国会審議を経て5月12 日に成立した。

(2)本計画の位置付け

デジタル改革基本方針では、デジタル社会の目指すビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を掲げ、このような社会を目指すことは、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めることに繋がるとしている。

また、デジタル社会を形成するための基本原則として、以下の10 原則を掲げた。

  1. ①オープン・透明
  2. ②公平・倫理
  3. ③安全・安心
  4. ④継続・安定・強靱
  5. ⑤社会課題の解決
  6. ⑥迅速・柔軟
  7. ⑦包摂・多様性
  8. ⑧浸透
  9. ⑨新たな価値の創造
  10. ⑩飛躍・国際貢献

この10 原則等を踏まえ、デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35 号)第2章においてデジタル社会の形成に関する基本理念が規定され、また、これを踏まえ、同法第4章において施策の策定に係る基本方針が定められている。

本計画は、デジタル社会形成基本法の施行(令和3年(2021 年)9月1日)を見据え、同法第37 条第1項に規定する「デジタル社会の形成に関する重点計画」に現時点において盛り込むべきと考えられる事項を示しつつ、

① IT 基本法第36 条第1項に規定する高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画
② 官民データ活用推進基本法(平成28 年法律第103 号)第8条第1項に規定する官民データ活用推進基本計画

として策定するものである。

すなわち、デジタル庁を司令塔として、デジタル社会の形成に向けた官民の施策や取組を迅速かつ重点的に推進する観点から策定するものであり、国、地方公共団体、民間をはじめとする社会全体のデジタル化について関係者が一丸となって推進すべき取組を示すことにより、デジタル社会の形成に向けた羅針盤とすることを目指すものである。

今後、本計画を踏まえつつ、デジタル庁の創設後速やかに、デジタル社会形成基本法第37条第1項に基づく「新重点計画」を策定することとする。

本計画に加え、デジタル・ガバメント推進の取組を加速するため、「デジタル・ガバメント実行計画」(令和2年12 月25 日閣議決定。別添1「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて(国・地方デジタル化指針)」及び別添2「マイナンバーカードを活用した各種カード等のデジタル化等に向けた工程表」を含む。)に基づく取組を引き続き実施する。

デジタル化はあくまでも手段であり、その目的は我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現である。こうしたデジタル改革が目指す究極の姿は「デジタルを意識しないデジタル社会」であり、徹底した国民目線で行政サービスを刷新すること等により、誰もがデジタルの恩恵を受けることのできる社会や、地域における魅力ある多様な就業機会の創出、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現、地域社会の持続可能性の確保等、地方においてもデジタルによる恩恵が受けられる社会に向け、さらには、自然災害や感染症等の事態に際しての強靱性の確保や、少子高齢化等の社会的な課題への対応のためにも、国、地方公共団体、民間事業者その他の関係者が一丸となって取り組むことが求められる。特に、国及び地方公共団体においては、本計画に基づくデジタル化の取組を着実に実施することに加え、国民目線でサービス向上に資する取組をできるものから順次積極的に実践していくものとする。

2.デジタル社会の形成に向けたトータルデザインと推進体制

(1)デジタル社会の形成に向けたトータルデザイン

目指すデジタル社会の形成に向けた官民の様々な施策や取組の関係について、その全体像すなわちトータルデザインを示すとき、国民からみて、以下の3つの階層に主に区分できる。

① 徹底したUI・UX の改善と国民向けサービスの実現

まず、国民にとって最も近い側における施策や取組としては、国民目線での徹底したUI・UX を実現し、国民の誰にとっても、そのユーザーとしての体験価値を最大化する国民向けのサービスを実現するための取組を進めなければならない。従来の行政分野ごとの個々バラバラなオンライン化、また国や地方公共団体による提供者目線のシステム整備ではなく、ユーザーの声を聴き、ユーザーが真に求めているニーズを把握し、誰にとっても容易に、迅速に、行政手続等を終えられるよう、サービスを実現する。また変化の速い環境において、柔軟かつ迅速に変化に対応できるシステム等の環境整備ができるよう、民間との連携を図る必要がある。こうした取組を通じ、例えばオンライン申請の手続も、国民がスマートフォンで簡単に行えるようにし、ワンストップに、またワンスオンリーで完結することを目指す。

このため、具体的には、国民との接点(タッチポイント)となっているマイナポータルのUI・UX の抜本的改善を進めることが早急に必要であり、同時に、子育てや介護、引越し、死亡・相続といったライフステージにおける行政との接点となるテーマに応じたワンストップ化の継続的な推進や、行政手続の更なるデジタル化・オンライン化の取組が求められる。

一方で、健康・医療・介護、教育、防災等の準公共分野や、電子インボイス等の相互連携分野にあっても、国民にとってニーズの高い分野が存在しており、国の予算等を効率的かつ効果的に活用して関与していくことが必要となる。

② デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及

次に、国・地方公共団体のほか、民間も含めて、上記の国民向けサービスを徹底して実現するための基盤、デジタル社会に必要な共通機能の整備や普及に向けて取り組むことも必要となる。

このとき、マイナンバー制度は、デジタル社会における基盤の一つであるが、まずマイナンバーカードの普及促進を強力に進めていくことが必要不可欠となる。同時に、マイナンバーの利活用のため、情報連携の範囲について検討を加えつつ、併せてワンスオンリーの実現のため、情報を必要とする行政機関等に対してプッシュ型での通知を実現していくことが必要になる。また、行政機関間における情報照会及び情報提供について、中間サーバ等を介在させずAPI 連携等を手段として、効率化とリアルタイム化を追求していくことも求められる(コストの削減やシステムの疎結合化)。

また、国として共通的な基盤・機能を提供するインフラとして、ガバメントクラウドやガバメントネットワークを構築し、情報連携を密にするための環境整備も同時に必要となる。

さらに、地方公共団体にあっては、基幹業務システムの統一・標準化を進めるとともに、オンライン化を促進することで、引越しなどを経ても、どこでも同じように国民が手続等を完了できることに繋がる。手続を行う国民だけではなく、行政事務を担う地方公共団体の職員の負担を軽減することも期待されるところ、業務の見直しと併せて、システムの統一・標準化の実現に向けて早急に取り組む必要がある。

加えて、ID・認証の基盤として、電子署名等の普及を推進することや、新たな認証の仕組みの検討を進める必要があるとともに、社会における情報通信インフラの整備・維持・充実に取り組むべきである。

③ 包括的データ戦略

最後に、官民問わずデジタル社会において、その最も基礎的な構成要素となるデータについて、多様化と大容量化が進む中で利活用を進めることが求められる。

このとき、我が国においては、データに対する信頼を確保しつつ、データの分散管理を基本として、標準化を含む共通ルールの整備や、正確性や最新性が確保された社会の基盤となるデータベースの整備等を進めることを目指すべきであり、併せて行政の保有するデータに関して質の高いオープンデータ化などを進める。その上で、分野横断的に、また国際連携を視野に、包括的データ戦略として取組を進めることにより、我が国の産業の国際競争力の強化や社会全体の生産性の向上を進める必要がある。

以上、3つの階層に分けられるデジタル社会の形成に向けた施策や取組を、より効果的に進めていくためには、官民を挙げたデジタル人材の確保・育成を図り、また新たな技術(テクノロジー)を大胆に活用するための国・地方公共団体など公共部門における調達や様々な規制の見直し、個人情報の保護に向けた対応などの取組もまた、同時並行で進めていくことが不可欠となる。

さらに、こうした施策や取組を進めていく上では、全ての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現に向けて、地理的な制約、年齢、障害の有無等の心身の状態、経済的な状況その他の要因に基づく高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用に係る機会又は必要な能力における格差(デジタルデバイド)が生じないよう、アクセシビリティを確保することにより、「誰一人取り残さない」デジタル社会の実現に向けた対応をきめ細かく、丁寧に行っていくことが不可欠である。

こうしたデジタル社会の形成に向けたトータルデザインについては、デジタル庁において、令和3年(2021 年)内を目途として更に具体化するものとし、上記の多様な構成要素を含む様々な施策や取組を実施することを見据えた、全体最適なアーキテクチャとする。その上で、新たな技術の進歩や社会環境の変化を捉え、そのアップデートに不断に取り組む。

(2)デジタル社会の形成に向けた推進体制

① 司令塔としてのデジタル庁の設置

デジタル庁は、これまでIT 政策を担ってきた高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部及び官民データ活用推進戦略会議(これらの下に開催される会議体を含む。)を廃止し、我が国が目指すデジタル社会の形成に関する司令塔として設置される内閣直属の行政機関であり、内閣総理大臣を長とする組織である。デジタル大臣のほか、副大臣、大臣政務官、デジタル監等が置かれる。

デジタル庁は、主として次の役割を担う。

  • 国の情報システムに関し、整備・管理の基本的な方針を策定し、事業を統括・監理すること。重要なシステムについては自ら整備すること。
  • 地方共通のデジタル基盤に関し、全国規模のクラウド移行に向けて、総務省と連携して、地方公共団体の情報システムの統一・標準化に関する企画と総合調整を行い、政府全体の方針の策定と推進を担うほか、補助金の交付されるシステムに関する統括・監理を行うこと。
  • マイナンバー制度全般の企画立案を一元的に行うこと。
  • 民間・準公共分野のデジタル化支援として、情報システムの相互連携のための標準の整備・普及等を行うとともに、準公共分野において、情報システムに関する整備方針を関係府省庁と共に策定・推進し、補助金の交付される情報システムについて統括・監理を行うこと。
  • 個人や法人を一意に特定し識別するID 制度や、情報とその発信者の真正性等を保証する認証制度の企画立案を関係法令所管府省庁と共管するとともに、社会の基本データを登録したデータベースであるベース・レジストリの整備を推進すること。
  • サイバーセキュリティの専門チームを置き、デジタル庁が整備・運用するシステムを中心に検証・監査を実施すること。
  • デジタル改革を牽引する人材を確保し、民間、地方公共団体、政府を行き来しながらキャリアを積むことのできる環境を整備すること。

② 各府省庁における体制の整備

デジタル庁の設置を起点として、徹底した国民目線でのシステム開発・運用、サービス改革の観点を踏まえた業務改革(BPR)、所管する産業・行政分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)、データマネジメント、データ活用、デジタル人材の戦略的な配置・確保・育成等といったデジタル改革に、政府を挙げて強力に取り組む観点から、政府全体のデジタル改革の推進体制を確立する。このため、司令塔としてのデジタル庁と各府省庁との連携の在り方について速やかに検討するとともに、各府省庁においても、施策の遂行を強力に統括する体制について、令和4年度(2022 年度)以降速やかに整備する。

また、当該体制の整備を待つことなく、各府省庁において、デジタル改革を遂行する人材の配置や確保、育成を迅速に進めることとする。

③ デジタル社会推進会議の設置

内閣総理大臣を議長とし、全閣僚等をメンバーとするデジタル社会推進会議をデジタル庁に設置し、デジタル社会の形成のための施策を推進する。

内閣総理大臣は、各府省庁の職員のうちからデジタル社会推進会議の幹事(以下「幹事」という。)を任命する。デジタル監及び幹事からなるデジタル社会推進会議幹事会(仮称)は、デジタル社会形成基本法に基づく重点計画に記載された具体的施策の検証・評価を行う。

④ デジタル社会推進検討会(仮称)の開催

デジタル庁において、デジタル大臣が指名する有識者によって構成される「デジタル社会推進検討会」(仮称)を開催し、デジタル社会形成基本法に基づく重点計画等について調査審議を行う。

⑤ 関係行政機関との連携・協力

デジタル庁は、デジタル社会形成基本法に基づく重点計画及び官民データ活用推進基本法に基づく官民データ活用推進基本計画の案の策定に当たって意見を聴取することを含め、サイバーセキュリティ戦略本部、個人情報保護委員会等の関係行政機関と緊密な連携を図る。

⑥ 地方公共団体との連携・協力

デジタル庁は、デジタル社会形成基本法に基づく重点計画の案において地方自治に重要な影響を及ぼすと考えられる施策について定めようとする場合に、地方6団体から意見を聴取する。また、こうした施策の検討・推進に当たっては、国民との接点の最前線にいる職員の声を聴くため、後述の「デジタル改革共創プラットフォーム」の積極的な活用を図る。

⑦ 民間事業者等との連携・協力

政府は、デジタル技術を活用した事業者の経営の効率化、事業の高度化及び生産性の向上等が図られるよう、民間事業者等に対する意識の啓発、標準化やAPI 連携も含めたプラットフォーム整備など、民間事業者等との連携や協力を積極的に推進する。そのための情報共有・人材交流や、環境整備も図る。

(3)国民の理解を深めるための広報活動等

デジタル化により国民の利便性を高め、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を実現するためには、政策決定に多様な利用者の観点を取り入れるとともに、広く国民からデジタル社会の形成に賛同を得ることが欠かせない。

デジタル庁は、後述の「デジタル改革アイデアボックス」の積極的な活用、デジタル社会への理解を深めるための広報活動、デジタルに対する国民の理解・機運の醸成に向けた取組等を積極的に推進する。

その一環として、令和3年度(2021 年度)には、産学官、個人がそれぞれ参画し、社会全体でデジタルに触れ、デジタルを感じる、国民全員のための祝祭として、10 月10 日・11 日に「2021 年デジタルの日」を実施する。

参照

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