第2部 デジタル社会の形成に向けた基本的な施策
1.デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及
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(1)マイナンバーカードの普及、マイナンバーの利活用促進
① マイナンバーカードの普及
令和4年度(2022 年度)末までに、マイナンバーカードがほぼ全国民に行き渡ることを目指す。そのため、次の取組により、マイナンバーカードの普及促進を図る。その際、デジタル庁による統括・監理を通じて政府情報システムにおけるマイナンバーカードの利用を推進する。
ア マイナンバーカードの健康保険証としての利用
診療時における確実な本人確認と保険資格確認を可能とし、医療保険事務の効率化や患者の利便性の向上等を図るため、令和3年(2021 年)3月から開始したプレ運用を継続し、遅くとも同年10 月までに本格運用を開始する。令和4年度(2022 年度)末までに概ね全ての医療機関等で健康保険証としての利用ができることを目指し、医療機関等での環境整備を推進する。
イ 運転免許証との一体化
運転免許証について、令和6年度(2024 年度)末にマイナンバーカードとの一体化を開始する。これに先立ち、警察庁及び都道府県警察の運転免許の管理等を行うシステムを令和6年度(2024 年度)末までに警察庁の共通基盤上に集約する。
ウ 在留カードとの一体化
令和3年(2021 年)中に関係府省庁において結論を得て、所要の法律案を令和4年(2022 年)通常国会に提出する。政省令等の整備及びシステム改修を経て、令和7年度(2025 年度)から一体化したカードの交付を開始する。
エ マイナンバーカードの国外継続利用
マイナンバーカードの令和6年度(2024 年度)中の国外での継続利用の開始に向け、在外公館でのマイナンバーカードの交付等の検討を進める。また、本開始に伴い、マイナンバーを活用した海外在留邦人に対する円滑な領事業務の在り方の検討を進める。
オ マイナンバーカードの電子証明書の円滑な発行・更新等
地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律(平成13 年法律第120 号)の規定に基づき、郵便局におけるマイナンバーカードの電子証明書の発行・更新や、暗証番号の初期化・再設定手続を実施するなど、電子証明書の発行・更新等の円滑な実施を図る。
カ 全業所管官庁等を通じた計画的な取組
全業所管府省庁毎に工程表を作成し、関係業界団体等に対してマイナンバーカードの普及と健康保険証利用についての要請を行うとともに、説明会を開催する等により企業等におけるマイナンバーカードの積極的な取得と利活用の促進を推進する。なお、アンケート調査等により定期的なフォローアップを実施するなど、積極的に取り組む。
② マイナンバーの利活用促進
「デジタル・ガバメント実行計画」の工程表に沿って、マイナンバー制度の抜本的な改善を、引き続き進める。
ア マイナンバーを利用した情報連携
社会保障・税・災害の3分野以外の分野におけるマイナンバーを利用した情報連携や、行政事務全般(治安、外交等を除く。)における機関別符号のみを利用した情報連携について、令和3年度(2021 年度)に検討し、国民の理解が得られたものについて、令和4年(2022 年)の通常国会に法律案を提出する。
イ 公金受取口座の登録・利用及び預貯金付番の円滑化
公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律(令和3年法律第38 号)に基づいて、公的給付におけるマイナンバーの利用等を可能とするため、令和3年(2021 年)5月に「子育て世帯生活支援特別給付金」を第1号の特定公的給付として指定した。その上で、マイナンバー付き公金受取口座の登録・利用の仕組みについて、可能な限り令和4年度(2022 年度)中の運用開始を目指す。
また、預貯金口座へのマイナンバーの付番(以下「預貯金付番」という。)を円滑に進める仕組み(相続・災害時のサービスを含む。)について、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(令和3年法律第39 号)に基づいて、令和6年度(2024 年度)中の運用開始を目指す。
このため、関係府省庁や関係機関等と調整の上、政省令の制定や金融機関におけるガイドラインの策定、関係機関及び金融機関におけるシステム整備を進めるとともに、公金受取口座の登録及び預貯金付番の円滑化の制度の周知・広報を徹底するなど、円滑な制度の施行に向けた準備を行う。
ウ 各種免許・国家資格等のデジタル化
優先的な取組が求められる医師、歯科医師、看護師等の約30 の社会保障等に係る国家資格等について、マイナンバーを活用した住民基本台帳ネットワークシステム及び情報提供ネットワークシステムとの連携等を目指す。あわせて、令和3年度(2021 年度)に、各種免許・国家資格等の範囲等について調査を実施し、令和5年度(2023 年度)までに、資格管理者等が共同利用できる資格情報連携等に関するシステムの開発・構築を行い、令和6年度(2024 年度)にデジタル化を開始する。
エ 養育費の支払確保
子供の貧困問題を背景とした、養育費の支払確保の一方策として、マイナンバー制度の活用の可能性について、検討を行う。
(2)ガバメントクラウド、ガバメントネットワーク
① ガバメントクラウドの整備
政府情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境であるガバメントクラウドを整備し、令和3年度(2021年度)に運用を開始する。各府省庁は、令和4年度(2022 年度)以降の新たなクラウドサービスの利用の検討に当たっては、原則としてガバメントクラウドの活用を検討する。令和3年度(2021 年度)以前からクラウドサービスを利用している政府情報システムについては、更改時期等を踏まえ、段階的にガバメントクラウドに移行する。
独立行政法人、地方公共団体、準公共分野(健康・医療・介護、教育、防災等)等の情報システムについても、令和3年度(2021 年度)から順次、ガバメントクラウドの活用に向けた方策や課題等を検討する。
② ガバメントネットワークの整備
信頼と実績がある最新技術を採用してガバメントネットワークを再構築し、国の行政機関等は、順次、新たなガバメントネットワークの利用への移行を図る。これに合わせて現在利用している「政府共通ネットワーク」は廃止する。
令和2年度(2020 年度)に各府省庁のネットワーク統合後の姿を前提として整備したネットワーク環境については、令和3年度(2021 年度)を通じ、円滑な業務遂行を図るためのツールの有効性も含め、各府省庁の円滑なネットワーク統合に向けての検証を実施する。各府省庁は、令和4年度(2022 年度)以降のネットワーク更改等を契機にこの環境への移行を検討する。
また、ネットワークに接続する情報資源を管理し、更なるセキュリティの確保を図るため、デバイスやアプリケーションの管理を含むディレクトリサービスについて、円滑かつ効率的な実現手法の検討を行う。
国においては、全国的なネットワーク環境の再構築を実現するため、地方支分部局等との接続に際しては、従来のインターネットサービスプロバイダ等が提供するサービスだけでなく、国自ら既設の全国広域通信網を活用の上、直接的に管理し、高セキュリティ、高品質、低遅延な独自の回線網を令和4年度(2022 年度)から運用できるよう整備を進める。
地方については、地方公共団体の業務システムの統一・標準化・ガバメントクラウドの活用に向けた検討に伴い、国・地方全体を通じた効率的かつ高品質なネットワーク環境を整備し、国・地方間の情報連携を密にすることも含め、より効率的に業務を遂行できる環境を整備することを目的に、必要な検討・対応を行う。
(3)地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化
地方公共団体の基幹業務システムについて、情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張、データ移行や連携の容易性の向上、高度のセキュリティ対策の導入、サーバ等の共同利用による情報システムに係るコスト削減等を通じて、デジタルファースト及びワンスオンリーを徹底し、住民サービスの向上と行政の効率化を図るため、基幹業務システムを利用する原則全ての地方公共団体が、目標時期である令和7年度(2025 年度)までに、ガバメントクラウド上に構築された標準化基準に適合した基幹業務システムへ移行する統一・標準化を目指す。
具体的には、複数のアプリケーション開発事業者が標準化基準に適合して開発した基幹業務のアプリケーション及び基幹業務と付属又は密接に関連する業務のアプリケーション(以下「基幹業務等のアプリケーション」という。)をガバメントクラウド上に構築し、地方公共団体がそれらの中から最適なアプリケーションを選択することが可能となるような環境の整備を図る。
その結果、地方公共団体が基幹業務等のアプリケーションをオンラインで利用することにより、従来のようにサーバ等のハードウェアやOS・ミドルウェア・アプリケーション等のソフトウェアを自ら整備・管理することが不要となる環境の実現を目指す。
また、ガバメントクラウドが提供する共通的な基盤や機能を活用しながら、アプリケーションレベルにおいては複数の民間事業者による競争環境を確保して、ベンダーロックインによる弊害を回避する。
統一・標準化の効果を踏まえ、地方公共団体の情報システムの運用経費等については、標準化基準に適合した情報システムへの移行完了予定後の令和8年度(2026 年度)までに、平成30 年度(2018 年度)比で少なくとも3割の削減を目指すこととする。また、国の削減目標は令和7年度(2025 年度)までに令和2年度(2020 年度)比で3割削減であることを踏まえ、削減目標の更なる上積みを目指す。
① 地方公共団体情報システム標準化基本方針の策定等
地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40 号。以下「標準化法」という。)に基づく標準化対象事務を政令で規定した上で、デジタル庁は情報システム整備方針との整合性の確保の観点から、総務省は地方公共団体との連絡調整の観点から、標準化対象事務に係る法令又は事務を所管する府省庁とともに、標準化法第5条第1項に規定する基本方針(以下「地方公共団体情報システム標準化基本方針」という。)の案を策定し、関係行政機関の長に協議し、知事会・市長会・町村会から意見聴取を行った上で、令和3年度(2021 年度)中を目途に定める。
標準化対象事務は、標準化法の趣旨を踏まえ、情報システムによる処理の内容が地方公共団体において共通しているかという観点等から、累次の閣議決定において示されてきた17 業務に、戸籍、戸籍の附票及び印鑑登録事務を加えることを検討する。
地方公共団体情報システム標準化基本方針においては、法令改正の検討を行う場合に同時に標準化基準の改定を検討する旨、統一・標準化の目的に沿った業務改革(BPR)に関する提案を地方公共団体から所管府省庁が受け付け、標準化基準に反映していくために必要な具体的措置、標準化基準への適合性の確認の方法等についても記載する。
また、システムの統一・標準化の取組については、議論の過程を透明化し、ホームページ等にその過程を公表すること、目標・取組・スケジュール等の段取りを地方公共団体にも分かりやすい形で提示すること、多様な地方公共団体の実情や進捗をきめ細かく把握し、丁寧に意見を聴いて進めること、地方公共団体が計画的に取組を進められるよう国として十分に支援を行うこと等についても記載する。
なお、地方公共団体情報システム標準化基本方針に定められる事項に関する調整及び標準化対象事務ごとの進捗管理については、デジタル庁及び関係府省庁が地方自治体業務プロセス・情報システム標準化等に関する関係府省会議を通じて行う。
② 標準化基準における共通事項
ア 地方公共団体によるガバメントクラウドの活用に係る先行事業の実施
ガバメントクラウド上に構築された標準化基準に適合した基幹業務システムを地方公共団体が安心して利用できるようにするため、ガバメントクラウドへの移行に係る課題の検証を行う先行事業を令和3年度(2021 年度)及び令和4年度(2022 年度)にかけて実施する。
具体的には、ガバメントクラウド上に構築する基幹業務と付属又は密接に関連する業務のアプリケーションの対象範囲の検討、先行事業において構築したシステムが「地方自治体の業務プロセス・情報システムの非機能要件の標準(標準非機能要件)」が求める非機能要件(セキュリティ、可用性、性能・拡張性、移行性、運用・保守性等)を満たすことの検証、ガバメントクラウドに移行したシステムと移行しないシステムとの連携の有効性の検証、現行システムとの投資対効果との比較等を行う。
イ 非機能要件の拡充
標準非機能要件(セキュリティを含む。)については、先行事業での検証を踏まえて、令和4年(2022 年)夏までに、必要に応じて拡充する。
このうちセキュリティについては、地方公共団体の業務システムの統一・標準化の取組を踏まえ、「自治体の三層の対策」の抜本的見直しを含めた新たなセキュリティ対策の在り方について検討を行う。
具体的には、デジタル庁及び総務省は、令和3年(2021 年)夏を目途に、先行事業の検証・実稼働に向けて、地方公共団体のガバメントクラウド活用に関するセキュリティ対策に関する要件を整理した上で、先行事業を通じた検討も踏まえつつ、令和4年(2022年)の夏を目途に、基幹業務等のシステムの標準化基準の作成と併せて、地方公共団体のガバメントクラウド活用に関するセキュリティ対策の方針を決定する。
ウ データ要件・連携要件の策定
各制度所管府省庁における標準仕様書の検討と並行して、デジタル庁は、地方公共団体が基幹業務等のアプリケーションを選択し、旧アプリから新アプリに乗換える場合等のデータ移行を容易にするため、データ要件を定めるほか、基幹業務等システム間や他の行政機関等とのデータ連携が円滑に行われるようにするため、連携要件を定める。
具体的には、基幹業務等システムに関する既存の標準(中間標準レイアウトや地域情報プラットフォーム、データ標準レイアウト)の拡充や整合性の確保を図ることや、基幹業務等におけるマイナポータルぴったりサービスの円滑な活用のため、マイナポータルと基幹業務等システムとの間の連携要件を新たに定めるなど、関係機関の協力を得ながら検討を進め、令和4年(2022 年)夏を目途にこれらの標準仕様を作成する。
データ要件・連携要件の内容と各制度関係府省庁が定める各業務の標準仕様の内容との整合性が保たれるよう、デジタル庁と各制度関係府省庁は、相互に連携を図る。
エ ガバメントクラウドが提供する共通機能の検討
基幹業務システムが利用可能な共通機能としてガバメントクラウドが地方公共団体に向けて提供する機能については、先行事業を通じて具体的な在り方を検討し、令和4年(2022 年)夏までに、基幹業務等のシステムの標準化基準の作成と併せて、その方針を示す。
③ 制度所管府省庁による標準化基準の策定
地方公共団体における基幹業務等システムの標準化基準のうち、②の共通事項を除いたもの(機能要件等)については、地方公共団体情報システム標準化基本方針に基づき、制度所管府省庁が検討体制を整備の上、以下のとおり作業を進めるとともに、データ要件・連携要件の内容との整合性の確保を図った上で、作成する。
この際、デジタル3原則に基づき、行政サービスの利用者の利便性向上並びに行政運営の簡素化及び効率化に立ち返った業務改革(BPR)の徹底を前提に進める。
ア 住民記録
住民記録システムについては、関係府省間で共有された作業方針等を踏まえ、標準仕様書(第1.0 版)を改定する。
イ 地方税(固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税)、選挙人名簿管理
固定資産税、個人住民税等の基幹税務システムについては、令和3年(2021 年)夏までに標準仕様書を作成する。
選挙人名簿管理に係るシステムについては、令和4年(2022 年)夏までに標準仕様書を作成する。
ウ 社会保障
国民健康保険に係る業務支援システムは、設計書等について記載の粒度や活用実績等を踏まえ、令和4年(2022 年)夏までに標準仕様書の見直しを行う。
介護保険、障害者福祉に係る業務支援システムは、令和3年(2021 年)夏までに標準仕様書を作成する。
児童扶養手当、生活保護、後期高齢者医療、国民年金、健康管理に係る業務支援システムについても、令和4年(2022 年)夏までに標準仕様書を作成する。
エ 教育
就学に係る学齢簿作成、就学援助認定等のシステムは、令和3年(2021 年)夏までに標準仕様書を作成する。
オ 児童手当、子ども・子育て支援
児童手当、子ども・子育て支援に係る業務支援システムについては、令和4年(2022年)夏までに標準仕様書を作成する。
④ 統一・標準化を進めるための支援
ア 財政支援
目標時期である令和7年度(2025 年度)までにガバメントクラウド上で基準に適合した情報システムを利用する形態に移行することを目指すため、デジタル庁は、令和2年度(2020 年度)第3次補正予算により地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に造成された基金の執行について、情報システム整備方針に基づき、総務省を通じて適切に統括・監理を行う。
イ その他の支援
統一・標準化の推進に当たり、デジタル庁は、「デジタル改革共創プラットフォーム」を活用し地方公共団体と対話を行う。また、総務省は、実務を担う専門職員が不足する小規模自治体のためにも、令和3年(2021 年)夏を目途として、取組の具体的内容を盛り込んだ手順書を作成した上で、地方公共団体に提示する。また、各地方公共団体が当該手順書を踏まえて市町村の標準準拠システムへの円滑な移行を行えるよう、関係省庁・都道府県とも連携して市町村の進捗管理等の支援を行う。
加えて、デジタル庁及び総務省は、都道府県と連携して、複数市町村での兼務を含め、デジタル人材の CIO 補佐官等としての任用等が推進されるように支援の仕組みを構築する。また、地方公共団体職員との対話や研修、人事交流等を通じて地方公共団体のデジタル人材育成に寄与する。
(4)ID・認証
デジタル社会の形成には、高度情報通信ネットワークを利用して、電磁的記録に記録された多様かつ大量の情報を効率的かつ安全・安心に活用することが不可欠である。
デジタル社会では、高度情報通信ネットワークを通じて流通する情報の発信者の真正性や、情報そのものの真正性、完全性等を保証するための機能が提供されることが必要であるため、前述のマイナンバーカードの普及に加え、電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書、法人共通認証基盤(GビズID)の普及に関する取組を更に強力に推進するとともに、確実な本人認証を実現するための技術動向を注視していく。
また、「行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドライン」に基づき、行政手続の特性に応じた本人確認手法の適正化を図る。
① 電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書の普及
電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書については、今後、活用の機会が増加し、多様化すると考えられることから、普及を更に強力に推進する。
商業登記電子証明書について、法人の本人確認をデジタル完結させる手段として一般的に利用されるよう広報活動を行う。令和3年度(2021 年度)中に、利便性の向上策や無償化の可否を検討する。あわせて、クラウド化に向けた検討を行う。また、費用対効果も踏まえつつ、令和7年度(2025 年度)までの可能な限り早期に新規システムの運用開始を目指す。
② 法人共通認証基盤(GビズID)の普及
法人及び事業を行う個人(個人事業主)が、様々な行政サービスにログインできる認証サービスを実現するため、法人の認証としてはGビズIDの普及と利用の拡大を図る。特に中小企業の手続負担軽減のための取組として、令和4年度(2022 年度)中を目途に100万法人の取得を目指すとともに、令和7年度(2025 年度)にはほぼ全ての法人が取得する環境を目指し、中小企業施策のデジタル化に貢献する。
また、事業を行う個人(個人事業主)の認証としては令和4年度(2022 年度)よりマイナンバーカード及びその機能のスマートフォン搭載による認証を可能とし、令和5年度(2023 年度)以降これに一本化することを目指すこととし、これら認証の仕組みに関して、デジタル庁による統括・監理を通じて政府情報システムにおける積極的な利用を推進する。
③ マイナンバーカードの機能(電子証明書)のスマートフォンへの搭載の実現
マイナンバーカードの機能(電子証明書)のスマートフォンへの搭載については、令和3年度(2021 年度)末までに技術検証・システム設計を行い、令和4年度(2022 年度)中の実現を目指す。
公的個人認証だけでなく、券面入力補助機能など、マイナンバーカードの持つ他の機能についても、優れたUI・UX を目指し、スマートフォンへの搭載方法を検討する。
④ レベルに応じた認証の推進
マイナンバーカードは、IC チップの空き領域にアプリケーションを搭載することで、認証手段として活用することが可能であり、民間企業も認証レベルに応じて方法を選択し、活用すること等が可能であるため、次の取組を行う。
ア 民間事業者への周知・相談支援の強化
マイナンバーカードの普及等に伴い、利用のインセンティブが大きく高まる民間事業者への周知・相談支援を強化する。
イ 利用要件・利用手続等の改善
民間事業者の視点に立ち、利用要件・利用手続等の継続的な改善を実施する。
⑤ 民間ID とマイナンバーカード電子証明書との紐づけの推奨
外部有識者から構成される検討会において、マイナンバーカードの公的個人認証サービスに紐付いた民間事業者のID の利活用に関する課題と対応を整理する。
⑥ 生体認証等の暗証番号に依存しない認証の仕組みの検討
マイナンバーカードの署名用電子証明書については、専用アプリにより、顔認証技術を活用した暗証番号の初期化・再設定手続をコンビニエンスストアで行うことができるようにする。システム整備を進め、令和3年(2021 年)秋頃のサービス開始を目指す。
スマートフォンに搭載される電子証明書の利用に当たり、暗証番号によらずに生体認証を活用する方策の課題を整理し、実現に向けた検討を進める。
⑦ eKYC 等を用いた民間取引等における本人確認手法の普及促進
デジタル空間での安心・安全な民間の取引等において必要となる本人確認について、公的個人認証サービス(JPKI)の利用に加え、安全性や信頼性等に配慮しつつ、具体的な課題と方向性を整理し、簡便な手法の一つであるeKYC (electric Know Your Customer) 等を用いた本人確認手法の普及を促進する。
(5)データセンターの最適化の実現
政府等が利用するデータセンターについては、各府省庁等がそれぞれ独自のオンプレミスシステムを整備・管理している現状から脱し、デジタル庁が中心となって、用途に応じた適切なクラウドサービスを活用するとともに、民間企業・サービスにおけるデータセンター活用も含め、再生可能エネルギーの利用等を通じた温室効果ガスの排出削減によりグリーン社会を実現する観点、災害等の緊急事態の発生時においても重要な国民向けサービス等の提供が滞ることがないようあらかじめ万全の備えを行う事業継続計画(BCP)の観点、サイバー攻撃等から国民生活や経済活動の基盤となる重要な情報資産等を守るセキュリティの確保の観点から、段階的にデータセンターの立地環境の最適化を図る。また、同時に、高度にセキュアで環境にも優しい分散型クラウド関連技術に関する研究開発を推進し、その成果を活用することで更なる高度化を図る。
(6)情報通信インフラの整備
新型コロナウイルスの感染拡大により外出が制限される緊急事態において、社会経済活動を維持するため、テレワークやオンライン授業などICT による遠隔対応に依存する状況が発生した。今後のニュー・ノーマルな世界においても、こうした遠隔対応が社会に根付いていくことが想定される。
また、今後デジタル社会を形成していく上でも、高度情報通信ネットワークはデータの活用に不可欠な基盤となるものであることから、広く国民の利便性の向上等を図るため、「ICTインフラ地域展開マスタープラン」等に基づき、第五世代移動通信システム(5G)や光ファイバといった高度情報通信ネットワークの整備・維持・充実を図っていく必要がある。
① 5G インフラの整備
5G 周波数の割り当てを受けた民間事業者の計画を合わせると、令和6年(2024 年)4月時点での基盤展開率は98%となり、全国の事業可能性のあるエリア(10km 四方メッシュ単位)のほぼ全てに5G が展開される予定である。
電波が遮へいされる鉄道や道路トンネル等でも携帯電話が利用できるよう対策を行うほか、地理的に条件不利な地域への5G エリア展開の支援等に取り組みつつ、令和5年度(2023 年度)末を目途に約28 万局(当初開設計画の4倍)以上の5G 基地局整備を目指す。
5G、ローカル5G の整備については、税制支援措置等により安全性やオープン性等を確保しつつ推進するほか、ローカル5G 開発実証を通じた5G のソリューションの創出に取り組みつつ、携帯電話事業者による5G のソリューションと併せて、多くの企業等において提供・利用しやすい仕組みの検討を行い、令和4年度(2022 年度)中にその試行を開始する。
② 5G と交通信号機との連携によるトラステッドネットの全国展開
これまでの検討や小規模実証実験の成果に基づき、令和3年度(2021 年度)は大規模実証実験等を実施し、交通信号機による5G トラステッドネットワークの在り方を提示する。
具体的には、社会実装を念頭に置いた制度・運用面の最終確認と態勢の構築、直近の利用が想定される交通管制アプリケーションにおける技術課題解決の確認、信号5G の将来的なアプリケーション活用を見据えた技術検証等に取り組む。
令和5年度(2023 年度)末までに、都市部3,000 か所及び郊外1,000 か所の交通信号機への5G 基地局整備を目指す。
③ 高速・大容量通信インフラの基盤としての光通信網の整備・維持等
高度無線環境の実現に向けて不可欠な伝送路設備等の整備については、令和2年(2020年)12 月に公表された「ICT インフラ地域展開マスタープラン3.0」に基づき、令和3年度(2021 年度)末までに光ファイバ未整備世帯を約17 万世帯に減少させるとともに、地方公共団体が保有する光ファイバの高度化の支援やブロードバンド基盤の担い手に関して「公」から「民」への移行の推進に取り組む。また、ブロードバンドのユニバーサルサービス化に向けた検討を行い、令和3年(2021 年)夏頃に取りまとめるとともに、その結果を踏まえ、所要の措置を講じる。
④ 安全・安心で信頼できる通信インフラの確保の推進
電気通信事故の検証等を通じて、電気通信事業者等と連携し、大規模災害の発生時等においても、安全・安心で信頼できる通信インフラの構築・運用等を推進する。
⑤ Beyond 5G に向けた検討
Beyond 5G の早期かつ円滑な導入と我が国の国際競争力強化に向けて令和2年(2020年)6月に策定した「Beyond 5G 推進戦略」に基づき、「Beyond 5G 推進コンソーシアム」及び「Beyond 5G 新経営戦略センター」を活用して、産学官が連携して、研究開発戦略、知財・標準化戦略及び展開戦略を強力かつ積極的に推進する。
令和12 年(2030 年)頃からのBeyond 5G 展開に向け、最初の5年を「先行的取組フェーズ」と位置づけ、我が国の強みを最大限活かした集中的取組を実施する。
令和7年(2025 年)に開催される大阪・関西万博の機会に「Beyond 5G ready ショーケース」として成果を世界に示し、その後のグローバル展開を加速する。