最近、「EBPM」という言葉をよく耳にするようになりました。EBPMとは一体何なのか、そして、なぜ注目されているのかについて、今回は解説していきたいと思います。
Table of Contents
1. EBPMとは?
EBPMは、「Evidence-Based Policy Making」の略で、日本語では「証拠に基づく政策」と訳されます。政策を立案したり、効果を検証したりするときに、客観的なデータや研究成果を活用する考え方です。
EBPMでは、まず、政策の対象となる課題の現状を把握し、その課題を解決するためにどのような政策を実施すればよいかを検討します。その際に、これまでの研究や実証データなどを参考にすることで、政策の有効性や効果を高めることができます。
EBPMのメリット
EBPMを活用することで、以下のメリットが期待できます。
政策の成果が上がる可能性が高まる
EBPMでは、客観的なデータや研究成果を活用することで、政策の有効性を高めることができます。例えば、ある政策の効果を検証する際に、過去の研究や実証データなどを参考にすることで、政策の効果をより正確に評価することができます。
政策の透明性や説明責任が向上する
EBPMでは、政策の立案や効果検証の過程で、客観的なデータや研究成果を活用します。そのため、政策の根拠を明確に示すことができ、政策の透明性や説明責任を向上させることができます。
資源の無駄をなくせる
EBPMでは、政策の対象となる課題の現状を把握し、その課題を解決するために必要な政策を検討します。そのため、効果のない政策を実施するリスクを減らし、資源の無駄をなくすことができます。
2. ロジックモデルとは?
EBPMを効果的に進めるためには、ロジックモデルを活用することが重要です。ロジックモデルとは、政策の目的や目標、手段、成果などを図式化したものです。
ロジックモデルは、以下の4つの要素から構成されています。
現状把握:政策の対象となる課題の現状を把握する
目標設定:政策の成果目標を決める
活動計画:政策を実現するための活動計画を立てる
成果評価:政策の効果を評価する
ロジックモデルを活用することで、EBPMをより効果的に進めることができます。
政策立案の段階では、政策の目的や目標を明確にし、実現可能性を検証するために活用されます。例えば、ロジックモデルを用いて政策の成果目標を設定することで、政策の効果をより具体的にイメージしやすくなります。
政策実施の段階では、政策の進捗状況を把握し、必要な調整を行うために活用されます。例えば、ロジックモデルを用いて政策の進捗状況を可視化することで、政策の目的や目標からズレが生じていないかを把握しやすくなります。
政策評価の段階では、政策の効果を検証するために活用されます。例えば、ロジックモデルを用いて政策の効果を測定する指標を設定することで、政策の効果をより客観的に評価しやすくなります。
3. EBPMの進め方
EBPMの進め方は、以下の7つのステップに分けることができます。
ステップ1:問題の把握
まず、政策の対象となる課題の現状を把握します。課題の種類や規模、原因などを分析することで、課題の解決に必要な政策を検討するための基礎情報を得ることができます。
ステップ2:目標の設定
問題の把握を踏まえて、政策の成果目標を設定します。目標は、具体的で、測定可能で、達成可能な、かつ、関連性のあるものである必要があります。
ステップ3:方法の検討
目標を達成するために、どのような政策手段を活用すればよいかを検討します。政策手段には、法律や規制、財政政策、行政サービスなど、さまざまなものがあります。
ステップ4:データの収集・分析
政策の効果を検証するために、必要なデータを収集・分析します。データには、統計データやアンケートデータ、実験データなど、さまざまなものがあります。
ステップ5:政策立案
ステップ1~4の成果を踏まえて、政策を立案します。政策は、目標を達成するために有効で、実現可能性があり、かつ、費用対効果の高いものである必要があります。
ステップ6:政策実施
政策を実際に実施します。実施にあたっては、政策の目的や目標、対象者などを明確に伝え、関係者との連携を図ることが重要です。
ステップ7:政策の効果検証
政策の効果を検証します。効果検証には、主に、以下の2つの方法があります。
事後評価:政策を実施した後に、その効果を評価する方法
実験研究:政策を実施するグループと実施しないグループを比較して、効果を評価する方法
4. EBPMを効果的に進めるには
EBPMを効果的に進めるためには、以下の3つのポイントに留意する必要があります。
4-1. データの質と量
EBPMでは、政策の効果を検証するために、データの収集・分析が重要です。そのため、データの質と量を確保する必要があります。
データの質を確保するためには、信頼性の高いデータ源からデータを収集する必要があります。また、データの収集方法や分析方法にも注意が必要です。
データの量を確保するためには、さまざまな視点からデータを収集する必要があります。また、データの収集・分析に十分な時間をかける必要があります。
4-2. 関係者との連携
EBPMでは、政策の立案・実施・評価に、さまざまな関係者が関わります。そのため、関係者との連携が重要です。
関係者との連携を円滑に進めるためには、政策の目的や目標を明確に伝えることが重要です。また、関係者の意見を十分に尊重する必要があります。
4-3. 柔軟な対応
EBPMでは、政策の効果は、社会情勢や環境の変化によって変化する可能性があります。そのため、柔軟な対応が重要です。
柔軟な対応を可能にするために、政策の効果を継続的にモニタリングする必要があります。また、必要に応じて政策を修正・改善していく必要があります。
4-4. その他の具体的な取り組み
EBPMを効果的に進めるためには、具体的な取り組みも必要です。以下に、いくつかの例を挙げます。
データインフラの整備
データインフラとは、データの収集・分析に必要な設備やシステムのことです。データインフラを整備することで、データの収集・分析を効率的かつ効果的に行うことができます。また、データの質や量を向上させることができます。
具体的には、以下の取り組みが挙げられます。
- データの収集・分析に必要なシステムの導入
- データの収集・分析に必要な人材の育成
- データの収集・分析に関するガイドラインの策定
関係者協議会の設置
関係者協議会とは、政策の立案・実施・評価に関係するさまざまな主体が参加する会議のことです。関係者協議会を設置することで、関係者間のコミュニケーションを円滑にし、政策の合意形成を図ることができます。
効果検証の専門家育成
効果検証の専門家とは、政策の効果を評価するための知識やスキルを有する人のことです。効果検証の専門家を育成することで、政策の効果をより正確に評価することができます。
具体的には、以下の取り組みが挙げられます。
効果検証に関する教育・研修の実施
効果検証に関する研究・開発の支援
5. まとめ
EBPMは、政策の質を高めるために有効な考え方です。ロジックモデルを活用することで、EBPMをより効果的に進めることができます。
繰り返しになりますが、EBPMを活用することで、以下のメリットが期待できます。
- 政策の成果が上がる可能性が高まる
- 政策の透明性や説明責任が向上する
- 資源の無駄をなくせる
EBPMは、今後ますます重要度を増していくと考えられます。ぜひ、この機会にEBPMについて理解を深めてみてください。