ビジネス全般

経済財政運営と改革の基本方針2022

新しい資本主義へ

~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~

令和4年6月7日

目次

第1章 我が国を取り巻く環境変化と日本経済

1. 国際情勢の変化と社会課題の解決に向けて

我々はこれまでの延長線上にない世界を生きている。世界を一変させた新型コロナウイルス感染症、力による一方的な現状変更という国際秩序の根幹を揺るがすロシアのウクライナ侵略、権威主義的国家による民主主義・自由主義への挑戦、一刻の猶予も許さない気候変動問題など我が国を取り巻く環境に地殻変動とも言うべき構造変化が生じるとともに、国内においては、回復の足取りが依然脆弱な中での輸入資源価格高騰による海外への所得流出、コロナ禍で更に進む人口減少・少子高齢化、潜在成長率の停滞、災害の頻発化・激甚化など、内外の難局が同時に、そして複合的に押し寄せている。

我々に求められるのは、この難局を単に乗り越えるだけでなく、こうした社会課題の解決に向けた取組それ自体を付加価値創造の源泉として成長戦略に位置付け、官民が協働して重点的な投資と規制・制度改革を中長期的かつ計画的に実施することにより、課題解決と経済成長を同時に実現しながら、経済社会の構造を変化に対してより強靱で持続可能なものに変革する「新しい資本主義」を起動することである。こうして我々自身の資本主義をバージョンアップすることにより、自由で公正な経済体制を一層強化していく。

このため、本「経済財政運営と改革の基本方針2022」においては、

  • 当面の難局を乗り越えるためのマクロ経済運営の方針を示すとともに、
  • 成長と分配をともに高める「人への投資」を始め、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資を柱とする「新しい資本主義」の実現に向けた重点投資分野についての官民連携投資の基本方針を示す。
  • あわせて、新しい資本主義が目指す民間の力を活用した社会課題解決に向けた取組や多様性に富んだ包摂社会の実現、一極集中から多極化した社会をつくり地域を活性化する改革の方向性を示す。
  • さらに、世界に開かれた貿易・投資立国であることをこれからも維持しつつ、厳しさを増す東アジア情勢や権威主義的国家の台頭など国際環境の変化に応じた戦略的な外交・安全保障や同志国との連携強化、経済安全保障等についての方向性を示す。
  • また、強靱で持続可能な経済社会に向けた防災・減災、国土強靱化の推進や東日本大震災等からの復興、国民生活の安全・安心に向けた基本的な方針を示していく。
  • その上で、これらの政策遂行の基盤となる強固で持続可能な経済・財政・社会保障制度の構築に向けた経済・財政一体改革の取組方針を示し、短期と中長期の整合性を確保した経済財政運営の方針と令和5年度予算編成の考え方を提示する。

2. 短期と中長期の経済財政運営

(1)コロナ禍からの回復とウクライナ情勢の下でのマクロ経済運営

(当面のマクロ経済運営)

我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による強い下押し圧力を受けながらも、持ち直しの動きを続けてきた。この間、医療提供体制の強化やワクチン接種の加速など経済社会活動回復のための環境整備を行うとともに、あらゆる政策を総動員して国民の所得や雇用を下支えし、特に、厳しい影響を受けた方々や事業者に対する金融措置を含む万全の支援を行うことにより、新型コロナウイルス感染症の影響から国民生活を守り、ポストコロナの持続的な成長に向けた基盤整備を進めてきた。その中で生じたのが本年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻である。

国際商品・金融市場を始め世界経済の不確実性が大きく増す中、我が国のマクロ経済運営については、当面、2段階のアプローチで万全の対応を行う。コロナ禍からの回復が依然として脆弱であることに鑑み、まずは、ウクライナ情勢に伴う原油・原材料、穀物等の国際価格の高騰や希少物資の供給懸念等に対する緊急対策(コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」令和4年4月26日)を講ずることにより、コロナ禍で傷んでいる国民生活や経済への更なる打撃をできる限り抑制し、厳しい状況にある方々を全力で支援する。これにより、経済の腰折れを防ぎ、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしていく。

また、今後も感染症の再拡大やウクライナ情勢の長期化に伴う原油価格・物価の更なる高騰の可能性など予断を許さない状況は続くと見込まれることから、予備費の活用等により予期せぬ財政需要にも迅速に対応して国民の安心を確保する。

その上で、第2段階として、本基本方針や新しい資本主義に向けたグランドデザインと実行計画をジャンプスタートさせるための総合的な方策を早急に具体化し、実行に移す。

これにより、中長期的な課題に対応しつつ、コロナ禍で失われた経済活動のダイナミズムを取り戻し、新陳代謝と多様性に満ちた裾野の広い経済成長と成長の果実が隅々まで行き渡る「成長と分配の好循環」を早期に実現する。あわせて、国際的な人の往来や観光需要の回復、対日直接投資の更なる推進等を通じて旺盛な海外需要を日本経済に取り込む。また、エネルギー分野を始め国際環境の変化にも強靱な経済構造に向けた改革を進め、世界の構造変化を日本がリードしていく。

今後とも、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める経済財政運営の枠組みを堅持し、民需主導の自律的な成長とデフレからの脱却に向け、経済状況等を注視し、躊躇なく機動的なマクロ経済運営を行っていく。日本銀行においては、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。

(経済社会活動の正常化に向けた感染症対策)

新型コロナウイルス感染症対策については、必要な財政支援や見える化等により医療提供体制の強化を進めるとともに、感染状況や変異株の発生動向に細心の注意を払いつつ、段階的な見直しを行い、一日も早い経済社会活動の正常化を目指す。

医療提供体制の強化について、国立病院機構等の公立公的病院に法律に基づく要求・要請を行うことによる新型コロナウイルス感染症の専用病床化とともに、個別の病院名を明らかにした病床の確保を行いつつ、感染拡大時には即応病床の増床や病床の使用率向上により、入院を必要とする者がまずは迅速に病床又は臨時の医療施設等に受け入れられ、確実に入院につなげる体制を整備する。

感染拡大時に臨時の医療施設等が円滑に稼働できるよう、都道府県ごとに医療人材派遣の協力可能な医療機関数や派遣者数を具体化するほか、公立公的病院においても都道府県に設置する臨時の医療施設等に医療人材を派遣する。

医療DXを推進し、医療情報の基盤を整備するとともに、G-MISやレセプトデータ等を活用し、病床確保や使用率、オンライン診療実績など医療体制の稼働状況の徹底的な「見える化」を進める。

ワクチン、検査、経口治療薬の普及等により、予防、発見から早期治療までの流れを強化して新型コロナウイルス感染症の脅威を社会全体として可能な限り引き下げる。マイナンバーカードを使ったワクチン接種証明書のデジタル化等により、入国時での効率的なワクチン接種履歴の確認など円滑な確認体制を進める。

国際的な人の往来の活発化に向け、感染拡大防止と経済社会活動のバランスを取りながら、他のG7諸国並みの円滑な入国を可能とする水際措置の見直しなど水際対策の緩和を進める。また、新たな変異株が発生する場合にはこれに機動的に対処する。

新型コロナウイルス感染症に関する罹患後症状(いわゆる後遺症)についての実態把握や病態解明等に資する調査・研究を進める。

その上で、これまでの新型コロナウイルス感染症対応を客観的に評価し、次の感染症危機に備えて、本年6月を目途に、危機に迅速・的確に対応するための司令塔機能の強化や感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の在り方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応を取りまとめる。

(2)中長期の経済財政運営

持続的な経済成長に向けて、官民連携による計画的な重点投資を推進する。これによる民間企業投資の喚起と継続的な所得上昇により成長力を高めつつ需要創出を促すとともに、今後の成長分野への労働移動を円滑に促す。また、省エネ・脱炭素を通じた国内所得の海外流出の抑制や同じ価値観を共有する国々との協力関係の強化を通じて、比較優位のメリットをこれまで以上に引き出すとともに国内投資を喚起する。さらには、インバウンドの再生、農林水産物・食品や中小企業の輸出振興といった取組を強化し、産業の構造変化を促す。

その際、危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期す。経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない。経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組む。

第2章 新しい資本主義に向けた改革

1.新しい資本主義に向けた重点投資分野

(1)人への投資と分配

デジタル化や脱炭素化という大きな変革の波の中、人口減少に伴う労働力不足にも直面する我が国において、創造性を発揮して付加価値を生み出していく原動力は「人」である。

自律的な経済成長の実現には、民間投資を喚起して生産性を向上することで収益・所得を大きく増やすだけでなく、「人への投資」を拡大することにより、次なる成長の機会を生み出すことが不可欠である。「人への投資」は、新しい資本主義に向けて計画的な重点投資を行う科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXに共通する基盤への中核的な投資であるとも言える。

こうした考えの下、働く人への分配を強化する賃上げを推進するとともに、職業訓練、生涯教育等への投資により人的資本の蓄積を加速させる。あわせて、多様な人材の一人一人が持つ潜在力を十分に発揮できるよう、年齢や性別、正規雇用・非正規雇用といった雇用形態にかかわらず、能力開発やセーフティネットを利用でき、自分の意思で仕事を選択可能で、個々の希望に応じて多様な働き方を選択できる環境整備を進める。

(人的資本投資)

成長分野における重点投資等を通じた質の高い雇用の拡大を図りつつ、「人への投資」を抜本的に強化するため、2024 年度までの3年間に、一般の方から募集したアイデアを踏まえた、4,000 億円規模の予算を投入する施策パッケージを講じ、働く人が自らの意思でスキルアップし、デジタルなど成長分野へ移動できるよう強力に支援する。

企業統治改革を進め、人的投資が企業の持続的な価値創造の基盤である点について株主との共通の理解を作り、今年中に非財務情報の開示ルールを策定するとともに、四半期開示の見直しを行う。男女の賃金格差の是正に向けて企業の開示ルールの見直しにも取り組む。また、政府からの特に大規模な支援を受ける際には、人的資本投資などを通じ、中長期的な価値創造にコミットすることを企業に求める。

あわせて、社会全体で学び直し(リカレント教育)を促進するための環境を整備する(「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」令和4年5月10 日)。

学び直しによる成果の可視化と適切な評価、学び直し成果を活用したキャリアアップや兼業・副業の促進、学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境整備、成長分野のニーズに応じたプログラムの開発支援や学び直しの産学官の対話、企業におけるリカレント教育による人材育成の強化等の取組を進める。

以上の人的投資に取り組む中で、雇用調整助成金の特例措置等については、引き続き、感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら段階的に縮減していく一方で、人への投資や強力な就職支援を通じて円滑な労働移動を図り、成長分野等における労働需要に対応する。あわせて、同一労働同一賃金の徹底等を通じた非正規雇用労働者の処遇改善や正規化に取り組む。

少子化対策・こども政策は、包摂社会の実現に向けて重要であるだけでなく、「人への投資」としても重要であり、強力に進める。

(多様な働き方の推進)

人的資本投資の取組とともに、働く人のエンゲージメントと生産性を高めていくことを目指して働き方改革を進め、働く人の個々のニーズに基づいてジョブ型の雇用形態を始め多様な働き方を選択でき、活躍できる環境の整備に取り組む。

こうした観点から、就業場所・業務の変更の範囲の明示など、労働契約関係の明確化に取り組む。専門知識・技能を持った新卒学生や既卒数年程度の若者について、より一層活躍できるようにする観点から、その就職・採用方法を産・学と共に検討し、年度内を目途に一定の方向性を得る。裁量労働制を含めた労働時間制度の在り方について、裁量労働制の実態調査の結果やデジタル化による働き方の変化等を踏まえ、更なる検討を進める。フリーランスについて、事業者がフリーランスと取引する際の契約の明確化を図る法整備や相談体制の充実など、フリーランスが安心して働ける環境を整備する。

ポストコロナの「新しい日常」に対応した多様な働き方の普及を図るため、時間や場所を有効に活用できる良質なテレワークを促進する。労働移動の円滑化も視野に入れながら、労働者の職業選択の幅を広げ、多様なキャリア形成を促進する観点から副業・兼業を推進するほか、選択的週休3日制度については、子育て、介護等での活用、地方兼業での活用が考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促進し、普及を図る。また、地域に貢献しながら多様な就労の機会を創る労働者協同組合についてNPO等からの円滑な移行等を図る。

国家公務員について、既存業務の廃止・効率化、職場のデジタル環境整備、勤務形態の柔軟化などを通じた働き方改革を一層推進するとともに、採用試験の受験者拡大やデジタル人材を含めた中途採用の円滑化、リスキリングなど人材の確保・育成策に戦略的に取り組む。

(質の高い教育の実現)

人への投資を通じた「成長と分配の好循環」を教育・人材育成においても実現し、「新しい資本主義」の実現に資するため、デジタル化に対応したイノベーション人材の育成等、大学、高等専門学校、専門学校等の社会の変化への対応を加速する。このため、教育未来創造会議の第一次提言等に基づき、以下の課題について、必要な取組を速やかに進める。

新たな時代に対応する学びの支援の充実を図る。このため、恒久的な財源も念頭に置きつつ、給付型奨学金と授業料減免を、必要性の高い多子世帯や理工農系の学生等の中間層へ拡大する。また、減額返還制度を見直すほか、在学中は授業料を徴収せず卒業後の所得に応じて納付を可能とする新たな制度を、教育費を親・子供本人・国がどのように負担すべきかという論点や本制度の国民的な理解・受け入れ可能性を十分に考慮した上で、授業料無償化の対象となっていない学生について、安定的な財源を確保しつつ本格導入することに向け検討することとし、まずは大学院段階において導入することにより、ライフイベントも踏まえた柔軟な返還・納付(出世払い)の仕組みの創設を行う。官民共同修学支援プログラムの創設、地方自治体や企業による奨学金返還支援の促進等、若者を始め誰もが、家庭の経済事情にかかわらず学ぶことができる環境の整備を進める。

未来を支える人材を育む大学等の機能強化を図る。このため、デジタル・グリーンなど成長分野への大学等の再編促進と産学官連携強化等に向け、複数年度にわたり予見可能性をもって再編に取り組める支援の検討や、私学助成のメリハリ付けの活用を始め、必要な仕組みの構築等を進めていく。その際、現在35%にとどまっている自然科学(理系)分野の学問を専攻する学生の割合についてOECD諸国で最も高い水準である5割程度を目指すなど具体的な目標を設定し、今後5~10 年程度の期間に集中的に意欲ある大学の主体性をいかした取組を推進する。また、あらゆる分野の知見を総合的に活用し社会課題への的確な対応を図る「総合知」の創出・活用を目指し、専門性を大事にしつつも、文理横断的な大学入学者選抜や学びへの転換を進め、文系・理系の枠を超えた人材育成を加速する。

若手研究者と企業との共同研究を通じた人材育成等により大学院教育を強化する。

(賃上げ・最低賃金)

今年は、ここ数年低下してきた賃上げ率を反転させたが、ウクライナ情勢も相まって物価が上昇している。こうした中、賃上げの流れをサプライチェーン内の適切な分配を通じて中小企業に広げ、全国各地での賃上げ機運の一層の拡大を図る。

このため、中堅・中小企業の活力向上につながる事業再構築・生産性向上等の支援を通じて賃上げの原資となる付加価値の増大を図るとともに、適切な価格転嫁が行われる環境の整備に取り組むほか、抜本的に拡充した賃上げ促進税制の活用促進、賃上げを行った企業からの優先的な政府調達等に取り組み、地域の中小企業も含めた賃上げを推進する。

新しい資本主義実現会議において、価格転嫁や多様な働き方の在り方について合意づくりを進めるとともに、データ・エビデンスを基に、適正な賃金引上げの在り方について検討を行う。

また、人への投資のためにも最低賃金の引上げは重要な政策決定事項である。最低賃金の引上げの環境整備を一層進めるためにも事業再構築・生産性向上に取り組む中小企業へのきめ細やかな支援や取引適正化等に取り組みつつ、景気や物価動向を踏まえ、地域間格差にも配慮しながら、できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000 円以上となることを目指し、引上げに取り組む。こうした考えの下、最低賃金について、官民が協力して引上げを図るとともに、その引上げ額については、公労使三者構成の最低賃金審議会で、生計費、賃金、賃金支払能力を考慮し、しっかり議論する。

(「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」)

我が国の個人金融資産2,000 兆円のうち、その半分以上が預金・現金で保有されている。

投資による資産所得倍増を目指して、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や、高齢者に向けたiDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進める。これらを含めて、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定する。その際、家計の安定的な資産形成に向けて、金融リテラシーの向上に取り組むとともに、家計がより適切に金融商品の選択を行えるよう、将来受給可能な年金額等の見える化、デジタルツールも活用した情報提供の充実や金融商品取引業者等による適切な助言や勧誘・説明を促すための制度整備を図る。

(2)科学技術・イノベーションへの投資

社会課題を経済成長のエンジンへと押し上げていくためには、科学技術・イノベーションの力が不可欠である。特に、量子、AI、バイオものづくり、再生・細胞医療・遺伝子治療等のバイオテクノロジー・医療分野は我が国の国益に直結する科学技術分野である。

このため、国が国家戦略を明示し、官民が連携して科学技術投資の抜本拡充を図り、科学技術立国を再興する。その上で、研究開発投資を増加する企業に対しては、インセンティブを付与していく。あわせて、総理に対する情報提供・助言のため、総理官邸に科学技術顧問を設置する。小型衛星コンステレーションの構築、ロケットの打上げ能力の強化、日本人の月面着陸等の月・火星探査等の宇宙分野、北極を含む海洋分野の取組の強化を図る。

イノベーション創出の拠点である大学の抜本強化を図る。世界と伍する研究大学の実現に向け、競争的な環境の下で大学ファンドから支援を受ける国際卓越研究大学の持続的なイノベーション創出と自律化に資するよう、専門人材の経営参画等のガバナンス体制を確立するとともに、必要な規制改革等の対応を早期に実行していく。地域の中核大学等が、特色ある強みを発揮し、地域の経済社会の発展等への貢献を通じて切磋琢磨できるよう、産学官連携など戦略的経営の抜本強化を図る(「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」令和4年2月1日)。

イノベーションの担い手である若い人材に対する支援を強力に推進する。博士課程学生の処遇向上を始め、未来ある研究者の卵たちにキャリアパス全体として魅力的な展望を与え、研究に専念できる支援策を深化させる。寄附に基づく「トビタテ!留学JAPAN」の発展的推進を含め、若者の世界での活躍を支援し、コロナ禍で停滞した国際頭脳循環の活性化に取り組む。

(3)スタートアップ(新規創業)への投資

スタートアップは、経済成長の原動力であるイノベーションを生み出すとともに、環境問題や子育て問題などの社会課題の解決にも貢献しうる、新しい資本主義の担い手である。こうしたスタートアップが新たに生まれ、飛躍を遂げることができる環境を整備することにより、戦後の日本の創業期に次ぐ「第二創業期」の実現を目指す。このため、実行のための司令塔機能を明確化し、5年10 倍増を視野にスタートアップ育成5か年計画を本年末に策定し、スタートアップ政策を大胆に展開する。

具体的には、スタートアップが直面する資金調達の困難さの解消を図るため、新規上場の際に十分な資金調達を行うことを可能にすべくIPO(Initial Public Offering)プロセスの見直しを進めるとともに、事業化までに時間を要するスタートアップの成長を図るためのストックオプション等の環境整備を行う。また、海外のベンチャーキャピタルの誘致も含めて、国内外のベンチャーキャピタルに対する公的資本の有限責任投資等による投資拡大を図るとともに、エンジェル投資家等の個人や年金・保険等の長期運用資金がベンチャーキャピタルやスタートアップに循環する流れの形成に取り組む。加えて、個人保証や不動産担保に依存しない形の融資への見直しや事業全体を担保とした成長資金の調達を可能とする仕組みづくり等を通じて、成長資金の調達環境を整備する。

あわせて、起業を支える人材の育成や確保を行う。具体的には、成長分野において前人未踏の優れたアイデア・技術を持つ人材に対する支援策を抜本的に拡充するとともに、家庭や学校とは別に子供の才能を発掘・育成する場の整備を支援する。情報開示等を通じた副業・兼業の促進等により円滑な労働移動を図るほか、大学等の研究者と外部経営人材とのマッチングを支援する。また、スタートアップの経営を支援する専門家等の相談窓口整備を推進する。

スタートアップの研究開発や販路開拓を支援するため、既存企業がM&Aや共同研究開発等によりスタートアップの有する知見を取り入れるオープンイノベーションの活性化を図るとともに、SBIR(Small Business Innovation Research)制度の強化を始めとし、公共調達の活用を推進する。ベンチャーキャピタルとも連携した支援の拡充や創薬ベンチャーへの支援の強化を行うほか、革新技術の研究開発とスタートアップ創出を行う拠点づくりを海外の大学等とも連携し、民間資金を基盤として運営される形で進める。

以上のほか、起業拠点の整備を含めて大学等も存分に活用しつつ、知的財産の保護・活用の推進、規制・制度改革等を通じて世界に伍するスタートアップエコシステムを作り上げ、大規模なスタートアップの創出に取り組む。

(4)グリーントランスフォーメーション(GX)への投資

脱炭素社会の実現に向けた官民連携の取組を一気に加速し、エネルギー安全保障の確保に万全を期しながら、国内投資を拡大しつつ新たな成長のフロンティアを開拓する。2050年カーボンニュートラル実現を見据え、官民連携の下、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への道筋の大枠を示したクリーンエネルギー戦略中間整理に基づき、年内にロードマップを取りまとめる。

今後10 年間に150 兆円超の投資を実現するため、成長促進と排出抑制・吸収を共に最大化する効果を持った、「成長志向型カーボンプライシング構想」を具体化し、最大限活用する。

同構想においては、150 兆円超の官民の投資を先導するために十分な規模の政府資金を、将来の財源の裏付けをもった「GX経済移行債(仮称)」により先行して調達し、複数年度にわたり予見可能な形で、速やかに投資支援に回していくことと一体で検討していく。

また、「規制・支援一体型の投資促進策」として、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)などの規制対応、水素・アンモニアなどの新たなエネルギーや脱炭素電源の導入拡大に向け、新たなスキームを具体化させる。

加えて、企業の排出削減に向けた取組を加速させるためのGXリーグの段階的発展・活用、民間投資の呼び水として、トランジション・ファイナンスなどの新たな金融手法の活用、アジア・ゼロエミッション共同体などの国際展開戦略も含め、企業の投資の予見可能性を高められるよう、具体的なロードマップを示す。

こうした新たな政策イニシアティブの具体化に向けて、本年夏に総理官邸に新たに「GX実行会議」を設置し、更に議論を深め、速やかに結論を得る。

エネルギーを起点とした産業のGXに向け、脱炭素投資を後押しする重点的な環境整備を行う。自動車については、将来の合成燃料の内燃機関への利用も見据え、2035 年までに新車販売でいわゆる電動車(電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車及びハイブリッド自動車)100%とする目標等に向けて、蓄電池の大規模投資促進等や車両の購入支援、充電・充てんインフラの整備等による集中的な導入を図るとともに、中小サプライヤー等の業態転換を促す。再生可能エネルギーについては、S+3Eを大前提に、主力電源として最優先の原則の下で、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入に取り組むための大胆な改革を進めるほか、送配電網・電源への投資を着実に実施し、分散型エネルギーシステムなど真の地産地消にも取り組むよう促す。さらに、水素・アンモニアやCCUS/カーボンリサイクル、革新原子力、核融合などあらゆる選択肢を追求した研究開発・人材育成・産業基盤強化等を進める。また、カーボンニュートラルポート等の形成や持続可能な航空燃料(SAF)等を含む船舶・航空・陸上の輸送分野の脱炭素化を推進する。

産業のエネルギー需給構造転換に向け、省エネルギー対策を徹底しつつ、エネルギー多消費型産業における非化石エネルギーへの転換を含む低炭素化投資等を後押しする。

脱炭素分野で活躍する人材の育成や中小企業・地域金融に対する脱炭素経営の能力向上支援、資金供給等を通じ、地域の脱炭素トランジションに向けた投資を含め、地域脱炭素の加速化を図る。ライフスタイルの転換に向け、ポイント制度等を通じて消費者の意識・行動変容を促すほか、省エネルギー対策を含む規制的措置の強化や省エネ住宅の購入・改修支援を含めたZEH・ZEB等の取組を推進するとともに、森林吸収源対策等を加速化する。また、資源制約克服や自律性確保の観点も踏まえ、プラスチック資源循環を始め循環経済への移行を推進する。

これらのGXを実現するため、グリーンイノベーション基金による支援の拡充や規制改革、国際標準化など、社会システム・インフラ整備に取り組む。グリーンボンド等の環境関連商品が取引されるグリーン国際金融センターの実現を目指すほか、TCFD等に基づく開示の質と量の充実やトランジション及びイノベーションへの資金供給の支援を進めるなど、サステナブルファイナンス市場の拡大に向けた早急な環境整備を図り、国内外のESG金融を呼び込む。また、グリーンGDP(仮称)などの研究・整備を進める。

(5)デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資

デジタル時代に相応しい行政、規制・制度に見直すため、デジタル改革・規制改革・行政改革を一体的に推進する。今後3年間の集中改革期間において、「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」に基づく目視規制や常駐専任規制等の法令等の見直しなどを行い、デジタル原則への適合を目指す。また、自動運転車や空飛ぶクルマ、低速・小型の自動配送ロボットの活用を含む物流・人流分野のDXや標準化、MaaSの推進のほか、センサー、ドローン、AI診断、IoT技術、ビッグデータ分析など、あらゆる技術を活用するためのテクノロジーマップを整備し、実装を加速させる。さらに、法人設立時の手続の迅速化・費用軽減を含む規制改革を推進する。行政の無謬性にとらわれず、デジタル技術も活用し、予算編成プロセスなどでEBPMに基づく意思決定を推進するなど、より機動的で柔軟な政策形成・評価を可能とする取組を進める。加えて、ベンダーロックインなどの課題を解消するため、政府の情報システム調達の見直しに向けた検討を進める。

「サイバーセキュリティ戦略」に基づく取組を進める。また、携帯電話市場における、公正な競争環境の整備を進め、料金の低廉化を図る。さらに、準天頂衛星等の更なる整備や地理空間(G空間)情報の高度活用及び衛星データの利活用を図る。

我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与するデジタル社会の形成に向け、デジタル庁を中心に、政府全体で、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づき、デジタル3原則を基本原則としつつ、行政のデジタル化を着実に推進する。2022 年度末にほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指すとの方針の下、マイナンバーカードの利活用拡大等の国民の利便性を高める取組を推進するとともに
市町村における交付体制の強化に向けた支援を行うなど、適切な広報も含め、マイナンバーカードの普及に取り組む。

デジタル庁を中心に、デジタル社会の実現において不可欠なデータ基盤強化を図るため、「包括的データ戦略」に基づき、医療・介護、教育、インフラ、防災に係るデータ・プラットフォームを早期に整備する。

マイナポータルの利便性向上など、個人や法人の税務始め各種手続の負担軽減に向けた検討を進める。また、困窮世帯への迅速・的確な公的給付実現のためマイナンバーを用いるなど、給付事務等への活用を念頭に行政機関間の情報連携を推進する。

また、総務省は、「自治体DX推進計画」を改定し、デジタル人材の確保・ネットワーク強化やAI・RPA等のデジタル技術や自治体マイナポイントの活用など、国の取組と歩調を合わせた地方自治体におけるデジタル化の取組を推進する。

2.社会課題の解決に向けた取組

(1)民間による社会的価値の創造

(PPP/PFIの活用等による官民連携の推進)

民間の資金・ノウハウを公共施設等に活用するPPP/PFIについて、新しい資本主義の中核となる「新たな官民連携」の取組として、新たなアクションプランに基づき、取組を抜本的に強化する。今後5年間を、PPP/PFIが自律的に展開される基盤の形成に向けた「重点実行期間」とし、PFI推進機構の機能も活用・強化しつつ、関連施策を集中的に投入するとともに、幅広い自治体の取組を促す。その際、交付金等について、PPP/PFIの活用がより促進されるよう制度改善を検討する。

スタジアム・アリーナ、文化施設、交通ターミナル等へのコンセッション導入、指標連動方式も活用した道路等のインフラの維持管理・更新での案件形成等活用対象の拡大を図るとともに、水道、下水道、教育施設等の先行事例の横展開を強化する。

コロナ禍の経験等を踏まえ、リスク分担の検討等を進めつつ、原則として全ての空港へのコンセッション導入を促進する。

デジタル田園都市国家構想の推進力として活用し、地域交流の場である公園・公民館等の身近な施設への新しい活用モデルを形成するとともに、地域プラットフォームの全都道府県での設置促進、優先的検討規程の策定・運用支援、事業効果の見える化・情報発信等により、案件形成を強力に促進する。民間の創意工夫の一層の発揮に向け、提案者へのインセンティブ付与等民間提案制度の強化等に取り組む。

また、樹木採取権制度の活用を推進する。

(社会的インパクト投資、共助社会づくり)

「成長と分配の好循環」による新しい資本主義の実現に向け、これまで官の領域とされてきた社会課題の解決に、民の力を大いに発揮してもらい、資本主義のバージョンアップを図る。寄附文化やベンチャー・フィランソロフィーの促進など社会的起業家の支援強化を図る。

従来の「リスク」、「リターン」に加えて「インパクト」を測定し、「課題解決」を資本主義におけるもう一つの評価尺度としていく必要がある。また、社会課題の解決と経済成長の両立を目指す起業家が増えており、ソーシャルセクターの発展を支援する取組を通じて、その裾野を広げるとともに、更にステップアップを目指す起業家を後押しする。

こうした観点から、新たな官民連携の形として、民間で公的役割を担う新たな法人形態の必要性の有無について検討することとし、新しい資本主義実現会議に検討の場を設ける。

あわせて、民間にとっての利便性向上の観点から、財団・社団等の既存の法人形態の改革も検討する。休眠預金等活用法施行5年後の見直しに際し、これまでの取組について評価を行い、出資や貸付けの在り方、手法等の検討を進め、本年度中に結論を得るなど、必要な対応を行う。SIBを含む成果連動型民間委託契約方式(Pay For Success:PFS)を通じて、複雑化する社会課題の効率的、効果的解決を促進し、さらに、社会的インパクト投資資金を呼び込むための環境整備に取り組む。ソーシャルボンドについて、プロジェクトの実施による社会的な効果を適切に開示できるようにする。ガイドラインの整備を図り、社会課題ごとに、発行主体の参考となる指標の例を示す。起業家教育に当たっては、社会的起業家を育成するシステムの強化を検討する。

NPO法に基づく各種事務のオンライン化の促進を含め、NPO法人の活動促進に向けた環境整備を進めるとともに、官民連携による協働の促進を図る。

(イノベーションを促す競争環境の整備)

社会経済の急速な変化に対応し、イノベーションや企業の成長を促す競争環境を整備するため、公正取引委員会が取引慣行や規制により競争が働いていない分野を調査し、取引慣行の改善や規制の見直しを提言するアドボカシー(唱導)機能の強化を図る。

(2)包摂社会の実現

(少子化対策・こども政策)

少子化は予想を上回るペースで進む極めて危機的な状況にあり、児童虐待やいじめ、不登校等こどもを取り巻く状況も深刻で、待ったなしの課題である。このため、「こども家庭庁」を創設し、こども政策を推進する体制の強化を図り、常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・政策を我が国社会の真ん中に据えていく。

結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会を目指し、「希望出生率1.8」の実現に向け、「少子化社会対策大綱」等に基づき、結婚、妊娠・出産、子育てのライフステージに応じた総合的な取組の推進、結婚新生活立上げ時の経済的負担の軽減や出会いの機会・場の提供など地方自治体による結婚支援の取組に対する支援、妊娠前から妊娠・出産、子育て期にわたる切れ目ない支援の充実、「新子育て安心プラン」の着実な実施や病児保育サービスの推進等仕事と子育ての両立支援に取り組む。妊娠・出産支援として、不妊症・不育症支援やデジタル相談の活用を含む妊産婦支援・産後ケアの推進等に取り組むとともに、出産育児一時金の増額を始めとして、経済的負担の軽減についても議論を進める。流産・死産等を経験された方への支援に取り組む。養育費の支払い確保と安全・安心な親子の面会交流に向けた取組を推進する。児童手当法等改正法附則に基づく児童手当の在り方の検討に取り組む。

全てのこどもに、安全・安心に成長できる環境を提供するため、教育・保育施設等において働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入、予防のためのこどもの死亡検証(CDR)の検討、未就園児等の実態把握と保育所等の空き定員の活用等による支援の推進、SNS等の活用を含めこどもの意見を政策に反映する仕組みづくり、学校給食などを通じた食育の充実、放課後児童クラブやこども食堂等様々なこどもの居場所づくり等に取り組む。こどもの貧困解消や見守り強化を図るため、こども食堂のほか、こども宅食・フードバンク等への支援を推進する。

こどもの成長環境にかかわらず誰一人取り残すことなく健やかな成長を保障するため、児童虐待防止対策の更なる強化、ヤングケアラー、若年妊婦やひとり親世帯への支援、真に支援を要するこどもや家庭の早期発見・プッシュ型支援のためのデータ連携、医療的ケア児を含む障害児に対する支援、いじめ防止対策の推進等に取り組む。また、市町村における家庭支援機能の強化、里親支援の充実等家庭養育優先原則の徹底、社会的養育経験者等に対する自立支援の充実等改正児童福祉法の円滑な施行に取り組みつつ、認定資格の取得促進を含む児童相談所等の質・量の体制強化を推進する。

こども政策については、こどもの視点に立って、必要な政策を体系的に取りまとめた上で、その充実を図り、強力に進めていく。そのために必要な安定財源については、国民各層の理解を得ながら、社会全体での費用負担の在り方を含め幅広く検討を進める。その際には、こどもに負担を先送りすることのないよう、応能負担や歳入改革を通じて十分に安定的な財源を確保しつつ、有効性や優先順位を踏まえ、速やかに必要な支援策を講じていく。安定的な財源の確保にあたっては、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組みについても検討する。

(女性活躍)

「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」に基づき、「新しい資本主義」の中核に位置付けられた「女性の経済的自立」を実現するため、男女間の賃金格差の解消に向けて大企業に男女間の賃金格差の開示を義務付けるとともに、「女性デジタル人材育成プラン」を着実に実行する。また、同一労働同一賃金を徹底し、女性が多い非正規雇用労働者の待遇を改善する。女性の視点も踏まえた社会保障制度や税制等の検討を進める。テレワーク等の多様な働き方を後退させず、コロナ前の働き方に戻さないことに加え、男性の育児休業取得促進や長時間労働の是正等働き方改革の着実な実施、男性が子育てに参画しやすくなるための環境整備等男性の家庭・地域における活躍を進めるとともに、登用・採用の拡大を含めた幅広い分野における女性の参画拡大や、ベビーシッター・家政士等の活用推進に取り組む。また、女性の健康に関する支援、困難な問題を抱える女性に対する支援、フェムテックの更なる推進、アダルトビデオ出演被害対策、性犯罪・性暴力対策、DV対策等女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現に向けた取組を進める。
ジェンダーバイアス解消のための総合的な理解の醸成と支援を図り、女子中高生のIT分野を始めとした理工系の学びや分野選択を促進するなどにより、理工系分野の女性教員及び女子学生の割合を向上する取組を加速する。

(共生社会づくり)

地域共生社会の実現に向け、重層的支援体制整備事業など市町村における包括的支援体制の整備を進める。加えて、コロナ禍によって顕在化した課題等に的確に対応するため、生活に困窮する者への自立相談支援等の強化を図る。生活保護基準の定期的な見直しについて、消費水準との比較による検証結果や社会経済情勢等を踏まえて対応する。

長生きが幸せと思える社会の実現のため、高齢者の豊富な人生経験が尊重され、心通う拠り所となり、誰もが繋がりあえる地域づくりを推進する。認知症施策推進大綱に基づき、認知症サポーターが地域で活躍できる場の整備等認知症の人や家族に対する支援を推進するとともに、第二期成年後見制度利用促進基本計画に基づき、成年後見制度を含めた総合的な権利擁護支援の取組を推進する。障害者の就労や情報コミュニケーション等に対する支援、難聴対策、難病対策等を着実に推進する。感染症による不安やうつ等を含めたメンタルヘルスへの対応を推進する。

性的マイノリティに関する正しい理解を促進するとともに、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進める。

地域と学校が連携したコミュニティ・スクールの導入を加速するとともに、夜間中学の設置、医療的ケア児を含む障害のある子供の学びの環境整備、障害者等の様々な体験活動やこれを含む生涯学習を推進する。

ユニバーサルデザインの街づくりや、交通事業者の接遇向上、高齢者障害者等用施設等の適正な利用の推進などの「心のバリアフリー」の取組を進めるとともに、利用者負担の枠組みも活用した鉄道等のバリアフリー化を推進する。

(孤独・孤立対策)

「孤独・孤立対策の重点計画」の施策を着実に推進するとともに、さらに全省庁の協力による取組を進める。実態調査結果を踏まえた施策の重点化と「予防」の観点からの施策の充実を図り、重点計画に適切に反映する。いわゆる「社会的処方」の活用、ワンストップの相談窓口の本格実施に向けた環境整備、食・住など日常生活での孤独・孤立の軽減、ひきこもり支援に資する支援策の充実とともに、アウトリーチ型のアプローチや同世代・同性の対応促進のための取組を推進し、確実に支援を届ける方策を講ずる。官民一体で取組を推進する観点から、国の官民連携プラットフォームの活動を促進し、複数年契約の普及促進等によりNPO等の活動を継続的にきめ細かく支援するとともに、地方における官民連携プラットフォームの形成に向けた環境整備に取り組む。あわせて、支援者支援など孤独・孤立対策に関するNPO等の諸活動への支援を促進する方策の在り方を検討する。

若者・女性の自殺者数の増加に対するSNSを含むきめ細かい相談支援など、見直しが予定されている「自殺総合対策大綱」に基づき、自殺総合対策を推進する。

(就職氷河期世代支援)

就職氷河期世代の就労や社会参加への支援について、今年度までの3年間の集中取組期間に加え、2023 年度からの2年間を「第二ステージ」と位置付け、これまでの施策の効果も検証の上、効果的・効率的な支援を実施し、成果を積み上げる。公務員等での採用を推進し、地方自治体の取組も後押ししながら、相談、教育訓練から就職、定着までの切れ目のない支援を行い、民間企業での採用等を促すとともに、個々人の状況に合わせた、より丁寧な寄り添い支援に取り組む。第二ステージを含めた取組により、現状よりも良い処遇、そもそも働くことや社会参加を促す中で、同世代の正規の雇用者について30 万人増やすことを目指す。

(3)多極化・地域活性化の推進

東京一極集中の是正、多極集中、社会機能を補完・分散する国土構造の実現に向け、デジタル田園都市国家構想の実現による個性をいかした地方の活性化を強力に進める。また、従来の地方創生にも取り組むとともに、分散型国づくりを進める。地方発のボトムアップ型の経済成長を通じ、持続可能な経済社会の実現や個人と社会全体のWell-being の向上、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指す。

(デジタル田園都市国家構想)

デジタル田園都市国家構想基本方針」に基づき、(1)デジタルの力を活用した地方の社会課題解決、(2)ハード・ソフトのデジタル基盤整備、(3)デジタル人材の育成・確保、(4)誰一人取り残されないための取組、の4つを柱として取組を進め、「デジタル田園都市国家構想」の実現を目指す。

同構想の一翼を担うスマートシティは、EBPMに基づく取組の徹底や人材育成手法の開発等を推進し実装を加速する。GIGAスクール構想による全国どこでも誰一人取り残さない教育のための取組を進める。また、地域における情報通信格差が生じないよう5G・光ファイバを始めとした通信インフラの更なる整備、データセンター地方拠点/海底ケーブル等の整備、地域協議会の設置、デジタル田園都市国家構想実現ファンドの創設の検討、ポスト5G/Beyond5Gの2025 年以降の社会実装と国際標準化に向けた取組、デジタル推進人材を2026 年度末までに230 万人育成する取組を進める。

あわせて、デジタル田園都市国家構想を先導することが期待されるスーパーシティ及びデジタル田園健康特区の取組を推進する。

(分散型国づくり・地域公共交通ネットワークの再構築)

我が国の成長と国民生活を支えるサプライチェーンの強化や観光等による地域活性化に向けた環境整備のため、高規格道路、整備新幹線、リニア中央新幹線、港湾、漁港等の物流・人流ネットワークの早期整備・活用、航空ネットワークの維持・活性化、港湾の24時間化も念頭においたAIターミナルの実現、造船・海運業等の競争力強化等に取り組む。

リニア中央新幹線について、水資源、環境保全等の課題解決に向けた取組を進めることにより品川・名古屋間の早期整備を促進するとともに、全線開業の前倒しを図るため、建設主体が2023 年から名古屋・大阪間の環境影響評価に着手できるよう、沿線自治体と連携して、必要な指導、支援を行う。

デジタル田園都市国家構想の実現に資する持続可能で多彩な地域生活圏の形成のため、交通事業者と地域との官民共創等による持続可能性と利便性の高い地域公共交通ネットワークへの再構築に当たっては、法整備等を通じ、国が中心となって交通事業者と自治体が参画する新たな協議の場を設けるほか、規制見直しや従来とは異なる実効性ある支援等を実施する。また、モーダルコネクトの強化や自転車利用環境の充実、通学路等の交通安全の確保に係る対策の推進、バリアフリーの推進等に取り組む。

自動運転等の技術開発動向を踏まえたインフラ機能の充実を図る。

北海道知床で発生した遊覧船事故を受け、小型船舶を使用する旅客輸送における総合的な安全対策及び海上保安庁の救助・救急体制の強化に取り組む。

(多極化された仮想空間へ)

より分散化され、信頼性を確保したインターネットの推進や、ブロックチェーン上でのデジタル資産の普及・拡大など、ユーザーが自らデータの管理や活用を行うことで、新しい価値を創出する動きが広がっており、こうした分散型のデジタル社会の実現に向けて、必要な環境整備を図る。

そのため、トラステッド・ウェブ(Trusted Web)の実現に向けた機能の詳細化や国際標準化への取組を進める。また、ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAOの利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備の検討を進める。さらに、メタバースも含めたコンテンツの利用拡大に向け、2023 年通常国会での関連法案の提出を図る。Fintech の推進のため、セキュリティトークン(デジタル証券)での資金調達に関する制度整備、暗号資産について利用者保護に配慮した審査基準の緩和、決済手段としての経済機能に関する解釈指針の作成などを行う。

(関係人口の拡大と個性をいかした地域づくり)

関係人口の創出・拡大や二地域・多地域居住、地方でテレワークを活用することによる「転職なき移住」の推進に向け、関係人口の実態把握とふるさと納税等の地域の取組の後押し、地方企業や地域人材との交流・連携の促進、全国版空き家・空き地バンクの活用、空き家や企業版ふるさと納税の活用等によるサテライトオフィスの整備等を進める。地域への人材還流を促進するため、地域おこし協力隊等自治体への人的支援の充実やまちづくりの中核となる経営人材の国内100 地域への展開に取り組むとともに、「デジタル人材地域還流戦略パッケージ」に基づき、地域企業への人材マッチング支援等を行う。地域の稼ぐ力の向上に向け、産学金官連携により地域の経済循環を担う地域密着型企業の立ち上げ等を促進する。

復帰50 年を迎えた沖縄が、「強い沖縄経済」を実現し、日本の経済成長の牽引役となるよう、改正沖縄振興特別措置法等を最大限に活用し、観光を始めとする各種産業の振興、北部・離島地域の振興、子供の貧困対策、人材の育成、基地跡地の利用等の沖縄振興策を国家戦略として総合的・積極的に推進する。

ゼロカーボン北海道、食と観光を担う生産空間の発展、北方領土隣接地域の振興等、北海道開発を推進する。アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するため、ウポポイを拠点に取り組む。

過疎地域や離島、半島、奄美、小笠原、豪雪地帯などの条件不利地域対策に取り組む。

(中堅・中小企業の活力向上)

地域の経済やコミュニティを支える中堅・中小企業の生産性向上等を推進し、その活力を向上させ、経済の底上げにつなげていく。感染症に加え、デジタル、グリーン等の事業環境変化への対応を後押ししつつ、切れ目のない継続的な中小企業等の事業再構築や生産性向上の支援、円滑な事業承継やM&Aの支援、伴走支援を行う体制の整備等に取り組む。

これらの施策の活用によるサプライチェーン全体の付加価値の増大とその適切な分配を推進するため、「パートナーシップ構築宣言」の拡大に取り組むとともに、取引適正化を強力に推進する。あわせて、2023 年10 月のインボイス制度実施を見据えて標準化された電子インボイスの普及促進等を行うほか、中小企業のサイバーセキュリティ対策を支援する。

加えて、創業等の促進のため、官民金融機関・信用保証協会における経営者保証に依存しない融資を一層推進する。さらに、地域経済を牽引する事業の発展を推進するため、内外の価格動向など事業環境の変化も踏まえ、EC活用等を通じた中堅・中小企業の輸出力の強化や製品の試作・開発の支援体制強化を図るとともに、地域企業におけるDX実現や人材育成等の地域の主体的な取組を促進する。

(債務が増大している企業や家計への対応)

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業に対して資金繰り等の支援に取り組んできた中、企業債務が増大していることに加え、原油等の価格高騰の影響を受けている状況への対応に万全を期す。具体的には、地域の中核企業・中小企業・小規模事業者の実情に応じた収益力改善・事業再生・再チャレンジを図るため、返済猶予・資金繰り支援、経営改善・事業転換・再構築支援、資本基盤の強化、債務減免を含めた債務整理等に総合的に取り組む。

あわせて、感染症後に向けた事業再構築を容易にするため、債務がその足かせにならないよう、新たな事業再構築法制の整備を進める。

また、債務が増大している生活困窮者への対応として、2023 年1月から償還が始まる緊急小口資金等の特例貸付について、住民税非課税世帯に対する償還免除や償還が困難な借受人への相談支援等をきめ細かく行うとともに、そのための体制の整備を図る。

(観光立国の復活)

我が国の成長戦略の柱の一つであり、地方経済・雇用を支える観光立国の復活を図り、地方創生を進める。

国内交流需要喚起のため、感染状況等を踏まえて引き続き注意深く検討を行い、旅行者等の安全を確保した上で、国内需要喚起策を実施し、観光・交通事業者と連携して平日の旅行促進等を推進する。新たな交流市場を開拓しつつ、宿泊施設改修やデジタル実装等、観光地・観光産業の再生・高付加価値化について、基金化などの計画的・継続的な支援策が可能となるよう制度を拡充するとともに、法整備も視野に強力に推進し、また、持続可能な観光に向けた取組を進める。

国際交通を支える航空・空港関連企業の経営基盤強化を図りつつ、インバウンドの戦略的回復に取り組む。消費額増加や地方誘客促進のほか観光外交の推進のため、きめ細かなプロモーションを実施し、CIQ等の受入環境の整備や水際対策、外国人観光客の民間医療保険への加入促進を進めつつ、サステナブルツーリズムやアドベンチャーツーリズム、新たな観光コンテンツの創出、国立公園等の滞在環境上質化、高付加価値旅行者の誘客、クルーズの再興と世界に誇るクルーズの拠点形成、カジノ規制の実施を含めたIR整備等を強力に推進する。日本酒、焼酎・泡盛等のユネスコ無形文化遺産への登録を目指す。

(文化芸術・スポーツの振興)

ソフトパワーを含む我が国が誇る文化芸術資源の持続可能な活用を通じた経済・地域活性化を促進するため、統括団体等を通じた文化芸術団体・関係者の活動支援、文化芸術教育や子供の文化芸術鑑賞・体験機会の確保、クリエーターの創作活動の支援、国立文化施設や博物館の機能強化や日本博2.0 等の「WABI」の取組を推進しつつ、インセンティブを付与した寄附を始めとする民間資金や文化DXの一層の活用等により、文化財等の保存と活用の好循環や日本の文化芸術・コンテンツの魅力の国内外への発信、グローバル展開及び地方展開の着実な支援・収益基盤の強化を推進する。これらを通じ、アート市場活性化を含め文化芸術の成長産業化を図る。これらも含めた次期文化芸術推進基本計画を本年度内に策定し、政府一体となって推進する。メディア芸術ナショナルセンターに関する構想に基づき、必要な検討を行う。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会を通じて創出された多様なレガシーを着実に継承・発展させる。スポーツツーリズムの推進を含め、日本らしいスポーツホスピタリティを取り入れた、スポーツ・健康まちづくりの全国展開の加速化等を通じ、誰もが気軽にスポーツに親しみ、その価値を実感できる、活力ある、絆の強い社会を実現する。民間資金やスポーツDXの一層の活用等により、指導者や活動団体の育成を通じて、スポーツの成長産業化やスポーツの発展を図る。運動部活動の地域移行と持続可能な地域スポーツ環境の一体的な整備に向けた取組を推進する。

(4)経済安全保障の徹底

新しい資本主義実現のための基礎的条件は国家の安全保障である。第3章で詳述するように、エネルギーや食料を含めた経済安全保障の徹底は、国際環境の変化に応じた新しい資本主義の根幹となる。新しい資本主義では、外交・防衛のみならず、持続可能で包摂性のある国民生活における安全・安心の確保を図る。

また、権威主義国家の台頭に対しては、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を重視する国々が団結し、自由で開かれた経済秩序の維持・強化を進め、自由貿易を推進するとともに、不公正な経済活動に対する対応を強化する必要がある。

第3章 内外の環境変化への対応

1.国際環境の変化への対応

(1)外交・安全保障の強化

国際社会では、米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入する中、ロシアがウクライナを侵略し、国際秩序の根幹を揺るがすとともに、インド太平洋地域においても、力による一方的な現状変更やその試みが生じており、安全保障環境は一層厳しさを増していることから、外交・安全保障双方の大幅な強化が求められている。こうした中、同志国の集まりであるG7の政策協調が密接に行われるようになってきているとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力も一層重要になってきている。また、NATO諸国においては、国防予算を対GDP比2%以上とする基準を満たすという誓約へのコミットメントを果たすための努力を加速することと防衛力強化について改めて合意がなされた。

我が国は、次期G7議長国として、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値に基づく国際秩序の維持・発展のための外交を積極的に展開する。ウクライナ侵略には経済制裁等により毅然と対応し、ウクライナ及び周辺国等への支援を強化する。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米同盟を基軸としつつ、豪印、ASEAN、欧州、太平洋島しょ国等の国・地域との協力を深化させ、日米豪印の取組等も活用するとともに、TICAD8を通じアフリカとの連携を強化する。安保理改革を含む国連の強化、法の支配の確立、国際機関邦人職員の増強、国際裁判を含む国際法に基づく紛争解決、コロナ禍からの回復を含む地球規模課題への取組を推進し、人権問題、人間の安全保障、核を含む軍縮・不拡散等の課題に取り組む。

北朝鮮との関係では、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指す。

これらの取組を推進するため、時代に即した国際協力の在り方を模索するとともに、国際機関とODAを通じた国際協力を適正・効率的かつ戦略的に活用しつつ、ODAを拡充するほか、偽情報対策・戦略的対外発信、親日派・知日派の育成、デジタル化・情報防護、情報収集・分析力の向上等を推進し、外交力の強化に取り組む。

その基盤として、人的体制、財政基盤、在外公館の整備を図り、邦人保護体制等を含め外交・領事実施体制を抜本的に強化する。

また、前述の情勢認識を踏まえ、新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する。

特に、スタンド・オフ防衛能力や無人化装備、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む領域横断能力、機動展開能力、指揮統制・情報関連機能を強化するとともに、政府の他の枠組みも活用しつつ、民生技術を取り込み、AI、無人機、量子等の先端技術の研究開発を進める。

あわせて、防衛力の持続性・強靱性を確保するとともに、現有装備品を真に有効に活用するため、必要な弾薬の確保、装備品の維持整備、隊舎・宿舎の老朽化対策への重点的な取組を進める。

加えて、装備品の取得に関し、国内の防衛生産・技術基盤を維持・強化する観点を一層重視するとともに、基盤強化のために装備移転に係る見直しを含めた所要の制度整備を行うなど、より踏み込んだ取組を検討する。

質の高い自衛隊員の十分な確保や処遇改善等を通じて人的基盤を強化するとともに、在日米軍再編及び基地対策の推進等を図る。

こうした様々な取組を積み上げ、将来にわたり我が国を守り抜く防衛力を構築する。

その際、本年末に改定する「国家安全保障戦略」及び「防衛計画の大綱」を踏まえて策定される新たな「中期防衛力整備計画」の初年度に当たる令和5年度予算については、同計画に係る議論を経て結論を得る必要があることから予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる。

「海洋基本計画」を改訂し、海洋観測・調査、海洋状況把握を含む海洋の安全保障等の取組を強力に推進するとともに、新たな国家安全保障戦略の策定の取組の中で、巡視船の増強、老朽代替の促進、無操縦者航空機を始めとした新技術の活用による監視能力の強化、人材育成等により海上保安体制を強化するとともに、海上保安庁と自衛隊の連携強化や海外の海上保安機関との協力体制の強化を図る。

(2)経済安全保障の強化

国家・国民の安全を経済面から確保する観点から、経済活動の自由との両立を図りつつ、安全保障の確保に関する経済施策を総合的・効果的に推進する。新たな国家安全保障戦略等の策定に当たり、経済安全保障を重要な課題と位置付ける。基幹産業が直面するリスクを総点検・評価し、脆弱性を解消するための取組を定式化し、継続・深化していく。

経済安全保障推進法を着実に施行すべく、速やかに基本方針を策定し、サプライチェーン及び官民技術協力に関する施策については、先行して可能な限り早期に実施する。

半導体、レアアースを含む重要鉱物、電池、医薬品等を始めとする重要な物資について、供給途絶リスクを将来も見据えて分析し、物資の特性に応じて、基金等の枠組みも含め、金融支援や助成などの必要な支援措置を整備することで、政府として安定供給を早急に確保する。基幹インフラの事前審査制度について、各省における事業者からの相談窓口の設置を含め円滑な施行に向けた取組を進める。シンクタンクを立ち上げるとともに、先端的な重要技術の育成を進めるプロジェクトを早急に強化し、速やかに5,000 億円規模とすることを目指して、実用化に向けた強力な支援を行う。特許出願の非公開制度について、必要なシステム整備を含め円滑な施行に向けた取組を進める。

外為法(外国為替及び外国貿易法)上の投資審査について、地方支分部局も含めた情報収集・分析・モニタリング等の強化を図るとともに、指定業種の在り方について検討を行う。ロシアによるウクライナ侵略も踏まえ、新たな安全保障貿易管理の枠組みの検討も含めた先端技術を保有する民主主義国家による責任ある技術管理や、各種制裁の効果的な実施、経済的威圧への対応を含め、同盟国・同志国との連携を強化する。重要土地等調査法に基づき、土地等利用状況調査等を着実に進める。

国際共同研究等における具体的事例の検証等を踏まえつつ、重要情報を取り扱う者への資格付与について制度整備を含めた所要の措置を講ずるべく検討を進める。先端技術・機微技術を保有するなど、次世代に不可欠な技術の開発・実装の担い手となる民間企業への資本強化を含めた支援の在り方について検討を行う。日米首脳での合意に基づき、先端半導体基盤の拡充・人材育成に加え、2020 年代後半に次世代半導体の設計・製造基盤を確立する。国際情勢の変化等を踏まえたサイバーセキュリティの確保に向けた官民連携や分析能力の強化について、技術開発の推進や制度整備を含めた所要の措置を講ずるべく検討を進める。政府が扱う情報の機密性等に応じたクラウドの利用方針を年内に定め、必要なクラウドの技術開発等を支援し、クラウド等に係る政府調達に反映する。

国家安全保障局を司令塔とした、関係府省庁を含めた経済安全保障の推進体制の強化を図るとともに、内閣府に経済安全保障推進室(仮称)を速やかに設置し、情勢の変化に柔軟かつ機動的に対応する観点から関係省庁の事務の調整を行う枠組みを整備する。インテリジェンス能力を強化するため、情報の収集・分析等に必要な体制を整備する。

(3)エネルギー安全保障の強化

ロシアによるウクライナ侵略を踏まえ、エネルギー安全保障の確保が諸外国でも改めて重要課題に浮上する中、エネルギーの安定的かつ安価な供給の確保を大前提に、脱炭素の取組を加速させるとともに、エネルギー自給率の向上を図る。そのため、徹底した省エネルギーを進めるとともに、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する。また、電力需給ひっ迫を踏まえ、供給力の確保、電力ネットワークやシステムの整備などを図るとともに、脱炭素のエネルギー源を安定的に活用するためのサプライチェーン維持・強化、安全最優先の原発再稼働、厳正かつ効率的な審査を含む実効性ある原子力規制や、道路整備等による避難経路の確保等を含む原子力防災体制の構築を進めていく。

化石燃料・資源のロシア依存度低減や供給途絶への対策のため、ロシア以外の調達先の多角化や、主要消費国と連携した生産国への増産働きかけ、使用量低減対策を行う。また、石油備蓄放出の機動性向上やSS(サービスステーション)事業者の経営力強化、特にLNGについて国による調達関与の強化等を通じて、燃料供給体制を強化する。

また、レアメタル権益の確実な確保に向けた支援措置など安定供給体制の強化や、メタンハイドレート、海底熱水鉱床、レアアース泥等の国産海洋資源の確保に加え、金属鉱物資源等の安定確保に向けた資源循環の促進に取り組む。

(4)食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進

我が国の食料・農林水産業が輸入に大きく依存してきた中で、世界の食料需給等を巡るリスクが顕在化していることを踏まえ、生産資材の安定確保、国産の飼料や小麦、米粉等の生産・需要拡大、食品原材料や木材の国産への転換等を図るとともに、肥料価格急騰への対策の構築等の検討を進める。今後のリスクを検証し、将来にわたる食料の安定供給確保に必要な総合的な対策の構築に着手し、食料自給率の向上を含め食料安全保障の強化を図る。

気候変動に対応しつつ人口減少に伴う国内市場縮小や農林漁業者減少等の課題克服に向け、人材育成を始め農林水産業の持続可能な成長のための改革を更に進める。

みどり戦略の実現に向け、2030 年目標やみどりの食料システム法に基づき、新技術の開発、有機農業の推進、環境負荷低減の見える化等を進める。

国内生産の維持・拡大のためにも、改訂輸出戦略等に基づき、オールジャパンで輸出に取り組む認定輸出促進団体、輸出産地・事業者を支援するGFP、輸出支援プラットフォームの体制や活動支援等を強化する。

中山間地域等を含めた生産基盤の確保・強化、農山漁村の活性化に向け、スマート農林水産業の実装加速化、支援サービス事業の育成等の推進、改正基盤法による地域計画の策定、農地バンクを活用した農地の集積・集約化、担い手等の確保等の推進、デジタル技術を活用した農山漁村の課題解決のための枠組みの創設を行う。土地改良事業により農地の大区画化や汎用化・畑地化を進めるとともに、鳥獣対策、家畜疾病対策を推進する。地域食材を活用した高付加価値化を始め食品産業の持続可能な取組を進める。

再造林促進や林道等の生産基盤整備等を含む木材の安定的・持続的な供給体制の構築、CLT等の木材利用拡大を進める。

着実な資源管理、養殖業の成長産業化、漁業者の経営安定、漁船等の生産基盤整備、海業の振興等を進める。

(5)対外経済連携の促進

(国際連携の強化)

多国間主義重視の下、人権を尊重し、環境にも配慮しつつ、自由で公正な経済圏の拡大、ルールに基づく多角的貿易体制の維持・強化に取り組む。同時に、資本主義に内在する課題を克服し、持続可能な経済社会を創り上げ、社会課題の解決を新たな成長の源泉とすることで、世界のSDGs達成に貢献する。

DFFTの具体的推進に向け、国際的なルール作りを進めるとともに、2023 年日本で開催されるG7での一定の成果を目指す。また、WTO改革に積極的に取り組む。TPP11 の着実な実施及び高いレベルを維持しながらの拡大に向けた議論を主導するとともに、RCEP協定の円滑な運用及び履行の確保に取り組む。IPEFについては、インド太平洋地域への米国の強いコミットメントを示すものとして歓迎し、我が国は米国及びASEAN諸国・インドを含むパートナー国と連携して地域の繁栄と経済秩序の構築に取り組み、加えて、米国にはTPP復帰を働きかける。日米経済政策協議委員会(経済版2+2)等も活用し、米国との経済分野での連携を深めるほか、EU及び英国との経済関係を更に強化する。また、「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく施策を実施する。投資関連協定やODA等の活用、海外ビジネス投資支援室(仮称)の設置等を通じ、企業の海外展開を促進し、コロナ後の世界での成長力強化を図る。また、予見可能性を高める国際協調の下、企業のサプライチェーンにおける人権尊重の指針を策定する。

技術開発やインフラ整備、技術標準、クレジット活用を通じて、AETI等を強化・具体化しつつ、アジア・ゼロエミッション共同体構想の実現を目指すなど、気候変動・エネルギー分野のリーダーシップをとる。プラスチック汚染対策では、我が国の技術を活用し、条約交渉及び「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を主導する。グローバルヘルス戦略に基づき、官民資金の拡充を図りつつ、感染症に対する予防・備え・対応の強化など世界の保健課題の解決に貢献し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成を目指すほか、WHOとの連携について協議する。また、薬剤耐性対策において市場インセンティブなどの薬剤耐性菌の治療薬を確保するための具体的な手法を包括的に検討した上で結論を出し、国際的な議論において主導的な役割を果たす。デジタル化、サプライチェーンの強靱化、質の高いインフラ、水循環、環境保全、女性等の分野でも取組を進める。

上記の取組やスマートシティ等の案件形成支援、公的金融の機能強化を含め、「インフラシステム海外展開戦略2025」に基づく施策を着実に進める。また、2025 年大阪・関西万博、2027 年国際園芸博覧会を始め、大規模国際大会等に向け着実な準備を進める。

(対日直接投資の推進)

旺盛な海外需要を取り込み、我が国経済の活力や長期的な成長力を高めるため、イノベーション創出やサプライチェーン強靱化等につながる対日直接投資を戦略的に推進する。対日直接投資残高を2030 年に80 兆円との目標達成に向け、投資先としての我が国の魅力を高める。あわせて、水際措置の段階的緩和のタイミングも捉えて、我が国のビジネス環境や技術の強み等についての内外への発信を強化する。

その際、海外企業が求める人材育成を強化するとともに、医療、教育等の面での外国人の生活環境の向上、行政手続のワンストップ化・デジタル化による効率化、法令・行政文書の英語化や理解の促進等の環境整備を進める。また、経済安全保障の観点にも留意しながら、DXやGXの推進、スタートアップの育成などに資する、プッシュ型の重点支援、日本企業の経営力強化のための外資誘致・活用等への支援、海外企業と地域の企業・大学等を結び付ける支援を行う。さらに、より多くの海外の金融事業者を我が国に呼び込むため、国際金融センターの機能を強化する。あわせて、国際仲裁の活性化を図る。

(外国人材の受入れ・共生)

高度外国人材の受入れや活躍を推進するほか、特定技能制度の受入分野追加は、分野を所管する行政機関が人手不足状況が深刻であること等を具体的に示し、法務省を中心に適切な検討を行う。技能実習制度について人権への配慮等の運用の適正化を行う。これらを含めて、制度の在り方に関する見直しの検討を行う。さらに、人道的な観点から真に庇護すべき者を確実に保護するとともに、送還忌避・長期収容等の課題解消を図る法整備に取り組む。これに加え、外国人が暮らしやすい地域社会づくりのほか、在留カードとマイナンバーカードの一体化の検討、日本語教育の推進や外国人児童生徒等の就学促進を含め、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」等に基づき施策を着実に実施し、外国人との共生社会の実現に向けて取り組む。

2.防災・減災、国土強靱化の推進、東日本大震災等からの復興

(防災・減災、国土強靱化)

切迫する大規模地震災害、相次ぐ気象災害、火山災害、インフラ老朽化等の国家の危機に打ち勝ち、国民の生命・財産・暮らしを守り、社会の重要な機能を維持するため、「国土強靱化基本計画」に基づき、必要・十分な予算を確保し、自助・共助・公助を適切に組み合わせ、ハード・ソフト一体となった取組を強力に推進する。中長期的な目標の下、取組の更なる加速化・深化のため、追加的に必要となる事業規模等を定めた「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を推進し、引き続き、災害に屈しない国土づくりを進める。

また、国土強靱化基本法の施行から10 年目を迎える中、これまでの成果や経験をいかし、「5か年加速化対策」後も、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的・安定的に国土強靱化の取組を進めていくことの重要性等も勘案して、次期「国土強靱化基本計画」に反映する。

近年の災害を踏まえ、盛土の安全確保対策の推進、災害に強い交通ネットワークの構築、豪雪時の道路交通確保対策の強化、建築物の安全性向上、無電柱化等を推進するとともに、激甚化・頻発化する水害・土砂災害や高潮・高波への対策として、流域治水の取組を推進する。インフラ老朽化対策やスマート保安を加速するとともに、DXの推進などによるTEC-FORCE及び気象台等の防災体制・機能並びに消防団を含む消防防災力の拡充・強化、次期静止気象衛星やデジタル技術等を活用した防災・減災対策の高度化、船舶活用医療の推進、医療コンテナの活用を通じた医療体制の強化、地方自治体によるタイムライン防災の充実強化を図るための気象防災アドバイザーや地域防災マネージャーの拡充、学校などの避難拠点等の防災機能強化や熱中症対策を含む環境改善、被災者支援等を担う人材の確保・育成、要配慮者避難や災害ケースマネジメントの促進等の地域防災力の向上や事前防災に資する取組を推進する。気候変動に伴う災害リスクへの対応に関するグローバルな新事業機会の創出を推進する。

(東日本大震災等からの復興)

東北の復興なくして、日本の再生なし。復興庁を司令塔に、「「第2期復興・創生期間」以降における東日本大震災からの復興の基本方針」等に基づき、被災地の復興・再生に全力を尽くす。地震・津波被災地域では、被災者の心のケアなど残された課題に取り組む。

原子力災害被災地域の復興・再生には中長期的な対応が必要であり、今後も国が前面に立って取り組む。東京電力福島第一原発の廃炉及び環境再生を安全かつ着実に進める。ALPS処理水については、基本方針及び行動計画等に基づき、引き続き、地元等の声を受け止め、科学的知見に基づくモニタリング等を含む安全性への理解の醸成や漁業者等の事業の継続・拡大への支援など、必要な対策に万全を期す。住民の帰還促進と併せ、移住・定住の促進を図る。たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、まずは、特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向けて、引き続き除染やインフラ整備等を着実に進めるとともに、拠点区域外については、基本的方針(特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた避難指示解除に関する考え方)に基づき、2020 年代をかけて、帰還意向のある住民が帰還できるよう、避難指示解除の取組を進める。創業支援や実装フィールド整備、高専等と連携した地元人材育成等による福島イノベーション・コースト構想の具体化を図る。この構想の更なる発展に向けて、福島新エネ社会構想の実現に向けた取組を進めつつ、「創造的復興の中核拠点」となる福島国際研究教育機構の長期・安定的な運営に政府を挙げて取り組むとともに、研究開発や産業化、人材育成の取組を加速させる。あわせて、デジタル技術や映像・芸術等のソフトパワー等を活用した街づくりを推進する。また、災害からの復旧・復興に全力を尽くす。

3.国民生活の安全・安心

良好な治安確保のため、関係府省庁間で連携し、テロの未然防止やインテリジェンス機能の強化を含むサイバーセキュリティ対策等を着実に進める。また、有事に備えた国民保護施策を推進する。金融機関等の検査・監督強化等、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策を推進するとともに、国際基準に対応するための法案を早期に国会に提出する。

高齢運転者等の事故防止や自動車事故による被害者の支援、特殊詐欺等への対策に向けた取組を推進する。

本年度中に実効性のある次期「再犯防止推進計画」を策定し、地方公共団体との連携強化等の施策を推進する。また、国内外の予防司法支援機能や総合法律支援の充実・強化、司法分野のデジタル化の推進、インターネット上の人権侵害への対策の強化とともに、「第4次犯罪被害者等基本計画」を基として、取組の強化を推進する。法務分野でのASEANとの連携強化を始め、司法外交を外交一元化の下で推進し、国際法務人材を育成する。

消費者の判断を歪めるようなデジタル広告に対応した制度整備、消費者団体訴訟制度の一層の活用促進、消費生活相談のデジタル化やフードバンク支援を含めた食品ロス削減を始めとする消費者政策を推進する。

第4章 中長期の経済財政運営

1. 中長期の視点に立った持続可能な経済財政運営

第1章で述べた時代認識とそれに対して必要な取組や政策の方向性を踏まえ、持続可能な経済財政運営を行う。

まずは、急激な輸入物価上昇の中にあって、安定的な物価上昇の下での持続的かつ力強い経済成長の実現が重要であり、第1章で述べた経済財政運営に関する枠組みの下、「成長と分配の好循環」を拡大する。特に、資本主義のバージョンアップに向けて、社会課題の解決に向けた官民連携を成長の源泉とする。このための計画的な重点投資、規制・制度改革を通じて力強い成長を取り戻すとともに、分配戦略により成長の果実を幅広く行き渡らせる。

その際、予算の単年度主義の弊害を是正する。税制の将来にわたる効果を見据えた動的思考を活用する。また、成長と分配の好循環に資する官民投資に重点化し、構造変化を促すインセンティブ・仕組みを構築するとともに、個々の予算を効果的・効率的なものとし、成果の検証の強化を進める。

財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む。経済あっての財政であり、現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢が歪められてはならない。必要な政策対応と財政健全化目標に取り組むことは決して矛盾するものではない。経済をしっかり立て直し、そして財政健全化に向けて取り組んでいく。ただし、感染症及び直近の物価高の影響を始め、内外の経済情勢等を常に注視していく必要がある。

このため、状況に応じ必要な検証を行っていく。

(官民連携による計画的な重点投資の推進)

持続的な成長には、需要創出と同時に、供給力を高める効果も持つ「投資」の拡大が不可欠である。世界的に不確実性が増大し、民間企業の投資への逡巡が懸念される中でこれを実現するには、政府が、民間の予見可能性を高め、民間投資の呼び水となる効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)を思い切って行うことで、これまで長期にわたり低迷してきた民間投資を喚起し、可及的速やかに経済を安定成長経路に乗せていく必要がある。

このため、投資促進に向けては、「人への投資」、「科学技術・イノベーションへの投資」、「スタートアップへの投資」、「GXへの投資」、「DXへの投資」を重点投資分野に位置付ける。計画的な投資と課題解決に必要な制度改革を含めたロードマップを官民で共有し、それに基づいて、必要な財源を確保しつつ、事業の性質に応じた基金や、税制も活用しながら、大胆な重点投資を、官民連携の下で中長期的かつ計画的に推進する。

(単年度予算の弊害是正)

政策の長期的方向性や予見可能性を高めるよう、単年度主義の弊害を是正し、国家課題に計画的に取り組む。事業の性質に応じた基金の活用等を進めるとともに、年度末の予算消化などの予算単年度主義に起因する弊害についても、年度を跨ぐ予算執行が可能となるよう、柔軟かつ適切に対応する。

(持続可能な債務管理に向けて)

我が国の債務残高は毎年の財政赤字が積み上がっており、今後も、安定的な国債の借換えのための環境を実現していく必要がある。また、債務残高対GDP比をコントロールしていく観点からも名目成長率を高めることが重要である。

(効果的・効率的な支出の推進とEBPMの徹底強化)

今後これまで以上に歳出の中身をより結果につながる効果的なものとすることが重要となる。効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)の推進に向けて、国民各層の意識や行動の変容につながる見える化、先進・優良事例の全国展開、インセンティブ改革、公的部門の産業化、PPP/PFIや共助も含めた民間活力の最大活用などの経済・財政一体改革の取組を抜本強化する。また、コロナ禍での累次の補正予算について、その使い道、成果について、見える化する。

EBPMの手法の実践に向け、行政事業レビューシートを順次見直し、予算編成プロセスでのプラットフォームとしての活用等を進める。また、政策立案・実施に投入するリソースの確保に向け政府の評価関連作業の合理化を進めるとともに、EBPMの取組を強化するため、エビデンスによって効果が裏付けられた政策やエビデンスを構築するためのデータ収集等に予算を重点化する。

予算の単年度主義の弊害是正に向け、事業の性質に応じた基金を活用しつつ、重要な政策課題に取り組む基金についてEBPMの手法を前提としたPDCAの取組を推進する。

また、計画的な投資と課題解決に必要な制度改革を含めたロードマップについても、こうした考え方に立って取組を進める。

政府向け及び一般向けの可視化等を含めた統計データのエコシステムの構築に向けて取り組むとともに、GDP統計等における無形資産の捕捉強化や、文化資源コンテンツの価値等のソフトパワーの把握・計測等、さらに各政策分野におけるKPIへのWell-being指標の導入を進める。また、公的統計の不適切な取扱いを繰り返さぬよう、集中的な統計改革を行う。

(税制改革)

経済成長と財政健全化の両立を図るとともに、少子高齢化、グローバル化等の経済社会の構造変化に対応したあるべき税制の具体化に向け、包括的な検討を進める。

骨太方針2021等も踏まえ、応能負担を通じた再分配機能の向上・格差の固定化防止を図りつつ、公平かつ多様な働き方等に中立的で、デジタル社会にふさわしい税制を構築し、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を確保するため、税体系全般の見直しを推進する。

納税環境の整備と適正・公平な課税の実現の観点から制度及び執行体制の両面からの取組を強化するとともに、新たな国際課税ルールへの対応を進める。

2. 持続可能な社会保障制度の構築

(全世代型社会保障の構築)

全世代型社会保障は、「成長と分配の好循環」を実現するためにも、給付と負担のバランスを確保しつつ、若年期、壮中年期及び高齢期のそれぞれの世代で安心できるよう構築する必要がある。そのために、社会保険を始めとする共助について、包摂的で中立的な仕組みとし、制度による分断や格差、就労の歪みが生じないようにする。これにより、我が国の中間層を支え、その厚みを増すことに寄与する。給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、能力に応じて皆が支え合うことを基本としながら、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障をバランスよく確保する。その際、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額の引上げを含む保険料負担の在り方等各種保険制度における負担能力に応じた負担の在り方等の総合的な検討を進める。全世代型社会保障の構築に向けて、世代間の対立に陥ることなく、全世代にわたって広く基本的な考え方を共有し、国民的な議論を進めていく。

男女が希望どおりに働ける社会を構築するため、男性や非正規雇用労働者の育児休業取得促進や子育て支援に取り組む。そして、子育て・若者世代が出産・育児によって収入や生活に不安を抱くことなく、仕事と子育てを両立できる環境を整備するために必要となる更なる対応策について、国民的な議論を進める。勤労者皆保険の実現に向けて、被用者保険の適用拡大の着実な実施や更に企業規模要件の撤廃・非適用業種の見直しの検討、フリーランス・ギグワーカーへの社会保険適用について被用者性の捉え方等の検討を進める。

家庭における介護の負担軽減のため介護サービスの基盤整備等を進める。公的価格の費用の見える化等を行った上で、職種毎に仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されること等を目指して、現場で働く方々の更なる処遇改善に取り組んでいく。また、独居の困窮者・高齢者等に対する相談支援や医療・介護・住まいの一体的な検討・改革等地域共生社会づくりに取り組む。また、医療・介護提供体制などの社会保障制度基盤の強化については、今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めることとし、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うとともに、地域医療連携推進法人の有効活用や都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進する。あわせて、医師の働き方改革の円滑な施行に向けた取組を進める。その他基盤強化に向けて、医療費適正化計画の在り方の見直しや都道府県のガバナンスの強化など関連する医療保険制度等の改革とあわせて、これまでの骨太方針2021 等に沿って着実に進める。

これらの取組について、今後、生産年齢人口が急速に減少していく中、高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる2040 年頃を視野に入れつつ、コロナ禍で顕在化した課題を含め、2023 年、2024 年を見据えた短期的課題及び中長期的な各種の課題を全世代型社会保障構築会議において整理し、中長期的な改革事項を工程化した上で、政府全体として取組を進める。

(社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進)

医療・介護費の適正化を進めるとともに、医療・介護分野でのDXを含む技術革新を通じたサービスの効率化・質の向上を図るため、デジタルヘルスの活性化に向けた関連サービスの認証制度や評価指針による質の見える化やイノベーション等を進め、同時にデータヘルス改革に関する工程表にのっとりPHRの推進等改革を着実に実行する。オンライン資格確認について、保険医療機関・薬局に、2023 年4月から導入を原則として義務付けるとともに、導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す。2024 年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す。「全国医療情報プラットフォームの創設」、「電子カルテ情報の標準化等」及び「診療報酬改定DX」の取組を行政と関係業界が一丸となって進めるとともに、医療情報の利活用について法制上の措置等を講ずる。そのため、政府に総理を本部長とし関係閣僚により構成される「医療DX推進本部(仮称)」を設置する。経営実態の透明化の観点から、医療法人・介護サービス事業者の経営状況に関する全国的な電子開示システム等を整備するとともに、処遇改善を進めるに際して費用の見える化などの促進策を講ずる。医療・介護サービスの生産性向上を図るため、タスク・シフティングや経営の大規模化・協働化を推進する。加えて、医療DXの推進を図るため、オンライン診療の活用を促進するとともに、AIホスピタルの推進及び実装に向け取り組む。

経済安全保障や医薬品産業ビジョン2021 等の観点も踏まえ、医薬品の品質・安定供給の確保とともに創薬力を強化し、様々な手段を講じて科学技術力の向上とイノベーションを実現する。がん・難病に係る創薬推進等のため、臨床情報と全ゲノム解析の結果等の情報を連携させ搭載する情報基盤を構築し、その利活用に係る環境を早急に整備する。

がん専門医療人材を養成するとともに、「がん対策推進基本計画」の見直し、新たな治療法を患者に届ける取組を推進する等がん対策を推進する。大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める。熱中症対策に取り組むとともに、OTC医薬品・OTC検査薬の拡大に向けた検討等によるセルフメディケーションの推進、ヘルスリテラシーの向上に取り組む。早期発見・早期治療のため、疾患に関する正しい知識の周知啓発を実施し、感染拡大によるがん検診受診の実態を踏まえ、引き続き、受診勧奨に取り組むとともに、政策効果に関する実証事業を着実に実施するなどリハビリテーションを含め予防・重症化予防・健康づくりを推進する。また、移植医療を推進する。

良質な医療を効率的に提供する体制の整備等の観点から、2022 年度診療報酬改定により措置された取組の検証を行うとともに、周知・広報の推進とあわせたリフィル処方箋の普及・定着のための仕組みの整備を実現する。バイオシミラーについて、医療費適正化効果を踏まえた目標値を今年度中に設定し、着実に推進する。新型コロナウイルス感染症対応の経験を踏まえ、コロナ入院患者受入医療機関等に対する補助の在り方について、これまでの診療報酬の特例等も参考に見直す。国保財政健全化の観点から、法定外繰入等の早期解消を促すとともに、普通調整交付金の配分の在り方について、方向性を示すべく地方団体等との議論を深める。

全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠の集積と国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実、歯科医療職間・医科歯科連携を始めとする関係職種間・関係機関間の連携、歯科衛生士・歯科技工士の人材確保、歯科技工を含む歯科領域におけるICTの活用を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。また、市場価格に左右されない歯科用材料の導入を推進する。

3. 生産性を高め経済社会を支える社会資本整備

5Gネットワーク等の整備拡大による超高速・超低遅延・多数同時接続環境をいかし、大学・民間等の技術開発の促進に向けたインフラデータのオープン化・データ連携の推進、中小建設企業へのICT施工の普及支援等によるi-Construction の推進など、インフラ分野のDXを加速し、生産性を高める。

新技術の導入促進等による予防保全型メンテナンスへの転換や高度化・効率化、集約・再編等を通じた公的ストック適正化を推進するとともに、適切な維持管理の観点から、財源対策等について検討を行う。高速道路の更新事業等を確実に実施するための方策導入や、東北新幹線の脱線事故の検証を踏まえた新幹線等の防災・減災の推進に関する費用負担の在り方等の検討を進める。災害対応力の強化や生産性向上等に資するよう、費用便益分析の客観性・透明性の向上を図りつつ、ストック効果の高い事業への重点化を図る。その際、受益者負担や財政投融資も適切に活用する。

公共事業の効率化等を図るとともに、民間事業者が安心して設備投資や人材育成を行うことができるよう、中長期的な見通しの下、安定的・持続的な公共投資を推進しつつ、戦略的・計画的な取組を進める。その際、現下の資材価格の高騰の状況等を注視しながら適切な価格転嫁が進むよう促した上で今後も必要な事業量を確保しつつ、実効性のあるPDCAサイクルを回しながら、社会資本整備を着実に進める。

建設キャリアアップシステムや施工時期の平準化による処遇改善等や、全ての建設工事について安全管理の徹底を図ること等により建設産業の担い手の育成・確保を図る。

災害リスクや人口動態の変化を見据えた立地適正化を促進するとともに、建築・都市のDX等を活用しつつ都市再生を促進し、公園の利活用等による人間中心のまちづくりを実現する。質の高い住宅等の流通等を図るため、IoT住宅の普及や不動産情報の活用等の取組を総合的に進める。空き家等の利活用や基本方針等に基づく所有者不明土地等対策を進める。

4. 国と地方の新たな役割分担

社会全体におけるDXの進展及び今回の感染症対応で直面した課題等を踏まえ、ポストコロナの経済社会に的確に対応する必要がある。このため、総務省は、地方制度調査会における調査審議を踏まえ、将来の地域住民サービスの在り方を見据え、国・地方間、東京圏等の大都市圏を含む地方自治体間の役割分担や連携の在り方を明確化する観点から、法整備を視野に入れつつ検討を進める。

国が地方自治体に対し、法令上新たな計画等の策定の義務付け・枠付けを定める場合には、累次の勧告等に基づき、必要最小限のものとすることに加え、努力義務やできる規定、通知等によるものについても、地方の自主性及び自立性を確保する観点から、できる限り新設しないようにするとともに、真に必要な場合でも、計画等の内容や手続は、各団体の判断にできる限り委ねることを原則とする。あわせて、計画等は、特段の支障がない限り、策定済みの計画等との統合や他団体との共同策定を可能とすることを原則とする。

新型コロナウイルス感染症対応として行われた国から地方への財政移転について、事業実施計画や決算等を踏まえて、その内容と成果の見える化を実施した上で、成果と課題の検証を進めるとともに、感染収束後、早期に地方財政の歳出構造を平時に戻す。

5. 経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進

多様な子供たちの特性や少子化など地域の実情等を踏まえ、誰一人取り残さず、可能性を最大限に引き出す学びを通じ、個人と社会全体のWell-being の向上を目指す。このため、コロナ禍を契機に進展した教育DXにおけるリアルとデジタルの最適な組合せの観点も踏まえつつ、あるべき資源配分の方向性を次期教育振興基本計画において示す。人と人の触れ合いも大事にしながら、1人1台端末環境を前提として、自分のペースで試行錯誤できる「個別最適な学び」と「協働的な学び」の具体化を早急に実現する。その際、教育DXと連動した教育のハード・ソフト・人材の一体的改革を、家庭環境、学習環境の格差防止や個人情報保護、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況、教師不足解消に留意しながら、総合的に推進する。発達段階も踏まえつつ、同一の年齢・内容・教材等の前提に過度にとらわれず、全ての学校段階において、探究・STEAM・起業家教育等の抜本強化を図る。35 人学級等についての小学校における多面的な効果検証等を踏まえつつ、中学校を含め、学校の望ましい教育環境や指導体制を構築していく。

学びの基盤的な環境整備を進める。非認知能力の育成に向け、幼児期及び幼保小接続期の教育・保育の質的向上、豊かな感性や創造性を育む文化芸術、スポーツ、自然等の体験や読書活動を推進する。ICTも効果的に活用し、不登校特例校の全都道府県等での設置や指導の充実の促進、SC・SSWの配置の促進等を通じた重大ないじめ・自殺や不登校への対応、特異な才能への対応や特別支援教育の充実、国内同等の学びの環境整備及びその特色をいかした教育の推進等の在外教育施設の機能強化を図るとともに、公民館等の社会教育施設の活用促進により、地域の人材育成力の強化を図る。新しい時代の学びを実現する教育環境を整備しつつ、組織的・実践的な安全対策に取り組むセーフティプロモーションスクールの考え方を取り入れた学校安全を推進する。

官民連携による持続可能な経済社会の実現に向け、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」及び分野別戦略を着実に実行する。研究開発成果の社会実装と国際市場獲得のため、標準活用戦略を加速する。破壊的イノベーションの創出を目指し、初期の失敗を許容し長期に成果を求める研究開発助成制度を推奨する。教育・研究・ガバナンスの一体的改革を推進し、国立大学法人運営費交付金について、客観・共通指標による成果に基づく配分の検証・見直しを不断に進めながら、私学助成等を含めた大学への財政支援の配分のメリハリを強化し、若手研究者の増加等につなげる。学校法人について、沿革や多様性に配慮しつつ、社会の要請に応え得る、実効性あるガバナンス改革の法案を、秋以降速やかに国会に提出する。国際性向上や人材の円滑な移動の促進、大型研究施設の官民共同の仕組み等による戦略的な整備・活用の推進、情報インフラの活用を含む研究DXの推進、各種研究開発事業における国際共同研究の推進等により、研究の質及び生産性の向上を目指す。

第5章 当面の経済財政運営と令和5年度予算編成に向けた考え方

1. 当面の経済財政運営について

現状、民需に力強さを欠く状況にある中、海外への所得流出を伴う物価高騰に直面しているほか、ロシアによるウクライナ侵略は、安全保障をめぐる環境を一変させた。こうした中にあって、経済財政運営においては、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の下、適切な実行を図るとともに、構造変化を牽引しつつ、「成長と分配の好循環」を拡大していく必要がある。

このため、第1章で示したとおり、2段階のアプローチで万全の経済財政運営を行う。

当面は、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を具体化する令和3年度補正予算及び令和4年度予算を着実に執行するとともに、令和4年度予備費等を活用した「コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」」を迅速かつ着実に実行し、景気の下振れリスクに対応し、消費や投資を始め民需中心の景気回復を着実に実現するべく、賃上げや価格転嫁など「成長と分配の好循環」に向けた動きを確かなものとしていく。

その上で、本基本方針や新しい資本主義に向けたグランドデザインと実行計画を前に進めるための総合的な方策を早急に具体化し、実行に移す。人への投資、デジタル、グリーンなど、社会課題の解決を経済成長のエンジンとする新しい資本主義を実現するため、官民が連携し、計画的で大胆な重点投資を推進することで、供給力強化と持続的な成長に向けた基盤を構築していく。

2.令和5年度予算編成に向けた考え方

① 前述の情勢認識を踏まえ、景気の下振れリスクにしっかり対応し、民需中心の景気回復を着実に実現することで、成長と分配の好循環に向けた動きを確かなものとしていく。

② 令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021 に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する。
ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない。

③ 新しい資本主義の実現に向け、「人への投資」、「科学技術・イノベーションへの投資」、「スタートアップへの投資」、「GXへの投資」、「DXへの投資」の分野について、計画的で大胆な重点投資を官民連携の下で推進する。

④ 政策の長期的方向性や予見可能性を高めるよう、事業の性質に応じた基金の活用、年度を跨いだ予算執行が可能となる柔軟かつ適切な対応等により、単年度主義の弊害是正に取り組む。また、歳出について、その中身をより結果につながる効果的なものとするよう、コロナ禍での累次の補正予算の使い道や成果を見える化するとともに、EBPMやPDCAの取組を推進し、効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)を徹底する。

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経済財政運営と改革の基本方針2021

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