マスメディア集中排除原則と放送対象地域の見直しの方向性(案)

デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会事務局
令和4年2月16日

1.マスメディア集中排除原則の見直しの方向性(案)

1.現状

  • マスメディア集中排除原則は、「基幹放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保することにより、基幹放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるようにする」(放送法第91条第2項第1号)ため、放送の多元性・多様性・地域性の確保を目指すもの。
  • 一の基幹放送事業者が二以上の基幹放送を行うこと(兼営)のほか、基幹放送事業者が「支配関係」を有する者を通じて二以上の基幹放送を行うこと(支配)を原則として禁止。
  • 「支配関係」の基準※1(地上基幹放送の場合)
    • 議決権保有割合:同一放送対象地域1/10超、異なる放送対象地域1/3超
    • 役員兼任割合:特定役員※2の1/5超
    • 代表権を有する特定役員※2又は常勤の特定役員※2の兼任
  • 特例※1として、ラジオ4局特例、特定隣接地域特例、経営基盤強化計画認定制度における役員兼任に係る特例、認定放送持株会社制度に係る特例等が設けられている。

※1支配関係の基準や特例は、基幹放送の業務に係る特定役員及び支配関係の定義並びに表現の自由享有基準の特例に関する省令(平成27年総務省令第26号)において規定。
※2特定役員とは、業務執行役員及び業務執行決定役員をいう。

2.課題

  • マスメディア集中排除原則の政策目的は今なお重要であるが、インターネットを含め情報空間が放送以外にも広がる現在においては、その政策目的と政策手段の関係が必ずしも適合的とは言えなくなっている部分があるのではないか。経営の選択肢を狭め、返って多元性等を損なうことにもなり兼ねないといった部分もあるのではないか。
  • マスメディア集中排除原則の政策手段が、放送番組の多様性・地域性の確保に必ずしもつながっていない部分もあるのではないか。
  • 経営基盤強化計画認定制度において役員兼任割合に係る特例が設けられているが、議決権保有割合に係る特例が設けられていないほか、経営基盤強化計画の申請・認定等の手続きが煩雑で使い勝手が必ずしもよくないという意見もある。
  • 事業者からは、経営の選択肢を増やす観点から、認定放送持株会社制度に係る特例等の緩和が要望されている。

3.見直しの方向性(案)

  • 将来的な経営リスク顕在化の可能性に備え、放送事業者における経営の選択肢を増やし、迅速な対応が可能となるよう、緩和の方向で検討すべきではないか。

【地上基幹放送関係】

  • 特にローカル局の経営力の向上を図り、隣接県に限らない経営の連携が可能とする観点からは、
    ①認定放送持株会社傘下の地上基幹放送事業者の地域制限(現行:12都道府県まで)の緩和のほか、
    ②認定放送持株会社制度によらない場合でも異なる放送対象地域に係る規制の緩和といった方策が考えられるのではないか。

    • ①について、緩和しつつも引き続き一定の数の制限を設けるべきか(その場合、具体的にどのような数が適当か)、あるいは制限を撤廃すべきか。
    • ②としてどのような特例が考えられるか。現在認められている特定隣接地域特例を拡張し、隣接していない地域でも兼営・支配を認めるべきか(ラジオ4局特例では、隣接していない地域での兼営・支配も可)。
    • 仮に②の議決権保有割合の制限を撤廃する場合、認定放送持株会社の認定効果※との関係性についてどう考えるか。
      ※認定放送持株会社の認定効果として、3分の1超の議決権を保有する地上基幹放送事業者を12都道府県まで傘下に収めることができる。
  • 他方、同一放送対象地域に係る支配関係の基準(現行:議決権保有割合1/10超)は、放送の多元性・多様性・地域性に与える影響を考慮し、現状維持とすべきかどうか。

【衛星基幹放送関係】

  • 認定放送持株会社制度の特例として認められている衛星基幹放送(BS放送)のトランスポンダ数の保有上限規制自体は、現時点においてはBS放送に割り当てられる総トランスポンダ数に変更がないことに鑑みると、現状維持とすべきか。
    • 認定放送持株会社傘下の衛星基幹放送(BS放送)事業者については、当時の圧縮技術の制約等にも鑑み、「0.5トランスポンダ」までと規定し、特例として実質的に1チャンネルまで保有を認めたところ。
    • 他方、動画配信の拡大など市場環境の変化による視聴者及び放送事業者のニーズの多様化や、圧縮技術の高度化等の技術の進展にも留意する必要が出てきているのではないか。
    • BS放送に割り当てられる総トランスポンダ数が変わらない状況にあっても、圧縮技術の高度化等により、同じ帯域の中により多くのチャンネルが収容できるようになり、画質の向上も図られるようになる。これにより、放送の多元性・多様性が一層確保されると考えられるのではないか。

【参考】基幹放送の業務に係る表現の自由享有基準(マスメディア集中排除原則)の概要

放送法第1条(目的)

  • 放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること
  • 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること

放送法第91条(基幹放送普及計画)

  • 基幹放送(※)をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保することにより、基幹放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるようにする
  • (※)基幹放送:地上テレビジョン放送、地上ラジオ放送、コミュニティ放送、BS放送、東経110度CS放送等(東経124/128度CS放送、ケーブルテレビ等は含まれない)

一の者が保有することができる放送局の数を制限することにより、多元性、多様性、地域性の三原則を実現

放送法第2条32号及び第93条第1項

  • 基幹放送の業務の認定基準としてマスメディア集中排除原則の基本的な部分を法定
<認定基準のうちマスメディア集中排除原則の部分>(放送法第93条第1項第5号)

基幹放送業務を行おうとする者が、次のいずれにも該当しないこと。
イ 基幹放送事業者
ロ イに掲げる者に対して『支配関係』を有する者(X)
ハ イ又はロに掲げる者がある者に対して『支配関係』を有する場合におけるその者(Y・Z)

2.放送対象地域の見直しの方向性(案)

1.現状

  • 放送対象地域は、「同一の放送番組の放送を同時に受信できることが相当と認められる一定の区域」(放送法第91条第2項第2号)であり、その地域の自然的、経済的、社会的、文化的諸事情や周波数の効率的使用を考慮して基幹放送普及計画(告示)において定めることとされている(放送法第91条第3項)。
  • 基幹放送普及計画においては、例えば、地上テレビジョン放送について、放送対象地域は広域放送(関東広域圏、中京広域圏、近畿広域圏)及び県域放送と定められているほか、当該放送対象地域ごとに放送系(同一の放送番組の放送を同時に行うことのできる基幹放送局の総体(放送法第91条第2項第3号))の数の目標が定められている。

2.課題

  • 人口減少が進むほか、インターネットを含め情報空間が放送以外にも広がる現在においては、県域を基本とする現在の放送対象地域は、必ずしも放送の地域性の確保につながらない部分があるのではないか。
  • 現在の放送対象地域は、地域社会の実態に必ずしも合っておらず、地域情報の発信という観点から障害になっている部分もあるのではないか。
  • 経営基盤強化計画認定制度では放送番組の同一化が可能であるが、(経営リスクが顕在化する前に)積極的な経営戦略を描きたい場合に利用できない、経営基盤強化計画の申請・認定等の手続きが煩雑で使い勝手が必ずしもよくないといった意見もある。
  • 事業者からは、将来的な経営リスク顕在化の可能性に備え、固定的費用の抑制の観点から、複数の放送対象地域における放送の同一化が要望されている。

3.見直しの方向性(案)

  • 放送事業者における経営の選択肢を増やす観点から、同一の放送番組の放送対象となる地域について柔軟化を図る方向で検討すべきではないか。
  • 具体的には、
    ①複数の放送対象地域を1つの放送対象地域として新たに定めることや、
    ②放送対象地域は現行から変更せずに複数の放送対象地域において放送番組の同一化が可能となる制度を設ける
    といった選択肢が考えられるのではないか。

    • 選択肢①については、放送番組の同一化を希望しない放送事業者にとっては経営の選択肢を狭めてしまうことや、マスメディア集中排除原則の支配関係の基準が(少なくとも現行の基準を前提にした場合は)高まる(議決権保有割合:1/3→1/10)等の課題がある。
    • 選択肢②については、経営基盤強化計画認定制度において放送番組の同一化が可能となっていることとの整合性について一定の整理が必要。
  • 同一の放送番組の放送対象となる地域について柔軟化を図る場合、地域情報の発信を確保するための仕組を併せて措置すべきか。
    • 地域情報の発信を確保するための仕組として、具体的にどのようなものが考えられるか。
    • 複数の放送対象地域における放送番組の同一化を可能とする場合には、それぞれの放送対象地域において地域情報の発信が確保されているかを視聴者が確認できる仕組とすべきではないか。
    • 事業者からは、第4回会合において、複数の放送対象地域において放送番組の同一化を行う場合でも、地域情報発信の維持が大前提であり、既存の取材拠点の機能は堅持するとの説明があった。

【参考】放送対象地域の概要

放送対象地域の概念

放送対象地域とは、同一の放送番組の放送を同時に受信できることが相当と認められる一定の区域(放送法第91条第2項第2号)のことであり、その地域の自然的、経済的、社会的、文化的諸事情や周波数の効率的使用を考慮して、基幹放送普及計画において規定(放送法第91条第3項)。

放送対象地域の効果

(1)放送対象地域ごとに放送系の数の目標を設定

基幹放送の計画的な普及及び健全な発達を図るため、基幹放送普及計画において、放送対象地域ごとに普及させる放送系の数の目標を設定。

(2)放送対象地域内では、難視聴解消の義務又は努力義務

基幹放送事業者は、放送対象地域内で、当該基幹放送があまねく受信できるように努めることとされている。
(NHKには、テレビジョン放送及び中波放送・超短波放送のいずれかが全国において受信できるように措置をすることが義務付け)

放送対象地域の例

(1)規定の仕方

①放送の主体(NHK、放送大学学園、民間基幹放送事業者)

②放送の種類(テレビジョン放送、中波放送、超短波放送等)等に基づき設定

(2)具体例(地上テレビジョン放送)

①NHK

  • 関東広域圏、関東広域圏にある県を除く各道府県

②民間基幹放送事業者

  • 広域圏:関東広域圏、近畿広域圏、中京広域圏
  • 複数の県域:鳥取県及び島根県、岡山県及び香川県
  • その他:上記以外の各都道府県

参照

総務省トップ > 組織案内 > 研究会等 > デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会 > デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会(第5回)配付資料

マスメディア集中排除原則と放送対象地域の見直しの方向性(案)

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