倫理指針 規制

Let's 解読!倫理指針 Part 10 「インフォームド・コンセントを受ける手続等・その3」

「~~~~~の場合のインフォームド・コンセント」というパートも、そろそろ終わりです。

 

⑶ 他の研究機関に既存試料・情報を提供しようとする場合のインフォームド・コンセント

他の研究機関に対して既存試料・情報の提供を行う者は、必ずしも文書によりインフォームド・コンセントを受けることを要しないが、文書によりインフォームド・コンセントを受けない場合には、5 の規定による説明事項( 既存試料・情報を提供する旨を含む。)について口頭によりインフォームド・コンセントを受け、説明の方法及び内容並びに受けた同意の内容に関する記録を作成しなければならない。ただし、これらの手続を行うことが困難な場合であって次のアからウまでのいずれかに該当するときは、当該手続を行うことなく、既存試料・情報を提供することができる。

要約すると、

他の施設に試料・情報を提供するなら、同意は文書か口頭で必ず取りなさい。「同意取れないので免除して」、という言い訳が通用するのは「匿名化されている場合」か「別の研究で同意を取得済で、それを今回にも応用していいと言える場合」か「社会的に重要な研究オプトアウトが保障されている場合」のいずれかの場合だけですよ。

となります。

ア 当該既存試料・情報が次に掲げるいずれかに該当していること。

(ア) 匿名化されているもの( 特定の個人を識別することができないものに限る。) であること。

(イ) 匿名加工情報又は非識別加工情報であること。

(ウ) 学術研究の用に供するときその他の当該既存試料・情報を提供することに特段の理由があり、かつ、6 ① から④ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開している場合であって、匿名化されているもの( どの研究対象者の試料・情報であるかが直ちに判別できないよう、加工又は管理されたものに限る。) であること。

江藤先生
あっちこっちして忙しいですが、6 ① から④とは次の事項です。

① 試料・情報の利用目的及び利用方法( 他の機関へ提供される場合はその方法を含む。)

② 利用し、又は提供する試料・情報の項目

③ 利用する者の範囲

④ 試料・情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称

イ 既存試料・情報がアに該当しない場合であって、学術研究の用に供するときその他の当該既存試料・情報を提供することに特段の理由があるときは、次に掲げる要件の全てを満たしていること。

(ア) 当該研究の実施及び当該既存試料・情報の他の研究機関への提供について、6 ① から⑥ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開していること。

(イ) 研究が実施されることについて、原則として、研究対象者等が拒否できる機会を保障すること。

江藤先生
あっちこっちして忙しいですが、6 ① から⑥とは次の事項です。

① 試料・情報の利用目的及び利用方法( 他の機関へ提供される場合はその方法を含む。)

② 利用し、又は提供する試料・情報の項目

③ 利用する者の範囲

④ 試料・情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称

⑤ 研究対象者又はその代理人の求めに応じて、研究対象者が識別される試料・情報の利用又は他の研究機関への提供を停止する旨

⑥ ⑤ の研究対象者又はその代理人の求めを受け付ける方法

ウ 社会的に重要性の高い研究に用いられる既存試料・情報が提供される場合であって、当該研究の方法及び内容、研究に用いられる試料・情報の内容その他の理由によりア及びイによることができないときには、9 ⑴ ① から④ までの要件の全てに該当していなければならない。また、9 ⑵ ① から③ に掲げるもののうち適切な措置を講じなければならない。

ここで、9 ⑴ ① から④ までの要件と、9 ⑵ ① から③ に掲げられている措置とはどんなものか、見てみましょう。

なお、9とは「9 インフォームド・コンセントの手続等の簡略化」のことです。

9 ⑴ ① から④ までの要件

⑴ 研究者等又は既存試料・情報の提供を行う者は、次に掲げる要件の全てに該当する研究を実施しようとする場合には、研究機関の長の許可を受けた研究計画書に定めるところにより、1 及び4 の規定による手続の一部を簡略化することができる。

① 研究の実施に侵襲( 軽微な侵襲を除く。) を伴わないこと。

② 1 及び4 の規定による手続を簡略化することが、研究対象者の不利益とならないこと。

③ 1 及び4 の規定による手続を簡略化しなければ、研究の実施が困難であり、又は研究の価値を著しく損ねること。

社会的に重要性が高い研究と認められるものであること。

全てに該当しなければならないということですが、④の社会的に重要性が高いと認められるためには、通常は民間企業主導というのは考えにくいのが現状です。

そんなに社会的に重要性が高いならば、民間企業に委ねるのではなく、公的な研究機関が主導するべきではないか、ということですね。

9 ⑵ ① から③ に掲げられている措置

⑵ 研究者等は、⑴ の規定により1 及び4 の規定による手続が簡略化される場合には、次に掲げるもののうち適切な措置を講じなければならない。

① 研究対象者等が含まれる集団に対し、試料・情報の収集及び利用の目的及び内容( 方法を含む。) について広報すること。

研究対象者等に対し、速やかに、事後的説明( 集団に対するものを含む。) を行うこと。

③ 長期間にわたって継続的に試料・情報が収集され、又は利用される場合には、社会に対し、その実情を当該試料・情報の収集又は利用の目的及び方法を含めて広報し、社会に周知されるよう努めること。

江藤先生

研究開始までに、研究の対象者から同意を得るのが難しいのなら、何とかして研究対象者に知らしめなさい、ということですね。

例えば、東京都の医療機関を受診した人達の電子カルテ情報を使うのであれば、その人達全員が漏れなく含まれる集団に対して知らしめる(広報する)ことで、オプトアウトの機会(嫌なら嫌と言える機会)を保障する、という具合です。

⑷ 既存試料・情報の提供のみを行う者の手続

既存試料・情報の提供のみを行う者は、⑶ の手続に加えて、次に掲げる要件の全てを満たさなければならない。

ア 既存試料・情報の提供のみを行う者が所属する機関の長は、適正に既存試料・情報を提供するために必要な体制及び規程を整備しなければならない。
江藤先生
少なくとも手順書の整備は必要ですね。体制については、人事情報も含まれるので公表は難しい部分がありそうですが、研究契約を結ぶ際には何らかの方法で確認し合意形成することが必要でしょう。
イ 既存試料・情報の提供のみを行う者は、⑶ アにより既存試料・情報の提供を行う場合、その提供について既存試料・情報の提供のみを行う機関の長が把握できるようにしていなければならない。
江藤先生
そりゃあ、機関の長の許可なく、施設の保管する試料・情報を他のところに提供されたらたまったものではないですよね。
ウ 既存試料・情報の提供のみを行う者は、⑶ イ及びウより既存試料・情報を提供しようとするときは、倫理審査委員会の意見を聴いた上で、既存試料・情報の提供のみを行う機関の長の許可を得ていなければならない。
江藤先生
イとウの時間的な前後関係は逆な気がしますが、とにかく「倫理審査委員会の意見を聴いて」「機関の長の許可を得ておく」ということが最低限必須とされています。

⑸ ⑶ の手続に基づく既存試料・情報の提供を受けて研究を実施しようとする場合のインフォームド・コンセント

ア 研究者等は、次に掲げる全ての事項を確認しなければならない。
江藤先生
試料・情報を受け取る側の機関も、何も確認せず「あざっす!」と受け取るのはダメです、ということですね。

(ア) 当該試料・情報に関するインフォームド・コンセントの内容又は⑶ の規定による当該試料・情報の提供に当たって講じた措置の内容

江藤先生
その試料・情報は、ちゃんと研究対象者から同意を得られているか?をきちんと確認しましょう。

(イ) 当該既存試料・情報の提供を行った他の機関の名称、住所及びその長の氏名

江藤先生
その試料・情報は、どの施設から提供されたものなのか、きちんとわかる状態にしておきましょう。

(ウ) 当該既存試料・情報の提供を行った他の機関による当該試料・情報の取得の経緯

江藤先生
その試料・情報は、どんな経緯で入手されたのかも、きちんと確認しておきましょう。
イ 試料・情報の提供を受ける場合のインフォームド・コンセント等の手続

(ア) ⑶ ア(ウ)に該当することにより、既存試料・情報の提供を受けて研究しようとする場合には、当該研究の実施について、6 ① から④ までの事項を公開しなければならない。

(イ) ⑶ イに該当することにより、既存試料・情報の提供を受けて研究しようとする場合には、6 ① から⑥ までの事項を公開し、かつ研究が実施されることについて、原則として、研究対象者等が同意を撤回できる機会を保障しなければならない。

(ウ) ⑶ ウに該当することにより、既存試料・情報の提供を受けて研究しようとする場合には、9 の規定による適切な措置を講じなければならない。

江藤先生
もはや暗号ですね。(3) ア(ウ) とかイとかウとかは、次の通りです。照らし合わせて読んでみましょう。

⑶ ア(ウ):学術研究の用に供するときその他の当該既存試料・情報を提供することに特段の理由があり、かつ、6 ① から④ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開している場合であって、匿名化されているもの

⑶ イ:学術研究の用に供するときその他の当該既存試料・情報を提供することに特段の理由があるとき

⑶ ウ:社会的に重要性の高い研究に用いられる既存試料・情報が提供される場合であって、当該研究の方法及び内容、研究に用いられる試料・情報の内容その他の理由によりア及びイによることができないとき

同意撤回の機会保障は「(3) イ」の時だけといった違いもあったりと、運用上、だいぶ差があります。

⑹ 海外にある者へ試料・情報を提供する場合の取扱い

海外にある者に対し、研究に用いられる試料・情報を提供する場合( 当該試料・情報の取扱いの全部又は一部を海外にある者に委託する場合を含む。) は、当該者が個人情報の保護に関する法律施行規則( 平成2 8年個人情報保護委員会規則第3 号。以下「個人情報保護法施行規則」という。) 第1 1条第1 項各号に定められた国にある場合若しくは個人情報保護法施行規則に定める基準に適合する体制を整備している場合又は法令の規定により試料・情報を提供する場合を除き、当該者に対し研究に用いられる試料・情報を提供することについて、研究対象者等の適切な同意を受けなければならない。ただし、適切な同意を受けることが困難な場合であって次のアからウまでのいずれかに該当するときには、当該研究に用いられる試料・情報を海外にある者に提供することができる。

江藤先生
海外へ試料・情報を提供する場合は、海外への提供について適切な同意を受ける必要があります。ただし、下記の場合は除く、とも明言されています。

  • 個人情報保護法施行規則に定める国に提供する場合
  • 個人情報保護法施行規則の基準に適合する体制整備ができている場合
  • 法令の規定により試料・情報を提供する場合

ア 当該試料・情報が次に掲げるいずれかに該当していることについて、試料・情報の提供を行う機関の長が当該試料・情報の提供について把握できるようにしていること。

① 匿名化されているもの( 特定の個人を識別することができないものに限る。) であること。

② 匿名加工情報又は非識別加工情報であること。

③ 学術研究の用に供するときその他の当該試料・情報を提供することに特段の理由があり、かつ、6 ① から④ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開している場合であって、匿名化されているもの( どの研究対象者の試料・情報であるかが直ちに判別できないよう、加工又は管理されたものに限る。) であること。

イ アに該当しない場合であって、学術研究の用に供するときその他の当該試料・情報を提供することに特段の理由があるときは、次に掲げる要件の全てを満たしていることについて、倫理審査委員会の意見を聴いた上で、試料・情報の提供を行う機関の長の許可を得ていること。

① 当該研究の実施及び当該試料・情報の海外にある者への提供について、6 ① から⑥までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開していること。

② 研究が実施されることについて、原則として、研究対象者等が拒否できる機会を保障すること。

ウ ア又はイのいずれにも該当しない場合であって、社会的に重要性の高い研究と認められるものであるときにおいては、9 ⑵ ① から③ までのもののうち適切な措置を講じることについて、倫理審査委員会の意見を聴いた上で、試料・情報の提供を行う機関の長の許可を得ていること。

 

前々回と前回の記事はこちら

新しく試料・情報を集める場合

Let's 解読!倫理指針 Part 08 「インフォームド・コンセントを受ける手続等・その1」

自施設の試料・情報を二次利用する場合

Let's 解読!倫理指針 Part 09 「インフォームド・コンセントを受ける手続等・その2」

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