エビデンス全般

Let's 解読!倫理指針 Part 08 「インフォームド・コンセントを受ける手続等・その1」

2020年11月13日

江藤先生

第8インフォームド・コンセントを受ける手続等は、次の項目から成ります。

  1. インフォームド・コンセントを受ける手続等
  2. 電磁的方法によるインフォームド・コンセント
  3. 試料・情報の提供に関する記録
  4. 研究計画書の変更
  5. 説明事項
  6. 研究対象者等に通知し、又は公開すべき事項
  7. 同意を受ける時点で特定されなかった研究への試料・情報の利用の手続
  8. 研究対象者に緊急かつ明白な生命の危機が生じている状況における研究の取扱い
  9. インフォームド・コンセントの手続等の簡略化
  10. 同意の撤回等

そのうち「1 インフォームド・コンセントを受ける手続等」の部分が、非常に複雑かつ文字数も多いので、いくつかに分けて解説します。

「1 インフォームド・コンセントを受ける手続等」は、倫理指針において、最も読みづらく、そして最も重要なパートと言ってもいいでしょう。

1 インフォームド・コンセントを受ける手続等

研究者等が研究を実施しようとするとき又は既存試料・情報の提供を行う者が既存試料・情報を提供しようとするときは、研究機関の長の許可を受けた研究計画書に定めるところにより、それぞれ次の⑴ から⑸ までの手続に従って、原則としてあらかじめ研究者等においてインフォームド・コンセントを受けなければならない。ただし、法令の規定により既存試料・情報を提供する場合又は既存試料・情報の提供を受ける場合については、この限りでない。

江藤先生

インフォームド・コンセントを受ける手続きは、主に下記のパターンがあります。

  • 新たに試料・情報を取得して研究を実施しようとする場合
  • 自らの研究機関において保有している既存試料・情報を用いて研究を実施しようとする場合
  • 他の研究機関既存試料・情報を提供しようとする場合
  • 既存試料・情報の提供を受けて研究を実施しようとする場合

上の4つに加えて、「既存試料・情報の提供のみを行う」ことや「海外にある者へ試料・情報を提供する」こともあるため、(1) から (6) まで計6つのパートから成っているわけです。

新たに試料・情報を取得して研究を実施しようとする場合のインフォームド・コンセント

研究者等は、それぞれ次のア又はイの手続に従って研究を実施しなければならない。

 

江藤先生
新たに試料・情報を取得する研究を計画する場合、その研究が侵襲を伴うか、伴わないか、をまず考えます。

ア侵襲を伴う研究

研究者等は、5 の規定による説明事項を記載した文書により、インフォームド・コンセントを受けなければならない。

江藤先生

新たに試料・情報を取得する研究で、侵襲を伴う場合は、フルのインフォームド・コンセントを使って同意取得を得ることが必須です。

従来の治験に近い、厳格な計画と実施が求められるといってもいいでしょう。

倫理指針において最も厳しく管理されるカテゴリに分類されるので、同意説明文書も、さながらラーメン全部盛りのように、ありとあらゆる要素を組み込むことになります。

侵襲を伴う研究をこれから実施しようとするあなた!頑張ろう!

イ侵襲を伴わない研究

(ア) 介入を行う研究

研究者等は、必ずしも文書によりインフォームド・コンセントを受けることを要しないが、文書によりインフォームド・コンセントを受けない場合には、5 の規定による説明事項について口頭によりインフォームド・コンセントを受け、説明の方法及び内容並びに受けた同意の内容に関する記録を作成しなければならない。

江藤先生

新たに試料・情報を取得する研究で、「侵襲を伴わないけれど、介入を行う研究」とはそもそも何でしょう?

現行の倫理指針では「研究目的で行われる、穿刺、切開、薬物投与、放射線照射、心的外傷に触れる質問等によって、研究対象者の身体又は精神に傷害又は負担が生じることをいう。侵襲のうち、研究対象者の身体又は精神に生じる傷害又は負担が小さいものを「軽微な侵襲」という。」と定義されています。

「研究対象者の身体又は精神に傷害又は負担が生じる」と侵襲ありとなるので、「研究対象者の身体又は精神に傷害又は負担が生じない」のであれば侵襲なしです。

例えば、今までは2か月に1回の頻度で受診していた患者さんを、3か月に1回の受診にして、受診頻度を落としても病気や症状のコントロールが上手く行くか?という研究などが、侵襲なし・介入なしの研究の1つとして考えられるでしょう。

(イ) 介入を行わない研究

人体から取得された試料を用いる研究

研究者等は、必ずしも文書によりインフォームド・コンセントを受けることを要しないが、文書によりインフォームド・コンセントを受けない場合には、5 の規定による説明事項について口頭によりインフォームド・コンセントを受け、説明の方法及び内容並びに受けた同意の内容に関する記録を作成しなければならない。

江藤先生

介入を行わない研究でも、まず大きく下の2つに分けられます。

  • 「人体から取得された試料(血液、唾液、細胞、その他)を使う研究」
  • 「人体から取得された試料(血液、唾液、細胞、その他)を使わない研究」

② 人体から取得された試料を用いない研究
(ⅰ) 要配慮個人情報を取得して研究を実施しようとする場合

研究者等は、必ずしもインフォームド・コンセントを受けることを要しないが、インフォームド・コンセントを受けない場合には、原則として研究対象者等の適切な同意を受けなければならない。

ただし、適切な同意を受けることが困難な場合であって、学術研究の用に供するときその他の研究に用いられる情報を取得して研究を実施しようとすることに特段の理由があるときは、当該研究の実施について、6 ① から⑥ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開し、研究が実施又は継続されることについて、研究対象者等が拒否できる機会を保障することによって、取得した要配慮個人情報を利用することができる。

江藤先生

要配慮個人情報の定義は、今後見直される可能性がありますが、現状、要配慮個人情報を使う研究では実質、インフォームド・コンセントの取得は必須です。

「研究対象者等の適切な同意」という表現がありますが、こちらも同意取得を得るという意味では、インフォームド・コンセントに非常に近いです。取り扱いについて不透明な部分も見受けられるので、インフォームド・コンセントを取った方が安全ですし、運用上も安心でしょう。

犯罪歴などと同様に病歴まで含まれている点が特に問題視されています。医学系研究で病歴の情報を使わない研究は、ほとんどないと言っていいですから。そのため、現状では個人識別性を消したものを使って、病歴は含むが個人識別性がないので要配慮個人情報ではない、という方法でなんとか病歴を使うケースが少なくありません。

「研究が実施又は継続されることについて、研究対象者等が拒否できる機会を保障する」というのが、いわゆるオプトアウトです。

(ⅱ) (ⅰ)以外の場合

研究者等は、必ずしもインフォームド・コンセントを受けることを要しないが、インフォームド・コンセントを受けない場合には、当該研究の実施について、6① から⑥ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開し、研究が実施又は継続されることについて、研究対象者等が拒否できる機会を保障しなければならない( ただし、研究に用いられる情報( 要配慮個人情報を除く。) を共同研究機関へ提供する場合は、学術研究の用に供するときその他の研究に用いられる情報を取得して共同研究機関へ提供することに特段の理由があるときに限る。) 。

なお、研究協力機関が、当該研究のために新たに試料・情報を取得( 侵襲( 軽微な侵襲を除く。) を伴う試料の取得は除く。) し、研究機関がその提供を受ける場合についてのインフォームド・コンセントは、研究者等において受けなければならない。また、研究協力機関においては、当該インフォームド・コンセントが適切に取得されたものであることについて確認しなければならない。

江藤先生

研究機関、研究協力機関、研究者等、の定義を改めて見直さないと分かりにくいのですが、「研究者等は研究機関に属する者」なので、「研究協力機関に、外部の者(研究機関に属する研究者等)が出入りして、患者さんから同意を得るなんて、どうやってやるんだ?」という声が上がっています。このあたりはガイダンスで誤解の無いように提示されるでしょうから、発表をお待ちしましょう。

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