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経済財政運営と改革の基本方針2018

経済財政運営と改革の基本方針2018 ~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~

目次

第1章 現下の日本経済

1.日本経済の現状と課題、対応の方向性

(1)日本経済の現状と課題

① 経済財政の現状

5年半に及ぶアベノミクスの推進により、日本経済は大きく改善している。デフレではない状況を作り出す中で、名目GDPと実質GDPがともに過去最大規模に拡大した。政権交代以降、景気回復は、緩やかではあるが長期間にわたって継続しており、今回の回復の長さは戦後2番目となっている可能性が高い。

こうした中、成長から分配への経済の好循環は着実に回りつつある。企業収益は過去最高を記録し、設備投資は、リーマンショック前の水準を超えて拡大しており、製造業、非製造業ともに増加している。企業部門の改善は、家計部門に広がり、国民生活に密接に関わる雇用・所得環境も大きく改善している。有効求人倍率は、1970年代前半以来44年ぶりの高さとなり、全都道府県で1を超える状態が続くとともに、失業率は25年ぶりの水準まで低下している。労働参加率は女性や高齢者を中心に上昇し、人口減少下にあっても、就業者数は5年で251万人増加した。一方で、企業の人手不足感は、バブル期以来の水準にまで強まっている。

賃金は、春季労使交渉では、中小企業を含め、定期昇給を含む月例ベースで2%程度の高い上昇が続いている。多くの企業で5年連続のベースアップが行われ、2018年についてはその額も大半で前年を上回っているほか、賞与・一時金も前年を大きく上回る水準となっており、年収ベースで3%以上の積極的な賃上げが行われている。雇用・所得環境の改善が続く下で、GDPの約6割を占める個人消費の伸びは、2017年度には3年連続のプラスとなり、力強さには欠けるものの、持ち直しが続いている。

景気回復が長期にわたり続いていることにより、日本経済は、デフレ脱却への道筋を確実に進んでいる。リーマンショック以降マイナス基調が続いていた需給ギャップは縮小し、2017年に入ってプラス基調に転じている。傾向として、内外需要の増加により現実のGDPが経済の供給力(潜在GDP)を上回って推移する状態にあるとみられる。この中で、消費者物価上昇率は、足元ではエネルギー価格の上昇等の影響があるものの、幅広い品目で上昇し、基調として緩やかに上昇している。日本銀行は、2%の物価安定目標の下、金融緩和を推進し、目標をできるだけ早期に実現することを目指すこととしている。

財政面では、国・地方の歳入は、2014年4月の消費税率の5%から8%への引上げや景気回復の継続に伴い増加する一方、歳出は、2016年度から2018年度の集中改革期間における一般歳出等の目安に沿った予算編成が行われ、国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス。以下「PB」という。)は、2012年度の▲5.5%から2018年度には▲2.9%と赤字幅が縮小する見込みとなっている。しかしながら、経済・財政再生計画(以下「再生計画」という。)策定当初の見込みと比べると、成長低下に伴い税収の伸びが当初想定より緩やかだったことや、消費税率の8%から10%への引上げの延期、補正予算の影響により、PBの改善は遅れ、さらに、「新しい経済政策パッケージ」において、人づくり革命の安定的財源を確保するために、2019年10月に予定されている消費税率引上げ分の使い道の見直しを行った。これらの要因等により、2020年度のPB黒字化目標の達成は困難となった。また、債務残高対GDP比は、2012年度末の179.2%から2018年度末には187.8%へと緩やかに上昇する見込みである。

中長期的な視野に立つと、人口減少・少子高齢化は、経済再生と財政健全化の両面での制約要因となり続ける。2024年には歴史上初めて50歳以上の人口が5割を超えることになる。その後も、若年人口や生産年齢人口が急速に減少していく一方、高齢者人口は2040年頃のピークに向け増加を続け、75歳以上の後期高齢者の総人口に対する比率は2030年頃には2割に近づく。この中で、女性や高齢者の労働参加が進んだ場合でも、2030年までに就業者数は減少に転じている可能性が高い。このような、人口減少の加速化、平均寿命の延伸、高齢者像の変化など様々な経済社会の変化を踏まえ、年齢による画一的な考え方やそれに基づく制度を見直す必要がある。その際、人生100年時代の到来を見据え、個人や企業の役割、社会保障教育、住宅政策や労働政策、さらにはマイナンバー制度の利活用やテクノロジーの飛躍的発展との関係を踏まえた幅広い視点に立った議論が求められる。

② 今後の課題

需給ギャップが縮小しプラス基調に転じている一方で、潜在成長率は、労働力人口の高まり等により改善しているものの、労働生産性の伸びが傾向的に低下してきたことから足元で1%程度にとどまっているとみられ、その引上げが持続的な経済成長の実現に向けた最重要課題となっている。需給ギャップの縮小は、人手不足感の高まりという形に表れ、中堅企業・中小企業・小規模事業者において特に強まっている。少子高齢化が中長期的に経済成長を制約する要因となる中で、人手不足に対処しつつ、この制約を克服し、持続的な成長経路を実現していくためには、質・量の両面での人材の確保とともに、イノベーション力の強化など生産性の向上により経済のサプライサイドを強化し、潜在成長率を高めていくことが急務である。

また、経済の好循環の拡大に向けては、生産性の向上を、分配面においても力強く継続的な賃金上昇、所得の拡大につなげ、デフレ脱却を確実なものとする必要がある。加えて、成長の果実を都市から地方、大企業から中小企業へ波及させるとともに、多様な働き方の下で、若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、誰しもが活躍できる社会を実現することが不可欠である。

少子高齢化は、経済面で成長の制約要因であるとともに、財政面においては、若年人口の減少による医療費等の減少という側面がある一方で、社会保障の支え手の減少や、高齢者の医療・介護費による歳出増加圧力を通じて財政健全化の足かせとなる。特に若年層に強い社会保障に対する将来不安や、社会保険料の負担増、教育費用など子育て負担は、現役世代の消費意欲を抑制し、個人消費の回復が力強さを欠く要因にもなっている。全世代型社会保障を確立し、その持続性を確保する観点から、歳出改革の加速・拡大を図るとともに、2019年10月に予定されている消費税率の8%から10%への引上げを実施し、少子化対策や年金、医療、介護に対する安定的な財源を確保することが課題である。

財政健全化に向けては、これまでの目標である2020年度のPB黒字化の達成が困難となったが、PB黒字化を目指すという目標を堅持し、この「経済財政運営と改革の基本方針2018」において、その達成時期を明示するとともに、裏付けとなる新たな計画を提示し、これを実行に移していくことが必要である。

(2)対応の方向性

① 潜在成長率の引上げ

少子高齢化の進行、人手不足の高まりの中で、潜在成長率を引き上げ、経済成長の壁を打ち破っていくためには、サプライサイドを抜本強化するための改革が何よりも重要である。労働力の面においては、女性が子育てをしながら働ける環境や高齢者が意欲をもって働ける環境を整備することにより、更なる労働参加の促進を図り、これを所得の向上、消費の拡大につなげるとともに、専門的・技術的分野における外国人材の受入れを進める。また、人生の多段階における人材投資の機会を確保・強化することにより、高い価値を生む多様な人材を確保し、少子高齢化による成長制約要因を緩和していくことが必要である。

加えて、一人ひとりが生み出す付加価値を引き上げていく観点から、AI(人間で言えば脳に相当)、センサー(人間の目に相当)、IoT(人間の神経系に相当)、ロボット(人間の筋肉に相当)といった第4次産業革命による技術革新について中小企業を含む広範な生産現場への浸透を図るなど企業の前向きな設備投資を引き出す取組が必要である。そして、新陳代謝を含め資源の柔軟な移動を促し、従来の発想にとらわれない非連続的なイノベーションを生み出す環境を整備することにより労働生産性を引き上げる取組が不可欠である。

あわせて、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会前後の需要変動を乗り越え、インバウンドを継続的に拡大させ、成長力あふれるアジアの中間層を取り込むなど、中長期的に持続的な成長基盤を構築していく観点から、「Society 5.0」の社会実装を含む波及効果の大きい投資プロジェクトを計画的に実施していくことが重要である。成長戦略については、思い切った強化に向けた議論を本格化する。

② 消費税率引上げと需要変動の平準化

今後の財政健全化の道筋を展望すれば、全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するとともに、現役世代の不安等に対応し、個人消費の拡大を通じて経済活性化につなげるためには、2019年10月1日に予定されている消費税率の8%から10%への引上げを実現する必要がある。

前回の2014年4月の消費税率引上げの際には、消費税率引上げに伴い物価上昇率が大きく高まり、耐久財を中心に個人消費が税率引上げ直前の2014年1-3月期に前期比2%増加した後、引上げ直後の同年4-6月期には4.7%減少するなど駆け込み需要と反動減といった大きな需要変動が生じ、景気の回復力が弱まることとなった。加えて、企業においては、税率引上げ前後で設備稼働率が大きく変動するなど資源の利用に非効率性が生じた。

これに対し、ドイツや英国といった欧州諸国においては、付加価値税率の引上げ前後の景気変動が小さく抑えられている。前回の消費税率引上げ時の経験や欧州の事例にも学びつつ、2019年10月1日における消費税率の引上げに向けては、消費税率引上げによる駆け込み需要・反動減といった経済の振れをコントロールし、需要変動の平準化、ひいては景気変動の安定化に万全を期す。

③ 経済再生と両立する新たな財政健全化目標へのコミットメント

「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針を堅持し、財政健全化を、着実、かつ景気を腰折れさせることがないようなペースと機動性をもって行う。少子高齢化の進展や現役世代の減少などの人口構造の変動を踏まえれば、団塊世代が75歳に入り始めるまでに、社会保障制度の基盤強化を進め、全ての団塊世代が75歳以上になるまでに、財政健全化の道筋を確かなものとする必要がある。こうした観点から、新たな財政健全化目標として、経済再生と財政健全化に着実に取り組み、2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化を目指すこととする。同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指すことを堅持する。2025年度PB黒字化に向けては、団塊世代が75歳に入り始める2022年度の前までの2019年度から2021年度を、社会保障改革を軸とする「基盤強化期間」と位置付け、経済成長と財政を持続可能にするための基盤固めを行うこととする。同期間内に編成される予算については、財政健全化目標と毎年度の予算編成を結び付けるための仕組みを示し、社会保障関係費などの歳出について、これに沿った予算編成を行う。

新たな財政健全化目標の達成のため、2025年度までを計画の対象期間とする、新たな経済・財政再生計画を本基本方針の第3章に明記し、これを確実に実行していく。

④ 地方創生、地域活性化の推進

アベノミクスの成果を全国津々浦々まで一層浸透させ、地域においても成長と分配の好循環を実感できるよう取り組む。

東京一極集中の傾向は依然として継続している。地方への新しいひとの流れをつくるために、個々人の「人生の再設計」とも合わせ、UIJターンなど様々なライフステージに応じた移住や交流を推進する。

人口減少の中、広域的な経済圏を念頭に置きながら、地域の連携を深め、広域レベルで政策を推進する必要がある。

第4次産業革命の技術革新により、これまでの地方の地理的制約等を解消するとともに、地域が持つ魅力を最大限引き出し、自助の精神を持って取り組む地方を強力に支援する。
これらの政府の取組についての国民の理解や世界への発信強化のため、内閣の基本方針について一層の理解を得るよう、内外広報を積極的かつ効果的に展開する。

2.東日本大震災等からの復興

(1)東日本大震災からの復興・再生

東北の復興なくして、日本の再生なし。震災から7年以上が経ち、これまでの取組の結果、生産設備はほぼ復旧、生活に密着したインフラの復旧も概ね完了し、住宅の再建も2018年度中に概ね終える見込みとなるなど、復興は着実に進展している。原発事故によって大きな被害を受けた福島の被災地域では、帰還困難区域を除く大半の地域で避難指示が解除され、帰還困難区域でも特定復興再生拠点の整備が始まるなど、復興・再生に向けた動きが進んでいる。

復興期間10年間の後期5か年である「復興・創生期間」が後半に入る中、内閣の最重要課題として東日本大震災からの復興・再生に引き続き取り組むとともに、その進捗状況を踏まえ、2018年度中を目途に「復興・創生期間」における基本方針の見直しを行う。

① 切れ目のない被災者支援と産業・生業の再生

復興期間の「総仕上げ」に向け、復興の進展に応じて生じる課題に的確に対応していく。被災者の心身のケアやコミュニティ形成支援などの「心の復興」に重点的に取り組むなど、生活再建のステージに応じた切れ目ない支援を行う。交通・物流網の整備を着実に進め、水産加工業の販路開拓、企業の新規立地などへの支援を通じて産業・生業の再生を進める。観光については、東北6県の外国人宿泊者数を2020年に150万人泊とすることを目指した取組を進めるとともに、福島県における国内プロモーションや教育旅行再生事業等を実施する。
復興期間10年間の復興事業費の見込みとして合計で32兆円程度を確保しているが、引き続き、各年度の事業規模の適切な管理、効率的かつ適正な執行を通じ、この復興事業費により確実に復興を進める。

② 原子力災害からの福島の復興・再生

原子力災害被災地域の復興・再生に向けて、改正福島復興再生特別措置法等に基づき、着実に取組を進める。

その大前提である廃炉・汚染水対策及び中長期的な廃炉に向け、研究開発や人材育成を着実に進めるとともに、国内外の叡智を結集し、国が前面に立って安全かつ着実に取り組む。中間貯蔵施設の整備と施設への継続的な搬入、放射性物質汚染廃棄物の処理、除去土壌等の減容・再生利用に向けて、政府一体となって取組の加速化を図る。

福島の復興・再生を加速させるため、教育、医療・介護、買い物などの生活環境の整備を一層推進する。浜通り地域の広域的かつ自立的な経済復興に向けて、ロボット・廃炉・エネルギー・農林水産業など、福島イノベーション・コースト構想の重点分野に係る各種拠点の整備、企業誘致を通じた産業集積、人材育成の加速化等を関係府省庁が連携して着実に推進していく。福島相双復興官民合同チームを通じた被災事業者の事業・なりわい再建等への支援や、農業者への営農再開支援、農林水産物の生産から流通・販売に至るまでの風評の払拭の総合的な支援など、産業・生業の再生を進める。科学的根拠に基づかない風評被害やいじめなどいわれのない偏見・差別の問題に対して、風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略に基づき、放射線に関する正確な情報等を効果的に発信する。県・市町村・民間とよく連携し、中長期・広域の視点で策定された「福島12 市町村の将来像に関する有識者検討会提言」の個別具体化・実現に向けて取り組む。福島全県を未来の新エネ社会を先取りするモデルの創出拠点とするため、「福島新エネ社会構想」を推進する。

帰還困難区域については、たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てについて避難指示を解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、放射線量をはじめ多くの課題があることも踏まえ、まずは特定復興再生拠点について、各町村の認定計画に定められた避難指示解除の目標時期を目指して、除染やインフラ整備等を進める。

福島の復興・再生は中長期的対応が必要であることから、復興・創生期間後も継続して国が前面に立って取り組む。

(2)熊本地震と自然災害からの復興

平成28年熊本地震の被災地では、復旧・復興や地域産業の再生が着実に進展しているが、被災者の生活再建を早期に実現するため、災害公営住宅の整備や自宅再建の支援など、住まいを確保するための取組を引き続き進める。また、通行止めの道路や運転休止の鉄道など被災地域のインフラや熊本城の復旧に向けて取り組むとともに、熊本地震で被災された方々に寄り添った、きめ細かな支援策を引き続き実施する。

また、熊本地震の後も、全国各地で自然災害が相次いでいる。こうした自然災害からの復旧・復興に向けて、被災者の一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、全力で取り組む。

第2章 力強い経済成長の実現に向けた重点的な取組

少子高齢化が進む中、持続的な成長経路の実現に向けて潜在成長率を引き上げるため、サプライサイドの改革として、一人ひとりの人材の質を高める「人づくり革命」と、成長戦略の核となる「生産性革命」に最優先で取り組むとともに、働き方改革を推進していく。

すなわち、「人づくり革命」により、人生100年時代を見据え、誰もがいくつになっても活躍することができる社会を構築する。

「生産性革命」により、過去最高の企業収益を設備投資などにつなげるとともに、AI、IoT、ロボットなど第4次産業革命の社会実装による「Society 5.0」の実現を進める。

働き方改革により、誰もが生きがいを感じて、いくつになってもその能力を思う存分発揮できる社会を実現する。

また、現下の深刻な人手不足を踏まえ、専門的・技術的な外国人材の受入れを進める。

経済の好循環を地域に広げていくため、地域経済を支える中小企業への支援などを通じて地域に雇用を確保し、新しいひとの流れを生み出すことで、地方創生を実現する。

1.人づくり革命の実現と拡大

我が国は、健康寿命が世界一の長寿社会を迎えており、今後の更なる健康寿命の延伸も期待される。こうした人生100年時代には、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくる必要があり、その重要な鍵を握るのが「人づくり革命」、人材への投資である。

「人づくり革命」では、第一に、幼児教育無償化を一気に加速する。3歳から5歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化する。加えて、幼稚園、保育所、認定こども園以外についても、保育の必要性があると認定された子供を対象として無償化する。0歳から2歳児については、待機児童解消の取組と併せて、住民税非課税世帯を対象として無償化を進める。

第二に、最優先の課題である待機児童問題を解消し、女性就業率80%に対応できる「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度末までに32万人分の受け皿整備を進めるとともに、保育士の更なる処遇改善に取り組む。

第三に、真に支援が必要な、所得が低い家庭の子供たちに限って、大学などの高等教育無償化を実現する。住民税非課税世帯の子供たちについて、授業料の減免措置を拡充するとともに、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるよう、給付型奨学金を拡充する。これに準ずる世帯の子供たちについても、支援の崖が生じないよう、必要な支援を段階的に行う。

第四に、介護離職ゼロに向けた介護人材確保のため、介護職員の更なる処遇改善を進める。

これらによる2兆円規模の政策を実行し、子育て世代、子供たちに、大胆に政策資源を投入することで、我が国の社会保障制度を、お年寄りも若者も安心できる「全世代型」の制度へと大きく転換していく。

第五に、家庭の経済状況にかかわらず、幅広く教育を受けられるようにする観点から、年収590 万円未満世帯を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現する。第六に、より長いスパンで個々人の人生の再設計が可能となる社会を実現するため、何歳になっても学び直し、職場復帰、転職が可能となるリカレント教育を抜本的に拡充する。

第七に、18 歳人口が大幅に減っていく中、人材育成を担う大学自体も変わらなければならない。例えば、実際、600 校ある私立大学では、39%が定員未充足、41%が赤字となっているなど、時代のニーズ、地域のニーズ、産業界のニーズに合った教育機関へと変革するため、国公私立問わず、大学改革を進める。

第八に、人生100 年時代を見据え、意欲ある高齢者に働く場を準備する。

人づくりこそが次なる時代を切り拓く原動力である。これまでの画一的な発想にとらわれない人づくり革命を断行し、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていく。

このため、「新しい経済政策パッケージ」に明記された事項に加え、下記の政策を実施する。

(1)人材への投資

① 幼児教育の無償化

待機児童問題が最優先の課題であることに鑑み、「子育て安心プラン」による受け皿の整備を着実に進めるとともに、「新しい経済政策パッケージ」での3歳から5歳までの全ての子供及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供についての幼稚園、保育所、認定こども園の費用の無償化措置(子ども・子育て支援新制度の対象とならない幼稚園については、同制度における利用者負担額を上限)に加え、幼稚園、保育所、認定こども園以外(以下「認可外保育施設」という。)の無償化措置の対象範囲等について、以下のとおりとする。

(認可外保育施設の無償化の対象者・対象サービス)

対象者は、今般の認可外保育施設に対する無償化措置が、待機児童問題により認可保育所に入ることができない子供に対する代替的な措置であることを踏まえ、認可保育所への入所要件と同一とする。すなわち、保育の必要性があると認定された子供であって、認可保育所や認定こども園を利用できていない者とする。

対象となるサービスは、以下のとおりとする。

  • 幼稚園の預かり保育
  • 一般的にいう認可外保育施設、地方自治体独自の認証保育施設、ベビーホテル、ベビーシッター及び認可外の事業所内保育等のうち、指導監督の基準を満たすもの。ただし、5年間の経過措置として、指導監督の基準を満たしていない場合でも無償化の対象とする猶予期間を設ける。

このほか、就学前の障害児の発達支援(いわゆる「障害児通園施設」)については、幼児教育の無償化と併せて無償化することが決定されているが、幼稚園、保育所及び認定こども園と障害児通園施設の両方を利用する場合は、両方とも無償化の対象とする。

(認可外保育施設の無償化の上限額)

無償化の上限額は、認可保育所の利用者との公平性の観点から、認可保育所における月額保育料の全国平均額とする。幼稚園の預かり保育については、幼稚園保育料の無償化上限額を含めて、上述の上限額まで無償とする。

(実施時期)

無償化措置の対象を認可外保育施設にも広げることにより、地方自治体において、幼稚園の預かり保育や認可外保育施設の利用者に対する保育の必要性の認定に関する事務などが新たに生じることになることを踏まえ、無償化措置の実施時期については、2019 年4月と2020 年4月の段階的な実施ではなく、認可、認可外を問わず、3歳から5歳までの全ての子供及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供について、2019 年10 月からの全面的な無償化措置の実施を目指す。

(認可施設への移行の促進)

今後、保育の質の確保が重要であることに鑑み、認可外保育施設の認可施設への移行促進策の強化を検討し、指導監督基準を満たさない認可外保育施設も含め、認可施設への移行を加速化する。

(放課後子ども総合プラン)

女性の就業率の上昇や保育ニーズの高まりを踏まえ、2023年度末までに放課後児童クラブの約30万人分の更なる受け皿拡大や育成支援の内容の質の向上などを内容とする新たなプランを今夏に策定する。

② 高等教育の無償化

高等教育の無償化の具体的措置については、次のとおりとする。

(無償化の対象範囲)

第一に、住民税非課税世帯(年収270万円未満)の子供たちに対する授業料の減免措置については、国立大学の場合はその授業料を免除し、公立大学の場合は、国立大学の授業料を上限として対応を図る。また、私立大学の場合は、国立大学の授業料に加え、私立大学の平均授業料と国立大学の授業料の差額の2分の1を加算した額までの対応を図る。1年生に対しては、入学金について、国立大学の場合は免除し、公立大学の場合は国立大学の入学金を上限とした措置とする。私立大学の場合は私立大学の入学金の平均額を上限とした措置とする。短期大学、高等専門学校、専門学校は、大学に準じて措置する。

第二に、給付型奨学金については、住民税非課税世帯の子供たちを対象に、学生が学業に専念するため、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるよう措置を講じることとする。対象経費は、他の学生との公平性の観点を踏まえ、社会通念上妥当なものとすることとし、具体的には、日本学生支援機構「平成24年度、26年度、28年度学生生活調査」の経費区分に従い、修学費、課外活動費、通学費、食費(自宅外生に限って自宅生分を超える額を措置。)、住居・光熱費(自宅外生に限る。)、保健衛生費、通信費を含むその他日常費、授業料以外の学校納付金(私立学校生に限る。)を計上、娯楽・嗜好費を除く。あわせて、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校(以下「大学等」という。)の受験料を計上する。なお、高等専門学校については、寮生が多く学生生活費の実態が他の学校種と乖離しているため、その実態に応じた額を措置する。

全体として支援の崖・谷間が生じないよう、住民税非課税世帯に準ずる世帯の子供たちについても、住民税非課税世帯の子供たちに対する支援措置に準じた支援を段階的に行う。具体的には、年収300 万円未満の世帯については住民税非課税世帯の子供たちに対する授業料減免及び給付型奨学金の3分の2、年収300 万円から年収380万円未満の世帯については3分の1の額の支援を行い、給付額の段差をなだらかにする。

在学中に学生の家計が急変した場合については、急変後の所得に基づき、支援対象者の要件を満たすかどうかを判定し、支援措置の対象とする。

(支援対象者の要件)

支援対象者については、大学等への進学前の段階における支援の決定に当たり、高等学校在学時の成績だけで否定的な判断をせず、レポートの提出や面談により本人の学習意欲を確認する。他方、大学等への進学後については、その学習状況を毎年確認し、1年間に取得が必要な単位数の6割以下の単位数しか取得していないときやGPA(平均成績)等を用いた客観的指標により成績が下位4分の1に属するときは、当該学生に対して大学等から警告を行い、警告を連続で受けたとき、退学処分・停学処分等を受けたときは、支給を打ち切る。ただし、成績が下位4分の1に属するときに警告を連続で受ける場合においても、斟酌すべきやむを得ない事情がある場合の特例について検討を行う。

なお、手続を経て休学する場合には、いったん休止した支援を復学の際に再開することができるようにする。

(支援措置の対象となる大学等の要件)

支援措置の対象となる大学等は、急速に変わりゆく社会で活躍できる人材を育成するため、それぞれの特色や強み、社会のニーズ、産業界のニーズも踏まえ、学問追究と実践的教育のバランスが取れている大学等とする。具体的には、次のとおりとする。・実務経験のある教員(フルタイム勤務ではない者を含む。)が卒業に必要な単位数の1割以上の単位に係る授業科目を担当するものとして配置され、学生がそれらを履修できる環境が整っていること(学問分野の特性等により、この要件を満たすことができないと大学等が判断する場合については、大学等においてその理由や今後の実践的教育の取組を説明しなければならない。)。

  • 理事に産業界等の外部人材を複数任命していること
  • 授業計画(シラバス)の作成や評価の客観的指標を設定し、適正な成績管理を実施・公表していること。
  • 法令に則り、財務情報と教育活動(定員充足、進学・就職の状況)に係る情報を含む経営情報を開示し、多くの国民が知ることができるようホームページ等により一般公開していること。専門学校については、外部者が参画した学校評価の結果も経営情報の一環として開示していること。
(中間所得層に対する支援)

こうした低所得世帯に限定した支援措置、大学改革や教育研究の質の向上と併せて、中間所得層における大学等へのアクセスの機会均等について検討を継続する。

③ 大学改革
(各大学の役割・機能の明確化)

大学教育の質の向上を図るためには、各大学の役割や特色・強みの明確化を一層進めることが必要である。国立大学については、一部始まっている機能別支援の枠組みを活用して、各々の大学の具体的方向性を明らかにする。私立大学については、各大学が人材育成の3つの観点(世界を牽引する人材、高度な教養と専門性を備えた人材、具体的な職業やスキルを意識した高い実務能力を備えた人材)を踏まえた選択を行うとともに、役割・機能の明確化を加速する支援の枠組みを設ける。

(大学教育の質の向上)

社会の現実のニーズに対応したカリキュラム編成が行えるよう、外部の意見を反映する仕組みづくりが必要である。このため、社会の最前線で実務に当たる人材が教員となる場合は、少ない持ち時間であっても専任教員とすることができる仕組みを学部段階に導入することにより実務経験のある教員を増やし、教授会などの運営にも参画する。また、教員を一つの学部に限り専任教員とする運用を緩和し、学内の人的資源を有効活用することによって社会の新たなニーズに柔軟に対応できる教育プログラムを実現する。授業内容や指導方法の改善を図る教員研修の充実のほか、シラバスの記載の充実、成績評価基準の明確化などについての教学面に係る指針を作成する。

(学生が身に付けた能力・付加価値の見える化)

大学卒業生の質の改善のため、大学に対して学生の学修時間、学修成果などの情報の公開を義務付け、学生が在学中に身に付けた能力・付加価値の見える化を図る。産業界においては、採用プロセスに当たり、「求める人材」のイメージや技能を具体的に示していくことや、大学が示す可視化された学修成果の情報を選考活動において積極的に活用していくことを経済団体を通じて各企業に促すとともに、企業が大学等における学修成果を重視しているとのメッセージを学生に対して積極的に発信する。

(経営力の強化)

大学に学外理事を複数名置くことは、高等教育の無償化の支援措置の対象となる大学の要件にもなっているが、経営力強化のためにも、産業界等の外部人材の理事への登用を一層進める必要がある。国立大学については、国立大学法人法を改正し、民間の外部人材を追加的に任命する場合に限り、その外部人材の人数は法定の理事数を超えて任命できるようにする。私立大学については、関係団体が定める自主行動基準(ガバナンス・コード)を通じて、学外理事を少なくとも複数名置くことを促進する。

(大学の連携・統合等)

大学の組織再編等を促進するため、国立大学においては、国立大学法人法を改正し、一法人の下で複数の大学を運営できる制度を導入する。私立大学については、学部単位での事業譲渡の円滑化や合併の促進など、連携統合や事業承継円滑化の環境整備を図る。あわせて、撤退を含め早期の経営判断を促す経営指導の強化、破綻手続の明確化を進める。

地方においては、地域の高等教育の在り方を議論する「地域連携プラットフォーム(仮称)」を地方大学等の高等教育機関、産業界、地方自治体が構築できるようにする。

これらの施策を進めるとともに、国公私立の枠を超えた大学の連携を可能とする「大学等連携推進法人(仮称)」の創設を検討する。

(高等専門学校、専門学校等における実践的な職業教育の推進)

実践的・創造的技術者を養成することを目的とする高等専門学校の高度化等を進めるとともに、大学・専門学校における専門教育プログラムの開発、専門職大学の開設により、実践的な職業教育を進める。

④ リカレント教育
(教育訓練給付の拡充)

専門実践教育訓練給付(7割助成)について、第4次産業革命スキル習得講座の拡充や専門職大学課程の追加など、対象講座を大幅に拡大する。

また、一般教育訓練給付については、対象を拡大するとともに、ITスキルなどキャリアアップ効果の高い講座を対象に、給付率を2割から4割へ倍増する。特に、文部科学大臣が認定した講座については、社会人が通いやすいように講座の最低時間を120 時間から60 時間に緩和する。あわせて、受講者の大幅な増加のための対策を検討する。

様々な学校で得た単位を積み上げて卒業資格として認める仕組み(単位累積加算制度)の活用を積極的に進める。

(産学連携によるリカレント教育)

新規かつ実践的で雇用対策として効果的で必要性の高いリカレント教育のプログラムの開発を集中的に支援する。

  • 先行分野におけるプログラム開発
    大学・専門学校・民間教育訓練機関に委託し、産学連携により、20 程度の分野(AI、センサー、ロボット、IoTを活用したものづくり、経営管理、農業技術、看護、保育、企業インターンシップを取り入れた女性の復職支援等)において先行的にプログラムを開発し、逐次全国展開する。
    また、業界団体、学会等と連携して実務型プログラムを大幅に拡充し、アーカイブを積極的にオンラインで提供するとともに、民間が運営しているリカレント教育の講座情報を提供するホームページをネットワーク化し、総合的な情報提供を行うポータルサイトを整備する。
  • 技術者のリカレント教育
    情報処理、バイオ、ファインケミカル、エンジニアリング、ロボットなど各分野において、企業の研究者・技術者が最新の技術のリカレント教育を受けることができるリカレント教育コースを、新たに業界と連携し、学会等に設置し、その運営を委託する。その際、プログラムは、学会のホームページやオンラインでも提供する。産業界においても、研究者・技術者のリカレント教育受講を促すよう各企業に周知を図る。
  • 在職者向け教育訓練の拡充
    在職者が利用しやすいような夜間・土日の教育訓練コースを推進するとともに、オンラインを活用した民間学習サービスを後押しする。
    また、国(ポリテクセンター)及び都道府県(職業能力開発校)において実施している在職者向けの教育訓練について、大学・専門学校などの民間教育訓練機関への委託を進める。最新技術の知識・技能の習得・向上に関するものを対象に、教育訓練期間を2日から5日程度のコースだけでなく、企業ニーズに応じコースを拡大する。
  • 実務家教員育成のための研修
    実務家教員の育成プログラムを開発・実施し、修了者を実務家教員の候補者として大学等に推薦する仕組みを構築する。また、地方大学への実務家教員のマッチングを行い、実際に地方大学の教員として活動するための支援策を検討する。
  • 生産性向上のためのコンサルタント人材の養成
    大学、業界団体、金融機関、商工会議所その他の民間団体に委託し、生産管理の実務経験を有する製造業のOBやシニア人材を、生産性改善を行うコンサルタントとして育成し、派遣する。
  • 長期の教育訓練休暇におけるリカレント教育に対する助成
    企業が長期の教育訓練休暇制度を導入し、社員が休暇を取得して学び直しをした場合に、企業に対して、人材開発支援助成金による支援を新たに行う。また、従業員の学び直し、副業・兼業に向けた社会的気運を醸成する。
(企業における中途採用の拡大)

内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が連携して、中途採用に積極的な上場企業を集めた協議会を設置し、中途採用を拡大する。なお、「年齢にかかわりない多様な選考・採用機会拡大のための指針」を活用し、中途採用の促進に向けた経済界の気運を醸成する。

(2)多様な人材の活躍

① 女性活躍の推進

女性活躍が多様性や付加価値を生み出す原動力となるとの認識の下、女性の労働参加の障壁を取り除き、一人ひとりの女性が自らの希望に応じてその能力を最大限に発揮できる社会への変革を促進・加速するため、「女性活躍加速のための重点方針2018」を着実に実施しながら、女性の活躍状況の「見える化」が徹底されるよう、女性活躍推進法の見直しも含め、必要な制度改正を検討する。ロールモデルの提示など女子生徒等に対する多様な情報提供により、理工系分野における女性活躍を促進する。社内外の女性役員候補者の育成に向けたセミナーを実施する。女性リーダーの育成に向けて多様な受講生に対応するため、広範な選択制プログラムの導入を可能とする大学等と共催した研修を実施する。

女性が安心して働き続けられる環境を整えるため、多様な働き方に向けた環境整備、男性の育児・家事への参加促進、育児休業取得の円滑化、仕事と不妊治療の両立、妊娠・出産・育児に関する切れ目のない支援、様々なハラスメントの防止策等を総合的に推進する。

② 高齢者雇用の促進
(65歳以上の継続雇用年齢の引上げに向けた環境整備)

意欲ある高齢者に働く場を準備することは、働きたいと考える高齢者の希望をかなえるためにも、人口減少の中で潜在成長力を引き上げるためにも、官民挙げて取り組まなければならない国家的課題である。実際、高齢者の身体年齢は若くなっており知的能力も高く、65歳以上を一律に「高齢者」と見るのは、もはや現実的ではない。年齢による画一的な考え方を見直し、全ての世代の人々が希望に応じて意欲・能力を活かして活躍できるエイジフリー社会を目指す。

こうした認識に基づき、65歳以上への継続雇用年齢の引上げに向けて環境整備を進める。その際、高齢者は健康面や意欲、能力などの面で個人差が存在するという高齢者雇用の多様性を踏まえ、一律の処遇でなく、成果を重視する評価・報酬体系を構築する。このため、高齢者に係る賃金制度や能力評価制度の構築に取り組む企業に対し、その整備費用を補助する。

(高齢者の雇用促進策)

一人でも中高年の中途採用経験がある企業は、二人目以降の採用にも積極的になる傾向があるため、高齢者のトライアル雇用を促進する方策を進める。

中高年を対象に基礎的なIT・データスキル習得のための教育訓練を拡充することにより、中高年の新たな活躍を支援する。

また、地域医療介護総合確保基金を活用した入門的研修、マッチングにより、国・地方自治体・関係団体が一体となって、高齢者の介護分野への参入を促進する。

(公務員の定年の引上げ)

平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえ、複雑高度化する行政課題に的確に対応する観点から、公務員の定年を段階的に65歳に引き上げる方向で検討する。

その際、人事評価に基づく能力・実績主義の人事管理の徹底等について、併せて検討を行う。

③ 障害者雇用の促進

障害者が希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍できることが普通の社会及び障害者と共に働くことが当たり前の社会を目指していくため、障害者雇用ゼロ企業をはじめとする中小企業による雇用の促進や、多様な障害特性に応じた職場定着支援の推進、地域における障害者就労支援の推進等を図る。

2.生産性革命の実現と拡大

(1)基本的考え方

昨年末の「新しい経済政策パッケージ」では、2020年までの3年間を生産性革命・集中投資期間とし、あらゆる施策を総動員することとした。「未来投資戦略2018」では、成長戦略のスコープとタイムフレームを広げて、「Society 5.0」を本格的に実現するため、これまでの取組の再構築、新たな仕組みの導入を図る。

第4次産業革命の社会実装により、日本の強み(技術力、人材、豊富なリアルデータ、資金)を最大活用して、誰もが活躍でき、様々な人口減少・高齢化、エネルギー・環境制約などの社会課題を解決できる、日本ならではの持続可能でインクルーシブな経済社会システムである「Society 5.0」を実現するとともに、これによりSDGsの達成に寄与する。

日本経済の潜在成長力を大幅に引き上げ、名目GDPを600兆円(2020年頃)から更に押し上げるため、「未来投資戦略2018」に基づき、以下の成長戦略を、スピード感をもって推進する。

(2)第4次産業革命技術がもたらす変化・新たな展開:「Society 5.0」

第4次産業革命の新たな技術革新により、経済社会のあらゆる場面で、新たな展開、「Society 5.0」の実現が期待される。

①「生活」「産業」が変わる
(自動化:移動・物流革命による人手不足・移動弱者の解消)

AIやロボットによって、自動車の運転や物流の局面等で自動化が進むことにより、交通事故の削減や地域における移動弱者の激減、安全・安心な自動運転社会につなげられるほか、人手不足に直面する物流現場の効率化につながり、過度な業務負担も大幅に軽減される。

(遠隔・リアルタイム化:地理的・時間的制約の克服による新サービス創出)

画質や音質が飛躍的に進歩したIoT技術により、地理的な制約で提供することができなかったサービス(医療や教育、買い物支援サービスなど)の提供が可能となる。

② 経済活動の「糧」が変わる

安定的な「エネルギー」と「ファイナンス」の供給における我が国の「弱み」も、ブロックチェーン技術、スマートエネルギーマネジメントなどにより克服できる。

21世紀のデータ駆動型社会では、経済活動の最も重要な「糧」は「リアルデータ」。

これまで世の中に分散し眠っていたリアルデータを一気に収集・分析・活用(ビッグデータ化)することで、個別ニーズにきめ細かく対応できる商品やサービスの提供が可能となる。このリアルデータの利活用基盤を世界に先駆けて整備すれば、日本が新デジタル革命時代のフロントランナーとなることができる。

③ 「行政」「インフラ」が変わる

旧態依然としたアナログ行政から決別し、行政のあらゆるサービスを原則としてデジタルで完結させることで(「紙」から「データ」へ)、国民や企業が直面する時間・手間やコストを大幅に軽減する。港湾、空港、道路、上下水道などのインフラ管理においても、民間活力(PPP/PFI等)や技術革新の徹底活用を図り、設置・メンテナンスコストの劇的な改善とインフラの質の抜本的な向上が実現する。

④ 「地域」「コミュニティ」「中小企業」が変わる

人口減少下の地域でも、移動・物流サービス、オンライン診療等により、高齢者も含め利便性の高い生活を実現し、地域コミュニティの活力を高める。町工場も世界とつながり、地域発のイノベーションと付加価値の高い雇用の場が拡大する。

⑤ 「人材」が変わる

人間がこれまで行ってきた単純作業や反復継続的な作業は、AI、ロボット等が肩代わりし、3K現場は激減する。多様なリカレント教育と、デジタル技術を活用した個別化学習、遠隔教育などを通じ、あらゆる人々に、やりがいや、よりキャリアアップした仕事を選択するチャンスが与えられる。

(3)「Society 5.0」の実現に向けて今後取り組む重点分野と変革の牽引力となる「フラッグシップ・プロジェクト」

幅広い取組について総花的にリソースを投入するのではなく、第4次産業革命の社会
実装によって大きな可能性とチャンスを生む新たな展開が期待される重点分野について、
以下の「フラッグシップ・プロジェクト」(FP)を推進する。

① 「自動化」:次世代モビリティ・システムの構築プロジェクト
  • 無人自動運転による移動サービスの2020 年実現や、高速道路でのトラックの隊列走行についての早ければ2022 年の商業化等を目指す。
  • 「自動運転に係る制度整備大綱」に基づき、国際的な議論においてリーダーシップを発揮しつつ、各分野での必要な法制度の整備を早急に進める。
  • まちづくりと公共交通の連携、自動走行等新技術の活用、買い物支援・見守りサービス、MaaS(Mobility as a Service)などの施策連携により、利用者ニーズに即した新しいモビリティサービスのモデル都市、地域をつくる。
② 次世代ヘルスケア・システムの構築プロジェクト
  • 個人の健診・診療・投薬情報が医療機関等の間で共有できる全国的な保健医療情報ネットワークについて、2020 年度からの本格稼働を目指す。
  • PHR(Personal Health Record)について、2020 年度より、マイナポータル(個人向け行政ポータルサイト)を通じて本人等へのデータの本格的な提供を目指す。
  • 「認知症の人にやさしい」新たな製品やサービスを生み出す実証フィールドを整備すべく官民連携プラットフォームを2018 年度中に構築する。
  • 業界の自主的な品質評価の仕組み構築を通じた保険外サービスの客観的な品質の「見える化」や、地方自治体やケアマネジャー等からの利用者に対する良質な保険外サービスに関する積極的な情報提供を促す。
  • 服薬指導を含めた「オンラインでの医療」全体の充実に向けて、次期以降の診療報酬改定における有効性・安全性を踏まえた評価、医薬品医療機器等法の改正の検討など所要の制度的対応も含めて、ユーザー目線で、現状を更に前進させる取組を進める。
  • アジア健康構想の下、我が国のヘルスケア産業の海外展開等を実施する。
③ 「経済活動の糧」関連プロジェクト
  • 2050 年を見据え、デジタル技術を活用したエネルギー制御、蓄電、水素利用などのエネルギー転換・脱炭素化に向けた技術開発を推進するとともに、企業の能動的な提案・情報開示等を促し、ESG投資を促進する。また、電気自動車、燃料電池自動車など次世代自動車の普及を推進する。
  • 現行の金融・商取引関連法制の機能別・横断的な法制への見直し、ブロックチェーン技術、タイムスタンプ等を用いて簡易かつ高セキュリティな本人確認手続を可能とする仕組みの構築、簡易かつ高セキュリティな決済の仕組みを確保しつつ、二次元コード(QRコード等)のフォーマットに係るルール整備等を図るなどFinTech・キャッシュレス化を推進する。
④「行政」「インフラ」関連プロジェクト
  • デジタルファースト法案(仮称)」(2018 年中の国会提出予定)、「介護」・「引越し」・「死亡・相続」に関する手続のワンストップ化、公的個人認証を活用したオンライン手続をスマートフォンで可能とするための法制度整備等を内容とする「デジタルガバメント」を2018 年度から2020 年度までに推進する。
  • 現場ニーズに即した要求水準(性能、コスト等)を国が明示し、民間事業者が実現手法をオープンイノベーションで開発していく手法を積極活用すること等により、「次世代インフラ・メンテナンス・システム」の構築を目指す。
  • 国有林について、公益的機能を維持しつつ、民間事業者の長期・大ロットでの使用収益を可能とする仕組みを整備するなど、PPP/PFI手法の導入加速を図る。
⑤「地域」「コミュニティ」「中小企業」関連プロジェクト
  • バリューチェーン全体をデータでつなぎ、マーケティング情報に基づく生産と出荷の最適化やコストの最小化を図る取組等、農林水産業のスマート化を推進する。
  • まちづくりと公共交通の連携を推進し、次世代モビリティサービスやICT等の新技術・官民データを活用した「コンパクト・プラス・ネットワーク」の取組などを加速する。
  • 生産性向上特別措置法に基づく固定資産税の負担減免措置と「ものづくり・商業・サービス補助金」、IT導入補助金等の支援施策との相乗効果が発揮されるよう、中小企業の経営改善と連携したIT支援体制を強化する。

上記④「行政」「インフラ」の分野、⑤「地域」「コミュニティ」「中小企業」分野を中心に、地域が連携しての取組、より広域レベルでの取組、さらに東京一極集中に対して地方がその潜在力を最大限に発揮できるような、新たな構想を早急に検討し、具体化していく。

(4)経済構造革新への基盤づくり

産業界は、様々なつながりにより付加価値を創出するConnected Industriesに自らを変革し、イノベーションを牽引することが期待される。政府は、データ利活用基盤や人材・イノベーション基盤など、データ駆動型社会の共通インフラを整備するとともに、大胆な規制・制度改革や「Society 5.0」に適合した新たなルールの構築を進める。

① データ駆動型社会の共通インフラの整備

大容量・高速通信を支える5Gについて、2018年度末に周波数割当を行い、民間事業者による基盤整備を促進し、2020年からのサービス開始につなげるなどの基盤システム・技術への投資の促進を図る。

また、AI時代に対応した人材育成(小学校でのプログラミング教育、高等教育での高い理数能力等)と人材の最適活用が図られるよう教育改革と産業界等の人材活用の面での改革を進め、リカレント教育を大幅に拡充する。

② 大胆な規制・制度改革

生産性向上特別措置法において創設された「規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)」を、政府横断的・一元的な体制の下で推進する。いわゆる業法のような既存の縦割りの業規制について、規制のサンドボックス制度の運用から導かれる制度見直しニーズへの対応も含め、サービスや機能に着目した発想で捉え直した横断的な制度改革を推進する。

また、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備に向けて、2018年中に基本原則を策定するとともに、具体的措置を早急に推進する。

さらに、地域における人口減少等による需要減少や、グローバル競争の激化など、経済・社会構造そのものが変化していることを踏まえ、競争の在り方について、政府全体として検討を進め、2018年度中に結論を得る。

(5)イノベーション・エコシステムの早期確立

世界でこれまでの延長線上にない破壊的イノベーションが進展し、我が国のイノベーション力の相対的低下が危惧されている中、産業界を含む各主体が意識改革を行うとともに、イノベーションが自律的かつ持続的に生まれ続けていく「イノベーション・エコシステム」を早期に確立する。大学が知識集約産業の中核として、このエコシステムを支える役割を果たすべく改革を進め、大学等が生み出す多様なシーズをビジネスに結び付けるとともに、我が国イノベーションの国際展開を図る。

① 多様なシーズを創出する改革の推進

大学の経営力を高めるため、大学連携・再編の推進、大学ガバナンスコードの策定、民間資金獲得のための仕組みの導入も含む産学連携の推進等を図る。また、適切かつ実効性のある評価に基づく年俸制の導入拡大等を通じて人材流動性の向上、若手の活躍機会創出を図るとともに政府の競争的研究資金について若手研究者の支援に重点化を図る。

また、2017年度に行った制度検証結果も踏まえ、失敗も許容した大胆な挑戦が可能となるよう革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の研究開発手法を改善・強化し、関係府省庁に普及・定着させるとともに、関連施策の見直し等も図りつつ、ImPACTの取組が節目を迎えることを受け、より野心的な構想の下、関係府省庁が一体となって集中・重点的に研究開発を推進する仕組み(ムーンショット型の研究開発制度)を検討し、政府全体として非連続的なイノベーションを生み出す研究開発を継続的かつ安定的に推進する。

② シーズをビジネスに結び付ける環境の整備

大学発ベンチャーも含め起業、事業化、成長段階まで一貫した支援を行うべく政府系機関、官民ファンドの全関連事業の申請窓口を一元化するなど相互連携を強化する。また、公共調達の活用等政府全体で先進技術の導入や中小・ベンチャー企業の活用を促進することとする。

(6)今後の成長戦略推進の枠組み

従前のような審議会スタイルの検討の方法のみならず、よりマーケットや実際の「現場」に近いプレーヤーの参加を得つつ、官民の叡智を結集して、目指すべき経済社会の絵姿を共有しながら、「現場」を変えていくための具体的なプロジェクトを推進するとともに、プロジェクトの成果から学ぶ形で「実証による政策形成」を進めるべく、上記(2)及び(3)に掲げた重点分野について「産官協議会」を設置する。

「産官協議会」では、2025 年までに目指すビジョンを共有し、その実現に必要な施策等を来夏までに取りまとめる。また、重点分野での新たな展開の先陣を切るフラッグシップ・プロジェクト(FP)として、2020 年頃までのアーリー・ハーベストを実現する「FP2020」、本格的な社会システムの変革を伴う「FP2025」を選定・推進する。

これらのプロジェクトのうち直ちに前に進め、「現場」を変え始めるべきものについて、2019 年度予算、税制改正、規制改革に反映させ、必要な制度面、組織面、人材面の基盤づくりを、スピード感をもって進める。

3.働き方改革の推進

一億総活躍社会の実現のための最大のチャレンジである働き方改革を推進し、働く人の視点に立って、一人ひとりの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する。

このため、戦後の労働基準法制定以来、70 年ぶりの大改革を行う。

この際、今般の労働制度の改革は中小企業をはじめ企業活動に与える影響に配慮する必要があるため、その施行までの十分な準備期間を確保することとし、長時間労働の是正のための規定の施行は2019 年4月1日(中小企業への適用は2020 年4月1日)、同一労働同一賃金の実現のための規定の施行は2020年4月1日(中小企業への適用は2021年4月1日)、高度プロフェッショナル制度の創設のための規定の施行は2019 年4月1日とする等の措置を講ずる。

また、中小企業・小規模事業者の労働法制に対する理解を深めるため、今般の制度改革の内容をはじめ、労働法制の周知徹底を図る。中小企業・小規模事業者がワンストップで相談できる窓口として全国47 都道府県に働き方改革推進支援センターを設置し、中小企業支援機関とも連携しつつ、社会保険労務士の派遣等により個別相談に当たる。労働基準監督署においては、特別チームを編成して中小企業・小規模事業者の相談に丁寧に対応するとともに、指導においては、中小企業・小規模事業者における労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえ、まずは自主的な改善を促す。これらの事項については、働き方改革の基本的考え方として、今般の制度改革に基づき今後策定する基本方針にも盛り込む。

さらに、中小企業・小規模事業者の労務管理面での丁寧な支援、生産性向上に資するより一層の設備投資・ITの導入、人手確保に向けた地域内外の多様な人材とのマッチングなどが促進されるよう切れ目なく取り組む。あわせて、大企業における働き方改革のしわ寄せにより、中小企業・小規模事業者の働き方改革や賃上げが妨げられることのないよう、取引関係の実態把握に努めるとともに、取引条件の改善に向け、下請け取引対策の強化、産業界における自主行動計画の着実な実行と策定業種の拡大、下請Gメンの体制強化などに積極的に取り組む。

加えて、地域の実情に即した働き方改革を進めるため、「地方版政労使会議」などを活用し、地方自治体、労使その他の関係者間の連携体制を整備する。

働き方改革は、労働法制の問題だけではなく、過剰サービスの抑制により生産性を高めるなどの社会の仕組みづくりも大切であり、啓発普及を図る。

なお、裁量労働制については、現行制度の施行状況を把握した上で、対象業務の範囲や働く方の健康確保措置等について、労働政策審議会で検討を行うとともに、指導を徹底する。

(1)長時間労働の是正

長時間労働の慣行を断ち切り、ワーク・ライフ・バランスを確保することで、女性や高齢者が仕事に就きやすくなり、男性も子育てや家事が行いやすくなる環境を整える。

このため、史上初めての労使トップの合意の下、36協定でも超えてはならない罰則付きの時間外労働の上限規制を設ける。

時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とし、違反には以下の特例の場合を除いて罰則を課す。特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間とする。かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることができない上限を設ける。

他方、労使が上限値までの協定締結を回避する努力が求められる点で合意したことに鑑み、更に可能な限り労働時間の延長を短くするため、指針を定め、労使に対し、必要な助言・指導を行う。

また、事業者に、労働時間の状況の的確な把握や長時間労働者に対する医師の面接指導などの措置を行わせることにより、労働者の健康確保を図るとともに、違法な長時間労働に対しては指導を徹底する。あわせて、勤務間インターバル制度の導入が進むよう、好事例の普及や労務管理に係るコンサルティングの実施等による環境整備に努める。

加えて、時間外労働の上限規制の適用が猶予される業務について、その業務特有の事情を踏まえたきめ細かな取組を省庁横断的に実施して労働時間の短縮を図り、上限規制の適用に向けた環境整備を進める。この際、

  • ① 自動車運送事業については、「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」を着実に実施するとともに、改善基準告示の見直しなど必要な施策の検討を進める。
  • ② 建設業については、受発注者双方の取組による適正な工期設定の推進等を図るとともに、業界等の取組に対する支援を実施する。
  • ③ 医師については、医療機関に対する勤務環境改善支援策の充実などの総合的な対策について検討を進め、順次実施する。
  • ④ 鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業については、人材確保、省力化等に対する支援を実施する。

(2)同一労働同一賃金の実現

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指す。どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から「非正規」という言葉を一掃する。

このため、正規・非正規という雇用形態による不合理な待遇差を禁止し、その是正を求める労働者が裁判で争える規定を強化するとともに、事業者側しか持っていない情報のために、労働者が訴訟を起こせないといったことがないよう、事業者には、労働者に対する待遇に関する説明義務を課す。また、裁判外紛争解決手段(行政ADR)を整備し、均等・均衡待遇を求める労働者が無料で利用できるようにする。

さらに、同一労働同一賃金の円滑な導入に向けて、特に中小企業・小規模事業者の理解が深まるよう、業種別導入マニュアルを作成し、その普及を図る。

(3)高度プロフェッショナル制度の創設

創造的に付加価値を生み出していく、高い交渉力を有する高度専門職に限って、健康を確保しつつ、時間ではなく成果で評価される働き方を選択できるようにするため、高度プロフェッショナル制度を創設する。

対象者の要件は、(ⅰ)年間の賃金が平均的な労働者に対して著しく高いこと(「年間平均給与額」の3倍を相当程度上回る水準であること)、(ⅱ)専門性があり、通常の労働者と異なり、雇用契約の中で職務の記述が限定されていること(いわゆるジョブ・ディスクリプションがあること)、(ⅲ)本人が制度を理解して個々に書面等により同意していることとし、労使委員会の決議において(ⅲ)の同意の撤回手続を定めなければならないこととする。

また、対象となる労働者に対して、(ⅰ)年間104 日、かつ4週間当たり4日以上の休日を取得させ、(ⅱ)健康確保措置(インターバル措置、健康管理時間の上限措置、2週間連続の休日、臨時の健康診断のうち、労使委員会の5分の4以上の多数で決議した、いずれかの措置)を講じなければ、制度を導入できないこととする。

(4)最低賃金の引上げ等

最低賃金については、年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000 円になることを目指す。

また、中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境を整備するため、生活衛生業など最低賃金の引上げによる影響が大きい業種を対象に、生産性や収益向上のための相談事業を実施するとともに、下請中小企業振興法に基づく振興基準の徹底により、親事業者が下請事業者からの労務費上昇に係る取引対価見直しの協議要請に応じることを促すなどの取組を行う。

4.新たな外国人材の受入れ

中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており、我が国の経済・社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきている。このため、設備投資、技術革新、働き方改革などによる生産性向上や国内人材の確保を引き続き強力に推進するとともに、従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある。

このため、真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるものとして、外国人材の受入れを拡大するため、新たな在留資格を創設する。また、外国人留学生の国内での就職を更に円滑化するなど、従来の専門的・技術的分野における外国人材受入れの取組を更に進めるほか、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組む。

(1)一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる新たな在留資格の創設

現行の専門的・技術的な外国人材の受入れ制度を拡充し、以下の方向で、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材に関し、就労を目的とした新たな在留資格を創設する。

① 受入れ業種の考え方

新たな在留資格による外国人材の受入れは、生産性向上や国内人材の確保のための取組(女性・高齢者の就業促進、人手不足を踏まえた処遇の改善等)を行ってもなお、当該業種の存続・発展のために外国人材の受入れが必要と認められる業種において行う。

② 政府基本方針及び業種別受入れ方針

受入れに関する業種横断的な方針をあらかじめ政府基本方針として閣議決定するとともに、当該方針を踏まえ、法務省等制度所管省庁と業所管省庁において業種の特性を考慮した業種別の受入れ方針(業種別受入れ方針)を決定し、これに基づき外国人材を受け入れる。

③ 外国人材に求める技能水準及び日本語能力水準

在留資格の取得に当たり、外国人材に求める技能水準は、受入れ業種で適切に働くために必要な知識及び技能とし、業所管省庁が定める試験等によって確認する。また、日本語能力水準は、日本語能力試験等により、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することが確認されることを基本としつつ、受入れ業種ごとに業務上必要な日本語能力水準を考慮して定める。ただし、技能実習(3年)を修了した者については、上記試験等を免除し、必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしているものとする。

④ 有為な外国人材の確保のための方策

有為な外国人材に我が国で活動してもらうため、今後、外国人材から保証金を徴収するなどの悪質な紹介業者等の介在を防止するための方策を講じるとともに、国外において有為な外国人材の送り出しを確保するため、受入れ制度の周知や広報、外国における日本語教育の充実、必要に応じ政府レベルでの申入れ等を実施するものとする。

⑤ 外国人材への支援と在留管理等

新たに受け入れる外国人材の保護や円滑な受入れを可能とするため、的確な在留管理・雇用管理を実施する。受入れ企業、又は法務大臣が認めた登録支援機関が支援の実施主体となり、外国人材に対して、生活ガイダンスの実施、住宅の確保、生活のための日本語習得、相談・苦情対応、各種行政手続に関する情報提供などの支援を行う仕組みを設ける。また、入国・在留審査に当たり、他の就労目的の在留資格と同様、日本人との同等以上の報酬の確保等を確認する。加えて、労働行政における取組として、労働法令に基づき適正な雇用管理のための相談、指導等を行う。これらに対応するため、きめ細かく、かつ、機能的な在留管理、雇用管理を実施する入国管理局等の体制を充実・強化する。

⑥ 家族の帯同及び在留期間の上限

以上の政策方針は移民政策とは異なるものであり、外国人材の在留期間の上限を通算で5年とし、家族の帯同は基本的に認めない。ただし、新たな在留資格による滞在中に一定の試験に合格するなどより高い専門性を有すると認められた者については、現行の専門的・技術的分野における在留資格への移行を認め、在留期間の上限を付さず、家族帯同を認めるなどの取扱いを可能とするための在留資格上の措置を検討する。

(2)従来の外国人材受入れの更なる促進

留学生の国内での就職を促進するため、在留資格に定める活動内容の明確化や、手続負担の軽減などにより在留資格変更の円滑化を行い、留学生の卒業後の活躍の場を広げる。また、「高度人材ポイント制」について、特別加算の対象大学の拡大等の見直しを行う。これらの前提として、日本語教育機関において充実した日本語教育が行われ、留学生が適正に在留できるような環境整備を行っていく。さらに、留学生と企業とのマッチングの機会を設けるため、ハローワークの外国人雇用サービスセンター等を増設する。
また、介護の質にも配慮しつつ、相手国からの送出し状況も踏まえ、介護の技能実習生について入国1年後の日本語要件を満たさなかった場合にも引き続き在留を可能とする仕組みや、日本語研修を要しない一定の日本語能力を有するEPA介護福祉士候補者の円滑かつ適正な受入れを行える受入人数枠を設けることについて検討を進める。このほか、クールジャパン関連産業の海外展開等を目的とする外国人材の受入れを一層促進するための方策や、我が国における外国人材の起業等を促進し、起業家の受入れを一層拡大するための方策について検討を進める。

(3)外国人の受入れ環境の整備

上記の外国人材の受入れの拡大を含め、今後も我が国に滞在する外国人が一層増加することが見込まれる中で、我が国で働き、生活する外国人について、多言語での生活相談の対応や日本語教育の充実をはじめとする生活環境の整備を行うことが重要である。このため、2006年に策定された「『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」を抜本的に見直すとともに、外国人の受入れ環境の整備は、法務省が総合調整機能を持って司令塔的役割を果たすこととし、関係省庁、地方自治体等との連携を強化する。このような外国人の受入れ環境の整備を通じ、外国人の人権が護られるとともに、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組んでいく。

なお、法務省、厚生労働省、地方自治体等が連携の上、在留管理体制を強化し、不法・偽装滞在者や難民認定制度の濫用・誤用者対策等を推進する。

5.重要課題への取組

(1)規制改革の推進

国内外の情勢変化のスピードが一層増す状況の下、新たなビジネスや雇用を生み出し、我が国が豊かで活力ある国で在り続けるため、「Society 5.0」にふさわしい規制・制度の構築や行政手続コストの削減、農林水産業等の成長産業化など、不断の規制・制度改革を一層推進する。

規制改革実施計画」において決定した事項を実施し、改革の進捗状況について、規制改革推進会議がフォローアップを行う。
国家戦略特区制度においては、新たな重点分野について集中的に「岩盤規制」改革を進めるとともに、地域限定型サンドボックスを活用し、自動車の自動運転、ドローンなどの高度で革新的な近未来技術に関連する実証実験を進める。

(2)投資とイノベーションの促進

① 科学技術・イノベーションの推進

「Society 5.0」の実現、イノベーション・エコシステムの構築に向けて、「第5期科学技術基本計画」及び「統合イノベーション戦略」に基づき、官民を挙げて研究開発を推進する。若手研究者への重点支援やオープンイノベーションの仕組みの推進等により、我が国の基礎科学力・基盤技術から社会への実装までを強化するとともに、地方創生につなげる。
中長期的な視点で官民共同研究開発投資プロジェクトを具体的かつ計画的に拡大するとともに、国の予算について安定的に研究開発に取り組めるよう多年度にわたる取組を進める。政府研究開発投資について、本基本方針の第3章の新計画との整合性を確保しつつ、対GDP比1%にすることを目指し所要の規模の予算が確保されるよう努めるとともに、民間企業が研究開発投資対GDP比3%を目指すことを表明したことを踏まえ、2025年までに企業から大学、国立研究開発法人等への投資を3倍増とすることを目指し、これらにより、官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上とすることを目標とする。その際、認知症、再生医療、ゲノム医療、革新的エネルギー技術、インフラ維持管理・更新などの社会的課題解決に資する研究開発を、優先順位を付けて推進する。

未来の科学技術・イノベーションの担い手の教育に当たっては、STEM、プログラミング、英語について世界トップレベルの学力の獲得を目指す。特に、STEMについては、人材育成や教員養成・確保を図るとともに、このための戦略を定め、目標を明らかにし、工程化して進める。

我が国の国際競争力を強化する観点から、「知的財産推進計画」や「人工知能技術戦略実行計画」の策定・実行を進めるとともに、サイバーセキュリティ対策、先端技術の国際標準化などに官民挙げて取り組む。

また、AI・IoTの活用による物流の効率性・安全性の向上や効率的な渋滞対策を進める。

② 教育の質の向上等

第3期教育振興基本計画」や教育再生実行会議の提言に基づき、「Society 5.0」に向けた総合的な人材育成をはじめとした教育の質の向上に総合的に取り組む。

新学習指導要領を円滑に実施するとともに、地域振興の核としての高等学校の機能強化、1人1社制の在り方の検討、子供の体験活動の充実、安全・安心な学校施設の効率的な整備、セーフティプロモーションの考え方も参考にした学校安全の推進などを進める。また、在外教育施設における教育機能の強化を図る。さらに、障害、いじめ・不登校、日本語能力の不足など様々な制約を克服し、チーム学校の実現、障害者の生涯を通じた学習活動の充実を図る。

学校現場での教員の勤務実態を改善するため、適正な勤務時間管理の徹底や業務の効率化・精選などの緊急対策を具体的に推進するとともに、学校の指導・事務体制の効果的な強化・充実や学校の実態に応じた教員の勤務時間制度の在り方などの勤務状況を踏まえた勤務環境の見直し、小学校における教育課程の弾力的運用についての検討を進める。

③ 成長力を強化する公的投資への重点化

社会資本整備重点計画」等に基づき、成長力を強化する分野に社会資本整備を戦略的に重点化し、安定的・持続的な公共投資を推進する。2020 年東京オリンピック・パラリンピック後の成長の基盤として、大都市圏環状道路、国際戦略港湾、国際拠点空港などを整備するとともに、広域的な高速交通ネットワークの早期整備・活用を通じた内外の人流や物流の拡大を図る。その際、ストック効果が高く採算性も確実と見込まれるプロジェクトには、民間資金や財政投融資の適切な活用も検討する。産業投資については、その活用・管理手法を検討し、政策投資銀行等を活用してリスクマネー供給の強化を図る。

(3)経済連携の推進

① 新たな経済秩序の拡大

自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく21世紀型の新たな経済秩序を世界へと広げる。そのスタンダードとして今後の経済連携の礎となるTPPの早期発効に向けて、引き続き主導的な役割を果たす。発効後は、新たな国・地域の加入により保護主義に対してTPPの新しいルールを世界に拡大していくことが視野に入ってくることを踏まえ、新規加入の対応方針などについて、我が国が主導して、必要な調整を行う。

また、公平な競争条件の確保に向け、市場歪曲的措置の是正や電子商取引などの新たな分野でのルール形成に取り組んでいくとともに、WTOを中核としたルールに基づく多角的貿易体制が世界経済の成長と発展の基盤であることの再確認を様々な枠組みを使って各国に働きかけていく。

米国とは、公正なルールに基づく、自由で、開かれた、インド太平洋地域における経済発展を実現するため、日米経済対話や「自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議」を行い、日米双方の利益となるように、貿易や投資を更に拡大させる。

日EU経済関係の重要な基盤であり両者の戦略的関係を更に強化する日EU・EPAの早期の署名・発効を目指す。

TPPや日EU・EPAの発効などを見据えて新たな海外展開の支援や国内産業の体質強化に向けて「総合的なTPP等関連政策大綱」に盛り込まれた施策を着実に実施する。
また、包括的で、市場アクセス及びルール分野のバランスが取れた、質の高いRCEPの早期妥結に向け、交渉をリードしていく。

② 海外展開の促進

投資関連協定の締結を推進し、企業の海外展開を促進する。自由で公正な経済圏の拡大による効果を享受できるようにするため、ODAも活用し、中堅・中小企業の海外展開の総合的な支援や、海外展開先における法制度整備支援・現地人材の育成支援などを実施する。また、国際仲裁の活性化に向けた基盤整備のための取組や法曹等による海外調査、日本法令の外国語訳の推進など、海外展開に関する法的支援を強化するとともに、国際紛争への実践的な対応能力も強化する。

2020年のインフラシステム受注約30兆円という目標を達成し、我が国の経済成長の実現に寄与する。このため、「インフラシステム輸出戦略」の下、官民一体となった競争力強化、質の高いインフラの推進による国際貢献、我が国の技術・知見を活かしたインフラ投資の拡大、幅広いインフラ分野への取組といった施策を推進する。また、質の

高いインフラの国際スタンダード化を推進する。

(4)分野別の対応

① 農林水産新時代の構築

農林水産業全般にわたっての改革を力強く進めることで、攻めの農林水産業を展開し成長産業にするとともに、美しく伝統ある農山漁村を次世代に継承していく。これらの取組により、食料安全保障の確立を図る。

農業者の所得向上を図るため、農業者が自由に経営展開できる環境の整備と農業者の努力では解決できない構造的な問題を解決していく。AI・IoT等を活用したスマート農業の実現などにより競争力強化を更に加速させる。農地中間管理機構中心の集積体制を確立しつつ、ほ場整備事業と機構との連携円滑化により、農地の整備と集積・集約化を推進するとともに、土地改良事業による農地の大区画化や汎用化・畑地化、中山間地域の収益力を強化する。農協改革を着実に実施するとともに、農業経営体が自らの経営判断で作物を選択できるよう米政策改革の定着も進める。

林業の成長産業化に向けて、新たな森林管理システムを創設し、意欲のある持続的な林業経営者に経営管理を集積・集約化する。また、このシステムの創設を踏まえ、平成31 年度税制改正において、市町村が実施する森林整備等に必要な財源に充てるため、森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)を創設する。また、路網整備や高性能林業機械の導入、CLTを含めた木材の中高層建築物等への利用拡大、生産流通構造改革及びセルロースナノファイバーの研究開発などを推進する。

水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上と年齢バランスのとれた漁業就業構造を確立することを目指して、「水産政策の改革について」に即して、科学的・効果的な評価方法及び管理方法による新たな資源管理システムの構築や水産物の流通構造改革、生産性の向上に資する漁業許可制度の見直し、養殖・沿岸漁業の発展に資する海面利用制度の見直し、改革の方向性に合わせた漁協制度の見直しに取り組む。これらの改革を後押しするため、資源調査・情報収集体制の拡充・整備、減船・休漁措置の円滑な実施、漁業収入安定対策の機能強化、生産性の高い漁船等の導入・更新、養殖業発展のための環境整備、産地市場の統合や消費地における流通拠点の確保、資源管理から流通に至るICT活用体制の整備、持続可能な漁業・養殖業の認証、漁村の活性化、国境監視機能等の発揮、人材確保・育成の強化等を推進する。また、水産資源の管理徹底などのため漁業取締体制を増強する。

農林水産業の輸出力強化に向け、生産者等への必要な情報の提供、グローバル産地の形成、マッチングできる環境の整備、JFOODOによる戦略的マーケティング等に取り組む。特に、米の輸出については、今般中国向けに追加された精米工場2施設及びくん蒸施設5施設も最大限活用し、効果的な輸出拡大を支援する。また、2020年東京オリンピック・パラリンピックも契機として、JAS、HACCP、GAPなど規格・認証の活用や国際規格化を戦略的に推進するとともに、効果的・効率的な輸出拠点整備をハード・ソフト両面で進める。
有害鳥獣の対策を強化するとともに、安全・安心なジビエの利活用を進める。

② 観光立国の実現

2020年に訪日外国人旅行者数を4000万人、消費額を8兆円とする目標を達成し、観光先進国、観光の基幹産業化を実現するため、新たに創設する国際観光旅客税による財源も活用しながら、ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備など、より高次元な施策を展開する。

観光資源の開拓や快適に観光を満喫できる環境の整備などにより、リピーターの地方への誘客や体験型観光の充実、長期滞在化を図る。公的施設の更なる開放を進め、古民家等の活用や景観の優れたまちづくり、ダム等のインフラを活かした観光を推進する。国立公園や文化財等を保全・活用するとともに、VRの活用やナイトタイムの有効活用などを促進する。首都圏空港の機能強化、国際クルーズ拠点の形成や自転車利用環境の創出等に取り組む。

我が国の観光の魅力を、国内外の拠点を活用し、効果的に発信するほか、ビザの戦略的緩和、MICE誘致等に取り組む。また、最新技術の活用やCIQの計画的な体制整備などにより出入国を円滑化するとともに、無料Wi-Fiの導入などを通じて、世界水準の旅行サービスを実現する。DMOの育成のほか、実践的即戦力人材の育成や外国人材の活用を推進するとともに、双方向の人的交流の拡大を図る。多様な宿泊ニーズに対応するため、違法民泊対策を含めた健全な民泊サービスの普及などを進める。さらに、いわゆる白タク行為の防止に取り組む。外国人旅行者への対応を向上させるため、医療通訳の評価体制の構築や医療コーディネーターの養成など地域医療機関における外国人患者受入れ体制の構築、キャッシュレス環境の整備、多言語対応やトイレの洋式化、相談窓口の整備などに取り組む。誰もが安全・安心に利用可能な宿泊施設の提供を促進するため、バリアフリー化や耐震化などの取組を進める。

IRの整備を推進することにより、国際会議場・展示場等や、家族で楽しめるエンターテインメント施設を一体的に運営し、我が国の伝統・文化・芸術等を活かしたコンテンツを導入することで、国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現する。その際、世界最高水準のカジノ規制やその執行体制の整備等により様々な懸念に万全の対策を講じる。また、ギャンブル等依存症対策を徹底的かつ包括的に実施する。

2025 年国際博覧会について、大阪・関西への誘致の成功に向け、内閣としても全力で取り組む。ワールドマスターズゲームズ2021 関西の円滑な開催に向け、組織委員会等と協力する。

③ 文化芸術立国の実現

「文化芸術推進基本計画」や「文化経済戦略」に基づき、2020 年までを文化政策推進重点期間と位置付け、文化による国家ブランド戦略の構築や稼ぐ文化への展開、文化芸術産業の育成などにより文化産業の経済規模(文化GDP)の拡大を図るとともに、文化財の高精細レプリカやVR作成など文化分野における民間資金・先端技術の活用を推進する。また、子供や障害者等の文化芸術活動の推進や、国立文化施設の機能強化を図るとともに、文化財を防衛する観点を踏まえ、文化財の適切な周期での修理や、保存・活用・継承等に取り組む。さらに、京都への全面的な移転に向け、文化庁の機能強化等を着実に進める。映画のロケ誘致やアート市場の活性化に向けた検討などを進めるとともに、文化プログラムの全国展開、日本遺産の認定・活用や国際博物館会議(ICOM)京都大会2019の開催等を通じて日本文化の魅力や日本の美を国内外に発信する。

文化資源について、各分野のデジタルアーカイブ化を進めるとともに、内外の利用者が活用しやすい統合ポータルの構築を推進する。また、インターネット上の海賊版サイトに対して、あらゆる手段の対策を強化する。また、我が国の誇るマンガ、アニメ及びゲーム等のメディア芸術の情報拠点等の整備について指定法人による取組を促進する。コンテンツや衣食住を含む日本固有の魅力を創造して、発信し、商品・サービスの海外展開やインバウンド消費の拡大を図るクールジャパン戦略を深化させ、地域プロデュース人材の育成や国内外拠点の活用などを進めるとともに、国民が適正な対価で興行・イベント等を享受できる環境を整備する。

国立公文書館について、新たな施設の建設に向けて取り組み、その機能を充実させる。

④ スポーツ立国の実現

ポスト2020 年を見据え、スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ環境の改善に還元し、スポーツ参加人口の拡大につなげる好循環を生み出す。スタジアム・アリーナ改革等を通じたスポーツの成長産業化、日本版NCAA創設等の大学スポーツの振興、スポーツツーリズムをはじめとするスポーツを核とした地域活性化など、スポーツ全般にわたって民間資金の活用を推進する。また、総合的な障害者スポーツの振興、国際競技力の強化、スポーツ実施率の向上、スポーツを通じた健康増進や国際貢献を図るとともに、これらが相互に影響し合う好循環につなげる。さらに、スポーツ・インテグリティ確保のためスポーツ団体のガバナンス強化等を推進する。

⑤ 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等に向けた取組

2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会やラグビーワールドカップ2019は、日本全体の祭典であり、レガシーの創出と、我が国が持つ力を世界に発信する最高の機会である。その開催に向け、治安対策やサイバーセキュリティ対策に万全を期すとともに、円滑な輸送体制の構築や暑さ対策など大会の円滑な準備を着実に進める。また、ボランティア人材の育成・普及、「復興オリンピック・パラリンピック」の実現、ホストタウンによる地域活性化や国際交流を推進するとともに、beyond2020プログラム等を通じて日本文化の魅力を発信する。深層学習による自動翻訳システムの開発・普及や、心のバリアフリーとユニバーサルデザインの街づくりの推進など、大会を通じた新しい日本の創造に関する取組を地方自治体や民間企業と連携しながら進める。

⑥ 既存住宅市場の活性化

人生100 年時代において、多様なライフステージに対応した住まいの確保を目指す。このため、民間賃貸住宅による住宅セーフティネット制度や公的賃貸住宅の活用を図りつつ、若者・子育て世代が安心して結婚でき、子育てしやすく、高齢者等が安心して暮らせる良質な住環境の整備や、住み替えへの支援などを一体的に進める。

また、空き家の利活用を図るとともに、住宅の良質化・省エネ化、リフォームの推進、不動産管理業の適正化などにより、既存住宅市場を活性化させる。

⑦ 宇宙開発利用の推進

準天頂衛星システムについて、7機体制の確立と機能・性能向上を図り、G空間プロジェクトと連携しつつ、先進的な利用モデルを創出する。また、宇宙産業の更なる拡大を目指し、新たなビジネスの創出を促すため政府衛星データを容易に利用できる仕組みを着実に整備するとともに、次期基幹ロケットH3の開発、情報収集衛星の機数増や宇宙探査活動に資する技術実証などを効率的にメリハリを付けながら実施しつつ、我が国の一層の宇宙利用を促す環境整備を進める。

6.地方創生の推進

アベノミクスの推進により回りつつある経済の好循環を一層拡大していくためには、経済成長の果実を都市から地方へ、大企業から中小企業・小規模事業者へ波及させていくことが不可欠である。

地域経済の中核を担う中堅・中小企業・小規模事業者を後押しするとともに、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込むという地方への新しいひとの流れをつくり、まちづくりとまちの活性化につなげていく。このようにして活性化した地域をネットワークで結ぶことにより、東京一極集中を是正し、これからの時代にふさわしい国土の均衡ある発展を目指す。

人口減少克服と地方創生を実現するためには、同一地方自治体内における政策を検討するだけではなく、地方自治体間の連携を深め、広域的な経済圏を念頭に置いた政策を推進することが不可欠である。

(1)地方への新しいひとの流れをつくる

地方から大都市圏への人口移動の大宗を占める大学進学や就職をする若者の動きに歯止めをかけるため、地方自治体・大学・高等学校・地元産業界等の連携を強化することで、地域人材の育成・還流を図る仕組み(地域人材エコシステム)を構築する。さらに、地方大学・産業創生法に基づき、キラリと光る地方大学づくり等による地域における若者の修学・就業を促進する。同時に、雇用機会を創出するため、地域における産業振興への取組を支援するとともに、政府関係機関移転基本方針等に基づき政府関係機関の移転の取組を着実に進めるほか、本社機能の地方移転、産学金官の連携による地域密着型企業の立上げを促進する。地域への対日直接投資促進策を実施し、地域が有する強みを外国企業が持つ販路・技術・人材・ノウハウと結び付ける。地方での生活の魅力を知ってもらうために、国民の関心を惹きつける効果的・戦略的な情報発信を進める。

若者をはじめ様々なライフステージに応じた移住・交流の推進を図るため、UIJターンを望む人材や、地域の女性・高齢者等が、地域で起業や中小企業等での事業承継、新規就業を円滑に実現できるよう、地方自治体による全国規模のマッチングを支援する。あわせて、地方創生推進交付金や雇用関係助成金を活用した必要な支援を行う。また、在外の親日外国人材の活用を促進するとともに、優秀なプロフェッショナル人材の地方への呼込みを促進するほか、生活拠点を移して活動する地域おこし協力隊を拡充する。

地方への移住のきっかけを広げるため、地域外の者にまちづくりに関わる機会を提供するとともに、農泊や子供の農山漁村体験を体系的に促進する。また、社会性と収益性を両立させつつ、地域の課題を解決するソーシャルビジネスを振興するための事業環境整備や、その効果的な活用手法について検討する。

(2)中堅・中小企業・小規模事業者への支援

地域経済の中核を担う中堅・中小企業・小規模事業者は深刻な人手不足に直面しており、量・質双方での人材確保への支援を図るとともに、生産性向上や経営に対する支援を強化する。
具体的には、人材の確保に向けて、即戦力となる中核人材の確保を支援するとともに、若者・女性・高齢者などの潜在的労働力の活用を促進する。既存人材の育成や、経営支援機関の人材発掘支援機能の強化等に取り組む。

生産性の向上のため、「中小サービス等生産性戦略プラットフォーム」の活用による3年間で約100万社のITツールの導入や、生産現場へのIoT・ロボットの導入・利用を促進するとともに、自動車の電動化等の新たな成長分野への進出に関する支援を行う。地域の中核企業が地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域経済を牽引する事業について、各種の支援策を集中的に投入し、3年間で2000社程度の支援を目指すとともに、小規模企業振興基本計画の改定により、地域の産業実態に応じた支援の在り方を示す。

経営支援を強化するため、金融機関による担保・保証に依存しない融資の促進を通じて金融仲介機能を一層発揮させるとともに、商工会・商工会議所・よろず支援拠点などの支援機関による支援内容の充実などに取り組む。事業承継については、拡充された事業承継税制に加え、M&Aの支援強化等、承継前後のシームレスな支援を実施する。小規模事業者・個人事業主の承継に係る予算や税といった総合的な支援や大企業・中堅企業との連携等を進める。また、中小企業・小規模事業者に関連する行政手続を簡素化する。

(3)まちづくりとまちの活性化

地方への新しいひとの流れを支え、人口減少が進む中でも、人々が安心して暮らせる持続可能なまちづくりを進める。

より高い水準のユニバーサルデザイン化を推進しながら、「子育てに寄り添うまちづくり」に取り組む。また、高齢者が安心して暮らせるよう、地域の生活機能を集約したコンパクトなまちづくりを健康づくりと合わせて進める。一定の人口を有する圏域を形成し、医療・交通・教育・産業などの分野における近隣市町村の連携を促進する。民間団体が主体となって行うまちづくり活動に対し、その財源確保等を支援する制度の活用を促進する。民間による都市開発事業を促進するため、まちづくりの計画等に関する情報共有を支援し、関係者の合意形成や投資家の理解を促進する。

まちの活性化に向けて、まちづくり推進体制の強化や波及効果の高い民間投資を促進するとともに、シェアリングエコノミーについて、消費者等の安全を守りつつ、イノベーションと新ビジネス創出を促進する観点から、その普及促進を図る。あわせて、分野横断的なデータ利活用やロボット・AIによる自動化などアグレッシブなICTの導入を進める。また、マイナンバーカードと実証稼働中の自治体ポイントの活用によりクレジットカード等のポイントを合算し、地域におけるキャッシュレス化推進の仕組みを全国各地に導入・展開する。近未来技術の社会実装やスーパー・メガリージョンの効果を引き出す都市再生プロジェクトを進める。海事クラスターの活性化、産業を支える港湾の強化などを通じ、地域経済を押し上げる。

(4)意欲ある地方自治体への後押し、地方分権改革の推進等

地方に新しいひとの流れをつくり、「まち」を活性化するためには、各地域が課題解決に主体的に取り組むという意欲が重要であり、こうした意欲のある地方自治体を、情報・人材・財政の面から支援する。

地方自治体の創意工夫を喚起するためにも、地方分権改革を着実かつ強力に進める。

地方からの提案をいかに実現するかという姿勢で提案募集を行うとともに、改革の成果を国民が実感できるよう、優良事例の普及や情報発信の強化に努める。道州制について、基本法案の動向を踏まえ、必要な検討を進める。

(5)これからの時代にふさわしい国土の均衡ある発展

人口減少・少子高齢化の下、各地域の個性を活かしたこれからの時代にふさわしい国土の均衡ある発展を図る。こうした観点に基づき、都道府県・地域ブロックを越えた広域連携など、対流促進型国土の形成を目指す「国土形成計画」を推進する。さらに、東京一極集中の是正に向けて、中枢中核都市の機能強化を図り、企業誘致や地域の企業の事業拡大等によって企業活動が活性化し、人や大学が集積する魅力ある拠点にしていくための方策について検討し、年内に成案を得る。

人口減少が深刻な過疎地域や半島、離島・奄美などの条件不利地域については、近隣地域との調和ある発展や交流・連携を図りつつ、生活機能を確保する小さな拠点や地域運営組織の形成を推進し、交通基盤の維持等を図るとともに、地域資源や創意工夫を活かした自立的な地域社会の構築による、維持・活性化を目指す。

「北海道総合開発計画」に基づき、北海道の農水産品の輸出拡大や、北方領土隣接地域の振興を図る。アイヌ文化の復興・創造及び国民理解の促進を図りつつ、国際観光や国際親善に寄与するため、2020 年4月に国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園などからなる民族共生象徴空間を開業し、年間100 万人の来場者を目指す。また、この取組と、アイヌ文化の伝承等に関する取組や、地方自治体、経済界等による地域振興、産業振興などの取組との連携を併せて推進することにより相乗効果を高めていくとともに、立法措置を含むアイヌ政策の総合的な検討を行う。

(6)沖縄の振興

沖縄は、成長が著しいアジアの玄関口に位置付けられるという地理的特性や全国一高い出生率など、大きな優位性と潜在力を有している。これらを活かし、日本経済再生の牽引役となるよう、国家戦略として沖縄振興策を総合的・積極的に推進する。

国家戦略特区などの活用による観光客の利便性向上や、クルーズ船の受入環境を改善する港湾整備、那覇空港の滑走路増設など、観光産業の戦略展開や国際物流拠点の形成を進める。また、科学技術・イノベーションの国際的拠点を目指した沖縄科学技術大学院大学の規模拡充とともに、ITやものづくりの中核を担う人材の育成、米国の協力を得た英語教育の充実、深刻な子供の貧困への対策などにより、沖縄における人づくり革命と生産性革命を実現する。

米軍基地の迅速な跡地利用を推進する。西普天間住宅地区跡地については、関係府省の連携の下、琉球大学の医学部と附属病院を移設し、沖縄の特性を踏まえた沖縄健康医療拠点の形成を進める。

また、琉球泡盛の海外輸出プロジェクトなどを通じ、沖縄県産酒類の振興を促進する。

7.安全で安心な暮らしの実現

(1)外交・安全保障の強化

① 外交

自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携し、世界の平和と繁栄をリードするとともに、世界で保護主義や内向き傾向が強まる中で、これらの基本的価値と自由で公正な高い水準の貿易・投資ルールを世界に広めていくため、政治基盤が安定した我が国こそが、国際社会で主導的な役割を果たしていかなければならない。日米同盟を基軸としながら、積極的平和主義を実践し、地球儀を俯瞰ふかんする外交に取り組む。

2019年にG20サミットが初めて我が国で開催される。世界経済の成長と市場の安定のため、国際協調の強化に更なるリーダーシップを発揮していく。

積極的平和主義の旗の下、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて、貧困対策や保健衛生、教育、環境・気候変動対策、女性のエンパワーメント、法の支配など、人間の安全保障に関わるあらゆる課題の解決に、日本の「SDGsモデル」を示しつつ、国際社会での強いリーダーシップを発揮する。2019年に我が国で開催される第7回アフリカ開発会議に向け、日本企業のアフリカ投資を促進しつつ、官民一体で産業人材育成を含むアフリカが直面する課題の解決に貢献していく。また、即位の礼の際に訪日する各国元首などの接遇に万全を期す。

北朝鮮に政策を変えさせるため、毅然とした外交を展開する。完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルを廃棄させ、そして、引き続き最重要課題である拉致問題を解決する。

基本的価値を共有する国々と連携して、地球儀を俯瞰ふかんする外交を、ソフトパワーも活用しながら積極的に展開し、世界の平和と繁栄に貢献するとともに、積極果敢に国益を追求する。太平洋からインド洋に至る広大な海を将来にわたって、全ての人に分け隔てなく平和と繁栄をもたらす公共財とするため、ODAも活用し、地域内外の連結性を強化することで、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進する。また、在外邦人・在外公館等の安全対策の強化、在外邦人の安全確保のための国際テロに係る情報収集・分析機能の強化、国際機関邦人職員の増強、戦略的対外発信の更なる強化、草の根レベルからの日米関係強化の取組、「JICA開発大学院連携」も活用した親日派・知日派の育成、中南米等の日系社会との連携強化等に積極的に取り組む。
国際機関とODAを適正・効率的かつ戦略的に活用し、ODAを通じた開発協力を強化する。

また、これらの取組の基盤となる、人的体制や在外公館の整備、効率的・機動的な外交を目指す取組の強化を含め、外交実施体制の整備を推進する。

② 安全保障

近年、周辺国による軍事力の近代化・強化や軍事活動などの活発化の傾向がより顕著にみられるなど、我が国の安全保障環境が厳しさを増している中にあって、国家安全保障戦略に基づき、国家安全保障会議の司令塔機能の下、国家安全保障政策を一層戦略的かつ体系的なものとして実施する。

日米の緊密な連携の下、あらゆる事態に備え、高度の警戒態勢を維持するとともに、いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、情報収集・分析機能や危機管理機能を含め、我が国の防衛力を大幅に強化する。また、これを支える防衛産業についても、民生分野の知見活用、競争環境の確保、徹底した原価の低減などの施策に取り組み、その結果生じ得る企業の再編や統合も視野に効率化・強靱化を図る。

2018年末に向けて防衛計画の大綱の見直しや次期中期防衛力整備計画の検討を進め、サイバー空間や宇宙空間などの新たな領域の活用が死活的に重要になっていることを踏まえ、これらの領域における対処能力の強化も含め、国民を守るために真に必要な防衛力の在るべき姿を示す。あわせて、在日米軍再編及び基地対策の推進などを図る。

海洋政策上幅広く捉えた「総合的な海洋の安全保障」を基本的な方針とする新たな海洋基本計画、海上保安体制強化に関する方針等に基づき、「法の支配」に基づく海洋秩序の維持・強化、領海警備・海洋監視・海洋調査体制等の強化、情報収集・共有体制の強化をはじめとする海洋状況把握の能力向上、国境離島の保全・地域社会の維持などに取り組む。

(2)資源・エネルギー、環境対策

① 資源・エネルギー

エネルギー制約の克服・2050 年に向けたエネルギー転換・脱炭素化に挑戦する。このため、自主的な取組はもとより、省エネを、規制と支援の両面で、住宅・建築物や自動車をはじめ、あらゆる分野で徹底する。また、再生可能エネルギーについて、最大限の導入拡大と国民負担抑制を両立させるため、コスト低減や事業環境整備、系統制約克服、調整力確保に取り組み、主力電源化を目指す。新たなエネルギーシステムを構築するため、電力・ガス市場の競争活性化等による国民負担の抑制や、自由化の下での環境適合や安定供給等への対応、「水素基本戦略」に基づく水素需要の拡大・供給体制の構築、バーチャル・パワー・プラント等の次世代調整力の活用、エネルギーの地産地消の推進などに取り組む。優れた低炭素技術の開発に取り組み、海外展開を進めることで、温室効果ガスの世界的な排出削減に貢献する。

原子力については、安全性確保を全てに優先させ、原子力規制委員会が世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認めた原子力発電所については、その判断を尊重し再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体などの関係者の理解と協力が得られるよう取り組む。また、事業者の自主的安全性向上や防災対策の強化、使用済燃料の再処理・放射性廃棄物の最終処分に関する取組、技術開発、人材育成、国際協力などを行う。また、新たな検査制度の円滑な施行に向けた準備など、実効ある原子力規制を着実に推進する。

リスクマネー供給等による資源権益の獲得を引き続き進めつつ、資源開発産業の競争力強化に向け、物理探査船更新によるデータ集積能力やAI・IoT等を応用した革新的技術の獲得等を促進する。また、アジアでのLNG需要開拓や、LNGバンカリング拠点形成等を推進する。加えて、国内外での自動車の電動化や再エネ・新エネ機器の普及により必要となる鉱物資源の安定供給確保に関する取組を強化する。国内でも、石油・天然ガス開発の促進や、メタンハイドレート・海底熱水鉱床・レアアース泥などの海洋資源の開発・商業化に向け官民で取り組む。また、平時有事を問わず、国内の石油・LPガスの安定供給確保に向けたサプライチェーンの効率的維持・強化、燃料供給拠点の地域コミュニティインフラとしての機能強化等に取り組む。

② 環境対策

気候変動の脅威に対する世界全体の取組として、パリ協定の下、「地球温暖化対策計画」に基づき、経済成長と国内の温室効果ガスの大幅な排出削減を両立させる。2019年のG20 の議長国として、環境と経済成長との好循環を実現し、世界の脱炭素化を牽引するとの決意の下、成長戦略として、パリ協定に基づく温室効果ガス低排出型の経済・社会の発展のための長期戦略を策定する。

気候変動の影響による被害を回避・軽減するため、気候変動適応法の下、情報基盤の整備を進め、農業や防災等に関する適応策を推進する。

循環共生型社会を構築するため、汚水処理事業のリノベーション、廃棄物の有効利用等による資源生産性の向上、地域特性を活かした地域循環共生圏の創造、健全な水循環の維持・回復、廃棄物処理・浄化槽の国際展開、生物多様性の保全、マイクロプラスチック等の海洋ごみ対策、化学物質対策、グリーン冷媒技術の開発・導入・国際展開などに取り組む。

(3)防災・減災と国土強靱化の推進

我が国は、その自然条件から、場所を問わず、様々な自然災害が起こりやすい環境にある。国民の生命と財産を守るため、近年の災害の発生状況や気候変動の影響を踏まえ、体制整備に努めつつ、ハード・ソフト両面において防災・減災対策、国土強靱化の取組を進める。

被災者の迅速な救命・救助や被害の最小化を図るため、ICTの活用により情報共有を強化するとともに、広域化をはじめとした消防体制の強化に加えて、域外からの緊急援助体制を強化する。国及び地方自治体の災害救助体制の充実など、地域の災害対応力の向上を図る。また、災害時に防災拠点や避難所となる公共施設について、耐震化やトイレ環境の改善、機能継続確保を進める。さらに、自主防災組織等の育成・教育訓練や、消防団を中核とした地域防災力の充実強化、新技術を活用した河川管理の高度化及びそれらによる避難の迅速化を図る。被災地の早急な復旧・復興に向けて、激甚災害指定を早期化するとともに、緊急災害対策派遣隊の体制・機能を拡充・強化する。被災者をきめ細かく支援するため、被災者ごとに支援プランを作成する仕組みを検討する。南海トラフ地震について、新たな警戒体制を構築する。また、国民の正しい理解につなげる広報の充実を図る 。

強くてしなやかな国をつくるため、「国土強靱化基本計画」を見直すとともに、「国土強靱化アクションプラン2018」を着実に推進し、堤防整備・ダム再生などの水害対策や、災害時の避難道路を含めた道路などのネットワークの代替性の確保、岸壁や堤防の耐震化などの地震対策、津波対策、雪害対策などの災害対策に取り組む。地域計画の策定及び実施が進むよう支援を充実させるとともに、災害時等の社会貢献に取り組む企業等を認証するよう事業継続の認証制度を充実するほか企業の生産力の強靱化を図るなど、地方自治体や民間の取組の促進を図る。安全なまちづくりに向けて、住宅・建築物の耐震化や地盤の強化、木造密集市街地の改善、無電柱化、民間投資の活用を進める。また、災害派遣医療チームの司令塔機能の強化等を進めるとともに、医療活動訓練等において被災地域で必要とされる医療モジュールについて実証を推進する。さらに、「世界津波の日」を通じて、国内外において津波防災の重要性を普及啓発する。

原子力災害に対しては、避難計画の策定、訓練研修による人材育成、道路整備等による避難経路の確保、モデル実証事業等による避難の円滑化、放射線防護施設整備、原子力災害医療の質の向上などの対策を進め、防災体制の充実・強化を図る。

(4)暮らしの安全・安心

① 治安・司法

暴力団などによる組織犯罪、サイバー犯罪、薬物犯罪、振り込め詐欺などの特殊詐欺、性犯罪・児童虐待を含む女性や子供への暴力など、近年、深刻化する犯罪への対策も充実させ、必要に応じ多数の機関が連携して良好な治安を確保する。また、ワンストップ支援センターの地域差のない全国への展開や犯罪被害者等支援のための施策を推進する。痴漢被害の防止については、鉄道事業者等と連携し、取組を強化する。

検挙者の約半数が再犯者という現状を踏まえ、「再犯防止推進計画」に基づき、職業訓練・就労支援、福祉等の利用促進、女性等の特性に応じた指導、保護司・協力雇用主・更生保護施設の活動促進、民間資金活用、地方自治体との連携、矯正施設の環境整備等を強化する。子供の死因の分析とその情報の共有、違法薬物による中毒死等に対する検査・解剖の推進等により、死因究明の体制を強化する。

治安や海上保安、司法分野の人的・物的基盤や国際的ネットワークを強化するとともに、国内外の法的紛争の未然防止に向けた予防司法機能を充実させる。あわせて、国際法等の知見を有する国際的な司法人材を育成する。日本型司法制度の強みを重要なソフトパワーとし、京都コングレス2020の成功に向けて、国連や関係各国と連携・協力し、司法分野における国内外の取組「司法外交」を、外交一元化の下、オールジャパンで総合的・戦略的に推進する。

あわせて、司法制度改革推進法の理念に則り、総合法律支援など利用しやすく頼りがいのある司法の確保、法教育の推進などを含む民事司法制度改革を政府を挙げて推進するほか、ヘイトスピーチやインターネット上の人権侵害の解消に向けた取組、若年層の抱える問題を中心とした人権擁護活動、人権侵害の実態を踏まえた適切な啓発活動、高齢運転者対策などの交通安全対策を進める。

② 危機管理

2020 年東京オリンピック・パラリンピックの開催などを控え、テロの発生を未然に防止し、サイバーセキュリティ対策に万全を期す。このため、先端技術の利活用等を含めたテロ関連情報の収集・集約・分析等の体制・能力を強化するとともに、国際社会や産学と連携しながら、水際対策・入国管理や警戒・警備を強化する。鉄道におけるテロ対策の強化について、関係府省庁が連携し、新幹線を含め対応を図る。あわせて、感染症対策について、国内対策を推進するとともに、国際枠組みや研究・検査・治療体制、薬剤耐性対策等を強化する。また、G20 サミットについて、警備等を円滑に実施するための体制を構築する。

③ 共助社会・共生社会づくり

社会的諸課題の解決に寄与する公益活動に、民間の人材や資金を呼び込む。民間の公益活動を促進するため、その成果を適切に評価する手法を普及しながら、寄附文化の醸成や行政・企業・NPOによる協働(コレクティブインパクト)、クラウドファンディングや官民連携による社会的ファイナンスの活用を促進するとともに、2019 年度中の休眠預金等に係る資金の活用制度の運用開始を目指し取組を進める。

全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り高め合う地域共生社会を実現する。障害者の地域生活への移行や農福連携を含めた就労・社会参加を促進するとともに、発達障害について、社会全体の理解促進、家族支援等に取り組む。また、障害者と障害がない者との比較を可能とするため、障害者統計について、「公的統計の整備に関する基本的な計画」に従い、充実を図る。

高齢者・障害者虐待の早期発見・未然防止やセルフネグレクトの実態把握等の観点から、関係機関の専門性の向上や連携の強化・体制の整備を図る。改正生活困窮者自立支援法に基づき、就労・家計・住まいの課題を抱える生活困窮者に対する包括的な支援体制の整備を推進する。成年後見制度利用促進基本計画に基づき、市町村計画の策定や地域連携ネットワークの中核機関の整備などの施策を総合的・計画的に推進する。

性的指向、性自認に関する正しい理解を促進するとともに、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進める。あわせて、デジタル格差のないインクルーシブ(包摂的)な社会を実現するため、高齢者、障害者等に対するICT利活用支援に取り組む。

SNS等を活用して、いじめ等に関する相談を進めるとともに、若者向けの相談・支援や地域レベルの取組への支援を強化するなど、自殺総合対策を推進する。また、ガイドラインの作成や診療体制の充実などの慢性疼痛対策に取り組む。

2022 年4月に予定されている成年年齢18 歳への引下げを見据え、若者の意見を反映した効果的な周知活動、厳格な与信審査、自立支援、成人式の在り方を検討するなど、関係府省庁連絡会議を活用しつつ、必要な環境整備を推進する。

④ 国民皆保険

世界に冠たる我が国の国民皆保険は、国民の健康を増進し、国民の安心と経済成長の礎となってきた。新しい時代に対応した全世代型社会保障を構築するとともに、国民皆保険を維持、次世代に継承し、国民の暮らしにおける安心と安全を確保する。

⑤ 消費者の安全・安心

消費者の安全・安心を確保するため、成年年齢の引下げを見据えた未成年への消費者教育の強化や高齢者等の見守りネットワーク構築、内部通報制度に係る認証制度の導入による事業者のガバナンスの強化、HACCPに沿った衛生管理の推進等による食の安全の確保、遺伝子組換え食品の表示基準等の充実を進めるとともに、食品ロスの削減に向け、国、地方自治体、事業者、消費者などの様々な関係者が連携した国民運動の推進やICT活用等による民間企業の取組の促進等を図る。

(5)少子化対策、子ども・子育て支援

少子化という我が国の社会経済の根幹を揺るがしかねない国難を克服する。このため、個々人が希望する時期に結婚でき、かつ、希望する子供の数と生まれる子供の数との乖離をなくしていくための環境を整備し、「希望出生率1.8」の実現を目指す。

子育てに対して一人ひとりが温かい手を差し伸べ、共に応援していくという社会的気運を醸成しながら、地域社会において活力・意欲あるシニア層の参画を促進するなど、子育ての支え手の多様化を図るとともに、結婚、妊娠、出産段階からの切れ目のない支援に取り組む。また、男女ともに希望すれば働き続けながら子育てができる多様なライフスタイルが選択可能な環境をつくる。

子ども・子育て支援の更なる「質の向上」を図るため、消費税分以外も含め、適切に財源を確保していく。

また、世代を超えた貧困の連鎖を断ち切るため、ひとり親家庭の支援や子供の学習支援、スクールカウンセラー等による教育相談の充実、配偶者暴力被害等困難を抱えた女性への支援、無戸籍者を生じさせないための施策を推進する。また、離婚に伴う養育費の確実な支払いや安全な面会交流の実現に向けて取り組む。こうした取組を通じ、子供の貧困の解消に向けて社会全体で取り組む。

子供の命が失われる痛ましい事件が繰り返されないよう、市町村、児童相談所の職員体制及び専門性の強化、適切な情報共有など地方自治体間等関係機関との連携体制の強化や適切な一時保護の実施などによる児童虐待防止対策、家庭養育優先原則に基づく特別養子縁組、里親養育支援体制の整備、児童養護施設等の小規模・地域分散化、職員配置基準の強化を含む高機能化及び家庭養育支援への機能転換などの社会的養育を迅速かつ強力に推進する。

不妊治療に対する支援を行う。また、ハイリスクな妊婦が、早期に必要な支援を受けつつ、産婦人科を受診できるよう検討を進める。

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