デジタルヘルス

健康・医療戦略(令和3年4月9日 一部変更)

はじめに(健康・医療戦略に係る経緯等)

健康・医療戦略に係る経緯

2013年6月、アベノミクスにおいて当初掲げた「三本の矢」の一つである成長戦略「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」(2013年6月14日閣議決定)において、「戦略市場創造プラン」のテーマの一つに『国民の「健康寿命」の延伸』が掲げられた。

この中で、医療関連産業の活性化により、必要な世界最先端の医療等が受けられる社会の実現のため、医療分野の研究開発に係る司令塔機能を創設することとされ、

① 司令塔の本部として、内閣に、内閣総理大臣・担当大臣・関係閣僚からなる推進本部を設置して、医療分野の研究開発に関する総合戦略を策定するとともに、各省の関連予算を一元化して戦略的・重点的な予算配分を行うこと、
② 国として戦略的に行うべき研究を、基礎から実用化まで一元的に管理する実務を担う独立行政法人を創設すること
等が盛り込まれた。

これを受け、同年8月2日、閣議決定により健康・医療戦略推進本部が設置され、同本部に対して政策的助言を行う健康・医療戦略参与会合及び医療分野の研究開発に関する健康・医療戦略推進専門調査会における議論も踏まえて、第186回通常国会に健康・医療戦略推進法案及び独立行政法人日本医療研究開発機構法案を提出、いずれも2014年5月23日に成立した(いずれも5月30日公布・施行)。この健康・医療戦略推進法(平成26年法律第48号。以下「推進法」という。)により、健康・医療戦略は「政府が総合的かつ長期的に講ずべき健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出に関する施策の大綱」等を定めるもの、また健康・医療戦略推進本部は健康・医療戦略の推進を図るため、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官及び健康・医療戦略担当大臣を副本部長、その他全ての国務大臣を本部員として内閣に設置するものと規定された。これを受け、同年6月10日、推進法に基づく健康・医療戦略推進本部(以下「推進本部」という。)が設置され、同本部において翌7月22日に第1期の健康・医療戦略及び医療分野研究開発推進計画(以下「健康・医療戦略等」という。)を決定した。

推進本部では、毎年度、健康・医療戦略等の実行状況のフォローアップを行うとともに翌年度の取組方針を取りまとめてきたほか、第1期の中間年度に当たる2016年度には健康・医療戦略等の見直しを行い、2017年2月17日に一部変更を決定した。

今般の第2期の健康・医療戦略(以下「本戦略」という。)は、こうした第1期の健康・医療戦略等の実行状況を検証するとともに、この間の社会情勢の変化、関連する政策動向等を踏まえた上で、現状と課題を明らかにし、政府が総合的かつ長期的に講ずべき先端的研究開発及び新産業創出に関する施策を取りまとめたものである。

他の戦略等との連携

「統合イノベーション戦略」(2018年6月15日閣議決定)に基づき、2018年7月に統合イノベーション戦略推進会議が設置された。これは、推進本部を含め、特にイノベーションに関連が深い総合科学技術・イノベーション会議、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、知的財産戦略本部、宇宙開発戦略本部、総合海洋政策本部などの司令塔会議について、横断的かつ実質的な調整を図る場として設置されたものである。

統合イノベーション戦略推進会議では、司令塔横断的な戦略として「AI戦略2019」、「バイオ戦略2019」、「量子技術イノベーション戦略」等を策定している。本戦略は、これらの戦略も踏まえつつ策定したものであり、引き続き、司令塔会議間の連携の下、整合性を取りつつ推進していくこととする。

また、本戦略は「科学技術基本計画」も踏まえつつ策定したものであり、引き続き同計画と整合性を取りつつ推進していくこととする。

さらに、国土強靱じん化に係る国の計画等の指針として定められている「国土強靱じん化基本計画」(2014年6月3日閣議決定、2018年12月14日変更)を踏まえ、本戦略に基づく研究開発について、国土強靱じん化の各分野への活用を推進し、効率的・効果的な研究開発が行われるよう努めることとする。

1. 総論

1.1.基本理念等

本戦略の位置付け

推進法第1条に定められているとおり、国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会(健康長寿社会)を形成するためには、世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発及び健康長寿社会の形成に資する新産業創出を図るとともに、それを通じた我が国経済の成長を図ることが重要となっている。本戦略は、これを踏まえ、同法第17条に基づき、政府が講ずべき健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画として策定するものである。

本戦略の基本理念

本戦略が則る基本理念は、推進法第2条に基づき、以下のとおりとする。

① 世界最高水準の技術を用いた医療の提供への寄与

医療分野の研究開発における基礎的な研究開発から実用化のための研究開発までの一貫した研究開発の推進及びその成果の円滑な実用化により世界最高水準の医療の提供に寄与する。

② 経済成長への寄与

健康長寿社会の形成に資する産業活動の創出及びこれらの産業の海外における展開の促進その他の活性化により、海外における医療の質の向上にも寄与しつつ、我が国経済の成長に寄与する。

1.2.対象期間

本戦略は、2040年頃までを視野に入れ、2020年度から2024年度までの5年間を対象とし、2024年度末までに全体の見直しを行うこととする。なお、対象期間内においても、フォローアップの結果等を踏まえ、必要に応じて見直しを行う。

2. 現状と課題

2.1 健康・医療をめぐる我が国の現状

我が国では、2040年には100歳以上の人口が30万人以上になると予想され、「日本では、2007年に生まれた子供の半数が107歳より長く生きる」とも言われるなど、人生100年時代の到来が世界に先駆けて間近に迫っている。

平均寿命は年々延びて男女ともに世界最高水準に達しており、1994年に14%、2007年に21%を超えた高齢化率(65歳以上人口割合)は、2018年には28.1%に達するなどますます高齢化が進展している。総人口が減少する中で高齢化率は今後も上昇が見込まれるとともに、現役世代の減少は加速し、2040年には現役世代1.5人で65歳以上の者1人を支えることになると予想される。

一方で、今の70代前半の高齢者の体力・運動能力は14年前の60代後半と同程度であるなど高齢者の若返りが見られ、70歳以降も就業を望む者の割合は8割にのぼるなどいわゆる「高齢者」像も変化しつつある。

加えて、健康寿命も順調に延びており、第1期の目標である1歳以上の延伸(2010年比)を達成し、2016年には男性72.14歳、女性74.79歳となっている。健康寿命と平均寿命との差、すなわち疾病などの健康上の理由により日常生活に制限のある不健康期間は、2010年から2016年の間に男女ともに約0.3年が短縮されたものの、依然として10年近くの期間を占めており、更なる短縮に向けた取組が望まれる。

我が国の疾病構造は、医科診療医療費を見ると、がん、糖尿病、高血圧疾患などの生活習慣病が全体の3分の1を占め、筋骨格系、骨折、眼科などの運動器系・感覚器系や、老化に伴う疾患、認知症などの精神・神経の疾患が続いている。健康寿命を延伸し、平均寿命との差を短縮するためにはこうした疾患への対応が課題となる中、診断・治療に加えて予防の重要性が増すと同時に、罹患しても日常生活に出来るだけ制限を受けずに生活していく、すなわち、疾病と共生していくための取組を車の両輪として講じていくことが望まれている。

予防については、二次予防(疾病の早期発見、早期治療)、三次予防(疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図るとともに再発・合併症を予防すること)に留まらず、一次予防(生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること)も併せて取り組むべきであることが指摘されている。

健康・医療関連産業の状況を概観すると、我が国は、医薬品、医療機器ともに貿易収支は輸入超過であるものの、高い技術力を有している医薬品については、数少ない新薬創出国であり、大手新薬メーカーの中には海外売上高比率が50%を超えているところもあるなど、グローバルな企業活動が展開されている。また、医療機器については、治療機器は欧米企業の後塵じんを拝しているものの、診断機器については画像診断装置を中心に、日本企業が世界市場において一定のシェアを有している。その一方で、欧米企業が、自前主義からオープン・イノベーションへと転換し、ベンチャー企業発の革新的な医薬品や医療機器を事業化する中、我が国では、ライフ系ベンチャー企業が十分に育っていない状況にある。そのほか、バーコード等を活用した製品のトレーサビリティに関するデータ蓄積及び標準化に向けた取組が企業・関係団体により進められている。

ヘルスケア産業に関しては、公的保険を支える公的保険外サービスの産業群の国内市場規模が、2016年には約25兆円であったが、2025年には約33兆円になると推計されている。市場規模の拡大とともに、デジタルヘルスやゲノム解析など新たな技術を活用したヘルスケアサービスの多様化が見込まれている。

加えて、世界はまさに第4次産業革命のただ中にあり、人工知能(以下「AI」という。)、ロボット、ビッグデータなどのデジタル技術とデータの利活用が、産業構造や経済社会システム全体に大きな影響を及ぼしつつある中、我が国においては目指すべき未来社会の姿の一つとして「Society5.0」を提唱し、その実現に向けた取組を進めている。とりわけ、健康・医療分野は、これらの技術を活かし得る分野の一つとして期待されており、異分野からの企業の参入やスタートアップ企業等による投資が進みつつある。政府においても、健康・医療・介護データ基盤の整備などデータヘルス改革を進めており、AIやビッグデータ等の利活用による創薬等の研究開発の進展や、新たなヘルスケアサービスの創出等が見込まれている。その際には、健康か病気かという二分論ではなく健康と病気を連続的に捉える「未病」の考え方やその取組を進めるための指標の構築等が重要になると考えられる。

世界的にも高齢化の進展は不可避の状況にあり、世界の高齢化率は1950年の5.1%から2015年には8.3%に上昇し、さらに、2060年には17.8%にまで上昇すると見込まれている。先進地域はもとより、開発途上地域においても、2015年に6.4%であった高齢化率は、2060年に16.3%にまで上昇し、急速に高齢化が進むことが見込まれている。その中でも、我が国は世界に先駆けて超高齢社会を迎え、今後も最も高い水準の高齢化率を維持していくと予想される3。

また、国際社会が目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」の一つとして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現が掲げられており、我が国としても引き続きこの達成への貢献も視野に入れることが重要となっている。

2.2 第1期の健康・医療戦略の成果と課題

(1) 世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発の推進に係る成果と課題

(成果)

  • 2015年4月1日に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下「AMED」という。)を設立し、従来、厚生労働省、文部科学省及び経済産業省が各省それぞれに運用していた医療分野の研究開発予算を一元化して9つの統合プロジェクトを編成するとともに、プログラムディレクター(PD)等の配置による研究開発マネジメント体制を整備するなど、基礎から実用化まで一貫した研究開発を推進する体制を構築した。これにより、第1期のKPIの達成状況に見られるように、アカデミアのシーズが実用化に至るなど優れた研究開発成果が多数創出された。
  • クリニカル・イノベーション・ネットワークの構築等により臨床研究や治験の実施環境の改善を図るとともに、ゲノム・データ等のシェアリングを進めるなど、研究開発の環境の整備を進めた。
  • 臨床研究実施に係る公正かつ適正な手続等を定める臨床研究法(平成29年法律第16号)を2017年公布、翌年施行するなど臨床研究に対する国民の信頼を確保する取組や、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)によるレギュラトリーサイエンス総合相談やレギュラトリーサイエンス戦略相談の拡充、審査体制の強化による審査ラグ0年の達成など、医療分野特有の審査手続に関しても改善を進めた。

(課題)

医療分野の研究開発予算をAMEDに一元化し、9つの統合プロジェクトの推進により前述した成果を挙げてきたものの、下記のような課題が挙げられる。

  • 統合プロジェクトを構成する各府省の予算について、それぞれが独自のエビデンスに基づいた配分を行っており、統一的なエビデンスに基づく重点化がされていない。
  • 個々の予算や研究課題について、予防/診断/治療/予後・QOL(生活の質)といった開発目的が必ずしも明確に意識されていない。
  • データの基盤構築・利活用、ゲノム・遺伝子医療、中・高分子医薬やドラッグ・デリバリー・システム(DDS)等、本来、疾患横断的に活用し得るモダリティ(技術・手法)等の開発が、疾患別の統合プロジェクトで特定の疾患に分断されている。また、疾患別の統合プロジェクトが特定疾患への展開にとどまっている。
(2) 健康長寿社会の形成に資する新産業創出及び国際展開の促進等に係る成果と課題

(成果)

  • 新産業創出については、健康投資を行う企業を評価する仕組みとして、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人認定制度」を創設するなど需要の拡大に資する取組を進めるとともに、民間ヘルスケアサービスの第三者認証への支援、業界団体が策定する業界認証等の在り方を示す指針の取りまとめ、各地域において産学官の多様な主体の連携を推進する「地域版次世代ヘルスケア産業協議会」の設置促進及びそのアライアンスの設置など、新産業の供給環境の整備を進めた。
  • 国際展開については、日本的介護のアジアへの展開を進める「アジア健康構想に向けた基本方針」を推進本部において決定(2016年7月)し、さらに、介護のみならず医療、予防、健康な生活を支えるサービス等まで対象を拡大する改定(2018年7月)を行い、同基本方針に基づきアジア健康構想を推進した。さらに、「アフリカ健康構想に向けた基本方針」を推進本部において決定(2019年6月)し、同基本方針に基づきアフリカ健康構想の推進に着手した。
  • 日本の国際医療拠点の設置の推進や、渡航受診者の受入れに意欲と能力のある国内医療機関の認定を進めた。

(課題)

  • 新産業創出に係る課題
    • 我が国において重要性が増している多因子疾患への対応に当たっては、優れた医療の提供に加え、健康増進・予防の促進や病気と共生できる社会の構築を一体的に進めていくことが重要である。このため、これを支える新たな産業の創出・拡大への期待が高まっているが、市場は発展途上の状況にある。
    • 民間のヘルスケアサービスを有効に活用するには公的保険サービスとの連携が重要になるが、その素地がまだ十分に整っていない。
    • 世界的なオープン・イノベーションへの流れの中で、創薬等のライフ系ベンチャー企業がイノベーション創出の主要な担い手となりつつあるが、我が国では、上場基準が厳しい、リスクマネーの供給やインキュベーションの機能が弱いなど、その育成のための土壌が整っていない。
    • 新たなシーズが創出された場合でも、それを実用化にまでつなげる製造インフラ等が十分でない。
    • AI、ビッグデータなどのデジタル技術とデータの利活用により、異分野からの企業の参入やスタートアップ企業等による投資が進みつつあるが、従来から健康・医療産業に取り組んできた産業界等との連携が進んでおらず、ノウハウが必ずしも十分でない。
  • 国際展開に係る課題
    • 我が国の健康・医療関連産業は高い水準であることに比して、これまで国際的なプレゼンスの水準は一定程度にとどまっている。
    • 高齢化が進むアジアや、急増する人口を背景に高い経済成長を遂げているアフリカは潜在的市場として大きな魅力があり、諸外国が積極的なアプローチを行う中、我が国がより戦略的な国際展開を行わなければ市場確保に後れを取る可能性がある。
(3) 研究開発及び新産業創出等を支える基盤的施策に係る成果と課題

(成果)

  • 臨床研究法に基づく質の高い臨床研究や治験を実施する人材を育成するため、臨床研究中核病院による研修を開始するとともに、講義内容についてコアカリキュラム等の作成による標準化を図ったほか、不足している生物統計業務を担う実務家を産学共同で育成する事業を創設・推進するなど、専門人材の育成を行った。
  • 医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(平成29年法律第28号)の制定・施行、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)及び介護保険総合データベース(介護DB)等の連結解析に関するシステム整備など、健康・医療・介護のデータ利活用基盤の構築に向けた制度整備等を進めた。

(課題)

  • 医療分野の先端的な研究開発や新産業創出を取り巻く技術的な進展等に即した人材の確保・育成を行う必要がある。
  • 匿名加工医療情報の利活用に必要な法令の整備が行われたところであり、その着実な運用に取り組んでいくことが求められる。

3. 基本方針

3.1.世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発の推進に係る基本方針

  • 基礎から実用化までの一貫した研究開発
    • 引き続き、AMEDによる支援を中核とした産学官連携による基礎から実用化まで一貫した研究開発の推進と成果の実用化を図る。
  • モダリティ等を軸とした統合プロジェクトの推進
    • 関係府省や機関が持つエビデンス(研究者等への調査、論文調査、海外動向等)を分析した上で、重点化する領域等を抽出する。
    • 疾患を限定しないモダリティ等の統合プロジェクトに集約することにより、AIなどデジタル技術の活用を図りつつ、新たな医療技術等を様々な疾患に効果的に展開する。
    • 疾患領域に関連した研究開発は、モダリティ等の統合プロジェクトの中で推進するが、プロジェクト間の連携を常時十分に確保し、特定の疾患ごとに柔軟にマネジメントできるようにする。
    • 開発目的(予防/診断/治療/予後・QOL)にも着目した、健康長寿社会の形成に向けた健康寿命延伸という目標のために最適なアプローチを選択する。
  • 最先端の研究開発を支える環境の整備
    • 産業界も含めた研究開発促進のため、臨床研究拠点病院などの研究基盤、イノベーション・エコシステム、データ基盤、人材育成、研究開発成果実用化のための審査体制の整備などの環境整備を推進する。
    • 特に、研究開発に資するデータの連携基盤を構築するとともに、利活用しやすい環境を整備する。

3.2.健康長寿社会の形成に資する新産業創出及び国際展開の促進等に係る基本方針

予防・進行抑制・共生型の健康・医療システムの構築
  • 公的保険外のヘルスケア産業の活性化や公的保険サービスとの連携強化により、「予防・進行抑制・共生型の健康・医療システム(多因子型の疾患への対応を念頭に、医療の現場と日常生活の場が、医療・介護の専門家、産業界、行政の相互の協働を得て、境目無く結び付き、個人の行動変容の促進やQOLの向上に資するシステム)」の構築を目指す。
新産業創出に向けたイノベーション・エコシステムの構築
  • 製薬産業、医療機器産業、介護福祉機器産業やその他公的保険外の様々なヘルスケアサービス関連産業が一体となり、実用化まで含めて新たな付加価値を創出できる、総合的な健康・医療関連産業の振興を目指す。
  • ベンチャー企業等によって革新的なイノベーションが創出されるとともに、既存の健康・医療関連産業にとどまらず、異業種企業や投資家などの幅広い関係者による健康・医療分野への投資や新たな事業創出が促進されるよう、セクターを超えた連携の強化や産業ビジョンの共有等によるイノベーション・エコシステムの構築を図る。
アジア・アフリカにおける健康・医療関連産業の国際展開の推進
  • UHCの達成への貢献を視野に、アジア健康構想及びアフリカ健康構想の下、各国の自律的な産業振興と裾野の広い健康・医療分野への貢献を目指し、我が国の健康・医療関連産業の国際展開を推進する。対象分野については、医療・介護のみならず、裾野の広いヘルスケアサービスを含む全体をパッケージとして展開する。具体的な手法については、我が国の強みや相手国の状況等を考慮し、我が国企業の発展と海外における自律的な産業振興の両立を視野に入れ対応する。
日本の医療の国際化
  • 前述の国際展開と医療インバウンド及び訪日外国人への適切な医療提供を一体的に推進することで、我が国の医療の国際的対応能力を向上させる。同時に、このような活動を通じ、海外を含めた広範な医療圏の構築・維持を目指す。

4. 具体的施策

4.1.世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発の推進

(1) 研究開発の推進
○ 医療分野の研究開発の一体的推進

他の資金配分機関、インハウス研究機関、民間企業とも連携しつつ、AMEDによる支援を中核として、医療分野の基礎から実用化までの一貫した研究開発を一体的に推進する 。
具体的には、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)では、科学研究費助成事業により研究者の自由な発想に基づく研究を推進する。
AMEDは、資金配分機関として、国が定めた戦略に基づき、科学研究費助成事業等で生まれたシーズも活用しつつ、医療分野の実用化のための研究開発を基礎段階から一貫して推進する。
また、他の資金配分機関として、例えば、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)ではライフサイエンス分野等の基礎的・基盤的な研究開発を推進し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では工学分野等の産業技術の研究開発を推進しているところである。これらの機関の研究開発は、医療分野の研究開発につながり得るもの、あるいはそれを支えるものであることから、医療分野との融合領域等について、AMEDは他の資源配分機関とも適切に連携・分担を図る。
さらに、各インハウス研究機関においても医療分野の研究開発を行っているところであり、AMEDの研究開発支援とも適切に連携・分担を図りつつ、全体として戦略的・体系的な研究開発を推進していく。
特に、AMED及びインハウス研究機関が推進する医療分野の研究開発については、国の方針・戦略を踏まえて推進するものであることから、統合プロジェクト以外の予算も含め関連予算を戦略的・重点的に配分するため、推進本部において、有識者の意見も踏まえつつ、関係府省・機関に対して一元的な予算要求配分調整を実施する。
また、医療分野の研究開発に関連する他の資金配分機関、インハウス研究機関及びAMEDの間で情報共有・連携を十分に確保できる仕組みを構築する。(◎健医、総、文、厚、経)

○ インハウス研究開発

関係府省が所管するインハウス研究機関が行っている医療分野のインハウス研究開発については、推進本部の事務局、関係府省、インハウス研究機関及びAMEDの間で情報共有・連携を恒常的に確保できる仕組みを構築するとともに、推進本部の有識者会議やAMED等の有識者の意見を伺いつつ、インハウス研究機関との連携の下、研究開発の進捗状況の把握や資源配分の方向性の取りまとめなど、一元的な予算配分要求調整を推進本部において実施する。

この枠組みを用いて、医療分野のインハウス研究開発の今後の方向性について、各機関の特性を踏まえつつ、以下のような点をはじめとして検討し、2020年度中に取りまとめる。

  • 各インハウス研究機関が今後重点的に取り組む医療分野の研究開発のテーマ、研究課題の設定方法
  • 各インハウス研究機関における医療分野の研究開発の評価の在り方
  • AMEDとインハウス研究開発機関の連携や役割分担の在り方。例えば、インハウス研究開発の成果のAMEDが支援する研究開発での活用、AMEDが支援する研究開発に資する基盤的な研究開発をインハウス研究機関で推進(◎健医、文、厚、経)
○ 6つの統合プロジェクト

第1期では、医療分野につき豊富な経験を有するプログラムディレクター(PD)の下で、各省の関連する研究開発事業を統合的に連携させ、一つのプロジェクトとして一元的に管理する仕組みを「統合プロジェクト」として導入した。
第1期においては、横断型のプロジェクトと疾患別のプロジェクトを合わせて9つの統合プロジェクトを推進してきたところである。それぞれの統合プロジェクトにおいて成果が創出された一方で、
・ 横断型のプロジェクトと疾患別のプロジェクトとの間で、類似の研究課題の重複やプロジェクト間の情報共有が十分でない場合がある。
・ 横断的に活用し得るモダリティが、疾患別のプロジェクトの中で特定疾患への展開にとどまる恐れがある。
・ 疾患別のプロジェクトの設定が一部の疾患領域にとどまっている。
などの課題もあった。

このため、第2期となる本戦略では、モダリティ等を軸とした統合プロジェクトに再編し、横断的な技術や新たな技術を、多様な疾患領域に効果的・効率的に展開する。
また、疾患領域に関連した研究開発については、多様な疾患への対応や感染症等への機動的な対応が必要であることから、モダリティ等の統合プロジェクトを横断する形で、特定の疾患ごとに柔軟にマネジメントできるように推進する。

具体的には、統合プロジェクトを①~⑥のとおり再編するとともに、AMEDによる支援を中核として、以下の点に留意しながら研究開発を推進する。

  • アカデミアによる医療への出口を見据えたシーズ研究を行うとともに、こうしたシーズも活かしつつ産学連携による実用化研究・臨床研究を行うほか、臨床上の課題を基礎研究にフィードバックするリバース・トランスレーショナル・リサーチ(rTR)を行う。さらに、研究開発に対する相談・助言などの伴走支援を行うことで、基礎から実用化までの一貫した研究開発や循環型の研究開発の推進と成果の実用化を図る。
  • 「予防/診断/治療/予後・QOL」といった開発目的を明確にした技術アプローチを行う。これにより、ライフステージを俯瞰ふかんし、健康寿命延伸を意識した取組とする。
①医薬品プロジェクト
  • 医療現場のニーズに応える医薬品の実用化を推進するため、創薬標的の探索から臨床研究に至るまで、モダリティの特徴や性質を考慮した研究開発を行う。このため、新たなモダリティの創出から各モダリティのデザイン、最適化、活性評価、有効性・安全性評価手法、製造技術等の研究開発まで、モダリティに関する基盤的な研究開発を行う。さらに、様々なモダリティに関する技術・知見等を疾患横断的に活用して新薬創出を目指す。また、創薬デザイン技術や化合物ライブラリー、解析機器の共用など創薬研究開発に必要な支援基盤の構築に取り組む。(科技、文、◎厚、経)
②医療機器・ヘルスケアプロジェクト
  • AI・IoT技術や計測技術、ロボティクス技術等を融合的に活用し、診断・治療の高度化のための医療機器・システム、医療現場のニーズが大きい医療機器や、予防・高齢者のQOL向上に資する医療機器・ヘルスケアに関する研究開発を行う。また、医療分野以外の研究者や企業も含め適切に研究開発を行うことができるよう、必要な支援に取り組む。(総、文、厚、◎経)
③再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト
  • 再生・細胞医療の実用化に向け、細胞培養・分化誘導等に関する基礎研究、疾患・組織別の非臨床・臨床研究や製造基盤技術の開発、疾患特異的iPS細胞等を活用した難病等の病態解明・創薬研究及び必要な基盤構築を行う。また、遺伝子治療について、遺伝子導入技術や遺伝子編集技術に関する研究開発を行う。さらに、これらの分野融合的な研究開発を推進する。(科技、◎文、厚、経)
④ゲノム・データ基盤プロジェクト
  • 健常人及び疾患のバイオバンク・コホート等の情報に加え、臨床研究等を行う際のコホート・レジストリ、臨床情報等を統合し、研究開発を推進するために必要なデータ基盤を構築する。また、一人ひとりの治療精度を格段に向上させ、治療法のない患者に新たな治療を提供するといったがんや難病等の医療の発展や、個別化医療の推進など、がんや難病等患者のより良い医療の推進のため全ゲノム解析等実行計画を実施する。特にがんの全ゲノム解析は、臨床実装を見据え、がんの再発分野等の課題を明確に設定した上で推進する。また、細胞のがん化過程をシームレスに追跡できるよう健常人コホートからがん患者の発生を追跡できる研究について検討する。
  • その際、詳細で正確な臨床情報等が得られる検体を重点的に解析するとともに、個人情報等に配慮しつつ研究開発や創薬等に活用できるデータシェアリングを進め、特に、AMEDで行う研究開発については、研究成果として得られたデータを共有する。
  • ゲノム・データ基盤の整備を推進するとともに、全ゲノム解析等実行計画等の実行により得られるデータの利活用を促進することで、ライフステージを俯瞰ふかんして遺伝子変異・多型と疾患の発症との関連等から疾患の発症・重症化予防、診断、治療等に資する研究開発を推進し、病態解明を含めたゲノム医療、個別化医療の実現を目指す。
  • また、レジストリ等の医療データを活用した新たな診断・介入法の実装に向けた研究、無形の医療技術やそれに関連するシステムの改善、改良を目指したデータ収集等の研究を行う。
    (科技、総、文、◎厚、経)
⑤疾患基礎研究プロジェクト
  • 医療分野の研究開発への応用を目指し、脳機能、免疫、老化等の生命現象の機能解明や、様々な疾患を対象にした疾患メカニズムの解明等のための基礎的な研究開発を行う。
  • これらの研究開発成果を臨床研究開発や他の統合プロジェクトにおける研究開発に結び付けるとともに、臨床上の課題を取り込んだ研究開発を行うことにより、基礎から実用化まで一貫した循環型の研究を支える基盤を構築する。
    (◎文、厚)
⑥シーズ開発・研究基盤プロジェクト
  • アカデミアの組織・分野の枠を超えた研究体制を構築し、新規モダリティの創出に向けた画期的なシーズの創出・育成等の基礎的研究を行うとともに、国際共同研究を実施し、臨床研究開発や他の統合プロジェクトにおける研究開発に結び付ける。
  • また、橋渡し研究支援拠点や臨床研究中核病院において、シーズの発掘・移転や質の高い臨床研究・治験の実施のための体制や仕組みを整備するとともに、rTR、実証研究基盤の構築を推進し、基礎研究から臨床研究まで一貫した循環型の研究支援体制や研究基盤を整備する。
    (◎文、厚、経)
○ ムーンショット型の研究開発
  • 100歳まで健康不安なく人生を楽しめる社会の実現など目指すべき未来像を展望し、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題に対して、健康・医療分野においても貢献すべく、野心的な目標に基づくムーンショット型の研究開発を、戦略協議会等を通じて総合科学技術・イノベーション会議で定める目標とも十分に連携しつつ、関係府省が連携して行う。(科技、◎AMED室、文、厚、経)
○ 疾患領域に関連した研究開発
  • 6つの統合プロジェクトの中で、疾患領域に関連した研究開発も行う。その際、多様な疾患への対応が必要であること、感染症対策など機動的な対応が必要であることから、統合プロジェクトの中で行われる研究開発を特定の疾患ごとに柔軟にマネジメントできるように推進する。
  • 特に、2040年の人口動態を見据え、現在及び将来の我が国において社会課題となる疾患分野に係る研究開発を戦略的・体系的に推進する観点から、がん、生活習慣病(循環器、糖尿病等)、精神・神経疾患、老年医学・認知症、難病、成育、感染症(薬剤耐性(AMR)を含む)等については、具体的な疾患に関して統合プロジェクトにまたがる研究課題間の連携が常時十分に確保されるよう運用するとともに、統合プロジェクトとは別に、予算規模や研究開発の状況等を把握・検証し、対外的に明らかにするほか、関係府省において事業の検討等の参考にする。
  • このため、AMEDにおいて、統合プロジェクト横断的に対応できる体制の下で、特定疾患ごとのマネジメントを行う。特に、現在及び将来の我が国において社会課題となる上記の疾患分野については、それぞれの疾患領域に豊富な知見を有するコーディネーターの下で、疾患ごとのマネジメントを行う。その際、難病やがん等の疾患領域については、病態解明等の基礎的な研究から医薬品等の実用化まで一貫した研究開発が推進されるよう、十分に留意する。
  • 特に、難病については、その種類が多い一方で症例数が少ないという制約の中で病態解明や治療法の開発を行うという特性を踏まえる必要がある。厚生労働科学研究における難病の実態把握、診断基準・診療ガイドライン等の作成等に資する調査及び研究から、AMEDにおける実用化を目指した基礎的な研究、診断法、医薬品等の研究開発まで、切れ目なく実臨床につながる研究開発が行われるよう、厚生労働省とAMEDは、患者の実態とニーズを十分に把握し、相互に連携して対応する。
  • 現在及び将来の我が国において社会課題となる上記の疾患分野については、以下のようなテーマをはじめとして研究開発を推進する。
    (◎健医、総、文、厚、経)

(がん)

  • がんの生物学的本態解明に迫る研究開発や、患者のがんゲノム情報等の臨床データに基づいた研究開発
  • 個別化治療に資する診断薬・治療薬の開発や免疫療法や遺伝子治療等をはじめとする新しい治療法の開発

(生活習慣病)

  • 個人に最適な糖尿病等の生活習慣病の重症化予防方法及び重症化後の予後改善、QOL向上等に資する研究開発。AI等を利用した生活習慣病の発症を予防する新たな健康づくりの方法の確立
  • 循環器病の病態解明や革新的な予防、診断、治療、リハビリテーション等に関する方法に資する研究開発
  • 慢性腎臓病の診断薬や医薬品シーズの探索及び腎疾患の病態解明や診療エビデンスの創出に資する研究開発
  • 免疫アレルギー疾患の病態解明や予防、診断、治療法に資する研究開発

(精神・神経疾患)

  • 可視化技術導入等による慢性疼痛の機序解明、QOLの向上に資する治療法や、画期的な治療法開発に向けた慢性疼痛の定量的評価の確立に資する研究開発
  • 精神・神経疾患の克服に向けて、国際連携を通じ治療・診断の標的となり得る分子などの探索及び霊長類の高次脳機能を担う脳の神経回路レベルでの動作原理等の解明
  • 精神疾患の客観的診断法・障害(disability)評価法や精神疾患の適正な治療法の確立及び発症予防に資する研究開発

(老年医学・認知症)

  • モデル生物を用いた老化制御メカニズム及び臓器連関による臓器・個体老化の基本メカニズム等の解明
  • 認知症に関する薬剤治験対応コホート構築やゲノム情報等の集積及びこれらを活用したバイオマーカー研究や病態解明等
  • 認知症に関する非薬物療法の確立及び官民連携による認知症予防・進行抑制の基盤整備

(難病)

  • 様々な個別の難病に関する実用化を目指した病因・病態解明、画期的な診断・治療・予防法の開発に資するエビデンス創出のためのゲノムや臨床データ等の集積、共有化
  • 上記の取組による病態メカニズム理解に基づく再生・細胞医療、遺伝子治療、核酸医薬などの新規モダリティ等を含む治療法の研究開発

(成育)

  • 周産期・小児期から生殖期に至るまでの心身の健康や疾患に関する予防・診断、早期介入、治療方法の研究開発
  • 月経関連疾患、更年期障害等の女性ホルモンに関連する疾患に関する研究開発や疾患性差・至適薬物療法など性差に関わる研究開発

(感染症)

  • ゲノム情報を含む国内外の様々な病原体に関する情報共有や感染症に対する国際的なリスクアセスメントの推進、新型コロナウイルスなどの新型ウイルス等を含む感染症に対する診断薬・治療薬・ワクチン等の研究開発及び新興感染症流行に即刻対応出来る研究開発プラットフォームの構築
  • BSL4施設を中核とした感染症研究拠点に対する研究支援や、感染症流行地の研究拠点における疫学研究及び創薬標的の探索等、予防・診断・治療に資する基礎的研究、将来のアウトブレークに備えた臨床・疫学等のデータの蓄積・利活用
○ AMEDによる研究開発の推進

統合プロジェクト、疾患領域等の基礎から実用化までの研究開発を効果的・効率的に推進する上で、AMEDは以下の役割を果たす。

  • 患者や医療現場、研究者、産業界等からのニーズを把握しつつ、AMED Management System (AMS)の活用、トランスレーショナル・リサーチ(TR)・rTRによる基礎と実用化の橋渡し、研究開発成果の有効活用や他領域への展開のためのデータシェアの促進等、事業間の連携及び研究開発のマネジメントを適切に行うとともに、事業間連携を推進する。(◎AMED室、文、厚、経)
  • 研究開発成果の実用化に向け、戦略的な知的財産管理を行うとともに、PMDAや官民の支援機関等とも連携して、インキュベーション機能や産学官連携のマッチング機能を果たす。(◎AMED室、文、厚、経)
  • 基金や政府出資を活用して中長期の研究開発を推進する。(◎AMED室、文、厚、経)
  • 学会、産業界、他の政府機関等の外部の知見も活用し、国内外の技術開発動向の把握など、シンクタンク機能を果たす。(◎AMED室、文、厚、経)
  • 研究開発の推進に当たっては、海外の関係機関や専門人材とのネットワーキングを活用するなど、適切な国際連携を図る。(◎AMED室、文、厚、経)
(2)研究開発の環境の整備
  • 医療法(昭和23年法律第205号)上に位置付けられた国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う臨床研究中核病院の機能を強化するとともに、臨床研究中核病院による質の高い臨床研究や医師主導治験の実施、他施設への支援等を促進する。(◎厚)
  • アカデミアの優れた研究成果に基づくシーズを切れ目なく実用化するため、基礎研究段階から臨床試験段階まで一貫した研究開発支援を行う拠点となる橋渡し研究支援拠点や臨床研究中核病院を整備するとともに、機械工学、情報工学等の関連分野及び拠点外の大学等との更なる連携強化やシーズ発掘・評価機能の向上を行う。(文、◎厚)
  • これまでの検討で整理された課題を踏まえ、我が国における臨床研究拠点としての国立高度専門医療研究センターの組織の在り方について早急に検討する。(健医、◎厚)
  • 統合プロジェクトによって整備する研究基盤と、放射光施設、クライオ電子顕微鏡、スーパーコンピュータなどの既存の大規模先端研究基盤や先端的な計測分析機器等を備えた小規模施設との連携及び機器の共同利用等が可能となる体制を実現し、科学技術共通の基盤施設をより使いやすくし、医療分野の研究開発の更なる促進に活用する。(◎文、厚)
  • 研究で得られたデータが産業利用を含めて有効かつ継続的に活用されるよう、IT基盤を含む個人の同意取得(E-consent)や倫理審査の円滑化、国際連携対応を想定した取得データの標準化等データ連携のための取組を進める。また、様々なデータ基盤に関する情報を見える化し、体系的な取組となるよう関係者間で連携を図る。(総、文、◎厚、経)
  • バイオバンクについて、精密医療・個別化医療等への活用や研究開発成果の世界市場への展開を目指し、海外の取組も参考にしつつ、バイオバンクの構成や、試料・検体の種類の選択等を含め、戦略的に構築を進める。また、健康・医療・介護情報等とも連携して、臨床や社会実装に向けた研究基盤として、将来の民間の利活用も含め、関係者が活用出来る体制を産学官が連携して整備する。 (◎文、◎厚、経)
  • 我が国のこれまでのIHCCにおけるゲノムコホート研究での貢献を基礎に、ゲノムコホートの国際連携における我が国の連携統合窓口を創設する。また、ゲノム医療の実装段階への国際連携を視野に入れたIHCC、G2MCの活動に参加し、国際連携活動を強化する。(文、◎厚、経)
  • 国内の研究機関における感染症に係る基礎研究能力の向上及び病原体等の取扱いに精通した人材の育成・確保等を図るため、BSL4施設の整備等について、必要な支援を行うとともに国、大学及び自治体の地方衛生研究所等との連携を強化する。また、パンデミック対策のみならずバイオセキュリティ強化のため、米国CDC等も参考にしつつ我が国の危機管理対応能力の強化を図っていくとともに、緊急時の課題解決のための迅速な研究開発体制を整備する。(◎国際感染症室、新型インフル室、文、◎厚)
  • 環境要因と疾病等に関する研究を推進し、収集・整理したデータ等が健康・医療分野における研究に有効活用されるよう、研究基盤としてデータ共有のための取組を進める。(厚、◎環)
(3)研究開発の公正かつ適正な実施の確保
○ 研究開発の公正性・適正性の確保、法令等の遵守のための環境整備
  • 我が国の臨床研究に対する国民の信頼の更なる向上とその実施の推進を図るため、臨床研究法を適切に運用し、その施行状況等を踏まえ、通常の診療で用いられるが薬事承認外である医薬品等の用法・用量等を用いる研究の特定臨床研究の該当性等も含め、必要に応じて見直しを行う。なお、十分な科学的知見が得られていない医療行為に対する措置については、個別の医療技術や具体的な医療行為の性質に応じた検討を行う。(◎厚)
  • 臨床研究法に基づき認定された臨床研究審査委員会における審査能力の更なる向上を図る(文、◎厚)
  • 多施設共同研究における倫理審査の適正かつ円滑な実施を図るため、中央倫理・治験審査委員会の設置・運用を推進する。(文、◎厚)
  • 基礎研究及び臨床研究における不正防止の取組を推進するため、AMEDは、専門の部署を置き、自らが配分する研究開発費により実施される研究開発に対して、公正かつ適正な実施の確保を図る。他の関係機関と連携を図りながら、業務を通じた医療分野の研究開発に関する研究不正への対応に関するノウハウの蓄積及び専門的な人材の育成等に努める。(◎AMED室、文、厚、経)
  • 動物実験等についての基本指針等に則り、適正な動物実験等の実施を確保する。(食品、警、総、文、厚、農、経、国、◎環)
○ 倫理的・法的・社会的課題への対応
  • 社会の理解を得つつ実用化を進めることが必要な研究開発テーマについて、患者・国民の研究への参画の観点も加えながら、研究開発を推進するとともに、ELSI20研究を推進する。(◎文、厚)
  • ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用に関する規制の在り方について、法制化も含めて検討する。(科技、文、◎厚)
(4)研究開発成果の実用化のための審査体制の整備等
○ 薬事規制の適切な運用等
  • 「先駆け審査指定制度」、「条件付き早期承認制度」の法制化等を含む医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号、2019年11月27日成立、同年12月4日公布)の円滑な施行に向け、政省令の整備等に着実に取り組む。(◎厚)
  • 研究開発成果を効率的に薬事承認に繋げられるように、PMDAのレギュラトリーサイエンス戦略相談制度や優先的な治験相談制度等の必要な運用改善を行い、革新的な医薬品等の迅速な実用化を図る。また、PMDAの国際的な規制調和に向けた海外当局との協力関係を強化しつつ、海外の規制動向に関する情報を相談者にも可能な限り提供する体制を推進する。(◎厚)
  • 再生医療等の安全性の確保等に関する法律の施行状況等を踏まえ、in vivo遺伝子治療に対する法的枠組み、提供された再生医療等の科学的妥当性(有効性を含む)、認定再生医療等委員会の質の担保等について、見直しも含めて検討を行う。(◎厚)
  • 我が国の遺伝子治療の開発等の推進を図るため、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)の運用等について、必要に応じて見直しを検討する。(財、文、◎厚、農、経、環)
  • 健康関連の製品やサービス等について、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)や医師法(昭和23年法律第201号)等の規制の適用の有無の範囲を明確化するため、ガイドライン等の策定等を推進する。(◎厚、農、経)
  • AI等の先端技術を利用した医療機器プログラム等については、審査時の評価の考え方を含めた薬事規制のあり方や薬事該当性の明確化の検討を引き続き推進する。(総、文、◎厚、経)
  • デジタルヘルス機器等を用いて収集したものを含め、蓄積されたリアルワールドデータを、医薬品、医療機器等の臨床研究・治験や薬事承認申請のエビデンスとして活用するためのルールを整備する。(◎厚)
○ レギュラトリーサイエンスの推進
  • 国際的な規制調和を前提とした医薬品等の品質、有効性及び安全性に関する研究の支援、審査ガイドラインの整備、審査員に対する専門的知識(新たなモダリティとしてのデジタルセラピューティクス分野とデータ連携に必要な法、技術、倫理及びサイバーセキュリティの知見を含む)の向上等を通じて、研究開発におけるレギュラトリーサイエンスを普及・充実させる。(◎厚)
  • このうち、PMDAは、レギュラトリーサイエンスセンターにおいて、国内各種レジストリやそれに附帯するバイオバンクを有するアカデミア等との連携、臨床試験成績等のビッグデータを活用し、品目横断的な情報の統合等により、審査・相談の高度化や医薬品等の開発に資するガイドラインの策定等の取組を推進する。その際、国際的な規制調和の動向を適宜反映するよう努める。(◎厚)

4.2.健康長寿社会の形成に資する新産業創出及び国際展開の促進等

4.2.1.新産業創出

(1)公的保険外のヘルスケア産業の促進等
○ 職域・地域・個人の健康投資の促進

(健康経営の推進)

  • 健康投資に取り組む優良な企業が評価される仕組みとして、株式会社東京証券取引所と経済産業省が共同で選定する「健康経営銘柄」、上場企業だけでなく中小企業や医療法人等も対象として日本健康会議が認定する「健康経営優良法人認定制度」について、選定・認定法人の取組の質の向上を図るとともに、中小企業の健康経営の裾野の拡大を図る。(厚、◎経)
  • 健康経営の生産性への取組に関する各種の研究等を踏まえつつ、健康経営の取組と成果の見える化を進め、資本市場からも適切に評価されるよう、環境を整備する。(厚、◎経)
  • 企業・保険者連携による予防・健康づくり「コラボヘルス」の取組を深化させる。加入者の健康状態や医療費、予防・健康づくりへの取組状況を見える化し、経営者に通知する健康スコアリングレポートについて、官民の役割分担を踏まえつつ、健保組合や事業主への働きかけを強化する。(総、◎厚、経)

(保険者における予防・健康づくり等のインセンティブ)

  • 後期高齢者支援金の加算・減算制度について、特定健診・保健指導や予防・健康づくり等に取り組む保険者に対するインセンティブ措置の強化を図る。また、国民健康保険の保険者努力支援制度については、メリハリの強化を図ったインセンティブ措置を着実に実施する。(◎厚)

(地域・職域連携の推進)

  • 継続的かつ包括的な保健事業を推進するために、情報の共有及び分析、地域における健康課題の明確化や保健事業の共同実施及び相互活用等、地域・職域連携の具体的な展開を図る。(総、◎厚)

(個人の健康づくりへの取組促進)

  • 個人の自発的な予防・健康づくりの取組を推進するため、ヘルスケアポイントなど個人のインセンティブ付与につながる保険者の取組を支援し、先進・優良事例の横展開を図る。(総、◎厚)

(地域に根差したヘルスケア産業の活性化)

  • 地域のニーズを踏まえたヘルスケア産業の創出を後押しするため、地方公共団体、医療・介護機関、民間事業者等の連携を図る「地域版次世代ヘルスケア産業協議会」の設置を促進するとともに活動の支援を行う。また、各地域版協議会と関係府省の対話の場となる「地域版次世代ヘルスケア産業協議会アライアンス会合」を通じて、地域版協議会の機能が発揮できる環境を整備する。(総、◎経)
○ 適正なサービス提供のための環境整備

(ヘルスケアサービスの品質評価の取組)

  • 「ヘルスケアサービスガイドライン等のあり方」(2019年4月12日経済産業省策定)に基づいた業界自主ガイドラインの策定支援や、民間機関による第三者認証の実施支援・活用促進を通じ、一定の品質が確保されたサービスを利用者が安心して利用できる環境整備を図る。(厚、◎経)

(イノベーションの社会実装)

  • データ等を活用した予防・健康づくりの健康増進効果等に関するエビデンスを確認・蓄積するための実証を行う。(総、厚、◎経)
  • 生活習慣病等との関連について最新の科学的な知見・データを収集し、健診項目等の在り方について議論を行う。また、特定健診については実施主体である保険者による議論も経て、健診項目等の継続した見直しを行う。(総、◎厚)
  • ICT、AI、ロボットなどの新たな技術の医療・介護現場への導入やヘルスケアサービスへの実装を図る。(総、文、◎厚、経)
  • ICT等を活用した医療機器に関して、引き続きサイバーセキュリティの確保のための対策や、新たな技術を活用した医療機器の効率的な開発にも資する有効性・安全性等の評価手法の策定を行う。(◎厚)
  • ウェアラブル端末などのIoT機器を健康増進に活かすべく、安全性や機能等の評価手法の策定を行う。(◎経)
  • データの連携・利活用を通じ、医薬品、医療機器、公的保険外サービスの分野を超え、アウトカムの向上を目指すパッケージ型ヘルスケアソリューションの創出を支援する取組を強化する。また、ヘルスケアデータ23を活用した民間サービスの創出に向けて、事業者等に求められる要件(セキュリティ等)、データの相互運用性や標準化の検討など、必要な基盤整備を進める。(総、◎経)

(公的保険サービスと公的保険外サービスの連携)

  • 新たな技術やサービスによる予防等への取組が、医療や介護の専門家による評価を経て適切に発展するよう、公的保険サービスと公的保険外サービスの双方が、その担い手及び提供者において連携する環境を早期に構築する。(厚、◎経)
○ 個別の領域の取組

(健康な食、地域資源の活用)

  • 健康の維持・増進や健康リスクの低減に係る食品の機能性等を表示できる制度を適切に運用するとともに、機能性表示食品等について科学的知見の蓄積を進め、免疫機能の改善等を通じた保健用途における新たな表示を実現することを目指す。また、消費者の理解増進のための消費者教育を充実させる。(◎消費、厚、農、経)
  • 「健康に良い食」を科学的に解明し、ヘルスケアサービスに連結したビッグデータを整備するとともに、「健康に良い食」のより高度な生産流通システムを実現させる。(◎農)
  • 薬用作物の産地形成の加速化支援や地場産農産物の介護食品への活用支援など、地域資源を活用した商品・サービスの創出・活用を図る。(◎農)
  • 管理栄養士などの専門職が参画して適切な栄養管理を行う「健康支援型配食サービス」の地域での展開を支援する。(◎厚)

(スポーツ、観光)

  • 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることを契機として、日本全国でスポーツを通じた健康づくりの意識を醸成するため、産学官の連携により、幼児から高齢者、女性、障害者の誰もがスポーツを楽しめる環境の整備、スポーツ医・科学の研究成果の活用を推進する。あわせて、地域のスポーツツーリズムを促進する。(◎文、国)

(まちづくり、住宅)

  • コンパクトで歩きたくなるまちづくりを推進するとともに、公共交通の充実による移動機会の増大を図ることにより、予防・健康づくりや高齢者の社会参加を促進する。また、高齢になっても健康で安心して暮らせるような住まいの整備・活用を進める。(◎国)
(2)新産業創出に向けたイノベーション・エコシステムの強化

(官民ファンド等による資金支援)

  • 官民ファンドが呼び水となり、民間投資家と連携してベンチャー等の研究開発から実用化に至る取組に対して投資を行う。また、官民ファンドの投資ノウハウを地域金融機関等に移転していく。(REVIC室、文、厚、◎経)
  • バイオベンチャーが市場で円滑に資金調達できるよう、資金調達の課題を整理し、その解決に向け、取引所と関係者との協議を促進しながら具体的な対応を検討する。(◎金融、経)
  • ワンストップ窓口による情報発信、コンサル支援や支援機関とのネットワーク支援を行い、ベンチャー支援や新規参入促進策を強化する。セミナーやピッチイベント等により、国内外から投資を呼び込む。(厚、◎経)

(産学官連携による戦略的取組)

  • 新たな技術を世界に遅れることなく社会実装するためには、既存の業種や個々の組織の取組では不十分であることから、異業者からの参入促進や産学官連携による社会実証、基準づくり等の協調領域での取組を進める。特に世界に先駆けて高齢化するという社会課題や健康・医療に関する良質なデータの存在という我が国の特性を踏まえ、関連する分野で戦略的に取り組む。(◎経)
  • 「バイオ戦略」における、ヘルスケアやバイオ医薬品・再生医療等の市場領域ロードマップや国際バイオコミュニティ圏形成等の検討の取りまとめを踏まえ、産学官が連携して、開発・製造等のサプライチェーンを支えるCROやCDMO等の関連産業を含めて国内外から集積する国際的な開発・製造実証拠点の整備及び研究開発のためのデータ利活用基盤の整備等に必要な取組を検討・実施する。(科技、◎健医、文、厚、農、経)
  • 我が国における革新的医薬品、医療機器等の開発を進めるため、薬価制度等におけるイノベーションの適切な評価を図る。(◎厚)

(総合的な健康・医療関連産業の振興)

  • 医薬品、医療機器、福祉用具、その他ヘルスケアサービスなど、個別市場を念頭に置いた取組だけではなく、総合的な健康・医療関連市場を念頭に置いた産業横断的な支援等の充実を図る。(総、文、厚、農、◎経、国)

4.2.2.国際展開の促進

○ アジア健康構想の推進(◎戦略室、健医、総、法、外、財、文、厚、農、経、国)

アジア健康構想を推進する上では、それぞれの国・地域の事情を踏まえ以下のような事例のうち適切な取組の充実を図る。

(具体的事業によるサービス提供)

  • 我が国の国際的な医療・介護の拠点の、アジアを中心とした海外への更なる進出を支援する。さらに、これらの拠点を触媒とし、予防・健康維持や衛生設備等の健康な生活を支えるサービスといった裾野の広いヘルスケアサービスに関する我が国の事業者の国際展開を推進する。

(基盤の整備)

  • 単なる医療機器や医薬品の我が国からの供給にとどまらず、それらの研究開発、製造、流通、安全規制、適正使用等に求められる社会的基盤の整備を、我が国の企業が関わる形で推進する。

(人材還流)

  • アジアにおいて医療・介護の中核的な役割を担うことが期待される人材の育成を推進する。特に、介護については、海外の人材の日本語習得環境の強化・拡充も通じ、日本とアジア各国との人材還流を促進する。我が国のアジアへの健康・医療関連産業の展開に当たっては、これらの人材とのつながりを足掛かりとし、最大限活用することを目指す。

(規制調和の推進)

  • 「アジア医薬品・医療機器規制調和グランドデザイン」(2019年6月20日推進本部決定)に基づき、アジアにおける医薬品、医療機器等のアクセス向上に向け、厚生労働省・PMDAと海外当局との協力関係の強化、アジアにおける臨床研究・治験のネットワークを構築するための拠点整備及び人材の育成を行うこと等によりアジア各国との規制調和を推進する。
○ アフリカ健康構想の推進(◎戦略室、健医、総、法、外、財、文、厚、農、経、国)

アフリカ健康構想を推進する上では、それぞれの国・地域の事情も踏まえ以下のような事例のうち適切な取組の充実を図る。

(基盤の整備)

  • アフリカにおいて、生活習慣の改善や予防接種を通じた疾病予防、手洗い等による衛生環境の改善、栄養バランスを考慮に入れた栄養価の高い食事の提供及びそれを支える農村の食材供給力の向上、巡回診療といった事業の展開等を通じ、医療のみならず裾野の広いヘルスケアサービスの実現に必要な基盤の整備を、日本企業が関わる形で推進する。

(医薬品・医療機器等)

  • アフリカにおいて、喫緊の課題である感染症への対応も含め、必要な医薬品・医療機器等の整備を、日本企業が関わる形で推進する。同時に、知識の普及といったハードウェア以外の社会的な環境整備も推進し、医薬品・医療機器等の将来の更なる需要創出につなげる。

(人材育成・技術移転)

  • アフリカにおいて、医師、薬剤師、看護師、コミュニティ・ヘルス・ワーカー、臨床検査技師、栄養士、助産師、安全・環境・衛生に関する専門家及び政策人材といった幅広い分野における医療・ヘルスケアサービス関係の人材育成に取り組む。我が国のアフリカへの健康・医療関連産業の展開に当たっては、これらの人材とのつながりを足掛かりとし、最大限活用することを目指す。
○ 我が国の医療の国際的対応能力の向上(◎戦略室、オリパラ、健医、総、法、外、文、厚、経、国)
  • 一般社団法人Medical Excellence JAPAN(MEJ)や独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)等を中核とした医療の国際展開、ジャパンインターナショナルホスピタルズ(JIH)等による医療インバウンド及び「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に向けた総合対策」(2018年6月14日医療国際展開タスクフォース 訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループ決定)に則った医療提供を一体的に推進することで、我が国の医療の国際的対応能力を向上させる。
○ 日本型医療・ヘルスケアサービス等の対外発信(戦略室、万博、健医、厚、◎経)
  • 我が国の健康・医療関連産業の国際展開につなげるべく、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする大阪・関西万博等の機会を捉え、我が国の最先端の技術や日本型医療・ヘルスケアサービス等の対外発信を行う。

4.3.健康長寿社会の形成に資するその他の重要な取組

(認知症施策の推進)

  • 認知症施策推進関係閣僚会議(2018年12月25日閣議口頭了解)において、「共生」と「予防」を柱とした総合的な認知症施策を、認知症施策推進大綱(2019年6月18日認知症施策推進関係閣僚会議決定)に基づき推進する。本大綱に基づき、認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる「共生」を目指し、「認知症バリアフリー」の取組を進めていくとともに、「共生」の基盤の下、「予防」の取組を進めていく。「予防」とは「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」、「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味であり、認知症の予防法の確立に向け、研究開発を強化するとともに、データ利活用の枠組みを構築し、認知症分野における官民連携のプラットフォームを活用し、評価指標・手法の確立を目指しつつ、予防やケア等の社会実装を促進する。(科技、総、文、◎厚、農、経)

(予防・健康づくりの推進)

  • 「21世紀における 第二次国民健康づくり運動(健康日本21(第二次))」(2012年7月10日厚生労働省健康日本21(第二次)推進専門委員会策定)や「健康寿命延伸プラン」(2019年5月29日厚生労働省2040年を展望した社会保障・働き方改革本部策定)等に基づき、子どもから高齢者まで全ての人が健やかで心豊かに生活できるよう、健康な食事や運動ができる環境、居場所づくり整備や社会参加の促進、健やかな生活習慣形成等のための取組等を通じ、「自然に健康になれる環境づくり」や「行動変容を促す仕掛け」等の新たな手法を活用して、ライフステージに応じ、健康無関心層も含めた予防・健康づくりを推進する。また、「スマート・ライフ・プロジェクト」(2011年2月17日厚生労働省策定)に基づき、企業・団体・自治体と協力・連携して健康に関する知識の普及啓発を図る。(◎厚)

(AMR対策の推進)

  • 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議(2015年9月11日閣議口頭了解)において2016年4月5日に決定された「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」及び2020年度に策定予定の次期アクションプランに基づき、必要な対策を推進する。(◎国際感染症室、食品、外、文、厚、農、環)

(新型コロナウイルス感染症対策の推進)

  • 新型コロナウイルス感染症への対策として、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」(2020年2月25日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)など、政府が定める方針のもと、国内外の連携を図りつつ、必要な研究開発等の対策を速やかに推進する。その際、感染症の研究開発に対する多様なインセンティブや医療に係る規制の緊急時の適用の在り方等の課題も念頭において、必要な対策を検討する。(◎新型インフル室・国際感染症室・新型コロナ室、健医、文、厚)

4.4.研究開発及び新産業創出等を支える基盤的施策

4.4.1.データ利活用基盤の構築

①データ収集段階から、アウトカム志向のデータを作ること、②各個人の健康・医療・介護に係る経年的なデータを統合し、医療・介護職に共有できるようにするとともに、自らこうした情報を確認・活用できるようにすること、③産官学の様々な主体がこうしたデータにアクセスし、研究開発に活用すること、④データ連携に関して国際的な動向との整合性に留意すること、の4つのパラダイムシフトを国民・患者・現場の理解を得ながら実行し、海外からの人材・投資の呼び込みも含め、医療分野の先端的研究開発及び新産業創出等に資するオールジャパンでのデータ利活用基盤を整備する。
あわせて、医療機関等の情報連携により、患者・国民本位の医療の質の向上を図るための情報基盤を整備する。

(データヘルス改革の推進)

  • レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や介護保険総合データベース(介護DB)の連結解析を2020年度から本格稼働し、行政、保険者、研究者、民間事業者など幅広い主体の利活用を可能とする。2019年度以降、関係する他の公的データベースとの連結の必要性についても検討し、法的・技術的・倫理的課題が解決できたものから順次連結解析を実現する。(◎厚)
  • 患者本人や全国の医療機関等で、レセプトに基づく薬剤情報や特定健診情報といった患者の保健医療情報を確認できる仕組みに関し、特定健診情報は2021 年3月を目途に、薬剤情報については2021 年10 月を目途に稼働させる。さらに、その他のデータ項目を医療機関等で確認できる仕組みを推進するため、これまでの実証結果等を踏まえ、情報連携の必要性や技術動向、費用対効果等を検証しつつ、医師や患者の抵抗感、厳重なセキュリティと高額な導入負担など、推進に当たっての課題を踏まえた対応策の検討を進め、2020 年夏までに工程表を策定する。(◎厚)
  • 臨床研究・治験をはじめとする医薬品等の開発を効率的に行うため、クリニカル・イノベーション・ネットワーク構想において、疾患登録システムの利活用等を進めるとともに、リアルワールドデータを活用した効率的な臨床研究・治験を推進するため、国内外の連携を想定しつつ、医薬品・医療機器の研究開発拠点である臨床研究中核病院における診療情報の品質管理・標準化及び連結を進める。さらに、ヘルスケアサービスや各種バイオバンクとの連携により、健康から医療まで切れ目のない情報の連結を図りつつ、リアルワールドデータを蓄積する。また、国内外の連携を図りつつ、リアルワールドデータからリアルワールドエビデンスを抽出する際の我が国としてのフレームワークを検討し、薬事承認申請のエビデンスとして活用するためのルールの整備を行い、効率的な臨床研究・治験を推進する。(◎厚、経)
  • PMDAの医療情報データベース(MID-NET)について、他の医療情報データベースとの連携を推進し、更なるデータ規模の拡大を図る。(◎厚)

(医療情報の利活用の推進)

  • 医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の下、「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する基本方針」に基づき、広報・啓発による国民の理解の増進を行うとともに、産業界を含む幅広い主体による匿名加工医療情報の医療分野の研究開発への利活用を推進する。また、特異データ等を排除してしまうという匿名加工情報の課題等を踏まえ、個人情報等に配慮しつつ、商用目的を含む医療情報の利活用を更に推進するため、医療分野における仮名化等の在り方や、電子的方法による単回の包括的な本人同意等の簡潔な利活用要件の在り方について、法制化を含めて検討する。(◎健医、文、厚、経)
  • あわせて、個人情報等に配慮しつつ、医療画像等の臨床や研究から得られたデータを医療分野の研究開発に活用する。(総、文、◎厚、経)
  • デジタルセラピューティクス、医療機器ソフトウェア・AI等の新たな分野について、審査員に対する専門的知識の向上や、薬事、標準、倫理、サイバーセキュリティ等の国際的なルールづくりに関与しつつ、国際的な制度調和に留意して、国内における必要な制度整備を進める。また、国際的な臨床研究や国際共同治験等を促進するため、バイオ・ライフサイエンス分野のデータの取扱いについて、倫理、情報法制、セキュリティの国際的なルールづくりに関与しつつ、国内における必要な制度整備を進める。(総、文、◎厚、経)
  • クラウド化の拡大を念頭において、サイバーセキュリティに関してはサイバーフィジカルの構造を踏まえた制度整備等を行う。また、厚生労働省、PMDAにおいては、医療機器規制の国際調和活動におけるサイバーセキュリティやSaMD関連の議論・ガイダンス策定に関与して国際的な連携強化に努める。(総、◎厚、経)
  • サイバーセキュリティに関しては医療分野の業界横断的にセキュリティインシデントの情報を共有することが有益であることから今後進むデジタルヘルスの基盤を支えるべく、医療機器メーカー、製薬メーカー、検査機器メーカー、医療機関等と、 政府機関、民間の専門団体等とが連携出来る仕組みの構築に向けた支援について検討する。(NISC、総、◎厚)

4.4.2.教育の振興、人材の育成・確保等

(1)先端的研究開発の推進のために必要な人材の育成・確保等

医療分野の先端的研究開発推進に必要な人材については、国内での育成のみならず、高度外国人材を含めて海外での経験を有する人材の確保も図る。特に、多様な分野の経験を有するバイオインフォマティシャン等、国内での育成のみでは十分な確保が難しい人材については、海外での経験を有する人材の確保を図る。

  • 若手・女性研究者を含めた人材育成
    • 基礎から臨床研究及び治験の各フェーズ、様々なモダリティ等や疾患領域、さらにはそれらの横断領域等の研究の担い手となる優れた研究者を、若手や女性を含めて育成・確保する。(◎文、厚、経)
  • 臨床研究・治験の効率的・効果的な推進のための人材育成・確保等
    • 臨床研究及び治験の効率的・効果的な推進のため以下の人材を育成・確保する。また、この際、医学部における臨床研究分野の教育の充実、そのほか教育訓練やe-learning の更なる整備等、臨床研究及び治験関連業務に従事する者に対する臨床研究及び治験に係る教育の機会の確保・増大を図る。(文、◎厚)
      1. 臨床研究及び治験において主導的な役割を果たす専門的な医師等
      2. 臨床研究及び治験関連業務を支援又は当該業務に従事する人材(臨床研究コーディネーター(CRC)データマネージャー、治験・倫理審査委員会委員等)
    • 基礎研究段階から臨床試験段階まで一貫して効率的にシーズ研究開発を行うため、大学等の現場において、研究者・企業等との協力の下で医薬品・医療機器等の開発戦略・計画の策定・管理や薬事・特許等の総合調整、及び開発のgo/no-go判断を行うスキルを有する人材の育成と確保を推進する。(◎文、経)
  • 最先端の医療分野研究開発に必要な専門家の育成・確保等
    • 爆発的に増加している医療関係データや情報等を効果的に活用し、解析数の増大が見込まれるゲノム解析など今後のライフサイエンス分野の研究開発を発展させる上で必要不可欠なバイオインフォマティクス人材、医療分野におけるAIの研究開発・活用を進めるための医療従事者等の人材、データの連携のためサイバーセキュリティ人材の育成と確保を推進する。(◎文、厚)
    • 生物統計家などの専門人材及びレギュラトリーサイエンスの専門家の育成・確保等を推進するとともに、研究者等に対してレギュラトリーサイエンスや知的財産等の実用化に必要な教育を推進する。(文、◎厚、経)
    • 再生医療の基盤を整備することで、単独での臨床研究を実施できない研究機関や医療機関、ベンチャー企業等に対しての技術的支援、人材交流等により、人材の育成・確保を推進する。また、再生医療の事業化に必要な細胞の品質管理、大量培養、運搬技術等の開発を担う人材の育成・確保を強化する。(文、◎厚、◎経)
(2)新産業の創出及び国際展開の推進のために必要な人材の育成・確保等
○ イノベーション人材の育成・確保等
  • 医療分野におけるイノベーション人材を育成するため、事業化・経営人材や起業支援人材等について、育成プログラムの推進や、海外の支援機関、ベンチャーキャピタルも含めた人材交流、産学官の関係者の人材交流を進める。(文、厚、◎経)
○ 国際展開のための人材の育成
  • 健康・医療関連産業や医療国際化等を担う上で不可欠な人材の交流・育成を促進する。(文、◎厚、経)
  • 革新的医薬品、医療機器及び再生医療等製品の世界同時開発に対応できるよう、国際共同臨床研究及び治験に積極的に取り組む医療機関における、言語・規制などの国際的な差異に対応できる体制の強化や人材の確保・教育を推進する。(◎厚)
(3)教育、広報活動の充実等
○ 国民全体のリテラシーの向上
  • 臨床研究及び治験の意義やそのベネフィット・リスクに関する理解増進を図るための情報発信等を行う。具体的には、患者・国民が治験・臨床研究をより簡単に検索し、アクセスできるよう、「臨床研究情報ポータルサイト」を更に充実させる。治験・臨床研究への参加調整を行うなど、患者・国民本位の治験・臨床研究参画スキームを確立することを目指す。さらに、臨床研究及び治験の意義・普及啓発のため、キャンペーンを行うなど積極的に広報を実施する。(◎厚)
○ 日本医療研究開発大賞
  • 医療分野の研究開発の推進に多大な貢献をした事例に関し、その功績をたたえることにより、国民の関心と理解を深めるとともに研究者等のインセンティブを高めるため、日本医療研究開発大賞の表彰を行う。(◎健医、総、文、厚、経)

4.5.達成すべき成果目標(KPI)

本戦略の推進により達成を目指す2024年度末までのアウトカム目標を以下のとおり設定する。

(本戦略全体のKPI)

  • 2040年までに健康寿命を男女とも3年以上延伸し、75歳以上とすることを目指し、2024年度末までに1年以上延伸する。(◎厚)
  • 上記KPIの達成のため、要介護度を用いて算出される「日常生活動作が自立している期間の平均」を補完的に用いていく。(◎厚)

4.5.1.医療分野の研究開発に関するKPI

○ 医薬品プロジェクト

(実用化に関する指標)

  • シーズの企業への導出件数 60件
  • 薬事承認件数(新薬、適応拡大) 10件

(新たなモダリティや先進的な創薬手法に関する指標)

  • 創薬等の効率化に資する先進手法の企業導出件数 120件
○ 医療機器・ヘルスケアプロジェクト

(シーズ研究に関する指標)

  • シーズの他事業や企業等への導出件数 15件

(医療機器の開発に関する指標)

  • クラスⅢ・Ⅳ医療機器の薬事承認件数 20件

(ヘルスケア関連機器等の開発に関する指標)

  • ヘルスケア関連機器等の上市等の件数 10件
○ 再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト

(シーズ研究に関する指標)

  • シーズの他事業への導出件数 30件

(実用化に関する指標)

  • 企業へ導出される段階に至った研究課題数 10件 (うち遺伝子治療2件) (うち企業へ導出された件数2件)
  • 薬事承認件数(新薬、適応拡大) 2件以上
○ ゲノム・データ基盤プロジェクト

(データ基盤を活用した研究に関する指標)

  • シーズの他の統合プロジェクトや企業等への導出件数 25件
  • 臨床的に実用可能なバイオマーカー等の開発件数 15件
  • 疾患の原因となる遺伝子変異に基づく新規の診断・治療法の開発件数 5件
○ 疾患基礎研究プロジェクト

(シーズ研究に関する指標)

  • シーズの他の統合プロジェクトや企業等への導出件数 10件
○ シーズ開発・研究基盤プロジェクト

(シーズ研究に関する指標)

  • シーズの他の統合プロジェクトや企業等への導出件数 125件

(研究基盤に関する指標)

  • 医薬品等の薬事承認申請の件数 30件

4.5.2.新産業創出及び国際展開の促進等に関するKPI

  • 新産業創出
    健康・医療分野におけるアジア最大のイノベーションハブの地位確立

    • 健康経営優良法人数(3倍)
    • 健康・医療産業のベンチャー投資金額(対基準年度比2倍)
  • 国際展開
    健康・医療関連産業の国際展開による展開国での市場創出推計額(対基準年比1.5倍)

5.施策の推進

推進本部の取組

    • 推進本部は、推進法に基づき、本戦略に係る司令塔としての機能を果たすよう、患者や医療現場、研究者、産業界等からのニーズを把握しつつ、健康・医療戦略参与会合による政策的助言や健康・医療戦略推進専門調査会による専門的調査を踏まえながら、本戦略の各施策について、進捗状況のフォローアップや医療分野研究開発予算等の総合調整等を行いつつ、総合的かつ計画的な実施を推進する。
    • 推進本部の下で、内閣府は関係府省とともにPDCAサイクルを回していく。具体的には、本戦略に掲げた具体的施策(Plan)を関係府省の連携の下で実施し(Do)、定期的に進捗状況をフォローアップにより把握・検証し(Check)、その検証結果に基づき、必要に応じて施策の実施内容を見直すとともに予算への反映等の必要な措置を講ずる(Action)。
    • 医療分野の研究開発関連予算等の総合調整に当たり、推進本部は、翌年度の概算要求に合わせて、医療分野の研究開発及びその環境の整備に関する資源配分方針を作成し、関係府省に提示する。関係府省は本方針に則して、内閣府の指示の下で医療分野研究開発推進計画の着実かつ効果的・効率的な実施の観点から必要な調整を行った上で、内閣府と共同して医療分野の研究開発関連予算の概算要求を行うこととし、このような総合調整の下で、国の財政状況も踏まえつつ、毎年度、必要な予算の確保に努める。
    • 推進本部の下に、必要に応じ、研究開発、新産業創出等の各論に係る協議会を設置し、その検討内容に応じた産学官の幅広い関係者の参画を得て、関連施策のフォローアップや検討を行う。とりわけ研究開発に関しては、統合プロジェクトを踏まえた協議会を設置し、推進する重点領域や、人材、データ利活用等の環境の整備も含めて検討を行う。
    • 総合科学技術・イノベーション会議、IT総合戦略本部、知的財産戦略本部などの関係する他の司令塔会議とも連携・協力を図り、政府全体として整合性を確保しつつ、施策を推進する。

AMEDの取組

医療分野の研究開発は、ヒトを研究対象とする臨床研究や医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づく承認申請が必要であるなど、他の研究分野には無い特殊性がある。このため、医療分野の研究開発に関する競争的資金の配分については、専門的知見を有するAMEDに一元化し、統合プロジェクトごとに研究開発マネジメント体制を構築する等により、基礎から実用化まで切れ目ない支援を実施してきた。

第2期においても、このような専門機関たるAMEDによる一元的な研究開発支援体制を最大限に活かすべく、JSPS、JST、NEDO等の他の資金配分機関、インハウス研究機関の取組と効果的な連携等をとりつつ、モダリティ等の軸で再編した統合プロジェクトに合わせた研究開発マネジメント体制の再構築、知的財産戦略や臨床研究・治験等への実用化に向けた支援の充実により、基礎から実用化までの研究開発を効果的・効率的に推進する。

関係者の役割及び相互の連携・協力

本戦略等の推進に当たり、国は、地方公共団体、大学・研究機関、民間事業者等が以下のようなそれぞれの役割に応じて相互に連携・協力されるよう留意しながら、各施策を実施する。

地方公共団体は、国との適切な役割分担の下で、地域の経済、社会、産業の特徴や実情に応じて、その特性を活かし、健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出について、自主的な施策を企画・立案し、実行していくことが重要である。

大学や研究開発法人等の研究機関は、それぞれの強みを活かし、医療分野の研究開発や人材育成を進めるとともに、産学官連携等を通じて、研究成果の普及に努めていくことが重要である。また、研究開発の推進に際しては、特に、新興・融合分野の研究に努め、新たなシーズを生み出していくことが期待されている。

医療機関は、国や地方公共団体が実施する施策に協力するよう努め、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う臨床中核病院を中心に、革新的な医薬品、医療機器等及び医療技術の開発のための質の高い臨床研究や治験の促進、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律等による医療情報等のデータ利活用基盤の構築及び利活用への貢献が期待されている。

健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出を行う事業者は、国や地方公共団体が実施する施策に協力するよう努め、自ら研究開発を行うとともに、オープン・イノベーションの推進に取り組み、優れた研究開発成果の迅速な実用化や新たなヘルスケアサービスの創出が期待されている。

参照

ホーム審議会・研究会ものづくり/情報/流通・サービス健康・医療新産業協議会第3回 健康・医療新産業協議会 > 参考資料1 健康・医療戦略(令和2年3月27日閣議決定)

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