臨床試験

ICH-E2A 治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて

2021年6月2日

皆さん、こんにちは!

新しいお薬が私たちの手元に届くまでには、「治験(ちけん)」という、とても大切なステップがあるのをご存知ですか?この治験というテスト期間に、お薬の安全性や効果をしっかり確認するんです。

このお知らせは、今から少し前、平成7年(1995年)に当時の厚生省(今でいう厚生労働省です)が出したもので、治験中にもし何か「あれ?大丈夫かな?」と思うようなこと(専門用語で「有害事象」と言ったりします)が起きたときに、その情報をどう扱えばいいのか、というルールを定めたものです。

なぜこんなルールが必要なのでしょうか?

それは、良いお薬を世界中の患者さんに一日も早く届けるためなんです。そのためには、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパなど、世界中で同じようなルールで治験を進めていくことが大切になります。この国際的なルールの話し合いを「ICH(アイシーエイチ)」と呼んでいます。このお知らせは、そのICHでみんなで合意したことに基づいて作られているんですよ。

お薬の開発に関わる皆さんにとっては、とても重要な内容ですので、ぜひ一緒に見ていきましょう!

Table of Contents

新しいお薬を安心して使えるようにするために 〜治験中の「もしも」に備える安全情報のルール〜

1.まずはじめに、なぜこのルールが大切なの?

治験中に何か心配な情報が出てきたとき、その情報をどうやって集めて、どう対応するか。これを世界中で同じようにできるようにすることは、患者さんの安全を守るために非常に有益です。そのとき、手続きだけでなく、使われる言葉の意味(「用語」や「定義」ですね)も、みんなで「これだね!」と共通の理解を持っておくことが望ましいのです。

すでにお薬として世に出ているものについては、副作用の情報を集めるルールがありましたが、まだ開発の初期段階にあるお薬や、どこの国でもまだ売られていない新しいお薬については、もっと特別な注意が必要です。

また、他の国ではもう使われているけれど、日本ではまだ治験中、というお薬もありますよね。そんなとき、外国で分かった安全性に関する情報は、日本の治験を進める上でもとても参考になります。

だから、お薬が開発されて世に出る前から出た後まで、安全性に関する情報の扱いは、ずっとつながっていると考えて、しっかりルールを決めていくことが大切なんです。

このお知らせの目的は、主に次の2つについて、世界で足並みをそろえることです。

  • お薬の安全性について話すときの、基本的な言葉の意味をはっきりさせること。
  • 治験中に「これは大変だ!」という安全性情報が出てきたときに、すぐに国や関係者に報告するための手順を決めること。

2.言葉の意味をそろえよう!〜安全情報を話すときの共通語〜

まず、お薬の安全性について話すとき、言葉の意味がみんなバラバラだと困ってしまいますよね。そこで、基本的な言葉の定義をしっかり確認しておきましょう。これは、世界保健機関(WHO)という国際的な機関でも使われている定義を参考にして、治験の場面で使いやすいように少し調整したものです。

1)基本的な言葉

(1) 有害事象(ゆうがいじしょう)って何?

お薬を使った患者さんや治験に参加してくれた人に起こった、あらゆる好ましくない医療上の出来事のことです。「好ましくない」というのは、例えば体調が悪くなったり、検査の数字がいつもと違う値になったりすること。大切なのは、そのお薬が原因かどうかは、まだはっきり分からない段階でも「有害事象」と呼ぶということです。

(2) 副作用(ふくさよう)って何?

病気の予防や診断、治療などのためにお薬を使ったときに起こる反応のうち、有害で、しかもお薬を使った人が意図していなかったものを指します。

「有害事象」との違いは、起きた好ましくない出来事について、「どうもこのお薬が関係しているかもしれないな」と疑われる、またはその関係が否定できない場合を「副作用」と呼ぶ点です。

(3) 予測できない副作用って何?

副作用の中でも、治験を始める前に作られる「治験薬概要(ちけんやくがいよう)」という、そのお薬の詳しい説明書に書かれていなかったもの、あるいは、もし書かれていたとしても、その内容(例えば、副作用の性質や重さの程度など)が説明書に書かれていることと違うものを言います。

2)特に注意!「重篤(じゅうとく)」な有害事象や副作用とは?

治験中に何か好ましくないこと(有害事象)が起きて、それがお薬のせいかもしれない(副作用)と疑われる場合、お薬の今後の使い方(例えば、使う量や、どんな患者さんに使うか、どんな検査をしながら使うかなど)を大きく見直す必要が出てくることがあります。

特に、患者さんの命に関わるような副作用の場合は、なおさらです。このような副作用は、すぐに国の担当部署(規制当局と言います)に報告しなければなりません。

そこで、「これはすぐに報告が必要な、特に重大なケースだ!」と判断するための、医学的・行政的な基準が必要になります。どんな場合が「重篤(じゅうとく)」と判断されるかというと、次のようなケースです。

  • 死に至るもの
  • 生命を脅かすもの(*これは、その副作用が起きた時に、患者さんが本当に危ない状態だった、という意味です。「もし、もっとひどかったら危なかったかもしれない…」という仮の話ではありません。)
  • 治療のために新しく入院したり、入院期間が長くなったりする必要があるもの
  • 体にずっと治らない障害が残ってしまったり、体の機能が大きく損なわれたりするもの
  • 赤ちゃんに先天的な異常(生まれつきの体の問題)が起こるもの

ここでちょっと補足です。「重症(じゅうしょう)」という言葉と「重篤(じゅうとく)」は、似ているようで意味が違います。

「重症」は、例えば「ひどい頭痛」のように、ある症状の強さを表すために使われることが多いです。でも、症状が重くても、医学的に見るとそれほど大ごとではないこともあります。

一方、「重篤」は、患者さんの命や体の機能が危険にさらされるような、もっと深刻な状況や結果を指す言葉です。この「重篤」かどうかが、すぐに国に報告しなければならないかどうかの判断基準になります。

上のリスト以外にも、すぐには命に関わったり入院が必要になったりしなくても、患者さんを危険な状態にさらしたり、上で挙げたような深刻な結果にならないように特別な処置を必要とするような重大な状況の場合は、医学的・科学的な判断に基づいて、通常は「重篤」と考えて報告が必要になります。

例えば、救急外来などで集中治療が必要になるような気管支の発作、入院はしなくても血液の病気やけいれんが起きた場合、あるいは薬物への依存や乱用といったケースも、これにあたることがあります。

3)その副作用、「予測できた」?「できなかった」?

「緊急報告」の大きな目的は、重篤な副作用に関する「新しくて重要な情報」を、国の担当部署や治験の先生、その他の適切な関係者にすぐに伝えることです。ですから、通常、緊急報告は今までに見たり聞いたりしたことがない(観察または報告されていない)副作用について行うことになります。

そこで、ある副作用が「予測できたものか、できなかったものか」を判断するための目安が必要になります。(これは、お薬の化学的な性質から「たぶん起こるだろうな」と推測するのではなく、実際に今までに観察されたことがあったかどうか、という視点で判断します。)

先ほどお話ししたように、「予測できない副作用」とは、副作用のうち、「治験薬概要(お薬の説明書)」に書かれていなかったもの、または書かれていてもその性質や重症度が記載内容と一致しないものを言います。治験薬概要が改訂されるまでは、そのような副作用が起きた場合は緊急報告が必要になります。

ある有害事象や副作用が予測できるかどうかの判断は、次のような資料や状況に基づいて行われます。

  • まだ世界のどの国でも売られていない新しいお薬については、「治験薬概要」が基本的な判断材料になります。
  • すでに知られていて治験薬概要にも載っている重篤な副作用でも、その副作用についてもっと詳しい情報(例えば、副作用がもっと限定的なものだと分かったり、もっと重症だと分かったりする場合)が加わるような報告は、「予測できない」出来事とみなします。例えば、治験薬概要に「急性腎不全」と書かれていたけれど、実際には「間質性腎炎」という、より具体的な病名が判明した場合や、「肝炎」と書かれていたものが、実際には「劇症肝炎」という非常に重い状態だった、というような場合です。

3.すぐに知らせて!〜緊急報告の具体的なルール〜

では、具体的にどんな場合に、どのように緊急報告をすればいいのでしょうか。

1)何を報告するの?

(1) 「重篤」で「予測できない」副作用は必ず報告!

「重篤」で、かつ「予測できない」と判断される副作用は、すべて緊急報告の対象となります。これは、患者さんご本人から自発的に報告があった場合でも、どんな目的で行われた治験や研究で見つかった副作用であっても同じです。どこでその情報が見つかったのか(例えば、治験の途中なのか、誰かからの自発的な報告なのか、学術論文で見つけたのかなど)は、いつもはっきりさせておくべきです。

「重篤」ではあっても「予測できる」副作用は、通常、緊急報告の対象にはなりません。また、治験中に起きた重篤な出来事であっても、お薬との因果関係が否定されたもの(お薬が原因ではないと判断されたもの)は、それが予測できるかどうかに関わらず、緊急報告の対象とはなりません。「重篤ではない」副作用も、それが予測できるかどうかに関わらず、通常、緊急報告の対象にはなりません。

治験を依頼している会社(治験依頼者といいます)や製薬企業は、「重篤で予測できない副作用」の報告を受けた場合、それが緊急報告のルールに当てはまる内容であれば、情報源が何であれ、該当する国の担当部署に迅速に報告しなければなりません。

治験で起きた出来事については、お薬との因果関係の評価(本当にそのお薬が原因なのかどうかを考えること)がなされるべきです。治験を担当しているお医者さん(治験担当医師)や治験を依頼している会社によって、そのお薬と因果関係がありそうだと判断されたものは、すべて副作用とみなされます。すでに市販されているお薬に関する有害事象の報告(自発報告)は、そのお薬と因果関係がある可能性が大きいと考えられます。

お薬と起きた出来事との因果関係の度合いを説明するために、いろいろな言葉や尺度が使われますが、「因果関係があるらしい」「因果関係が疑われる」または「因果関係は否定できない」といった言葉は、因果関係があることを示していると考えてください。

(2) その他にも、すぐに連絡が必要なケースがある!

重篤な副作用の個々のケース報告以外にも、すぐに国の担当部署に連絡し、状況に応じた適切な医学的・科学的な判断をしなければならない場合があります。一般的には、そのお薬を使うことのメリットとデメリットのバランス(リスク・ベネフィット評価と言います)に著しく影響を与えるような情報や、お薬の投与方法や治験全体の計画を変更することを考えなければならないような情報がそれに当たります。

例えば、次のような場合が考えられます。

  • もともと「予測されていた」重篤な副作用が、臨床的に見て「これはちょっと多いな」と判断されるほど増えてきた場合。
  • 命に関わるような病気に使われるお薬が、期待される効果を示さないなど、患者さんが大きな危険にさらされる場合。
  • 動物実験で新しく分かったことから、安全性に関する重大な情報(例えば、がんを引き起こす可能性など)が得られた場合。

2)いつまでに報告するの?〜報告の期限〜

副作用の中には、そのお薬や、そのお薬の効能・効果、使い方、形などがまだ承認されていない国の担当部署に対して、非常に迅速な報告が必要となるほど重要なものもあります。なぜなら、それによって治験計画を中止したり、何らかの制限を設けたりすることを考えなければならない可能性があるからです。

(1) 患者さんが亡くなったり、命を脅かすような「予測できない」副作用の場合

治験中に、患者さんが亡くなったり、命を脅かすような「予測できない」副作用が起きた場合は、特に迅速な報告が必要です。この場合、治験を依頼している会社は、その副作用が緊急報告のルールに当てはまると知った日から7日以内のできるだけ早い時期に、国の担当部署に電話やファックスなどで知らせ、そして、可能な限りの完全な報告書を**さらに8日以内(つまり、最初に知ってから合計15日以内)**に提出します。この報告書には、その新しい情報の重要性や影響について、同じようなお薬に関する過去の経験なども含めて評価した内容を記載する必要があります。

(2) その他の「重篤」で「予測できない」副作用の場合

「重篤」で「予測できない」副作用のうち、(1)の死亡や生命を脅かすもの以外については、治験を依頼している会社は、その副作用が緊急報告のルールに当てはまると知った日から15日以内のできるだけ早い時期に報告します。

(3) 報告に必要な最低限の情報って?

上に示した報告期限内に、詳しい情報をすべて集めて評価しまとめるのが難しい場合もあるかもしれません。しかし、緊急報告の目的を考えると、最初の報告(初回報告)は、少なくとも次の情報が得られている限り、期限内に提出するようにしてください。

  • どの患者さんのことか特定できる情報
  • 疑わしいお薬(被疑薬と言います)
  • 報告の情報源(誰から、またはどこから得た情報か)
  • 「重篤」で「予測できない」副作用だと判断できる出来事やその結果
  • そして、治験においては、疑わしいお薬とその出来事や結果との因果関係が否定できないこと

なお、その後も追加の情報を手に入れるように努め、手に入り次第、速やかに報告してくださいね。

3)どうやって報告するの?〜報告の方法〜

特定の報告用紙の様式が決まっているわけではありませんが、緊急報告書には、基本的な情報項目(手に入る範囲で)が記載されることが重要です。どんなデータを書くことが望ましいかについては、このお知らせの最後に「別添」としてリストが示されていますので、参考にしてください。緊急報告の時点で全てのデータが得られていない場合には、それらを後から手に入れるように努力する必要があります。

すべての報告は、そのお薬を開発中の国の担当部署、及び報告が必要とされる他の公的な機関に提出されなければなりません。

4)目隠しされた治験(ブラインド治療)の場合はどうする?

治験の中には「二重盲検試験(にじゅうもうけんしけん)」といって、治験を依頼している会社もお医者さんも、個々の患者さんがどのお薬(本物のお薬なのか、見た目がそっくりな偽薬(プラセボ)なのか、あるいは別のお薬なのか)を使っているかを知らされないまま進められるものがあります。これを「ブラインド治療」と言ったりします。

もし、このような試験の途中で重篤な出来事が生じた場合、その患者さんの治療内容の目隠しを解くべきか(専門用語で「キーを開ける」「開鍵(かいけん)する」と言います)どうかの決定に迫られることがあります。治験担当医師や治験の管理者(コントローラー)によってキーが開けられれば、治験を依頼している会社もその患者さんに対する治療内容を知ることになります。

試験結果の最終的な分析が終わるまで、全ての患者さんについて目隠し状態を維持すること(盲検性(もうけんせい)を維持する、と言います)は望ましいことですが、ある重篤な出来事が緊急報告するべきものである(予測できない出来事であり、因果関係が疑われる)と判断された場合は、そのケースについてのみキーを開けることが望ましいです。しかし、可能であれば、最終結果の分析・評価を担当する統計の専門家などに対しては、目隠し状態を維持することが望ましいです。

目隠し状態を維持することのメリットよりも、デメリットの方が大きい場合もあります。目隠し状態を維持した場合、偽薬や比較のために使った別のお薬(通常はすでに市販されているお薬です)による有害事象のケースが、不必要にデータベースに登録されてしまい、最終的にキーを開けた時点(国の担当部署に報告をした後、数週間から数ヶ月後になると思われます)で、治験を依頼している会社と国の担当部署のデータベースを確定的なものに改めなくてはならなくなることがあります。

出来事が新しく、重篤なもので、そのお薬との因果関係が疑われた際に、目隠し状態を維持したまま治験薬概要(お薬の説明書)を改訂し、関係者に情報を知らせることは、適切でなく、また誤解を生じさせることにもなりかねません。さらに、1つのケースだけの目隠しを破っても、通常はその後の試験の実施や最終的なデータの分析に大きな影響を与えることはほとんどないと考えられます。

しかしながら、亡くなってしまうことや、その他何らかの重篤な結果が、お薬の有効性を判断するための主要なポイント(評価指標と言います)である場合は、目隠し状態が破られるとその試験の信頼性に問題が生じる可能性があります。このような、またはこれに類似する状況の場合には、重篤な有害事象のうち、病気そのものに関連する出来事として取り扱い、通常の緊急報告の対象とはしない出来事について、治験を依頼している会社と国の担当部署との間であらかじめ取り決めをしておくことが適切なこともあります。

5)その他の知っておいてほしいこと

(1) 比べるために使ったお薬(比較実対照薬)や偽薬(プラセボ)に関連した副作用はどうするの?

治験では、開発中のお薬と比べるために、すでに効果や安全性が分かっている別のお薬(比較実対照薬)や、有効成分の入っていない偽薬(プラセボ)を使うことがあります。

もし、比較実対照薬に関連した副作用が起きた場合、そのお薬を提供してくれた会社に報告するか、または国の担当部署に直接報告するかは、治験を依頼している会社の責任で決定します。そして、治験を依頼している会社は、決定に従い、その副作用を比較実対照薬を提供した会社または国の担当部署に報告します。

プラセボに関連する出来事については、通常は「副作用」の条件を満たさず、したがって緊急報告の必要はありません。

(2) いろんな形や使い方があるお薬の場合は?

お薬には、飲み薬、注射薬、塗り薬など、いろいろな形(剤型と言います)があったり、使い方(用法・用量)が複数あったりすることは珍しくありません。副作用の緊急報告は、正確を期すため、どの病気の治療目的で(適応症)、どんな形の薬を、どのように使ったか(投与方法など)ごとに行い、合わせて他の適応症や剤型についての情報も提供するようにしましょう。

同じ有効成分のお薬でも、剤型、成分の配合(処方)、投与方法などによって安全性に大きな違いが生じることもありますし、また、同じお薬でも、異なる病気や異なる患者さんのグループに使われるときも同様です。したがって、それぞれの場合によって「副作用がどの程度予測できるか」も異なってくると考えられ、それぞれに治験薬概要(お薬の説明書)を分けて作成することが必要な場合もあります。しかしながら、この種の資料には、他の剤型などにも当てはまる包括的な副作用情報(例えば、体全体に影響が出るような副作用など)も記載することが望ましいです。必要があれば、剤型や使い方特有の安全性情報などの個別の検討内容も含めるべきです。

1つの剤型や使い方に関して観察された副作用が緊急報告の対象となる場合、その有効成分を含む他の剤型や使い方に対してもその情報が提供されることが望ましいです。

これは、場合によっては過剰な報告や不必要な報告になるかもしれません(例えば、注射で生じた血管の炎症についての報告を、飲み薬だけで開発・販売されている国の担当部署に知らせる、など)。しかし、報告が少なすぎる(過少報告)よりは良いと考えられます。

(3) 試験が終わった後に起きた出来事は?

治験が完全に終了した後(治験計画書で定められた、お薬を使い終わった後の追跡調査も含みます)に、重篤な有害事象が起きたことについて、治験を担当したお医者さんから治験を依頼した会社に報告がなされることがあります。たとえ時間がどんなに経っていても、これはその試験についての報告ですので、緊急報告の対象とされるべきであり、お薬との因果関係の評価と予測ができたかどうかにより緊急報告が必要か否かが判断されます。

6.治験の先生や病院の委員会にも、新しい安全情報を伝えよう!

安全性に関して新しく得られた情報については、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」(GCP:Good Clinical Practiceという、治験を行う上での大切なルールです)に従って、適切な対応をとることが必要です。

治験を依頼している会社は、治験薬概要(お薬の説明書)をその都度改訂し、安全性に関する情報を常に最新のものにしておく必要があります。

いかがでしたでしょうか?

治験中の安全性を守るためのルールは、少し複雑に感じるかもしれませんが、すべては新しいお薬を待っている患者さんのため、そしてより安全なお薬を開発するためです。関係者の皆さんがこのルールをしっかり理解し、協力し合うことがとても大切ですね。

ここから下は、実際のICH-E2Aなので、じっくりご覧ください。

治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて

平成7年3月20日 薬審第227号
(各都道府県衛生主管部(局)長あて 厚生省薬務局審査課長通知)

近年,優れた新医薬品の地球的規模での研究開発の促進と患者への迅速な提供を図るため,承認審査資料の国際的ハーモナイゼーション推進の必要性が指摘されている。

このような要請に応えるため,日・米・EU 三極医薬品承認審査ハーモナイゼーション国際会議(ICH)が組織され,品質,安全性及び有効性の3分野でハーモナイゼーションの促進を図るための活動が行われている。治験中に得られる安全性情報については,昭和55年10月9日薬発第1330号薬務局長通知によりそのすみやかな報告を求めているところであるが,本通知は,ICH における三極の合意事項に基づきその具体的な取り扱いに関して指針を示すものである。

貴管下関係業者に対し周知方よろしくご配慮願いたい。

治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて

1.はじめに

治験中に得られる重要な安全性情報の収集方法を各国で統一し,必要に応じて適切な措置を講じることは有益なことである。その際,手続きのみならず,用語や定義についても国際的な合意がなされることが望ましい。医科学国際組織委員会(Council for International Organizations of Medical Sciences ; CIOMS)の作業委員会による市販中の医薬品についての副作用の緊急報告と定期的な安全性情報の報告に関する先駆的な活動は参考となる。しかしながら,開発中の医薬品,その中でも特に開発初期段階にあるものやいかなる国においてもまだ市販されていないものについては,特別な配慮が必要となる。一方,諸外国において既に市販中である医薬品については,市販後の情報として得られる安全性データは,当該医薬品がまだ治験段階にある国の規制当局にとって関心が持たれるものである。従って,市販前後における安全性情報の報告の考え方とその実施は相互に関連しているとみなすのが妥当であり,実際的でもある。

本通知の目的は,治験中に得られる安全性情報の取り扱いに関する下記の事項について国際的な合意を得ることである。

  • 安全性情報の報告に関連する基本的な用語と定義の確立
  • 治験中に得られる安全性情報の緊急報告の取り扱いに関する適切な手順の策定

2.安全性情報の報告に関連する用語と定義

1)基本用語

有害事象,副作用,予測できない副作用という用語の定義については,WHO 国際医薬品モニタリングセン
ター(Uppsala, Sweden)の30を超える協力センターで合意がなされている。*1これらの定義は,臨床試験を含む全ての場合に適用し得るものであるが,特に承認前の開発段階で使用するためには若干の修正が必要である。

WHO 協力センターでの定義を参考として,本通知における定義は以下のとおりである。

(1) 有害事象(Adverse Event(or Experience))

医薬品が投与された患者または被験者に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごと。必ずしも当該医薬品の投与との因果関係が明らかなもののみを示すものではない。

つまり有害事象とは,医薬品が投与された際に起こる,あらゆる好ましくない,あるいは意図しない徴侯(臨床検査値の異常を含む),症状,または病気のことであり,当該医薬品との因果関係の有無は問わない。

*1 Edwards, I.R., et al, Harmonisation in Pharmacovigilance. Drug Safety10:93-102,1994.

(2) 副作用(Adverse Drug Reaction)

病気の予防,診断もしくは治療,または生理機能を変える目的で投与された(投与量にかかわらない)医薬品に対する反応のうち,有害で意図しないもの。

医薬品に対する反応とは,有害事象のうち当該医薬品との因果関係が否定できないものを言う。

(3) 予測できない副作用(Unexpected Adverse Drug Reaction)

副作用のうち,治験担当医師用治験薬概要(Investigator's Brochure 以下,治験薬概要)に記載されていないもの,あるいは記載されていてもその性質や重症度が記載内容と一致しないもの。

2)重篤*2な有害事象または副作用

治験中に有害事象が発現し,当該医薬品との因果関係が疑われる(すなわち副作用)と,その後の開発方針に重要な変更(用法・用量,患者層,必要な観察・検査項目,同意書式等の変更)が必要となる場合がある。これは,生命または生理機能を脅かすような副作用の場合に特に言えることである。このような副作用は直ちに規制当局へ報告されるべきである。

従って,その副作用の性質(重篤度),またはそれが重要な予測できない情報であるか否かにより緊急報告の必要性の有無を判断するための医療上または行政上の特別な基準が必要となる。

現在使用されている,または議論中の各国の規制上の定義などを検討した結果,下記に示す項目がそれらの意図するところを包含すると考えられる。

重篤な有害事象または副作用とは,医薬品が投与された(投与量にかかわらない)際に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごとのうち,以下のものを言う。

  1. 死に至るもの
  2. 生命を脅かすもの*3
  3. 治療のため入院または入院期間の延長が必要となるもの
  4. 永続的または顕著な障害・機能不全に陥るもの
  5. 先天異常を来すもの

*2 「重症」という言葉は,ある特定の事象の強さ(激しさ)を表現するために使われることが多い(心筋梗塞の程度が軽度(mild),中等度(moderate),高度(重症,severe)のように).しかしながら,重症の場合でも医学的意義は比較的小さい(重症の頭痛のように)こともある.重症は「重篤」と同義ではない.
「重篤」は,患者の生命または機能を危険にさらす事象に関連した患者や事象の転帰または処置基準に基づく用語である.重篤度(重症度ではない)が規制上の報告義務を規定する指針になる.

*3 「生命を脅かす」とは,その事象が起こった際に患者が死の危険にさらされていたという意味であり,その事象がもっと重症なものであったなら死に至っていたかもしれないという仮定的な意味ではない.
その他の状況,すなわち即座に生命を脅かしたり死や入院には至らなくとも,患者を危機にさらしたり,上記 a~e のような結果に至らぬように処置を必要とするような重大な事象の場合には,緊急報告を必要とするか否かを医学的および科学的根拠に基づいて判断する必要があり,通常,それらも重篤とみなすべきである。
この例としては,救急室等で集中冶療を必要とする気管支痙攣,入院には至らないものの血液障害または痙攣を来した場合,薬物依存症または薬物乱用などが挙げられる。

3)副作用の予測可能性

緊急報告の目的は,重篤な副作用に関する新しい重要な情報を規制当局,治験担当医師およびその他の適切な関係者に提供することである。従って,通常,緊急報告は今までに観察または報告されていない事象に関して行うこととなり,ある事象が「予測できるものか否か」を判断するための指針が必要になる。(当該医薬品の薬理学的性質から予測の可否を判断するのではなく,現在までに観察されたか否かの観点から予測できるかどうかという意味である。

2の1)ので述べたように「予測できない」副作用とは,副作用のうち,治験薬概要に記載されていないもの,または記載されていてもその性質や重症度が記載内容と一致しないものを言う。治験薬概要が改訂されるまでは,当該事象の発現の場合,緊急報告が必要となる。

ある有害事象または副作用が予測できるか否かの判断は,次のような資料または状況に基づいて行われる。

  • 世界中のいかなる国においても市販されていない医薬品については,治験薬概要が基本的な資料となる。
  • 既知で治験薬概要にも記載されている重篤な副作用でも,その特殊性や重症度に関して必要な情報が加わるような報告は予測できない事象とみなす。例えば,治験薬概要に記載されている以上に特定されている(限定的)か,または重症である事象は予測できないものと考える。例えば,急性腎不全に対する間質性腎炎の追加報告や,肝炎に対する劇症肝炎の追加などである。

3.緊急報告のための基準

1)報告すべきもの

(1) 重篤で予測できない副作用

重篤で予測できない副作用は,全て緊急報告の対象となる。これには副作用の自発報告,及びデサイン,目的に関係なく全ての臨床試験または疫学研究中の副作用報告も含まれる*4。また,治験依頼者または企業に直接報告されない症例についても適用される(例えば出版物中に見られるものなど)。報告の情報源(臨床試験,自発報告など)は,常に明確にされるべきである。

重篤であっても予測できる副作用は,通常,緊急報告の対象とはならない。また,臨床試験中に生じた重篤な事象で当該医薬品との因果関係が否定されたものは,それが予測できるか否かとは関係なく緊急報告の対象とはならない。重篤でない副作用は,それが予測できるか否かとは関係なく,通常,緊急報告の対象とはならない。

治験依頼者または企業は,重篤で予測できない副作用の報告を受けた場合,それが緊急報告の必要条件に当てはまる内容の場合は,情報源が何であれ該当する規制当局に迅速に報告しなければならない。

治験における症例については,因果関係の評価がなされるべきである。治験担当医師または治験依頼者により当該医薬品と因果関係が示唆されると判断されたものは,全て副作用とみなされる。市販中の医薬品に関する有害事象の報告(自発報告)は,当該医薬品と因果関係がある可能性が大きい。

医薬品と事象との因果関係の大きさを記述するために多くの用語,尺度が用いられるが,「因果関係があるらしい」,「因果関係が疑われる」または「因果関係は否定できない」のような用語は,因果関係を示唆していると考えられる。

*4 本通知は,治験中に得られる安全性情報の取り扱い,重篤で予測できない副作用の緊急報告について規定したものであるが,例えばある医薬品が日本では治験中で米国では市販されている場合,米国での市販後の疫学研究中に重篤で予測できない副作用が報告された場合には,日本の厚生省にも本通知に基づいた緊急報告が必要となる。

(2)  その他

重篤な副作用の症例報告以外にも,迅速に規制当局に連絡し,状況に応じた適切な医学的・科学的判断を下さなければならない場合がある。一般的には,当該医薬品のリスク・ベネフィット評価に著しく影響を与えるような情報,または投与方法や治験計画全体の変更を考慮しなければならないような情報がそれに当てはまる。下記のような例が挙げられる。

  1. 「予測される」重篤な副作用の発現頻度が臨床的に重要と判断されるほど増加した場合。
  2. 生命を脅かすような疾患に使用される医薬品がその効果を有しないなど,患者が大きな危険にさらされる場合。
  3. 新たに得られた動物試験成績から安全性に関する重大な知見(発癌性など)が得られた場合。

2)報告期限

(1) 死亡または生命を脅かす予測できない副作用

副作用の中には,当該医薬品,またはその効能・効果,用法・用量,剤型等が未だ承認されていない国の規制当局に対して,極めて迅速な報告が必要となる程度に重要なものもある。治験計画の中止またはある種の制限を考慮せねばならないものである可能性もあるからである。治験中に生じた死亡または生命を脅かす予測できない副作用については,迅速な報告が必要である。この場合,治験依頼者は,その副作用が緊急報告の必要条件に当てはまると知った日から7日以内のできるだけ早い時期に規制当局に電話またはファックス等で知らせ,可能な限りの完全な報告書をさらに8日以内(計15日以内)に提出すること。この報告書には,同一または類似医薬品に関連する過去の経験を含めて,その新しい知見の重要性および影響の評価を記載する必要がある。

(2) その他の重篤で予測できない副作用

重篤で予測できない副作用のうち,死亡または生命を脅かすもの以外については,治験依頼者は,その副作用が緊急報告の必要条件に当てはまると知った日から15日以内のできるだけ早い時期に報告すること。

(3) 報告に必要な最低限の情報

上記に示す報告期限内に症例報告に必要な十分な記述や評価を行うための情報が入手できない場合もある。しかしながら,緊急報告の目的に鑑み,初回報告は,少なくとも次の情報が得られている限り期間内に提出すること。

患者が特定されていること,被疑薬,報告の情報源,重篤で予測できない副作用と判断できる事象または転帰,及び治験においては被疑薬と当該事象または転帰との因果関係が否定できないこと

なお,その後も追加情報の入手に努め,入手次第速やかに報告すること。

3)報告方法

特定の報告様式は定めないが,緊急報告書中には基本的な情報項目(入手できる範囲で)が記載されることが重要である。記載が望ましいと考えられるデータ項目は,別添に示されている。緊急報告時に全てのデータが得られていない場合には,それらを追加入手するように努力する必要がある。

全ての報告は,当該医薬品を開発中の国の規制当局,及び報告が必要とされる他の公的な機関に提出されなければならない。

4)ブラインド治療症例の取り扱い

二重盲検試験のように治験依頼者も治験担当医師も個々の患者の治療内容を知らされていない時に重篤な事象が生じた場合,その患者のキーを開けるべきか否かの決定に迫られることがある。治験担当医師またはコントローラーによりキーが開けられれば,治験依頼者もその患者に対する治療内容を知ることになる。試験結果の最終解析が終了するまで全患者に対して盲検性を維持することは望ましいことであるが,ある重篤な事象が緊急報告するべきものである(予測できない事象であり,因果関係が疑われる)と判断された場合は,その症例についてのみ開鍵されることが望ましい。しかしながら,可能であれば,最終結果の解析・評価を担当する統計解析担当者らに対しては盲検性が維持されることが望ましい。

盲検性を維持する利益よりも不利益の方が大きい場合もある。盲検性を維持した場合,プラセボや比較実対照薬(通常は市販薬)による有害事象発現症例が不必要にデータベースに登録され,最終的に開鍵した時点(規制当局に報告をした後,数週間から数カ月後になると思われる)で治験依頼者と規制当局のデータベースを確定的なものに改めなくてはならなくなる。事象が新規,重篤なもので当該医薬品との因果関係が疑われた際に,盲検性を維持したまま治験薬概要を改訂し,関係者に情報を知らせることは,適切でなく,また誤解を生じさせることにもなる。さらに1症例のみの盲検性を破っても,通常はその後の試験の実施や最終のデータ解析に有意な影響を与えることはほとんどないと考えられる。

しかしながら,致死的またはその他何らかの重篤な転帰が有効性の主要評価指標である場合は,盲検性が破られるとその試験の信頼性に問題が生じる可能性がある。このような,またはこれに類似する状況の場合には,重篤な有害事象のうち,疾患に関連する事象として取り扱い,通常の緊急報告の対象とはしない事象について,治験依頼者と規制当局との間であらかじめ取り決めをしておくことが適切であることもある。

5)その他の問題

(1) 比較実対照薬またはプラセボに関連した副作用

比較実対照薬に関連した副作用を対照薬提供企業に報告するか,または規制当局に直接報告するかは,治験依頼者の責任により決定すること。治験依頼者は,決定に従い,当該副作用を対照薬提供企業または規制当局に報告すること。

プラセボに関連する事象については,通常は「副作用」の要件を満たさず,従って緊急報告の必要はない。

(2) 複数の剤型または用法・用量のある医薬品

副作用の緊急報告は,正確を期すため,適応症,剤型,投与方法等ごとに行い,併せて他の適応症や剤型についての情報を提供すること。

複数の剤型,処方,投与方法をもつ有効成分が治験中または市販中であることは珍しくない。剤型,処方,投与方法等により安全性に著しい差が生じることもあり,また,同じ製剤が異なる適応症,患者集団に用いられるときも同様である。従って,それぞれの場合によって「副作用がどの程度予測できるか」も異なってくると考えられ,それぞれに治験薬概要を分けて作成することが必要な場合もある。しかしながら,この種の資料には他の剤型等にも当てはまる包括的な副作用情報(全身的副作用等)も記載することが望ましい。必要があれば,剤型または用法特有の安全性情報などの個々の検討内容も含めるべきである。

1つの剤型または用法に関して観察された副作用が緊急報告の対象となる場合,その有効成分を含む他の剤型または用法に対してもその情報が提供されることが望ましい。

これは,場合によっては過剰報告または不必要な報告になるかもしれないが(例えば,静脈内投与で生じた静脈炎についての報告を経口投与だけで開発,販売されている国の規制当局に知らせること等),過少報告は避けられる。

(3) 試験終了後の事象

治験が完全に終了(治験計画書で定められた治療後の追跡訴査も含む)した後に,重篤な有害事象の発現について治験担当医師から治験依頼者に報告がなされることがある。ラグタイムがどんなに長くても,これはその試験についての報告であるので緊急報告の対象とされるべきであり,因果関係の評価と予測の有無により緊急報告が必要か否かが判断される。

6)治験担当医師と治験審査委員会に対する安全性に関する新たな情報の報告

安全性に関して新たに得られた情報については,「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」(GCP)に従って適切な対応をとること。

治験依頼者は治験薬概要を適宜改訂し,安全性に関する情報を最新のものにしておく必要がある。

別添

重篤な副作用の緊急報告に含まれるべき必須情報

以下の項目リストは,CIOMS-1,WHO 国際医薬品モニタリングセンター,及び各国の規制当局が現在使用中あるいは提案している書式やガイドライン中で既に確立されている事項に基づいたリストである。項目中のいくつかは,状況によっては必要のないものもある。緊急報告の目的に最低限必要な情報は,患者が特定されていること,被疑薬,報告の情報源,重篤で予測できない副作用と判断できる事象または転帰,及び治験においては被疑薬と当該事象または転帰との因果関係が否定できないことである。

また,リスト中の他の項目についてもできるだけ多くの追跡情報を得るように努める必要がある。

1.患者の詳細
  • イニシャル
  • 関係する他の確認事項(例えば,症例 No.等)
  • 年齢,生年月日
  • 体重
  • 身長
2.被疑薬
  • 商品名,一般名(成分名),治験記号など
  • ロット番号
  • 被疑薬が処方または投与された目的(効能・効果)
  • 剤型,含量
  • 1日投与量と用法(単位を明記すること)
  • 投与経路
  • 投与開始日と時刻
  • 投与中止日と時刻,または投与期間
3.他の治療

併用薬(一般用医薬品を含む),併用療法についても被疑薬と同様の情報を提供する。

4.副作用の詳細

当該副作用を重篤と判断した基準,発現部位と重症度を含めた副作用の詳細を示す。報告された徴侯,症状の詳細に加え,可能な限りその副作用の診断名を特定するよう努めるべきである。

  • 発現日時
  • 消失日時または持続期間
  • 投与中止後の経過,再投与後の経過
  • 場所(病院,自宅等)
  • 転帰
    回復状況と後遺症に関する情報,必要とした特定の治療または試験とその結果
    死亡症例については,死因,それと当該副作用との関連性,可能であれば剖検結果等(検死官のレポートを含む)
  • 他の情報
    その症例の評価に役立つ関連情報,例えばアレルギー等の既往歴,薬物やアルコール依存歴,家族歴,
    特殊検査により得られた知見等
5.報告者の詳細
  • 名前
  • 住所,所属
  • 電話番号
  • 専門
6.治験依頼者または企業の詳細,及びその他の連絡事項
  • 治験依頼者/企業の名前,住所
  • 企業の連絡窓口者の名前,住所,電話・ファックス番号
  • 報告の情報源(治験中,自発報告,文献情報など)
  • 治験依頼者/企業がその情報を最初に入手した日
  • 国内・国外の別,国外であればその国名
  • 規制当局への・報告の種類
    初回か,フォローアップか(1回目,2回目等々)
  • 治験依頼者/企業が副作用発現症例を特定する症例 No.

参考1

治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて Q&A

Q1.本通知の適用範囲,及び国内における報告先を明確にしていただきたい。

日本,米国,または EU のいずれかにて治験中にある医薬品に関して得られる安全性情報が対象となる。

1)日本で治験中にある医薬品

新有効成分として我が国で治験がなされている医薬品について,実施中の治験で重篤で予測できない副作用が発現した場合,あるいは疫学研究中や自発報告により重篤で予測できない副作用が報告された場合(外国を含む)には,本通知に基づいて厚生省審査課に緊急報告を行っていただきたい。

また,効能追加,新剤型,新投与経路等の医薬品として治験がなされている場合には,当該治験に関係する副作用であれば審査課に,それ以外の副作用については安全課に報告することとする。

なお,上記の判断が難しい場合には,事前に担当課に相談されたい。

2)米国,あるいは EU で治験中にある医薬品

米国,あるいは EU で治験中にある医薬品について,我が国(治験中,市販後等を問わない)で重篤で予測できない副作用が発現した場合には,必要とされるそれぞれの規制当局に緊急報告が必要になる。

Q2.報告期限は日曜,休日を含めて計算すると理解してよろしいのか。

よろしい。

Q3.本文3.1)で「治験担当医師や治験依頼者により当該治験薬と因果関係があると判断されたものは,・・・・」とあるが,治験依頼者が単独で因果関係の評価ができると考えてもよろしいのか,また,因果関係の評価に際しての治験担当医師と治験総括医師,治験依頼者の関わりについて説明願いたい。

発現した事象と治験薬との因果関係は,基本的には実際に治験を実施している治験担当医師によって評価がなされるべきである。

しかし,治験担当医師により因果関係が否定された事象でも,治験依頼者が先行する治験や実施中の治験の他施設での情報等を考慮した際に因果関係が疑われる等の状況にある場合には,当該治験担当医師や治験総括医師等とも相談の上で因果関係の再評価を行っていただきたい。

Q4.「因果関係不明」の症例はどのように扱えばよいのか。

「因果関係不明」は,因果関係が否定できないととるべきで,それが重篤で予測できない有害事象であれば,緊急報告の対象となる。

Q5.因果関係を評価するための指針を作っていただきたい。

因果関係の評価の方法を一律に規定することは難しい。基本的には,因果関係が否定し得ない事象は「因果関係あり」に分類し,必要な手続きをとっていただきたい。

投与中止後の当該事象の経過(投与を止めると当該事象も消失するか否か),また,投与を中止し当該事象も消失した後の再投与時に当該事象が再発現するか否かに関する情報等は,因果関係の評価に有益な情報を与えると思われる。

Q6.比較実対照薬に関する副作用の報告方法は,提供企業を通して報告するか,または直接規制当局に報告するのかどちらかに統一すべきではないか。また,厚生省への報告先はどこになるのか示していただきたい。

治験依頼者が直接報告した方がより迅速な報告ができると思われること,一方で提供企業の方が当該対照薬に関する情報を多く保有しているためより的確な報告ができるとも思われること等,どちらにも一長一短がある。よって,このような場合にいずれの報告方法をとるかを依頼者,提供会社間であらかじめ決めておき,両者が協力し合って的確な報告を行っていただくことが重要であると考える。

報告先については,当該副作用がその後の治験の実施に影響を与えるかも知れないこと,一方で対照薬は既承認薬であることを考慮し,審査課,安全課双方に提出していただきたい。

Q7.二重盲検比較試験中に重篤な副作用が発現したが,何らかの理由によりすぐにキーを開けることができない場合には,どのように対処すべきか。

やむを得ず当該患者のキーがすぐに開けられない場合には,盲検下でもとりあえず当該副作用の発現に関する第一報をキーを開けることができない理由と共に提出していただきたい。

その後,開鍵してより詳細な情報が得られれば,追加報告をしていただければよいと考える。

Q8.別添「報告者」は治験担当医師と理解してよろしいのか。

通常,報告者は治験担当医師になると思われる。

Q9.治験担当医師用治験薬概要に記載すべき安全性情報を定めていただきたい。

現在,ICH E6 GCP グループにおいて治験担当医師用治験薬概要の作成方法に関する検討を行っているところである。そこでの結論を待って治験薬概要の作成に関するガイドラインを示す予定である。

基本的には,先行する臨床試験及び海外での臨床試験結果から得られている安全性情報,並びに動物試験から予測される安全性に関する情報を既述するとともに,新たに得られた情報を盛り込み,適切な頻度で改訂をしていくことが必要である。

Q10.ハーモナイズされた報告用紙の作成を望みます。

報告用紙の様式を定めることでより迅速で確実な報告が行えるようになり,また各極で情報の統一化が図れると思われる。なるべく早い時期に報告様式を定めたいと考えているが,当面は,GCP マニュアル別紙4を参考にされたい。

参照

https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0024.html

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