外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針
Table of Contents
用語集
適切な対照を置き、よく管理された試験(Adequate and Well-Controlled Trial)
適切な対照を置き、よく管理された試験は、以下の特徴を備えている。
- 治療効果を定量的に評価するために対照群と妥当な比較を行い得るデザインであること。
- 治療グループへの患者の割付け並びに治療への反応の測定及び評価がバイアスを最小限にする方法を用いてなされていること。
- 試験結果の分析法が治療効果を評価する上でデザインに照らして適切であること。
ブリッジングデータパッケージ(Bridging Data Package)
新地域を代表する住民集団に関する情報として完全な臨床データパッケージから選択されたデータ(薬物動態データ、予備的な薬力学及び用量反応データを含む)並びに必要な場合には、外国の安全性及び有効性データを新地域の住民集団へ外挿することを可能にする新地域で実施されたブリッジング試験で得られた補完的なデータ。
ブリッジング試験 (Bridging Study)
外国臨床データを新地域に外挿するために新地域で実施される補完的な試験。新地域におけ
る有効性、安全性及び用法・用量に関する臨床データ又は薬力学的データを得るために実施
される。このような試験が薬物動態に関する付加的な情報を含むことがある。
完全な臨床データパッケージ(Complete Clinical Data Package)
承認申請に用いられる臨床データパッケージで、新地域の規制要件を満たし、かつ新地域を代表する住民集団における薬物動態データを含んでいるもの。
民族的要因の影響を受けにくい化合物(Compounds Insensitive to Ethnic Factors)
その性質上、民族的要因が安全性、有効性又は用量反応に対して臨床的に重要な影響を与える可能性が少ない化合物。
民族的要因の影響を受けやすい化合物(Compounds Sensitive to Ethnic Factors)
薬物動態的、薬力学的又はその他の性質上、内因性・外因性民族的要因が安全性、有効性又は用量反応に対して臨床的に重要な影響を与える可能性がある化合物。
用量(Dosage)
一投与当り又は一日当りに与えられる医薬品の量。
用法(Dose Regimen)
一定期間にわたり投与される医薬品の投与経路、頻度及び期間。
民族的要因(Ethnic Factors)
民族性(ethnicity)という語は、国家又は人々を意味する“エスノス(ethnos)”というギリシア語に由来している。民族的要因は、共通の特性や習慣に基づきグループ分けされる人種又は大きな住民集団に関係する要因である。民族性は、遺伝的のみならず文化的な意味合いも有するので、この定義は人種的(racial)のそれよりも広い意味となっていることに留意されたい。民族的要因は内因性又は外因性のどちらかに分類されよう(補遺A)。
外因性民族的要因(Extrinsic Ethnic Factors)
外因性民族的要因とは、個人が住んでいる環境や文化に関連した要因である。外因性要因は遺伝よりも文化及び行動様式によってより強く決定される傾向がある。外因性要因には、地域の社会的及び文化的な側面に関係するものが含まれる。例えば医療習慣、食事、喫煙、飲酒、環境汚染や日光への暴露、社会経済的地位、処方された薬の服用遵守、並びに異なる地域の臨床試験の信頼性にとって特に重要なものとして、臨床試験の計画及び実施方法が挙げられる。
内因性民族的要因(Intrinsic Ethnic Factors)
内因性民族的要因は、住民集団のサブグループを定義、同定する際に有用で、地域間の臨床データの外挿可能性に影響を与え得る要因である。内因性要因の例としては、遺伝多型、年齢、性、身長、体重、除脂肪体重、身体の構成及び臓器機能不全が含まれる。
外国臨床データの外挿(Extrapolation of Foreign Clinical Data)
外国地域の住民集団で得られた安全性、有効性及び用量反応に関するデータを新地域の住民集団に対して一般化し適用すること。
外国臨床データ(Foreign Clinical Data)
新地域の外(すなわち外国地域)で得られた臨床データ。
ICH 地域(ICH Regions)
ヨーロッパ連合、日本及びアメリカ合衆国。
新地域(New Region)
新医薬品の承認申請が行われる地域。
新地域を代表する住民集団(Population Representative of the New Region)
新地域内の主要な人種集団を含む住民集団。
薬物動態試験(Pharmacokinetic Study)
薬物がどのように生体内で処理されるのかを明らかにする試験で、通常、血液中(場合によっては尿中又は組織中)の薬物及びその代謝物の濃度の経時的な測定を伴う。薬物動態試験により血液中又は他の適切な部位における薬物の吸収、分布、代謝及び排泄を特徴づけられる。薬力学的試験の手法と組み合わせることにより(PK/PD試験)、血中濃度と薬力学的作用の程度及び発現の時間との関係が特徴づけられる。
薬力学試験(Pharmacodynamic Study)
個体に対する薬物の薬理学的又は臨床的効果についての試験で、用量や薬物濃度と効果との関連を調べることを目的とする。薬力学的効果としては、有害作用となり得る作用(三環系薬剤の抗コリン作用)、臨床上の利益に関係すると考えられる作用の測定値(β遮断についての種々の測定値、ECGインターバルに及ぼす効果、ACE阻害すなわちアンギオテンシンⅠからⅡへの反応阻害)、短期間で発現する意図された効果(血圧やコレステロール値等のサロゲートエンドポイントが、しばしば採用される)、又は最終的に意図した臨床上の利益(疼痛、抑うつ、突然死に対する効果)などが採用され得る。
ポピュレーションファーマコキネティクス法(Population Pharmacokinetic Methods)
臨床試験に参加した全て又は特定の一部分の患者から、通常、一患者当り定常状態で2又は3回血中薬物濃度を測定し、これを集団に基づいて評価する方法。
治療量域(Therapeutic Dose Range)
最小の有効用量と更なる利益を与え得る最大の用量との間の範囲。