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ICH-E7 「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)

Q1 なぜ、臨床データに高齢患者を適切に含める必要があるのか。

A1

高齢患者では、薬物療法時の薬剤に対する反応が、様々な点で非高齢患者と異なる可能性があり、特に 75 歳以上の高齢患者で顕在化しやすくなる。

  1. 高齢患者においては、医薬品の薬物動態及び薬力学に影響するような、加齢に伴う生理学的変化が生じているため、この加齢に伴う変化が薬剤反応及び用量-反応関係に影響を及ぼすことがある。
  2. 高齢患者は、しばしば合併症を有し、併用療法を受けていることが多く、これらの合併症や併用療法が治験薬と互いに影響を及ぼし、有害事象が発現しやすくなる傾向がある。高齢患者でみられる有害事象は、非高齢患者に比べ、より症状が悪化したり、又は忍容されなかったりする場合があり、また、より重篤な結果へとつながる可能性もある。

1993 年に ICH E7 ガイドライン「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン(平成 5 年 12 月 2 日付薬新薬第 104 号)」が通知されて以来、高齢患者(75 歳以上の高齢患者を含む)の規模が増大し、近年の薬物動態学及び薬力学の進歩を鑑みると、医薬品評価を行う際の高齢者のデータ(高齢患者集団の年齢範囲全般を含む)の重要性はより増してきている。

高齢患者は複数の疾病を有し、複数の薬剤を処方されることが多いことから、高齢患者に生じ得る薬物動態、薬力学、薬物-疾患間相互作用、薬物-薬物間相互作用及び臨床的な反応の相違について、非高齢者集団から、すべて予測できるとは限らない。従って、高齢患者に使用される医薬品のベネフィット/リスクバランスを評価するために高齢患者を臨床試験に適切に組み入れる必要がある。

Q2 臨床データに含めるべき高齢患者を適切に見積もる際の留意点は、何か。

A2

臨床開発計画に組み入れられる被験者集団が開発対象の患者集団を適切に反映していることを可能な限り担保することが非常に重要である。現行の ICH E7ガイドライン「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン(平成 5 年 12 月 2 日付薬新薬第 104 号)」に記載されているように、申請者は、開発対象疾患における年齢分布の予測、又は同じ位置付けの医薬品若しくは同じ適応を有する他の医薬品における使用状況の年齢分布に係る調査結果を提出する必要がある。これにより当該開発薬剤の使用が想定される年齢分布が示され、製造販売承認申請(承認事項一部変更承認申請を含む)の際に含めるべき高齢患者数も変わるはずである。

現行の ICH E7 ガイドライン「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン(平成 5 年 12 月 2 日付薬新薬第 104 号)」には「高齢者においても(中略)多い疾患については、非高齢者における成績と比較して統計的に考察可能な被験者数であることが望ましい。一般には(中略)高齢者計 100 例程度の成績が必要である」と記載されている。高齢患者の割合の増加及び併用療法や合併症のような高齢患者集団の構成の複雑化を考慮すれば、一般には第Ⅱ相試験及び第Ⅲ相試験を通して 100 例を超える高齢患者を含み、そして、高齢患者集団の年齢範囲全般を含むことが適切である。

製造販売承認申請(承認事項一部変更承認申請を含む)の資料においては、高齢患者集団と非高齢患者集団を比較し、治療効果及び安全性プロファイルの異同について評価するために、得られた症例数に基づき、種々の年齢層により層別した解析結果(例えば、65 歳未満、65-74 歳、75-84 歳、85 歳以上)を提示する必要がある。

単一の臨床試験では、そのような解析を行うのに十分な高齢患者数が得られないかもしれないが、このような場合には、しばしば、実施した各試験のデータを統合したデータを用いる必要がある。統合するデータの解析においては常に、各試験間の異同について考慮する必要がある。

Q3 臨床開発計画の立案に際し、特に留意すべき患者集団又は患者集団の特徴はあるのか。

A3

高齢患者は、しばしば合併症を有し、併用療法を受けていることが多く、これらの合併症や併用療法が治験薬と互いに影響を及ぼし、望ましくない効果や相互作用を生じる可能性がある。従って、このような高齢患者における医薬品の安全性及び有効性を評価することは重要であり、このような高齢患者の組み入れが可能となるように臨床試験の選択・除外基準を設定することが重要である。有害事象を生じる可能性が高い脆弱な高齢患者(いわゆる「“frail” geriatric patients(精神的・身体的に脆弱あるいは社会的に養護又は介護の状態にある高齢患者か、若しくはそれらのリスクが高い高齢患者)」)を臨床試験に含めることにためらいがあるかも知れない。しかしながら、無作為化を慎重に行うことにより、認められた事象が、治験薬又は他の因子のどちらに起因するものであるのかを判別することが可能になるだろう。

このことは、高齢患者を対象とする医薬品だけでなく、高齢患者においても非高齢患者においてもみられる疾病に用いられる医薬品に対しても適用される。

Q4 製造販売承認申請(承認事項一部変更承認申請を含む)の際に、医薬品の有効性及び安全性を適切に提示するために、臨床開発計画においてどのような点に留意すべきか。

A4

高齢者集団における有効性及び安全性について適切に評価し、また、高齢者集団と非高齢者集団との比較検討が可能となるように、高齢者集団(併用療法を受けている患者及び合併症を有している患者を含む)を適切に臨床開発計画に組み入れるべきである。通常、このような情報は、製造販売承認申請(承認事項一部変更承認申請を含む)の資料で提示されることが求められる。

一般的には、年齢による相違について検討しやすくするには、同一試験に高齢患者及び非高齢患者の両方を含めることが望ましいが、高齢者集団単独の試験が適切な場合もあるかもしれない。

承認前の臨床開発計画時に、申請者は併用療法及び合併症を有するような高齢患者を含めるために、あらゆる努力を行う必要がある。場合により、このような患者の組み入れが困難で、製造販売後にデータを収集せざるを得ないこともあり得る。しかし、このような患者のデータの適切性及び必要性については医薬品の開発段階から検討すべきであり、承認審査においても議論する必要がある。申請者があらゆる努力を行ったにも関わらず、高齢患者の組み入れが不十分である場合は、製造販売後にデータを収集するための具体的な計画を開発段階で議論し、また、製造販売承認申請(承認事項一部変更承認申請を含む)の資料中で提示する必要がある。

高齢患者集団に係る情報(あらゆる使用制限を含む)は、添付文書に反映される必要がある。

Q5 臨床試験の立案の際に、高齢者集団において、注目すべき事項はあるのか。

A5

医薬品の作用機序、疾患の特性の両方又はいずれか一方にもよるが、例えば、認知機能、バランス能力及び転倒、尿失禁又は尿閉、体重減少、筋肉量の減少への影響など、その高齢者集団に特有の有害事象の検討及び年齢に関連する有効性評価項目の検討を積極的に行う必要がある。このことから、例えば、認知機能検査のような特別な検査が必要となる場合もある。また、申請者は、疾患ガイドラインにおいて高齢患者での有効性及び安全性評価に関連する具体的な推奨事項がある場合は、これも併せて参照する必要がある。

Q6 ICH E7 ガイドライン「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン(平成 5 年 12 月 2 日付薬新薬第 104 号)」が通知されてからの薬物動態学及び薬物相互作用の評価における最近の進展を踏まえると、高齢患者に使用される医薬品を開発する際にどのような試験を検討する必要があるのか。

A6

腎機能低下や体重変化などの、他の要因では説明できない加齢による影響を明らかにするために、高齢患者(高齢患者集団の年齢範囲全般を含む)における薬物動態を評価する必要がある。腎/肝機能低下の影響及び薬物相互作用の可能性については、多くの場合、非高齢者の被験者を対象とした試験で検討される。

様々な年齢層(65 歳以上及び 75 歳以上の患者を含む)から十分な症例数を組み入れた臨床試験であれば、母集団薬物動態解析により、目的とするデータが得られるであろう。母集団薬物動態解析を適用できるか否かは、開発対象の患者集団を適切に反映しているか、当該医薬品の薬物動態特性、用法・用量及び解析の必要条件といった様々な要因に依存する。

同一試験の中で高齢者と非高齢者の薬物動態を比較する試験(例えば、体重、性別など適切な共変量によりマッチングした試験)によっても、同様の目的を達成することができるであろう。

薬物動態学的な検討(母集団薬物動態解析、個々の薬物動態試験の適切な試験デザイン)や薬物相互作用の検討の詳細については規制当局と相談することが可能である。

参照

ICH-E7 臨床試験

E7 Studies in Support of Special Populations: Geriatrics Questions & Answers

https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0029.html

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