感染症学 疫学

【感染症と疫学】ウイルスって何者?

ウイルスって何だろう?

ウイルス。それは風邪の原因でもあり、インフルエンザの原因でもあり、新型コロナウイルスのように社会を混乱させている原因でもあります。

ウイルスは私たちの日常生活や、実際には地球上のほぼすべての生物の存在と大きく関係していると言ってもいいでしょう。

目に見えないほど小さいこの存在は、地球上のいたるところに存在しています。

そしてその存在は、シンプルなのに驚くほど複雑な存在という矛盾をはらんでいるともいえるでしょう。

ウイルスと、それ以外の生物がどのように関係しあっているのかを理解したいですか?

そのためには、ウイルスの構造や、ウイルスがどうやって複製されていくか、ウイルスが引き起こす様々な疾患についての知識をつけていく必要があります。

ウイルス学という学問があるくらいですから、一朝一夕で身に付くものではありません。一生かけてもその深遠なる世界のごく一部を知ることしかできないかもしれません。

とはいえ、ウイルスという言葉は、新型コロナウイルス騒動をきっかけに、改めて全世界からの注目を集めることになりました。

ここ最近では、サル痘ウイルスも耳目を集めていますね。子宮頸がんリスクを高めるとされるヒトパピローマウイルスも改めて注目を集めました。

細菌感染症もありますが、ウイルス感染症もまた、細菌とは違う角度と影響力で社会に働きかけてきます。

私たちの生活に影響を及ぼし、変革あるいは破壊をもたらしかねないウイルスですが、人類総動員して初めて根絶できるかもしれない、というのが実情です。

つまり、大抵の場合は現れたウイルスにどうやって付き合っていくか(いかに感染しないか、感染した場合に重症化をどうやって防ぐか)を考えるのが堅実です。

決して「ウイルスなんてあるはずがない」「専門家たちの妄想だ」などと、現実に起きている物事に目を背けて妄想や空想の世界に逃げるのは得策ではありません。できればやめましょう。

と、お節介焼きはほどほどに、ウイルスについて学んでいきましょう。

まずは「ウイルスって生きてるの?」です。

ウイルスって生きてるの?

そもそも「生命」とは何か

そもそも「生命」とは何でしょうか?

いきなり哲学的命題を投げかけられると抽象的な答えが返ってきそうですが、幸いにも「生物学(biology)」という学問が存在しており、明確な定義があります。

生命に求められる条件は次のとおりです。

  1. 外界と膜で仕切られている。
  2. 物質やエネルギーの流れ(代謝)を行う。
  3. 自分の複製を作る。

もう少し噛み砕いて表現するなら「自分という存在を維持し続ける」そして「自分、または同等の存在を複製する」のが生命、生き物です。

誰だって死にたくないですし、明日も元気に生きていたいですよね?そのために食事をし、睡眠を取るわけです。

植物なら、水分と栄養の豊富な場所に根を張り、太陽が照る日には大きく葉っぱを広げて日光からエネルギーを得るわけです。

ウイルスはどうでしょうか。ウイルスの増殖、なんて言葉もあるくらいなので、「自らの複製を作る」ことくらいは当たり前のようにやっていそうですが…

実は、この「生命の定義」に基づくと、ウイルスは生命とはみなされない、と一般的に言われています。

言い換えるなら、ウイルスは生き物ではない、ウイルスは生きていない、ということです。

なぜか。

ウイルスは細胞構造を持たないから、ウイルスは代謝を行わないから、ウイルスは単独では自己増殖できないから、という主張を目にすることがあります。

とはいえ、生物と非生物の境界線はそんなに明確なものではないのかもしれないんですね。

外界と膜で仕切られている

ウイルスの中には、「エンベロープ」という膜を持つものがあります。

新型コロナウイルスもエンベロープを有するウイルスの1つです。

アルコール消毒が推奨されているのは、アルコールによってエンベロープを破壊できるからなんですね。

この点についていえば、「新型コロナウイルスは、外界と膜(エンベロープ)で区切られている」ということになり、生命の要件の1つを満たすことになります。

物質やエネルギーの流れ(代謝)を行う

「代謝」は、ウイルスが生物ではない根拠として使われることがあります。

代謝とは「ブドウ糖を酸化してエネルギーを取り出す」というような、生命活動を維持するための一連の化学反応のことです。

人間がご飯を食べて生命活動に必要なエネルギーを取り出すようなものですね。

ところが、ウイルスは単体ではただのたんぱく質と核酸の塊であり、何も化学反応は起きません。

はたから見たら、単なる物質・結晶のような、ご飯を食べない「ちり」のような存在とも言えるかもしれませんね。

自分の複製を作る

実は、クラミジア菌という細菌は、エネルギーを産生するための酵素を持たないために、単独では増殖することができません。

クラミジア菌という細菌が増殖できるのは、他の細胞に寄生しているときだけです。そういう観点では、ウイルスと似ています。

「自分ひとりでは(代謝や)自己増殖ができない」という理由でウイルスを非生物とみなすのであれば、クラミジアも非生物とみなした方がよいかもしれませんね。

ところがそうはみなされていないのが実情です。生物と非生物の違いは、そんな簡単に白黒つけられるものではなさそうです。

ウイルスとは何か

ウイルスは生命なのか?生命とは何か?という問いかけは、頭を悩ませてしまい、より差し迫った問いに答えられないかもしれません。

そのため、いったんは「ウイルスとは何か?」に焦点を当てた方が良いかもしれません。

ということで、ウイルスとは何なんでしょうか。

いまのところ、「ウイルスとは、適切な代謝を受けず、病原性を示す可能性のある偏性細胞内寄生体である」という表現が端的でわかりやすい表現かもしれません。

少し表現を変えるなら「ウイルスとは、細胞内寄生体であり、宿主を利用して核酸を複製し、核酸の指示に従ってタンパク質を合成するもの」です。

この続きはまた別の機会に考えてみましょう。奥が深い世界です。気長にいきましょう。

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