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ICH-E9 臨床試験のための統計的原則 VI. 安全性及び忍容性評価

VI. 安全性及び忍容性評価

6.1 評価の範囲

すべての臨床試験において、安全性及び忍容性(用語集参照)の評価は重要な要素である。初期の相では、この評価の大部分は探索的な性質のものであり、敏感にとらえられるのは明らかな毒性の出現のみである。しかし、後期の相では、被験薬の安全性及び忍容性のプロファイルを、より多くの被験者により十分に特徴づけて確立することができる。後期の比較試験は、一般にこの点での検出力を欠いているとしても、新たな潜在的有害作用のすべてを偏りなく探索するための重要な手段を提供するものである。

ある種の試験は、他の医薬品又は被験薬の別な用量と比較して、安全性及び忍容性に関する優越性又は同等性についての具体的な主張のために計画される場合がある。このような承認に関わる具体的な主張は、対応する有効性の主張に対し要求されるのと同様に、検証的試験による適切な証拠によって確認されるべきである。

6.2 変数の選択とデータ収集

どのような臨床試験でも、医薬品の安全性及び忍容性を評価するために選ばれる方法と測定値は、多くの要因に依存する。その要因には、関連医薬品の有害作用についての知識、非臨床試験及び初期の臨床試験からの情報、個々の医薬品の薬力学的/薬物動態的特質から起こると考えられる結果、使用方法、研究対象となる被験者の特徴並びに試験の期間といったものがある。臨床化学と血液学に関する臨床検査値、バイタルサイン及び臨床的有害事象(疾患、徴候及び症状)は、通常、安全性及び忍容性データの主要部を形成する。重篤な有害事象の発生及び有害事象による試験治療の中断については、登録することが特に重要である(ICH E2A と E3 参照)。

更に、異なる臨床試験からのデータを結びつけることを容易にするために、試験プログラム全体を通して一貫したデータ収集及び評価の方法論を用いることが薦められる。共通の有害事象の辞書の使用は特に重要である。有害事象の辞書は、器官分類、基本語又は慣用語(用語集参照)という、三つの異なる水準で有害事象データを要約できるように構成されている。有害事象を要約する通常の水準は基本語であり、同一の器官分類に属している基本語は、データの記述的提示の際にまとめることができる(ICH M1 参照)。

6.3 評価される被験者集団とデータの提示

全体的な安全性及び忍容性を評価するのに用いられる被験者集団は、通常被験薬を少なくとも一回服用した被験者の集団である。安全性及び忍容性の変数は、これらの被験者から可能な限り包括的に有害事象の種類、重症度及び発現時と持続期間を含めて収集されるべきである(ICH E2B 参照)。女性、高齢者(ICH E7 参照)、重症者、又は共通の併用治療を受けた被験者といった特定の属性別集団については、恐らく更なる安全性及び忍容性評価が必要となるであろう。これらの評価では、より個別の問題に答えることが必要であろう(ICH E3 参照)。

評価の際には、すべての安全性及び忍容性変数に注意を払う必要があるため、広範な方法を治験実施計画書に示すべきである。試験治療と関係していると考えられるか否かにかかわらず、すべての有害事象を報告すべきである。評価の際には、研究対象集団の利用できるデータのすべてを用いるべきである。測定単位と臨床検査変数の参照範囲は注意深く定義すべきである。もし異なる単位又は異なる参照範囲を同一の試験で用いるのであれば(例えば、二つ以上の検査機関が入っている場合)、統一的な評価を可能にするために測定値を適切に標準化すべきである。毒性評価尺度の使用については、事前に定め、正当化しておくべきである。

ある有害事象の発現は、通常有害事象を経験した被験者数とその有害事象を発現する可能性のある被験者数との関係を示す割合の形で表現される。しかし、発現の評価の仕方はいつも自明というわけではない。例えば状況に応じて、試験治療が使用された被験者数、又は使用の程度(人年)を分母とすることが考えられる。計算の目的がリスクの推定であるか、試験治療グループ間での比較であるかにかかわらず、その定義を治験実施計画書に示すことは重要である。この定義は、試験治療が長期にわたることが予定され、かなりの割合で試験治療の中止又は死亡が起こると予想される場合、特に重要である。そのような状況では、生存解析の方法を考慮すべきであり、過小評価を避けるために累積有害事象発現率を計算すべきである。

徴候や症状に相当の背景ノイズが存在する状況では(例えば、精神科での試験)、異なる有害事象に対するリスクの推定に背景ノイズを考慮する方法を考えるべきである。そのような方法の一つは、「試験治療下での発現」(用語集参照)という概念を用いることである。「試験治療下での発現」では試験治療前の基準となる発現状況と比べて、新たに発現又は悪化した有害事象のみを記録する。

軽度の有害事象は無視する、又は分子に加えるための基準として、繰り返しの来院で事象が観察し続けられることを要求するような背景ノイズの効果を減らすための別の方法もまた適切な場合がある。そのような方法は治験実施計画書に正当性を説明しておくべきである。

6.4 統計的評価

安全性及び忍容性の研究は多次元的な問題である。どのような被験薬についても、何らかの特定の有害作用は通常予測でき特定してモニターできるが、起こりうる有害作用の幅はたいへん広く、新しく、予想もされない作用が常に生じうる。更に、禁止薬の使用のような治験実施計画書違反の後で発生した有害事象は恐らく偏りの原因となるであろう。このような背景があることが、被験薬の安全性及び忍容性の解析的評価が統計的に困難となる原因となり、検証的試験から結論を確定するような情報を得ることをむしろ例外としている。

ほとんどの試験で、安全性及び忍容性関連事項を扱うには、記述統計の手法でデータを整理し、信頼区間が解釈の助けとなる場合にはその計算を加えることが最善である。試験治療グループ内と被験者個人内両方で有害事象のパターンが示されるようなグラフ表示を利用することもまた有益である。

p値の計算は、関心のある特定の差を評価する補助として、又は多数の安全性及び忍容性変数に対して注目するだけの価値のある差を際立たせるための目印として、有用な場合がある。これは検査データに特に有用であり、この方法以外で検査データを適切に要約することは難しい。検査データには、例えば試験治療ごとの平均の評価のような定量的な解析と、ある閾値を超える又は下回る数を数える定性的な解析の両方を行うことが薦められる。

仮説検定を用いる場合、第一種の過誤を勘案して多重性を統計的に調整することは適切ではあるが、通常は第二種の過誤により注意を払うべきである。多重性の調整を行っていない場合、統計的に有意となった結果の解釈には注意すべきである。

大多数の試験で、治験責任医師たちは、実対照薬又はプラセボに比べて安全性及び忍容性に関して臨床的に許容できない差はないことを立証しようとしている。有効性に関する非劣性又は同等性評価の場合と同様に、この状況では仮説検定よりも信頼区間を使用することが望ましい。信頼区間を用いると、生起数が少ないことが原因となってみられることの多い、はなはだしい精度の低さを明確に示すことができる。

6.5 統合した要約

被験薬の安全性及び忍容性に関する特質は、一般に被験薬を開発する過程で逐次的に、複数の試験を通して要約され、特に承認申請時には必ず要約されるものである。しかし、この要約の有用性は高い質のデータを伴い適切に計画・実施された個々の比較試験に依存する。

被験薬の全体的な有用性は、常にリスクと利益のバランスの問題であり、リスクと利益の評価は通常全臨床試験プログラムを要約して行われるものであるが、単一の試験でも、有用性が見込まれるかについて検討することは可能である(7.2.2節参照)。

安全性及び忍容性に関連する報告の要求事項についての詳細は、ICH E3 12章を参照すること。

参照

https://www.pmda.go.jp/files/000156112.pdf

医薬審 第1047号 平成10年11月30日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

厚生省医薬安全局審査管理課長

「臨床試験のための統計的原則」について

近年、優れた新医薬品の地球的規模での研究開発の促進と患者への迅速な提供を図るため、承認審査資料の国際的ハーモナイゼーション推進の必要性が指摘されている。このような要請に応えるため、日・米・EU三極医薬品規制調和国際会議(ICH)が組織され、品質、安全性及び有効性の3分野でハーモナイゼーションの促進を図るための活動が行われている。

別添の「臨床試験のための統計的原則」(以下「本ガイドライン」という。)は、ICHにおける合意に基づき、臨床試験における統計的原則について記載したものであり、臨床試験から得られる結果の偏りを最小にし、精度を最大にすることを目標としている。特に、計画段階から試験統計家が参加すること、治験実施計画書の作成に当たっては解析方法等について妥当性も含め事前明記すること等が強調されており、多施設共同試験における施設の捉え方及び施設当たりの症例数の設定に関する考え方、総合評価変数を用いる際の留意点等についても記載されている。また、検証的位置づけの試験を行う際の有意水準(第一種の過誤)については従来明確にされていなかったが、規制上の観点から、本ガイドラインの施行に伴い、原則として片側仮説を検証する場合は2.5%、両側仮説の場合は5%とすることとした。これらについては、ガイドラインの該当個所及び関係する質疑応答を参照されたい。

本ガイドラインは、本通知の日以降施行し、これに伴い、「臨床試験の統計解析に関するガイドライン(平成4年3月4日薬新薬第20号)」(以下「旧ガイドライン」という。)は廃止する。ただし、治験実施計画書の作成にかかる事項については、既に治験実施計画書が作成され、実施されている臨床試験もあることから、このような場合に配慮し、臨床試験の実施に先立って治験実施計画書が確定される日が平成10年12月31日以前の場合は、被験者数の決定方法も含め旧ガイドラインを参考とした事項があっても差し支えないが、そのような場合であっても、治験実施計画書の改訂又は統計解析計画書の作成を含め、本ガイドラインの趣旨に添って適切と考えられる事項については可能な限り適用することとされたい。

以上の点を御了知の上、貴管下関係者に対し周知方ご配慮願いたい。

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