デジタルヘルス

医療DX最前線:「健康・医療・介護情報利活用検討会」の議論を徹底解説

2025年6月15日

日本の医療が、今、大きな変化の時を迎えていることをご存じでしょうか? 私たちが病院や薬局で受け取る医療サービスが、もっと安全に、もっと便利に、そしてもっと質の高いものになるための「医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という大きな波が押し寄せています。

その中心で、私たちの医療の未来を形作るための熱い議論が交わされている会議があります。それが「健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ」です。

なんだか難しそうな名前ですよね。でも、この会議で話し合われていることは、私たちの生活に直結するとても大切なことばかり。例えば、「救急車で運ばれたとき、意識がなくても自分の病歴やアレルギー情報がお医者さんに伝わったら…」「複数の病院にかかっていても、薬の重複や危険な飲み合わせを自動でチェックしてくれたら…」そんな未来を実現するための、いわば「医療の設計図」を描いている場所なのです。

この記事では、これまで積み重ねられてきたこのワーキンググループの議論の軌跡を、皆さんと一緒にたどってみたいと思います。専門家たちがどんな課題に悩み、どんな未来を描こうとしているのか。少し長い旅になりますが、わかりやすい言葉でご案内しますので、ぜひ最後までお付き合いください。私たちの医療の未来を、一緒に覗いてみませんか?

あなたの医療情報、どう変わる?~全国で医療情報を確認できる仕組み~

皆さんの「お財布」や「スマホ」の中に、マイナンバーカードは入っていますか? このカードが、これからの医療の「鍵」になります。

マイナンバーカードが「第2の保険証」に

このワーキンググループの議論の出発点の一つが、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「オンライン資格確認」の仕組みでした。すでに多くの医療機関や薬局で、顔認証付きのカードリーダーにマイナンバーカードをかざす光景が見られるようになりましたよね。

これが導入されたことで、単に保険証として使えるだけでなく、皆さんの許可があれば、医師や薬剤師があなたの「薬剤情報」や「特定健診情報」を確認できるようになったのです。

「あれ、この患者さんは3カ月前にA病院でこんな薬をもらっているな」「Bクリニックでの健診結果を見ると、血糖値が少し高めだから、今回の治療ではその点も考慮しよう」

こんな風に、過去の情報を正確に把握できることで、より安全で質の高い医療が提供できるようになります。また、私たち自身も「マイナポータル」というオンラインサービスを使えば、いつでもどこでも自分のスマホやパソコンから、これらの情報を確認できるようになったのです。これは、自分の健康状態を主体的に管理していく上で、とても大きな一歩と言えるでしょう。

議論の初期には、「薬局でも特定健診の情報を見るべきか?」といった具体的なテーマも話し合われました。薬剤師が患者さんの体の状態をより深く理解し、適切な服薬指導を行うためには、健診情報も重要だという意見が出され、最終的には薬局でも閲覧できる方向で進むことになりました。このように、様々な職種が連携して一人の患者を支える体制づくりが目指されています。

「何を、どこまで共有するか」世紀の大論争

さて、情報が共有できるとなると、次に大きなテーマとなるのが「どの情報を、どこまで共有するのか」という問題です。これは非常にデリケートな問題で、ワーキンググループでも多くの時間が割かれ、白熱した議論が交わされました。

特に大きな論点となったのが「傷病名(病名)」の共有です。

皆さんが病院にかかると、医師は診断を下し、電子カルテや診療報酬を請求するためのレセプト(診療報酬明細書)に病名を記録します。この情報を共有すれば、他の病院の医師も「この患者さんは、こういう病気の治療歴があるんだな」と一目でわかります。これは非常に有益です。

しかし、ここには大きな壁がありました。レセプトに記載される病名には、確定診断だけでなく、「〇〇の疑い」といった「疑い病名」も含まれることがあります。もし患者さん自身がマイナポータルで自分の病名リストを見て、そこに身に覚えのない「疑い病名」が書かれていたらどうでしょう?「こんな病気だったなんて聞いていない!」と、医師への不信感につながったり、不必要な不安を抱えてしまったりするかもしれません。

また、がんや精神疾患、感染症など、非常にプライベートで慎重な扱いが求められる病名の共有についても、多くの構成員から懸念の声が上がりました。

この難しい課題に対し、ワーキンググループでは丁寧な議論が重ねられました。

「全ての病名を一律に共有するのはリスクが高い」

「では、患者さんに告知済みの病名に限定してはどうか?」

「告知したかどうかを、どうやってシステムで判断する?」

こうした議論を経て、まずは「医師が患者さんに伝えた」ということを前提に情報を共有する方向性が探られることになりました。さらに、医師がシステム上で「この病名はまだ告知していない(未告知フラグ)」「この病名は特に重要なので長期間記録を残す(長期保存フラグ)」「この疑い病名は確定診断が出たのでもう共有しなくてよい(未提供フラグ)」といった、きめ細やかな設定ができる仕組みも検討されています。患者さんの「知る権利」と、医療現場の判断、そして患者さんの「不安にならない権利」のバランスを取るための、非常に重要な仕組みづくりが進められているのです。

いざという時のために!救急・災害時の情報共有

この情報共有の仕組みが最も真価を発揮するのが、救急や災害時といった、まさに「いざという時」です。

もしあなたが旅先で倒れ、意識不明の状態で救急搬送されたとします。お医者さんや救急隊員は、あなたが誰で、どんな持病があり、どんな薬を飲んでいて、何にアレルギーがあるのか、全くわかりません。これでは、迅速で的確な治療を行うのは非常に困難です。

そこで、この新しい仕組みでは、たとえ本人の同意が取れなくても、命を救うために必要だと判断されれば、医師らがあなたの医療情報を閲覧できるようになります。

「マイナンバーカードを持っていなかったらどうするの?」

ご安心ください。マイナンバーカードがなくても、「氏名」「生年月日」「性別」「住所」の4つの情報がわかれば、あなたの情報を探し出すことが可能です。令和6年の能登半島地震では、実際にこの仕組みが活用され、マイナンバーカードを持たずに避難された方々の医療に大きく貢献したと報告されています。

もちろん、誰でも勝手に見られるわけではありません。閲覧できるのは救急医療に携わる資格を持った人に限定され、いつ、誰が、誰の情報を閲覧したかという記録(ログ)が厳格に管理される仕組みになっています。

さらに、緊急時に素早く患者さんの状態を把握できるよう、重要な情報を抜き出して1枚にまとめた「救急用サマリー」を作成する検討も進められています。アレルギー情報、直近の手術歴、服用中の薬…。これらの情報が瞬時にわかれば、救える命が格段に増えるはずです。

また、救急車の中でいち早く情報を把握できるよう、消防庁とのシステム連携も重要なテーマとして議論されています。まさに、社会全体で命を守るネットワークが構築されようとしているのです。

処方箋がデジタルに!「電子処方箋」がもたらす変化

病院で診察を受けた後、薬局に持って行く紙の処方箋。これも、まもなく大きな変化を迎えます。それが「電子処方箋」です。

なぜ今、「電子処方箋」なのか?

紙の処方箋には、いくつかの課題がありました。紛失してしまったり、複数の病院から同じような薬が出ていて重複に気づかなかったり、あるいは、ある薬と別の薬の飲み合わせが悪くても、薬局の薬剤師さんがその情報を持っていなければチェックできなかったり…。

電子処方箋は、これらの課題を解決するために生まれました。

医師が処方した内容が、国の安全なサーバーにデジタルデータとして登録されます。そして、あなたが薬局に行き、マイナンバーカードを提示すると、薬剤師さんがそのサーバーからあなたの処方データを呼び出して調剤する、という仕組みです。

これにより、以下のような大きなメリットが生まれます。

  • 重複投薬や危険な飲み合わせの防止:全国のどの医療機関でどんな薬が処方されたかがリアルタイムで共有されるため、システムが自動でチェックし、医師や薬剤師に警告を出してくれます。
  • 医療の質の向上:過去の薬の履歴が正確にわかるため、より患者さん一人ひとりに合った薬の選択が可能になります。
  • 負担の軽減:患者さんは紙の処方箋を持ち歩く必要がなくなり、医療機関や薬局も紙の管理から解放され、業務が効率化されます。

実現に向けた熱い議論の数々

この便利な電子処方箋を実現するため、ワーキンググループでは様々な論点が話し合われました。

まず、全国どこでも同じように使える「全国統一システム」であるべきだ、という点で意見が一致しました。地域ごとにバラバラの仕組みでは、引っ越したり旅行したりした時に使えなくなってしまいます。

そして、最も重要なのが「リアルタイムな情報共有」です。A病院で処方が出された瞬間に、その情報がB薬局でも確認できなければ意味がありません。この即時性をどう担保するかが、大きな技術的課題でした。

さらに、処方箋という重要な情報の「セキュリティと真正性の確保」も欠かせません。なりすましや改ざんを防ぐため、HPKI(保健医療福祉分野の公開鍵基盤)という、医師や薬剤師が持つ資格を証明する電子証明書(電子署名)を活用することが基本とされました。ただ、このHPKIカードの普及や、カードを使わずに署名できる仕組み(クラウド署名など)の導入など、利便性と安全性の両立に向けた議論が今も続いています。

「院内処方」と「院外処方」をどうつなぐ?

電子処方箋の議論の中で、もう一つ大きなテーマとなったのが、「院内処方」の情報の扱いです。

電子処方箋は主に、病院の外の薬局で薬をもらう「院外処方」を対象としてスタートしました。しかし、入院中に使われる薬や、病院内の窓口で直接渡される「院内処方」の情報も、患者さんの薬の履歴全体を把握するためには非常に重要です。

では、この院内処方の情報を、どのシステムで共有すればよいのでしょうか?

ここで登場するのが、先ほどから出てきている「電子処方箋管理サービス」と、もう一つ、これから詳しくお話しする「電子カルテ情報共有サービス」という、2つの大きな国のシステムです。

  • 電子処方箋管理サービス:リアルタイムの重複投薬チェックなど、処方と調剤に特化した機能を持つ。
  • 電子カルテ情報共有サービス:病名や検査結果など、より幅広い医療情報を扱う。

この院内処方情報をどちらのサービスで扱うべきか、ワーキンググループでは機能性、開発コスト、将来性など、様々な観点から議論が交わされました。その結果、まずは重複投薬チェックなどの機能がすでに整備されている「電子処方箋管理サービス」で院内処方情報も取り扱うことを基本としつつ、将来的には「電子カルテ情報共有サービス」とも密に連携していく、という方向性が示されました。

医療情報の「標準化」~誰もが安心して使えるデータを目指して~

皆さんは、病院によって電子カルテのメーカーが違うことをご存じでしょうか? A病院の電子カルテとB病院の電子カルテでは、データの形式や使われている言葉(コード)がバラバラなのが現状です。

これでは、せっかく情報を共有しようとしても、コンピューターが正しく情報を読み取ることができません。例えるなら、片方が日本語で、もう片方が英語で話しているようなものです。これでは会話が成り立ちませんよね。

この問題を解決するのが「標準化」です。

なぜ「標準化」が必要なのか?

患者さんがA病院からB病院に移ったとき、これまでは「診療情報提供書(紹介状)」という紙の書類で情報が引き継がれてきました。しかし、そこに含まれる情報は限定的で、過去の詳細な検査データなどが失われてしまうことも少なくありませんでした。

医療情報をデジタルデータとして、どの病院でも同じように読み書きできるように「言葉をそろえる」。これが「標準化」の目的です。これにより、生涯にわたる医療情報が途切れることなくつながり、より安全で質の高い医療が実現できるのです。

世界標準「HL7 FHIR」の採用

では、どうやって言葉をそろえるのでしょうか? ワーキンググループでは、「HL7 FHIR(エフエイチアイアール、ファイアと読むことも)」という、世界的に使われている最新の医療情報交換規格を採用することが決定しました。

これは、特定の電子カルテメーカーの製品に統一するのではなく、あくまで情報の「書き方」や「送り方」のルールを統一するアプローチです。Web技術との親和性が高く、スマートフォンアプリなどとの連携もしやすいという特徴があり、今後の医療DXの広がりを支える重要な基盤となります。

何を標準化するのか?

標準化は、一足飛びには進みません。まずは、医療現場で特に重要で、やりとりの頻度も高い情報から始めることになりました。

  • 3つの文書
    1. 診療情報提供書(紹介状)
    2. 退院時サマリー(入院中の経過をまとめた報告書)
    3. 健康診断結果報告書
  • 6つの情報
    1. 傷病名
    2. アレルギー情報
    3. 感染症情報
    4. 薬剤禁忌(使ってはいけない薬)情報
    5. 検査結果
    6. 処方情報

まずは、これらの情報の標準化を進め、全国で共有できるようにします。そして将来的には、介護、看護、歯科といった、さらに幅広い分野の情報も標準化し、連携させていくことが視野に入れられています。

この標準化の中でも特に難しいのが、病名や検査、薬剤などに使われる「コード体系」の統一です。現在、様々な種類のコードが乱立しており、これをどのコードに統一していくのか、YJコード、JLACコードといった具体的なコード名を挙げながら、専門的な議論が続けられています。これは、まさに医療情報の「辞書」を作るような、地道ですが非常に重要な作業なのです。

「サイバーセキュリティ」~どうやって医療情報を守るのか~

医療DXを進める上で、避けては通れないのが「サイバーセキュリティ」の問題です。大切な個人の医療情報を、どうやって悪意ある攻撃から守るのか。これは、医療DXの信頼を支える最大の砦と言えるでしょう。

なぜ今、医療分野のセキュリティが重要なのか?

近年、国内外で医療機関を狙ったサイバー攻撃、特にデータを人質に取って身代金を要求する「ランサムウェア」による被害が深刻化しています。実際に日本の病院でも、電子カルテシステムが使えなくなり、長期間にわたって診療停止に追い込まれるという痛ましい事件が発生しました。

医療情報が漏洩することはもちろん、システムが停止して医療そのものが提供できなくなることは、患者さんの命に直結する、極めて重大な事態です。だからこそ、ワーキンググループでは、このサイバーセキュリティ対策が最重要課題の一つとして、徹底的に議論されています。

「安全管理ガイドライン」の絶え間ない進化

国は、医療機関が守るべきセキュリティのルールを定めた「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を策定しています。ワーキンググループでは、このガイドラインを時代の変化に合わせて改定していく作業も担っています。

議論のポイントは多岐にわたります。

  • 新しい技術への対応:病院のシステムも、院内にサーバーを置く「オンプレミス型」から、インターネット上のサービスを利用する「クラウド型」へと移行しつつあります。また、セキュリティの考え方も、従来の「境界防御型(城壁で守る)」から、誰も信用しないことを前提に対策を講じる「ゼロトラスト」という新しい考え方へとシフトしています。こうした最新の動向を、ガイドラインにどう反映させていくかが議論されています。
  • 具体的な脅威への対策:医療機関のシステムを外部からメンテナンスするための「リモートメンテナンス」や、外部と安全に通信するための「VPN」といった仕組みの脆弱性をどう防ぐか、具体的な対策が検討されています。
  • 経営層の責任:セキュリティ対策は、情報システム部門だけの問題ではありません。病院全体の経営課題として捉え、経営層が責任を持って取り組むことを明確化する方向で議論が進んでいます。

現場の課題と、国や業界の支援

しかし、ルールを作るだけでは、現場は変わりません。特に中小規模の病院や診療所では、専門知識を持つ人材も、対策にかける予算も限られています。

そこで、国が行った実態調査では、多くの医療機関でバックアップ体制の不備や、災害・サイバー攻撃時を想定した事業継続計画(BCP)の未策定人材不足といった課題が浮き彫りになりました。

こうした現場の課題に対し、国や業界団体も支援に乗り出しています。

  • サイバーセキュリティお助け隊サービス:経済産業省が推進する、中小企業向けの安価なセキュリティ対策サービスと医療機関との連携が模索されています。
  • 立入検査とチェックリスト:医療法に基づく立ち入り検査の項目にサイバーセキュリティ対策を加え、医療機関が自院の対策状況を確認できる「チェックリスト」が導入されました。これは、できていないことを罰するためではなく、できていない部分を可視化し、改善を促す「支援・助言」を目的としています。
  • 業界団体との連携:電子カルテメーカーなどが加盟するJAHIS(保健医療福祉情報システム工業会)も、セキュリティガイドラインの作成や、自社製品のセキュリティ情報を医療機関に開示する「MDS/SDS」という仕組みづくりなど、業界を挙げて対策に取り組んでいます。
  • ISAC(アイザック)の設立:金融や電力といった分野ではすでに導入されていますが、業界内でサイバー攻撃の脅威情報を共有し、分析・対策を行う専門組織「ISAC(Information Sharing and Analysis Center)」を医療分野でも立ち上げる検討が進んでいます。これにより、業界全体で脅威に立ち向かう体制が強化されることが期待されます。

このように、国、医療機関、そしてベンダー(システム会社)が三位一体となって、日本の医療情報を守るための取り組みが進められているのです。

医療・介護・歯科・看護~分野を超えた連携~

医療DXが目指すのは、病院の中だけの情報共有ではありません。私たちの健康と暮らしを支える、様々な分野との連携も重要なテーマです。

医療と介護の連携

高齢化が進む中、医療と介護の連携は待ったなしの課題です。ワーキンググループでは、介護施設で作成されるケアプランや、日々の介護サービスの記録といった情報を、医療機関とスムーズに共有するための議論が進められています。現在、国は「介護情報基盤」という、介護情報を集約するプラットフォームの構築も進めており、この基盤と「全国医療情報プラットフォーム」をどう連携させていくかが今後の大きな焦点となります。

歯科診療の情報連携

「歯は万病のもと」と言われるように、お口の健康は全身の健康と密接に関わっています。そのため、医科と歯科の連携も非常に重要です。

しかし、歯科には「歯式」と呼ばれる歯の部位を示す特殊な表記があったり、インプラントや矯正など保険適用外の「自費診療」が多かったりと、医科とは異なる情報の扱いが必要です。ワーキンググループでは、こうした歯科固有の情報をどう標準化し、医科の医療機関とも共有できるようにしていくか、専門のワーキンググループを別途設置して検討を進めていく方向性が示されました。

看護情報の連携

在宅医療や訪問看護の重要性が増す中で、看護師が記録する情報の価値も高まっています。特に、日々の血圧や体温、食事の状況、ADL(日常生活動作)といった「生活を支える情報」は、医師が治療方針を立てる上で非常に重要です。

ワーキンググループでは、訪問看護の現場でやりとりされる「訪問看護指示書・計画書・報告書」といった文書の電子化や、看護師が記録する様々な情報を標準化し、多職種で共有できるようにするための検討が進められています。これにより、医療と生活がシームレスにつながり、よりきめ細やかなケアが実現されることが期待されます。

まとめ:私たちが創る、これからの医療

ここまで、駆け足で「健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ」の議論を振り返ってきました。いかがでしたでしょうか。

全国での情報共有、電子処方箋、情報の標準化、サイバーセキュリティ、そして分野を超えた連携…。専門家たちが、私たちの医療をより良くするために、実に多岐にわたるテーマについて、真剣に、そして熱く議論を重ねている様子が伝わったのではないかと思います。

もちろん、課題はまだ山積みです。

  • 国民・患者のリテラシー向上:私たち自身が、この新しい仕組みを理解し、自分の情報を主体的に活用していく意識を持つ必要があります。
  • 医療現場の負担軽減:新しいシステムを導入・運用する医療現場の負担をいかに減らしていくか。これは最大の課題の一つです。
  • 費用負担のあり方:これだけの大きなシステム改革には、莫大な費用がかかります。その費用を誰がどう負担するのか、公平で持続可能な仕組みづくりが求められます。
  • さらなる分野連携:今回は触れられませんでしたが、学校での健診情報や、予防接種の履歴など、連携すべき情報はまだまだたくさんあります。

これらの課題を一つひとつ乗り越え、医療DXは着実に未来へと進んでいます。

そして、この話は、決して専門家だけのものではありません。私たち一人ひとりが、自分の健康や医療に関心を持つこと。例えば、マイナンバーカードを保険証として利用してみる、マイナポータルで自分の健診結果を確認してみる。そんな小さな一歩が、日本の医療の未来を創る大きな力になります。

このワーキンググループの議論は、これからも続いていきます。私たちの暮らしが、医療が、どう変わっていくのか。ぜひ、これからもその動向に注目し、時にはその担い手として、一緒に未来の医療を考えていきませんか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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