疫学

疫学の基礎ーその11「必要条件、十分条件、構成因子」

2020年11月5日

必要条件、十分条件というと、高校数学で出てくる「必要条件」「十分条件」「必要十分条件」が思い浮かぶ人も多いでしょう。

高校生で偶然このサイトを訪れた方にはぜひ知っておいて頂きたいのですが、「必要条件」「十分条件」「必要十分条件」のような考え方を日常生活でも考えるクセをつけておくと、後々働きだした時に役立ちます。

当然ながら、他の人にその考えを押し付けたり、日常会話でそうした単語を出しても、何もいいことはないのでそこは常識の範囲内で頑張ってください。

ということで、必要条件、十分条件、必要十分条件です。

必要条件

Bという事が成り立たなければ必ずAという事も成り立たない、すなわちAが成り立てば必ずBも成り立つ時、そのAに対するBのこと。

いまいちよく分かりませんね。例えば、「おかかふりかけ依存」というものがあったとします。

依存の対象は何でもよくて、アルコール依存症なども疾患として広く知られていますが、今回は「おかかふりかけ依存症」という病気を仮想的に考えます。

仮に、本当に「おかかふりかけ依存症」という疾患があったとした場合、「おかかふりかけ」は「おかかふりかけ依存症」を起こすためには、絶対になくてはならない要素になります。

だって、おかかふりかけ」がなかったら、「おかかふりかけ」に依存することすらできないんですから。

この下線部分が重要です。依存症になっていない人からしたら、どうってことないものが、依存症の人にとっては欠かせないものになっている、ということです。

「おかかふりかけ」の部分は、「ジャニーズ」とか「ミスチル」とか「Snow Man」とかなんでもOKですよ。

十分条件

Aという事が成り立てばそれだけで必ずBという事も成り立つ時、そのBに対するAのこと。

これもよく分かりませんね。

ただ、イメージとして持っておいて頂きたいのは「必要条件よりも、十分条件の方がヤバい」です。

なんだそれ?と思われるかと思いますが、そういうことです。十分条件はヤバいです。言葉を変えて表現するなら、十分条件のほうが強力です。

ますます意味不明ですね。

もの凄く有名な例を挙げるなら「メチルアルコールを飲むと失明する」ということを例に挙げるなら、「メチルアルコールを飲むこと」は「失明する」の十分条件である、となります。

ここで考えて欲しいのは、失明原因は、メチルアルコールを飲むこと以外にもたくさんあるということです。

「失明したんだ」という人がいたとしても、その原因は「メチルアルコールを飲んだ」かどうかは分かりません。

失明原因には、生まれつきのものもあれば、石のような固いものが目に当たってしまったというものもあったり、緑内障や白内障のような眼疾患が原因の場合もあるでしょう。

そのため、「失明したんだ」という人がいたとしても、その情報だけでは原因が何かは分かりません。

ですが「メチルアルコールを飲んだんだ」という人がいたら「え、失明しちゃうかもしれないよ」という予測ができます。それも、結構強めの予測です。

十分条件は、「結果を起こすのに十分なもの」というものなので、その条件を満たしてしまうと、「結果」が起きてしまいます。怖いですね。

必要十分条件

必要十分条件というのは、「必要条件」でもあり、かつ、「十分条件」でもある、という非常に特殊なものです。

実生活のなかでは「必要十分条件」に出くわすことはそうそうないでしょう。

医療の世界でも「必要十分条件」に遭遇することはあまりありません。

実例を探すのもなかなか難しいのですが、必要十分条件として考えられるものとしては「狂犬病」「鉛中毒」のような、感染したり摂取したりしたらほぼ100%、病気になる(かつ、その原因以外にはなり得ない)ものしか該当しません。

  • 鉛中毒になるには鉛の摂取が必要ですし、狂犬病に感染するためには狂犬病ウイルスが必要です。
  • また、鉛を摂取するとほぼ確実に鉛中毒になり、狂犬病ウイルスに感染するとほぼ確実に狂犬病の諸症状を発症します。

必要条件でも十分条件でもない

実生活において最も多いのは、必要条件でも十分条件でもない(けれども、無視できない)ものです。

具体例としては「毎日、ポテトチップスを食べる」という生活習慣があったとします。

ポテトチップスを食べると、脂質異常症になりやすそうなので、「脂質異常症になる」という結果を考えます。

でも、「毎日、ポテトチップスを食べる」は、必ずしも「脂質異常症になる」という結果を引き起こすわけではありません。毎日ポテトチップスを食べる人でも、脂質異常症にならない人もいます。

一方で、「毎日、ポテトチップスを食べる」ようなことをしていない人も、「脂質異常症になる」ことがあります。健康的な食生活をしていても、「脂質異常症になる」ことはあります。

では、「毎日、ポテトチップスを食べる」という生活習慣は、「脂質異常症になる」ことと無関係でしょうか?

それは違いますね。少なくとも「ポテトチップスを食べる習慣があるかないか」は、脂質異常症の発症有無と関連がありそうです。

でも、「毎日、ポテトチップスを食べる」は、「脂質異常症になる」ことの、必要条件でも十分条件でもないことも明白です。

こういった状況では「毎日、ポテトチップスを食べる」は、「脂質異常症になる」ことの「構成条件(あるいは、構成因子、貢献因子、component cause)」と呼ばれます。

まとめ

必要条件、十分条件、必要十分条件のほかに、「構成条件、構成因子、貢献因子、component cause」のような概念があることを、より多くの人が知って、思いを馳せてもらえるようになると科学の発展に繋がりそうですね。世の中、白と黒だけでは塗分けられないということの典型的な事例です。

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