臨床研究法施行5年後の見直しに係る検討のとりまとめ(案)

Ⅰ はじめに

  • 平成 30 年4月1日に施行された臨床研究法(平成 29 年法律第 16 号。以下「法」又は「臨床研究法」という。)附則第2条第2項においては、法施行後5年以内に、法の施行の状況、臨床研究を取り巻く状況の変化等を勘案し、法の規定に検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされている。
  • このため、本部会では、令和3年1月から計8回にわたって臨床研究等の施策全般の見直しに関する議論を重ねるとともに、関係者及び関係団体からのヒアリングを実施し、令和3年 12 月 13 日に中間とりまとめを行った。
  • 本部会では、中間整理以降も各検討項目について議論を重ね、今後の対応の方向性について整理した。

Ⅱ 基本的な考え方

本部会では、現在の法の施行の状況や、臨床研究を取り巻く状況の変化等を踏まえ、基本的な考え方を以下のとおり整理した。

1.臨床研究実施体制の国際整合性

  • 新型コロナウイルス感染症の流行等を契機に、新しい治療法を世界同時に適用できることの重要性が認識された。
  • また、革新的な治療法を世界に先駆け、かつ安全に導入するには、日本の治験・臨床研究の実施環境についてその国際整合性を向上させて研究を推進していく必要がある。
  • このような状況を踏まえ、革新的な医薬品等の研究開発を推進するとともに、臨床研究の信頼を確保するため、研究の法への該当性の明確化や手続の合理化等について、法改正を含めて検討を行ったところであり、必要な見直しを順次行う。

2.研究の法への該当性の明確化

  • 臨床研究法では、研究対象者の安全性の確保や臨床研究に関する資金提供等の透明性を確保する観点から、研究対象者の生命・身体へのリスクが高い臨床研究及び製造販売業者等から資金提供を受けて実施される臨床研究を「特定臨床研究」として位置づけ、実施基準の遵守や実施計画の提出等を義務づけている。
  • このうちリスクが高い臨床研究の一つとして、医薬品等の適応外使用による研究についても特定臨床研究としているが、学会の診療ガイドラインに掲載されている使用法や保険診療で使用経験がある使用法による研究を実施する場合であっても臨床研究法の対象となることから、想定されるリスクと比べて、経済的及び事務的な負担が過大だとの意見がある。
  • また、治療行為に介入を伴わない、いわゆる「観察研究」については、臨床研究法における取扱いが明確ではなく、認定臨床研究審査委員会(以下「CRB」という。)において、軽微な追加検査を伴う観察研究が特定臨床研究と判断される事例があるなど、研究の現場で混乱が生じている。
  • さらに、医療機器については、多種多様である上に、既存の製品について常に改善・改良が行われるなどの特徴を踏まえた対応を検討する必要がある。
  • このような状況を踏まえ、研究対象者の保護を前提とした上で、学問の自由に配慮しつつ、改めて臨床研究法における臨床研究及び特定臨床研究の範囲を検討した。

3.手続の合理化

  • 特定臨床研究の実施計画については、国への提出や CRB での審査において、研究の本質に関わらないような事項まで変更の手続が求められるなど、研究者にとって過重な負担となっていることが明らかになった。
  • 臨床研究のより一層の推進を図るため、法の運用状況等を踏まえ、改めて手続の合理化について検討した。

4.透明性の確保

  • 臨床研究法は、臨床研究に関する資金等の提供に関する情報の公表の制度等を定めることにより、臨床研究の対象者をはじめとする国民の臨床研究に対する信頼の確保を図ることを通じた臨床研究の実施の推進を目的としている。
  • 一方で、臨床研究法における利益相反管理の手順の中で、客観的な確認が困難な点について確認を求める手順があるなど、必ずしも合理的とは言えない点が認められた。
  • このような状況を踏まえ、改めて合理的な手順について検討した。

5.研究の質の確保

  • 特定臨床研究については、臨床研究に関する専門的な知識を有する者により構成され、厚生労働大臣の認定を受けた CRB による審査を求めている。
  • 現在の CRB は、特定臨床研究の実施件数に比べて多く設置され、それぞれの審査能力には大きなばらつきがあることが指摘されている。
  • このような状況を踏まえ、CRB の設置数の適正化や、審査の質の向上に向けた CRB のあり方や取組について検討した。

Ⅲ 各検討項目について

革新的な医薬品等の研究開発の推進

1.臨床研究実施体制の国際整合性

(1)研究全体の責任主体の概念について
① 現状と課題

<現行の法制度>

  • 多施設共同で実施する特定臨床研究では、実施医療機関毎に置かれた研究責任医師によりモニタリング、監査、疾病等報告等の諸手続が行われている。

<課題>

  • 多施設共同研究の場合、同一研究内でも実施医療機関毎に監査等の手続の取扱いに差異が認められるといった指摘がある。
  • 一方、ICH-GCP においては、試験を計画・運営、資金確保を行う“sponsor”と、各施設での研究行為の実施責任を負う“investigator”がそれぞれ独立して存在しており、国際共同研究を円滑に実施する観点から、特定臨床研究にも、同様の「スポンサー」概念を導入すべきとの指摘がある。
  • このほか、以下のような指摘がなされている。
    • 臨床研究を実施する者としては(自然人たる)医師のみが想定されているが、法人としても実施できるようにすべきである。
    • 再審査期間終了後に製造販売業者において行われる臨床試験が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号。以下「薬機法」という。)にも臨床研究法にも位置づけられないことから、医療に資するエビデンス(真のエンドポイント)情報の取得が我が国では困難となっている。
    • 医療機器の開発において工学系研究者等が発案する臨床試験については、「スポンサー」概念の導入により円滑に進められるのではないか。
② 中間とりまとめまでの主な議論
  • 研究体制において、研究全体の責任の主体を明確化した上で、疾病等報告の因果関係等の取扱いを一括して管理することが必要という意見で概ね一致した。
  • 一方で、以下のような意見があった。
    • 日本と欧米での研究環境(病院と研究者の関係や公的資金を活用した研究の数等)が異なること、今後の薬機法の治験における「スポンサー」概念の取扱い、海外における医療機器の研究規制の内容等を踏まえて、研究主体のあり方を議論した方がよい。
    • 「スポンサー」という用語から受けるイメージは、欧米で認識されている役割と異なるので、研究者や研究対象者に概念が伝わるように、「スポンサー」の用語にこだわる必要はない。
    • 研究責任医師の機能の一部を法人等に置き換えることは理解できるが、製薬企業等が臨床研究法上の研究の実施に責任を有する者となることについては、臨床研究法の成立の経緯や企業主体の研究には企業の事業目的が背後にあること等を踏まえた議論が必要である。
    • 現在、多施設共同研究で設置されている「研究代表医師」が類似の役割を担っているのではないか。
③ 中間とりまとめ
  • 特に多施設共同研究において、「試験の計画・運営の責任を負うべき者」を位置づけ、監査、モニタリング、疾病等報告等の判断を一元化する方向で見直しを進めるべきである。
  • その際には、責任や役割に応じたペナルティ等の整備も考慮に入れる必要がある。
  • 「試験の計画・運営の責任を負うべき者」について、その主体や日本の研究環境等におけるあり方、具体的な役割(他の研究関係者との役割の整理)など、制度の詳細について引き続き検討を進める必要がある。
④ 中間とりまとめ後の議論
  • 「研究の計画・運営の責任を負うべき者」と「研究の実施に責任を有する者」の役割や機能を整理した上で、研究毎に「試験の計画・運営の責任を負うべき者」を設定し、研究全体の責任を持たせるべきという意見で概ね一致した。
  • また、企業の責任の下で実施する臨床研究に関しては、臨床研究法の成立の経緯や、企業主体の研究には企業の事業目的が存在すること等に鑑み、再審査・再評価に係る製造販売後臨床試験以外の製造販売後の臨床試験については、臨床研究法の対象とはせず、研究対象者の保護等の観点から、薬機法下で別途適切な基準に準拠して実施するという意見で一致した。
⑤ 今後の対応の方向性
  • 国際整合性の観点も踏まえ、多施設共同研究においても統一的な運営体制が確保されるよう、臨床研究の実施体制について「研究の計画・運営の責任を負うべき者」と「研究の実施に責任を有する者」の役割や機能を整理した上で、研究毎に研究の実施を統一的に管理する「試験の計画・運営の責任を負うべき者」を設定することとすべきである。
  • また、再審査・再評価に係る製造販売後臨床試験以外の製造販売後の臨床試験については、臨床研究法の対象とはせず、薬機法下で別途適切な基準に準拠して実施することができるよう、必要な見直しを行うべきである。
(2)特定臨床研究で得られた情報の薬事申請における利活用について
① 現状と課題

<現行の法制度>

  • 薬事申請に際しては、臨床試験の成績として「治験」の結果を提出することとされているが、「治験」と「臨床研究」では、試験において作成すべき書類の種類や内容、データの信頼性を担保するためのモニタリングの手法、データの保管期間などの規定が異なっている。
  • 海外における承認実績がある場合や、国際的な学術誌などに掲載され科学的に公知とされる場合に加え、倫理性、科学性及び信頼性が確認し得る公的な研究事業の委託研究等により実施された臨床試験の試験成績がある場合は、「公知申請」として治験の全部又は一部を省略しても薬事申請できることなど、医療上の必要性の高い医薬品等を対象に、薬事申請を円滑に行えるようにするための種々の制度が設けられている。

<課題>

  • 臨床研究法制定時の附帯決議として、「臨床研究で得られた情報を、医薬品、医療機器等の承認申請に係る資料として利活用できる仕組み」の速やかな検討が求められている。
※ 臨床研究法制定時の附帯決議(衆議院・参議院同内容)

医薬品、医療機器等の開発を推進するため、治験と臨床研究の制度区分と活用方法を明確化して、臨床研究を促進するとともに、臨床研究で得られた情報を、医薬品、医療機器等の承認申請に係る資料として利活用できる仕組みについて速やかに検討すること。

② 中間とりまとめまでの主な議論
  • 再審査期間が終了した品目の適応外使用に係る効能追加等の状況や、企業の薬事申請の負担軽減等を踏まえて、特定臨床研究の結果を薬事申請に活用していくべきという点について異論はなかった。
  • その上で、臨床研究の結果の薬事申請への活用に際しては、倫理性及び信頼性の確保等を含め利用に際して必要な要件を定めるべきとの意見があった。
  • 薬事申請を目指す臨床研究の場合、医師主導治験に近い臨床研究になると想定するが、PMDA への事前相談等が必要になるのではないか等の意見があった。
③ 中間とりまとめ
  • 厚生労働省において、個別品目をパイロット的に取り上げて検討を行っているところであり、その検討・精査が終わった後、関係者等との検討を踏まえて、特定臨床研究で得られたデータを薬事申請に活用する場合の要件、留意点等を取りまとめて公表すべきである。
④ 厚生労働省における対応状況
  • 特定臨床研究で得られた試験成績を利用し、実際に薬事申請に至った個別の申請事例をもとに、適切な信頼性確保を講じる上での留意点・考え方を一例として示した。(令和4年3月 31 日 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 事務連絡)
⑤ 今後の対応の方向性
  • 厚生労働科学特別研究事業等において、特定臨床研究で得られたデータを薬事申請に活用する場合の一般的な要件、留意点等の取りまとめ・公表に向けた検討を進めるべきである。
(3)いわゆる観察研究に関する臨床研究法の適用範囲について
① 現状と課題
  • 臨床研究法第2条第 1 項及び臨床研究法施行規則(平成 30 年厚生労働省令第17号。以下「施行規則」という。)第2条第1項において、同法の対象である臨床研究からいわゆる「観察研究」を除外している。
  • 一方で、いわゆる「観察研究」には明確な定義がなく、研究者が観察研究だと考えているものが、必ずしも法の対象から除外されていないケースがあり、研究の現場で不都合が生じている。
※ 参考条文

【臨床研究法(抄)】

第二条 この法律において「臨床研究」とは、医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究(当該研究のうち、当該医薬品等の有効性又は安全性についての試験が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下この条において「医薬品医療機器等法」という。)第八十条の二第二項に規定する治験に該当するものその他厚生労働省令で定めるものを除く。)をいう。

2~4 (略)

【臨床研究法施行規則(平成 30 年厚生労働省令第 17 号)(抄)】

第二条 法第二条第一項の厚生労働省令で定めるものは、次に掲げるものとする。

一 研究の目的で検査、投薬その他の診断又は治療のための医療行為の有無及び程度を制御することなく、患者のために最も適切な医療を提供した結果としての診療情報又は試料を利用する研究

二~六 (略)

【臨床研究法施行規則の施行等について(平成 30 年2月 28 日付け医政経発 0228 第1号・医政研発0228 第1号厚生労働省医政局経済課長及び研究開発振興課長連名通知)(抄)】

(3)規則第2条第1号関係
規則第2条第1号に規定する研究は、いわゆる「観察研究」をいう。

② 中間とりまとめまでの主な議論
  • 国際整合性の観点、定義の不明確さや現状の混乱を回避する観点から、臨床研究法における臨床研究の範囲を介入研究に限るべきであり、法の対象外となったとしても、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「倫理指針」という。)の下で安全性や質について一定の担保がなされているとの意見があった。
  • 一方で、いわゆる「観察研究」であっても侵襲の程度によって研究対象者に与える負担やリスクは異なるところ、患者の立場からすればいずれも臨床研究であり、安全性や情報公開に差があってはならないため、現状の研究環境下においては、侵襲が大きいものは法の対象とすることも必要との意見があった。
  • 侵襲の大小を法への該当性に係る判断のメルクマールにする場合には、CRB においてぶれなく適切に判断できるような示し方が重要であるとの意見や、海外における観察研究の定義とも比較しながら検討すべきとの意見があった。
③ 中間とりまとめ
  • 研究対象者の保護の観点に留意し、国際整合性にも配慮しつつ、観察研究の定義と取扱いについて引き続き検討を進めるべきである。
  • 観察研究のうち、研究の目的で行われた検査等について、侵襲が大きい等、研究対象者の身体又は精神に負担が大きい研究以外は、臨床研究の定義から除外することとすべきである。
  • 臨床研究の定義から除外されない、研究の目的で行われた「侵襲等が大きい等」の検査等については、引き続き情報を収集し、具体的に例示することで、法への該当性に係る判断の基準やその根拠を明確に示すべきである。
④ 中間とりまとめ後の議論
  • 法の対象となる臨床研究については、
    • あらかじめ作成した研究計画に従って、研究対象者に対し医薬品等を使用する研究
    • 個々の研究対象者の病状に応じて、当該者にとって適切な医療として、医薬品等を使用する研究であって、研究対象者への通常の医療と大きく異なる傷害・負担が大きい検査等を研究目的で診療に追加して行う研究
      とするという意見で概ね一致した。
  • 一方で、「負担の大きい検査等」の内容については、研究者や CRB によって判断に差が出ないように基準や例示を明確に示すべきとの意見があった。
⑤ 今後の対応の方向性
  • 法の対象となる臨床研究の範囲は、研究計画に従って研究対象者に対し、医薬品等を使用する研究、及び適切な医療として医薬品等を使用するものであって、研究対象者への通常の医療と大きく異なる傷害・負担が大きい検査等を研究目的で診療に追加して行う研究とするべく、必要な見直しを行うべきである。
  • 「傷害・負担が大きい検査等」の基準や事例を明示すべきであり、引き続き、事例の収集や基準に係る考え方の検討を進めるべきである。
(4)疾病等報告の取扱いについて
① 現状と課題

≪疾病等報告の主体について≫

  • 疾病等報告の対象は「臨床研究の実施に起因するものと疑われる疾病等」とされているところ、多施設共同研究でも各研究機関の研究責任医師により因果関係の判断を行うことになっているため、各研究責任医師によって判断にばらつきが生じている可能性がある。
  • ICH-GCP においては、sponsor が因果関係を問わず全ての有害事象を把握した上で、因果関係があり予測できないと判断した有害事象について規制当局に報告することとなっている(因果関係の有無の判断は治験依頼者に集約されている)。

≪疾病等の報告期日について≫

  • 臨床研究法における CRB への疾病等報告の期日は、以下のとおり薬機法における厚生労働大臣への報告期日を参照して設定された。
    未承認・適応外 : 治験の副作用報告並び
    既承認 : 既承認薬等の副作用報告並び
  • 臨床研究法では、既知かつ重篤な疾病等の報告期日について、医薬品等が未承認・適応外の場合は定期報告(1年に1回程度)とされている一方、既承認の場合は 30 日以内とされており、想定されるリスクと報告期日が相反しているとの指摘がある。
② 中間とりまとめまでの主な議論
  • 名称について、現行法においては、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成 25 年法律第 85 号)と同様に「疾病等報告」としているが、同法には治療も含まれていることや、海外との整合性の観点からも ICH-GCP や倫理指針と同様に「有害事象」に修正すべきではないか。

≪疾病等報告の主体について≫

  • 有害事象が発生した場合の因果関係の判断については、有害事象に係る情報を一元的に集約した上で一律に行えるような仕組みとすべきという意見で概ね一致し、その体制については「スポンサー」概念と合わせて議論することで異論はなかった。

≪疾病等の報告期日について≫

  • 既承認医薬品等の「既知かつ重篤な疾病等」の報告期日については、臨床研究の管理の下で評価されていることから、未承認・適応外医薬品等の報告期日に合わせて定期報告とすべきとの意見があった。
  • 一方で、未承認・適応外医薬品等の報告期限については、CRB に速やかな報告を求める必要があることから、既承認医薬品等の報告期限と同様の 30 日とすべきとの意見があった。
  • 報告の宛先(大臣、IRB、CRB)を整理した上で、議論をすべきとの指摘もあった。
③ 中間とりまとめ

≪疾病等報告の主体について≫

  • 有害事象が発生した場合の因果関係の判断については、有害事象に係る情報を一元的に集約した上で一律に行えるような仕組みとし、その報告者のあり方については、「スポンサー」概念とあわせて議論を進めるべきである。

≪疾病等の報告期日について≫

  • 研究対象者の保護の観点に留意しつつ、合理的な期日について引き続き検討を進めるべきである。
④ 中間とりまとめ後の議論

≪疾病等報告の主体について≫

○ 研究毎に設定される「試験の計画・運営の責任を負うべき者」において、有害事象
に係る情報を一元的に集約し、因果関係について一律に判断すべきという意見で一致
した。

≪疾病等の報告期日について≫

○ 未承認・適応外の医薬品等の臨床研究については、既承認での使用に比べて情報が
少なく、既知とはいえ重篤な疾病等の発生は重大事である。このため、合理的な期間
内に研究体制以外の組織である CRB に情報を提供し、研究の継続の可否や計画の変更
の要否などについて判断を仰ぐことは重要であり、CRB への報告期限は原則として 30
日以内とするという意見で概ね一致した。

○ ただし、研究組織から独立した効果安全性評価委員会が設置される場合には、評価
委員会が研究中の安全性データについて中立的な評価を行い、必要に応じて研究者に
適切な助言・勧告を行う機能を果たすことから、CRB への報告期限は定期とすること
についても、概ね意見は一致した。

○ その際、効果安全性評価委員会が上記の機能を果たすために十分な頻度で開催され
ることが必要であるため、運用に際して考え方を明確にすべきという意見もあった。
○ 既承認の医薬品等の臨床研究で発生する既知の疾病等については、重篤なものも含
めて通常の診療においても起こりうる事象であり、CRB への報告期限は定期とすると
いう意見で一致した。

⑤ 今後の対応の方向性

≪疾病等報告の主体について≫

○ 研究毎に設定される「試験の計画・運営の責任を負うべき者」において、有害事象
に係る情報を一元的に集約し、因果関係について一律に判断できるよう、必要な見直
しを行うべきである。

≪疾病等の報告期日について≫

○ 未承認・適応外の医薬品等の臨床研究において、既知の重篤な疾病等を CRB に報告
する期限については、原則 30 日以内とすることとし、研究組織から独立した効果安全
性評価委員会が設置される場合には、その運用を示した上で定期報告とすることとすべきである。
○ 既承認の医薬品等の臨床研究において、既知の疾病等を CRB に報告する期限は定期
とすることとすべきである。

2.研究の法への該当性の明確化

(1)適応外使用に関する特定臨床研究の対象範囲について
① 現状と課題

○ 臨床研究における医薬品等の用法、用量、効能及び効果(以下「用法等」という。)
が、承認された用法等と少しでも異なる場合には全て特定臨床研究と定義され、例え
ば、学会の診療ガイドラインに掲載されている使用法や、保険診療で使用経験がある
使用法、承認された用法・用量よりも少量を投与する使用法(いわゆる減量プロトコ
ル)であっても、一律に特定臨床研究の対象となる。
○ 特にがん領域と小児領域においてこのような研究が多く、医療上必要な臨床研究の
実施が困難となり、結果として医療の向上を阻害しているとの意見がある。

② 中間とりまとめまでの主な議論

○ 保険診療に係る審査提供事例では保険償還が認められている一方で、薬機法上の承
認の範囲に基づいて適応外使用の範囲が定まるため、実際に保険診療で行われている
使用法について研究を行おうとすると、法が障壁となるとの意見があった。
○ 特定臨床研究に該当しないこととなる適応外使用の範囲を広げたところで法実施に
おける課題の根本解決にはならず、適応外使用の研究により根拠がある成績が出た場
合には、添付文書の改訂に生かすべきではないかといった意見があった。

③ 中間とりまとめ

○ 適応外医薬品等を使用する研究であっても、各種の情報に基づき、そのリスクが承
認を受けた用法等と大きく変わらないことが明らかなものについては、特定臨床研究
の範囲から除外する方向で見直しを進めるべきである。
○ この場合、特定臨床研究の範囲から除外するか否かの検討にあたっては、当該医薬
品等の使用に係るリスクが承認を受けた用法等と大きく変わらないかどうかについ
て、根拠となる情報に基づき、厚生労働省が専門家の意見を聴取する方向で制度を構
築すべきである。

④ 中間とりまとめ後の議論

○ 適応外医薬品等を使用する研究について特定臨床研究の範囲から除外するか否かに
ついては、根拠となる情報に基づき、臨床研究部会の下に設置した専門委員会におい
て検討するという意見で一致した。
○ その際、適応外使用が既承認の用法等と同程度のリスクか否かの判断における視点
としては、当該使用法について、十分な症例数が組み入れられた適切なデザインに基づく臨床研究等による安全性情報が存在していることや、診療ガイドライン等におい
て十分な根拠に基づき推奨されていること、既承認の用法等に比べて低リスクである
ことが判断可能であること等が挙げられるが、それ以外の視点の追加を含め、引き続
き検討が必要という意見があった。

⑤ 今後の対応の方向性

○ 適応外医薬品等を使用する研究であっても、既承認の用法等とリスクが同程度のも
のについては、特定臨床研究の範囲から除外することとし、リスクの判断にあたって
は、臨床研究部会の下に専門委員会を設置して検討することとすべきである。

(2)医療機器に関する臨床研究法の適用範囲について
① 現状と課題

○ 医療機器については、医薬品と異なり非侵襲・低侵襲なものが存在するが、これらを
特定臨床研究の対象とするのは過剰な規制ではないかとの指摘がある。
○ 薬機法や医療機器規制国際整合化会合(GHTF)においては、リスクに応じたクラス分
類に基づき規制の内容を変えており、臨床研究法においても、医療機器毎のリスクに
基づき取り扱うべきではないかとの指摘がある。
○ 一方で、薬機法上、医療機器については、使用方法等を特定し、適正な使用目的に
従い適正に使用されることを前提に承認等を受けており、その前提に基づき、一般医
療機器、管理医療機器、高度管理医療機器のいずれに該当するかが判断されている。
○ 既存の製品の改善・改良を臨床現場で評価する場合も、未承認医療機器として特定
臨床研究に該当すると判断されると、手続の負担や資金の観点から実施が困難となる
場合があるとの指摘がある。
○ 工学系研究者に対する特定臨床研究の範囲等に関するルールの周知が不十分なた
め、本来は該当しないものまで特定臨床研究とされているのではないかとの指摘があ
る。

② 中間とりまとめまでの主な議論

○ 欧州では、医療機器は臨床試験を規制する法律の対象外であり、医療機器の臨床試
験の規制について国際整合性を考えるべきであるとの意見があった。

③ 中間とりまとめ

○ 薬機法における各規制区分への該当性については、適正な使用目的に従い適正に使
用されることを前提として分類されており、その範囲から逸脱して適応外使用する場
合においても、不変的に同じ規制区分に分類されるわけではない。
○ 適応外の医療機器の臨床研究において、当該医療機器が既に許認可を受けた際に分
類されたリスク分類と同程度のリスクとみなせる場合について、医療機器の多様性も
考慮し、研究の実態等を調査した上で、当該調査結果に基づき引き続き方策を検討すべきである。

④ 中間とりまとめ後の議論

○ 医療機器に関する研究の実態等を明らかにするため、厚生労働科学特別研究事業に
おいて臨床研究法が医療機器開発研究に与えた影響の実態把握に向けた調査研究が行
われ、生体医工学会等の関係学会に所属する研究者、一般社団法人日本医療機器産業
連合会参加の団体に所属する企業に対して、臨床研究法への該当性判断に迷った事例
を収集するアンケート調査が行われた。
○ 調査結果においては、IRB や CRB 毎に特定臨床研究の該当性の判断にばらつきがあ
ることや、法の対象外であることについて明確な結論が得られないため、研究内容を
法の対象外であることが明確になるようにする変更を行ったことにより研究の開始が
遅延した事例や、法に基づく研究体制の構築が困難なことから研究自体を諦めた事例
もあることが明らかになった。これらの要因として CRB や IRB が医療機器に精通して
いないことが挙げられた。
○ 当該研究を実施した研究班では、これらの結果を踏まえ、臨床研究法下の臨床研究
や特定臨床研究に該当しない事例集を整理するとともに、特定臨床研究への該当性に
係る相談窓口を設置する必要性が議論された。
○ 特定臨床研究への該当性に係る相談窓口の設置について賛同する意見があった。
○ 今回の調査における回答数が限られており、医療機器の開発研究の全体像が明らか
になっていない可能性も踏まえ、医療機器の研究を臨床研究法の下で管理することが
適当かどうかについて引き続き検討するとともに、調査結果を踏まえた医療機器の研
究に係る制度の検討は慎重に行うべきとの意見があった。

⑤ 今後の対応の方向性

○ 医療機器を用いた研究に関し法への該当性等を相談できるよう、相談窓口の設置を
進めるべきである。
○ 定期的に特定臨床研究の該当判断に迷った事例等の収集を行い、随時事例集を更新
していくべきである。
○ 関係学会等の協力を得て、臨床研究法に関する Q&A や事例集を CRB、倫理審査委員
会、工学部の研究者等を含めた関係者に広く周知していくべきである。

3.手続の合理化

(1)届出・変更手続の合理化、届出のオンライン化について
① 現状と課題

<現行の法制度>
○ 厚生労働大臣(地方厚生局長)への実施計画の提出に当たっては、jRCT(臨床研究
実施計画・研究概要公表システム)に入力したものを印刷し、紙による届出を行って
いる。

○ 特定臨床研究では、新規届出時に加え、実施計画を変更する場合も、原則として、
事前に CRB の意見を聴いた上で、厚生労働大臣(地方厚生局長)に届出する必要があ
る。
○ 「軽微な変更」に該当する場合には、上記の手続は不要とされ、変更後 10 日以内に
CRB への通知と厚生労働大臣(地方厚生局長)への届出を行えばよいが、その対象は
「特定臨床研究の従事者の氏名の変更」及び「住所変更」のみに限定されている。

<課題>

○ 病院管理者の変更等、研究の本質に関わらないような事項の変更を含め、変更が生
じる度に、CRB の意見を聴取する必要が生じており、結果として、CRB 審査に要する時
間と費用の肥大化に繋がっているとの指摘がある。
○ 一般への情報公開を適切に行うことは重要であるが、厚生労働大臣に提出する実施
計画に記載がなくても、公開 DB である jRCT に掲載すれば、一般への情報公開を担保
できるとの指摘がある。

※(参考)「変更の種類」について

通常の変更

【臨床研究法(抄)】

第五条 (略)
2 (略)
3 特定臨床研究を実施する者は、第一項の規定により実施計画を提出する場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、実施計画による特定臨床研究の実施の適否及び実施に当たって留意すべき事項について、当該実施計画に記載されている認定臨床研究審査委員会の意見を聴かなければならない。

第六条 (略)
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の実施計画の変更について準用する。
3 (略)

【臨床研究法施行規則(抄)】

第四十一条 法第六条第一項による変更は、次に掲げる区分に応じ、次に掲げる期限までに、変更後の実施計画及び様式第2による届出を提出して行うもののとする。
一 (略)
二 前号に掲げる事項以外の変更 変更前

進捗状況の変更

【臨床研究法施行規則(抄)】

第四十一条 法第六条第一項による変更は、次に掲げる区分に応じ、次に掲げる期限までに、変更後の実施計画及び様式第二による届出を提出して行うもののとする。
一 法第五条第一項第五号に規定する事項のうち特定臨床研究の進捗に関する事項 進捗の変更後遅滞なく
二 (略)

軽微な変更

【臨床研究法(抄)】

第六条 (略)
2 (略)
3 特定臨床研究実施者は、実施計画について、第一項の厚生労働省令で定める軽微な変更をしたときは、その変更の日から十日以内に、その内容を、当該実施計画に記載されている認定臨床研究審査委員会に通知するとともに、厚生労働大臣に届け出なければならない。

【施行規則(抄)】

第四十二条 法第六条第一項に定める厚生労働省令で定める軽微な変更は次に掲げるものとする。
一 特定臨床研究に従事する者の氏名の変更であって、特定臨床研究に従事する者の変更を伴わないもの
二 地域の名称の変更又は地番の変更に伴う変更

② 中間とりまとめまでの主な議論

○ 臨床研究法の施行から一定期間が経ち、軽微な変更として扱ってよいかどうかの判
断が可能になってきているため、不合理な点は見直すべきという意見で概ね一致し
た。
○ jRCT に web 登録した後に同じものを印刷物として提出することは不合理であり、届
出のオンライン化を進めるべきという意見で概ね一致した。
○ jRCT そのものについて、非常に使いにくいので、わかりやすい表示となるよう改修
をすべきとの意見があった。

③ 中間とりまとめ

<制度の見直し>
○ 現行において、変更の届出が必要な事項のうち、「研究者の所属部署」や「管理者の
許可の有無」等、研究の本質に関わらないような事項は軽微な変更とすべきである。
○ また、届出事項としなくても jRCT に掲載することで一般への情報公開ができればよ
い事項について整理し、実施計画の項目と jRCT への掲載項目を分離すべきである。
<別途取り組むべき事項>
○ 届出におけるオンライン化について、速やかに対応すべきである。
○ jRCT について、ユーザーの使いやすさの観点から改修等に着手すべきである。

④ 厚生労働省における対応状況

○ jRCT の改修を行うなど必要な対応を進め、特定臨床研究の実施計画等の国への届出
をオンライン化した。
(「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく再生医療等提供計画及び臨床研究法に基づく実施
計画の提出等について」(令和4年3月 30 日 厚生労働省医政局研究開発振興課 事務連絡))

○ 特定臨床研究の実施計画の変更手続に関して、軽微な変更に該当する事項を追加す
るとともに、jRCT への掲載のみとする項目を実施計画の記載事項から削除するため、
施行規則における所要の改正を行った。
(「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則及び臨床研究法施行規則の一部を改正する省令の
施行について」(令和4年3月 31 日 医政発 0331 第 23 号))

≪軽微な変更に追加した事項≫

  • 研究従事者の氏名・連絡先・所属機関の名称の形式変更
  • 研究の苦情等受付窓口の変更
  • 実施医療機関の管理者の氏名の変更
  • 研究実施の可否についての管理者の承認に伴う変更
  • 研究の実施状況の確認に関する事項の変更(研究結果・監査実施の変更を除く)
  • CRB の名称・連絡先の形式変更
  • 研究実施の適否・留意事項に影響を与えない変更

≪jRCT への掲載のみとした項目≫

  • 多施設共同研究における各機関の問い合わせ窓口
  • データマネジメント担当機関/責任者
  • モニタリング担当機関/責任者
  • 監査担当機関/責任者
  • 研究開発支援担当機関/責任者
  • 調整管理実務担当機関/責任者
(2)利益相反申告手続の適正化について
① 現状と課題

○ 臨床研究の透明性・信頼性の向上を図る観点から、利益相反(COI)管理は重要であ
る一方で、COI に関する現行の手続は煩雑な上に、一部事実確認が不十分であること
が指摘されている。
○ 具体的には、所属機関(実施医療機関)における事実確認に際して、当該機関が必
ずしも所属医師等の全ての収入を把握しておらず、自己申告によらざるを得ない場合
があり、医療機関によっては実質的な確認が困難となるなど、医療機関毎に事実確認
の程度が異なるとの指摘や、医療機関の管理者等による確認の意義を問う指摘があ
る。

② 中間とりまとめまでの主な議論

○ 臨床研究においては、データを含めた信頼性の確保と研究対象者の保護が重要にな
るところ、これを損なわない程度に COI に関する手続を積極的に簡略化するのが基本
的な姿勢であるべきとの意見があった。

○ COI 管理は研究者本人の責務であり、確認が困難な事項について虚偽申告があれば
研究者に責任を負わせるべきとの意見があった。
○ 国や日本医学会等が COI に関するデータを一元管理するような方策も検討すべきと
の意見があった。

③ 中間とりまとめ

○ COI 管理については、研究者自身の責務であることが原則であり、その上で虚偽申
告が発覚した場合は重大な不適合の対象とする等、研究者が責任を負うべきである。
○ COI 管理における手続については、臨床研究の透明性・信頼性を確保しつつ、医療
機関における事実関係の確認等、実効性が伴わない手順等については見直すべきであ
る。
○ 上記の見直しにあたっては、COI を客観的かつ容易に確認できる手段として、デー
タベースの構築やその利用方法について引き続き検討を進めるべきである。

④ 今後の対応の方向性

○ COI 管理について、医療機関における事実確認の手続を代替するための客観的かつ
容易な確認や、臨床研究法における特定臨床研究のみならず国内の医学系研究に関す
る COI の一元管理が可能となるようなデータベースを構築することが望ましい。
○ 国がこのようなデータベースの構築に向けた取組に着手することが期待される。

研究の信頼性確保

1.透明性の確保

(1)利益相反申告手続の適正化について(再掲)

「革新的な医薬品等の研究開発の推進」の3.(2)参照

(2)研究資金等の提供に関する情報公表の範囲について
① 現状と課題
  • 臨床研究法における情報公表の制度は、製薬企業等が、自社製品を用いて臨床研究を行う医師・医療機関に対する資金等の提供状況を透明化することで、臨床研究の不正を防止し、国民の臨床研究に対する信頼を確保することを目的としている。
  • 情報提供関連費及び接遇費については、臨床研究を実施する特定の医療関係者等に、必要実費の範囲を超えて直接支払われる性質のものではなく、当該費用提供が臨床研究の不正につながる蓋然性は低いと考えられることから、研究資金や寄附金等と異なり、公表の対象にはしていない。
  • 一方で、国民皆保険制度の下で活動する製薬企業等においては、これらの費用の提供状況についても透明性を確保し、国民の信頼性を高めることが重要であり、現状、業界が策定する自主ガイドラインにおいて、傘下企業に対して情報公開を求めている。
※ 臨床研究法制定時の附帯決議(衆議院・参議院同内容)

学問の自由に配慮しつつ臨床研究の一層の信頼確保を図るため、研究資金等の提供に関する情報等の公表制度の実施状況を踏まえながら、本法の公表の対象外とされている情報提供関連費や接遇費等を公表の対象とすることについて検討すること。

② 中間とりまとめまでの主な議論
  • 現行の公表項目(研究資金等、寄付金、原稿執筆料及び講演その他の業務に対する報酬)を通じて透明化は図られており、情報提供関連費の追加は不要ではないかといった意見がある一方で、接遇費については、業界自主ガイドラインの普及状況なども含めて調査すべきとの意見があった。
  • 講演会等については、臨床研究とは関係のない場合も多く含まれるため、個別に切り分けて公開するというのは現実的ではないのではないかといった意見もあった。
  • 製薬企業等に対し、企業活動における外部研究者等への資金提供に係る情報公表等に関する調査を実施したところ、調査対象の企業の中には、特定臨床研究に係る資金提供に馴染みのない企業も含まれていたと考えられることから、特定臨床研究に関与している企業における業界自主ガイドラインの普及状況等を改めて整理した上で議論を行うべきとの意見があった。
  • また、当該調査結果は、調査対象とした全ての企業から回答を得られた結果ではないことから、本調査結果だけでは、情報提供関連費及び接遇費が不正に繋がる蓋然性が低いと断定することはできないのではないかとの意見があった。
  • 臨床研究の透明性の確保に当たっては、臨床研究法とは制定経緯や対象範囲が異なるが、米国におけるサンシャインアクトの存在も踏まえて議論を行うべきとの意見があった。
③ 中間とりまとめ
  • 特定臨床研究に関与している企業における業界自主ガイドラインの普及を促進するとともに、情報提供関連費及び接遇費を情報公表範囲に追加すべきかについては、当該費用提供が臨床研究の不正につながる蓋然性や更なる法規制を行う必要性について引き続き検討を行うべきである。
④ 中間とりまとめ後の議論
  • 法制定当時の国会審議において、情報提供関連費及び接遇費を公表対象外とすることによる費目の付け替えの可能性が指摘されたことにより、附帯決議において、これらの費用を公表対象とすることについて検討することが求められたことを踏まえ、特定臨床研究に関与する企業については、費目の付け替えが行われている可能性の有無を確認できる状態とするよう、企業における情報提供関連費・接遇費の年間総額の公表を法令で義務付けるべきということで、意見は一致した。
  • その際、公表により更なる透明性の確保が図られるよう、具体的な公表の方法等については、企業における実態等も踏まえ、引き続き検討が必要との意見があった。
⑤ 今後の対応の方向性
  • 特定臨床研究に関与する企業について、費目の付け替えが行われている可能性の有無を確認できる状態とするよう、企業における情報提供関連費及び接遇費の年間総額の公表を法令で義務付けるべきである。
(3)重大な不適合の取扱いについて
① 現状と課題

<現行の法制度>

  • 研究責任医師は、臨床研究の不適合を知ったときは、実施医療機関の管理者に報告することとなっており、特に重大なものが判明した場合においては、CRB の意見を聴くこととなっている。
  • CRB の審査意見業務の1つに、臨床研究の不適合に関することも含まれており、意見を述べた場合は、厚生局に報告することとなっている。
  • 一方、倫理指針に則って実施される研究において不適合が発生した場合は、研究機関の長が国へ報告するとともに、公表することとなっている。
※ 参考条文

【臨床研究法施行規則(抄)】

第十五条 研究責任医師は、臨床研究がこの省令又は研究計画書に適合していない状態(以下「不適合」という。)であると知ったときは、速やかに、実施医療機関の管理者に報告しなければならない。
2 (略)
3 研究責任医師は、第一項の不適合であって、特に重大なものが判明した場合においては、速やかに認定臨床研究審査委員会の意見を聴かなければならない。
4 (略)
5 研究代表医師は、第一項(前項の規定により読み替えて準用する場合を含む。)の規定により多施設共同研究が不適合であることを知ったときはその旨を、速やかに他の研究責任医師に情報提供しなければならない。

② 中間とりまとめまでの主な議論
  • 臨床研究の不適合の取扱いのうち、特に研究機関の公表については、倫理指針と齟齬があると考えられるため、取扱いについて検討すべきとの意見があった。
③ 中間とりまとめ
  • 特定臨床研究においても、研究の透明性の確保等の観点から、重大な不適合が発生した場合には、研究機関の長に公表を強く推奨するものとし、国は速やかに対応すべきである。
④ 厚生労働省における対応状況
  • 実施医療機関の管理者は、特定臨床研究において重大な不適合の発生を知ったときは、その旨を公表すべきことについて通知を行った。
    (「「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令」及び「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」の取扱いについて」及び「臨床研究法施行規則の施行等について」の一部改正について(令和4年3月 31 日 医政研発 0331 第1号))

2.研究の質の確保

(1)臨床研究審査委員会の認定要件について
① 現状と課題

<現行の法制度>

  • 臨床研究審査委員会は、法に規定する要件(委員構成等の体制、業務規程、その他の実施基準)に適合することで認定を受けることができる。
  • 認定の有効期間は3年とされており、更新要件は上記の認定要件に加えて年 11 回以上の開催実績が要件となっている。

<課題>

  • 特定臨床研究は自施設内の CRB で審査されていることが多く、特定臨床研究の実施件数に比して多数の CRB が設置されており、年 11 回の開催が困難な CRB がある。
  • 認定の要件が外形的なものが多く、審査基準・審査能力・審査手数料にばらつきがあり、必ずしも適切な審査がされていない場合があるとの指摘がある。
※参考条文

【臨床研究法(抄)】

(臨床研究審査委員会の認定)

第二十三条

  1. 臨床研究に関する専門的な知識経験を有する者により構成される委員会であって、次に掲げる業務(以下「審査意見業務」という。)を行うもの(以下この条において「臨床研究審査委員会」という。)を設置する者(病院(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院をいう。)若しくは診療所(同条第二項に規定する診療所をいい、同法第五条第一項に規定する医師又は歯科医師の住所を含む。)の開設者又は医学医術に関する学術団体その他の厚生労働省令で定める団体(法人でない団体にあっては、代表者又は管理人の定めのあるものに限る。)に限る。)は、その設置する臨床研究審査委員会が第四項各号に掲げる要件に適合していることについて、厚生労働大臣の認定を受けなければならない。
    一~四 (略)
  2. (略)
  3. (略)
  4. 厚生労働大臣は、第一項の認定(以下この条において単に「認定」という。)の申請があった場合において、その申請に係る臨床研究審査委員会が次に掲げる要件に適合すると認めるときは、認定をしなければならない。
    一 臨床研究に関する専門的な知識経験を有する委員により構成され、かつ、審査意見業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものとして厚生労働省令で定める体制が整備されていること。
    二 審査意見業務の実施の方法、審査意見業務に関して知り得た情報の管理及び秘密の保持の方法その他の審査意見業務を適切に実施するための方法に関する業務規程が整備されていること。
    三 前二号に掲げるもののほか、審査意見業務の適切な実施のために必要なものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。
  5. (略)

(認定の有効期間)

第二十六条

  1. 第二十三条第一項の認定の有効期間は、当該認定の日から起算して三年とする。
  2. 前項の有効期間(当該有効期間についてこの項の規定により更新を受けたときにあっては、更新後の当該有効期間をいう。以下この条において単に「有効期間」という。)の満了後引き続き認定臨床研究審査委員会を設置する認定委員会設置者は、有効期間の更新を受けなければならない。
  3. (略)
  4. (略)
  5. (略)
  6. 第二十三条(第二項から第四項までに限る。)及び第二十四条(第三号から第五号までを除く。)の規定は、第二項の更新について準用する。ただし、第二十三条第三項に規定する書類については、既に厚生労働大臣に提出されている当該書類の内容に変更がないときは、その添付を省略することができる。

【臨床研究法施行規則(抄)】

(臨床研究審査委員会の認定の要件)

第六十六条

  1. 臨床研究審査委員会は、倫理的及び科学的観点から審査意見業務を行うことができるよう、次項から第四項までに掲げる要件を満たす場合には、認定を受けることができる。
  2. (略)
  3. (略)
  4. 法第二十三条第四項第三号(法第二十五条第三項及び第二十六条第六項の規定により準用する場合を含む。)の厚生労働省令で定める基準は、次のとおりとする。
    一~三 (略)
    四 審査意見業務(第八十条第四項及び第五項の規定によるものを除く。)を行うため、年十二回以上定期的に開催すること。
    五 法第二十六条第二項の規定による有効期間の更新を受ける場合にあっては、審査意見業務を行うため、年十一回以上開催していること。ただし、災害その他やむを得ない事由により、年十一回以上開催することができないときは、この限りでない。
② 中間とりまとめまでの主な議論
  • 現行の更新要件である「開催回数」について、要件を満たすために臨床研究に係る議論を分割させるような事例もあり、必ずしも当初の想定のような審議の経験の実績が積まれておらず、質の担保につながっていないとの指摘があった。調査結果においても、多くの CRB が開催回数の要件を満たしていないことから、要件の見直しが必要という意見で一致した。
  • 新規の審議件数を更新要件に加えることについては、概ね意見が一致した。また、少なくとも新規の審議がない年があるような CRB については、質の担保が困難という点についても異論はなかった。
  • 更新要件を満たさない CRB の設置者が新たな CRB を設置して、実質上審議を引き継がせる手法については、今後は禁止すべきとの意見があった。
  • 議論の透明性を確保する観点から、CRB の議事概要の公開について、審議結果のみならず、議論の経過がわかるような内容を公開すべきとの意見があった。また、国は、CRB の活動状況を定期的に確認・評価する観点から、更新時等に議事録を確認すべきとの意見があった。
  • 現在の CRB の設置数については、特定臨床研究の実施件数に比べ過多であり、CRB毎に取り扱う特定臨床研究の数が少なくなっている。このため、CRB が定期的な開催に基づき審査の質を維持、向上していくのが困難であり、集約していく必要がある点について、意見が一致した。
  • CRB の設置は臨床研究中核病院の要件となっており、一種のブランド的な印象があることから、多くの病院が設置するのではないかといった意見があった。また、多くの CRB が自施設の案件を審査しているという調査結果や、客観性に疑問を抱かざるを得ないとの指摘があった。
  • 海外のように日本でも国が CRB の支援により力を入れるべきとの意見や、更新要件の見直し以外にもピアレビューや模擬審査、外部評価等の質の向上に向けた取組の必要性を指摘する意見、優良 CRB への支援も他施設での審査への誘導という点で期待できるとの意見があった。
③ 中間とりまとめ
  • 更新要件については、これまでの開催回数の要件を見直すとともに、新規の審議件数を要件に加えるべきである。
  • 当面、更新要件について、新規の審議件数は3年間で6件以上(ただし、毎年1件以上)、かつ、開催回数については毎年7回以上とするが、疾病等報告等、迅速に取り扱う議題がある場合には、要件に関わらず、迅速な開催を求めるべきである。
  • 上記の要件については、CRB の現在の状況を踏まえた最低限の内容であり、開催回数及び新規の審議件数については、引き続き国内の特定臨床研究の実施状況や CRB の活動状況を確認し、それらを分析した上で段階的に要件を引き上げる等、見直しの時期も含め適切に対応すべきである。
  • CRB の質の向上に向けて、更新要件のみならず、例えば、模擬審査、ピアレビューを実施し、将来的に更新要件への反映を検討することや優良 CRB への支援などの取組を行っていく必要がある。
  • CRB が更新要件を満たさなくなった場合には、円滑な廃止に向けて準備を進めるべきである。
  • CRB の更新に際して、国は議事録を確認することなどにより、CRB の活動状況を確認・評価すべきである。
④ 厚生労働省における対応状況
  • CRB の更新要件について施行規則の改正を行い、一定の経過措置を設けた上で、新規の審議件数は3年間で6件以上(ただし、毎年1件以上)、かつ、開催回数については毎年7以上に見直しを行った。
    (「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則及び臨床研究法施行規則の一部を改正する省令の施行について」(令和4年3月 31 日 医政発 0331 第 23 号))
  • 更新要件を満たさない CRB については、円滑な廃止に向けて準備を進めるものとし、これまでに発出した CRB の更新に係る事務連絡を廃止した上で、改めて CRB の更新に関する考え方を示した。
    (「認定臨床研究審査委員会の認定の更新等における対応について」(令和4年3月31日付け 厚生労働省医政局研究開発振興課 事務連絡))

Ⅳ おわりに

  • 上記のとおり、本部会においては、臨床研究法のあり方について議論を行い、見直しに係る検討をとりまとめた。
  • 厚生労働省においては、令和3年 12 月の中間取りまとめを踏まえ、施行規則の改正等の対応を行ってきたが、本部会の取りまとめを踏まえ、臨床研究法の改正を行う等、改革に早急に取り組み、着実に実施されたい。
  • また、国は、制度に適切に対応した臨床研究の実施を推進するために、研究支援の取組を進めるべきである。

参照

厚生労働省ホーム政策について審議会・研究会等厚生科学審議会(臨床研究部会)第30回厚生科学審議会臨床研究部会資料

臨床研究法施行5年後の見直しに係る検討のとりまとめ(案)

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