ビジネス全般

孤独・孤立対策の重点計画の素案

2021年12月7日

目次

1.孤独・孤立対策の現状

(1)我が国における孤独・孤立に関する状況

<新型コロナウイルス感染拡大前の状況>

我が国においては、2000年以降、グローバリゼーションが進む中で、それまで定着していた終身雇用、年功賃金や新卒一括採用等に基づく日本型雇用慣行が変化し、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者といった非正規雇用労働者が増加するなど、雇用環境が大きく変化してきた。

また、インターネットの普及等に伴う情報通信社会の急速な進展等により、国民の生活環境やライフスタイルは急速に変化してきた。

さらに、人口減少、少子高齢化、核家族化、未婚化・晩婚化、これらを背景とした単身世帯や単身高齢者の増加といった社会環境の劇的な変化が進み、地域社会を支える地縁・血縁といった人と人との関係性・つながりは希薄化の一途をたどってきた。

このような雇用環境・生活環境や家族及び地域社会の変化は、雇用形態の多様化や所得格差の拡大等を背景として、職場内・家庭内・地域内において人々が関わり合いを持つことによって問題を共有しつつ相互に支え合う機会の減少をもたらし、人々が「生きづらさ」や孤独・孤立を感じざるを得ない状況を生む社会へと変化してきたと考えられる。

こうした状況は、例えば、OECDの2005年の調査によれば「家族以外の人」との交流がない人の割合がわが国は米国の5倍、英国の3倍高いとされていること等、孤独・孤立に伴う様々な社会問題がこれまで発生してきたことにも表れている。

<新型コロナウイルス感染拡大後の状況>

2020年1月に国内で最初の新型コロナウイルス感染者が確認され、緊急事態宣言の発出による飲食店等に対する休業要請や感染拡大防止対策、外出自粛要請が行われて以降、我が国における人々の生活は一変した。

例えば、緊急事態宣言の発出に伴う経済活動の停滞の影響により、休業者の増加だけでなく、それまで増加傾向であった就業者数は女性の非正規雇用労働者を中心に大幅に減少し、收入が減少した就業者が増加した。それらの結果として、生活の困窮をはじめとした生活に関する様々な不安や悩みを抱える人が増え、相談支援機関への相談件数の増加等が生じることとなった。

また、感染拡大防止措置の影響により、それまで行政機関やNPO等が各地域で提供してきた、地域の子どもや高齢者等の交流・見守りや支え合いの場、あるいは相談支援を受ける機会などが失われたほか、それらの提供主体の側においても、直接や対面でのコミュニケーションを行いながら支援等が必要な人に対して支援等を行う従前の取組・活動について、休止や手法の変更等を余儀なくされることとなった。

さらに、外出自粛の影響により、人々が自宅にいる時間が長くなり、自宅で家族とともに過ごす時間が増加したという面もある一方で、家族と一緒に過ごす中でも一人で悩む人が存在すると見込まれる中、負の側面として、児童虐待等の事案の増加や、配偶者からの暴力(DV)に係る相談件数が増加することとなった。これらの状況は、自殺者数は令和2年に総数で前年比912人増の21,081人(うち、女性は7,026人で前年比935人増、児童生徒は499人で前年比100人増で過去最多)となり11年ぶりに対前年度比で増加したこと、DV相談件数は令和2年度で19万0,030人(前年度の約1.6倍)となったこと、児童虐待相談対応件数は令和2年度で20万5,029件(前年比1万1,249件増)となったこと、小・中学校における長期欠席者のうち不登校児童生徒は令和2年度で19万6,127人(前年度18万1,272人、前年度比14,855人増)となったこと等にも表れている。

我が国の社会生活を一変させた新型コロナウイルス感染拡大は、それまでの社会環境の変化等により孤独・孤立を感じやすくなっていた社会において内在していた孤独・孤立の問題を顕在化させ、あるいは一層深刻化させる契機になったと考えられる。

(2)これまでの政府の取組

新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化することにより、孤独・孤立の問題がより一層深刻な社会問題となっていることを受けて、政府においては、令和3年2月に孤独・孤立対策担当大臣が司令塔となり、内閣官房に孤独・孤立対策担当室を立ち上げ、政府一丸となって孤独・孤立対策に取り組むこととした。

政府においては、令和3月3月以降、孤独・孤立対策担当大臣を議長とし、全省庁の副大臣で構成する「孤独・孤立対策に関する連絡調整会議」を定期的に開催し、3つのタスクフォース(ソーシャルメディアの活用、実態把握、孤独・孤立関係団体の連携支援)の立ち上げ、様々なライフステージに応じた孤独・孤立対策の整理及び施策のさらなる充実・強化の検討など、政府全体として総合的かつ効果的な孤独・孤立対策を検討・推進している。

令和3年2月には、様々な支援の存在を周知するとともに、感染防止に配慮した形でつながりの活動を展開することが大切であることや、悩んでいる方に向けて、様々な支援策があり、悩みを相談してほしいことなどをメッセージとして発出することを目的として、「孤独・孤立を防ぎ、不安に寄り添い、つながるための緊急フォーラム」を開催し、「つながりを切らないために、感染防止に配慮した形でつながりの活動を展開していくことが大切である」、「躊躇せずに、悩みに相談してほしい」等のメッセージを発出した。

その後、同年6月以降、実際に支援活動に取り組んでいるNPO等の方々などから直接現場の声を聞き、今後の孤独・孤立対策の立案に活かす目的で、「孤独・孤立に関するフォーラム」を計10回開催した。

令和3年3月には、「新型コロナに影響を受けた非正規雇用労働者等に対する緊急対策関係閣僚会議」を開催し、生活支援等・自殺防止対策など、孤独・孤立対策に取り組むNPO等に対する約60億円の緊急支援を行うこととした。

また、同年3月には、女性の相談支援、子供の居場所づくり事業を活用した「生理の貧困」への対応を公表したほか、同年4月には、緊急支援策のパンフレット「孤独・孤立対策に取り組むNPO等の皆様へ」、「検索サービスにおける子どもを主な対象とした検索連動窓口案内の強化について」及び国の災害用備蓄食品の有効活用についての公表を行った。

さらに、令和4年度概算要求においては、①孤独・孤立に陥っても支援を求める声を上げやすい社会とすること、②状況に合わせた切れ目のない相談支援につなげること、③見守り・交流の場や居場所づくりを確保し、人と人との「つながり」を実感できる地域づくりを推進すること、④孤独・孤立対策に取り組むNPO等の活動をきめ細かく支援し、官・民・NPO等の連携を強化することを柱として、孤独・孤立対策の各種施策を展開することとした。

同年5月には、孤独や孤立で悩んでいる方への担当大臣メッセージを公表した。また、同年6月には、日英の孤独担当大臣会合を実施し、「日英二国間会合の定期開催」「実態把握と政策に関する知見の共有」「日英両国及び世界への取組の発信」を内容とする共同メッセージを公表した。

同年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(令和3年6月18日閣議決定)においては、孤独・孤立対策の基本的な方向性が盛り込まれるとともに、関連する分野・施策との連携に留意しつつ、孤独・孤立対策の重点計画を年内に取りまとめることとした。

同年7月には、孤独・孤立対策担当大臣と欧州委員会副委員長との会談を実施し、「孤独・孤立対策においては人と人との絆が重要であること、このための地域づくりや社会全体の連帯の醸成が必要であることについて、知見や政策を共有する」及び「孤独・孤立の実態把握に関する知見を共有し、データに基づく政策を展開する」ことを内容とした、孤独・孤立に関する日・EU共同発表を行った。

孤独・孤立に関する各種支援制度や相談先を一元化して情報発信するホームページを作成し、18歳以下向けのホームページを同年8月に先行公開した後、一般向けのホームページを同年11月に公開した。

同年9月には、全国的にNPO等支援を行う中間支援団体、分野ごとの全国団体等が有志で集まり、補助金活用等の情報共有や専門職としての人材育成、現場の視点に立った政策提言などを連携して実施する場を持つため、孤独・孤立対策連携プラットフォーム(仮称)準備会合を開催した。準備会合では、年度内の設立を目指し、参加団体と議論を深め、プラットフォームの役割・あり方を検討することとしている。

2.孤独・孤立対策の基本理念

(1)「孤独」「孤立」双方への対応

  • 一般に、「孤独」とは主観的概念であり、ひとりぼっちである精神的な状態を指し、「孤立」とは客観的概念であり、つながりや助けのない状態を指す。
  • 「人間関係の貧困、困窮」とも言える孤独・孤立の状態は、「痛み」や「辛さ」を伴うもの。健康面への影響や経済的な困窮等の影響も懸念。
  • 孤独・孤立に至る背景や当事者(※)が置かれる状況は多岐。孤独・孤立の感じ方・捉え方は人によって多様。
  • 一律の定義の下で所与の枠内での施策の実施ではなく、「孤独」「孤立」の双方に対して当事者の状況等に応じた多様なアプローチ手法により施策を実施。
    ※ 生活困窮者、ひきこもりの状態にある方、妊娠・出産期の女性、子育て期の親、シングルマザー等の困難を抱える女性、DV等の被害者、子ども、学生、不登校の児童生徒、中卒者や高校中退者で就労等していない人、高齢者、求職者、中高年、社会的養護の出身者、刑務所出所者、犯罪被害者、被災者、障害者、難病等の患者、在留外国人、ケアラー、LGBTQなど
  • 個人の領域に対する公的な関与は謙抑的でなければならないことに留意。
  • 社会の変化による当事者が望まない「孤独」と「孤立」を対象として、実態やニーズに応じた施策を有機的に連関。
  • 「孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会」、さらに「誰もが自己存在感・自己有用感を実感できるような社会」「相互に支え合い、人と人との「つながり」が生まれる社会」を目指す。
  • 「社会的孤立」がセルフネグレクトや社会的排除を生むという「負の連鎖」を断ち切る観点からも取組を推進。
  • 実態把握の結果を踏まえ、関連データを利活用して、施策を点検・評価。

(2)当事者や家族の立場に立った施策の推進

  • 孤独・孤立は、人生のあらゆる場面において誰にでも起こり得る。
  • 孤独・孤立の問題は、人生のどの場面で発生したかや当事者の属性・生活環境等によって多種多様。
  • 当事者のニーズや生活基盤を置く地域の実情等は多様。支援に当たって配慮すべき事情を抱える方、当事者の家族が困難を抱えている場合も存在。
  • まずは当事者の目線に立って、当事者のライフステージや属性・生活環境、多様なニーズや配慮すべき事情等を理解した上で施策を推進。
  • その時々の当事者の目線や立場に立って、切れ目がなく息の長い、きめ細やかな施策を推進。
  • 孤独・孤立の問題を抱える当事者の家族も含めて支援する観点からの施策を推進。

(3)人と人との「つながり」を築くための施策の推進

  • 孤独・孤立の問題を抱える当事者が相談できる誰かや信頼できる誰かと対等につながるという形で、人と人との「つながり」を築くことが重要。
  • 疎外感が強い関係に形式的につないでも孤独・孤立の問題は解消しない。
  • こうした考え方の下で施策を推進。当事者の精神的な支援の充実は重要。
  • 孤独・孤立の問題は、当事者個人の問題ではなく、社会の変化により当事者が孤独・孤立を感じざるを得ない状況に至ったもの。当事者が悩みを家族に相談できない場合があることも踏まえると、行政・民間を含めて社会全体で対応しなければいけない問題。
  • 幼少期から「共に生きる力」を育む教育も重要。
  • 孤独・孤立の問題が顕在化する前の「予防」的な対応、関連分野や因果関係が多岐にわたる問題や行政に積極的にアクセスしない者への対応は、行政のみでは困難又はなじみづらい。行政と民間の連携が必要不可欠。
  • 行政・民間の施策の有機的な連携及び充実を図り、行政(特に基礎自治体)における既存の取組も活かした推進体制の整備、住民組織との協力、NPO等の民間法人との相互連携により、当事者に対して安定的・継続的に施策を展開。

3.孤独・孤立対策の基本方針

(1)孤独・孤立に陥っても支援を求める声を上げやすい社会とする

① 孤独・孤立の実態把握

  • 施策の効果的な実施や評価・検証、施策の在り方の検討、関係者との情報共有に資するよう、孤独・孤立に関する実態の把握を推進。
  • 実態把握の結果を踏まえ、孤独・孤立に陥る要因を分析し、予防の観点からの施策の在り方について検討。

② 支援情報が網羅されたポータルサイトの構築、タイムリーな情報発信

  • ポータルサイト等による継続的・一元的な情報発信、24時間対応の相談体制、ワンストップの相談窓口、プッシュ型の情報発信等を推進。

③ 声を上げられる環境整備

  • 孤独・孤立に陥っても「ためらい」「恥じらい」の感情により支援を拒む方、基本的に「申請主義」である制度の下で支援制度を知らない等により支援を受けていない方、孤独・孤立に陥っている方の家族など周りの方が困難を抱える場合が存在。
  • 当事者がその意思・意向により支援を求める声を上げることができ、当事者の家族等の周囲が気づきや対処をできるような環境を整える。
  • 社会全体の機運の醸成や支援制度を知るための情報発信や広報及び普及啓発、アウトリーチ型支援を含めた当事者への働きかけや「伴走型」支援を推進。

(2)状況に合わせた切れ目のない相談支援につなげる

① 相談体制の整備(電話・SNS相談の24時間対応の推進等)

  • 当事者一人ひとりの多様な事情やニーズ等の状況に合わせて、切れ目がなく、息の長い、きめ細かな相談支援を受けられるよう、全国において、24時間対応の相談など相談体制の整備を推進。
  • 各種相談支援制度の有機的な連携や各相談支援機関の対等な連携を進める。ワンストップの相談窓口等の一元的・包括的な相談支援体制の整備を検討。

② 人材育成等の支援

  • 関係機関において相談支援に当たる人材の確保、育成及び資質の向上を推進。
  • 相談支援に当たる人材へのケア等の支援により定着を促進。

(3)見守り・交流の場や居場所づくりを確保し、人と人との「つながり」を実感できる地域づくりを行う

① 居場所の確保

  • 人との「つながり」を持つ場や相談等の場となり、地域コミュニティの形成・維持にも資する「居場所」づくりや担い手の増大を推進。NPO等が利用しやすい支援の在り方を検討。
  • 「つながり」の場づくりそのものを施策として評価。

② アウトリーチ型支援体制の構築

  • 支援を求める声を上げることができない当事者を支援につなげることができるよう、当事者の意向や事情にも配慮したアウトリーチ型の支援を推進。NPO等が利用しやすい支援の在り方を検討。

③ 保険者とかかりつけ医等の協働による加入者の予防健康づくりの推進

  • かかりつけ医等と医療保険者が協働し、加入者の健康面や社会生活面の課題について情報共有しながら、加入者の重症化予防に必要な栄養指導等の保健指導の実施や地域社会で行っている相談援助等の活用を進めることで、加入者の健康面及び社会生活面の課題を解決するための取組を推進。社会的支援に公的施設を活用する取組も推進。

④ 地域における包括的支援体制の推進

  • 孤独・孤立の問題を抱えている、あるいは陥りやすい当事者に対して、地域の専門職等による継続的・緊急的支援、当事者が選択して役割を見出せる場となる地域コミュニティへつなぐ支援、コミュニティ(職場・世帯)間移動の支援等を行う各種制度での対応を充実。
  • 包括的支援体制の構築のツールである地域福祉計画の下で、福祉と教育の連携(例えば、子どもが通う学校を起点・拠点として問題を早期に把握して地域での支援へつなぐ仕組み)、福祉と雇用・就労や住まいの連携など、各分野の取組を有機的に連携させて分野横断的に、当事者を中心に置いた包括的支援体制を推進。
  • 地域において当事者を重層的に支えるセーフティネットを構築し、小学校区や自治会等の地域の実情に応じた単位で人と人とのつながりを実感できる地域づくりを推進。

(4)孤独・孤立対策に取り組むNPO等の活動をきめ細かく支援し、官・民・NPO等の連携を強化する

① 孤独・孤立対策に取り組むNPO等の活動へのきめ細かな支援

  • NPOや福祉関係法人等の活動(人材育成を含む)に対して継続的・安定的にきめ細かな支援を実施。

② NPO等との対話の推進

  • 対策が当事者のニーズ等に即してより効果的なものとなるよう、NPO等との対話により、官民一体で孤独・孤立対策の取組を推進。
  • NPO等が当事者への支援を進めるに当たって必要な場合には、当事者の意向にも配慮しつつ、個人情報の取扱いに関する先行事例等の情報をNPO等や地方自治体へ提供・共有。

③ 連携の基盤となるプラットフォームの形成支援

  • まずは各種相談支援機関やNPO等の連携の基盤となる全国的なプラットフォームの形成の支援により、人と人とのつながりを実感できる地域づくりや社会全体の気運の醸成を図りつつ、官民一体で孤独・孤立対策の取組を推進。

④ 行政における孤独・孤立対策の推進体制の整備

  • 孤独・孤立の問題への対応や官・民・NPO等の連携を円滑に進める観点から、地方自治体(特に基礎自治体)における既存の取組も活かした孤独・孤立対策の推進体制の整備を促進。
  • 地方自治体における体制整備や、地域の実情に応じた施策の展開・底上げを支援するため、地方自治体に対し、政府の施策や好事例等の情報を提供・共有。

3.孤独・孤立対策の重点計画の基本的事項

  • 本重点計画に掲げられた施策の実施状況の評価・検証や、本重点計画の見直しの検討を、毎年度実施。

参照

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