ビジネス全般

医療機器基本計画(平成28年5月31日)

国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画

平成 8年5月31日
閣議決定

はじめに

我が国は総人口が減少するとともに諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しており、 2015年9月時点で65歳以上の高齢者人口が3384万人、総人口に占める割合が26.7と推計されてい る。 4人に1人が高齢者という超高齢社会においては、国民誰もが健康な状態で生活できることを望んでおり、たとえ病気に罹ったとしても、その後もできる限り質の高い療養生活を送れることを願っている。 このような疾病予防、早期診断・早期治療に関する国民の期待は大きく、「健康寿命」の延伸に向けた取組が重要となる 。 高齢社会を支える大きな柱の一つが医療機器産業であることは間違いない。

医療機器は、これまでの歴史の中で様々な技術革新を基盤とした製品開発により、臨床現場の求めに応え、従来困難であった医療を可能にする一翼を担ってきた。今後も最先端の医療が受けられる社会を実現していくに当たり 、産学官の関係者が互いに協力・支援し合うなど医療機器産業の活性化を通じて、革新的な医療機器の実用化を推進していくことが期待されており、近年、そうした医療機器産業を育成するための環境整備が急速に進展している。

具体的には、医療機器産業はこれまで国内経済を牽引してきた、自動車産業、電気・機械関連産業などの産業分野と同様、ものづ くりの経験から培った世界に誇る技術力を基盤に活動する産業であ り、我が国において今後更なる成長・発展が見込める産業分野として期待されている こと もあり 、医療機器産業 はアベノミクスの3本の矢の政策の一つ として 成長戦略に位置付けられている。実際、我が国の医療機器市場は、毎年数パーセントずつ成長を続けており、世界の医療機器市場にあっては将来にわたり、持続的な成長が見込まれている。

このため、2013年11月27日に公布、 2014年11月25日に施行された 薬事法等の一部を改正する法律(平成 25 年法律第 84 号)による改正後の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律 (昭和 35 年法律第 145 号 。 以下「医薬品 医療機器法」という。)においては、医療機器の特性を踏まえた規制 の構築及び安全対策の強化を図ったところである。

また、健康長寿社会の実現を目指し、世界最高水準の技術を用いた医療の提供及び経済成長への寄与を基本理念とする「健康・医療戦略」が 2014 年 7 月 22 日に閣議決定され、 この 「健康・医療戦略」に即して、政府が講ずべき医療分野の研究開発とその環境の整備、成果の普及に関する施策についての基本的な方針とともに 、政府が集中的かつ計画的に講ずべき施策などを定める 「医療分野研究開発推進計画」が同日に 健康・医療戦略推進本部において決定された。 さらに 、 医療機器分野については、健康・医療戦略推進本部の下に次世代医療機器開発推進協議会を設置し、「健康・医療戦略 」 及び 「医療分野研究開発推進計画」に掲げられた施策の推進を図るとともに、 2015 年 4 月から国立研究開発法人日本医療研究開発機構 AMED が始動するなど、医療分野の研究開発の新たな推進体制が整備されたところである。

これら一連の状況の変化、 各種戦略等を踏まえつつ、 我が国において今後も最先端の医療が受けられる社会を実現すること及び医療機器産業が国内経済を牽引し、今後更なる成長・発展が見込める産業分野に育成するため、国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律(平成 26 年法律第99 号)第 7 条に基づき、 医療機器の研究開発及び普及に関する施策 について、基本方針を定めるとともに、

  • 先進的な医療機器の研究開発の促進
  • 医療機器開発関係者の連携協力に関する措置
  • 医療機器の 迅速な 承認体制及び 適正使用 等の確保
  • 医療機器の輸出等の促進と国際 協力及び展開等
  • その他 の 重要 課題 (医療機器の研究開発及び普及の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項)

の項目に対して医療機器関係者が 取り組む べき事項について、長期的視点に立ちつつ、基本的な計画(以下「基本計画」という。) として 定めるものである。

なお、本基本計画は、「健康・医療戦略」や「医療分野研究開発推進計画」等を踏まえ、医療機器の研究開発及び普及の促進に関して、更に深堀りするという位置付けのものである。

第1. 基本方針

基本計画の基本方針として 、 次の1~4を目指すこととする。

  1. 医療機器 関連事業者、大学その他の研究機関及び医師その他の医療関係者の連携の強化等により、我が国の高度な技術を活用し、かつ、我が国 の 医療 現場における 需要にきめ細かく対応した先進的な医療機器が創出されるようにする こと 。
  2. 医療機器の 開発及び実用化を支援するために 、 次世代医療機器開発推進協議会 による 内閣官房、文部科学省、厚生労働省、経済産業省等の各省間の連携強化を 引き続き 図る とともに、 医療機器開発支援ネットワーク等の基盤を生かし、 医療機器開発に 携わる、製造 ・ 販売、研究、医療 に携わる者 、地方自治体等の連携強化を進める こと 。
  3. 医薬品 医療機器法を 医療機器の特性を踏まえて円滑に運用 する と とも に、実用化を見据えた医療機器開発が進むよう支援を行うこと 。
  4. 日本 国内 のみならず、 国際協力を図りつつ医療機器の輸出等国際的な事業展開を促進するための環境を整備すること 。

第2.総合的かつ計画的に実施すべき施策

1 先進的な医療機器の研究開発の促進

医療機器分野における研究開発の促進 に当たっては、全く新しい基礎技術シーズを臨床応用することにより実現されるような最先端の医療機器の開発 や 、我が国の 高度な ものづくり 技術を継承 ・ 発展させることによる我が国発の多岐にわたる医療機器や周辺技術の開発 等 を 、 研究開発の出口 (実用化 を見据えつつ 総合的に 支援する必要がある。

医療機器については、「現場ニーズにあった研究開発、現場での改良と修正・最適化」が極めて重要である。大学等の基礎技術シーズや先端的な計測分析技術等の共通基盤技術、中小企業等の高度なものづくり技術等を医療現場ニーズとマッチングさせる施策、あるいは医療現場直結型の研究開発拠点の構築を大学病院や国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター をはじめとする医療機関に 負託 することによって、応用研究・試作開発の加速を容易にし、臨床現場での評価を経て、医療機器として実用化させるための橋渡しが適切になされることが極めて重要である。

医療機器の実用化を加速させるために 、 医療機器開発にこれまで関わってこなかった中小企業から 大 企業 までの異業種企業 がスピンアウトさせた 革新的 な医療機器を開発するプロジェクトを 、 様々な方向から支援する ことが重要であり 、 これら プロジェクト の マネジメントに特化した人材 を ネットワーク として つなぎ合わせる機能 が 求められている 。

また、日本はゲノム領域の診断機器開発に遅れをとって いる こと が指摘さ れている一方、米国では 、 2015 年 1 月 に、遺伝子、環境、ライフスタイルに関する個人ごとの違いを考慮した予防や治療法を確立する “Precision Medicine Initiative” の開始を発表し た。 疾患・患者のサブクラスを明確にするためのゲノム情報等を取得・解析する次世代シーケンサー等( 診断 機器 、 研究 用 機器 について も 、 欧米に 研究開発・実用化を 先行され、 事実上、 欧米が 標準 となっている。 我が国の高度な ものづくり技術を活用し、 医療 機器開発に 挑戦的に取り組むべきとの指摘もあることから、 今後、医療機器開発を進めるに 当たっては、同様の問題が起こらない よう 配慮が必要である。

これらの支援では、有識者による評価に基づき、研究支援を一体的に行い、最終的にはそれらの成果が民間事業者に継承される仕組み作りが必要である。

なお、医療機器の研究開発の促進 に当たっては、「医療分野研究開発推進計画」に基づき取り組む。

【実現のために考慮すべき事項】
  1. 医療現場 における ニーズや実用化が期待されるシーズの把握、選択と集中による研究開発プロジェクトの立案と実施体制の構築 を進める。 研究開発プロジェクトの立案に 当たって は、 革新的なもののみならず、 新興国・途上国 、在宅医療分野のニーズに即した低コスト化、軽量化した 機器 を 開発 する等の マーケットニーズを踏まえた 取組 も 必要である。 また、歯科領域における医療機器開発についても 取組が必要である。
  2. オンリーワンの世界最先端分野を切り開くために、我が国の医療機器産業の強みを限界まで研ぎ澄ましてターゲット( 手術支援ロボットシステム、人工組織・臓器、低侵襲治療、イメージング(画像診断)、在宅医療機器 (ポータブル歯科用ユニット等を含む) 等 )を絞り込 み 、 全て の関係者の力を糾合することが特に肝要 である 。
  3. ICT とロボット技術等を融合活用した医療関連業務の効率化や低コスト化のた め の支援システム を 構築 する。
    また、上記 の システム構築 など、 医療機器開発における ICT 利活用の推進に関しては、次世代医療 ICT 基盤協議会 と連携して推進を図る。
  4. 医療機器開発のプロセスにおける 安全性に関する非臨 床試験 を実施する ため 、大型動物 等 を用いた 試験 施設など の整備とその活用が求められている 。
  5. レギュラトリーサイエンス、 知的財産 、販売、保険償還までを含めた基礎研究から実用化までの課題を中小企業が解決し、前向きに実用化を進めることができ る よう、医工連携事業化推進事業の「伴走コンサル」の役割を発展させた機能 も求められる。
【実現のための具体的施策】
  1. 研究開発の推進
    国が行う医療分野の研究開発を推進するため、医療分野の研究開発業務に関し、国が戦略的に行う研究費等の配分機能を集約し、一体的な資金配分を行う AMED が2015 年 4 月 1日に設立された。
    AMEDにおいて、 プログラムディレクター( PD )の目利き機能を生かした基礎から実用化まで一貫した研究マネジメント の下 、知的財産の専門家による知的財産管理などの研究支援等も含め、基礎から実用化まで切れ目ない研究支援を一体的に行うことにより、革新的な 医療機器 の研究開発を推進していく。
    具体的には、AMED における 9 つ の重点プロジェクトの 1 つ である「オールジャパンでの医療機器開発」において、医工連携による医療機器開発を促進するため、複数の専門支援機関による開発支援体制(医療機器開発支援ネットワーク )を通じ 、我が国の高い技術力を生かし、技術シーズの創出と医療機器・システムの実用化へとつなげる研究開発を行う。また、医療機器の承認審査の迅速化に向けた取組や、研究開発人材の育成も行う。
  2. 医療機器開発支援ネットワークの構築・活用
    事業者・大学による医療機器の開発・事業化を推進するため、関係各省や専門支援機関、地域支援機関が連携し、医療現場のニーズ把握、医薬品医療機器法への対応、販路開拓等の多数の課題を解決するためのワンストップサービス の提供を 通じて 、開発初期段階から事業化に至るまでの切れ目ない支援を行う。また、「伴走コンサル」や企業人材の育成を図り、事業者等への支援を強化する。
  3. 医療現場が医療機器メーカーと協力して臨床研究及び治験を実施する仕組みの整備、ニーズとシーズの適切なマッチング
    医療機関で、医療機器を開発する企業の人材を受け入れ、医療機器開発を担う医療機関の体制を整備する。あわせて、当該医療機関において、国内外の医療ニーズを満たす医療機器の開発の推進を図る。
    医療機器分野へのものづくり中小企業等の新規参入を促進するため、地域に密着した支援機関がマッチングを行うに当たり必要な専門家等の派遣を支援する。
  4. 医療現場のニーズを抽出するスキームの構築
    AMEDにおいて、 医療現場のニーズを踏まえた機器開発を加速するため、当該ニーズを抽出するための仕組みを整備 し、 企業とのマッチングや将来 的な事業化 を加速する 。
  5. イノベーションを創出するリーダー人材の育成
    課題解決型のイノベーションに必要な考え方やスキルを臨床現場のニーズを出発点として実践的に習得するプログラム の 展開 を推進する。
  6. 最先端診断・治療機器技術開発等の推進
    産学連携体制により、臨床研究及び治験並びに実用化を見据えて、相対的にリスクの高い治療機器や新たな診断機器 、重粒子線がん治療装置 などの最先端診断・治療機器及びシステムの研究開発を推進する。 また、日本が強みを有する画像診断分野についても、競争力の 更 なる強化のため、引き続き研究開発を支援する。
  7. 医療関連業務の効率化や低コスト化支援システムの構築
    類似症例に関する過去の診療データを検索・分析することで、最適な治療を可能にする診療支援システム等の研究開発を推進する。
  8. イノベーションへの適切な評価
    我が国における革新的医療機器の開発を進めるため、保険医療材料 制度等におけるイノベーションの適切な評価を 、 画期性・有用性に対する評価、 新規医療材料を用いた技術の評価、機能区分の細 分 化、合理化及び定義の見直し等により推進する 。
  9. 試験施設との連携
    現在、医療機器の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令( 平成17 年 厚生労働 省令第 37 号。 いわゆる「 GLP 省令 」。 )に定める 基準に適合した、 全国初の共同利用型の試験施設 である ふくしま医療機器開発支援センター (福島 県郡山市) の整備が進められており、医療機器開発を行う企業が、 当該 施設と連携し、スムーズに臨床応用へとつなげるための体制構築を行う。

2 医療機器開発関係者の 従前の枠組みを超えた 連携協力に関する措置

医療機器については、関係する省庁が文部科学省、厚生労働省、 経済産業省を中心として複数にまたがって いる。 また、医療機器の製造、販売等を行う事業者、医療機器に関する試験又は研究の業務を行う者、医師等が協力 することにより、有効で安全な革新性の高い医療機器を開発することが 可能となる。このため、医療機器開発関係者 相互の協力を推進する必要がある。

連携の形として、地方行政、中小企業や工業試験場等の地域発の医工連携の推進の視点も重要である いわゆる医工連携には医学、工学分野の専門家だけではなく、薬学分野、その他の分野が協力し取組を進めている。) 。 また 、 医療機器販売業は医療体制において、臨床現場と開発メーカーのパイプ役 として 、製品を国内に普及させる役割 、販売後の製品について改良のための意見を収集する窓口役等を担っている。

大学では基礎技術の開発が行われているが、医療機器開発の実践につながっていないとの指摘がある。基礎分野の研究者が自ら開発した技術をシステムとして構築することの重要性を認識するようになることが重要であり、それら社会実装力の向上には関係学会の努力が必要である。 基礎研究者がその基礎研究を実用化し、積極的に世の中に出して行くことの重要性を大学からも 発信して行く必要がある。 知的財産戦略について は 、優れたアイデアを特許により権利化するための知識を得る機会が少なく、大学などの研究機関における知的財産戦略を立案できる人材育成の必要性が指摘されている。

【実現のために考慮すべき事項】
  1. 既存医療機器の改良・改善・最適化や、医療現場が医療機器メーカーと協力して臨床研究及び治験を実施する仕組みの整備、短期に実用化が見込まれる既存機器の改良・改善、医療現場等におけるニーズと大学等の基礎技術シーズや中小企業における高度なものづくりの技術シーズの適切なマッチングによる機器開発を推進する。
  2. 真の医療ニーズを見出 し、 知的財産戦略の立案を含めた 最終的なビジネスとしての発展を視野に入れつつ、わかりやすい目標の形に設定できる 人材を育成するための仕組みの整備及び医療人材と開発人材の交流を進める。
  3. 医療機器の開発・改良・改善・最適化に際しては、 作り手と 使用者 の連携が重要であり、 現場で の使用感等も反映 できる 仕組みが望ましい。 この際、使用感 等 を客観的な指標(例えば、手術・処置に要する時間 等 を加味して 評価する方策が必要である 。
【実現のための具体的施策】
  1. 医療分野の産業化の促進
    大学等の研究成果の実用化に向け、有望なシーズの発掘から企業主体での事業化開発や、優れた基礎研究成果や産業界が抱える技術課題の解決に資するテーマを基にした産学協同研究等の支援を行う。
  2. 医療ニーズを 見いだす 人材を育成するための仕組みの検討
    前述のイノベーションを創出するリーダー人材の育成に加え、 医療機器を開発する企業の人材を、研究開発を行う医療機関で受け入れ、市場性を見据えた製品設計の方法に関する研修等を実施することにより、医療ニーズを 見いだす 人材(医療機器の企画・開発、薬事・ 知的財産 戦略、ビジネスプランの策定までを一貫してマネジメントできる人材)育成のための仕組みをプログラム作成等を含めて 5年 以内に検討する。
    また、大学における医学と工学 の融合領域の教育の促進に努める。
  3. 医療人材と医療機器開発人材の交流
    医療機器開発の経験者及び医療機器の審査等の経験者の招聘を通じて、医療機器関連企業及び医療機関内の医療機器開発関係者に対して研修やセミナー等を 毎年 開催し、医療人材と医療機器の開発に係る人材の交流を推進する。
  4. 産学官の連携
    産学官連携などにより、優れたシーズを実用化につなげ、イノベーションを創出する研究開発等をイノベーション実用化助成事業等を活用して支援する。
  5. ベンチャー企業等への支援
    医療ニーズの多様化や新しい技術に対応しつつ、革新的な医療機器 を創出するため、強い領域への選択と集中、社内の研究開発・人的資源と社外のシーズ・技術・資金が融合するオープンイノベーションの促進等、民間企業が積極的に取り組むことのできる環境が必要である。そのため、民間企業の研究開発力の強化、国際競争力の向上に資する 医療機器 の開発等を促進するための施策を引き続き進める。

3 医療機器の 迅速な 承認体制及び適正使用等の確保

既に2014 年 11 月に施行された 改正後の 医薬品 医療機器法において 、 医療機器等 の安全かつ迅速な提供の確保を図るため、添付文書の届出義務の創設、医療機器の登録認証機関による認証範囲の拡大等の所要の措置 が 講じ られ たところであり、 短いサイクルで改善・改良が行われる、医薬品とは異なる医療機器の特性を踏まえて、円滑 に運用していくことが重要である。

また、医療機器が有効かつ安全に使用されるためには、医療機器を使用する医師等の技術によるところが大きいため、医療機器の適正な使用方法等について、情報を提供する体制を充実させたり、実際に使用する医師等に対する使用方法等の研修を充実させたりするなど の 施策を 行う必要がある。

その際、 医薬品 と医療機器、診断と治療等のコンビネーション医療機器の開発が進んで いることにも留意すべきである 。

【実現のために考慮すべき事項】
  1. 革新的な医療機器の開発に注力する場合、これまで以上に医療機器の安全対策の充実や強化に取り組むことが一層重要となる。
  2. レギュラトリーサイエンス(有効性・安全性の評価、開発・審査に関するガイドラインの整備等に関する研究の基となる科学)を 普及 ・ 充実 させる。また、研究開発における出口戦略 (実用化 を見据え、開発プロセスの早い段階から独立行政法人医薬品医療機器総合機構( PMDA が関与することにより、相談・承認審査・市販後安全対策を通じて革新的な 医 療機器の実用化に向け適切な対応を行うなど医療機器開発支援の充実強化を図ることが必要である。
  3. 産学官での連携を図る上で、 PMDA 経験者等の知識のある人材を医療機器の開発現場でも活用することにより実用化が加速される。
【実現のための具体的施策】
  1. 特性を踏まえたレギュラトリーサイエンス
    PMDAと国立 医薬品 食品衛生研究所、大学、研究機関、医療機関、企業等との連携を強化し、薬事戦略相談の 強化 、審査ガイドラインの整備、審査員の専門的知識の向上等を通じて研究開発におけるレギュラトリーサイエンスを 普及・充実 させる。
  2. 関係機関の連携
    医療現場や企業の製造現場における現場研修などの充実強化に努めるとともに、企業との連携による研修の充実並びに厚生労働省、国内外の大学及び研究機関等との交流等によって、 PMDA の 職員の資質や能力の向上を図る。
  3. 革新的医療機器の 早期実用化支援
    画期的な治療方法の一刻も早い実用化が求められている疾患等を対象とした医療機器のうち、初期の臨床試験データ 等 から、既存の治療法より大幅な改善が期待されるものを指定し、相談・審査における優先的な取扱いの対象とする 先駆け審査指定制度により 、更なる迅速な実用化を目指す。
    一方で、欧米等では使用が認められているものの、国内では承認されていない医療機器の開発ラグの解消については、厚生労働省に設置されている 「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」 の検討結果 に基づく取組により、企業における開発を促進していく。
  4. 中小企業・ベンチャー企業支援
    中小企業等の薬事担当者を対象として承認申請や治験の計画作成、 GCP 等 の信頼性基準に関する教育研修を行うことにより、申請資料等作成の迅速化や質の向上を図り、薬事承認までの期間を短縮させる。
    中小企業では基礎研究から実用化に至るまでの各種手続を行うための人材が不足しているため、医工連携事業化推進事業、薬事戦略相談等のコンサルテーション機能の更なる活用により医療機器開発 を進める 。
  5. PMDA の体制強化等
    PMDAの審査・安 全 対策体制の強化と質の向上に資するよう、高度かつ専門的な人材を雇用するため、任期制の適用職員の拡充や年俸制の導入も含め、戦略的な人材確保の在り方について検討を行う。 また、審査・安全対策体制の強化等に加えて、品質の確保の観点についても、国内に加え海外の事業者に対する実地の製造管理及び品質管理に係る調査(以下「 QMS 調査」という。)を 、 製品及び 製造所リスク の総合的な 評価の観点も踏まえつつ、 更に 充実するよう取り組む。

4 医療機器の輸出等の促進 と国際 協力及び展開等

日本のもの づくり産業力は、世界でも高く評価され ている 。 また、医療機器産業は日本においても成長戦略の 1つ に挙げられ、様々な施策により推進しているところ である。

一方、 治療機器などの大幅な輸入超過 により 、近年は全体の輸出入額の総額は増加しているものの 依然 輸入超過の状態である。

欧米 などの先進国に加え、医療の高度化が進みつつあり市場が急拡大しているアジア等の新興国 への対応が重視されており 、日本が新興国等に対して、各国の医療ニーズや医療環境等 を十分に踏まえつつ、高品質な日本の医療機器 及び 医療技術 並びに医療サービス(以下「医療機器 等 」という。) の提 供を推進するとともに、日本が長年培ってきた経験や知見を 生かし 、相手国の医療システムの構築に協力することに取り組んでいる。

医療機器の開発等については 、 質の高い臨床研究や治験、研究ネットワークの構築等の国際共同研究を実施するための支援体制の強化も求められる。

また、医療機器産業の国際展開や 医療機器分野の国際的規制調和・協力を戦略的かつ強力に推進していくため、 2015年6月に厚生労働省が取りまとめた 「国際薬事規制調和戦略 」 に基づき、行政間での規制調和を進めるとともに、そこで得られた調和の成果を産業界とアカデミアがどのような観点から活用して い くかについても検討が必要である。具体的には、レギュラトリーサイエンスの融和が進むことにより 得られた情報を共有し 、国際規制調和の成果を、日本発の医療機器開発につなげるために産 学 官 の連携の促進が必要である。

産業化の視点として は、画像診断分野において、医療機関との強い連携 の下 、コア技術を構築し、先進 的な 医療機器等 を開 発してきた。これを更に強化し、医療への貢献、海外展開を加速する。加えて、アジア、アフリカ等と相手国の実情とニーズに適した医療サービスの提供や制度開発等の協力を通じて、真に相手国の医療の発展に寄与する持続的な事業展開を意識した日本の産業競争力の強化を図る必要がある。

以上を踏まえ、医療の国際展開を通じて、日本の医療分野の成長を促進しつつ、相手国の医療水準向上にも貢献し、国際社会における日本の信頼を高めることによって、日本にとっても新興国等にとっても好循環となることを目指す。

【実現のために考慮すべき事項】
  1. 新興国・途上国等に対して、各国の実情を十分に踏まえつつ、具体的な医療機器等 の提供、医 療・介護システムの構築に協力することで、医療・介護分野において相互互恵的な関係を構築する。
  2. 世界経済のボーダレス化が進む中、国際標準の重要性が増している。我が国の 医療機器 がスムーズに世界のマーケットに参入できるよう、規制の国際整合に取り組むとともに、国際的な規制業務に係る人材の育成・体制の強化を積極的に行う必要がある。
    また、国際競争力強化のため、我が国が優れた技術を有する先端医療機器 分野 等 について、安全性等の国際標準提案といった戦略的な国際標準化の取組を推進することが重要である。
  3. 国際展開の観点からは、特に医療機器については様々な技術対応が必要とされる。官民ともに、人材育成が困難な状況もあるが 、 継続的に我が国のものづくり技術を国際発信 する ためにも国際標準化の取組は必要である。
【実現のための具体的施策】
  1. 医療機器等の国際展開
    健康・医療戦略推進本部の下 で開催されている医療国際展開タスクフォース等の場において、関係機関(一般社団法人メディカル ・ エクセレンス ・ ジャパン(MEJ)、独立行政法人国際協力機構(JICA) 、国際協力銀行(JBIC) 、日本貿易振興機構(JETRO) 、 PMDA 等)と関係府省が一体となり、情報共有や PDCA の実施等を行い、新興国・途上国等のニーズに応じて日本の 医療機器等 の国際展開を図る。
    日本が強みを有する画像診断分野を含む、日本の医療機器等 の国際展開を図るため、新興国を中心に日本式医療拠点を構築する。
  2. 国際的な人的協力
    途上国に対して、政府開発援助( ODA 等の公的な資金を活用した、専門家派遣・研修生受入れ等の人的協力や諸制度の普及を行う際に、日本の良質な 医療機器 を用いた手技 を 習熟してもらい、それを通じて輸出拡大を図る。また、 世界保健機関( WHO の支援事業を拡充することにより、公衆衛生水準の向上を通じて、特に西太平洋地域の社会の安定を実現する。これにより、日本の医療機器開発企業が当該地域へ進出するための環境整備を行う。
  3. 海外における日本で開発された医療機器の展開
    海外に拠点を持つ日系企業及び関係府省との協力の下 、官民一体となった交流を促進する。具体的には、高品質の 医療機器 の国際展開を拡大することを念頭に、我が国の 治験や薬事申請等に関する 規制・基準等への理解度向上 と国際整合化 に向けて、新興国 ・ 途上国を中心とした国・地域の規制当局等との対話を強化し、我が国の承認 ・認証等 制度の理解を促して、国レベルでの信頼関係の構築・強化を 図り、また、欧米アジア各国との間で共同作業を行う 。
  4. 戦略的な国際標準化等の取組の推進
    最先端の技術を活用した医療機器 の有効性及び安全性の評価に関する研究の充実や、最先端の診断・治療技術について世界に先駆けた国際規格・基準の策定を提案することで国際標準化を推進する。これにより、 2020 年までに日本が提案した国際規格等の策定を目指す。
    また、「 国際薬事規制調和戦略 」 においては、 PMDA に薬事規制に係る各国規制当局の人材育成機関(アジア医薬品・医療機器薬事トレーニングセンター)を設置し、集団セミナー等を実施する。
    さらに、 MDSAP Medical Device Single Audit Program (医療機器単一調査プログラム) Pilot について、 参加した 米国等の規制当局において QMS 調査を実施する民間調査機関 を 認定 し、 当該 機関が行った QMS 調査 の 結果 を各国の規制当局 で活用するプログラムが試行的に実施され、日本も本プログラムへ参加することから、 PMDA 等において、当該民間調査機関の監督業務を担う体制を 整備し、 本活動の下 で、より一層の医療機器の品質確保を徹底していく 。
  5. 日本の医療技術の海外への移転支援
    医療機器等 の国際展開等の国際医療事業を進める基盤として、海外の医療関連人材に対し、日本の高品質な診断・治療技術を紹介し、実際に触れることができる機会を継続的に提供するとともに、教育を行う機能を強化する。
  6. 国際会議への参加
    医療機器の規制の国際整合に関する活動を推進し、企業がグローバルに活動しやすい環境整備を進める。 アジアの規制当局・産業界との規制調和に関する対話に おいて 日本の 知見・経験 を積極的に共有すること な どを通じて、 規制や規格・基準の国際整合を日本がリードできるよう、官民共同で 取り組む。
  7. 安全情報の国際発信
    我が国で承認された医療機器 について、 PMDA における安全性情報の国際的発信への取組を推進する。
  8. 輸出手続の電子化
    医療機器の輸出に係る手続について、 NACCS (輸出入・港湾関連情報処理システム)を活用した電子化 による効率化を進めることにより、 医療機器 の国際展開を支援する。
  9. 中小企業 ・ベンチャー企業による医療機器の開発
    日本の優れた技術を有する中小企業 ・ベンチャー企業の事業連携を促進するため、国内外の大手企業等とのビジネスマッチングの場の支援や国際展開支援を実施する。あわせて、世界の企業、大学等の研究開発機関が集まり、セミナー、展示会等を活用し、中小 企業 ・ベンチャー企業と国内外の医療機器メーカー等とのアライアンスを促進する。

5 その他の重要課題 医療機器の研究開発及び普及の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

医療機器開発は、医薬品開発 と 異なり、 医療機器 が 多種多様 であること や、 改良のスピードが速いことから 、 その促進に関しては、様々な 観点から網羅的に 施策 を行うこと が必要になる。また、 中小企業は高度な ものづくり技術 を有している ため 、 その支援策 を十分 考慮する必要がある。研究開発の方法や 知的財産 ・資金の確保などを含めたきめ細やかなアドバイス等が必要である。

【実現のために考慮すべき事項】
  1. 世界最高水準の医療の提供に必要な医療分野の研究開発の円滑かつ効果的な実施に必要となる臨床研究及び治験の実施体制、データベース、 ICT 等の環境整備を推進する。
  2. 高齢者・障害者等の機能支援機器開発への取組を進める。
  3. 医療機器の保険収載のためのエビデンスを含め、予見性を高めるための相談体制の整備が必要である。また、イノベーションの評価の 在り方 については、適時適切に技術の進歩も踏まえ、判断されるべきである。
【実現のための具体的施策】
  1. 臨床研究及び治験実施環境の抜本的向上
    国際水準の質の高い臨床研究・治験の中心的役割を担う臨床研究中核病院、革新的医療技術創出拠点プロジェクトにおいて整備 され ている橋渡し研究支援拠点、臨床研究品質確保体制整備病院及び日本主導型グローバル臨床研究拠点並びにナショナルセンターといった拠点を総合的に活用し、それらを中心とした ARO (Academic Research Organization)機能を構築するとともに、各拠点において、質の高い臨床研究・治験の実施に必要な人材(臨床研究コーディネーター、データマネージャー、生物統計家など)を確保することなどにより、革新的医療機器の開発に必要となる臨床研究・治験を推進する。
  2. 患者登録データ等を利用した効率的な開発
    植込み型医療機器の長期予後の検討等に用いる患者レジスト リ が 国内外で 構築され ているところであるが、 そのような 患者 登録データ 、 疾患登録情報 等 を 、 医療機器の改良・改善 や 革新的医療機器の臨床評価を行う場合の比較 対照 データとして 活用する 新しい 開発手法 への関心が高まっている。
    このような背景から 、 ナショナルセンター や学会等 が構 築する患者登録データや各種レジストリを活用して、臨床研究中核病院 や PMDA 、 AMED を 中核とする国内外のネットワーク(クリニカル・イノベーション・ネットワーク構想)を構築し、経済効率的な治験 を 実施できる開発環境を整備することで臨床開発の加速化を推進する。本構想においては 、 ナショナルセンター 等 において、 疾患登録システム構築、産学連携による治験コンソーシアムの形成などを行い、これらと併せ、研究機関と連携して、疾患登録情報を活用した臨床開発手法の開発研究などを行う。
  3. 高齢者・障害者等の機能支援機器の開発
    脳科学を応用したコミュニケーション支援機器や意思伝達装置、ロボット技術の活用など、高齢者・障害者等が地域社会で安心して暮らしていくための社会的障壁の除去につながる技術開発を推進し、 5 年 以内に 3 件 以上の機能支援機器の実用化を目指す。
  4. 在宅医療機器の開発
    在宅医療における医療スタッフ等からのニーズを踏まえ、在宅医療機器の開発を推進する。また、介護の原因となる脳卒中などの循環器疾患に対する対策について、これからの在宅医療を見据え医療機器のポータブル化等に着目した開発を推進し、遅くとも 2020 年までに企業への導出 を目指す。
  5. 医療機器の保険適用 に ついて 相談可能な体制の整備
    特定保険医療材料等の価格 算定についても、事前に相談したいとの要望がベンチャー企業等を含む産業界から寄せられている。企業が戦略的な 医療機器 の開発を行うためにも、特定保険医療材料等の予見性を向上させることは重要であることから、その予見性を向上させるために、既存の価格算定ルールの内容や注意事項、 適用 等について、治験前、薬事承認審査前 及び 保険収載前の各段階に応じて、随時、厚生労働省 に 相談可能な体制 の整備 について検討する。
  6. 開発の場の整備
    我が国の医療機器産業が、産業としての競争力を強化するためには、我が国が魅力のある医療機器開発などの場となり、内資・外資を問わず、我が国において活発な研究開発活動が行われることが重要である。民間企業での研究開発活動については、これまでも、研究開発税制など各種施策によって支援を行ってきたところであるが、今後ともそれらの効果を検証しつつ、活用促進等を図るなど、民間での研究開発投資強化策を着実に実施する。また、我が国における知的財産の創造を促進する観点からの施策についても、諸外国での施策も参考にしながら、検討・検証 ・分析等を行う。
  7. 資金供給のための環境整備
    医療機器の開発及び実用化を支援するためには、各省連携の下 、医療機器開発支援ネットワーク等の基盤を 生かし 、開発段階に応じた支援策を講じていくことが重要 である 。特にファイナンスは、 事業者 がニーズを踏まえて練り上げたコンセプトを実現する上できわめて重要なツールであり、 健康・医療戦略ファンドタスクフォースの議論も踏まえ、 地域ヘルスケア産業支援ファンド(地域経済活性化支援機構( REVIC ))、医療機器インキュベーションファンド(産業革新機構( INCJ))等の事業目的に応じた多様なスキームの 活用を促進 する。
  8. 起業支援
    ベンチャーキャピタル、金融機関、税理士・会計士等の官民の起業支援人材の連携を強化し、成長可能性の高いビジネスアイディアやシーズに対する経営支援(ハンズオン支援)を行い、その成功事例やノウハウの周知等を通じて新事業創出促進のための環境整備を実施する。

第3. 基本計画を推進するために必要な事項

国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律第 14 条に基づく協議の場として、次世代医療機器開発推進協議会の下に国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する協議のためのワーキンググループを設置することとする。

基本計画に定められた目標の達成その他医療機器の研究開発及び普及の促進に関する施策の効果的推進を図るために、必要に応じ少なくとも 2020 年まで年度毎に、その進捗状況について検討を加え、この結果を踏まえ、見直しを行い、必要な変更を講ずるものとする。

また、政府は、必要に応じて、この基本計画に定められた 目標の 達成 状況 を評価するための調査をワーキンググループの決定により 行 う こととする 。

参照

経済産業省ホーム > 審議会・研究会 > ものづくり/情報/流通・サービス > 医療機器・ヘルスケア開発協議会 > 第3回 医療機器・ヘルスケア開発協議会

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