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スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議 第二次報告書(令和3年7月5日)

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はじめに

文部科学省では、生徒の科学的能力を培い、将来、国際的に活躍する科学技術人材を育成するため、教育課程等の改善に関する研究開発を含めた先進的な理数系教育を行う高等学校等(以下、「高校」という。)を 支援する 、「 スーパーサイエンスハイスクール( SSH )支援事業 」(以下、「 SSH 事業」という。) を実施している。

SSH事業は、平成 14 年度の事業 開始 以来、 約 20 年が経過して おり 、 これまで優れた科学技術人材の育成が着実に行われるとともに、令和4 年度 から 年次進行で 実施される 新 高等学校 学習指導要領 (以下、「新学習指導要領」という。)においては 、 SSH 事業の取組を踏まえた 新たな探究的科目 「理数探究基礎」 「理数探究」が 設けられ、教育課程全体の改善が図られる など 、
様々な成果を上げており、その普及も進んでいる 。

一方、 平成 29 年 11 月には、行政改革推進会議による 秋の年次公開検証(秋レビュー) の 指摘を受け たこと等を踏まえ 、平成 30 年 1 月に「スーパーサイエンスハイスクール( SSH )支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議」(以下、「有識者会議」という。)を設置し、今後の方向性等について検討を 行った。その後、 同 年9月に は、基礎枠及び重点枠の見直し、事業運営の検証の在り方、スーパーグローバルハイスクール( SGH )事業との連携 など を主な内容とした 報告書 (以下、「平成 30 年報告書」という。) を取りまとめ た ところである。

さらに、令和元年には、 SSH 事業が財務省の予算執行調査の対象となり、以下の指摘を受けた。

【令和元年度予算執行調査の指摘事項】
  • 事業開始から長期間経過しているにもかかわらず、文部科学省において有効な評価方法が確立されていない。文部科学省が主体的に、明確な評価基準を示すとともに、各指定校に検証可能な到達目標を立てさせるよう制度を改善していくべき 。
  • 文部科学省が主体的に、普及方法、先進事例等を示し、連携に向けたサポートをすることが必要ではないか。 更に、非指定校や近隣小中学校への成果還元を本事業の採択要件や評価項目として盛り込むなど、各指定校が確実に普及活動に取り組むような制度設計とすべきではないか。
  • 早期の自立を促すため、交付額の 抑制・補助形式の導入・継続指定は2期までとするなど、採択基準の厳格化・指定期間終了後の自走化等に向けた取組方針が明確である学校に限定といった見直しを行うべきではないか。
  • より効率的な調達となるよう、調達ルールを厳格化すること・受益者負担を求める補助形式を導入することを検討すべきではないか。購入希望が多い備品や汎用性のある備品については、要求を一定期間に集約しまとめて購入することで、購入価格の 低減を図ることが可能ではないか。

上記の 予算執行調査における 指摘 や これまでの SSH 事業の 成果 、管理機関・ SSH 指定校からの要望等 を踏まえ、 事業成果の最大化を図るため 、 平成 30 年報告書に 引き続き 、 有識者会議 において、令和元年 12 月から 令和2年 10 月にかけて計 11 回にわたり 審議を重ね 、SSH 事業の目指すべき姿やその実現のために取り組むべき方策を中心に 検討 を行 い、令和2年 12 月に論点整理を取りまとめた。

その後、さらに、目指すべき SSH 指定校の総数や 認定枠 (仮)に対する国の支援、 SSH活動における研究倫理の在り方等について検討を進め、第二次報告として本報告書を取りまとめた。今後、国、管理機関、 SSH 指定校においては、本資料を踏まえ、 SSH 事業の更なる改善・充実に不断に取り組むことを期待するとともに、新たな価値の創造など次の時代の先駆けとなる人材育成システムの構築に本事業が貢献することを願ってやまない。

Ⅰ.これまでの SSH事業の 成果と課題

1.SSH事業の目的・趣旨の再確認

SSH事業は、生徒の科学的能力を培い、将来、国際的に活躍する科学技術人材を育成することを目的として、平成14年度から実施されており、令和3年度現在、 218校が指定されている。

科学技術イノベーションを担うのは「人」である。

経済や社会の構造が急速に変化し、先が見えない中で、我が国が厳しい国際競争に勝ち抜き、持続的に発展するためには、科学技術イノベーションを起こしていくことが不可欠であり、そのためには、優れた科学技術人材を積極的に育成・確保していくことが必要である。

また、Society 5.0の到来を前に、人工 知能( AI )、ビッグデータ解析、 Internet of Things IoT )等の先端技術が高度化し、 社会全体において デジタルトランスフォーメーション( DX の取組が加速化している中、社会の在り方そのものが劇的に変 化することが予想されている。このような社会においては、科学技術 イノベーションとともに、これを支え、イノベーションや価値創造の源となる知識を発見・創出し、それらを社会課題の解決につなげる人材の育成がより重要になる。 また、こうした 社会課題を 解決 する イノベーション創出の源泉となる「知」は、 真理の探究、基本原理の解明など基礎研究・学術研究をはじめとする研究の蓄積から生まれるものであ り 、その多様性と厚みを生み出すことの重要性 も、 より一層高まっている。

さらに、学習指導要領の改訂に関する中央教育審議会答申においては、直面する様々な変化を柔軟に受け止め、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかを考え、主体的に学び続けて自らの能力を引き出し、自分なりに試行錯誤したり、多様な他者と協働したりして、新たな価値を生み出していくための必要な力 を身に付けることが重要であるとされ、特に、研究者については、深い知的好奇心や自発的な研究態度、自ら課題を発見したり未知のものに挑戦したりする態度が求められており、革新的な価値は、多様な学問分野の知の統合により生まれることが多く、従来の慣習や常識にとらわれない柔軟な思考と斬新な発想によってもた ら されるものとされている。高校段階においてこうした人材を育成するためのシステムを先駆けて開発し、全国的に展開することが SSH 事業に求められている。

とりわけ、今般、新型コロナウイルス感染症拡大という危機的な事態に、我が国のみならず世界が直面し、感染状況の予測が極めて困難である中 では、事実・データを 基 に科学的に解釈し、主体的に考え 行動 に移 すことができ、 科学に関する リテラシー や新たな価値を創造する探究力を備えた人材の育成が重要である。そして、こうした資質・能力は、まさに SSH 事業により行われる先進的な理数系教育 を通じて育成されるものである 。

さらに、教育再生実行会議や中央教育審議会において提言された STEAM 教育を推進するためには、課題研究など SSH 指定校で行われている問題発見・解決的な学習の充実が求められている。

これらの状況を踏まえ、SSH事業については、 引き続き 、将来、国際的に活躍し得る科学技術人材の育成を 事業目的 として 掲げ 、 国として 科学技術人材としての資質・能力を育成するシステム開発を不断に 推進 す る必要がある 。

2.SSH事業の成果と課題

(1)国の科学技術政策におけるSSH事業の位置づけ

我が国の 平成 28 令和2 年度 における 科学技術 の振興に関する基本的な計画 である「第5期科学技術基本計画」 (平成 28 年 1 月 22 日閣議決定)において 、 SSH 事業は、次世代人材育成施策として 、以下のとおり記載されており、 「 科学技術イノベーションの基盤 的な力 の強化 」の一つ に 位置づけられて きた 。

参考:第5期科学技術基本計画(平成28 年 1 月 22 日閣議決定)( SSH 関係箇所抜粋)
第4章 科学技術イノベーションの基盤的な力の強化

(1)人材力の強化

①知的プロフェッショナルとしての人材の育成・確保と活躍

iv)次代の科学技術イノベーションを担う人材の育成

我が国が科学技術イノベーション力を持続的に向上していくためには、初等中等教育及び大学教育を通じて、次代の科学技術イノベーションを担う人材の育成を図り、その能力・才能の伸長を促すとともに、理数好きの児童生徒の拡大を図ることが重要である。

このため、創造性を育む教育や理数学習の機会の提供等を通じて、優れた素質を持つ児童生徒及び学生の才能を伸ばす取組を推進する。国は、学校における「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び(いわゆるアクティブ・ラーニング)」の視点からの学習・指導方法の改善を促進するとともに、先 進的な理数教育を行う高等学校等を支援する。また、意欲・能力を有する学生・生徒が研究等を行う機会や、国内外の学生・生徒が切磋琢磨し能力を伸長する機会の充実等を図る。さらに、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的な改革を進める。

また、児童生徒が、科学技術や理科・数学に対する関心・素養を高めるための取組を推進する。国は、課題解決的な学習や理数教育の充実等を図った学習指導要領に基づく教育を推進するとともに、高度な専門的知識を有する人材や産業界・地域人材を活用した先進的な理数教育の充実等を図る。

また、第 3 期(平成 18 22 年度)、第 4 期(平成 23 27 年度)の「科学技術基本計画」においても、 SSH 事業 を 含む 次世代人材育成 施策 について 記載 されて いる。

さらに、新たな 基本 計画 である 第6期 (令和3~7年度 の 「科学技術・イノベーション基本計画」においては 、 SSH 事業 において重視してきた探究力の育成の重要性を強調し、 SSH 事業を 「一人ひとりの多様な幸せ( well being )と課題への挑戦を実現する教育・人材育成」の 具体的な取組 の一つ として位置づけ ており、 STEAM 教育の推進に資することを併せて示している 。

参考:第6期科学技術・イノベーション基本計画(令和3年3月26 日閣議決定)( SSH 関係箇所抜粋)

(注)下線は、SSH 関係個所の抜粋に当たり追加したものであり、原文にはない

第2 章 Society 5.0 の実現に向けた科学技術・ イノベーション 政策

3.一人ひとりの多様な幸せ(well being )と課題への挑戦を実現する教育・人材育成

(b)あるべき姿とその実現に向けた方向性

Society 5.0 時代において重要な、 自ら課題を発見し解決手法を模索する、探究的な活動を通じて身につく能力・資質を磨き高める ことにより、 多様な幸せを追求し、課題に立ち向かう人材を育成することを目指す 。

このため、初等中等教育の段階から、児童・生徒の自発的な「なぜ?」「どうして?」を引き出し、好奇心に基づいた学びを実現 する。これは、人類の繁栄を支えてきた科学研究のプロセスそのものであり、こうした取組こそが、試行錯誤しながら課題に立ち向かう「探究力」を育成する学びそのものである。

(略)

(c) 具体的な取組

  • (略 スーパーサイエンスハイスク ール( S SH )において、科学技術人材育成システム改革を先導するような卓越した研究開発を進める とともに、 SS H のこれまでの研究開発の成果の普及・展開に向けて、 2022 年度を目途に一定の実績を有する高校等を認定する制度を新たに創設し、その普 及を図る ことなどにより、 STEAM 教育 を通じた 生徒の探究力の育成に資する取組を充実・強化 する。

こうした国の推進方策を受け 、平成 14 年度の事業開始以来、 SSH 事業は、以下のとおり成果を上げてきた。

(2)SSH事業のこれまでの成果

①優れた科学技術人材の輩出

事業開始当初 の SSH 指定校の卒業生は、 既に 30 代半ばの年齢を迎えており、優れた科学技術人材として国内外での研究機関や企業等で活躍し始めている。

例えば、期目を迎えた ある SSH 指定 校では、指定初期の卒業生 が大学の講師、国立研究開発法人や企業の研究職、クリエーターなど様々な分野で科学技術人材として活躍している。 また、文部科学省及び国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、「 JST 」という。)が作成した「 SSH 卒業生 活躍事例集」からは、 SSH 指定校の卒業生が、国内外の大学や研究機関、ベンチャー企業等の最前線で活躍しており、 SSH 指定校の活動が現在のキャリアパスに大いに影響を与えたことが伺える。

②高等学校における理数系教育に関する教育課程等の改善

SSH 事業は、学習指導要領等の国が定める基準によらない教育課程を編成することを可能としている。こうした各 SSH 指定校における先進的な理数系教育の実践の成果を受けて、SSH の特色である「課題研究」の重要性が広く認識され、新学習指導要領では、共通教科「理数」に探究的科目である「理数 探究基礎」及び「理数探究」が新設された。このように、 SSH 事業における研究開発の成果が、 SSH 指定校だけでなく我が国の理数系教育全体の質の向上にも貢献している。

さらに、新学習指導要領を円滑に実施するためには、SSH 指定校により開発された教育手法等を、多くの高校等に広く普及することが期待されている。

③生徒の意欲・関心の向上、進路選択に与えた影響

JST は、毎年度、 SSH 指定校の教師と生徒を対象とした意識調査を実施している。例えば、令和元年度 SSH 意識調査の調査結果によると、8割の生徒が SSH 指定校 の取組により、未知の事柄への興味が向上した等と回答しており、科学技術人材として必要となる科学技術への興味・関心や姿勢の向上等が図られている。

また、令和元年度に実施した卒業生に対する意識調査では、回答した卒業生の6割が、SSH 指定校の取組が専攻分野の選択に関して影響を与えたと回答している。

さらに、科学技術コンテスト等において、SSH 指定校の生徒が活躍している。令和元年度における国際科学オリンピック国内大会の年間のべ参加者約 20,000 人のうち、 SSH 指定校の生徒は、約 7 000 人(約 35 %)であった。また、 ISEFに出場した日本代表生徒のうち、約5割が SSH 指定校の生徒であった。これらは、 SSH 指定校の生徒が全国の高校等に在籍する生徒のうち約 5.8%であることと比較すると、明らかに高い。このように、意欲・能力の高い国内外の生徒たちの中でも、多くの SSH 指定校の生徒が世界を舞台として相互に研鑽する場で活躍している状況が見られる。

④生徒の 大学院への進学希望率等 に与えた影響

JST による生徒の進路に関する調査と民間企業による調査のクロス集計結果によると、 SSH指定校 卒業生の大学院への進学希望率は、大学生全体の進学希望率の約3倍である。

また 、 科学技術・学術政策研究所 第 1 調査研究グループの一部研究官が取りまとめた 調査によると、 SSH 指定校の 4 年制大学理系学部への平均進学率は、高等学校の全国平均(推計)と比較し、男子では約2倍、女子では約3倍となって おり、 SSH 指定校が国内の4年制大学の理系学部に、全国平均より高い割合の人材を輩出していることが分かる。

⑤地域の教育への波及効果

SSH 事業の特徴は、 生徒 個人の人材育成にとどまらず、高校 を 指定することで、 SSH 指定校が、管理機関と とも に 先進的な理数系教育を推進する仕組みを構築することにより、継続的に科学技術人材の育成を図 り、その成果を普及す ることにある。

具体的には 、 SSH 指定校及び管理機関の個別事例の 調査 や、 文部科学省が 令和2年5月に指定期数が 期以上の SSH 指定校とその管理機関を対象に行った、令和元年度予算執行調査の指摘への対応に関するインタビュー(以下、「インタビュー」という。) では 、 以下のような事例が把握されており、 SSH 事業で培ったノウハウが 、 SSH 指定校を拠点として草の根的に展開されることで、域内の教育に波及効果を与えている。

  • 域内の教員研修会におけるSSH 指定校で開発した指導法の普及
  • SSH 指定校で開発した教材等の成果の発信・普及
  • 域内での生徒研究発表会の開催を通じた生徒同士の交流 、切磋琢磨する機会の提供
  • 都道府県を超えた学校間の連携・共同課題 研究ネットワークの構築
  • 大学等との連携による域内の理数系教育ネットワークの構築
  • 近隣の小 ・ 中学校 との交流を通じた科学技術への 興味・ 関心 の喚起
  • 科学技術コンテスト等、学会 発表 における SSH 指定校生徒の活躍 (報道等で取り上げられることによる 地域における 理数系教育への関心の高まりを含む)
  • SSH 指定校として探究活動を行うことによる域内の学校・生徒の変容
⑥大学と高校 の先進的な教育との連携・接続

平成 30 年報告書 において 指摘されている とおり、近年、大学においては、 SSH 指定校の先進的な教育と連携・接続を行う動きが盛んになりつつあり、 SSH 指定校の取組やそこで育つ生徒に対して、 大学からも高い評価を得ている。

具体的には、高校の先進的な教育と連携・接続して優秀な人材を一貫したプロセスの下で育成することの重要性を認識して、大学が出前授業や高校生の課題研究への協力、共同 課題 研究等を組織的に行い、 さらに、 これらの成果を、一般入試では測りきれない資質・能力を評価する総合型選抜・学校推薦型選抜や、入学後の単位認定につなげる動きが 広がり つつある。また、 SSH 指定校においても、生徒に身に付けさせる資質・能力を明確化して、その育成・評価の結果を高校から大学に積極的に示す 動きも出てきている。

(3)課題

(2)で述べたとおり、 SSH 事業は、様々な成果を 上 げている一方、 課題も見られる。例えば、令和元年度予算執行調査における 指摘事項のほか、 管理機関・ SSH 指定校からも、 他校との交流の機会や取組の充実のための情報提供、 JST の経費支援によらず SSH 指定時と同等の取組を継続する(以下、「 自走化 」という。)ための 制度の創設 、地理的要因による取組の制約の解消 など、国や管理機関による支援の充実を求める声がある。

また、事業開始から約20 年を迎えており、 指定期数も取組内容も 多種多様な SSH 指定校が存在する中、事業目的である科学技術人材の育成の効果を最大化するためには、各 SSH指定校に 取組 を委ねるだけでなく、国としてその在り方 を管理機関・ SSH 指定校に示すとともに、 SSH 指定校における 取組の充実に向けた 支援方策について、再整理する必要がある。

このため、本 報告書 では、 これまでの成果や課題を踏まえ、 SSH 事業が目指すべき 方向性を示すとともに、その実現に向けた国による支援の在り方、取り組むべき方策について検討を行い、以下の通り整理 し た 。

Ⅱ.SSH事業の目指すべき方向性

1.SSH指定校に期待される役割

SSH事業の趣旨・目的は、 将来、国際的に活躍し得る科学技術人材の育成であるが、本事業は、 既に述べたとおり、 科学技術人材育成システムの開発のため、 生徒個人の人材育成にとどまらず、高校を指定することで、 SSH 指定校が、管理機関とともに先進的な理数系教育を推進する仕組みを構築すること を特徴としている 。

こうしたことを踏まえ、(1)将来、国際的に活躍し得る 科学技術人材 の 育成、(2)地域における科学技術人材 育成 ネットワーク拠点の形成、(3) 成果の 普及・啓発の取組の3つの観点から、SSH 指定校に期待される役割を 整理 した。

(1)将来、 国際的に活躍し 得 る科学技術人材の育成

① 生徒の科学技術人材としての資質・能力を育成する教育手法の開発・実践

SSH事業は、高校における先進的な理数系教育を通じた科学技術人材育成システム改革を目指すものであることから、 SSH 指定校には、理数系教科を中心とした教育手法の開発・実践が期待されている。さらに、これを通じて生徒の科学的な探究能力等を培うことが求められている。

SSH指定校の取組の中で特に核となるのが、課題研究である。課題研究は、生徒が自らの興味や関心などに基づいて主体的に課題を設定し、その課題の解決を図る学習であり、各教科等で培う資質・能力を生かしながら、そのプロセスを通じて、知的好奇心、自発的な研究態度、自ら課題を発見したり未知のものに挑戦したりする態度、新たな価値を創造する力など、知の創出をもたらす科学技術人材として必要な資質・能力を身に付けることが期待されている。特にそのプロセスの中でも、生徒が主体的に課題を設定する力、課題を表現する力を育成するプロセスが重要とも言われている。

さらに、教育再生実行会議や中央教育審議会において提言されて いる STEAM 教育を推進するためには、課題研究など SSH 指定校で行われている問題発見・解決的な学習の充実が求められている 。 また、STEAM教育等の教科等横断的な学習の前提として、各教科等の学習が重要である。習得・活用・探究という学びの過程の中で各教科等において育成を目指す資質・能力を確実に育むとともに、それを横断する学びを行い、更にその成果を各教科に還元するという往還が重視されるべきである。

このため、SSH 指定校では、 各教科等の学習 を改善・充実しながら、課題研究の充実を図るとともに、生徒の主体性を引き出 すための教育課程や評価法、指導法等の教育手法の開発・実践が求められる。特に課題研究の成否は、課題の設定や得られた結果を科学的に議論することにあると言われており、その重要性を踏まえた取組が期待される。

② 理数系以外の教科への展開

SSH事業は、先進的な理数系教育を通じた科学技術人材の育成を目的としているが、 AIや IoT などの急速な技術の進展により社会が激しく変化し 、 多様な課題が生じている今日においては 、 これまでの文系・理系といった枠にとらわれず 、幅広い分野において、高い科学的な探究能力を備えた優れた人材の層を より厚くし、着実に科学技術人材の育成強化を図ることが求められる。

このため、SSH 指定校においては、理数系以外の教科等を含め、授業改善に SSH 活動の成果を生かすなど、課題研究を中心としつつ、幅広い教科等の連携を図ることが期待されている。また、このように、対象として自然科学は当然であるが、人文科学等に関する事象を含めて科学的な探究活動を推進することも、 STEAM 教育とも方向性を同じくするものである。

③ 教師等の資質・能力の向上

教育の成否は教師 にかかっており、 SSH 指定校の運営を担う 教師 の資質・能力の向上も重要な役割であ る 。 特に、生徒が主体的に探究に取り組み、資質・能力を育成する上で、 一方的な 「教え込み」とは一線を画した指導力が求められる。 このため、 SSH 指定校には、 学校運営や課題研究 の指導法などの 開発や、その成果を 普及 することによ る 域内の理数系教育を担う 教師の 教育力向上が 期待される 。

Ⅰ.2.(2)② で述べた新学習指導要領の実施に当たっては、生徒の指導にあたる 教師の役割 が重要である。また、 OECD 国際教員指導環境調査( TALIS 2018の結果からは 、「 主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善や 、 探究的な学習に関わる指導実践について、頻繁に行う日本の中学校教員の割合は 、 前回 2013 年調査と比べて増えているが依然として低い 」 ことが分かった 。 このため、 SSH 指定校 が本事業で開発した 指導法を普及し、域内の 教師 の資質・能力の向上 を図る ことも、 SSH 指定校に 期待される役割である。

さらに、SSH 指定校において、課題研究のサポートとして、 大学の教員や 大学院生などの外部人材を活用する場合、外部人材に全てを委ねるのではなく、学校や教師の主体的な関わりの下で生徒の活動をサポートすることが重要である。このため、教師 は、 外部人材と生徒の議論に加わり、協働して研究を行うことで、ともに指導力を高めることが求められる。

また、 Ⅰ.2.(2)⑥で述べた大学と高校の先進的な教育との連携・接続を推進するには、教師 が 生徒の資質・能力を適切に評価 し、大学 と共有する ことが重要である。このため、SSH 指定校においては、 課題研究など を通じた 生徒の資質・能力 の伸長 を 多面的に みとることを通じ、 評価 に関わる教師の力量 を向上させる役割 が 期待されており、そうした先進的な取組をすべての高校等に展開していくことが求められる 。

④ 生徒の国際性の育成

世界を舞台に活躍できる科学技術 人材を育成するには、生徒の国際性の育成も重要な要素である。 Ⅰ.2.( ③ で述べたとおり、 SSH 指定校の生徒は、 科学技術コンテスト等 において 世界を舞台に 意欲・能力の高い 国内外の 生徒 たち と相互に研鑽を 積むほ か、 研究成果が 国際学術誌等 に掲載されるなど、国際的に活躍 し始めている。

こうした生徒の国際性を育成するため、 SSH 指定校には、海外の 学校 や 研究機関 等 との連携や 共同 課題 研究 などの取組 を通じ、生徒の視野を広げ 、 研究の深化を図ると共に、異なる文化を背景とする 生徒や教師等 とのコミュニケーション能力 の育成 など、生徒の 国際性を育むことが期待される。

⑤ 女子生徒への理数系教育の推進

人口減少局面にある我が国において、研究者コミュニティの持続可能性を確保するとともに、多様な視点や優れた発想を取り入れ科学技術イノベーションを活性化していくためには、女性研究者の活躍促進が重要である。しかしながら、我が国の女性研究者の割合を諸外国と比較すると、依然として低い水準にある。

一方で、SSH 生徒研究発表会では、女子生徒が学校を代表して ポスター発表 を行ったり、文部科学大臣 表彰 等を 受賞 したり す るなど、女子生徒が活躍する姿が多く見られる。また、Ⅲ.1.(3)で 後述する 文部科学省及び JST が実施した 令和元年度 試行 調査 では、3年間のSSH の取組により、女子生徒の科学的な調査手法に関する能力が、男子生徒に比べて飛躍的に伸びていることが確認された 。

こうしたことを踏まえると、 女子生徒の 理数系教育の推進という観点では、 SSH 指定校に期待される役割 は 大きく、 女子生徒が男子生徒とともに活躍するロールモデルが 、 SSH 指定校ではない学校(以下、「一般校」という。) を 含め域内に普及すること等 により 、 生涯を通して 科学技術・イノベーションを支える人材を多様化する 可能性を大いに秘めている 。

(2)地域における科学技術人材育成 ネットワーク拠点の形成

① 地域における理数系教育の拠点としてのネットワーク形成

SSH事業は、高校 における 先進的な 理数系教育を通じた 人材育成の取組を支援して おり 、各 SSH 指定校は、 管理機関による物的・人的支援、大学による研究指導や 大学との 設備の共用など、 域内の様々な教育リソースを活用しながら取組を推進している。

また、先進的な 理数系教育の成果を域内に普及するため、 生徒研究発表会や教員研修、小 ・ 中学生を対象とした実験教室 など 、 学校間の 交流・ 連携 の取組 も行われている ほか、都道府県を超えた交流・連携も行われている。

特に 長期指定校では、これまでの活動で構築したネットワーク (一般校や小・中学校を含む域内の学校・行政・大学・企業など) によって地域に支えられた実施体制を整備し、 これらの 多様な リソースを活用 することで 、 地域の理数 系 教育のレベルアップを図り、ハイレベル科学技術人材 を 育成 する ための システム開発を行っている ところもある。

これらの SSH 事業の 役割 や取組の 実態を踏まえると、 SSH 指定校には、 学校間連携を強化することによる定常的な交流機会の創出のほか、先進的理数系教育や指導法を中心とした行政(研修センター含む)及び学校間のネットワーク拠点としての 機能を果たすこと が期待される。

また、 SSH 指定校に 課題研究等の 探究活動に関する情報やリソースが集中することにより、 先進的な 理数系教育における施設・設備の共同利用拠点としての役割や、高大連携・接続の研究開発拠点としての役割のほか、 学校種を超えて 小学校から大学まで一貫した地域における科学技術人材育成のネットワーク拠点 としての役割を果たすことも期待される。

さらに、 SSH 指定校や管理機関において、課題研究の指導や SSH 事業のマネジメントの経験がある 教師 の ネットワークを構築したり情報を蓄積したりすることも、 SSH 指定校のみならず域内の課題研究等の探究活動を支える環境を構築する上で は、 重要である。 加えて、都道府県を超えたネットワークの構築に当たっては、連携している大学等をハブとして取組の充実を図る ことも有効である。

② 共同課題研究の連携拠点としてのネットワーク形成

上記①のとおり、SSH 指定校 は、 地域における 先進的な 理数系教育の拠点としてのネットワークを形成すること により 、探究活動や課題研究に関する情報やリソースが集中 し、 成果やノウハウが 普及 され る こと、 1.1.(1)④で述べた とおり、 SSH 指定校においては、生徒の国際性の 育成が期待されていることから、海外校や海外研究拠点と連携した国際共同課題 研究拠点としての役割を担うことが期待される。

特に長期指定校では、これまでの活動で構築したネットワークや国際共同課題研究のノウハウを 生 かし、全国の SSH 指定校に普及するためのシステム開発を行っているところもある。

また、環境保護や防災対策、地域産業の発展など地域社会の課題解決につながるような課題研究を行うことは、多様な主体と連携して 新たな価値を創造する力の育成に資するものである。さらに、 大学や企業等の関係機関に開かれた取組が行われることにより、 SSH 事業への理解や参画を得ることができ、 更なる ネットワークや リソースの充実につなげることが期待できる。 これらのことから、 SSH 指定校が これまでに構築した 大学、企業等との ネットワーク を 生 かし、協働して社会課題の解決に取り組むこと も 、 SSH 指定校に 期待される 役割である 。

③ ポストコロナを見据えた オンライン による定常的な連携

SSH指定校においては、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、予定されていた小・中学生向けの実験教室や、国内外の大学や研究施設への訪問、国外から高校生を招く交流活動等が数多く中止又は延期となった。しかしながら、こうした中においても、 SSH指定校の中には、オンライン講座を多く実施したり、国内外の大学とオンラインでの 研修 活動を行ったりするなどして、困難な状況下においても、生徒に高度な学習機会を確保しようとする動きが多く見られる。

これらは、学校間・地域間のネットワーク構築や国内外の大学・高校との共同 課題 研究活動の実施等の連携を 、 時間・距離の制約を超えて強化することにつながるものであり、従来の取組の代替措置に留まらず、これまでよりも多くの機会をより幅広い生徒に提供することや、 更 なる成果の普及・啓発、 地理的要因による取組の格差の 解消等が期待できる。

文部科学省及びJST においては、こうしたオンラインを活用した取組を一過性のものとせず、定常的な連携として、積極的に支援し、促していくことが求められる。

(3)成果の普及・啓発の取組

Ⅱ. 1.(2)で述べた 科学技術人材育成 ネットワーク 拠点 を 形成 するには、 SSH 指 定校の研究開発の成果を 普及・啓発 し、 SSH 指定校 の取組 を支える環境づくりが重要である。

このため、 SSH 指定校には、研修教材など 学校運営や探究の指導法等に関するノウハウ のほか 、テキストやワークシートなどといった 教材 等、研究開発の成果 を積極的に普及する役割が期待される。そのための 具体的な方策や関係機関が果たすべき役割については、Ⅳ.1.において後述する。

2.指定期数 に応じた SSH指定校の目指すべき姿

SSH事業が平成 14 年度に開始して以来、約 20 年が経過し、各 SSH 指定校の主体的な創意工夫により多種多様な取組が展開されている。一方で、指定期数を経るほどに SSH 指定校としての学校運営や指導のノウハウが蓄積し、取組を高度化・深化させることが求められる。

こうした中で、SSH 事業 の 目的である科学技術人材の育成の成果を最大化するためには、国と SSH 指定校及び管理機関とで目指すべき姿を共有し、後述する「 認定枠(仮) 」の創設と合わせて、三者が目指すべき姿に向かって PDCA サイクルを構築しながら、研究開発やその成果を基にした取組等を推進することが重要である。

このため、指定期数に応じた SSH 指定校の目指す姿を 、次の 図1 のイメージ のとおり整理する。

Ⅴ期以降の目指す姿については、 Ⅲ.3.において詳述する 。これを基に、 国においては、 審査や評価への反映を含め、 SSH 指定校における実践へと実質化させることが求められる。

なお、図1の 指定期数に応じた 目指す姿については、 SSH 事業の取組を画一化することが目的ではなく、あくまでイメージを示したものであ る。このため 、 SSH 指定校における研究開発では、これまで通り、 あくまでも 学校の主体的な創意工夫や生徒自身の自由な発想 による挑戦 ・創造 が期待 され 、学校としての取組の中に SSH 事業が位置付けられるべきである ことに留意する 必要がある。

3.SSH指定校の総数について

令和3年度現在、 SSH 指定校として 218校が文部科学省の指定を受けており、各校がそれぞれの特色を活かしながら、科学技術人材育成のためのシステム開発を行っている。

先進的な理数系教育を通して、将来、国際的に活躍し得る科学技術人材の育成強化を図るためには、 SSH 事業を一定規模以上で実施することにより、優れた科学技術人材の層を着実に厚くしていく必要がある。また、平成 30 年報告書においては、 SSH 指定校の総数について、先進的理数系教育の裾野の拡大と、そのために必要となる我が国を先導する教育課程や指導・評価法等の開発を並行して進めることの政策的意義を考慮して設定することが重要と指摘している。また、SSH指定校の質の向上のためには、各地域に一定数以上のSSH指定校があり、横のつながりによる連携や切磋琢磨できる環境を構築することが求められる。

これらのことから、SSH 指定校の総数は、Ⅱ.1.で述べた SSH 指定校に期待される役割や、各地域におけるこれまでの指定実績等を踏まえると、後述する「認定枠(仮)」も含め、当面は、全国の高等学校 等 の総数(約 5,000 校)の5%に当たる約 250 校を目標とすることが適当である。

Ⅲ.今後の国による支援の在り方について

1.SSH事業全体の成果の把握・検証

(1)必要性

国がSSH 指定校や事業全体の状況 を 把握し、事業運営の検証を行うことで、各指定校への支援の在り方や事業運営の見直しなど、事業の成果・効果を最大化することが期待される。このため、 平成 29 年度秋の年次公開検証 や 令和元年度 予算執行調査において指摘を受けているとおり、 SSH 事業がその目的に照らし、所期の事業成果が達成されているか、適切に検証し、国民に対する説明責任を果たすこ とが必要である。

(2)これまでの把握・検証の手法

SSH事業運営の把握 ・検証 として 、文部科学省及び JST において 、 これまで 以下の事項に取り組んでいる。

  • 中間評価の実施 及び実地調査
  • JST による SSH 指定校の教師 ・生徒 ・卒業生 を対象とした意識調査、卒業生の動向調査等
  • アンケートを通じた SSH 生徒研究発表会及び SSH 情報交換会への 要望や改善点 等 の把握
  • SSH 指定校が毎年度提出する研究開発実施報告書による SSH 指定校の取組内容等の把握
  • JST による各指定校の経費執行状況の確認 など

(3)課題

上記(2)の通り、 SSH 事業全体としての成果は 、一定程度 把握されているが、意識調査やアンケートについては、その性質上、客観的な成果を把握しているとは言い難い。また、研究開発実施報告書等による把握 については、 SSH 指定校個別の状況を把握するのみで、 これにより 成果を統一的に 検証 することは、 困難である。

このため、平成30 年報告書では、文部科学省及び JST における事業運営の検証のポイントについて、生徒の資質・能力の伸長が図られたかどうかを把握しながら、資質・能力の育成に資する活動の要素(例えば教材開発、指導法開発、外部機関との連携等)を把握・分析すること、そのために必要な体制を構築し、各 SSH 指定校の取組の発展に資するよう情報提供を行う必要がある旨の提言がなされた。

これを踏まえ、文部科学省及びJST においては、「 SSH で行われている課題研究を通じ、サイエンス・イノベーションのリーダーとして必要な資質・能力が伸長する」という仮説に基づき、令和元年度 、 生徒を対象とした学力調査及び質問紙調査 (以下、「令和元年度試行調査」という。) を 試行的に 実施した。その結果を用いた比較分析を 行った ところ、上記の仮説に対する一定のエビデンスが得られたところである。

一方で 、平成 30 年報告書で指摘されているように、 定量的な指標を設定することは、重要であるが、多様な高校、管理機関によって SSH 事業が推進されている状況において適切に検証を行うためには、限られた指標による評価ではなく、定性的な指標もあわせて、多面的な視点で評価できるようにすることが重要である。

さらに、SS H 事業は、各 SSH 指定校における多様で特色のある 先進的な 教育の 開発と 実践を重要視していることから、 国が 評価指標を設定することにより 、 SSH 指定校における取組が画一的になることがないよう留意する必要がある。

(4)今後取り組むべき事項

上記(3)で述べた課題や留意点を踏まえSSH 事業全体の成果の把握・検証のため、国として今後取り組むべき事項を、以下の通り整理した。

これらのうち、 ① の「 生徒の資質・能力の伸長に着目した調査研究 」及び ② の「 中間評価 の全体総括 」 については 、 それぞれ生徒及び SSH 指定校に着目した、統一的かつ定量的な評価手法の 一部 で あり、 ③ の「卒業生 の 活躍事例の収集」や ④ の「 SSH 指定校・管理機関における現状や要望等の把握 」 を通じて得られた 生徒及び SSH 指定校等に関する 定性的な 情報と組み合わせて、 SSH 事業全体の成果を把握・検証する手法を検討することが望ましい。

また、
SSH 事業全体の成果の把握・検証を踏まえ、各 SSH 指定校・管理機関が⑤の「実践事例集」を活用し、 SSH 事業の運営や取組の改善を行うことが考えられる。 さら に 、 SSH 指定校・管理機関に おける独自の成果検証に おいては、 あくまでも各 SSH 指定校・管理機関 の主体性により、その特色を生かして行われるべき である ことに留意する必要がある。

なお、各SSH 指定校における有効な評価手法の確立については、Ⅳ.2.において詳述する。

① 生徒の資質・能力の伸長に着目した調査研究 の 推進

上記 (3)で述べた 通り、令和元年度試行調査 の妥当性については、一定のエビデンスが得られたこと、生徒の資質・能力の伸長の観点から、特に有効と考えられる活動の要素を把握・分析し、可視化することは、 SSH 指定校の活動の進展にも有効であることから、 生徒の資質・能力 の伸長に着目し、 SSH 事業全体の改善に 生 かすための 調査研究を引き続き推進することが重要である。

令和2年度は、文部科学省及び JST において、 令和元年度 試行調査の枠組みを 生 かしつつ、一般校も対象に含めた調査を実施 した 。 国は、 この 調査の結果を踏まえ、調査手法の検証・改善を行い、事業全体の評価手法としての妥当性や精度を高めるとともに、 資 質・能力の伸長や科学に対する態度に特に相関のある 取組の分析 を行い事業改善に活かす 等、 その活用方策 について、 検討する ことが求められる 。

②中間評価の全体総括の活用

文部科学省では、SSH 指定校の研究開発の内容を見直す機会とし、事業の効果的な実施を図ることを目的として、指定から 3 年目の SSH 指定校について、外部の有識者による 中間評価を行っている。 平成 30 年度まで は、個々の SSH 指定校の 評価 講評のみ を 中間評価結果として 公表していたが、令和元年度中間評価(平成 29 年度指定)から、 全体総括を作成した。

これにより、3年目の SSH 指定校のみではあるが、 共通 の基準に 基づく評価結果の全体分布、中間評価対象校に共通して見られる評価すべき取組・工夫、改善点を把握することが可能となった。

このため、今後も引き続き、中間評価の 全体総括 により評価結果の全体傾向 や SSH 指定校における課題を把握し、国の事業 運営に活かす必要がある。 例えば、文部科学省SSH企画評価会議協力者の指導や JST 主任調査員 が SSH 指定校を訪問して助言を行う際の参考資料として活用すること、評価できる取組については、後述する実践事例集に掲載すること等により普及することが考えられる。

③ 卒業生 の 活躍事例の収集

SSH事業の目的は、高校 における 先進的な 理数系教育の実践を通じて、将来、国際的に
活躍し得る科学技術人 材の育成を図ることである。この 事業目的を踏まえると、 SSH 指定校
を卒業した生徒を追跡調査し、その活躍状況を定性的に把握 し、 SSH 指定校の取組との関
係を分析 することも重要である。 また、平成 30 年報告書においては、生徒の追跡調査をはじ
めとする SSH の取組の有効性を評価することを、 SSH 指定校の役割として求めている。 SSH
指定校は、その指定期間中にSSHの取組に参加した生徒について、卒業後の状況(所属や
職位,職務内容、業 績等)を追跡調査等により把握するものとし、指定期間終了後も継続して
当該状況を把握することが求められる。

一方で、独自に卒業生の追跡調査を行うSSH指定校から 、調査の実施体制や個人情報の管理体制の構築、卒業生の協力を継続して得ることが困難等といった課題が指摘されている。

また、JST においては、 上記 (2)で 述べた とおり、卒業生を対象とした 意 識調査や動向調査を実施しているものの、現状、網羅的な把握は できていない。 さらに 、 これまで JST が SSH指定校に対して実施してきた追跡調査の手法で は、対象となる卒業生が連絡の取りやすい者に限られるなど偏りが生じること、回収率や回答する卒業生の数が十分に確保できないという課題を抱えている。

以上を踏まえると、 文部科学省及び JST は、 SSH 指定校が追跡調査を行うための情報提供や環境整備を行う とともに、 JST が実施する追跡調査の回収方法の工夫や調査趣旨等への理解を高めるなど、卒業生を対象とした調査手法の改善を行う 必要がある。

その方法として、例えば、 追跡調査を継続的に行っている SSH 指定校の実践事例の 発信 、 科学技術・学術政策研究所が運用する「博士人材デー タベース JGRAD 」の 活用、SNS 等を活用した 調査手法 の開発 や仕組みの構築などが考えられる。 また、一部の SSH 指定校では、 課題研究等を支援する外部人材として卒業生を組織化することで、恒常的な追跡調査として活用し 、 継続して調査対象の卒業生の協力を得ている例もある。

さらに、文部科学省及び JST においても、卒業生の活躍事例集を 作成し 、 SSH 事業の成果を 広く発信 することで 、国民に対する説明責任を果たすことも重要である。

④ 国による SSH 指定校・管理機関における 現状や 要望等の把握

文部科学省及び JST は、研究開発実施報告書や中間評価を通じ、個別の SSH 指定校の状況等を把握しているが、国と管理機関・ SSH 指定校が、直接双方向的なコミュニケーションを行うことにより、より丁寧に管理機関・指定校の現状や要望等を把握することも重要である。

文部科学省は、令和2年5月に、指定期数が 期以上の SSH 指定校とその管理機関を対象に、令和元年度予算執行調査の指摘への対応に関するインタビューを行った。これにより、国における今後の SSH 事業の運営や支援の在り方の検討に際し、有用な情報を得られたことから、今後ともこうしたインタビュー等を定期的に実施することが望まれる。

SSH指定校や管理機関における現状や要望等の把握に当たっては、可能な限り現地を訪問し、生徒及び教職員の活動の様子、施設・設備を実際に見るといった活動を組み合わせる必要がある。 また、 JST の 主任調査員等 は SSH 指定校や管理機関と日常的にコミュニケーションを行っていることから、 JST の持つネットワークや情報を活用することも有効である。

⑤「 実践事例集 」 の作成

Ⅱ.で述べたSSH事業の目指すべき方向性を実現するためには、国による事業全体の成果の把握・検証に加え、各 SSH 指定校における日々の実践が重要である。

このため、文部科学省は、各SSH 指定校の具体的な実践に資する「実践事例集」を作成し、国・管理機関・ SSH 指定校が共通認識をもって事業を推進するため、必要な情報提供を行う必要がある。

このことにより、SSH指定校における学校運営、課題研究の評価や指導法等といった、これまでの SSH 事業の成果や SSH 指定校において蓄積されたノウハウの普及を一層進めることが可能となる。

さらに、 SSH指定校が「実践事例集」に掲載された情報を基に、自校の取組を 進化させ たり他校とのネットワークを構築したりするきっかけを得られるほか、一般校においても探究的な学びの実践に資するなど、 先進的な 理数系教育の裾野が拡大することが期待される。

なお、SSH 指定校・管理機関は、「実践事例集」の活用に当たり、あくまでも各機関の主体性により、その特色を生かして行われるべき である ことに留意する必要がある。

また、「実践事例集」は、中間評価結果等を基に、定期的に更新することが望ましい。

2.認定枠(仮)の創設

(1)制度創設の背景

SSH事業は、平成 14 年度に事業を開始してから約 20 年が経過し、多様な取組が各 SSH 指定校で展開されている。その中には、長年の活動の成果をもとに、これまでのノウハウ・強みを生かし、一定の指定期間を終了した後、独自に SSH 指定校の取組を自立して継続することを検討している学校が出始めている。

特色・強みを確立したSSH 指定校 が、現行の取組を自立して継続し、これまでの成果を横展開することは、国として必要な科学技術人材育成システムの高度化や優れた科学技術人材の層を厚くすることにつながり、 SSH事業全 体の活性化に資する ほか、長期にわたり SSH の 指定を受けようとする学校や管理機関における戦略の多様化にもつながると考えられる。

こうした状況を踏まえ、従来の予算支援の取組と別に、SSH 事業全体の取組の質の向上を図り、域内外の理数系教育拠点の形成を一層進め、科学技術人材育成システム改革をより強力に推進するため、新たに「認定枠(仮)」を創設する必要がある。

(2)趣旨・目的、「 事業枠 (仮)」 との関係

制度の創設に伴い、 SSH 指定校を以下の通り「事業枠(仮)」と「認定枠(仮)」に整理する。両者は、その役割や予算支援の扱い等を異にするものの、共に「SSH指定校」であることには違いはなく、一体的に運用されるべきである。

  • 「事業枠(仮)」:従来通り、JST の予算支援を受けて SSH 指定校としての取組を行う枠組み。 SSH 指定校として取組を確立するまでの取組のほか、例えば、産学官の連携等による質の高い課題研究を教育課程の中核に据えて推進するシステムの開発や、拠点校として周辺校と緊密に連携しながら地域全体の科学技術 人材育成をリードするシステムの開発、複数の国の高等学校や大学、企業等と連携した国際共同研究を通じた人材育成システムの開発など、我が国の次代を担う科学技術人材育成システム改革を先導する取組を行う。
  • 「認定枠(仮)」:基礎枠としての予算支援を受けずに、SSH 指定校として、主としてこれまでの研究開発の成果を基に継続的な取組を行う枠組み。科学技術人材育成の全国的なモデルとして、これまで培ってきた特色や強み、 SSH 指定校としての認知度・ブランドを 生 かしながら 多様な 取組を 展開し、これまでの研究開発の成果を一般校も含 めて普及する。教育課程の特例への申請も可能とする。

科学技術人材育成システムの研究開発を実施・先導する「事業枠(仮)」と、これまでの研究開発により蓄積されたノウハウを基に取組を展開・普及する「認定枠(仮)」とが併存することで、管理機関・ SSH指定校における取組がより多様化するとともに、互いに SSH 指定校としての取組を支え、学び合う体制が構築されることにより、更なる科学技術人材の裾野の拡大や SSH 事業全体の活性化が期待できる。

(3)制度の枠組み

「認定枠(仮)」の対象については、SSH 指定校としてそれま でに培ってきた成果を基に、その特色や強み等を生かして取組を展開・普及するという趣旨を踏まえると、一定期数以上の実績を要件とし、そうした実績を有している場合には、経過措置校、元指定校も対象とすることが適当であると考えられる。

「認定枠(仮)」の指定期間は、「事業枠(仮)」と同様5年間とすることが適当である。ただし、管理機関の申し出により、指定を取り消すことも認める ことが考えられる 。

また、SSH 指定校として「事業枠 (仮 」 と ともに 科学技術人材育成システム 改革 を推進するという 制度の 趣旨を踏まえ ると 、 「認定枠(仮)」についても、 国が主催する全国的な SSH 生徒研究発表会や SSH 情報交換会 などの 国が主催する 全国 規模の イベントへの参加を 可能とする 必要がある 。

制度の運用開始時期については、制度の周知期間、学校側の準備期間を考慮すると、令和4年度以降とすることが適当 だと考えられる 。

「認定枠(仮)」の指定に当たっては、管理機関の申請により、「事業枠(仮)」とは異なる基準に基づき、審査する。また、指定期間終了後も再申請を可能とする。指定の要件や審査項目 等 については、本 報告書 で提示された「認定枠(仮)」の趣旨・目的 を踏まえ、 SSH 企画評価会議において議論・決定していただく。 なお、その際、学校の事務負担の軽減と SSH 指定校としての質の担保の両面に留意しながら検討する必要がある。

なお、上記(1)~(3)を踏まえ、認定枠(仮)の導入イメージを次の図2のとおり示す。

(4)制度創設に当たり 国及び管理機関 が果たすべき役割

①国が果たすべき役割

「事業枠(仮 )」と「認定枠(仮)」が一体となって科学技術人材育成システム改革を推進するには、制度の意義や位置づけについて、管理機関及び SSH 指定校に対し、 制度が運用される前に 文部科学省から 十分な周知を行うとともに 、「認定枠(仮)」の取組の全国的な普及・展開を促進する役割を果たす必要がある。

また、「認定枠(仮)」は、 従来の 予算支援とは別の枠組みであるが、 例えば、 SSH 生徒研究発表会や SSH 情報交換会など国が主催する全国規模のイベント へ の参加に係る旅費 など については、 「事業枠 (仮 」と「認定枠(仮)」の相互の連携による SSH 事業全体の活性化や 、 「認定枠(仮)」の取組の 全国的な普及・展開 に も 資するため、国から支援することが適当 だと考えられる 。

また、「認定枠(仮)」は、科学技術人材育成の 全国的なモデルとして、これまでの研究開発の成果を 普及する役割を担うことから、一定の基準を満たした場合、重点枠「広域連携」による支援を行うことが適当と考えられる。

さらに、制度創設に伴い、管理機関において、域内のSSH 事業の展開に関する方針等が多様化することが考えられる。このため、国においては、 「 事業枠 (仮)」 を含めた SSH 指定校 の 目指すべき総数 や今後の展開を示し、管理機関における方針等の検討に資する情報提供を行う必要がある。

また、「認定枠(仮)」は、基礎枠としての 予算支援を受けないことから、これまでの成果を基に取組を継続するため には 、管理機関や SSH 指定校において、独自に金銭的支援を得るなど の 環境整備が必要となる。このために関係機関にお いて取り組むべき支援策については、 「 5.自走化に向けた支援」において 詳述する。

②管理機関が果たすべき役割

管理機関は、制度創設に伴い、域内の SSH 事業の 充実に向けて、 引き続き、「事業枠(仮) 」及び「認定枠(仮)」の SSH 指定校に対する人的・物的支援を行うとともに、管理機関としての方針を明確に示 す 必要がある。

特に、学校段階を超えたネットワークの構築や研究開発成果の 戦略的展開、 情報発信の充実などは、各 SSH 指定校のみでは困難であるため、管理機関が主導して「事業枠 (仮)」と「認定枠(仮)」の連携を促すことが求められる。

3.長期指定校への支援

令和2年度に期目の指定を受ける学校が出てくることを受け、平成 30 年 報告書では、指定期間が長い SSH 指定校について、「将来、グローバルに活躍 する科学技術人材の層を厚くしていくためには、先進的な理数系教育に取り組む高校の数を増やすのと同時に、 先進的な教育拠点の更なる進化のため、継続的に取り組むことも重要 」 であり、 期目の指定校には 、 期目までの SSH 指定校より更に充実、進化した取組が求められると提言している。

これを受け、文部科学省においては、令和2年度の SSH 指定校の公募において、 期目の最終年度を迎えた又は終えた高校を対象に 「先導的改革枠」を新たに創設し、 令和2年度に 2校、令和3年度に1校を採択し た 。

「先導的改革枠」は、Ⅱ.2.の図1に示す通り、科学技術人材育成システム改革を先導する役割が期待されるところであり、 研究開発の卓越性が求められている点が、 特徴 で ある。具体的には 、 取り組む 研究開発 課題 が 我が国 全体の科学技術人材育成システム改革に寄与 することに加え、 取組の内容が 我が国 全体のトップ の水準 に ある ことが求められている。

長期指定校ならではのノウハウや特色・強みを生かし、卓越した研究開発を通じ、科学技術人材育成システム改革を先導することは、国の科学技術人材育成におけるシステム上の課題解決に資する実証的資料を得られることや、地域の理数系教育の底上げ のみならず SSH 事業全体の質的向上 につながることが期待される。このため、こうした卓越した研究開発を行う SSH 指定校を、一定数確保するため、長期指定校については、引き続き国により支援を行う必要がある。

なお、「先導的改革枠」は、 Ⅳ期 まで とは異なる枠組みであるが、あくまでもⅣ期目までに開発した優れた成果や独創的な取組を踏まえたものであることに留意が必要である。

4.経費支援の在り方

JSTにおいては、 SSH 事業の実施に当たり、 管理機関との共同研究契約に基づき、研究開発を行う上で必要かつ適切と認められる経費等について支援を行っている。限られた予算の範囲内で、 SSH 指定校において 経費を より 有効に活用 し、成果を最大化 する観点から、以下の とおり、経費支援の在り方 について 、 考え方や論点を整理した。

(1)海外研修に係る経費支援

海外研修に係る経費については、 JST の SSH 支援事業 事務マニュアル (以下、「事務マニュアル」という。) において 、 各 SSH 指定校の年間予算の 30 を支援の上限と しているが、 他の経費と 比較して 、 生徒一人当たりにかかる単価が相対的に高いため 、 経費の中でも 特に高い費用対効果が求められる。

事務マニュアルでは、海外研修の計画に当たっては 対象生徒の人数や研修の内容、費用対効果や公平性について十分に 考慮するよう、 SSH 指定校に求めるとともに、 支援 できないものの例として 、以下の 例を記載している。また、 JST において経費支援の可否を精査するに当たり、単なる施設見学のみの場合など、内容に研究開発要素が含まれないものは、支援対象から除外している。さらに、改善の余地のある海外研修計画について は 、 JST からブラッシュアップするよう指導するなど、効 果 的な経費執行のための取組が 行 われて いるところである。

参考:令和3 年度事務マニュアル(海外研修で支援できないものの例の抜粋)
① 研修の行程に博物館見学を組み込んでいるが、館内を自由に見学し、興味を持った展示物の歴史や文化の調べ学習に留まっている場合や、一般的なガイドツアー等との差異が見られない場合。

② 次年度の発表を目指して世界大会の様子を知るためだけに参加する等、発表を伴わない場合。

③ 語学の習得のみを目的とする等、「科学技術、理科・数学」に直接関連しない取り組みとなっている場合。

④ 旅行会社等が情報提供を超えて企画提案した「パック型」の研修や、研修先が作成した既存のプログラム、有料で一般に公開されている大学の講義等、 SSH 指定校が主体的に研修を企画・実施しておらず、今後の発展性が見込めない場合。

⑤ 修学旅行等、 既存の学校行事の一部に SSH 海外研修を取り込んだ場合。または、行程に観光や遊興的な内容を含む場合。

⑥ SSH の全体計画で想定している人材育成の観点から、海外研修への参加人数が過小に設定され、かつ他の生徒へ波及する計画となっておらず、費用対効果が考慮されていない場合。

しかしながら、中間評価で提出された自己評価票 等では、 一部の SSH 指定校において、海外研修の 計画 や対象生徒の人数など、費用対効果や公平性の観点から 、 改善の余地のある執行が見られる。

このため、 SSH 指定校においては、引き続き、海外研修による教育効果や、研修成果の研究開発への反映状況を精査する必要がある。 JST においても、海外研修の意義や費用対効果について、 SSH 指定校に対して意識付けを行うためにも、事務マニュアルに、支援の可否に関する境界事例の記載を充実させるとともに、 SSH 指定校における事務手続きの負担軽減についても実現していく必要がある。

(2)備品・消耗品に係る経費支援

課題研究は、 SSH 指定校の活動のうち核となる取組であるが、実験・観察を伴う課題研究を円滑に行うためには、備品・消耗品の購入 による 環境整備が不可欠となる。一方、これらに係る経費は、高額となり、管理機関において措置することが困難である場合が多いことから、JST の 経費支援の中で 重要な位置 にある 。一方で、高額となるからこそ、令和元年度予算執行調査 で指摘を受けたとおり、効率的な調達・執行を行うことが求められ る。
JST
においては、 SSH 指定校からの高額物品要求時に、必要性の確認やレンタルによる代替可否の確認等を行うと共に、指定3年目の SSH 指定校を対象に、書面及び訪問による物品検査を実施し、 SSH 備品管理簿に基づき、 SSH 指定校担当者立ち会いの下、備品等の現物確認を行っている。また、令和元年度からは、従来の物品検査を拡充した執行調査にて、物品の使用頻度や使用実態についても確認を行っている。

さらに、令和元年度予算執行調査の指摘を受け、SSH 指定校への意識付けや事前・事後確認の強化・厳格化を図るため、 JST において、主な物品の基準額を設定し、基準額を超える物品を購入する場合は、必要性、使用頻度、使用期間を精査するなど、過剰な仕様の 物品の購 入を防ぐとともに、備品のレンタルや大学等からの貸与 や共同利用 を促している。

JSTにおいては、引き続きこうした備品・消耗品に係る経費の執行に関する事前・事後の確認を行うとともに、効率的な調達が行われているか検証を行うことが求められる。

(3)人文科学に係る取組への経費支援

SSH 実施要項においては、 SSH 事業の趣旨として、高校における「先進的な科学技術、理科・数学教育を通して、生徒の科学的能力及び技能並びに科学的思考力、判断力及び表現力を培い、もって、将来国際的に活躍し得る科学技術人材等の育成を図る こととする」と定めており、人文科学に係る取組は、「科学技術、理科・数学教育」に直接関連しない取組として、原則、経費支援の対象にならない。

ただし、取組内容が科学技術に関連が深く、SSH 事業を推進するにあたり、その必要性が認められた場合は、支援対象となる場合がある。 また、主に人文科学に関する取組を実施している生徒を対象に含んでいる取組については、科学技術、理科・数学教育と関連が深い取組であって、当該生徒を対象から除くことができないなど、支援の対象としないことが合理的でない場合は、支援対象となることがある。

一方で、文部科学省は、 SSH 指定校に対し、 課題研究など SSH 事業の成果を拡大するため、 理数系教科以外も含めた取組を 求めていること等から、人文科学に係る取組への支援の可否について、管理機関や SSH 指定校から問合せや要望を受けている。

また、令和2年第201 回国会において、「科学技術基本法等の一部を改正する法律」が成立し、 「科学技術基本法」 の名称が 「科学技術・ イノベーション基本法」に変更されるほか、「人文科学のみに係る科学技術」 及び「イノベーションの創出」 が同法の振興の対象に加わる等の改正が行われた(令和3年4月1日から施行)。

これらの状況を踏ま え、人文科学に係る取組への経費支援の在り方について検討を行ったところ 、 SSH 事業は、 科学技術人材の育成のために、 理数系教育を通じ、生徒の科学的能力及び技能並びに科学的思考力、判断力及び表現力を培うことを前提としていること、現状においても、 取組内容が科学技術に関連の深い場合は、人文科学に係る取組内容も経費支援の対象となる場合があること、学校を対象とした 他の 研究開発事業との役割分担等を 考慮し、従来通り、人文科学に係る取組は、原則として経費支援の対象とせず、科学技術に関連が深い場合に限り、経費支援を行うことが適当 だと考えられる。

一方で、管理機関・ SSH 指定校において、 人文科学に係る取組への経費支援の可否が不明確であり、必要な場合でも要求を躊躇するとの声があることから、事務マニュアルにおいて、支援の可否に関する境界事例について記載を充実させる必要がある。

(4)中高一貫教育校に係る経費支援

SSH 事業 の公募要領で は、実施計画上、中高一貫教育校の中学校段階における取組を排除しないが、中学校段階での教育課程の特例については、本事業で扱わないこととして おり、 経費支援も原則として支援の対象外としている。

ただし、人文科学に 係る 取組と同様 、 中学生を対象に含んでいる取組については、科学技術、理科・数学教育と関連が深い取組であって、中学生を対象から 除くことができないなど、支援の対象としないことが合理的でない場合は、支援対象となることがある。

理数系教育に関する教育課程等の改善に資する実証的資料を得るための研究開発という SSH 事業の性質上、教育課程の特例の取扱いと経費支援の可否は、不可分のものとして検討する必要がある。

一方で、仮に中高一貫教育 校の中学校段階の教育課程の特例の取扱いや経費支 援を可能とした場合、 高 校段階における 先進的な 理数系教育を通じた科学技術人材育成という SSH事業の趣旨・目的との関係から、 問題が 生じる。

このため、中高一貫教育校における中学校段階の取組への経費支援の 在り方については 、その政策的意義や上記の 事業趣旨・目的 を考慮に入れつつ、 中長期的に 検討を行う必要がある。

また、 SSH 公募要領では、「期待される研究開発テーマの例」という資料の中で、「中高を通じた理 数系 教育の教育課程の開発」として「中学校段階から6年間を 通じた理数系に関する効果的な教育課程の開発」等をあげている。さらに 、中学 校 段階から SSH としての取組を実施している中高一貫教育校からは、 中学校段階における取組の実施の可否や、 経費の支援対象が不明確との声があることから、事務マニュアルにおいて、 中学校段階の取組も排除されないことを明記するとともに、 支援の可否に関する境界事例について記載を充実させる必要がある。

(5)その他

JST による SSH 指定校への経費支援は、 SSH 事業による支援のうち 重要な もの の一つであるが、 SSH 指定校や管理機関からは、 事務 手続きに係る負担が大きいとの声がある。 このため、 JST において 引き続き 、 オンライン申請の導入など 要求に必要な書類の簡素化 の検討 、事務処理説明会における要求書の必要性等に関する周知などを行う 必要がある。また 、管理機関・ SSH 指定校に お いては 、校内の体制整備、管理職や事務職員のマネジメント力の向上 に 取り組む必要がある 。

5.自走化に向けた支援

SSH指定校が 「事業枠(仮)」としての 指定終了後 、 自走化する ためには、 管理機関による支援など様々な リソースを活用する必要がある 。これまでも 一部の元 SSH 指定校では、指定終了後も、 県 の 独自 予算による支援や 同窓会、民間団体 の助成金等 により、 指定時の 取組を継続している。ここでは、 SSH 指定校が 自走化するため の 国及び管理機関による 支援 策 について 、 以下のとおり 整理し た。

(1)外部資金 の 獲得 ・活用 に係る支援

自走化 した、または自走化する予定の SSH 指定校 にインタビューを行ったところ 、外部資金を獲得し、活用すること により、活動を継続する例が見られた。活用されている外部資金として、例えば、都道府県独自の予算事業、 ふるさと納税の寄付金、 同窓会による支援、 「トビタテ!留学JAPAN」 など海外留学に係る助成金、企業・民間団体による高校生の課題研究を支援するための助成金等があげられた。

外部資金の情報は、 SSH 担当教職員が ホームページ等で検索したり、各助成団体から管理機関または学校に送付される募集案内を通じて 知る という回答が多かった。

さらに、生徒が将来研究職に就いたときに備えて、 生徒に 外部資金の 申請 を させることで 、競争的資金等 の予算獲得の経験を積ませたり、申請に教職員が積極的に関わり、そのプロセスを教職員間で学び合う ことで 持続的な体制作りに取り組んだり、支援団体 が主催する 成果報告会を生徒及び教職員の交流やモチベーション向上の機会とするなど、外部資金を金銭的支援以外 に 活用する例も見られた。

外部資金による支援を得ることの課題としては 、外部資金に係る情報 やノウハウ の不足、申請や成果報告等に係る負担、会計処理に係る負担などがあげられ た 。

このため、国は、 SSH 指定校 で 活用できる 外部資金 に関する情報の 集約 や、外部資金を有効に活用し ている事例の発信など、 SSH 指定校が 外部資金を獲得・活用しやすくするための環境整備を行う必要がある。 また、 企業・民間 団体 において SSH 指定校はじめ高校における課題研究を支援する インセンティブを高める ため、 国 が 、 SSH 事業の成果を 積極的に 発信し、支援 ネットワークを 広げる 活動も重要である。 また、外部資金の獲得に当たっては、 一部のSSH 指定校で実践されているように、 そのノウハウ を持つ 外部人材を 活用することも有効であり 、 社会的なネットワークを 生 かした SSH 事業のマネジメント の在り方 について、引き続き検討を進める必要がある。

また、管理機関においても、地域限定の外部資金が存在することから、 域内の 外部資金等の情報を一元化し、 SSH 指定校に提供するとともに 、 各助成 団体との調整、 所管する SSH 指定校の成果の発信 の役割を担うとともに、 私費に関するルール整備 を行うこと も重要である。特に管理機関が大学である国立及び私立の SSH 指定校 の場合は、 公立と比べ 競争的資金に係るノウハウを多く有するため、管理機関として 所管する SSH 指定校に対し、 外部資金獲得のアドバイスや 体制整備等の 支援を行うことも有効である。

(2)大学・研究機関等の最先端設備の共用・借用の促進

大学・研究機関等の設備 の 共用 ・借用により 、 SSH 指定校における 研究内容の高度化や、経費執行の効率化を図ることが期待される。インタビューでは、一部の SSH 指定校で、近隣大学や研究機関の実験機器や設備等を借用したり、分析の依頼を行っている例 のほか 、大学・研究機関だけでなく、 SSH 指定校含む近隣の高校との間で、実験機器や設備等を共用 ・貸与している例も見られた。

こうした他機関との共用等 を行う際の課題として、 大学・研究機関等 との地理的距離があるSSH 指定校は、共用が困難であること、大学・研究機関等の協力を得るにあたり、 SSH 指定校の 活動への理解を得る必要があること、大学・研究機関等の協力関係が個人的なつながりに頼っており持続的な関係づくりができていないこと、 機器を破損した場合の責任の所在、費用負担等のルールが存在せず、共用を躊躇する場合があること、 SSH 指定校において、 そもそも学校を超えて備品等を共用するという発想に至っていないのではないかとの意見があげられた。また、近隣 SSH 指定校との共同購入については、 JST の経費支援とのルールの関係で可能なのかどうか不明との意見もあった。

このため 、大学・研究機関等との機器の共用・借用を促進するには、国や管理機関は、共用に係る仕組みや手続きを整備するとともに、モデルとなる事例について情報提供を行うことが必要である。 また、管理機関においては、域内の大学、研究機関、高校の共用可能な備品を一覧化し、 SSH 指定校への活用を促すとともに、 SSH 指定校が 大学・研究機関等と 機器を 共用 する に当たり、連絡調整の 役割を 果たすことも重要である。

Ⅳ.SSH事業の目指すべき方向性の実現に向けて取り組むべき方策

1.成果の 普及 ・ 啓発 や情報共有 について

Ⅱ.1.(2)及び(3) で述べた SSH 指定校の「 地域における 科学技術人材育成 ネットワーク 拠点の 形成 」「 成果の普及・啓発の取組 」 という役割や、 SSH 事業における研究開発の成果は、 国民の財産であり、 域内の理数系教育だけではなく、我が国の科学技術人材育成システム改革に資するという 本事業の 位置づけ を踏まえると、 SSH 指定校が 情報共有したり切磋琢磨したりできる機会を提供するとともに、 SSH 事業の成果を広く発信・普及することは、極めて重要である。このため、以下の通り、現状や課題、取り組むべき方策について整理した。

(1)現状及び課題

国においては、SSH 指定校間の情報共有等や SSH 事業成果の普及・啓発に関する取組として、以下を行っている。

  • ○ JST ホームページ における 研究開発実施報告書へのリンクの掲載
  • SSH 生徒研究発表会、 SSH 情報交換会の開催

また、管理機関やSSH 指定校、地区レベルにおいて 、主に以下の取組を行っている。

  • 教員研修においてSSH 指定校で開発した指導法の紹介、 SSH 指定校での経験が豊富な教師 による研修の実施
  • ホームページへの取組内容の掲載、学校だよりやメールマガジン等を通じた発信
  • SSH 指定校で開発した教材のホームページへの掲載、域内の学校への配布
  • 生徒研究発表会、教職員を対象とした 情報交換会の開催
  • 一般校(小・中学校を含む)における観察・実験等の指導への SSH 指定校 での指導経験がある教師 の派遣、出前授業の実施 など

一方で、課題として、管理機関や SSH 指定校により、取組に差があること、地理的・時間的制約により、生徒研究発表会や情報交換会の開催に向けた調整が困難であること、成果普及の範囲が限定的で都道府県を越えた連携が進みにくいこと等が上げられる。

(2)今後取り組むべき方策

平成30 年報告書においては、成果の普及・啓発に係る 国( 文部科学省及び JST 、管理機関、 SSH 指定校のそれぞれの果たすべき役割について、以下の通り整理されている。

参考:スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議報告書(平成 30 年 9 月)(抜粋)
Ⅲ.事業運営の検証

1. 関係機関の役割について

1-1文部科学省及び JST の役割

文部科学省及びJST は、 SSH 指定校や管理機関の取組について、指定校の教師等を対象とした情報交換会等における情報(各学校の取組等)の共有、優良事例の周知等を図る。

(略)また、文部科学省及びJST は、 SSH 事業の成果・効果が最大化されるよう、事業運営の改善を図るとともに、 SSH 事業全体の成果の把握・検証・発信を行う。

1-2管理機関の役割

管理機関は、所管するSSH 指定校が掲げる計画の円滑な実施と、取組の改善、継続性の確保のために必要な管理機関としてのマネジメント体制を整備するとともに、 SSH 指定校における指導体制やその指導の継続性を保証するマネジメント体制の整備・確保、教師の指導力の向上などを人的・物的に支援する。

また所管する SSH 指定校における優良事例や教師の指導体制等の有用な知見について、所管の高校や教師(教育委員会については所管する地域の高校)を対象として積極的に普及・啓発活動を行うとともに、取組の進化・改善を図ろうとする高校と SSH 指定校との連携を促す。なお、私立高校や国立大学の附属学校の場合も、設置者が地域に対して成果を発信することが望ましい。

1-3SSH 指定校の役割

SSH 指定校は、作成した研究開発計画を、状況に応じて適切かつ柔軟に見直すことも含めて実施し、教育課程等(新しい科目の創設やカリキュラムの改編のみではなく、教育課程全般といった広義の意味合い)の改善に関する研究開発を含めた先進的な理数系教育を通して、将来、国際的に活躍し得る科学技術人材の育成を図る。

計画の実施に当たっては、管理職を含めた教職員の異動等が計画の 推進に大きな支障を来すことがないよう、学校長のリーダーシップの下、学校全体として組織的に研究開発に取り組む体制を整備するとともに、ホームページ等を通じて取組の内容、成果について積極的に情報発信を行う。

こうした関係機関の役割と上記 (1)で述べた 現状及び課題を踏まえ、以下の通り、各 関係機関が取り組むべき 方策 について整理した。

① 国(文部科学省及び JST)

国においては、全国規模でのSSH 生徒研究発表会や SSH 情報交換会などを開催することにより、引き続き、各 SSH 指定校や管理機関の間で取組やその成果を共有す る機会を作る必要がある。特に都道府県や設置者を超えた連携については、令和元年度から開始した重点枠「広域連携」の成果を踏まえながら、引き続き有効な方策を検討する必要がある。

また、生徒の探究活動等を支える教師の様々な工夫や、各学校における組織的な取組、これまで開発した教材等の成果等を集約するなど、知見や経験を蓄積・公開し、各 SSH 指定校や管理機関、一般校が効率的に参照し、お互いに刺激を受けることができる仕組みを構築する必要がある。 ただし、生徒の作品 や取組 などを発信する際は、個人情報の取扱い のほか、著作権や肖像権 について、引き続き議論を行う必要がある。

さらに、毎年、各SSH指定校が提出する研究開発実施報告書の様式について、他校が参照しやすくする方策を検討する必要がある。

連携の地理的・時間的制約については、Ⅱ.1.(2)③ で述べたとおり、 各 SSH 指定校・管理機関における オンラインを活用 した 定常的な連携を積極的に 支援し、その成果を広く発信することも有効である。

② 管理機関

平成30 年報告書を踏まえると、管理機関には、管理機関及び所管する SSH 指定校におけるマネジメント体制の整備・確保、 教師 の指導力向上など、 SSH 指定校に対する人的・物的 支援が 求められている。

管理機関における成果の普及・啓発にあたっては、所管する SSH 指定校を 地域の理数系教育の拠点として、 当該 SSH 指定校との関係だけでなく、 どのように地域全体 、ひいては日本全体 へ成果を広く普及し、 教育水準を高めようとしているか、あらためて 立ち返る必要がある。

その上で、 管理機関には 、 引き続き、所管する SSH 指定校における 実践 事例や有用な知見を把握 し、積極的に普及することが求められる。

特に公立の場合、管理機関である教育委員会は、複数のSSH 指定 校を所管することがあるため、上記 に加え 、学校間の連絡調整機能を果たす役割が期待される。

例えば、先進的な普及・啓発を行う管理機関では、所管する SSH 指定校のほか、有識者や企業、中学校関係者による運営委員会を組織し、 国立、公 立、私立の学校の参加に加え、企業・研究機関等も研究発表を行うサイエンスフェア の 開催 や 、各 SSH 指定校の研究活動に資する情報を集約した科学技術人材バンクや研究課題バンクの構築、各校が持 つ 特殊な実験機器等 の 共有 といった、 科学技術リソースを活用する ための 取組を行って おり、こうした事例を参考にすることが考えられる 。

③ SSH指定校

SSH指定校においては、引き続き、ホームページ等を通じて取組の内容、成果について積極的に情報発信を行う。 その際、研究開発の成果をただ発信するのみでなく、自校の取組や成果のポイントを簡潔に記載するなど、保護者・地域をはじめとする学校関係者や一般国民に理解しやすいような工夫を行うことが求められる。

さらに、国内外からの視察受入れや開発した教材、指導法、評価手法等が活用された履歴など、研究開発成果が自校以外でいかに活用されているか、当該指定校の客観 的成果として「 見える化 」を図る ことも有効である。 その際、成果 の普及・啓発を 更 に進めるため、参照された履歴だけでなく、 SSH 指定校のみならず広く 他校において どのように活用されたかについての情報 も、合わせて 収集・ 発信することが重要である。

2.SSH事業 における 有効な評価方法の確立~ PDCAサイクル構築の在り方

(1)現状及び課題

現状、個々の SSH 指定校における取組の成果の把握・検証・改善は、主に各 SSH 指定校における自己評価や文部科学省の中間評価等により行われている。これらにより、 SSH 指定校において、 独自の評価手法の開発、 事業成果の把握・検証・改善 が行われている。

一方で、 令和元年度予算執行調査においては、 事業開始から長期間経過しているにもかかわらず、文部科学省において有効な評価方法が確立されていない こと、 文部科学省が主体的に、明確な評価基準を示すとともに、各指定校に検証可能な到達目標を立てさせるよう制度を改善 することの必要性が指摘された。また、インタビューにおいては、 自校の取組の成果を検証するにあたり、国及び管理機関に対して、 主に以下の要望があ げられた。

【国に対する要望】
  • 評価手法の開発 のための統一的な指針 、情報発信
  • 有効な評価手法や評価項目の例示、参考となる事例の情報提供
  •  SSH 指定校における評価手法の一覧化
  • 卒業生の追跡調査に関するノウハウ・情報提供等の支援
  • 評価についてアドバイス等の支援が受けられる大学・研究機関等の情報提供
【管理機関に対する要望】
  • 域内の SSH の評価手法に関する参考となる事例の情報提供
  • 評価手法に関する指導 ・ 助言

(2)評価ガイドライン(仮)の趣旨

事業の成果を最大化するためには、国・管理機関・ SSH 指定校が目指す方向性及び期待される役割を共有 し、各関係機関において有効な PDCA サイクルを構築 することが重要である 。

そのためには、 上記 (1)で述べた現状や課題を踏まえると、国において、効果的な評価の取組を行う事例の普及を行うとともに、各管理機関や SSH 指定校において有効な PDCA サイクルを構築するための情報提供として、評価ガイドライン(仮) )(以下、「ガイドライン」という。 を策定する必要がある。 ガイドラインを踏まえた評価を実践すること により、以下の効果が期待される。

なお、Ⅲ.1.(3)で述べたとおり、SSH 事業の活性化においては、 SSH 指定校の創意工夫に基づく多様で特色ある先進的理数系教育の実践が重要であり SSH 指定校及び管理機関が主体的に当該指定校の取組を検証し、事業運営の改善に生かすべきことに留意する必要がある。

【ガイドラインを 踏まえた評価を実践 することにより期待される効果】
  • 国による採択審査、中間評価、 SSH 事業の評価、 学校評価など、 関係機関における 様々な 評価段階 の 目的・位置づけ を明確化することで 、 一体的な PDCA サイクルを構築し、学校運営や SS H 事業の成果の最大化を 図 ることができる。
  • SSH 指定校 が日々の活動について、組織的・継続的な改善を図ることが可能にな り、 自校のビジョン実現に向けて、日々のSSH 活動や学校運営を行う際の視点が明確になる。これらは、今後 SSH の指定を目指す学校や、指定初期の学校にとって、 SSH 指定校としてのビジョンを確立していく上で特に有効であると考えられる。
  • SSH 指定校が自校の取組やその評価結果を広く公表することで、地域や社会に対して取組や成果の共有を図り、 SSH 事業の取組の理解を広げ られ る。これにより 、 学校を超えた広域連携が推進されるほか、 保護者や連携機関の理解や参画を得て、 更 なる SSH 活動へ の 充実につなげる ことができる 。
  • 管理機関が SSH 指定校の 評価結果を踏まえ、 SSH 指定校に対する支援や条件整備等の改善措置を講じることで、 更 なる SSH 活動の充実を 図る ことができる 。
  • 国が SSH 指定校の状況や事業全体の状況の把握などを通じて、指定校への支援や、事業全体の改善を推進する。

中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学 びの実現~」においては、 各高校の 「スクール・ミッション」や これを実現するための「 スクール ・ ポリシー 」 の 策定等 について 提言された 。

各SSH 指定校における SSH 事業 の 運営は、自校の 「スクール・ポリシー」 を 踏まえ、事業計画という形で SSH 指定校として 5年間 で取り組むべき事項や出口を明確化・ 具体化し、これに沿ってその進捗を内部・外部から不断に評価・検証 することによって 、ビジョンの実現、学校の特色作り、課題の改善 等 という営みを繰り返しながら行われるものである。 こうした事業運営は、 上記の中央教育審議会答申で提言 されている高等学校の学校運営 改善 の参考となる先進的なものである。

このように、各SSH 指定校における取組の評価 や PDCA サイクルの構築 に 当たって は、各学校のミッションや運営改善プランニングにおいて、 SSH 事業がどのように位置づけられているかの視点 を持つことが重要である。このため、ガイドラインは、あくまでも参考であり、網羅的に取り組む必要はなく、自校の特色や SSH 事業の目的を踏まえ、改善に資するよう活用されることが重要である。 こうした認識を持つことが、各 SSH 指定校における 特色作りや取組の精選、 いわゆる「評価 疲れ」や評価に 係る 事務負担を解消することにもつながると考えられる。

(3)ガイドラインに盛り込むべき観点・事項

文部科学省において、ガイドラインを策定するに あたっては、 各評価段階に共通して、 SSH 事業 の趣旨・ 目的である 、将来国際的に活躍し 得 る科学技術人材等の育成、そのため に必要な高校の理数系教育に関する教育課程等の改善に資する実証的資料 を得ることが達成できているか という 観点に 、まずもって 留意する 必要がある。中でも、 SSH 指定校において、生徒がどのように育っているか、 生徒を育成する ための体制 (特にカリキュラム やカリキュラム ・ マネジメント が構築できているかを中心に据えて検討する必要がある。

その上で、上記 (2)で述べたガイドラインの趣旨を踏まえ、ガイドラインに記載すべき事項として、以下の通り整理した。

【ガイドラインに記載すべき事項】
  • SSH 事業の目指すべき方向性及び SSH 指定校に期待される役割を踏まえ、国(文部科学省・ JST )、管理機関、 SSH 指定校の関係機関が取り組むべき事項。具体的には、以下の通り。
    • SSH 指定校は、事業計画をもとに、日々の SSH 事業における教育活動を推進し、その課題を把握しながら、運営指導委員会の 指導・ 助言や先進校の実践などを参考にしつつ、自らの創意工夫を 生 かして、学校運営や教育カリキュラム・授業の改善に取り組む 。
    • 管理機関は、指定校の活動状況を把握し、特色に応じた改善のための支援を行う 。
    • 国は、 SSH 指定校(管理機関含む )の活動状況やその活動の成果を把握し、取組の改善を促すとともに、指定校や管理機関の求めに従い、相談に応 じ る等の支援を行う 。
    • 国は、事業全体の成果の検証を行い、支援の在り方など事業全体の改善を進 めるため、採択審査や中間評価など各評価段階における取組の改善・評価を適切に行う。
  • 各SSH 指定校における日常の授業改善、学校評価、国による採択審査、中間評価、 SSH 事業全体の評価等といった、各評価段階の位置づけ 。
  • 上記の各評価段階における観点の共通事項、共通的に求められる取組。

ガイドラインの策定に当たっては、SSH 指定校における PDCA サイクル の在り方は、Ⅱ.で述べた目指すべき方向性 や指定期数によっても異なる ことに留意 すべき であ り、特に指定初期のSSH 指定校に対しては、 SSH 指定校としての体制・取組等の確立のため に必要な取組ついて、指針となる 事項 を記載する必要がある。

また、「重点枠 」については、現在中間評価が行われていない ところ、その評価の在り方については 、引き続き検討を行う必要がある。さらに、Ⅲ.2.で述べた 「 認定枠 (仮 」 とガイドラインとの関係についても、引き続き議論が必要である。

(4)その他

有効な評価方法の確立のため 国が 取り組むべき事項国においては、ガイドラインを策定するほか、 毎年開催する SSH 情報交換会 等において、自校の取組の成果の評価をテーマとした研修を開始するほか 、 SSH 指定校に対して引き続き、 指導 ・ 助言 を行うことが求められる。また、ガイドラインに記載する SSH 事業の趣旨や求める計画については、 公募要領や審査基準 に 明記し、 これに基づいて審査・評価、採択を行う。

3.SSH活動における研究倫理の在り方について

(1)検討の背景

近年、高校生が自主的に課題研究に取り組んだ成果を学会で発表する機会が増えている。

例えば 、 JST が実施するグローバルサイエンスキャンパス( GSC )事業においては、高校生が大学の研究室で研究活動を行い、学会誌に投稿したり、その成果を表彰されたりする例が見られる。

このように、高校生による研究成果の発表機会が充実し始めている一方、SSH 活動においても、安全の確保や研究の公正性に関して 研究内容や手続き が 適切に実施されていないと思われるものが一部に見受けられる 。

特に、微生物を対象としたり危険な化学物質等を扱ったりする場合は、当該研究に精通している専門家の指導や適切な実験設備・装置の使用などといった安全性への適切な配慮を怠ると生徒の感染、毒物や劇物に触れることに よる負傷等のリスクが生じる。 また、動物を対象とする場合、動物の健康や福祉へ十分配慮することも求められる。

そもそも研究を実施する者は、研究を適切に実施するための基本的な知識・スキルを身に付ける必要があり、そのために研究倫理を学ぶことが不可欠である。特に生徒が研究者としてのキャリアパスを志向する場合、自らの研究スタイルを確立する前の早い段階から研究倫理の知識・スキルを身に付け、実践を積んでおく必要がある ことから、高校段階での研究倫理教育は、重要である 。

なお、科学研究コンテストである 国際学生科学技術フェア( ISEF は、「ねつ造」「改ざん」「盗用」といった研究不正行為 を 禁止 し 、 データや 文献調査からの引用の適切性 を 審査対象と し ている。

また、人を対象とした研究や脊椎動物に関する研究等については、事前に関連の審査委員会による審査を受ける必要があるなど の ルール を 定め 、 参加者に 遵守を 求めている。 このように、初等中等教育段階の生徒に適切な研究活動を求めることは、国際的な趨勢となりつつある。

したがって、 SSH 指定校において、 生徒に学会発表、論文投稿や 海外の生徒・研究者との共同研究等の交流 を 行 わせ るときは 、研究倫理は、避けて通れない課題となっている。

(2)高校における探究活動と研究倫理

SSH指定校をはじめとする高校において、課題研究等の探究活動に取り組む際は、研究倫理について生徒に理解させることや、教師が研究倫理に十分配慮することが求められる。

なお、こうした高校段階における研究倫理 に係る取組 は、研究者の研究活動とは異なり、 上記(1)に掲げた学会発表、論文投稿、海外との共同研究や交流などを実施しない場合、個々の課題研究への 厳格な倫理審査が課され てい る訳ではないことに留意が必要である。

(3)今後取り組むべき事項

SSH指定校においては、事業開始当初の卒業生が研究者として活躍し始めていること、生徒が将来のキャリアパスとして研究者を志向する場合が多いことから、研究倫理 に係る取組 は、喫緊の課題である。

今後は、研究を行う生徒の指導にあたる教師が研究倫理の意義を理解するとともに、安全性や研究の公正性に配慮した指導を行うなど、研究倫理に係る指導の充実が求められる。その際、 研究倫理に係る取組については、 教師だけに依存するのではなく、管理機関の支援を受けながら学校全体として対応することが求められ る。例えば、課題研究に協力する大学・研究機関等の研究者からのアドバイスを受ける際、管理機関が大学・研究機関等との連絡調整の役割を果たしたり、 SSH 活動と連携関係にある 大学・研究機関等における倫理審査委員会 に 高校生の研究に関する審査の協力を 依頼 したり する こと等も考えられる。また、指導に当たっては、生徒の課題への取組の主体性や意欲を損なうことなく、 生徒が 丁寧かつ確実に理解できるようにすることが望まれる。

さらに 、国においても、 SSH 指定校において生徒へ指導する際に参考となる情報を集約等し、提供していくことが求 められる。

Ⅴ.おわりに

本報告書で は、令和元年度予算執行調査における指摘やこれまでの SSH 事業の成果や課題、管理機関・ SSH 指定校からの要望等を踏まえ、 主に 事業成果の最大化を 図るための方策について、 検討 を行った。

今後、国、管理機関、 SSH 指定校においては、本報告書に示された SSH 事業の今後の方向性を踏まえ、事業の改善に必要な取組をすみやかに実行することが期待される。

SSH事業は、Ⅰ.2.(2)でも述べたとおり、約 20 年間にわたる取組の中で、優れた科学技術人材を輩出するのみならず、高校等における探究的科目の新設など多くの成果をあげてきた。これからも社会の状況を注視し、不断に事業の在り方を見直しながら、新たな価値の創造など次の時代の先駆けとなる人材育成システムの構築に、本事業が貢献し続けることを期待したい 。

参照

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