ビジネス全般

統計情報総合研究事業(令和4年度厚生労働科学研究)

2021年8月23日

1.研究事業の目的・目標

【背景】

公的統計は、統計法第1条において「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報」とされている。また、平成30年に閣議決定された第Ⅲ期の「公的統計の整備に関する基本的な計画」において、「公的統計の有用性の確保・向上」に向け、「国際比較可能性や統計相互の整合性の確保・向上」、「ユーザー視点に立った統計データ等の利活用促進」、「統計改善の推進に向けた基盤整備・強化」等の視点に重点が置かれている。統計情報総合研究事業では、上記を踏まえた研究を推進することで、社会保障をとりまく状況が大きく変化している中、統計データを活用し、変化に対応した政策の企画立案を適切に行うためのエビデンス(科学的根拠)の創出につなげることが求められている。

【事業目標】

統計情報の収集、分析、公表等の手法に関する研究、統計情報の精度の向上や国際比較可能性の向上に関する研究などを実施し、医療・介護・福祉・年金・雇用などの各制度の課題解決への貢献、世界保健機関(WHO)が勧告する国際的な統計基準の開発・改定作業への貢献等に取り組む。

【研究のスコープ】

  • ① 厚生労働統計の調査手法及び精度の向上に関する研究調査手法の効率化、更なる精度の向上を図ることにより政策の企画立案に資する統計調査を目指す。
  • ② 厚生労働統計分野における国際比較可能性、利用可能性の向上に関する研究WHO が勧告する国際的な統計基準の開発等に関わるとともに、わが国への公的統計への適用を円滑に進める。
  • ③ 厚生労働統計の高度な分析によるエビデンスの創出に関する研究厚生労働統計の利活用を促進するために、エビデンスの創出方法を提案する。
  • ④ 社会・経済情勢や人口・疾病構造の変化に対応するための統計作成に関する研究わが国の社会保障をとりまく状況の変化に応じた政策の企画立案に資する統計作成を目指す。

【期待されるアウトプット】

  • 疾病統計における効率的な調査の実現のための調査手法の提案及び集計等に係わるツール開発案を提示する。
  • WHO が勧告した国際統計分類と国内の統計分類の改訂に関する知見に基づいて、変化する国際統計分類に関する教材を利用者にわかりやすい形で提供する。
  • WHO の求めに応じて提出するわが国における国際統計分類の活用に関する資料を作成する。
  • 国際生活機能分類の具体的な活用例を提示する。

【期待されるアウトカム】

  • 各国際統計分類の活用方法及び教育方法等についての知見を国際的に情報発信することにより、国際社会においてわが国の存在感をより発揮する。
  • 統計調査については、医療機関等の報告者や集計者の負担軽減等の効率化を図ることにより、統計調査への積極的な協力のもとわが国の厚生労働省統計の精度の向上につながる。
  • 厚生労働統計の精度の向上により、質の高いデータを得ることができ、わが国の社会保障関係施策の企画立案や課題解決に貢献する。
  • 政府全体の公的統計の整備に関する施策の推進に貢献する。

2.これまでの研究成果の概要

  • 「NDB データから患者調査各項目及び OECD 医療の質指標を導くためのアルゴリズム開発にかかる研究」では、患者調査の一部の調査項目における NDB データを活用した算出方法を提案することにより患者調査の調査手法の検討に資する基礎資料の作成に貢献した。また、OECD(経済協力開発機構)の指標の導出における NDB データの活用可能性を見いだすことにより、国際比較可能な数値の算出方法を提案した。(令和2年度終了)
  • 「医療・介護連携を促進するための国際生活機能分類を用いた評価と情報共有の仕組みの構築」では、国際生活機能分類(ICF)サブセット日本版の再現性を確立し、さらに採点支援アプリケーションソフトを開発することにより、普及啓発に貢献した。(令和元年度終了)
  • 「患者調査における総患者数推計の妥当性の検証と応用に関する研究」は、わが国の疾病統計として実施されている患者調査の総患者数について、様々な保険医療データも用いながら、近年の患者の受療状況を考慮した推計手法を提案、検証した。(平成 30 年度終了)

3.令和4年度に継続課題として優先的に推進するもの

  • 「国際生活機能分類 ICF を用いた医療と介護を包括する評価方法の確立と AI を利用したビックデータ解析体制の構築」
    ICF を含むデータベースの構築及びビックデータ解析は期待されており、より精度の高い解析のためデータベース整備を増強して推進する必要がある。
  • 「患者調査の効率的な実施手法の確立に資する研究」
    実現可能な ICT ツール開発のためのプロトタイプ案が評価されており、試作のための計画を増強して推進する必要がある。

4.令和4年度に新規研究課題として優先的に推進するもの

  • 「ICD-11 の我が国における普及・教育に資する研究」
    ICD-11(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第 11 回改訂)の公的統計への適用については現在検討が進められているところであるが、未だ ICD-11 についての普及・教育が十分にできていない状態であり、広く教育を行うことが求められている。
  • 「International Classification of Health Interventions (ICHI)の我が国への普及のための研究」
    本分類は新しい国際統計分類であることから、海外での活用検討状況を踏まえながら、わが国において当該分類の活用方法を提案し、継続的な教育・普及を行うスキームを確立する必要がある。

5.令和4年度の研究課題(継続及び新規)に期待される研究成果の政策等への活用又は実用化に向けた取組

国際統計分類(ICD、ICF、ICHI)について、わが国に即した活用方法の提案、国際統計分類を用いたデータ分析及び普及啓発を行うことで、これらの知見や課題を WHO や国際会議の場で情報発信することにより、英語圏以外の国としての活用の知見を提供し、リードする日本としてわが国の存在感をより発揮することができる。

患者調査における医療機関等の報告者や集計者の負担軽減等の効率化を図るため、現場での課題を踏まえた実現可能なツール案を提示することにより、統計調査への積極的な協力が得られるようになり、厚生労働省統計の精度の向上につながる。

参照

令和4年度厚生労働科学研究の概要

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