エビデンス全般

デジタルヘルスに関する日本での取り組み(2023年3月時点)

今回は、デジタルヘルスに関する日本での取り組みについてご紹介します。

製薬企業とデジタルヘルス企業の連携事例

製薬企業とデジタルヘルス企業の連携事例としては、以下のものがあります。

  • FRONTEOと武田薬品工業のConcept Encoder
  • 塩野義製薬とAkiliのAKL-T01 / AKL-T02
  • アステラスとWelldocのBlueStar
  • 大塚製薬とIBMのMENTAT
  • エーザイとアルムの医療・介護ICT
  • 大日本住友製薬とAikomiと損保ジャパンの認知症デジタル医療機器

これらの事例では、デジタルヘルスの技術を用いて、医薬品の開発や治療効果の向上、患者のサポートや介護の効率化などを目指しています。

FRONTEOと武田薬品工業のConcept Encoder

FRONTEOと武田薬品工業が共同開発したConcept Encoderは、自然言語処理技術を用いた医薬品開発支援システムです。

Concept Encoderは、医薬品関連の膨大な文献データを自動的に収集・解析し、関連するキーワードや概念を抽出します。そして、これらのキーワードや概念を用いて、医薬品の研究開発や治験デザインの支援を行います。

Concept Encoderは、自然言語処理技術の一つであるBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を応用しています。BERTは、大量のテキストデータから自然言語の意味を理解することができる深層学習モデルであり、Concept Encoderは、このBERTを医薬品関連の文献データに適用することで、より高度な情報抽出を実現しています。

塩野義製薬とAkiliのAKL-T01 / AKL-T02

塩野義製薬とAkili Interactiveが共同開発したのは、認知症や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの神経精神疾患を治療するためのデジタル治療薬であるAKL-T01およびAKL-T02です。

これらの治療薬は、Akiliが開発したプラットフォーム技術「Project: EVO」を基にしています。Project: EVOは、スマートフォンやタブレットなどのデバイス上で、認知機能の改善を目的としたゲームを提供するもので、AKL-T01およびAKL-T02は、これを応用した治療薬となっています。

AKL-T01は、軽度から中程度のアルツハイマー型認知症の治療に使用されるもので、プレイヤーが進行する中で難易度が調整されるゲームを通じて、注意力や認知機能を向上させることが目的です。

一方、AKL-T02は、ADHDの治療に使用されるもので、プレイヤーが画面上の障害物を避けたり、ターゲットを集めたりするゲームを通じて、注意集中力を向上させることが目的です。

アステラスとWelldocのBlueStar

アステラス製薬とWelldocが共同開発したBlueStarは、糖尿病患者向けのデジタルヘルスプラットフォームです。

BlueStarは、スマートフォンやタブレットなどのデバイス上で動作するアプリケーションで、患者が自己管理する血糖値や食事、運動などの情報を記録し、それらのデータを分析することで、患者の状態を把握し、治療方針の改善を支援するものです。

また、BlueStarは、人工知能(AI)技術を応用しており、患者のデータを収集することで、自動的に治療方針を提案することも可能です。さらに、医療従事者が患者のデータをリアルタイムで閲覧できるため、治療方針の改善や医療費の削減にもつながると期待されています。

大塚製薬とIBMのMENTAT

大塚製薬とIBMが共同開発したMENTATは、医療従事者向けの人工知能(AI)プラットフォームです。

MENTATは、医療従事者が持つ膨大な医療知識を収集し、AI技術を応用して症例の解析や治療方針の提案を行うものです。MENTATは、医療従事者の経験や知識を収集し、それをデータ化することで、医師の判断力をサポートし、より正確な診断や治療方針の提案が可能となると期待されています。

MENTATは、大塚製薬が持つ専門知識を基に開発されています。具体的には、患者の状態をモニタリングし、治療方針を提案するシステムを構築しています。

MENTATは、2019年に日本で発売され、医療機関などで導入されています。また、MENTATは、医療従事者の負担軽減や診断・治療の正確性向上に貢献することが期待され、今後、他の疾患にも応用される可能性があります。

エーザイとアルムの医療・介護ICT

エーザイとアルムが共同で開発した医療・介護ICT(情報通信技術)は、高齢者や障がい者の医療・介護を支援するための情報システムです。

具体的には、エーザイが持つ医薬品や医療機器の情報と、アルムが持つケアマネジメントの情報を組み合わせ、高齢者や障がい者の医療・介護に必要な情報を総合的に管理することができます。また、医療・介護に関する情報をクラウド上で共有することで、医療従事者や介護職員の業務効率化や、より適切な医療・介護の提供が可能となります。

さらに、医療・介護ICTには、高齢者や障がい者自身が利用できるサービスもあります。例えば、健康管理アプリや在宅診療サービスなどがあり、高齢者や障がい者が自宅で医療・介護を受けられるようになることで、生活の質の向上や医療費の削減につながると期待されています。

エーザイとアルムの医療・介護ICTは、日本の医療・介護システムの改善に貢献することが期待されており、今後、高齢化社会が進む中でますます重要性が高まっていくと考えられています。

大日本住友製薬とAikomiと損保ジャパンの認知症デジタル医療機器

大日本住友製薬、Aikomi、損保ジャパンが共同で開発した認知症デジタル医療機器は、認知症患者の日常生活の支援や、介護者の負担軽減を目的とした、スマートフォンやタブレット端末を活用したシステムです。

具体的には、認知症患者がスマートフォンやタブレット端末を利用して、日常生活に必要な情報や予定を確認することができます。また、認知症患者が迷子になった場合には、スマートフォンやタブレット端末を使って、現在地を確認し、迷子になった場所に迅速に対応できます。さらに、認知症患者が薬の服用を忘れてしまった場合にも、スマートフォンやタブレット端末を使って、服用する薬を通知することができます。

この認知症デジタル医療機器は、Aikomiが開発した人工知能(AI)技術を活用しており、認知症患者の行動を学習し、適切な支援を提供することができます。また、損保ジャパンが保険商品として提供することで、認知症患者や介護者の負担軽減につながると期待されています。

このような認知症デジタル医療機器は、認知症患者や介護者の負担軽減や、認知症患者の社会参加の促進などに貢献することが期待されています。

ヘルステック企業によるデジタルヘルスサービス

ヘルステック企業によるデジタルヘルスサービスの事例も複数が既に存在します。

  • FiNCとミツカンのFiNC Wellness
  • カルティアとアイシン精機のカルティアヘルス
  • 日本生命のヘルスケアプラットフォーム

これらの事例では、デジタルヘルスの技術を用いて、健康管理や予防医療、生活習慣病の改善、健康増進などを目指しています。

FiNCとミツカンのFiNC Wellness

FiNCとミツカンが共同で開発した「FiNC Wellness」は、食生活や運動、睡眠などの健康データを総合的に管理するスマートフォンアプリです。

このアプリでは、自分の食事内容を撮影し、AIがカロリーを算出する「カメラ機能」や、スマートウォッチやフィットネストラッカーと連携し、運動量や睡眠時間を記録する「トラッキング機能」が提供されています。また、ユーザーの健康状態に応じて、食事や運動、睡眠のアドバイスを受けることもできます。

ミツカンは、このアプリを通じて、健康的な食生活の実現や、食品・調味料などを提供することで、健康な生活を支援することを目的としています。FiNCは、健康情報の収集・分析・提供に関する技術力を活かし、ユーザーの健康増進に貢献することを目指しています。

「FiNC Wellness」は、健康に関心がある人や、健康的な生活習慣を身に付けたい人に向けて開発されており、ユーザーの健康管理や健康増進に役立つと期待されています。また、ミツカンの食品や調味料と連携することで、より具体的な健康アドバイスを提供することも可能になります。

カルティアとアイシン精機のカルティアヘルス

「カルティアヘルス」とは、カルティアとアイシン精機が共同開発した、高齢者向けのヘルスケアロボットです。

このロボットは、高齢者の生活習慣や健康状態をモニターし、必要に応じて健康管理や介護支援を行います。例えば、高齢者が起きたり寝たりする時間や、食事や運動の状況などをセンサーで検知し、データをクラウド上に蓄積します。また、ロボット自身が高齢者と会話をすることで、健康状態や生活習慣についての情報を収集します。

収集したデータは、カルティアのAIエンジンによって分析され、高齢者の健康状態を評価します。必要に応じて、ロボットが高齢者に健康アドバイスを提供するとともに、医師や介護スタッフとの連携を行い、必要なケアを提供します。

日本生命のヘルスケアプラットフォーム

「日本生命のヘルスケアプラットフォーム」とは、日本生命保険相互会社が提供する、健康管理や生活習慣改善を支援するサービスです。

このプラットフォームは、日本生命が保有する健康情報や、加入者が提供する健康データを活用して、個々人に合った健康アドバイスやプログラムを提供します。具体的には、加入者がスマートフォンアプリやウェアラブルデバイスを使って健康データを取得し、プラットフォーム上で分析・評価されます。その後、日本生命の健康アドバイザーや専門家がデータをもとに、加入者に健康アドバイスを提供するとともに、健康プログラムを提案します。

また、このプラットフォームでは、健康アドバイスだけでなく、保険商品の提案や保険料の割引など、健康に関する様々な情報を提供しています。さらに、健康管理に関するセミナーやイベントも定期的に開催されており、加入者が健康意識を高めることを支援しています。

「日本生命のヘルスケアプラットフォーム」は、加入者の健康状態や生活習慣に合わせた、より個別化された健康サポートを提供することを目的としています。また、保険会社が保有するデータを活用することで、より効率的かつ効果的な健康管理が可能になると期待されています。

デジタルヘルスの最新技術の事例

デジタルヘルスの最新技術の事例としては、以下のものがあります。

  • NECと日本医科大学のAI診断支援システム
  • アクセンチュアと東京大学のAI医療画像診断システム
  • ソニーと東京女子医科大学のVR手術シミュレーター
  • 富士通と東京大学のIoTヘルスケアプラットフォーム
  • 日立と東京大学のビッグデータ解析システム

NECと日本医科大学のAI診断支援システム

「NECと日本医科大学のAI診断支援システム」とは、NECと日本医科大学が共同で開発した、医師の診断を支援する人工知能(AI)システムです。

このシステムは、医師が画像検査(CTやMRIなど)の結果を入力すると、AIが病変部位を自動検出し、その病変が悪性か良性かを判定するとともに、診断の根拠となる過去の患者データや研究論文などを提示します。このように、AIが医師の診断を補助することで、より正確かつ迅速な診断が可能になると期待されています。

なお、このシステムは、日本医科大学が蓄積した大量の医療データをもとに開発されました。また、NECは、AI技術を活用した医療分野への取り組みを進めており、医師の診断支援に限らず、医療現場での業務改善や医療サービスの提供にも注力しています。

「NECと日本医科大学のAI診断支援システム」は、AI技術を活用することで、医師の診断精度を向上させるとともに、医療現場の業務効率化に貢献することを目的としています。また、今後は、より多くの医療データを取り込むことで、より高度な診断支援が可能になると期待されています。

アクセンチュアと東京大学のAI医療画像診断システム

「アクセンチュアと東京大学のAI医療画像診断システム」とは、アクセンチュアと東京大学が共同で開発した、人工知能(AI)を用いた医療画像診断システムです。

このシステムは、AIがX線画像を自動解析し、異常が検出された場合は、その異常の種類を自動的に識別します。AIが異常と判定した画像は、医師が確認して判断を下します。また、医師が診断を下した結果は、AIの学習データとしてシステムにフィードバックされるため、診断精度の向上が期待されます。

このシステムは、AIを活用することで、医師の診断精度を向上させるとともに、医師が診断に必要な時間を短縮することができます。また、AIが自動解析することで、医療現場での業務負担を軽減することができます。

「アクセンチュアと東京大学のAI医療画像診断システム」は、現在はX線画像に特化したシステムですが、今後はCTやMRIなど、さまざまな種類の医療画像に対応することを目指しています。また、AIが医師の診断を支援することで、医療現場での診断ミスや漏れを減らし、患者の早期発見や治療につなげることが期待されています。

ソニーと東京女子医科大学のVR手術シミュレーター

「ソニーと東京女子医科大学のVR手術シミュレーター」とは、ソニーが開発したバーチャルリアリティ(VR)技術を用いた手術シミュレーターです。このシステムは、手術を行う医師が、VR空間上で手術を行うことで、手術の練習や手術技術の向上を支援することができます。

このシステムは、医師が手術技術を向上させるために開発されました。手術には高度な技術が必要であり、手術の練習には多大な時間やコストがかかります。しかし、このシステムを使用することで、医師はリアルな手術体験をすることができ、手術技術の向上を迅速に図ることができます。

また、このシステムは、医学生や研修医の教育にも役立ちます。医学生や研修医は、このシステムを使用することで、手術のリアルな体験をすることができ、手術技術の習得を加速することができます。

「ソニーと東京女子医科大学のVR手術シミュレーター」は、今後、さらなる機能追加や医療現場での実証実験などが行われることが期待されています。

富士通と東京大学のIoTヘルスケアプラットフォーム

「富士通と東京大学のIoTヘルスケアプラットフォーム」とは、富士通が提供するIoT技術を用いたヘルスケアプラットフォームです。このプラットフォームは、東京大学が持つ医療・健康関連のデータや知見を活用し、健康維持や疾患予防、医療現場の効率化を支援することを目的としています。

このプラットフォームでは、患者の健康情報を収集するために、スマートフォンやウェアラブルデバイス、IoTセンサーを活用しています。これらのデバイスから収集されたデータは、クラウド上のデータベースに蓄積され、医療現場での分析や疾患予防に役立てられます。

また、このプラットフォームは、医療現場においても活用されています。例えば、患者が病院に入院した際には、入院中の体調や治療経過などが、IoTセンサーを通じて自動的に収集されます。これにより、医療スタッフは患者の状態をリアルタイムで把握し、的確な医療を行うことができます。

このプラットフォームは、健康情報の収集・分析や医療現場での活用を通じて、医療・健康領域の課題解決を目指しています。今後も、医療・健康領域におけるIoT技術の活用はますます進展していくことが期待されます。

日立と東京大学のビッグデータ解析システム

「日立と東京大学のビッグデータ解析システム」とは、日立製作所と東京大学が共同で開発した、医療分野におけるビッグデータ解析システムです。このシステムは、医療関連の様々なデータを収集し、分析することで、疾患の早期発見や予防、効率的な治療法の開発を支援することを目的としています。

このシステムでは、医療関連の様々なデータを取り込んで解析することができます。例えば、電子カルテ、医療画像、遺伝子情報、環境データ、社会経済データなどです。これらのデータを統合的に解析することで、疾患の発症リスクや治療法の効果などを予測することができます。

また、このシステムは、機械学習や人工知能の技術を活用しており、医療現場での臨床データの収集・解析において高い精度を発揮しています。例えば、腫瘍の分類や、画像診断の支援などに活用されています。

このシステムは、医療現場において、効率的かつ正確な医療を提供することが期待されています。また、医療・健康領域におけるビッグデータの活用は、今後ますます重要性を増していくことが予想されており、この分野での日立と東京大学の取り組みは、注目を集めています。

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