デジタルヘルス ビジネス全般

デジタル・ガバメント実行計画(令和2年12月25日 閣議決定)

目次

1 はじめに

1.1 本計画の趣旨

「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」
デジタル庁(仮称)(以下単に「デジタル庁」という。)の設置を見据えた「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月25日閣議決定。以下「デジタル改革基本方針」という。)において、デジタル社会の目指すビジョンが示された。

あわせて、社会全体のデジタル化を進めるために、まずは国・地方の「行政」が、自らが担う行政サービスにおいて、デジタル技術やデータを活用して、利用者目線に立って新たな価値を創出するデジタル・トランスフォーメーションを実現し、「あらゆる手続が役所に行かずにできる」、「必要な給付が迅速に行われる」といった手続面はもちろん、規制や補助金等においてもデータを駆使してニーズに即したプッシュ型のサービスを実現するなど、利用者目線の改革を進めていくことが必要であり、これにより、あらゆる世代、あらゆる産業を対象とする行政サービスを通じて、社会全体にデジタル化によるメリットを、誰一人取り残さない形で広くいきわたらせていくこと、また、行政が保有する様々なデータを、国民・企業が活用できるような形で連携できるデータ連携基盤を提供し、民間において様々なデジタル・ビジネスを創出するなど、社会全体のデジタル化のための基盤を構築していくことが明記された。

社会全体のデジタル化を進める上で、デジタル・ガバメント推進の取組は重要な役割を担う。

デジタル・ガバメント推進に係る近年の取組としては、2019年(令和元年)に改正後の情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成14年法律第151号。以下「デジタル手続法」という。)が施行され、行政のあらゆるサービスを最初から最後までデジタルで完結させるために不可欠なデジタル3原則(①デジタルファースト:個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する、②ワンスオンリー:一度提出した情報は、二度提出することを不要とする及び③コネクテッド・ワンストップ:民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する)を基本原則として明確化するとともに、国の行政手続のオンライン化実施が原則とされた。

また、横断的かつ業務改革(BPR)を意識したサービス視点での政府情報システムの整備・運用を実現するために、「政府情報システムの予算要求から執行の各段階における一元的なプロジェクト管理の強化について」(令和元年6月4日デジタル・ガバメント閣僚会議決定。以下「PJ管理強化方針」という。)が定められた。

さらに、デジタル化の便益を実感できるデジタル社会を早期に実現するため、「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」(令和元年6月4日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)に基づき、安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤であるマイナンバーカードの普及とその利便性の向上等を図るとともに、社会保障の公平性の実現、行政の利便性向上・運用効率化等に向け、マイナンバーの利活用の促進を図ることとされた。

改定前の本計画(令和元年12月20日閣議決定)ではこれらの取組も取り込みながら、急速に進歩するデジタル技術に対応するとともに、少子高齢化の進行や国際化の進展に代表されるような社会構造の大きな変化に対応し、行政を刷新するための土壌を整えてきた。その際には、これまでのデジタル化のように、紙や対面で行っていた手続を単にオンラインでできるようにするなど、従来のやり方をデジタルに置き換えるだけの、いわゆる「Digitization(デジタイゼーション)」ではなく、デジタルを前提とした次の時代の新たな社会基盤を構築するという「Digitalization(デジタライゼーション)」の観点の重要性も強調している。

今般の新型コロナウイルス感染症拡大への対応を通じて以下のような行政デジタル化の課題が指摘されたが、これらは、これまでの取組により解決を目指してきた課題が一気に表面化し、社会全体の問題として認識されたものと捉えるべきである。

  • 特別定額給付金について、マイナンバーカード及びマイナポータルを利用した申請を可能としたものの、マイナポータルから送信された申請受付データをデジタルデータのまま処理する体制が整っていなかったこと等により申請から給付まで一貫したデジタル完結ができず、迅速な給付等に支障が出たケースがあった。また、マイナンバーカードの普及促進も課題であった。
  • 雇用調整助成金について、内閣情報通信政策監(以下「政府CIO」という。)や厚生労働省PMOの下で行われる一元的プロジェクト管理による対応がなされることなく急遽システムを整備した結果、複数のシステム障害が発生し、運用停止を余儀なくされるなどガバナンスが徹底されていなかった。
  • 保健所・医療機関からの陽性者の報告が当初ファックスで行われていたことや、一部地域で集計がアナログで行われていたことなど、データをリアルタイムで共有し、活用することが十分にできなかった。また、民間事業者が、住民から得られるデータを活用して感染症対策に資するサービスを提供するに当たり、居住地域ごとに異なる個人情報保護ルールに対応する必要に迫られたケースがあった。
  • テレワークが重要となる一方、書面・押印・対面が法令や慣行により求められるため、出社を余儀なくされるケースがあり、これは民間だけでなく行政の会計、人事等の内部手続においても同様であった。また、各府省のLAN環境が縦割りで構築されているため、各府省間や民間企業、地方公共団体との間でのWeb会議サービスの接続が困難となる状況が発生した。

これらの課題は「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(令和2年7月17日閣議決定)の施策により対応が図られているが、これを具体化・加速化するため、2020年(令和2年)10月9日にデジタル・ガバメント閣僚会議を改組し、総理を議長とする体制に強化するとともに、その下に「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」、「データ戦略タスクフォース」及び「デジタル改革関連法案ワーキンググループ」を置き、それぞれ議論の取りまとめを行った。

また、書面・押印・対面の見直しに関しては、民から官への申請手続等については内閣府規制改革推進会議が、行政内部の会計・人事手続等については行政改革推進本部がそれぞれ主導して書面・押印・対面等の見直し方針を策定したところであり、これにより行政手続のオンライン化が更に推進される。
さらに、「デジタル改革関連法案ワーキンググループ」の議論を踏まえて策定されたデジタル改革基本方針に沿って、今後、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号。以下「IT基本法」という。)の全面的な見直しとともに、行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行するための突破口として、デジタル庁を設置するための関連法案を次期通常国会に提出する。

本計画は、こうした状況の大きな変化を反映させつつ、デジタル・ガバメント推進のための取組を加速するとともに、計画的かつ実効的に進めていくために改定するものである。

本計画に記載された施策の方向性自体はデジタル庁の設置後においても変わるものではなく、新たな司令塔の下でより強力に推進していくべきものである。ただし、本計画ではデジタル庁の設置以前の組織、制度等を前提とした記述も含まれているところであり、デジタル庁が発足した暁には、改めて本計画の見直しや、他の基本計画との関係の整理等を検討する。

なお、本計画はデジタル手続法第4条に基づく情報通信技術を利用して行われる手続等に係る国の行政機関等の情報システムの整備に関する計画として位置付けることとする。

1.2 計画期間等

2020年(令和2年)12月25日から2026年(令和8年)3月31日までを本計画の対象期間とする。ただし、個別施策について更に長い期間を設定することが適当な場合はこの限りではない。

本計画は、各施策の取組状況やデジタル庁の設置を踏まえ、その在り方を含めて見直しを検討するとともに、必要に応じて随時、改定等を行う。

なお、各施策の標題には、施策の関係府省名を明記する。◎が付されている各府省は、当該施策の主担当として、関係府省との調整等も含め、本計画の推進を担うこととする。

2 利用者中心の行政サービス改革

2.1 「サービス設計12箇条」に基づくサービスデザイン思考の導入・展開

デジタル・ガバメントの実現は、単に情報システムを整備する、手続をオンライン化する、手続に係る費用を削減する、オンライン利用率を上げるということを意味するものではない。行政サービスは、そもそも、国民や企業に価値を提供するもの、又は国民や企業が価値を創造する一助となるものでなければならない。こうした観点から、利用者中心の行政サービス改革を徹底し、利用者から見て一連のサービス全体が、「すぐ使えて」、「簡単」で、「便利」な行政サービスを実現する。

行政サービスの利便性向上については、これまでも累次の各種政府決定において記載されてきた。一方で、こうした取組は、各種手続のユーザビリティの向上やビジネス環境の改善など、利用者への具体的な価値の提供という点において、いまだ取組が不十分である。

2013年(平成25年)の政府CIOの設置以降、単なるデジタル化ではなく、業務改革(BPR)を前提とし、利用者にとっての価値や便益を創出することを念頭に置いた取組が進められてきた。この取組は一定の成果を挙げており、これまで成し得なかった改革が少しずつ進みつつある。さらに、これによって、「どうやれば成功するのか」ということについても、ノウハウが蓄積されつつある。

引き続き、デジタル・ガバメントの実現に向けた行政サービス改革を進めるに当たり、これまでの取組から得られたノウハウやサービスデザイン思考を導入し、利用者中心の行政サービス改革を推進する。その際、手続のフロント部分のデジタル化だけでなく、サービスを受ける必要が生じたときからサービスの提供後までのエンドツーエンドにわたる利便性の向上に向けた取組や、利用者の行動様式を踏まえたサービス提供の在り方に係る検討を実施し、一連のサービス全体における利用者の体験(UX:ユーザーエクスペリエンス)を最良とするサービスを目指しつつ、行政のあらゆるサービスが最初から最後までデジタルで完結されるように、行政サービスの100%デジタル化を実現する。

具体的には、利用者が「すぐ使えて」、「簡単」で、「便利」なサービスを追求し、本計画に示す「サービス設計12箇条」に沿い、一人ひとりの利用者の行動、一つ一つの利用者との接点を捉え、サービスの分析及び設計を行う。これによって、心理状態や行動等を含めた、サービスの利用者の体験全体が最良となるようなサービスを提供する。さらに、提供されているサービスの内容、品質が継続的に改善され、向上するような状態を実現する。

(1)「サービス設計12箇条」

利用者中心の行政サービスを提供し、プロジェクトを成功に導くために必要となるノウハウを、「サービス設計12箇条」として以下のとおり示す。それぞれのルールの内容は、「デジタル・ガバメント推進方針」(平成29年5月30日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)に盛り込まれたサービスデザイン思考を具体化したものであり、これまでのデジタル化・業務改革(BPR)の取組から得られたノウハウをベースとしつつ、サービス改革に関する国際的な動向を取り入れたものである。

各府省は、以下の12箇条を踏まえ、行政サービス改革を進めるものとする。

なお、サービスの設計に当たっては、費用の適正化とサービスの向上を両立させるため、費用対効果の検証を十分に行う。

<サービス設計12箇条>
第1条 利用者のニーズから出発する
第2条 事実を詳細に把握する
第3条 エンドツーエンドで考える
第4条 全ての関係者に気を配る
第5条 サービスはシンプルにする
第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める
第7条 利用者の日常体験に溶け込む
第8条 自分で作りすぎない
第9条 オープンにサービスを作る
第10条 何度も繰り返す
第11条 一遍にやらず、一貫してやる
第12条 情報システムではなくサービスを作る

第1条 利用者のニーズから出発する

提供者の視点ではなく、利用者の視点に立って、何が必要なのかを考える。様々な利用者がいる場合には、それぞれの利用者像を想定し、様々な立場から検討する。サービス提供側の職員も重要な利用者として考える。ニーズを把握するだけでなく、分析によって利用者が抱える課題・問題を浮き彫りにし、サービスの向上につなげる。

第2条 事実を詳細に把握する

実態の十分な分析を伴わない思い込みや仮説に基づいてサービスを設計するのではなく、現場では何が起きているのか、事実に基づいて細かな粒度で一つ一つ徹底的に実態を把握し、課題の可視化と因果関係の整理を行った上でサービスの検討に反映する。データに基づく定量的な分析も重要である。

第3条 エンドツーエンドで考える

利用者のニーズの分析に当たっては、個々のサービスや手続のみを切り取って検討するのではなく、サービスを受ける必要が生じたときからサービスの提供後までエンドツーエンドの、他の行政機関や民間企業が担うサービスの利用まで含めた利用者の行動全体を一連の流れとして考える。

第4条 全ての関係者に気を配る

サービスは様々な関係者によって成り立っている。利用者だけでなく、全ての関係者についてどのような影響が発生するかを分析し、Win-Winを目指す。また、デジタル機器が使えない人も、デジタル技術を活用することによって便益を享受できるような仕組みを考える。

第5条 サービスはシンプルにする

利用者が容易に理解でき、かつ、容易に利用できるようにシンプルに設計する。初めて利用する人やデジタル技術に詳しくない人でも、複雑なマニュアルに頼らずとも、自力でサービスを利用して完結できる状態を目指す。また、行政が提供する情報や、利用者に提出や入力を求める情報は、真に必要なものに限定する。

第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める

サービスには一貫してデジタル技術を用い、利用者が受ける便益を向上させる。技術の進展に対応するため、IoT(Internet of Things)やAI(Artificial Intelligence)などの新技術の導入についても積極的に検討する。これまでデジタル以外の手段で提供してきたものであっても、業務の見直しによるデジタルへの移行の可能性を検討し、サービスの改善を図る。また、情報セキュリティ対策とプライバシーの確保はサービスの価値を向上させるための手段であることを認識した上で、デジタル技術の活用によってサービスをセキュアに構築する。

第7条 利用者の日常体験に溶け込む

サービスの利用費用を低減し、より多くの場面で利用者にサービスを届けるために、既存の民間サービスに融合された形で行政サービスの提供を行うなど、利用者が日常的に多くの接点を持つサービスやプラットフォームとともにサービスが提供されるような設計を心掛ける。

第8条 自分で作りすぎない

サービスを一から自分で作るのではなく、既存の情報システムの再利用やそこで得られたノウハウの活用、クラウドサービス等の民間サービスの利用を検討する。また、サービスによって実現したい状態は、既存の民間サービスで達成できないか等、行政自らがサービスを作る必要性についても検討する。過剰な機能や独自技術の活用を避け、API連携等によってほかで利用されることを考慮し、共有できるものとするよう心掛ける。

第9条 オープンにサービスを作る

サービスの質を向上させるために、サービス設計時には利用者や関係者を検討に巻き込み、意見を取り入れる。検討経緯や決定理由、サービス開始後の提供状況や品質等の状況について、可能な限り公開する。

第10条 何度も繰り返す

試行的にサービスの提供や業務を実施し、利用者や関係者からの意見を踏まえてサービスの見直しを行うなど、何度も確認と改善のプロセスを繰り返しながら品質を向上させる。サービス開始後も、継続的に利用者や関係者からの意見を収集し、常に改善を図る。

第11条 一遍にやらず、一貫してやる

困難なプロジェクトであればあるほど、全てを一度に実施しようとしてはならない。まずビジョンを明確にした上で、優先順位や実現可能性を考えて段階的に実施する。成功や失敗、それによる軌道修正を積み重ねながら一貫性をもって取り組む。

第12条 情報システムではなくサービスを作る

サービスによって利用者が得る便益を第一に考え、実現手段である情報システム化に固執しない。全てを情報システムで実現するのではなく、必要に応じて人手によるサービス等を組み合わせることによって、最良のサービスを利用者に提供することが目的である。

(2)「サービス設計12箇条」の導入と普及(◎内閣官房、総務省、全府省)

これまでの取組としては、内閣官房を中心に、「サービス設計12箇条」に基づくサービスデザイン思考の要素(意義、手法、事例等)について取りまとめた「サービスデザイン実践ガイドブック」(平成30年3月19日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)を、2019年(平成31年)2月に、サービス・業務改革(BPR)並びにこれらに伴う政府情報システムの整備及び管理に関して、その手続・手順に関する基本的な方針及び事項並びに政府内の各組織の役割等を定める体系的な政府の共通ルールである「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(平成31年2月25日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議(以下「CIO連絡会議」という。)決定、令和2年3月30日に改定版のCIO連絡会議決定。以下「標準ガイドライン」という。)に統合した。

また、内閣官房においては、サービスデザインのベースとなる基本的理解と方法論を共有することを目的として、各府省のCIO補佐官・PMO等を対象に研修を行っている。
引き続き、内閣官房及び総務省は、各府省のPMO、PJMOと連携しながら「サービス設計12箇条」に基づく行政サービス改革を行う。具体的には、これまでの取組で得られたノウハウやサービス改革事例の蓄積について、今後、標準ガイドラインに関連する指針類等に係る文書体系(以下「標準ガイドライン群」という。)や総務省等が提供する研修などの教育プログラムへ反映するとともに、PJ管理強化方針に基づく取組において活用することで、各府省の取組を後押しする。

2.2 業務改革(BPR)の徹底(◎内閣官房、◎総務省、全府省)

行政手続の存在を前提とし、そのデジタル化自体が目的化すると、本来目指している「利用者の利便性向上」が二の次とされてしまうおそれがある。我が国においても、過去に、国の全行政手続のオンライン化が目的化したことで、そもそも年間利用件数が0件の手続のオンライン化や費用対効果の見合わない情報システムの整備を行い、結局、利用者の利便性向上や行政の効率化という成果が十分得られなかった。利用者中心の行政サービスを実現する上で、行政手続及びそのオンライン化はあくまで手段と認識することが重要である。

こうした観点から、デジタル化の効果を最大限に発揮するためにも、デジタル化の目的である「利用者中心の行政サービス」等に立ち返った業務改革(BPR)及び制度そのものの見直しに取り組む。

具体的には、各府省は、利用者から見たエンドツーエンドで事実を詳細に把握した上で、行政サービスの利用者と行政機関間のフロント部分だけでなく、行政機関内のバックオフィスも含めたプロセスの再設計を行い、各業務において、利用者がサービスを受ける際の最適な手法について検討を行う。その際、どのようなツールが使えるかという発想ではなく、まず、「サービス設計12箇条」に基づき、利用者のニーズ、利用状況及び現場の業務を詳細に把握・分析した上で、あるべきプロセスを制度・体制・手法を含めて一から検討する。利便性の高い行政サービス及び業務の効率化を実現する上で最も妨げになるのが、利用者視点の欠如、現状を改変不能なものと考える姿勢、慣習への無意識な追従などの「意識の壁」である。業務改革(BPR)の徹底の過程で一から制度等を見直す中で、これを取り払っていくことが最も重要である。

また、単純に思える問題事象の裏には日常では意識しない様々な原因・問題が隠れており、表面的な現象に目を奪われ、その部分だけを修復しようとすると、問題の根が残ったままで再発するおそれがある。事実を一つ一つ丁寧に把握して問題の真因をつかむことで、本当に必要な対策を講ずることができるのであり、既存のルール・仕事のやり方に囚われずに、解決策を組み立て、プロセスを再設計することが必要である。そのため、政府CIOレビューを実施してきたプロジェクトが取り組んでいるように、サービス提供者の視点だけではなく、利用者の視点に立って、利用者のニーズ、利用状況及び現場の業務について、個人又は法人等の利用者ごとの違いや業務を行っている現場の規模等に応じた「ばらつき」まで詳細に把握・分析した上で、プロジェクトの関係者において的確に行政サービス・業務の状況を共有するため、フロー図等を作成することにより、行政サービス全体のプロセスを可視化することが必要である。

また、「経済財政運営と改革の基本方針2019」(令和元年6月21日閣議決定)において、内外の諸課題に即応できる質の高い行政サービスの確立に資するため、必要な推進体制を整備し、現場業務の実態把握とそれを踏まえた既存業務の抜本見直しを着実に実施するとともに、幹部・管理職員の職責としてそれを明確にし、その成果を人事評価に適切に反映する等とされたことを踏まえ、基本的な考え方を示した「業務見直しの進め方」を参考に、取り組んでいる。

こうした状況を踏まえ、各府省は、業務改革(BPR)の検討のための負担増を敬遠したり、業務改革(BPR)を後回しにしたりするのではなく、国民、企業等にとってより良い行政サービスを実現するため、必要な体制を整備した上で、計画的に取り組む。

内閣官房及び総務省は今後、書面・押印・対面の見直しや働き方改革の推進といった業務改革(BPR)に係る他の取組と相互に成果を活用しながら、ノウハウ、知見の提供や優良事例の分析、展開によって、業務改革(BPR)の検討を行う各府省への協力を行う。

2.3 サービスデザインの実践及び民間サービスとの連携による、利用者中心サービスの更なる推進に向けた環境の整備(◎内閣官房)

今般の新型コロナウイルス感染症対策においては、病院や避難場所の充足状況、必要物資の供給状況等の情報を迅速かつ分かりやすく国民に伝えることが強く求められた。その際、民間が提供するサービスを活用することも重要であるが、サービスが乱立することによる混乱や、情報の取扱い等に問題が生じる懸念もある。このため、双方向のインターフェースの対話型サービスなど民間サービスの利活用や行政システムとの連携に関して、その検討プロセスから運用も含めた留意点等について、新型コロナウイルス感染症対策として行われた事例等を分析し、2020年度(令和2年度)中に取りまとめる。

また、非常時においても適切に行政サービスを提供できる環境を実現するためには、サービスデザイン思考に基づく利用者中心のサービスへと転換を図らねばならない。2020年度(令和2年度)に設置したデジタル・ガバメント技術検討会議デザインタスクフォースにおいて、UI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の在り方や民間サービスとの連携の在り方等の調査・検討を行う。

さらに、行政機関におけるサービスデザインの優良事例について、これまでのサービスデザインに関する体系的な知識に加え、具体的な利用事例を収集し、2020年度(令和2年度)中にディスカッションペーパー として取りまとめるとともに、標準ガイドライン群における関連項目に反映させる。

3 国・地方デジタル化指針

(1)マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善

今般の新型コロナウイルス感染症対策の経験を踏まえ、緊急時の迅速・確実な給付の実現など、マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善を図るため、デジタル・ガバメント閣僚会議の下に、「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」を設置し、33の課題の整理をするとともに、工程表の策定に向けた検討を実施した。

2020年(令和2年)12月に同ワーキンググループにおいて取りまとめた報告(工程表を含む。)は別添1のとおりである。この報告を「国・地方デジタル化指針」とし、今後、各府省はこの工程表に基づき、マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けた取組を進める。
なお、マイナンバーカードと各種カード、手帳等との一体化等については、別添2の工程表に沿って引き続き推進する。

4 デジタル・ガバメントの実現のための基盤の整備

政府情報システムは、一義的には、各府省の各業務において用いられるものであるから、その整備・運用に当たって、各府省の各業務担当者の意向が反映されるべきことは当然である。しかしながら、政府情報システムの整備・運用を各業務担当者の裁量に全て委ねたのでは、随所で重複投資が発生するだけでなく、政府情報システム間の不整合に起因する様々な非効率が発生することになる。そこで、政府では、政府情報システムの統一的管理に向けて、政府共通プラットフォームの整備や府省が共通的に利用する情報システムの推進に取り組んできた。

引き続き、政府全体で共通的に利用する情報システム、基盤、機能等(以下「デジタルインフラ」という。)を内閣官房が主導して整備することで、横断的かつ業務改革(BPR)を意識したサービス視点での政府情報システムの整備・運用を、効果的かつ効率的に実現する。

また、データの標準化、情報システム間の互換性、円滑な情報連携、高度な情報セキュリティ対策の確保、個人情報の保護等についても、政府として統一性を確保しつつ効率的に実現する。

なお、ここでは、前記「3 国・地方デジタル化指針」に記載のデジタル基盤の構築に係る事項以外のものを中心に記載する。

4.1 デジタル・ガバメントの実現のためのグランドデザイン(◎内閣官房、◎総務省、全府省)

多様な主体がデジタル技術を介して協働するとともに、官民を問わず、あらゆるデータやサービスが有機的に連携し、新たなイノベーションを創発する社会を実現するために、将来的な行政サービスの在り方を見据えつつ、それを実現するための仕組みを考えた上で、情報システムを実装することが重要である。そのためには、中長期的に実現すべき行政サービス像、それを実現するために必要な標準的な業務及び情報システム、統一的な政府情報システムの将来的な在り方、既存業務及び情報システムの移行、データの標準化、情報システム間の互換性、円滑な情報連携、高度な情報セキュリティ対策等についての方針が明確になっていることが重要である。

内閣官房及び総務省は、政府CIO補佐官を中心としたワーキングチームにおいて検討を行い、2020年(令和2年)3月に「デジタル・ガバメント実現のためのグランドデザイン」(以下「グランドデザイン」という。)をデジタル・ガバメント技術検討会議にて取りまとめた。

この中で、デザインシステム、ベース・レジストリ等今までにないデジタル・ガバメントの考え方が具体化してきている。2030年(令和12年)も見据えて今後も、本グランドデザインを参考にしつつ、デジタル・ガバメントの取組を推進する。

(参考)デジタル・ガバメント実現のためのグランドデザイン(概要)

(出所:令和2年3月31日CIO連絡会議資料)

4.2 デジタルインフラの整備と利用、情報システムの共用の推進(◎内閣官房、◎総務省、全府省)

各府省が共通的に利用する情報システムについては、2003年(平成15年)の「電子政府構築計画」(平成15年7月17日CIO連絡会議決定)以来、随時整備が進められてきたところであるが、PJ管理強化方針において、デジタルインフラについては、内閣官房の下、統一的な方針に基づき、より一層、適正かつ効率的に整備・運用することとされた。

今後、内閣官房及び総務省は、政府全体として共用化・標準化することによる投資効率の向上といった政府横断的な観点から、各情報システム等の特性を踏まえつつ、共用化する業務、機能、採用する技術等を整理、選定し、デジタルインフラの範囲を見直すとともに、具体的な実装を進める。また、各府省はデジタルインフラ等の徹底した利用を推進する。

こうした取組により、各府省の業務の標準化や情報システムの共用化、標準化を進め、行政サービスの迅速かつ簡便な提供を実現するとともに、効率化により生み出された資源を活用して行政サービスの質の向上を目指す。

なお、デジタル庁の設置も見据え、各府省の情報システムは、①デジタル庁システム、②デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システム及び③各府省システム(①及び②以外のシステム)の区分に分類し直し、各府省が共通で利用する等のシステムは①としてデジタル庁が自ら整備及び運用を行うこととしている。これにより、本取組を加速化していく。

4.3 マイナンバーカードの普及(◎内閣官房、◎総務省、◎内閣府、関係省庁)

UI(ユーザーインターフェース)部分のデジタル化を進める上で重要なのは、住民の本人確認をオンラインで行うことである。市町村長による確かな本人確認を経て発行される最高位の公的な本人確認ツールであるマイナンバーカードの普及拡大が社会全体のデジタル化のカギを握っていることから、国は地方公共団体と協力して、マイナンバーカードの普及に全力を挙げて取り組む。

4.4 行政機関におけるクラウドサービス利用の徹底

(1)クラウド・バイ・デフォルト原則を踏まえた政府情報システムの整備(◎内閣官房、◎総務省、全府省)

近年、急速に進化し発展したクラウドサービスは、従来のオンプレミス の情報システムに比べ、リソースの迅速な配備と柔軟な増減が可能で、整備・変更に係る期間を短縮でき、自動化された運用による高度な信頼性や複数地域へのリソース配置による可用性の確保、サービスが提供する管理機能等を活用することによる運用負荷の低減が期待される等、正しい選択を行えば、費用を削減しつつ高品質な情報システムを整備できる。また、クラウドサービスは単にインフラ(サーバ機能)を提供するものから、プラットフォーム(開発・稼働環境)やアプリケーションそのものを提供するものに変遷しており、クラウドサービス利用の価値は、単なるインフラ環境の利用から、マイクロサービスやDevOps に代表されるアプリケーション開発効率化と環境構築・運用・保守の効率化・自動化に変化している。政府情報システムにおいても、クラウドサービスを利用することで様々な課題が解決されることが期待される。しかしながら、これまで政府では、情報セキュリティ対策や移行リスクへの漠然とした不安、不十分な事実認識等から、クラウドサービスの利用に前向きでなかった側面を有してきたことは否定できない。一方、社会全体では、多方面にわたり、クラウドサービスの利用が増加してきている。そこで、政府情報システムを整備する際には、クラウドサービスの利用を第一候補として、その検討を行うものとするクラウド・バイ・デフォルト原則を具体化し、各府省がクラウドサービスを採用し、効果的に利用するために、2018年(平成30年)6月に、政府情報システムにおけるクラウド・バイ・デフォルトの基本的な考え方、各種クラウド(パブリッククラウド 、プライベートクラウド 等)の特徴、クラウドサービスの利用における留意点等を整理し、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」(平成30年6月7日CIO連絡会議決定。以下「クラウドサービス利用方針」という。)を策定した。

各府省は、引き続き、クラウドサービス利用方針に基づき、政府情報システムを整備する際には、対象となる行政サービス・業務、取り扱う情報等を明確化した上で、メリット、整備の規模、費用等を基に、各種クラウドサービスの利用を原則として検討する。

これを支援するため、政府情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境(「(仮称)Gov-Cloud」)を整備し、早期に運用を開始する。また、各府省がクラウドサービスの利用の検討を行うに当たり、技術的な助言等を行う。

KPI:政府情報システムにおけるクラウドサービスの活用数

(2)クラウドサービスの安全性評価(◎内閣官房、◎総務省、◎経済産業省、全府省)

クラウドサービスの導入に当たっては、情報セキュリティ対策が十分に行われているサービスを調達する必要があることから、「政府情報システムにおけるクラウドサービスのセキュリティ評価制度の基本的枠組み」(令和2年1月30日サイバーセキュリティ戦略本部決定)を決定し、これに基づき2020年(令和2年)6月に「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」(以下「本制度」という。)を立ち上げた。

内閣官房、総務省及び経済産業省は、2020年度(令和2年度)中に統一的なセキュリティ要求基準に基づき安全性が評価されたクラウドサービスリストの公表を行うとともに、全政府機関における本制度の利用を推進していく。

また、本制度の対象は各政府機関等であるが、公開される情報等について、民間においても参照することで、クラウドサービスの適切な活用が推進されることが期待される。

4.5 情報セキュリティ対策・個人情報保護等(◎全府省、◎内閣官房)

各府省は、行政のデジタル化を推進するに当たっては、以下の観点等から業務及び情報システムの安全性及び信頼性を確保するための措置を講ずる。

ア. 情報セキュリティ対策

情報の改ざん、漏えい、不正使用等が行われないよう、サイバーセキュリティ戦略本部等が定める「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」(以下「統一基準群」という。)に基づき、技術革新等に対応した情報セキュリティ対策を講ずる。
また、内閣官房は、デジタル改革基本方針で示されたサイバーセキュリティの実現の方向性を踏まえ、所要の検討を進める。

イ. 個人情報の保護等

行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)などの個人情報保護法制を遵守し、個人情報の保護その他の個人の権利利益の保護のための措置を講ずる 。

ウ. 業務継続性の確保

災害時に備えた非常用電源の確保、データのバックアップやバックアップセンターの整備など、非常時においても業務を継続するために必要な方策を適切に講ずる。

4.6 情報システムに関する技術トレンドへの対応(◎内閣官房)

情報システムは、汎用技術の組合せにより整備されており、日々変化する技術トレンドに対応していくことが重要である。現状、どのような技術を採用するかは情報システムごとに判断されているが、技術トレンドに対応した製品・技術の選定や情報セキュリティ対策の最新化に対して、政府全体としてのガバナンスが効きにくくなっている。今後、民間の人材・知恵やオープンな技術を活用しつつ徹底した見直しを行うことで、事業者の提案への過度の依存による、いわゆるベンダーロックインから脱却するとともに、今後主流になると考えられる技術の導入を進めていく。

内閣官房においては、「政府情報システムにおけるサポート終了等技術への対応に関する技術レポート」(平成31年3月28日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)、「政府情報システムにおいてサービス提供の対象とすべき端末環境及びWebブラウザの選定に関する技術レポート」(平成31年3月28日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)及び「Javaのサポートポリシー変更等に関する技術レポート」(令和2年6月24日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)を策定するなど、政府情報システムの整備において、技術トレンドを認識し、それを踏まえて情報システムを整備することができるように取り組んできた。

引き続き、内閣官房は、情報システムの技術トレンドへの対応方針、脱却すべき技術、今後採用すべき技術及びこれらに関する移行方針について、継続的な検討と見直しを実施する。また、技術の継続的バージョンアップに対応するための情報システムの維持管理手法の検討も行う。

KPI:技術トレンドへの対応方針、脱却すべき技術、今後採用すべき技術及びこれらに関する移行方針の整理状況

4.7 新たなデータ戦略 の推進(◎内閣官房、全府省)

社会のデジタル化に伴いデータは智恵・価値・競争力の源泉となり、国力、すなわち我が国の豊かな社会環境及び高い価値創造力を強化することで、国民のより豊かな生活と活動しやすい事業環境が実現される。さらには、地球規模の課題から安全保障に至るまで「データの存在/活用」が決定的に重要となっている。

大量の質の高い信頼できるデータによる相互連携は、現実世界をサイバー空間で再現(デジタルツイン)し、新たな価値を創出することを可能とするが、現状の我が国では、デジタル社会に不可欠なデータが十分に整備されておらず、新たな価値を創出するようなデータ連携の仕組みも整備されているとは言い難い。

このような背景のもと、21世紀のデジタル国家にふさわしいデジタル基盤構築に向け、行政に限らず官民を含めて我が国全体を見渡した包括的なデータ戦略を策定することとする。

その際、行政機関(政府・地方公共団体等)は、「最大のデータホルダー」であり、そのシステムや行動が我が国の経済社会産業全体に大きな影響を及ぼす。行政機関は、サイバー空間における「プラットフォーム中のプラットフォーム」としての役割を求められていることを十分自覚し、行政機関のデジタル化に留まるのではなく我が国全体の高度化に寄与すべきである。

データ戦略においては、「ビジョン」=データ戦略の目指すもの、そのために押さえるべき「理念」、「原則」、「アーキテクチャ」=皆が共有すべき全体構造を整理する必要がある。

データ戦略のビジョンは、デジタルツインにより新たな価値を創出できる社会であり、そのために、信頼と公益性を通じてデータを安心して効率的に使える仕組みを構築するという理念と、データ利活用の原則を整理した。そのうえで、データ戦略のアーキテクチャとして、データ整備やその連携だけでなく、関連するデータ連携ルールやトラストなどのルール、利活用環境の整備、連携基盤(ツール)、全体を支えるデジタルインフラなどを整理した。

まずは、喫緊の課題としてデータ利活用の土台となる「ベース・レジストリなどの基盤となるデータの整備」、「データを連携するプラットフォームの構築」(データ連携に必要なツール及びデータの連携ルールを含む)及び「信頼性(トラスト)を担保するための枠組みの構築」に取組むこととする。

4.8 行政保有データのオープン化、行政データ連携の推進

4.8.1 ベース・レジストリ整備の推進(◎内閣官房、全府省)

行政手続のワンスオンリーを実現するなど社会全体の効率性の向上を図るとともに、スマートシティなどの新しいサービスの創出を図るためには、マイナンバーや地理空間情報など社会全体の基盤となるデータを整備・活用することが必要である。それにより、情報の更新漏れの防止等によるデータの信頼性が高くなり、社会全体での安心感にもつながっていく。

そこで、まずは喫緊の課題として整備すべきベース・レジストリを、「公的機関等で登録・公開され、様々な場面で参照される、人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データであり、正確性や最新性が確保された社会の基盤となるデータベース」と定義し、その整備を推進することとする。

ベース・レジストリが対象とする分野は広範であるが、そのなかでも、①多くの手続で利用されること、②災害などの緊急時に必要であること、③社会的・経済的な効果が大きいことの3点を軸として優先順位を設定し、段階的な取組を進める。特に行政手続においては、利用者に同じ情報の提供を再度求めないワンスオンリーサービスに必要なデータを特定し、優先的に検討を進める。

具体的にはベース・レジストリの構築を図るための整備方針である「ベース・レジストリ・ロードマップ」を策定する。そのロードマップに基づき、データホルダーである関係省庁において、課題整理と解決の方向性の検討を2021年(令和3年)6月末までに行う。

4.8.2 その他基盤データの整備の推進(◎内閣官房、全府省)

ベース・レジストリのように汎用的に活用されないが特定分野等で社会の基盤として使われるデータや、民間分野で整備されるデータに関して、新たなデータ整備等の検討をしていく必要がある。

医療、教育などの準公共分野については、デジタル庁の策定する情報システムの整備方針に則って、関係省庁や関係業界と連携して当該分野に必要な基盤データの整備を図る。民間分野においても、デジタル庁が業種を越えた情報システム間の相互の連携が重要な分野(相互連携分野)として指定する分野についてはIPA(独立行政法人情報処理推進機構)のほか関連民間機関と連携し、標準に係る整備方針を策定する。

4.8.3 オープンデータの推進(◎内閣官房、全府省)

データ利活用の役割が急速に増大し、それに伴い経済社会産業構造が変化するなかで、これまでオープンにしてこなかったベース・レジストリやその他の基盤データ等のデータの経済社会活動に与える意義が変化し、社会におけるデータに関する考え方も変化してきている。

そのため、オープンデータを俯瞰したデータマネジメントやデータライフサイクルも同様に大きく変えていく必要がある。

行政機関の保有するデータについては、「オープンデータ基本指針」(平成29年5月30日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定。2020年度(令和2年度)改正予定)が定められており、オープンデータ・バイ・デザインの推進が謳われるとともに、行政保有データについては原則公開とされ、利活用推進の観点からは機械判読性の要件がオープンデータの定義として存在する。

しかしながら、①「原則公開」としか謳っておらず、特にニーズの高いデータであっても具体的な公開内容、方策に係る説明が欠如、②「機械判読性」についても「原則」にとどまり、5つ星 を参考にするとの努力義務となっており、オープンデータが十分に進んでいるとは言えない。

上記の環境変化を踏まえ、オープンデータの推進方針を改めて見直し、まずは機械判読性を強化するため、①公開を推奨するデータ(希少性、有用性、信頼性、リアルタイム性の高いもの)の具体化、②機械判読性原則の強化などの質の見直し(例:構造化データはCSVフォーマット以上で原則公開、非構造化データはメタデータの公開)を内容とするオープンデータ基本指針を2020年度内に改定する。

さらに、今後デジタル庁が策定する国・地方の情報システム、準公共分野の情報システムの整備方針にオープンデータ・バイ・デザインや機械判読性の強化など基本方針の考え方を反映させるとともに、デジタル庁の関わる情報システム整備の際に、これらが反映されるよう実効性の確保を検討する。

4.8.4 包括的なデータマネジメントの推進(◎内閣官房、全府省)

データの生成・設計・開発の工程においては、政府システムの開発の手順を示した標準である政府標準ガイドライン群や、内閣官房が別途策定 するデータ標準やデータ品質管理フレームワークを活用する。

今後デジタル庁が策定する国・地方の情報システム、準公共分野の情報システムの整備方針、デジタル庁が相互連携分野として指定する分野において各府省が策定する相互連携分野の標準に係る整備方針にこれらを反映させるとともに、デジタル庁の関わる情報システム整備の際に、これらへの遵守を要件とするなど実効性の確保を検討する。これらにより、ライフサイクルを通じた再利用性の高いデータの整備を行っていく。

ベース・レジストリについては、個人情報など秘匿性の高いデータに対し、誰がいつアクセスしたなどのアクセス情報を本人が確認できるようにするなど、データ運用における利用者の信頼性の確保を図るとともに、利用者が安心できる環境整備を行っていく。

4.8.5 プラットフォームとしての行政の構築(◎内閣官房、全府省)

特にデジタル社会においては行政機関が最大のデータ保有者であり行政自身が国全体の最大のプラットフォーム(Platform of Platforms/System of Systems)となることが産業競争力や社会全体の生産性向上に直結する。
このため、国全体の最大のプラットフォームたる行政機関が、そのアーキテクチャを策定し、マイナンバー制度とリンクしたID体系の整備、ベース・レジストリをはじめとした基盤データの整備、カタログの整備等を行い、民間に対してもオープン化・標準化されたAPIで連動できるオープンなシステムを構築する。

4.8.6 行政保有データの100%オープン化

データ戦略におけるオープンデータ推進を踏まえ、行政保有データの原則オープンデータ化を徹底した上で、データを活用したイノベーションや新ビジネスの創出を後押しするために、「オープンデータ官民ラウンドテーブル」の開催や行政保有データの棚卸結果の公開等を通じ、各府省が能動的に利用者のニーズを把握し、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないように留意しつつ、ニーズに即したオープンデータの取組を進める。また、行政保有データが、その収集から管理、提供に至るまで可能な限り自動的に品質が維持され、機械判読に適したデータ形式やレイアウトで、API等を通じてオープンデータとして提供されるように、業務・情報システムの整備・運用・評価を行う。

こうした取組により、行政保有データが民間事業者等によって積極的に活用されるとともに、行政内部でも政策の企画・立案や業務効率化等に活用される状態を目指す。

(1)オープンデータに係るニーズの把握と迅速な公開(◎全府省)

各府省は、更新した行政保有データの棚卸リストを自ら公開し、利用者からオープンデータの公開要望を募ったり、相談窓口や民間事業者等と直接対話を行う場を設けたりするなど、利用者のニーズを把握するための取組を継続的に行う。また、その結果得られた公開要望のうち、オープンデータとしての公開が可能と判断したものは、データ戦略におけるオープンデータ推進を踏まえ、速やかに公開するとともに、データカタログサイトへ登録する。
加えて、オープンデータとしての公開が不可と判断したものについても、条件付きで公開できるものは公開するとともに、公開できない場合には、その理由を各府省のWebサイト等において公開する。

さらに、公開に支障のあるデータ項目を除いて公開することや、限定的な関係者間で共有する「限定公開」といった手法の活用も検討する。

KPI:ニーズに即したオープンデータの取組方針とスケジュールの各府省中長期計画への反映状況
KPI:各府省において利用者の要望等に応じて新たに公開又は公開内容の見直しを行ったデータ件数

(2)オープンデータ・バイ・デザインの計画的な推進(◎内閣官房、総務省、経済産業省、全府省)

内閣官房は、2019年(平成31年)2月に実施した標準ガイドライン群の改定に際して、オープンデータ・バイ・デザインに係る具体的取組内容を盛り込んだ。

今後、オープンデータ・バイ・デザインに基づいた行政サービス・業務設計及び運用に切り替わるまでの間であっても、データ戦略におけるオープンデータ推進に基づくオープンデータ基本指針に則り、行政保有データを利用しやすい形でオープンデータとして提供するための取組を継続的に実施する。

各府省は、オープンデータ・バイ・デザインの取組方針とスケジュールが盛り込まれた各府省中長期計画を着実に実施し、情報システムの整備時期を見据え、オープンデータ・バイ・デザインに基づいた行政サービス・業務設計及び運用に順次切り替えていく。

内閣官房は、今後、オープンデータとして活用されることを前提とした情報システムの普及・推進に向けた検討を進める。

KPI:オープンデータ・バイ・デザイン取組対象の情報システム数
KPI:オープンデータ・バイ・デザイン取組対象の情報システムのうち、オープンデータの公開を開始した数

4.8.7 行政データ連携の推進

多様なサービスやデータを円滑に連携させ、高度かつ便利なサービスを実現するためには、連携データやAPIの仕様を標準化するとともに、それぞれの情報システム等で保持しているデータを常に適切な品質に維持し、相互運用性を高めることが必要である。

行政による個人や企業等の社会経済活動に必須となるサービスの提供や、統計などの社会の基礎データの収集及び提供は、社会における情報の流れの基盤として機能しているため、行政分野における標準化の取組は一層重要なものとなる。行政分野におけるサービスやデータの標準化を推進することは、行政のみならず、民間事業者等における業務の効率化やデータ活用を促進すると考えられる。また、標準化された行政データを行政内部で活用するとともに積極的にオープンデータとして公開することは、官民を通じた幅広いデータ連携やサービスの向上にも資する。

こうした背景を踏まえ、以下の取組を進めることによって、行政サービス及び行政データ連携の標準の整備及び活用を推進する。推進に当たっては、民間との連携を行うとともに、諸外国の標準等とも整合性を確保し、国際的なデータ連携も可能とする。

なお、行政サービス及び行政データの標準への、各情報システムにおける整備、活用等の対応を進めるに当たっては、設計段階からデータ連携やオープンデータ等による活用を想定することが重要である。既に整備されている情報システムや機能について個別に標準化への対応を行う場合、改修費用の負担や、そもそものデータ収集方法の問題等によって、対応可能な範囲に限界が存在することが少なくない。情報システムの整備の機会を捉え、設計段階から適切なアーキテクチャ及びデータ構造やデータ収集・管理方法となるよう、対応を行っていく必要がある。

(1)行政データ連携標準の普及(◎内閣官房、全府省)

情報システム活用の効果を十分に発揮するためには、情報システムで取り扱うデータの構造化を徹底し、情報システム間で円滑に連携できるようにする必要がある。そのためには、データを提供する側と受け取る側の双方で、共通の規約や仕様に基づく相互運用性を確保することが重要である。データの相互運用性を確保するために、データの記述形式、共通に解釈できる語彙、使用する文字の統一といった標準化に政府全体で取り組む。
官民を通じた分野横断のデータ連携を行うためには、日付、公共施設・観光施設等の住所等の基本的なデータ形式の標準化が必要となるが、行政機関におけるデータ実装レベルでは、こうした基本的なデータやコードの記法に揺らぎが存在している。これまでは人が目視で確認する等によりその揺らぎを吸収してきたが、データ連携を効率的に行うためには、揺らぎを抑える仕組みが必要である。このため、内閣官房は、日本産業規格(JIS)や関連する国際標準等とも整合性をとりつつ、2019年(平成31年)3月に「行政基本情報データ連携モデル」(平成31年3月28日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)を取りまとめ、以下のデータについて標準を整備した。

  • 日付時刻
  • 住所
  • 電話番号
  • 郵便番号
  • 地理座標
  • POI(Point Of Interest)

各府省は、行政基本情報データ連携モデルや「文字環境導入実践ガイドブック」(平成31年3月28日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)に基づき、行政分野におけるデータの標準化に取り組み、データ連携の環境を整備することにより、行政のみならず、民間事業者等における業務の効率化やデータ活用を促進する。なお、データ連携に使うデータを整備する際は、上記の標準を適用する。また、利用者がサービスを受ける際の利便性を向上させるため、デジタル処理に適するようなデータの標準化、APIの整備等に取り組む。

内閣官房は、関係府省と協力して、町字識別子及び町字情報の標準について、2020年度(令和2年度)末までに整備する。

KPI:標準化対象のデータ数

(2)文字環境の整備・普及(◎内閣官房、◎経済産業省、法務省、財務省、全府省)

我が国の行政業務で用いられる漢字約6万文字を整備した文字情報基盤は、国際標準化(ISO/IEC 10646第5版)を完了したところ、安定した運用体制を確保するため、2020年(令和2年)8月に民間への移管を行った。また、2018年(平成30年)3月には、登記申請書への法人名の読み仮名の記載を開始した。加えて、2019年(平成31年)3月には、漢字、代替文字、読み仮名、ローマ字等の文字情報の現状や導入方法に関するガイドとして、「文字環境導入実践ガイドブック」を策定した。さらに、マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループの議論を踏まえ、マイナンバーカードに氏名をローマ字表記できるよう、迅速に戸籍における読み仮名の法制化を図る等の検討を進めることとなった。

各府省は、文字情報基盤の活用を推進し、文字情報に関する相互運用性を確保する。また、情報システムを整備する際には、一般的業務に係る情報システムにおいて使用する文字の範囲はJIS X 0213 を原則とし、UCS(Universal multiple-octet coded Character Set) に従った表現(符号化及び記述法)で情報システムの整備を行う。

加えて、現在個別に外字を使用している情報システムは更改時にその必要性を見直す。その際、戸籍氏名文字を表すことが必要な場合には、情報システムの現状を把握しつつ、文字情報基盤を通じたデータ連携を可能とする。なお、各府省は情報システムの整備に当たっては、当該ガイドに則して整備を行うこととする。

法人名に関しては、法人番号公表サイトにおいて、2017年(平成29年)4月から、法人からの申込みに基づき、法人名の英語表記を公表している。引き続き、内閣官房は関係府省と協力し、法人名の読み仮名及び英語表記の普及を図る。

KPI:地方公共団体の調達における文字情報基盤参照割合

(3)共通語彙基盤の推進、コード体系の確立・普及(◎内閣官房、◎経済産業省、全府省)

官民を通じた分野横断のデータ交換を促進するため、内閣官房において、2019年(平成31年)3月に「行政サービス・データ連携モデル」(平成31年3月28日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)を整備した。

引き続き、各情報システムが持つデータ項目やデータ構造の標準化を推進するため、データ交換基盤である共通語彙基盤の整備及び活用を推進し、データ全体を正確に交換、活用できる環境を実現する。また、国際的なデータ連携を実現するため、諸外国の行政用データ基盤と国際的な連携を図る。さらに、語彙の整備を進めるとともに、当該語彙に対するコードを定義する必要があるため、共通語彙と既存語彙の関係性の整理等を通じて、社会の基本となるコードの整理を実施する。

内閣官房は、共通語彙とコードの整備について、イベント、施設、設備等の社会基盤に関する分野、広報、調達、制度、法人活動等の社会活動に関する分野を重点分野として検討を進めており、2019年(平成31年)3月には、調達情報について行政サービス・データ連携標準を整備した。今後、他分野についても標準を整備しつつ、調達情報についての行政サービス・データ連携標準について、必要に応じて改定する。さらに、官民データ連携の一環として、共通語彙基盤や行政サービス・データ連携標準の地方公共団体及び民間への展開を図る。

また、経済産業省は、共通語彙基盤の整備・拡張を推進する。

各府省は、情報システムの整備に当たっては、原則として行政サービス・データ連携標準に従った形で行う。

KPI:行政サービス・データ連携標準の実装ガイド数

KPI:地方公共団体の調達における共通語彙基盤参照割合

(4)イベントデータ標準の整備(◎内閣官房、経済産業省、関係府省)

経済活性化や生活の質向上等のため、シンポジウムやスポーツ、祭事、国民・地域住民向けの説明会などの様々なイベントが行われているが、その開催情報や詳細情報は、開催団体や所管組織等の各々が、Webサイトやデータファイル等によって、それぞれ独自の項目や形式で公開しており、データ連携を活用して分かりやすく、かつ、広く伝えられていない現状がある。

こうした状況を改善するために、内閣官房は、検索性の向上や情報システム間のデータ連携が容易になるよう、国際標準や共通語彙基盤に準拠したイベントデータ標準を整理している。2019年(令和元年)8月には、こども霞が関見学デーにおけるイベント検索サービスにて、イベントデータ標準を活用する実証を行った。

内閣官房は、当該実証による成果を踏まえ、イベントデータ標準を公開し、各府省への普及を図るとともに、官民データセットの一環として地方公共団体への展開を図る。

KPI:イベント情報のAPIでの提供機関数

(5)API整備の推進(◎内閣官房、◎総務省、◎経済産業省、全府省)

民間サービスまで含めたワンストップサービスの実現等、官民連携の実現に当たっては、APIの整備を進めることが重要である。

現在、行政機関においてもAPIを公開する情報システムが存在するものの、通信ルールや開発者への提供方法が不統一であるなど、必ずしも利便性が高い形でAPIを公開できていない状況にある。APIの公開は官民連携をシームレスに実現していくための強力なツールとなり得るため、開発者・利用者にとって利便性の高い形でAPIを公開することが必要である。また、APIは内部システムへのアクセス手段を提供するものでもあるため、APIを介して実行する処理や提供する情報に応じて、利用者の管理やデータの設計に取り組む必要がある。このため、内閣官房は、より一層の情報システムの連携を図るため、2019年(平成31年)3月に「API導入実践ガイドブック」(平成31年3月28日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)及び「APIテクニカルガイド」(平成31年3月28日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)を策定した。

内閣官房及び総務省は、各府省におけるAPI整備・活用状況のフォローアップを行い、APIリストを作成し、2020年(令和2年)3月末に公開した。当該APIリストについては、引き続き、効率的な更新に配慮しつつ、適切に更新する。

各府省は、本計画に規定されているもののほか、当該ガイドを踏まえ、各行政サービスにおけるAPIの整備について検討を行い、各府省中長期計画にその内容を盛り込む。加えて、API開発者・利用者と意見交換を行う場を設けるなどによって意見把握に努め、API開発者・利用者のニーズを十分に反映しつつ、APIの改善について検討を行い、各府省中長期計画に順次その内容を反映させる。

あわせて、各府省における取組を踏まえつつ、API利用者・API提供者双方の利便性の向上、APIの標準化、情報セキュリティ対策等の観点から、関係者間において、行政機関間・行政機関-民間間のAPI連携を推進するための方策を検討する。

経済産業省は、法人デジタルプラットフォーム整備を通じ、利用者、開発者にとって利便性の高いAPIの整備を進める。

KPI:API関連ガイド数及び公開API数

(6)データマネジメントの推進(◎環境省、内閣官房)

行政データ連携の推進、行政保有データの100%オープン化を効率的・効果的に進めるためには、各府省において保有するデータの全体像を把握し、連携・オープン化するデータの優先付けを行った上で、必要な情報システム・体制を確保し、データの標準化や品質管理等を組織全体で進めていくことが必要である。そのためには、そうした一連のプロセスを体系的に進めるための戦略を定め、取り組んでいくことが重要である。

環境省では、政府におけるデータマネジメントの試行的な取組が進められており、今年度中に「環境省データマネジメントポリシー(仮称)」を策定し、2021年度(令和3年度)以降同ポリシーに基づき行政データ連携の推進や、環境省保有データのオープン化の取組を進める。こうした取組の実施状況も参考にしつつ、政府におけるデータマネジメントの在り方を検討する。

4.9 行政手続等の棚卸しの継続・改善(◎内閣官房、総務省、全府省)

行政手続等に係る業務改革(BPR)や政府情報システム改革等の推進に向けて、行政手続等のオンライン化の実施等に関する状況等を把握するため、内閣官房及び総務省は、行政手続等の棚卸調査を実施している。行政手続等の棚卸結果は、行政手続等の実態を細かな粒度まで把握するための重要なデータであり、各府省が行政サービス改革の基盤データとして活用し、業務改革(BPR)や政府情報システム改革等を推進することができるよう、内閣官房は、毎年度、行政手続等ごとにIDを振った上で、集計結果を公表している。

また、内閣官房は、2018年(平成30年)3月にオープンデータとして公開した棚卸データを基に、各府省の協力を得つつ、2018年度(平成30年度)から毎年度、調査項目の見直しを継続的に実施している。

今後、効率的に調査を進めるため、内閣官房及び総務省は、各府省の協力を得つつ、棚卸データベースの整備に向けて検討を行うとともに、棚卸データの活用や集計作業の効率化の観点から、データの改善について検討を行い、検討結果を順次反映する。これによって、棚卸業務の効率化や、異なる主体間での手続事務の標準化、行政サービスのデジタル化を促進する。

KPI:棚卸データベースの検討・整備

5 価値を生み出すガバナンス

5.1 一元的なプロジェクト管理(◎内閣官房、◎総務省、財務省、全府省)

これまでの政府の情報システム投資は、各府省・業務ごとに情報システム化の要否を検討し、各府省における当該業務の担当部局が予算要求・執行を含め運用の主体として責任を持つことが前提となっており、政府全体でのガバナンスについても、個々の情報システム単位での妥当性検証が中心であった。企画、予算要求、執行、チェック、見直しというPDCAサイクルそのものが、基本的には、縦割りでの情報システムを前提に動いていたと評価することができる。

その結果、重複的な政府情報システムの整備・運用やオーバースペックでのシステム設計、予算・調達が政府情報システム単位に細分化されているため、事業者との交渉時に十分なスケールメリットを発揮できていないといった問題が生じている。

こうした問題を解決し、政府情報システムの一層の改革を進め、オープンデータの機械判読性の強化、データの標準化、政府情報システム間の互換性、円滑な情報連携、高度な情報セキュリティ対策等について、政府として統一性を確保しつつ効率的に実現していくことが必要となる。そのため、横断的かつ業務改革(BPR)を意識したサービス視点での政府情報システムの整備・運用を実現する観点から、政府情報システムの統一的管理のための取組を抜本的に強化する。

このため、2020年(令和2年)4月から政府CIOの下で全ての情報システムを対象として、予算要求前から執行の段階まで年間を通じたプロジェクト管理(以下「一元的なプロジェクト管理」という。)を開始した。具体的には、①予算要求前の検証(予算要求前レビュー)では、主として、クラウドサービスの利用の可否などプロジェクトの基本的な方向性や関連サービスとの連携、重複投資の可能性等について検証を行い、②予算要求時の検証では、主として、予算編成に向けた費用対効果等の検証を行い、③予算執行段階の検証(予算執行段階レビュー)では、主として費用の妥当性や仕様の適正性、業務改革(BPR)等について検証を行っている。このような一元的なプロジェクト管理について内閣官房を中心に、財務省が行う予算査定や総務省が中心となって行う業務改革(BPR)と密接に連携して実施することで、全ての情報システムについて、プロジェクト管理が年間を通じて適切に行われるようにする。

2020年(令和2年)11月に、標準ガイドライン等において、早急な対応が求められるため補正予算で情報システムの整備等が実施される場合も含め、情報システムの整備・運用に対する一元的な状況把握、プロジェクト管理を行うための手順等が明確化されたところであり、内閣官房は各府省への周知徹底を引き続き実施する。

また、プロジェクトの規模や政策的重要性等の観点から重点的なプロジェクト管理を行う必要があると認められるプロジェクト(以下「政府重点プロジェクト」という。)については、プロジェクトに係る予算の執行府省の担当者、総務省の担当者や財務省の担当者等も参加するプロジェクトチームを内閣官房に編成し、当該プロジェクトチームと連携して、①の予算要求前レビューや③の予算執行段階レビューを実施する。

なお、デジタル庁の設置も見据え、以下に示す予算の一括要求の対象範囲を更に拡大することや、情報システムを3つの区分に分類し直した上で整備・運用すること、民間人材を幅広く採用することを含め体制を大幅に拡充することにより、一元的なプロジェクト管理をより強化し、実効性を高めていく。加えて、データ戦略(「4.7 新たなデータ戦略の推進」参照)を踏まえ、政府情報システムの統一的管理のための取組の更なる強化を図る。

5.1.1 デジタルインフラの整備及び運用に係る予算の一括要求(◎内閣官房、関係府省)

情報システム関係予算には、他分野の予算には見られない、以下に代表されるような特殊性がある。

  • ①重複投資や情報システム間の不整合を避け、政府全体での最適投資を目指す必要がある。
  • ②過剰スペックの要求や曖昧な作業発注、事業者の見積結果の分析不足等の要因による経費の高止まりが生じやすい。
  • ③安定的な運用を最優先する結果、現行の事業者に依存する傾向が強く、競争入札を実施しても特定の事業者のみが受注を繰り返す「ベンダーロックイン」が生じやすい。

このような情報システム関係予算の特殊性を踏まえると、一般的な行政組織の体制では、必要な経費の見積りや配分を効率的・効果的に行うための体制として不十分である。この点、内閣官房では、民間企業でCIO・CTO等のマネジメントに関する役職の経験を有する政府CIOを室長とし、官民の情報システム整備等を担い、デジタル分野における見識と高い専門性を有する政府CIO補佐官を擁するなど、政府全体の情報システム関係予算の見積りや配分を的確に行うための体制を整備しているところである。このため、情報システム関係予算のうち、デジタルインフラの整備及び運用に係る予算については、原則として、内閣官房が、IT基本法第26条第1項に定める高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の実施の推進のための事務の一環として一括して要求・計上し、各府省に配分することとしている。

情報システム関係予算については、2020年度(令和2年度)において一括要求・一括計上の開始年として、デジタルインフラに係る予算のうち、34システムの整備・運用に必要な予算674億円を内閣官房に一括計上した。2021年度(令和3年度)については、デジタル庁の設置も見据え、一括要求・一括計上の範囲を大幅に拡大し、87システムの整備・運用等に必要な予算計2,986億円を内閣官房及びデジタル庁に一括計上している。

また、デジタルインフラの活用等により効率化した情報システム関係予算の一部は、内閣官房又はデジタル庁が各府省の要望を取りまとめた上で、AIなどの技術の活用や情報セキュリティ対策等の政府情報システムの更なる高度化を実現するために充てることとする。

5.1.2 政府CIOレビューの実施

(1)政府CIOレビューの実施(◎内閣官房、関係府省)

2013年(平成25年)の政府CIOの設置以降、政府CIO自らレビューを実施し、政府情報システム改革や業務改革(BPR)を推進してきた。

デジタル・ガバメントの実現に向けた取組を推進するに当たり、政府CIOを中心としたガバナンス体制を強化するため、政府CIOレビューを実施する対象の候補について、2019年(平成31年)1月に各府省と協力して、ガバナンスを特に重視するプロジェクトの検討を行い、主に政府横断施策や投資額の大きいプロジェクトを選定している。

引き続き、内閣官房は、総務省と連携しながら政府CIOレビューを実施する。

KPI:政府CIOレビューの実施数

(2)政府重点プロジェクト(◎内閣官房、関係府省)

PJ管理強化方針において、プロジェクト規模や政策的重要性等の観点から重点的な管理を行う必要があると認められるものについては、政府CIOが政府重点プロジェクトとして指定し、情報システム担当府省の担当者や財務省の担当者等も参加するプロジェクトチームを内閣官房に編成して、より効果的にプロジェクトを推進することとされた。

2019年(令和元年)8月には、「政府共通プラットフォームの構築・活用推進及び政府におけるクラウドサービス利用検討」を、2020年(令和2年)6月には、「ガバメントネットワーク整備プロジェクト」を政府重点プロジェクトに指定して取組を進めている。

内閣官房は、上記プロジェクトの実施状況を踏まえ、新たなプロジェクトの指定について検討を行う。

KPI:政府重点プロジェクトの指定数

(3)政府横断施策や投資額の大きいプロジェクトのガバナンスの徹底(◎内閣官房、総務省、関係府省)

内閣官房及び総務省は、一元的なプロジェクト管理を通じて政府全体のガバナンスを推進するとともに、必要に応じて、以下に示す政府横断施策や投資額の大きいプロジェクトから、政府CIOレビューを実施する。

ア.クラウドサービスの利用環境整備(◎内閣官房、◎総務省、全府省)

政府情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境(「(仮称)Gov-Cloud」)を整備し、早期に運用を開始する。

業務改革(BPR)、業務・データの標準化等を前提に、「(仮称)Gov-Cloud」を活用して各情報システムを構築することで、情報システムの迅速な構築及び柔軟な拡張、最新のセキュリティ対策、技術革新対応力や可用性の向上、コストの大幅低減といった効果が期待されることから、各府省は、クラウド・バイ・デフォルト原則に基づくクラウドサービスの利用の検討に当たっては、「(仮称)Gov-Cloud」の活用を検討する。

また、独立行政法人、地方公共団体、準公共分野(医療、教育、防災等)等の情報システムについても、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けて、具体的な対応方策や課題等について検討を進める。

また、2019年(平成31年)2月に策定した「政府共通プラットフォーム第二期整備計画」に基づき、総務省は、政府情報システムの整備及び運用の効率化、質の向上並びに政府のガバナンスを支える基盤としての役割を果たすことを目的として、クラウドサービスを活用した第二期政府共通プラットフォームを整備し、2020年(令和2年)10月からサービスを提供している。第二期政府共通プラットフォームは、「(仮称)Gov-Cloud」が提供することとなる複数のクラウドサービスの利用環境の一部をなすものであり、各府省が共通で利用する情報システムを中心に、共通的な行政サービス・業務を支えるクラウド基盤として、引き続き取組を推進する。その際、クラウドサービスの技術進展等も踏まえた継続的な改善を行うことで、利用システムにとっての利便性向上や運用・保守の効率化を図る。

以上の取組に当たり、内閣官房及び総務省は、クラウドへの移行を計画的かつ効率的に進めるため、第二期政府共通プラットフォームの運用などの取組を通じて得られたクラウドサービス活用や運用改善などのノウハウを各府省における「(仮称)Gov-Cloud」の利用にいかすなど、クラウドサービス利用の検討段階から移行後の運用までの一貫した府省支援を実施する。

KPI:「(仮称)Gov-Cloud」の仕組みを整備し、早期に運用開始
KPI:第二期政府共通プラットフォームについて、サービス提供に必要な年間運用等経費について5割を超える削減
KPI: 2023年度(令和5年度)に第一期政府共通プラットフォームを運用終了

イ.ガバメントネットワーク整備プロジェクト(◎内閣官房)

信頼と実績がある最新技術を採用し、政府ネットワークを再構築する。国においては、2020年度(令和2年度)に、新たに、高速・大容量・安価なネットワークを構築する。これにより、府省間で共通のシステムを利用したWeb会議の実施も可能となる。

今後は、Web会議だけでなく、府省間ネットワークとして利用するため、更なる性能向上や費用対効果を踏まえた検討を行い、国の行政機関等は、順次、当該ネットワークに接続・利用していくこととし、これに合わせて現行の政府共通ネットワークは廃止する。

また、2020年度(令和2年度)に、各府省のネットワーク環境の統合後の姿を前提に、利便性、セキュリティ、拡張性、効率性の各要素を兼ね備えたモデルとなるネットワーク環境を整備する。国は、2021年度(令和3年度)を通じ、当該環境の中での既存業務の遂行により、各府省の円滑な統合に向けての検証を行い、各府省は、自府省の2022年度(令和4年度)以降のネットワーク環境の更改等を契機にモデルとなるネットワークに統合することを原則として検討を行う。国においては、地方支分部局を含めた全国的なネットワーク環境の再構築を進め、地方においては、地方公共団体の業務システムの標準化・共通化・「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けた検討に伴い、国、地方全体を通じた効率的かつ高品質なネットワーク環境を整備することを目的に、必要な検討、対応を行う。

ウ. 登記情報システム(◎法務省)

登記情報システムは、不動産取引の安全と円滑に資する不動産登記、企業取引等の安全と円滑に資する商業・法人登記等に関する事務を処理する情報システムであり、登記事務の増加への対応及び国民サービスのより一層の向上を図る抜本的な施策として、登記事務をコンピュータで処理する情報システムとして1988年(昭和63年)から導入を開始している。

これまで、メインフレームを中核として構成された情報システムからオープン化した情報システムに切り替えるなど、運用等経費の削減に取り組んできたが、現状、以下のような課題を抱えている。

  • ①行政機関等への各手続において、当該手続の添付書類として登記事項証明書を求めているものが数多くあり、手続の度に登記事項証明書を取得し、行政機関等に提出する必要があるため、これらの登記事項証明書の入手に係る費用・時間等が負担となっている。
  • ②登記情報システムは、年間運用等経費が50億円以上の大規模政府情報システムであるところ、政府方針等に基づき、運用等経費の削減に取り組んでいく必要がある。

上記の課題を解決するために、以下について実現を目指す。

  • ①行政機関等への各手続において、行政機関が添付書類によらずに登記事項を確認することを可能とするために新たに構築された行政機関間の情報連携システムの活用により、国民の各手続に係る負担を低減する。
  • ②情報システムの更改を契機として、システム運用等経費の削減を進めていく。

以上の目標を実現するために、以下について取り組む。

  • ①連携先である各行政機関のニーズを踏まえ、必要に応じて登記情報システムを改修する等して利便性の向上を図る。
  • ②2024年度(令和6年度)までに更改が予定される次期システムにおいては、一部拠点への集約を実施するとともに、代行環境をクラウド化するなどのシステム構成の見直しや運用等業務の精査等による工数見直しを行い、効率的な運用を図ることを目指すほか、所有者不明土地問題等の社会的要請への対応に配慮しつつ、引き続き、運用等経費の削減を目指す。

KPI:各手続における登記事項証明書の添付省略の活用状況

エ. 国税情報システム(◎財務省)

税務行政を取り巻く環境は、社会・経済活動のボーダレス化・デジタル化の急速な進展に伴い、業務が複雑・困難化するなど大きく変化している。こうした状況の下、国税庁が適切にその任務と使命を果たすためには、業務と情報システムを既存の枠組みにとらわれることなく抜本的に見直す必要がある。
国税庁の業務の遂行に当たっては、2001年(平成13年)に全国で運用を開始した申告や納税の事績を一元的に管理する「国税総合管理システム」(以下「KSKシステム」という。)と2004年(平成16年)に運用を開始した納税者からの申告・申請を受け付ける「国税電子申告・納税等システム」(以下「e‐Tax」という。)を中心とした国税情報システムを使用している。

国税情報システムについては、これまでもe‐Taxのスマートフォン対応など利用者(納税者)の利便性の向上に対応しているほか、一部業務のオープンシステム化の実施や政府目標である情報システムの運用等経費の3割削減に向けた取組を着実に進めているところではあるが、現状、KSKシステムを中心に以下の課題を抱えている。

  • ① 納税者から提出される申告書等が書面中心であった開発当初の事務運営を前提に情報システムを整備しており、政府方針であるデジタル技術の特性を活用した事務の実現に柔軟な対応ができないこと。
  • ② 開発当初、所得税や法人税といった税目別にデータベースやアプリケーションを構築したため、データや機能が重複する等しているところ、その後の制度改正等により情報システムが複雑化かつ肥大化していること。
  • ③ 課税や債権管理などの根幹はいまだにメインフレーム中心の構造であり、市場に流通する最新技術の導入が困難な状況にあること。

これらの課題を解決するため、利用者(納税者)のUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)に配慮しつつ、以下の方法により「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」の実現を目指す。

なお、実現に当たっては、国税庁では納税者情報など秘匿性の高いデータを取り扱っていることに鑑み、情報セキュリティ対策や安定稼働には細心の注意を払う。

  • ① e‐Taxの受付機能を見直し、デジタル技術の活用による、利用者(納税者)にとって、より簡便・安全な利用環境を整備するとともに、ニーズに沿ったタイムリーな情報配信を行うなど、一層の納税者の利便性と自発的コンプライアンスの維持・向上を推進する。
  • ② 国税庁組織内においても、政府全体の方針である決裁の電子化を含め、書面中心の事務運営から徹底したデータ中心の事務運営への変更といった大胆な業務改革(BPR)を実現し、事務の最適化、調査・徴収の効率化・高度化を目指す。
  • ③ 情報システム上の税目別のデータベースやアプリケーションの構造について統廃合を進めるとともに、現状のメインフレーム中心のシステム構成から、オープンな動作環境で管理・稼働できるようシステム全体の最適化を図り、最新技術の導入を容易にする。
  • ④ 情報システムの構造の最適化により、情報システムの改修や機器の運用等経費の低減を見込む。

上記を実現するために、現行システム機器の更改時期である2026年度(令和8年度)を目途に、国税情報システムの刷新を目指し、2020年度(令和2年度)から次世代システムの開発に着手しているところである。国税庁では、開発の実施に当たり、内閣官房や財務省PMOと連携することはもとより、特定税目への機能の偏りを無くし、利用頻度の低い機能を作り込みしないよう留意しながら円滑にプロジェクトを推進するため、(a)国税庁内にシステム部署のみならず各業務主管部署が一体となった検討体制を構築し、(b)手戻りが生じないよう作業順序やテスト実施の検討を行った上で、ガバナンスを効かせながら実現を目指す。
なお、現行の情報システムにおける2021年度(令和3年度)までのシステム運用等経費の3割削減についても目標達成に向けて着実に進めていく。

KPI:次世代システムの開発
KPI:システム運用等経費の低減

オ. 社会保険オンラインシステム(◎厚生労働省)

日本年金機構が公的年金業務に使用する社会保険オンラインシステムは、主に「記録管理システム」、「基礎年金番号管理システム」及び「年金給付システム」の3つの情報システムから構成されており、現在、以下の課題に対応するため、段階的に現行の情報システムの改善や刷新に取り組んでいる。

  • ①情報システムの構成に起因する課題として、サブシステムや機能が制度別に分割管理され、制度別・年金事務所別で被保険者等の情報を管理していることや、逐次の制度改正や業務改善による改修も積み重なっていることから、構造が複雑化しているため、制度改正等に際しての影響調査や情報システムの改修に高い費用を要している。
  • ②業務運営上の課題として、紙を前提とした業務プロセスとなっており、また手作業によるチェックや集計が多い。
  • ③情報システム全体の課題として、発注者主導での情報システムの設計・開発の体制が十分でなく、また、特定の事業者が著作権を保有している。
  • ④その他、逐次の制度改正や業務改善への速やかな対応が求められていること、マイナンバー制度による他機関との情報連携については、順次本格運用を開始しているが、一部、試行運用を継続している状態にあること、また、オンライン申請が必ずしも利用しやすいものとなっていないこと、ねんきんネットによる情報提供も必ずしも十分でないこと、などの課題がある。

以上の現状を踏まえ、「複雑化した年金制度を実務として正確かつ公正に運営する」という日本年金機構の役割等に鑑み、以下の目標を実現する。

  • ①公的年金業務として提供するサービスの質の向上(事務処理のデジタル化等による迅速・正確で利用者の負担軽減につながるサービスの提供、届書等の適正な入力の確保や処理時間の短縮等による記録の正確性の確保)
  • ②業務運営の効率化や公正性の確保(情報システムの運用等経費の削減、システムチェックの導入・拡大による手作業・目視チェックの事務負担の軽減、デジタル化を前提とした正確かつ効率的な業務プロセスの構築及び事務処理の標準化)
  • ③ガバナンスの確立等(情報システムに対する要件を発注者側で明確かつ詳細に定義できるなど特定の事業者への過度の依存からの脱却及びその実現のための発注者の体制強化、制度改正等に柔軟に対応するための簡素なシステム構造の実現)
  • ④逐次の制度改正や業務改善への速やかな対応、マイナンバー制度を利用した他機関との情報連携による届書の省略等について順次実施、オンライン申請の推進による届出等の利便性の向上、ねんきんネット等による情報提供の拡充等の実現

以上の目標を実現するために、以下について取り組む。

  • ①「記録管理システム」及び「基礎年金番号管理システム」の刷新
    2015年度(平成27年度)から開発し、2017年(平成29年)から順次段階的に稼働した「フェーズ1」については、記録管理に係る業務全般について、現行のデータベース等を前提としつつ、デジタルファーストの原則も踏まえ、可能な限り個々の処理がデジタルで完結するよう、情報システムの見直しを進める。
    その際、刷新後のデータベースを活用しなくとも効率的な事務処理を実現できることなどの観点を踏まえてフェーズ1の対象を拡大し、特に、効率化効果の高い届書や早期に実施可能なもの(合理的に開発を進めるため、処理件数が多い等のニーズの高い主要なもの、開発上の技術的難度が高くないもの等)は優先的・段階的に開発等に取り組む。
    今後、設計・開発を進める「フェーズ2」については、ペーパーレス化、システムチェック等による自動化、適切な進捗管理等の観点から業務プロセスを見直して大幅に刷新するとともに、被保険者等の情報の管理について制度別・年金事務所別から個人別・全国ベースに見直し、現行の情報システムの課題を解消する。
    なお、フェーズ2の本格開発への着手に当たっては、(a)日本年金機構本部及び全国の拠点職員の協力を得た業務プロセス検証の徹底した実施、(b)発注者として主体的に要件定義を行えるプロジェクト推進体制の強化、(c)本格開発に先行したプロトタイプ検証結果や工程分割の検討、(d)十分な工期の確保等を行う。
  • ②「年金給付システム」の刷新
    第1ステップとして、2019年度(令和元年度)まで端末機器及び周辺サーバの更改や集約化を進めてきた。
    また、第2ステップとして、2017年度(平成29年度)から進めている業務フロー及び情報システムの点検の結果を踏まえて、情報システムの改修を進めていく。
    その上で、第3ステップとして、情報システムの構成の見直しや情報システムの再構築に向けた検討を行う。
  • ③現行の情報システムの改善
    逐次の制度改正や業務改善への対応、マイナンバー制度を活用した情報連携、オンライン申請を利用しやすくする取組等と併せ、必要な情報システムの改修を行う。
    ねんきんネット等については、利用者にとって利便性の高い方法で個人向けの情報提供ができるよう、取組を検討する。

KPI:厚生年金保険関係届書平均処理期間:4日(2025年度(令和7年度))(年次の届書を除く。)

カ. ハローワークシステム(◎厚生労働省)

ハローワークサービスの充実を図るため、ハローワークシステムにおいて、以下の課題に対応し、段階的に現行の情報システムの改善や刷新に取り組んでいる。

  • ①求職登録、職業紹介などのサービスは窓口での提供が前提となっており、自主的な活動を希望する者も来所する必要がある。
  • ②求職登録、職業紹介などのサービスは採否結果の確認などの定型的な業務の負担が多くなっており、真に支援が必要な利用者に対して個々の状況を踏まえた支援を充実する必要がある。

以上の状況を改善するために、以下の目標を実現する。

  • ①来所が前提となっている求職登録、職業紹介などのサービスをオンライン化するとともに、求人検索など既にオンライン化されたサービスについて利便性を高め、求職・求人活動一般について、自主的な活動を希望する者が来所を要せず、オンラインサービスでそれぞれ自主的に行えるようにする。
  • ②定型的な事業所サービスのオンライン化により効率化を図る一方で、不採用が続く求職者に対しては、窓口への来所勧奨を行うなど個々の求職者の状況を踏まえた個別支援や就職後の定着支援を強化し、また、指導等が必要な求人者に対しては、事業所の実態把握を踏まえた充足支援を徹底するなど、「真に支援が必要な利用者」への支援を充実する。
  • ③業務を通じて把握、蓄積した同一人物・同一事業所の情報が、業務ごとのサブシステム間で紐付けされていないことから、これを個人及び事業所を起点としたデータとして再構築し、蓄積されたこれらのデータを基に効率的、効果的な分析を行い、多様なニーズに対応した効果的なマッチングを実現するとともに、業務の簡素化、効率化を図る。

以上の目標を実現するために、オンラインによる求人申込み等を可能とするといったサービスのオンライン化及び支援の充実を図り、2020年(令和2年)1月に刷新後のハローワークシステムの全国稼働を開始している。今後は、2021年度(令和3年度)にオンラインによる求職申込みを登録完了まで可能とするなど順次機能の追加等を行う予定であり、引き続き、ハローワークサービスの充実及びハローワークシステムの改善に取り組む。

KPI:OCR(Optical Character Reader)削減率:対2015年度(平成27年度)80%減(2020年度(令和2年度))
KPI:求人情報提供端末の削減率:対2015年度(平成27年度)30%減(2020年度(令和2年度))
KPI:ハローワークシステムの運用等経費削減額:対2013年度(平成25年度)156億円/年減(2020年度(令和2年度))

キ. 特許事務システム(◎経済産業省)

国際化の進展に伴い研究開発のスピードが速まる中で、我が国の企業が、発明、デザイン、ブランド等によるイノベーションの成果を最大限に活用できるよう、特許庁はこれまで以上に特許情報の利活用者に対して特許情報の発信を強化することが必要である。特に、公報システムについては、現状、①特許情報の原本データから特許公報発行に必要なデータを抽出する作業を週次で行っている、②抽出したデータを特許公報のフォーマットに自動で当てはめる際に生じるエラーの修正を全て手動で行っている、③オンライン上に特許公報をアップロードする際、データを手動で外部記憶媒体に移した上で行っている等の要因から、特許公報の発行に、権利の付与が確定してから3週間程度を要しており、制度利用者への情報提供が必ずしも迅速に行えていない、という課題がある。

この状況を改善するために、2022年(令和4年)1月を目途に、公報システムを刷新し、特許公報発行を迅速化する。これにより、特許情報の利活用者が、特許として認められた最新の技術に迅速にアクセス可能となり、重複した研究開発や重複した出願及び権利侵害の防止などの効果が見込まれる。加えて、特許公報発行の迅速化に際して、情報システムの構造を簡素化することで、今後のシステム改修時の費用低減に取り組む。

KPI:2022年(令和4年)1月を目途に、原則として、特許公報を権利の付与が確定してから10日以内に発行

5.1.3 各府省ガバナンスの強化(◎全府省、◎内閣官房、◎総務省)

プロジェクトを成功させ、生み出す価値を最大化するためには、各府省CIO及び各府省情報化専任審議官(以下「各府省副CIO」という。)それぞれが各府省内においてリーダーシップを発揮することにより、ガバナンスが徹底されている必要がある。このため、標準ガイドライン群において、各府省CIO、各府省副CIO、政府CIO補佐官及びPMOの役割、各府省の官房組織等との連携、府省内の手続策定のルールを明確にすること、各府省において府省重点プロジェクト以外のプロジェクトも工程レビューの対象にすることを可能とする等を定め、各府省のガバナンス強化を図っている。

一方で、新型コロナウイルス感染症対策のための緊急のシステム開発において、リリース直後に障害が発生したことを受け、2020年(令和2年)11月に標準ガイドラインを改定し、非常時においてもPMO、政府CIO補佐官(各府省担当)等の支援や助言を受けるなど、適切なサービスを提供するために必要な開発プロセスを経ること等を定めた。

内閣官房及び総務省は、標準ガイドライン群についての解説等を行うなど、政府職員に周知・徹底するための取組を実施するとともに、各府省は、府省内のガバナンスの更なる強化に取り組む。

(1)各府省中長期計画(◎全府省、◎内閣官房、◎総務省)

各府省におけるデジタル・ガバメント推進を戦略的に進めるため、「サービス設計12箇条」等を踏まえ、各府省CIO及び副CIOのリーダーシップの下、2020年(令和2年)3月に府省ごとに中長期計画を改定、公表した。

中長期計画の進捗状況等については、一元的なプロジェクト管理を通じて把握と評価に取り組む。

また、各府省中長期計画は、今後、デジタル庁設置に向けた準備状況等を踏まえて改定する。

内閣官房及び総務省は、標準ガイドライン群等に基づき、各府省が各府省中長期計画の見直しを行うに当たって留意すべき点等を要領として取りまとめ、各府省中長期計画の実効性を確保する観点から、各府省の見直しを支援する。

(2)府省重点プロジェクト(◎全府省、内閣官房、総務省)

各府省のPMOは、所管するプロジェクトのうち、府省共通プロジェクト、補正予算を用いて整備するもの及び業務の効率化、経費節減、情報システム整備の効率化、情報セキュリティ対策の強化などの観点から候補となるプロジェクトを選出し、内閣官房及び総務省と調整し、各府省内の合議制機関等に諮った上で、府省重点プロジェクトを指定することとされている。

また、PMOは、府省重点プロジェクトについて、各府省中長期計画に当該プロジェクトの取組を優先的に、かつ、主要施策となるよう記述するとともに、十分な予算や人員、推進体制が確保されるように、各府省内での調整を行うこととされている。

こうした取組を通じて、引き続き、府省内での一元的なプロジェクト管理を徹底するとともに、必要に応じて、府省重点プロジェクトの対象を拡充する。

(3)PMO、PJMOによるプロジェクト管理(◎全府省、内閣官房、総務省)

政府CIOレビューや府省重点プロジェクト等を通じて、プロジェクト管理の徹底に取り組んでいる一方で、全ての情報システムの全ての機能について、政府CIO、各府省CIO及び副CIOが詳細に確認を行うことは現実的でない。

このような情報システム及びその機能については、各府省のPMO、PJMOが中心となってプロジェクト管理を実施することとする。その際、各府省のPMO、PJMOは、PJ管理強化方針や標準ガイドライン等並びに内閣官房及び総務省が示すチェックの観点等を活用し、適切なガバナンスを発揮するよう努める。

5.1.4 技術的対話を取り入れた新たな調達・契約方法の試行運用の実施(◎内閣官房、総務省、経済産業省、関係府省)

政府における情報システムの調達においては、予算要求段階から仕様を詳細に確定させることが困難な場合もあるため、行政と事業者が政策課題を共有し、対話を通じて相互理解を深めた上で契約することが重要であるが、現行の調達手続においては、調達仕様書などのドキュメント以外の手段での事業者との意思疎通は乏しい状況にある。

このため、「情報システムに係る新たな調達・契約方法に関する試行運用のための骨子」(令和元年5月29日CIO連絡会議決定)を策定し、これに基づき、内閣官房、総務省及び経済産業省は、機動的かつ効率的、効果的な情報システム整備に資するよう、契約締結前に複数事業者と提案内容について技術的対話を可能とする調達・契約方法を、2020年度(令和2年度)に試行運用した。内閣官房は、2021年度(令和3年度)も引き続き、関係府省とともに試行運用を実施する。

5.2 政府情報システム改革の着実な推進(◎内閣官房、◎総務省、◎全府省)

政府情報システムの運用等経費については、2021年度(令和3年度)を目途に、運用等経費の3割削減(2013年度(平成25年度)運用等経費約4,000億円比)を目指すこととしているところ、本計画の策定時点で、2021年度(令和3年度)までに約1,150億円減(2013年度(平成25年度)運用等経費約4,000億円比で約29%減)となる見込みである。

引き続き、各府省は、システム要件や業務要件の精査等の取組を着実に実施する。また、PJ管理強化方針に基づき、2020年度(令和2年度)時点での政府情報システムの運用等経費及び整備経費のうちのシステム改修に係る経費を、2025年度(令和7年度)までに3割削減することを目指す。

KPI:政府情報システムの運用等経費(2021年度(令和3年度)までに2013年度(平成25年度)運用等経費約4,000億円比で3割削減)
KPI:政府情報システムの運用等経費、整備経費のうちのシステム改修に係る経費(2025年度(令和7年度)までに2020年度(令和2年度)比で3割削減)

5.3 標準ガイドライン群の充実・拡充・定着(◎内閣官房、総務省、全府省)

プロジェクトを成功させ、生み出す価値を最大化するためには、政府CIO、各府省CIO及び副CIOそれぞれがリーダーシップを発揮し、「共通ルール」の下で、各府省及び政府全体のガバナンスを強化し、価値を生み出すことが重要である。サービス・業務の状況や情報システムに関する詳細な情報を逐次把握するとともに、サービスの向上、業務の効率化及び高度化、官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)の目的にもある情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保、情報セキュリティ対策を含む情報システムの運用リスクへの適切な対応等、具体的な取組を政府横断的に進める必要がある。

このため、ガバナンスの強化に資するために、内閣官房を中心として、本計画において作成や検討等を行うこととされたルールやガイドライン等を含め、標準ガイドライン群の体系を整理しつつ、より効果的な調達手法の検討、品質管理機能の強化、リスクのあるプロジェクトに関する第三者検証スキームの導入等の検討を行い、継続的に標準ガイドライン群の充実・拡充を進めつつ、その定着を図る。

なお、情報システムの整備・運用等においては、内閣官房を中心に標準ガイドライン群と統一基準群等との整合性を確保する。

内閣官房及び総務省は、予算要求前から執行の段階まで年間を通じたプロジェクト管理に関して、一元的な状況把握、プロジェクト管理等を行うための手順を標準ガイドライン等に明確化しており、引き続き各府省に周知・徹底する。

また、デジタル庁の設置に伴う情報システムに係る基本方針の策定に合わせ、標準ガイドライン群の在り方、内容等について検討し、必要な改定を行う。

KPI:標準ガイドライン群と統一基準群等の一層の整合性の確保と融合

5.4 人材確保・育成

(1)政府におけるセキュリティ・IT人材の確保・育成(◎内閣官房、総務省、◎全府省)

行政サービス改革、行政データ利活用を推進するためには、それを担うセキュリティ・ITについての知見を持った人材の確保・育成が重要になる。これまで、政府においては、「サイバーセキュリティ人材育成総合強化方針」(平成28年3月31日サイバーセキュリティ戦略本部決定)や「政府機関におけるセキュリティ・IT人材育成総合強化方針」(平成28年3月29日サイバーセキュリティ対策推進会議(CISO等連絡会議)・CIO連絡会議決定)に基づいて、セキュリティ・IT人材の確保・育成に取り組んできた。

例えば、内閣官房及び総務省においては、高度専門人材と一般行政部門との橋渡しとなるセキュリティ・IT人材を橋渡し人材と位置付け、当該橋渡し人材に求められるスキルについて整理するとともに、スキルを認定する基準を2018年(平成30年)1月に策定した。2020年(令和2年)3月時点では、各府省合計で約270名を橋渡し人材として認定している。

また、各府省は、2016年度(平成28年度)に「セキュリティ・IT人材確保・育成計画」を策定し、これに基づき、セキュリティ・IT人材の確保・育成に取り組んでいる。

一方で、行政におけるデジタル化の推進に伴い、セキュリティ・IT人材の需要は高まる中、政府内のセキュリティ・IT人材は、依然として不足している。

各府省は引き続き、各府省のセキュリティ・IT人材育成支援プログラムを通じ、府省内の人材ローテーションの長期化等も含め、セキュリティ・ITに係る業務に充てるべき人材を計画的に育成する。

さらに、外部の高度専門人材を活用する仕組みについて、具体的な在り方等を含めて、デジタル庁の設置に併せて実現すべく、その強化に向けた方策を検討する。国家公務員の採用については、デジタル改革を牽引する人材を確保するための環境整備を行うとともに、ITに関する素養を有する人材がより確保しやすくなる仕組みの早期の導入を目指し検討する。

KPI:橋渡し人材認定者数

(2)情報システム統一研修に係る継続的な修了者の輩出と体系、実施内容等の見直し(◎内閣官房、◎総務省)

総務省は、橋渡し人材の育成、一般職員の情報リテラシー向上等に資するため、情報システム統一研修を実施しており、橋渡し人材のスキル認定との関連が深い橋渡し人材育成に係る研修に関しては、役職に応じて必要となるレベルごとにコースを設けている。このうち、研修のレベル、セキュリティ・ITに関する業務経験等を総合的に勘案し、最終的な橋渡し人材としてふさわしいと考えられる課長補佐級の研修の2019年度(令和元年度)の修了者数は、プロジェクト推進系で74人、セキュリティ系で85人となっている。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、集合研修にWeb会議システムを活用した受講を取り入れるなど研修の実施方法の改善に積極的に取り組んでいる。

さらに、デジタル・ガバメント推進の動向、各府省の要望等も踏まえて、サービスデザイン思考及び最新技術動向といった新たなコースを試行するなど研修内容の充実を図っている。

継続的に橋渡し人材のスキル認定を実施するためにも、引き続き、毎年度の橋渡し人材育成に係る研修(特に、課長補佐級)の修了者数の充実を図る。また、内閣官房及び総務省は、デジタル・ガバメント推進の動向、各府省の要望等も踏まえて、研修内容の充実を図る。具体的には、技術の進展等を踏まえ、橋渡し人材に求められる素養等を検討し、情報システム統一研修に係る体系、実施内容、方法等を随時見直す。

KPI:情報システム統一研修のうち、橋渡し人材育成に係る研修(特に、課長補佐級)の修了者数
KPI:情報システム統一研修に係る体系、実施内容、方法等の見直し

6 行政手続のデジタル化

デジタル手続法では、行政のあらゆるサービスを最初から最後までデジタルで完結させるために不可欠なデジタル3原則(①デジタルファースト:個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する、②ワンスオンリー:一度提出した情報は、二度提出することを不要とする及び③コネクテッド・ワンストップ:民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する)を基本原則として明確化するとともに、国の行政手続のオンライン化実施を原則とした。同法を踏まえ、以下のとおり、行政手続のデジタル化に向けた方針を示す。

各府省は、この方針に従って、別紙1から3までに記載する対象行政手続について、必要な情報システム整備等を行い、オンライン化等を順次実施する。

その他の手続についても、順次、オンライン化等の検討を行い、その内容を具体化していくこととする。新たにオンライン化等の検討を行う際には、本章の行政手続のデジタル化に向けた方針を踏まえることとする。具体的なオンライン化等の方法としては、既存の情報システム(マイナポータル、e-Gov等)の利用を第一に検討し、既存の情報システムでは対応できない場合や、件数が少なく費用対効果等の観点から情報システム整備等が適当ではない場合には、手続等の性質等も勘案しつつ、各府省ウェブサイト内の簡易な申請ページによる方法や電子メールによる方法等で対応する。内閣官房及び内閣府は連携して、新たにオンライン化するとされた行政手続について、その取組状況をフォローアップする。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止及び新たな生活様式の確立に向け、行政手続における書面・押印・対面規制の抜本的な見直しが急務となっている。このため、各府省は、内閣府規制改革推進会議が示した基準及び各府省における書面・押印・対面規制の見直し方針に従って、法令等の改正も含めた改革を着実に実行する。引き続き押印を必要とする手続においては、電子署名を活用したオンライン利用を促進する。また、書面・対面規制の見直しの観点から、オンライン化されていない手続について早期のオンライン化に取り組むとともに、既にオンライン化されている手続についても、使い勝手の向上等を通じて、オンライン利用の拡大を図る。
また、ワンスオンリーの実現には、参照する情報としてベース・レジストリの整備が必須である。さらに、実現に当たってはデータ共有のルール変更も必要であり、これらの取組を総合的に推進していく。

6.1 情報システムの整備に関する基本的な方針(◎内閣官房、全府省)

(1)利用者中心の行政サービスの実現等

利用者中心の行政サービスの実現並びに行政運営の簡素化及び効率化に向け、デジタル化の前提として業務改革(BPR)や制度そのものの見直しを実施した上で、行政サービスの100%デジタル化のために、各府省は、「サービス設計12箇条」に基づき、手続の申請者が、本人か代理人か、個人か法人か、地域別、世代別、世帯構成別など申請者の分類に応じた利用者のニーズを把握・分析した上で、利用者の多い手続など国民の利便性の向上につながる行政手続から優先的に、オンライン化、行政機関間の情報連携等による添付書類の省略及び既存の情報システムにおける利便性向上に必要な情報システムの整備を行い、「すぐ使えて」、「簡単」で、「便利」な行政サービスの実現を目指す。その際、行政サービスの確実・迅速な提供のため、事務処理を行う行政機関内のデジタル化に取り組むことを徹底する。

先進各国では、利用者視点に立った使いやすいサイトを作るためにデザインシステムを取り入れるようになってきている。我が国でもデジタル庁の設置を機に、デザインシステムの試行を行い、その成果を反映させていく。

また、行政サービスのデジタル化に当たっては、全ての国民がその恩恵を受けられるようにデジタルデバイドの是正に取り組む。

(2)費用対効果の精査

オンライン化、添付書類の省略及び既存の情報システムにおける利便性向上に必要な情報システムの整備に当たっては、費用の適正化と行政サービスの向上を両立させるため、各府省は、国の行政機関等の情報システム整備等に要する費用とこれにより生じる利用者側の効果、行政機関側の効果、業務改革(BPR)による効果等を勘案し、費用対効果の精査を十分に行った上で、行政手続のデジタル化を推進する。

(3)クラウドサービスの利用

必要となる情報システムの整備に当たっては、迅速かつ柔軟に進めるため、クラウド・バイ・デフォルト原則を徹底し、クラウドサービスの利用を第一候補として検討するとともに、共通的に必要とされる機能は共通部品として共用できるよう、機能ごとに細分化された部品を組み合わせる設計思想に基づいた整備を推進する。

6.2 情報システムの整備(◎内閣官房、全府省)

6.2.1 行政手続のオンライン化実施の原則に係る情報システム整備

(1)国の行政手続の原則オンライン化

法令に基づく国に対する申請等及び国に対する申請等に対する処分通知については、オンライン化することが適当でない手続又は費用対効果が見合わない手続を除き、添付書類の提出、本人確認及び手数料納付も含む手続全体をオンラインで実施できるようにすることを原則とし、各府省は、速やかにオンライン化の実現に取り組む。
行政手続のオンライン化に当たって、各府省は、利用者に対して同種のサービスを提供しているため統一的な取扱いとする必要がある手続や一連のサービスの一部を成している複数の手続など、関連する手続を行政サービス単位で集約してオンライン化を行うことにより利用者の利便性向上を図る。
行政手続における本人確認及び手数料納付のオンライン化の方針は以下のとおり。

ア. 本人確認のオンライン化

行政手続のオンライン化に当たっては、各府省は、「行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドライン」(平成31年2月25日CIO連絡会議決定)に基づき、各手続の特性や利用者の利便性を総合的に勘案して、マイナンバーカードの公的個人認証機能の活用など各手続に見合った本人確認のオンライン化を行う。
法人や個人事業主向けの行政手続であり、同ガイドラインに基づくオンラインによる本人確認の手法がレベルB又はC(同ガイドライン表3-3参照)と整理された手続については、経済産業省が提供する事業者向けの共通的な認証システムであるGビズID(法人共通認証基盤)(以下「GビズID」という。)を利用することができる。各府省はその利用について積極的に検討する。

イ. 手数料納付のオンライン化

行政手続のオンライン化に当たっては、各府省は、利用者の利便性向上のため、行政手続に係る手数料の支払いが必要な場合は、財務省の歳入金電子納付システム(以下「REPS」という。)等を活用し、インターネットバンキングなどによる支払いのオンライン化を実現する。

その際、REPSと連携する汎用受付システムが整備されていない府省において、同一府省内にREPSと連携している情報システムがある場合は、当該情報システムの共用を検討する。

また、行政手続のオンライン化による窓口対応や行政内部の事務処理の効率化など事務処理コストの低減を踏まえ、各府省は、利用者がオンラインにより手続を行った場合の手数料の減額について検討を行う。

以上の方針に基づき、具体的には、今後、別紙1に掲げる手続について、オンライン化に必要な情報システムの整備等を進める。各府省は、各府省中長期計画において、より詳細な取組内容について示す。なお、情報システムの整備には、各府省自らが新たに情報システムを整備する場合だけでなく、政府全体又は各府省が情報システムを共用する場合、既存の民間サービスを活用する場合を含む。

上記の取組により、法令に基づく国の行政手続件数の約9割超について、オンライン化が実現する見込みだが、オンライン化未実施の手続については、次年度以降も、情報システム整備等に要する費用と利用者側の効果、行政機関側の効果、業務改革(BPR)による効果等を勘案し、費用対効果の精査を十分に行った上で、手続件数が多いものから、順次、オンライン化を推進する。

各府省は、各府省中長期計画等において、オンライン化の検討状況を示し、内閣官房は、毎年度の行政手続の棚卸調査において、結果を取りまとめ、公表する。特に、オンラインによる申請等を受け付けているにもかかわらず、書面による通知や許可書等の交付を行っている場合は、エンドツーエンドの観点から書面により行う必要性を見直し、交付等の後に関係者に当該書面を示す必要がある手続であっても、既存の公的な書面等への一体化等を積極的に検討する。

(2)地方公共団体等の行政手続のオンライン化に必要な情報システムの国による統一的な整備

法令等に基づいて地方公共団体等が行う行政手続についても、国の行政機関等が行う行政手続と合わせてオンライン化を行うのが合理的である場合等には、国が情報システムを整備して、オンラインで利用できるようにするなど、地方公共団体等の意見を十分に聞きながら、可能な限り地方公共団体等の負担にならない仕組みを構築する。また、オンライン化の障壁となる制度についても、必要に応じて見直しを行う。

6.2.2 添付書類の省略に係る情報システム整備

既に行政機関が保有している情報について、行政手続において添付書類として提出を求めている場合は、その必要性の精査を行った上で、行政機関間の情報連携等によって添付書類を省略する必要がある。このため、行政機関が作成する添付書類に記載されている情報の提供側の行政機関において、行政機関等の情報連携の仕組み等の整備を推進するとともに、情報の入手側の行政機関において、添付書類の必要性を精査した結果、なお提出を求める必要がある添付書類については、費用対効果を踏まえて、既に存在する、又は整備が予定されている情報連携の仕組みの活用を推進する。また、データ連携においては機械判読可能なデータとして整備することを原則とする。

また、情報連携による省略が困難な添付書類については、少なくとも申請者がオンラインで提出することを可能とするなど、可能な限り一連の手続がデジタルで完結するように取り組む。

添付書類について、行政機関以外の民間事業者等が作成している場合は、当該書類に係る制度を所管する府省や当該書類の提出を求めている行政手続を所管する府省において、作成者に対するデジタル化の働きかけを行い、オンラインによる提出を可能とするように取り組む。

特に、添付を求める場合が多く、行政機関が作成する以下のアからオまでの添付書類については、次のとおり省略に向けた取組を進め、このうち、別紙2に掲げる登記事項証明書及び戸籍に関する行政機関間の情報連携の仕組み等の整備並びに各府省の手続における当該仕組み等の活用について、順次、必要な情報システムの整備を進める。各府省は、これらの手続について、各府省中長期計画において、より詳細な取組について示す。

内閣官房は、毎年度、以下のアからキまでの書類の添付を求めている手続について、添付書類の省略に向けた検討状況について調査を行い、その結果を踏まえて、更なる添付書類の省略を推進する。

ア. 登記事項証明書

登記事項証明書(商業法人)は、法人の実在等を証明することを目的として、年間約1,400万件(令和元年)が発行されており 、法令に基づく約1,600種類以上 の国の行政手続において添付を求めることとなっている。また、登記事項証明書(不動産)は、土地・建物の所有権等を証明することを目的として、年間約3,600万件(令和元年)が発行されており 、法令に基づく約250種類以上の国の行政手続において添付を求めることとなっている。

各府省は、登記事項証明書(商業法人)の添付を求めている手続のうち、申請書等に記載された法人の商号(名称)及び本店(主たる事務所)の所在地を確認している場合、国税庁が整備・運用している法人番号公表サイトを利用することにより情報を確認することで、添付書類の省略が可能である。次に、申請書等に記載された法人の商号(名称)、本店(主たる事務所)及び代表者の資格・氏名を確認している場合、商業登記電子証明書の送信を受けて情報を確認することで、添付書類の省略が可能である。また、登記事項証明書の添付を求めることとなっている法令に基づく国の行政手続について、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律(平成11年法律第226号)に基づく登記情報提供サービスを利用して登記情報(商業法人及び不動産)を確認することでも、省略が可能である。

これらに加えて、法務省において、「登記・法人設立等関係手続の簡素化・迅速化に向けたアクションプラン」(平成28年10月31日CIO連絡会議決定)に基づき、登記情報(商業法人及び不動産)について、2020年(令和2年)10月に、国の行政機関との間の登記情報連携の運用を開始している。

今後、登記情報連携を活用して、登記事項証明書の添付を求めることとなっている法令に基づく国の行政手続のうち、登記事項証明書(商業法人)については約1,500種類の手続において、登記事項証明書(不動産)については約200種類の手続において、添付書類が省略される予定であり、各府省は、順次、添付書類の省略に向けて必要な情報システムの整備等に取り組む。

また、内閣官房は、総務省及び法務省の協力を得て、地方公共団体において登記事項証明書の提出を求めている各種手続の実態等に関する調査を行い、地方公共団体を含む行政機関間の情報連携の仕組みの在り方について検討し、2021年度(令和3年度)中に結論を得る。

イ. 戸籍謄本等

戸籍謄本・抄本は、身分関係等を証明することを目的として、年間約4,200万件(令和元年)が発行されており 、法令に基づく約500種類以上の国の行政手続において提出を求めることとなっている。

2019年(令和元年)5月に、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が成立し、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号。以下「番号法」という。)に基づく情報連携の対象に戸籍に関する情報が追加されたことで、2024年(令和6年)2月以降、戸籍情報のマイナンバー制度における情報連携が可能となる予定である。番号法に規定される事務を所管する各府省は、確認すべき事項に係る情報を入手でき次第、戸籍謄本等の提出の不要化を実現する。

また、法務省において、2024年(令和6年)2月以降、行政機関等が電子的に戸籍記録事項の証明情報を確認できる戸籍電子証明書を発行することで、戸籍情報を必要とする行政機関等のニーズを踏まえた戸籍情報連携の仕組みの整備を予定している。

これらの仕組みを活用して、戸籍謄本等の添付を求める行政手続のうち、法令に基づく約20種類の国の行政手続において、添付書類の省略の実現に向けた検討が行われており、各府省は、順次、添付書類の省略に向けて必要な情報システムの整備等に取り組む。

ウ. 住民票の写し等

住民票の写し又は住民票記載事項証明書は、現住所等を証明することを目的として、年間約6,000万件(令和元年)が発行されており、法令に基づく約900種類以上の国の行政手続において提出を求めることとなっている。

各府省は、住民票の写し等の添付を求めている手続のうち、申請書に記載された氏名、住所、生年月日及び性別(基本4情報)を確認している場合、マイナンバーカードの券面提示、マイナンバーカードの公的個人認証機能の活用や、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)に規定されている事務では、住民基本台帳ネットワークシステムを用いて本人確認情報の提供を受けることで、添付書類の省略が可能である。また、住民票の写し等で申請書に記載された者が同一世帯の者であることや申請書に記載された者の続柄を確認している場合、番号法に規定されている事務では、マイナンバー制度における情報連携により情報を取得して確認することで、省略が可能である。

これらの仕組みを活用して、住民票の写し等の添付を求めることとなっている行政手続のうち、法令に基づく約200種類の国の行政手続において、添付書類の省略実現に向けた検討が行われており、各府省は、順次、省略に向けて必要な情報システムの整備等に取り組む。

エ. 印鑑証明書

印鑑証明書(個人)は、文書の真正性等を証明することを目的として発行されており、法令に基づく約100種類以上の国の行政手続において提出を求めることとなっているが、マイナンバーカードの公的個人認証機能の活用等によって本人確認を行うことで、添付書類の省略が可能である。印鑑証明書(個人)の添付を求めることとなっている手続のうち、約20種類の行政手続において、添付の不要化又は省略を実施済み若しくは実施予定であり、約80種類の行政手続において、添付書類に係る情報を入手できれば省略可能としている。

また、印鑑証明書(法人)は、同様に文書の真正性等を証明することを目的として、年間約1,300万件(令和元年)が発行されており、法令に基づく約140種類以上の国の行政手続において提出を求めることとなっているが、商業登記電子証明書の送信を受けて情報を確認することで、添付書類の省略が可能である。印鑑証明書(法人)の添付を求めることとなっている手続のうち、約20種類の行政手続において、添付の不要化又は省略を実施済み若しくは実施予定であり、約100種類の行政手続において、添付書類に係る情報を入手できれば省略可能としている。

このような仕組みを活用して、各府省は、順次、添付書類の省略に向けて必要な情報システムの整備等に取り組む。

オ. 所得証明書・納税証明書等

所得証明書・納税証明書等の提出を求めることとなっている法令に基づく国の行政手続は約180種類以上あり、そのうち、添付書類の不要化又は省略を実施済み若しくは実施予定の行政手続は約10種類、添付書類に係る情報を入手できれば省略可能とする行政手続は約160種類となっている。

国税関係情報(納税額、所得金額、未納の税額がないこと等)に関する証明書については、電子納税証明書としてデジタル化が実現しており、さらに、一部の手続については、2020年度(令和2年度)以降、法人番号等を活用した行政機関間の情報連携による添付書類の省略が検討される予定である。

地方税関係情報(住民税の課税情報又はその算定の基礎となる収入情報)に関する証明書については、番号法に規定されている事務では、マイナンバー制度における情報連携により情報を取得して確認することで、添付書類の省略が可能となっている。

このような仕組みを活用して、各府省は、所得証明書・納税証明書等の提出の不要化に取り組む。

カ. 定款等

定款、決算書又は各種資格証明書(以下「定款等」という。)の提出を求めることとなっている法令に基づく国の行政手続は約2,400種類以上あり、そのうち、添付書類の不要化又は省略を実施済み若しくは実施予定の行政手続は約60種類、添付書類に係る情報を入手できれば省略可能とする手続は約2,000種類となっている。

定款等の提出については、スキャン等によるイメージデータ等の提出を可能としている手続があるほか、Webサイトでの確認の方法による添付書類の省略を予定している手続があり、各府省は、このような方法による定款等の提出の不要化又はデジタル化に取り組む。

キ. その他の書面

その他の書面の提出を求めることとなっている法令に基づく国の行政手続は、約7,000種類以上となっている。当該書面の提出については、スキャン等によるイメージデータ等の提出を可能としている手続があるところ、各府省は、当該書面の提出のデジタル化に取り組む。

また、経済産業省において、官民によるデータ交換の仕組みについて検討が進められており、2019年度(令和元年度)中に行った実証を踏まえ、2020年度(令和2年度)中にGビズコネクト(法人データ連携基盤)(以下「Gビズコネクト」という。)の整備を行い、2021年度(令和3年度)以降には、他府省でも利用可能とすることを目指している。当該基盤は、オンラインシステムを外部の情報システムと連携させることで添付書類の省略やワンスオンリーの実現を推進する仕組みであり、各府省はその動向を踏まえ、当該基盤の活用による法人手続における添付書類の提出の不要化を検討する。

6.2.3 行政手続の更なる利便性の向上に係る情報システム整備

各府省は、新たにオンライン化を実現する行政手続だけでなく、既にオンライン化を実現している行政手続においても、利用者視点に基づいた現状の把握と分析を行った上で、オンラインによる申請時の添付書類の省略をはじめ、以下のような観点等から費用対効果も踏まえてオンライン利用を促進する方策を検討し、利用者の利便性向上に取り組む。

このうち、別紙3の行政手続等について、必要な情報システムの整備等を進める。各府省は、これらの手続について、各府省中長期計画において、より詳細な取組内容について示す。

また、各府省は、年間手続件数が多く、民間事業者等が反復的又は継続的に利用する手続を中心として、オンライン利用の更なる推進を図る必要がある手続については、各府省中長期計画において、今後の利便性向上に向けた検討状況を示すこととする。

ア. スマートフォン等を利用したオンライン手続における利便性向上

2018年(平成30年)における世帯の情報通信機器の保有状況をみると、スマートフォンの世帯保有率は、パソコンの世帯保有率を上回っていること、また、個人のスマートフォンの保有率が増加傾向にあることを踏まえ、スマートフォンやタブレットを利用したオンライン手続における利便性向上のため、スマートフォン専用画面の整備等を行う。

イ. 受付時間等の拡充

利用者がオンライン手続を行う際に可能な限り時間の制約を受けることのないように、オンライン手続やヘルプデスク等の受付時間を拡充する。

ウ. 本人確認手法の見直し

本人確認のために電子署名を求めている行政手続について、行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドラインに基づき、個人向けの行政手続におけるマイナンバーカードの公的個人認証機能(利用者証明用電子証明書)、法人や個人事業主向けの行政手続におけるGビズIDの活用等による本人確認手法の多様化を図る。

エ. 代理申請の容易化

代理申請を可能とする場合に、申請者本人の電子証明書及び代理申請者の電子証明書を重ねて提出させることを不要とすること等によって、代理申請の容易化を図る。

オ. オンライン手続時の初期設定の簡易化

利用者がオンラインシステムを短時間で、かつ容易に利用することができるように、初期設定に必要となる専用ソフトウェアのインストール等の不要化や、インストールが必要となる場合であっても、インストールを一括で行えるようにするなど、初期設定の簡易化を図る。

カ. 入力の簡易化等

利用者が行政手続を行う際の利便性向上のため、質問に答えていくと申請書等が自動で作成される機能や、チャットボットを活用したQ&A対応を行う機能等による入力の簡易化等、利用者に分かりやすいUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)による申請を可能とする。

キ. 申請画面等のマルチブラウザ対応

複数のブラウザで申請等を可能とすることで、利用者の利便性向上を図る。

ク. 申請画面等の多言語化

外国人利用者向けの申請画面等を多言語化することで、利用者の利便性向上を図る。

ケ. データ容量の制限緩和

オンライン手続を行おうとした利用者が、送信可能なデータ容量の制限のためにオンライン申請を複数回行う必要が生じることがないように、データ容量の制限を緩和する。

コ. データ形式の柔軟化

オンライン手続時に送信するデータ形式について、利用者側で変換を行う必要が生じないよう、利用者の利便性やニーズを踏まえた標準的なデータ形式に対応できるように柔軟化を図るとともに、業務の安全性及び信頼性を確保することを前提に、解像度や階調の指定等によりイメージデータでの提出も可能とする。

サ. オンライン手続に係る事務処理の効率化

オンライン手続について、その審査・決裁・通知までを一貫してデジタルで処理することによる事務処理の効率化等により、標準処理期間の短縮を図る。

シ. オンライン手続における優遇措置

オンライン手続の利用促進を図るため、オンライン手続における手数料の減額、手続を処理する際の優先的取扱いその他の優遇措置を講ずる。

6.3 情報システムの整備に当たり講ずべき施策(◎内閣官房、全府省)

(1)業務改革(BPR)の実施
ア. 行政サービス全体のプロセスの可視化

各府省は、既存の行政手続を見直すことなく性急に情報システムの整備を図るなど、オンライン化自体が目的とならないように、本来の目的である行政手続をはじめとする行政サービスの利用者の利便性向上並びに行政運営の簡素化及び効率化に立ち返った業務改革(BPR)に十分な時間をかけて取り組む必要がある。

業務改革(BPR)を行うに当たっては、利用者から見たエンドツーエンドで事実を詳細に把握し、行政手続の利用者と行政機関間のフロント部分のデジタル化だけでなく、行政機関内のバックオフィスを含めたプロセスの再設計を行うことが重要である。

その際、サービス提供者の視点だけではなく、利用者の視点に立って、利用者のニーズ、利用状況及び現場の業務について、個人又は法人等の利用者ごとの違いや業務を行っている現場の規模等に応じた「ばらつき」まで詳細に把握・分析した上で、プロジェクトの関係者において的確に行政サービス・業務の状況を共有するため、フロー図等を作成することにより、行政サービス全体のプロセスを可視化する。

イ. 行政手続で求めている情報の点検による添付書類の不要化等

行政手続に係る国の情報システムの整備を行うに当たっては、前提として、そもそも当該行政手続で個々の情報(添付書類又は申請書等の記載事項)をなぜ求めているか、添付書類又は申請書等の記載事項が必要最小限になっているかを精査する。具体的には、例えば、各手続において確認する必要がある最小限の情報(判断材料として必要な情報や、事後の業務に用いるために行政側に残しておく必要がある情報等)を具体的に挙げて、求めている添付書類に記載されている情報及び申請書等の記載事項と突合し、個々に必要性を精査する等により、添付書類の不要化や申請書等の記載事項の削減を図る。

ウ. 行政手続の利便性向上等

各府省は、可視化されたプロセスを基に、利用者が申請を行う前に必要となる作業や利用者が審査結果を受領した後に必要となる作業において利便性の向上につながる施策の有無、また、形式的な内容確認のみを行うもの、専門の審査官による実体的な審査を行うもの等審査内容の種類に応じて発生している問題点を把握・分析し、行政手続の廃止、他の行政手続との統合又は行政手続の利便性向上のための施策について、以下のような観点等から検討を行う。

  • (a)行政手続の統廃合
    利用者が必要のない行政手続を行うことがないように、行政手続の目的に立ち返って精査を行い、規定時からの社会情勢の変化によって現在では利用の見込みのない行政手続の廃止や他の行政手続と合わせて実施することが効率的な行政手続の統合等を行う。
  • (b)申請頻度の削減等
    利用者が申請を行う際の負担軽減のため、繰り返しの申請が必要な行政手続については申請頻度の削減を、また出頭を求めている行政手続については出頭回数の削減や廃止を図る。
  • (c)事前登録・来庁予約による待ち時間の短縮
    対面による本人確認等が必要な手続であっても、申請情報等の事前登録や、来庁予約を可能にすることで、待ち時間の短縮等を図る。
  • (d)編集可能な電子ファイルによる申請書様式の提供
    利用者が行政手続を行う際の利便性向上のため、当該行政手続に係る情報をWebサイト等で容易に入手でき、かつ、Webサイトの入力フォームを利用して直接申請書の作成を可能とする又は申請書様式の電子ファイルをPDFなどの編集不可な形式ではなく、編集可能な形式の電子ファイルで入手可能とする。
  • (e)申請書様式の標準化
    同一の行政手続を複数の申請先に対して行う必要がある場合に、申請先ごとに申請書の様式が異なるために利用者が同じ情報の入力作業を何度も行う必要が生じること等がないように、申請書様式の標準化を行う。
  • (f)申請書におけるプレプリント等
    利用者が申請書を作成する際の負担軽減のため、利用者が前回申請時に入力した情報と同じ情報は入力不要とするプレプリント、二次元コードの読み取りによる自動入力並びに法人番号の入力による会社名等の入力省略又は自動入力などの入力の簡易化を図る。
  • (g)申請内容のチェック機能の強化等
    申請を受け付けた後に申請内容の修正を行う必要が生じた場合、利用者の負担となるとともに行政機関における効率的な処理の妨げとなることから、そのような申請を削減するため、ヘルプデスクの設置、よくある過誤事案を掲載したQ&A集の公開、申請書作成画面における数値の自動計算や形式チェック機能の強化等を行う。
  • (h)業務の集中化等による標準処理期間の短縮
    オンライン申請と書面申請が混在することによる業務の煩雑化を防ぐため、オンライン申請の集中処理やオンライン申請時の申請データを活用した自動処理などの業務の効率化による標準処理期間の短縮を図る。
  • (i)最新技術の柔軟な活用
    業務改革(BPR)の実施に当たっては、利用者の利便性向上及び業務の効率化のため、技術の進展に応じて、行政手続の問合せ対応などの業務におけるAIやRPA(Robotic Process Automation)等のデジタル技術の活用について、費用対効果を含めた検討を行う。
(2)行政機関等による情報システムの共用の推進

各府省は、可能な限り個別に新規のオンラインシステムを整備することは避け、既存の情報システムや政府全体で共通的に利用する情報システムの活用等、効率的な情報システムの整備による行政サービスのデジタル化を図る。

ア. 既存のオンラインシステム等の活用

各府省の汎用受付システム、各府省固有のオンラインシステム又は業務システムなどの既存のオンラインシステム等を活用してデジタル化を実現する。なお、各府省に既存の汎用受付システムや各府省固有のオンラインシステムが整備されておらず、新たにオンライン化を実現しようとする場合には、まず、情報提供等記録開示システム(マイナポータル)やe-Govを活用することを検討する。

イ. クラウドサービスやデジタルインフラの活用による既存のオンラインシステムの統廃合等の見直し

既存のオンラインシステム等について、当該情報システムの利用状況を踏まえて、不要な画面や帳票の有無、機器のスペックの妥当性等の検証を行い、情報システムの不断の見直しを行う。

また、情報システムの整備時期を見据えつつ、費用対効果やサービスレベルの向上、情報セキュリティの対策強化を図るため、政府共通プラットフォームや民間を含めた各種クラウドサービスの活用を図る。

さらには、デジタルインフラの整備・利用を進める観点から、マイナポータルやe-Gov等を活用することによる既存のオンラインシステム等の統廃合や国と地方の申請受付システム等における共通的な機能の一元化、APIの共通化について検討を行う。

(3)データの標準化・APIの整備

各府省は、利用者が行政サービスを受ける際の利便性を向上させるため、各種ガイドラインに沿って、デジタル処理に適するようデータの標準化、APIの整備及び分かりやすい形での仕様に関する情報提供を推進し、民間サービスも含めた他サービスとの連携を促進する。

ア. データの標準化

各府省は、標準ガイドライン群に定める行政基本情報データ連携モデル、実践ガイドブック(文字、マスターデータ等)に基づき、以下のような観点等から行政分野におけるデータの標準化に取り組み、データ連携の環境を整備することにより、行政のみならず民間事業者等における業務の効率化やデータ活用を促進する。

  • (a)基本的なデータ形式の標準化
    日付時刻や住所、電話番号といった基本的なデータについては、行政基本情報データ連携モデル(行政データ連携標準)を適用してデータ形式の標準化に取り組むことで、効率的なデータ連携環境の整備を図る。
  • (b)データ連携等を容易に行える文字環境の整備
    データ連携を行う情報システムを整備する際に使用する文字の範囲は、一般に普及しているスマートフォンやパソコンに標準的に搭載されているJIS X 0213を原則とし、現在個別に外字を使用している情報システムは更改時にその必要性を見直すなど、「文字環境導入実践ガイドブック」を参考に文字環境の整備に取り組み、情報システム間のデータ連携やスマートフォン等による行政サービスの利用が容易に行えるような環境の整備を図る。
  • (c)データの相互運用を可能とするマスターデータの管理
    異なる組織間で情報交換を行う際に、組織を横断しても共通の理解の下で業務を行えるように、「マスターデータ等基本データ導入実践ガイドブック」(平成31年3月28日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)を参考に、データを相互運用できるようにするためのマスターデータの管理に取り組む。
    具体的には、既存のマスターデータで類似するものがあれば、それを参考にデータを整備し、適当なものが存在しなければ新規に整備する。いずれの場合も、汎用性のあるデータとするため、共通語彙基盤等を参照して整備する。

また、情報連携の際に情報提供を行う各府省は、提供対象となるデータについて、情報提供を受ける行政機関が特別な機器やソフトウェアを利用することなく、正確かつ最新のデータの提供を受けられるように整備する。
さらに、データの形式や精度を変更する場合には、これらが混在しないように、変更日付を明記し、過去のデータとの変更時点を明確にする。

イ. 外部連携機能(API)の整備

各府省は、「API導入実践ガイドブック」等を参照するなどして、以下のような観点等を踏まえて開発者・利用者にとって利便性の高い形でのAPIの整備及び分かりやすい形での仕様に関する情報の提供に取り組む。

  • (a)API利用者にとって使いやすい環境の整備
    提供するAPIの活用を進めるため、API仕様情報の提供、テスト環境の提供、開発者同士やAPI提供者が意見交換するコミュニティといった情報交換の環境の提供を行うなど「API利用者にとっての使いやすさ」に配慮した環境整備に取り組む。
  • (b)API導入時における利用者に分かりやすい情報提供
    API導入時における利用者の利便性向上のため、民間にAPIを公開するという観点から、より平易な利用者向けの仕様書、マニュアル、利用事例等の整備・提供を行う。
  • (c)行政データ連携標準や国際標準等に準拠したAPIの設計
    提供するデータを設計する際は、データフォーマット(データ項目名、形式、コード値、入力規則等)について行政データ連携、国際、国内、業界等の各種標準に準拠し、相互接続性、拡張性及び一意性を担保した設計とする。
  • (d)情報セキュリティ対策等のためのAPIのアクセス管理
    APIの提供に当たっては、情報セキュリティ対策、サーバの負荷対策、利用者へのAPI仕様変更の連絡等のため、アクセス管理を行う。
  • (e)利用者の利便性向上のためのAPI導入後の監視
    APIの導入直後は、当初の想定と異なる利用やサーバ過負荷等が発生していないか重点的に監視し、問題の発生が予想される場合には迅速に対応する。稼働が安定した後も定期的な監視を継続し、利用者の利便性の改善を図る。
  • (f)APIの仕様変更・廃止の丁寧な情報提供
    APIの仕様変更・廃止を行う場合には、API利用者が速やかに変更や廃止に気付いて、トラブル回避等の対応を行えるように、十分な期間を確保して周知を徹底する。
(4)情報セキュリティ対策・個人情報保護等

各府省は、行政手続のデジタル化を推進するに当たっては、本計画「4.5情報セキュリティ対策・個人情報保護等」に基づき、ネットワークへのアクセス制御、通信の暗号化及び情報システムにおけるログの保全等の技術革新等に対応した情報セキュリティ対策、個人情報の保護その他の個人の権利利益の保護、業務継続の確保といった業務及び情報システムの安全性及び信頼性を確保するための措置を講ずる。

(5)デジタルデバイドの是正

各府省は、高齢者や障害者等を含む全ての国民がデジタル化の恩恵を受けられるように、オンライン申請等に関するアドバイザーによる支援、デジタル技術に関する特別の知識や複雑な操作を要しないシンプルな設計による情報システムの整備、ヘルプデスク等の利用者サポート機能の充実等デジタルデバイドの是正の取組を継続的に行う。
また、経済的な理由等によりオンライン申請を行えない利用者が、行政機関等の窓口で職員に操作方法等の支援を受けながら、オンライン申請を行えるようにする施策や外国人利用者のためにWebサイトにおける外国語表記や自動翻訳サービスの実装などの外国語対応等も行う。

(6)国民等への広報

各府省は、行政手続のオンライン化を促進するに当たっては、その利便性の向上や負担軽減といった効果、情報セキュリティや個人情報の保護をはじめとした安全性及び信頼性の確保のための対策、デジタルデバイド対策なども含めて、個々の手続を実際にオンラインで行うための具体的な方法等について、専門的・技術的な用語に頼らずに国民等に丁寧かつ分かりやすい広報を行う。

また、オンライン申請の利用促進のため、SNS、動画、Webサイト、テレビCM、政府広報、ポスター、パンフレット、リーフレット、企業を訪問しての申請のデモンストレーション等を活用した広報を行う。

(7)KPIの設定

各府省は、行政手続のデジタル化に当たり、実現する行政サービスの内容に応じて適切なKPIを情報システム単位で設定し、又は、利用者の負担軽減、行政運営の効率化などのKPIを行政サービス単位で設定する等した上で取組を進めるものとする。

7 ワンストップサービスの推進

行政手続等を行う際の負担等を大幅に軽減させ、利用者がその利便性向上を実感できるよう、関連する行政手続等のワンストップ化を推進する。その際、民間サービスの活用を含めて利便性の高いサービスとするため、APIの整備や公開を推進する。これによって、行政手続だけでなく民間手続まで含めたワンストップ化(コネクテッド・ワンストップ)を推進する。

具体的な取組の第一歩として、コネクテッド・ワンストップの先行分野である以下について引き続き取り組み、得られたノウハウや成果を他の分野に順次展開していくとともに、利用者のみならず代理人、事業者等へも情報を提供することや、利用者が所属する企業等において相談対応が可能となる環境を整備すること等を通じて利用を促進する。

7.1 子育てワンストップサービス等の推進(◎内閣官房、内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省)

「子育て」に関連する手続は多数存在するが、来庁を前提とする手続(対面)や、オンライン化されていない手続(書面)が多く、子育てや仕事に忙しい子育て世代における手続に係る負担(時間、費用等)が大きい。

こうした状況を改善するために、2017年度(平成29年度)に、マイナポータルを活用して地方公共団体における子育てに関するサービス検索及びオンライン申請ができる子育てワンストップサービスを開始した。

引き続き、窓口に出向かずとも子育てに関する官民の様々なサービスの申請がオンラインで完結し、また、必要な情報をプッシュ型通知により受けることができる仕組みにより、子育て世代における利便性向上や手続に係る負担の軽減を実現する。

内閣官房及び関係府省は、マイナポータルを活用して子育てに関するサービス検索及びオンライン申請ができる子育てワンストップサービスについて、引き続き、地方公共団体における導入を促進する。また、マイナポータルにおいて、保育所入所申請に必要な就労証明書のデジタル化対応や障害児施策へのワンストップサービスの拡充等を行い、子育てワンストップサービスの利用を促進する。

さらに、民間アプリ会社と連携して子育てに関する手続をデジタル化し、子育て世帯の負担軽減や地方公共団体の業務効率化を実現する「子育てノンストップサービス」について、2020年(令和2年)3月に公表したロードマップに基づき、児童手当の各種手続の見直しを検討することと併せて、まず児童手当の現況届と定期の予防接種を対象に2023年度(令和5年度)からの全国展開に向けて取り組む。また、保育や乳幼児健診その他の手続についても検討を進め、妊娠期から就学前まで切れ目なく最適なタイミングでサポートする環境の実現を図る。

KPI:取扱機関数(地方公共団体等)
KPI:ワンストップサービスによりオンライン申請可能な手続数(地方公共団体ごとの対象手続数の合計)

7.2 介護ワンストップサービスの推進(◎厚生労働省、内閣官房、内閣府)

2025年(令和7年)には、団塊の世代全てが75歳以上となるなど、高齢化は今後更に進展することが見込まれており、高齢者の自立支援や要介護状態等の重度化防止に向け、地域の特性に応じて取り組むことが重要である。

現在、要介護・要支援認定者数は650万人を超えていることから、介護者の負担軽減の一助として、行政手続の簡素化や享受できるサービスに関する情報を分かりやすく提供することが必要である。

新型コロナウイルス感染症が拡大する中、介護や介護予防のために必要な行政手続を含むサービス情報を得られ、行政手続のオンライン化の実施により、時間・場所を問わず、Webサイト上でサービスの検索から申請までが可能となるワンストップサービスを実現することで、非接触・非対面での行政手続が可能となり、感染リスクの高い高齢者や介護者(家族)の不安や行政手続を申請する者の手続に係る負担が軽減される。これにより、介護支援専門員等の介護に従事する者の負担軽減が図られ、介護サービス利用者への自立支援や重度化防止につながるような支援への注力が期待できる。

なお、介護における負担状況を考える際、関係者ごとに抱える課題は異なることから、以下のように、各視点での現状把握が必要である。

  • ①介護者(家族)
    介護する立場になるまで介護に関する情報や知識を備えようという意識が働きにくく、いざ介護する立場になったとしても、どこに相談すればよいか、情報はどこから得られるかが分からず不安を抱えている。
  • ②行政手続の代理申請が可能な介護支援専門員等
    要介護・要支援認定の申請等の行政手続については、介護支援専門員等が申請者に代わって行うことができるが、オンライン化されている手続は少なく、申請書の地方公共団体への持込み・郵送の負担がかかっている。

これまで、内閣官房及び厚生労働省は、介護者(家族)や行政手続を代理することが可能である介護支援専門員等の負担状況に鑑み、2018年度(平成30年度)より、介護や介護予防に係る手続のオンライン申請等ができる介護ワンストップサービスを順次開始した。2019年度(令和元年度)は、地方公共団体へのアンケート等を通じて地方公共団体への導入促進に向けた課題と対応策を取りまとめ、2020年度(令和2年度)は、オンライン申請における申請フォームのひな形を作成し、マイナポータル・ぴったりサービスへのプリセットを順次実施するなど、地方公共団体への導入促進を図っている。

引き続き、2021年度(令和3年度)以降も、申請フォームのひな形の周知等により、地方公共団体での導入促進を図るとともに、介護支援専門員等への周知を通じてワンストップサービスの利用促進を図っていく。また、申請フォームのひな形も、地方公共団体や関係団体の意見を取り入れながら随時見直しを行い、介護者(家族)、介護支援専門員等にとって利便性の高いサービスの提供に向けた取組を実施していく。

KPI:取扱機関数(地方公共団体)
KPI:ワンストップサービスにより電子申請可能な手続数(地方公共団体ごとの対象手続数の合計)

7.3 引越しワンストップサービスの推進(◎内閣官房、内閣府、金融庁、国家公安委員会・警察庁、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、関係府省)

引越しに際し、様々な行政機関や民間事業者に対して、ほぼ同一の情報を個別に届け出る必要があり、その都度、手続負担が生じている。また、引越しを行う者が、住所変更手続を行うべき相手方を網羅的に把握できず、手続漏れが発生しやすい状況となっている。

こうした状況を踏まえ、引越時において、様々な場面で必要であった住所変更手続が、当事者が可能な限り負担を感じることなく処理され、かつ、その回数が最少化されることにより、新しい生活を円滑に開始することができる社会を実現する。

また、新型コロナウイルス感染症対策において、社会的距離(ソーシャルディスタンス)の確保の取組が必須とされている。従来、対面で行っていた手続についても、オンラインによる手続を前提とし、手続の性質上対面で行う必要がある手続は、予約の仕組みを導入することで、窓口で行列が生まれない体制を整備するなど、国民の新たな生活様式に合わせた取組を実施していく必要がある。

これまで、内閣官房は、関係府省や地方公共団体、民間事業者とワンストップサービスの実現に向けた検討等を行い、2019年(平成31年)4月に関係府省とともに実現方策を取りまとめた。また、当該方策に基づき、2019年度(令和元年度)に実証実験を実施し、2020年(令和2年)3月に課題と今後の方針について取りまとめるとともに、民間手続に係る引越しワンストップサービスについては、引越しを行う者が、民間事業者が提供する引越しポータルサイトを通じて、電気・ガス・水道等の手続等を実施できるサービスを開始した。また、実証実験で得られた課題と今後の方針をもとに、2020年度(令和2年度)も引き続き、同サービスの検証を実施している。

2020年(令和2年)以降については、引越しポータルサイトから手続申請(地方公共団体の手続についてはマイナポータルを経由)を行うサービスについて、民間手続に関しては、民間事業者等の協力の下、同サービスの検証を行い、その方式及び効果の検証を踏まえた上で、対象手続の更なる拡大を図る。また、地方公共団体の手続に関しては、関係府省や地方公共団体等の協力の下、同サービスの検証を行い、転出証明書情報を事前に市町村職員が確認することにより転入手続の事前準備を可能とするなど、住民の利便性向上や市町村職員の負担軽減の観点から必要な制度を検討し、法令等の改正も含め、実現に向けて取り組んでいく。

KPI:ワンストップサービスの取扱機関数(地方公共団体等)
KPI:引越しワンストップサービスの対象手続の拡充

7.4 死亡・相続ワンストップサービスの推進(◎内閣官房、内閣府、金融庁、総務省、法務省、財務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、環境省、関係府省)

「死亡・相続」に関連する手続は多数存在し、その大半がオンライン化されていない。また、我が国の年間死亡者数は直近で約138万人と増加傾向にある事からも、相続人の手続に係る負担やその手続を受ける行政機関・民間事業者等の負担軽減に向けた取組が必要である。

「死亡・相続」に関して、死亡届、年金手続、不動産名義変更、税務申告といった行政手続は、それぞれ地方公共団体、年金事務所、法務局、税務署に対して行わなければならず、金融機関をはじめとした民間事業者に対しても戸籍謄抄本等を提出するなどの手続を繰り返し行っており、また、亡くなった人の財産保有状況等によって必要となる手続先が異なるなど、相続人の負担は大きい。また、行政機関間での手続もデジタル化されておらず、死亡者数増加に伴う手続件数の増加により行政側の負担も増大している。

こうした状況を踏まえ、①死亡・相続に関する行政手続を見直し、遺族が行う手続を削減し、②故人の生前情報をデジタル化し、死後、信頼できる第三者により相続人であることをオンラインで認証された遺族が、当該情報を死亡・相続の手続に活用できるようにすることで、遺族の負担を軽減するとともに、③死亡・相続に関する手続の総合窓口について、地方公共団体が精神的・経済的に支えを失った遺族に必要な支援を行うことができるように、内閣官房は、地方公共団体に対し円滑な設置・運営のための支援を行う。

これまで、内閣官房において、関係府省や地方公共団体、民間事業者とワンストップサービスの実現に向けた検討等を行い、2019年(平成31年)4月に関係府省とともに実現方策を取りまとめた。

今後、内閣官房は、当該方策に基づき、関係府省や地方公共団体の協力の下、以下の施策を進める。

  • ①財務省、厚生労働省及び環境省は、行政手続の見直しに向けて、総務省の分析の結果、他の手続で登録された死亡情報を参照できるものの、死亡に関する届出の省略を認めていない行政手続について、各府省中長期計画に基づき、当該届出の提出を省略可能とする対応を行う。また、他の手続で登録された死亡情報を参照できないこと等から、死亡に関する届出の省略を認めていない行政手続についても、届出省略の実現に向けた検討を行う。
  • ②内閣官房は、戸籍情報連携システムの戸籍電子証明書(電子的な戸籍記録事項の証明情報)を活用した法定相続人の特定に係る遺族等の負担軽減策について、法務省と検討を行う。また個人の生前の情報を、死後、遺族に電子的に継承する仕組みとして、エンディングノート のデータ標準の策定を2020年度(令和2年度)末までに行う。
  • ③内閣官房は、地方公共団体が死亡に関する総合窓口である「おくやみコーナー」を設置することを支援するためのツール(おくやみコーナー設置自治体支援ナビ等)を整備するとともに、2020年(令和2年)5月にその活用方法を盛り込んだガイドラインを策定し、提供を開始した。引き続き、利用上の課題をヒアリングし、順次改善を行うことで「おくやみコーナー」設置を推進する。

また、法制度上の制約がないことが確認できたため、死亡に関する手続(死亡届及び死亡診断書(死体検案書))をオンラインで完結する仕組みの構築に向けて、法務省、厚生労働省と共に2021年度(令和3年度)内に課題を整理の上、速やかに対応する。ただし、既存のツールの活用が可能な取組等については、実現できるものから順次措置し、その後も、必要な見直し、整備を行う。

KPI:エンディングノートに必要なデータの整理
KPI:死亡・相続に関して遺族が行う手続の削減数

7.5 企業が行う従業員の社会保険・税手続ワンストップ化・ワンスオンリー化の推進(◎内閣官房、総務省、財務省、厚生労働省、経済産業省)

企業の生産性を向上するためには、従業員に関する社会保険・税手続をデジタル化・簡便化することが重要であることから、企業が行う従業員の社会保険・税手続について、従業員のライフイベントに伴う行政手続のワンストップサービスや、企業と行政機関との間でのデータ連携を通じたワンスオンリー化を実現することで、企業の負担を軽減し、生産性向上に寄与するための取組を進める。

2019年(平成31年)4月の課題の最終整理を踏まえ、従業員のライフイベントに伴い企業が行う社会保険・税手続について、マイナポータルのAPIを活用したオンライン・ワンストップ化を2020年(令和2年)11月から開始しており、今後、対象機関や対象手続を順次拡大する。

また、内閣官房及び関係府省は、事業者がクラウドサービス上にデータを記録し、行政機関等が当該データを参照することによって社会保険・税手続を行うこと(社会保険・税手続の新たな提出方法)について環境整備を行い、まずは金融機関等が税務署長に提出する支払調書等を対象に、2022年(令和4年)1月提出分から対応できるよう、金融機関等と連携を図ることとし、国民・事業者の負担軽減が見込まれるその他の手続についても、2022年度(令和4年度)以降の対象拡大に向けて検討し、2020年度(令和2年度)中に結論を得る。

さらに、年金関係をはじめ、行政機関等から事業者への処分通知等について、デジタル化の課題や方策等を検討し、2021年度(令和3年度)以降順次デジタル化対応を目指す。

KPI:オンライン・ワンストップ化

  • 申請・届出に係る利用数

KPI:クラウドを活用した新しい提出方法・処分通知等

  • 対象手続の追加に対応して、本計画の改定の際に順次記載
  • ロードマップに基づく検討を踏まえた対象手続に係る各府省等の情報システムの改修・マイナポータルの機能追加
  • クラウドを活用した申請・届出、処分通知等の実現(2021年度(令和3年度)以降)
  • インターフェイスシステムの提供数
  • 申請・届出、処分通知等に係る利用数

7.6 法人向けワンストップサービスの実現(◎内閣官房、内閣府、法務省、総務省、財務省、厚生労働省、経済産業省)

世界最高水準の起業環境を実現するために、法人設立手続のオンライン・ワンストップ化を行う。

これまで、2018年(平成30年)3月に、株式会社及び合同会社の設立登記の優先的処理を開始するとともに、2019年(平成31年)3月に、指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する関係省令を改正し、テレビ電話等による株式会社の定款認証を導入した。また、2020年(令和2年)1月からマイナポータルを活用し、国税、地方税、年金、雇用保険などの法人設立に係る申請等の手続(登記後の手続)のワンストップ化を開始している。

2021年(令和3年)2月からの定款認証及び設立登記を含めた全手続のワンストップ化、設立登記における印鑑届出の任意化、GビズIDの発行等の開始に取り組むとともに、定期的に取組状況を検証し、2021年度(令和3年度)目途で見直しを行い、必要な措置を講ずる。

KPI(進捗): 世界銀行事業環境ランキング(World Bank Doing Business)の法人設立分野でのランクアップ
※2019年(令和元年)10月公表のDoing Business 2020では13位
KPI(効果): 世界銀行事業環境ランキングの法人設立分野において、2030年(令和12年)にG20で1位を目指す。

8 行政サービス連携の推進

多様なサービスやデータを円滑に連携させ、高度かつ便利なサービスを実現するためには、連携データやAPIの仕様を標準化するとともに、それぞれの情報システム等で保持しているデータを常に適切な品質に維持し、相互運用性を高めることが必要であり、行政サービスの利便性を向上させるため、行政サービス及び行政データの連携基盤の整備及び活用を推進する。

8.1 マイナポータルのAPI提供によるサービス連携の拡大(◎内閣府)

デジタル・ガバメントの基盤であるマイナポータルの各種機能を民間事業者や国・地方公共団体等の様々なWebサービスが活用することを可能とするAPIを開発・提供し、サービス連携の更なる拡大を実現する。

ア. お知らせ情報取得API等を活用した官民データ連携

2020年度(令和2年度)においては、行政機関等が情報提供ネットワークシステム経由で個人の閲覧に供するためにマイナポータルに通知する情報(お知らせ情報)と、民間事業者による本人確認済の利用者に対する電子データ送達サービス(民間送達サービス)により送付される各種データ(民間送達サービス保有情報)について、本人が指定する他のWebサービスがマイナポータルを介して取得することを可能とするAPI(「お知らせ情報取得API」及び「民間送達サービス保有情報取得API」)を開発し、提供を開始した。

引き続き、医療・福祉や社会保険・税などあらゆる分野のWebサービスにおいて、これらのAPIが活用されるよう取り組み、官民データ連携を強力に推進する。
また、マイナポータルで提供する機能を、行政機関だけでなく企業や市民団体等の民間組織に対してもAPIとして提供することで、新たな行政サービス・民間サービスの開発につなげる。

イ. ぴったりサービスにおけるサービス連携

市区町村の子育てをはじめとする行政手続の検索とオンライン申請を行うことができる「サービス・電子申請機能」(以下「ぴったりサービス」という。)においては、2017年度(平成29年度)から、その手続検索機能についてAPIを提供し、SNSと連携することにより、国民がSNSの画面上で市区町村の行政手続を検索することを可能としている。

引き続き、引越し等に関する民間事業者のWebサービスについて、受け付けた申請等のうち市区町村に係るものを、マイナポータルを介して市区町村に連携し、地方公共団体手続を一括で行うことができるように、APIの開発・提供を推進するとともに、その利活用についても積極的な周知広報等に取り組む。

ウ. 法人設立ワンストップ、社会保険・税手続ワンストップにおけるサービス連携

2020年度(令和2年度)においては、企業が行う従業員のライフイベントに伴う社会保険・税手続に係る行政機関等に対する申請等について、企業の人事・給与システムや民間事業者のWebサービス等からマイナポータルを介し、オンラインかつワンストップで行うことができるサービス(社会保険・税手続ワンストップサービス)を開始できるようにした。

また、法人設立ワンストップに関し、対象手続を定款認証及び設立登記を含めた手続に拡大する。

KPI:外部API連携オンラインサービス数
KPI:API利用数

8.2申請受付システム等の一元化に向けたe-Govの継続的改善(◎総務省)

e-Govを利用する国民・企業等に対して質の高い行政サービスを提供するため、総務省は、2018年度(平成30年度)からサービスデザイン思考を導入し、利用者、ソフトウェアベンダー等との共創によって、e-Govの提供サービス及びデザインについて段階的な見直しを行い、2020年(令和2年)11月から刷新後のe-Govの運用を開始している。

今後は、e-Govの利用者の利便性向上及び効率的なシステム整備・運用の観点から、第一期政府共通プラットフォームが終了する2023年度(令和5年度)末までに、クラウドネイティブのシステムとして、第二期政府共通プラットフォーム上に移行させることとし、2021年度(令和3年度)からe-Gov更改に向けた要件定義に着手し、2022年度(令和4年度)から設計・開発を進める。

KPI:e-Govを通じた電子申請件数(2018年度(平成30年度)実績である11,351千件を2021年度(令和3年度)までに31,148千件に引き上げる)
KPI:API対応ソフトウェアからの電子申請件数(2018年度(平成30年度)実績である8,570千件を2021年度(令和3年度)までに23,515千件に引き上げる)

8.3 法人デジタルプラットフォームの整備(◎経済産業省、内閣官房、関係府省)

政府全体で行政データ・サービス連携の推進を掲げる中、法人との接点の多い経済産業省においては、2017年度(平成29年度)より、法人関係の行政手続のワンスオンリー化等のため、法人デジタルプラットフォームの整備と実証を進めている。

法人デジタルプラットフォームは、複数の行政サービスで利用することを想定した共通機能と、業務固有の機能から構成され、2020年度(令和2年度)時点では3つの共通機能(「Gビズインフォ(法人インフォメーション)」(以下「Gビズインフォ」という。)、GビズID、Gビズコネクト)の整備を進めている。

Gビズインフォは、法人番号をキーとして各府省が保有する調達、補助金、表彰などの法人活動情報を紐づけ、共通語彙基盤に基づいたデータ形式の標準化を実施しながら、オープンデータとして提供を行っている。

引き続き、各府省の協力を得ながら、各府省が保有する法人情報の網羅性を高めていくとともに、民間等からニーズの高い情報(行政保有の各法人の財務情報や官報掲載情報等)の拡充を図ることで、ワンスオンリー及び高度な法人情報検索に資するデータ収集を進めていく。

また、一つのID・パスワードで複数の行政サービスにアクセスを可能とする認証システムとしてGビズIDを2019年度(令和元年度)より運用開始し、経済産業省の産業保安関係法令手続、中小企業向け補助金申請等の主要な行政手続、厚生労働省の社会保険手続、農林水産省関係の手続等における認証システムとして導入されている。引き続き、法人向け行政手続の共通認証システムとして普及を図るため、各府省や地方公共団体といった行政機関等の行政手続について横展開を行っていく。

さらに、ワンスオンリーやEBPM(Evidence-based policy making)の実現に向けたデータ連携のために、各情報システム及び行政サービスがインターネット上でAPIを活用しシームレスかつセキュアにデータ交換できるプラットフォームとして、Gビズコネクトの整備を進めており、2020年度(令和2年度)には、経済産業省内のシステム間において実証的な連携を開始する。2021年度(令和3年度)以降、他府省や民間との連携でも活用できる環境へ拡張し、法人に関するデータが官民双方で有効に活用される法人デジタルプラットフォームの整備を目指す。

これら共通機能の整備と並行して、経済産業省の政策分野のうち、事務コスト改善の余地が大きく企業データの活用可能性の大きい分野を中心に行政手続の簡素化・デジタル化を進めており、産業保安関係法令手続、中小企業向け手続、補助金申請などの主要な手続から取組を開始している。2020年度(令和2年度)からは、エネルギー、貿易管理の分野についても手続の簡素化・デジタル化の取組を広げている。

KPI:Gビズインフォ(法人インフォメーション)へのAPIアクセス数(2022年度(令和4年度)までに年間8,000万件)
KPI:Gビズインフォ(法人インフォメーション)のデータ登録数
KPI:GビズID(法人共通認証基盤)で利用可能な手続数

ア. 行政手続における法人番号入力の原則化とデータ連携環境の整備

法人に関する情報をデータ連携する際、それぞれのデータに法人番号が紐付いていることが前提条件となる。このため、各府省は、法人からの申請を受け付ける際などのフォームにおいて法人番号入力欄を原則として設けるとともに、行政手続のオンライン化を徹底し、申請情報を機械判読可能なデータとして取得することを目指す。
今後、法人に関する行政手続においてワンスオンリーを実現するには、各府省の持つデータ連携を進めていく必要がある。共通語彙基盤に基づく標準的なデータモデル、データ連携基盤、APIの整備・活用を進めていくことでこれを実現する。

経済産業省は、内閣官房と協力し、2020年(令和2年)には、行政手続で使用される基本情報の標準的な記述形式をまとめた「行政基本情報データ連携モデル」などの標準モデル等を作成し公開した。

引き続き、行政手続や法人に関する標準的なデータモデル等の整備を進めるとともに、行政手続・行政サービスにおいて標準モデル等が適用されるようガイドブックの作成等を通じた普及・啓発を進める。あわせて、GビズコネクトによるAPI活用によるデータ連携の基盤整備に取り組む。

イ. GビズIDと事業者に関する番号との連携の検討

法人については、法人番号が付番されており、GビズIDにおいても同番号をキーにアカウント体系を構築している。

個人事業主についても、申請された情報に基づきGビズIDを発行しているものの、網羅的に付番されている番号がない。2023年(令和5年)10月に導入される適格請求書等保存方式(インボイス制度)において、個人事業主に対して申請に基づき登録番号が付番されることから、GビズIDにおいて同番号を属性情報の一つとして活用していく方向で検討を進めていく。また、個人事業主を管理する番号体系のあり方についても関係府省において検討していく。

ウ. 中小企業支援プラットフォームの整備

中小企業向けの情報発信から申請手続までを誘導する「ミラサポplus」と、中小企業に関するデータを見える化・分析するための「データ分析基盤」を主軸とする「中小企業支援プラットフォーム」を整備する。

2018年度(平成30年度)は、中小企業・小規模事業者のデータ利活用に関する検討委員会において、オンライン申請により取得したデータの利活用及び情報発信サイトの在り方に関する検討を行うとともに、デモ版の「ミラサポplus」を構築した。

2020年度(令和2年度)の運用開始に向け、「ミラサポplus」において、行政機関に一度提出した情報を再度提出しなくてよいワンスオンリーを実現するための機能や、個々の事業者の状況・ニーズに応じた適切な支援策を表示するリコメンデーション機能等を実装した。

2020年度(令和2年度)には、「データ分析基盤」において中小企業向け施策の執行状況や実績等の把握につなげていくほか、蓄積された申請事業者等のデータを活用しリコメンデーション機能の拡充を図る。

今後は、更に支援制度検索機能(制度ナビ)や事例検索機能(事例ナビ)を充実・強化し、様々な官民システムとのAPI連携を実現することで、事業者目線での利便性向上を追求していく。

8.4 事業者のバックオフィス業務の効率化のための請求データ標準化(◎内閣官房、総務省、財務省、文部科学省、経済産業省、国土交通省、防衛省)

現状、事業者間の請求等に関連するプロセスのデジタル化が十分でなく、また、システム間でのデータ連携もスムーズに行えていないことが、中小・小規模事業者をはじめとする企業のバックオフィス業務や、個人事業主などの事務処理に負担となっている。

そのため、インボイス制度が導入される2023年(令和5年)10月も見据え、ビジネスプロセス全体のデジタル化によって負担軽減を図る観点から、官民連携のもと請求データ等(電子インボイス)やその送受信の方法に関する標準仕様について合意し、会計システムも含めたシステム間でのシームレスでスムーズなデータ連携を実現するとともに、標準仕様に沿った行政システムの整備や民間の業務ソフト等の普及を支援することにより、中小・小規模事業者も含めた幅広い事業者の負担軽減と社会全体の効率化を促進する必要がある。

内閣官房は、関係省庁及び民間団体等との総合調整を行うとともに、グローバルな経済活動にも対応できる標準仕様となるよう、必要に応じて国際標準団体との交渉を行う。

政府調達システムを整備・運用する機関においては、内閣官房と連携し、システムの共同利用化を検討するとともに、インボイス制度が導入される2023年(令和5年)10月までに請求書・領収書データのシステム連携が可能となるよう対応する。

経済産業省においては、中小・小規模事業者の実態を踏まえ、中小企業共通EDIとの相互接続性の確保のための取組を行うほか、標準化ソフトの導入を促すための環境を整備する。

9 業務におけるデジタル技術の活用

9.1 AI・RPA等のデジタル技術の活用(◎全府省、◎内閣官房、総務省)

近年、デジタル技術の発展が目覚ましいにもかかわらず、業務において十分に活用されていない実態がある。業務改革(BPR)を徹底し、行政サービスの利用者と行政機関間のフロント部分だけでなく、行政機関内のバックオフィスを含めたプロセスの再設計を行うに当たっては、技術の進展に応じて、デジタル技術の活用についても費用対効果を含めて検討することが重要である。

業務のデジタル化により、大量・高速な業務処理の実現や正確性の向上(ヒューマンエラーの削減)が図られ、これまで人の手で行っていた作業を補強、代替することが可能である。その方法としてはいくつか考えられるが、近年では、情報システムの活用に加えて、AIやRPA等の活用といったものが挙げられる。
例えば、RPAを活用することで、数値や定義づけられた項目として構造化されたデータの集計や処理が可能であり、大量かつ反復して行われる業務の処理の高速化等において、効率化・自動化の効果が期待される。こうした手法は、データの入力・転載作業、記入漏れや不備等についての形式的な審査といった業務において効果を発揮することが期待される。

AIについては、テキスト、音声、画像、動画といった非構造化データを大量かつ高速で処理、分析することが可能であり、一般に、画像処理や自然言語処理の分野等で活用されている。利用申請における調整・認定事務やチャットボットなどの自動会話プログラムで活用されている例があり、規則性のない多様なデータを複合的に分析した上で結果を導くことや問合せの自動応答といった業務での活用が期待される。

業務におけるデジタル技術の活用に当たっては、単に業務を効率化するということのみならず、限られた人的資源を戦略的に投資することも同時に考える必要がある。これまで長時間を要していた事務作業等においてデジタル技術を活用することで、職員を事務作業から解放し、国民生活に直接関わる業務分野や政策・企画の立案などの真に人手が必要な業務に割り振ることが可能になる。一方で、デジタル技術を導入する際には、検討のために要する追加の負担が発生するが、こうした負担増を敬遠するのではなく、将来的な人的体制の整備に資するという観点からも、取組を進めることが重要である。

ただし、検討に当たっては、デジタル技術の導入を前提とするのではなく、業務改革(BPR)を前提とした上で、あくまでも業務の手法の一つとして検討を行うことが重要である。RPAの活用に当たっては、プロセスを定型化して処理手順を定義することが必要であるし、AIの活用においては、適切な教師データのインプットや判断プロセスを一定程度定義化しておくことが必要となる。そのため、プロセスを可視化できていなければ、デジタル技術を効果的に活用することができない。

以上を踏まえて、各府省は業務改革(BPR)を徹底した上で、国民・企業等に関わりが深い分野を中心に、AI・RPAなどのデジタル技術の活用により効率化等が見込まれる業務からその導入を推進する。具体的には、審査、調査、問合せ対応などの国民、企業等の利便性に直結する業務、継続・反復的に行われる業務、意思決定や判断に直接関わらない業務(入力・転載作業、形式審査等)、長時間を要している事務作業などから優先的に取り組む。

また、霞が関働き方改革推進チームでは、霞が関における働き方改革の課題について、デジタル技術の活用を含めた改善策の検討を行っている。2018年度(平成30年度)は、チャットと高度な検索システムを中心としたコミュニケーションツールの活用、音声認識ソフトを活用した議事録作成の自動化やチャットボットを用いた問合せ対応、RPAを活用した職員情報の入力手続の省力化等の新技術・ツールによる業務の効率化について、2019年(令和元年)5月に「霞が関働き方改革推進チーム 平成30年度議論の成果」を取りまとめ、業務等で積極的に活用するように提言を行っている。

各府省は、このような取組も参考としつつ、各府省中長期計画において、優先的に取り組むべき業務を選定の上、具体的な進め方を明確化するとともに、必要な体制の整備と計画的な実施に取り組む。

9.2 デジタル・ワークスタイルの実現のための環境の整備

デジタル技術を最大限活用して公務の高い生産性を実現するためには、既存のプロセスにまで踏み込んだ業務改革(BPR)を実施し、行政内部の業務を、エンドツーエンドでデジタルを前提としたものに改革していくとともに、自席や職場に限らずどこでも仕事ができ、また、職員同士のコミュニケーションの向上や新たなアイデアの創発を促進するような環境の整備や意識の醸成が必要である。

また、今般の新型コロナウイルス感染症対応を踏まえると、正常時だけでなく非常時においても適切に行政サービスを提供できるようにするためにも、これらの取組は急務である。

各府省は、以下の事項を踏まえて、各府省中長期計画に、デジタル・ワークスタイルの実現に向けた具体的な取組内容について記載する。

KPI:デジタル・ワークスタイルを実現するための業務環境の整備に関するKPIが盛り込まれている、各府省中長期計画の数

(1)ペーパーレス化の推進(◎全府省、◎内閣官房)

「規制改革実施計画」(令和2年7月17日閣議決定)において、各府省及び独立行政法人は、会計手続、人事手続その他の内部手続について書面・押印・対面の見直しを行うこととされた。これを踏まえ、内閣官房は会計手続、人事手続に関する法令等を所管する関係機関の協力を得て、各府省等に共通して適用される書面・押印・対面手続に関する見直し方針等を示している。

各府省等は当該方針に沿って見直しを行うとともに、内部規程又は慣行により独自に求めている書面・押印・対面手続についても、各府省は自らの裁量により見直しを行うことが可能であるため、その見直しを徹底する。

また、業務上使用する文書等について、各府省は、行政機関相互の文書交換や資料の公開等に当たっては、原則としてデジタルデータを正本として扱い、文書の保有・流通に当たっては、他の法令との整合性に留意しつつ、業務の効率化のため再利用・編集が容易なファイル形式で行うことを基本とするとともに、当該資料のステータス(日付、会議名、担当府省等)について、標題や表紙、ファイル名等に明示する。また、保護されたファイル等である必要がある場合にも、利用・編集が容易なファイル形式と併用することを検討する。

また、単にペーパーレス化するだけでなく、マルチディスプレイ、会議室への大型ディスプレイの配置、Wi-Fi環境の整備、コミュニケーションツールの導入など、更に効率性を向上できる業務環境の実現に取り組んでいく。

(2)テレワークの推進(◎全府省、◎内閣官房、総務省)

テレワークを活用した柔軟な働き方の推進は、非常時における業務継続の観点に加え、育児、介護等のために時間制約がある職員、障害等のために日常生活・社会生活上の制約がある職員の能力発揮にも資するものであり、ワークライフバランスの観点からも重要である。

政府としては、2025年度(令和7年度)までに、テレワークを活用することで、「新しい日常」に対応し、いかなる環境下においても必要な公務サービスを提供できる体制を整備する。

各府省等においては、本実行計画を踏まえて今年度改訂される「国家公務員テレワーク・ロードマップ」に基づき、本省のみならず地方支分部局等も対象に具体的な目標を設定したテレワーク推進計画を策定し、それぞれの取組を推進するとともに、テレワーク・デイズ、テレワーク月間といった機会にあわせて積極的に取り組む。

また、非常時においても適切に行政サービスを提供できるようにするため、各府省内の会議はもとより、各府省間の会議等においても、リモートで実施することが可能となる環境を整備した。今後は、行政の情報システム及びネットワークのうち、特に、基盤となるネットワーク環境について、クラウドサービス利用の本格化を踏まえ、行政全体の最適化や利便性とセキュリティの両立を前提に検討を進め、その整理・再構築に向けた取組を進める。

各府省は、これらの取組を踏まえ、LAN更改等のタイミングも見据えながら、情報セキュリティ対策に留意しつつ、各組織のミッションに見合ったデジタル・ワークスタイルを実現する環境を整備することとし、各府省中長期計画に盛り込む。

KPI:テレワークを活用することで、「新しい日常」に対応し、いかなる環境下においても必要な公務サービスを提供できる体制の整備状況
KPI:各府省においてデジタル・ワークスタイルを実現するための業務環境の整備に関するKPIを設定し、各府省中長期計画に盛り込む

(3)その他の取組(◎全府省、◎内閣官房、総務省)

総務省では、一部部局において、①ペーパーレス化を進めた上で、②円滑なコミュニケーションに役立つようレイアウト変更が容易なデスクを導入し、③無線LANを活用することで勤務スタイルの流動性、可動性を高め、「働き方」の見直しを行う「オフィス改革」に取り組んでおり、他の一部府省もこれを参考とした取組を行ってきた。また、新型コロナウイルス感染症対応として、多くの職員がテレワークを行ったことにより明らかとなった課題やそれに対する工夫事例を各府省と共有するとともに、このような課題を解消し、非常時においても業務の継続が可能となるようなリモートでの働き方について検討を進めている。総務省は、先行事例の展開やノウハウの提供によって、検討を行う各府省への協力を実施する。

政府が取り組んでいる政府関係機関等の地方移転の一環として、文化庁をはじめとする複数の組織において、全面的又は一部の地方移転を進めているが、物理的な距離が生じたために、関係府省・関係機関や国会等との調整に当たって業務遂行に支障が生じ、効率が低下する等によって行政サービスの質等に影響がないように留意しなければならない。そのため、上記の取組を行うに当たり、政府関係機関等の一部が地方に移転した場合であっても、移転前と遜色なく対応業務を遂行できるような環境の整備に留意する。

9.3 電子的な公文書管理等(◎内閣府、◎総務省、全府省)

「公文書管理の適正の確保のための取組について」(平成30年7月20日行政文書の管理の在り方等に関する閣僚会議決定)に基づき、2019年(平成31年)3月に、行政文書の作成から保存、移管・廃棄までを一貫して電子的に行う電子的な文書管理の在り方について、「行政文書の電子的管理についての基本的な方針」(平成31年3月25日内閣総理大臣決定。以下「基本的な方針」という。)を内閣府において策定した。また、電子決裁への移行加速化に関して、「電子決裁移行加速化方針」(平成30年7月20日デジタル・ガバメント閣僚会議決定。以下「加速化方針」という。)を策定した。

行政文書の電子的管理について、各府省において、基本的な方針に基づき取組が進められているところであり、今後、内閣府及び関係機関において、具体的な枠組みについての検討、構築などの必要な取組を着実に進める。

また、電子決裁への移行加速化について、各府省は、デジタル手続法等を踏まえ、行政手続のオンライン化、添付書類の省略を含むプロセス全体の見直しを行いつつ、加速化方針に基づいた電子決裁への移行加速化に向けた取組を各府省中長期計画に記載し、推進する。総務省は、各府省中長期計画について必要な調整を行う中で、当該計画に記載された電子決裁に係る取組について、定期的にフォローアップを行う。

KPI:加速化方針に基づいた電子決裁への移行加速化に向けた取組の各府省中長期計画への反映状況

10 デジタルデバイド対策(◎全府省)

デジタル化は、国民生活の利便性が向上し、行政機関や民間事業者等の効率化に資する、データの資源化と最大活用、安全・安心、ユニバーサルデザインを考慮した設計等を前提とした人に優しいデジタル化である必要がある。

社会全体のデジタル化を進めるに当たり、デジタル技術の利活用により、年齢、障害の有無、性別、国籍、経済的な理由等にかかわらず、誰も取り残さない形で、全ての国民にデジタル化の恩恵を広くいきわたらせていく環境の整備に取り組むことが必要である。そのためには、デジタル機器に不慣れな方でも容易に操作できるUI(ユーザーインタフェース)の設計や、外国人利用者向けの申請画面等の多言語化など、利用者目線で、かつ、利用者に優しい行政サービスを実現することが重要である。

このため、デジタル手続法では、国の行政機関等に対し、行政のデジタル化に当たっては、デジタルデバイドの是正を図るために必要な施策を講ずる義務を課している。
また、技術の進展により、個々人がコンピュータを使いこなす能力を身につけなくても、テレビ電話での相談や、音声認識による対話形式での入力等によりデジタルデバイドが解消できる可能性がある。このようなデジタルサポートという発想への転換を図っていくことも重要である。

デジタルデバイド対策に関する取組としては、例えば、総務省において、オンラインによる行政手続・サービスの利用方法について、高齢者等が身近な場所で相談や学習を行えるようにする「デジタル活用支援員」について、2020年度(令和2年度)中に検討及び実証事業を行い、2020年度(令和2年度)中に開始する。あわせて、NPOや地域おこし協力隊など地域の様々な主体と連携した地方公共団体による地域住民に対するきめ細かなデジタル活用支援についても、支援員の枠組みを活用しつつ、促進する。また、障害者等が行う行政手続については、更なる負担軽減を図るため、内閣官房、内閣府及び厚生労働省は、マイナポータルを通じたオンライン申請手続の拡充に向けて検討を行い、2021年度(令和3年度)以降、順次対応する。民間手続においても、障害者の負担軽減や均等な機会の提供のため、オンラインによる施設等の障害者割引入場券の予約・購入等への対応について、民間事業者等に対して要請を行う。

加えて、行政組織内部でのデジタルデバイド対策に取り組むことも重要である。例えば、行政機関における障害者雇用の推進においては、画面読み上げソフト、音声認識ソフトなどのデジタル技術の活用を検討するなど、必要な設備の整備等に取り組むことが重要である。

以上を踏まえ、各府省は、行政のデジタル化に当たっては、全ての国民にデジタル化の恩恵を届けることができるように、デジタルデバイド対策に取り組む。

11 広報等及び国際展開

(1)デジタル・ガバメント推進のためのサービス利用者への広報(◎内閣官房、◎総務省、◎全府省)

デジタル・ガバメントを実現するに当たっては、デジタルの活用により、安全・安心を前提としながら、国民生活の利便性が向上し多様な幸せの実現につながることを、利用者に対して分かりやすい方法で示していく必要がある。そのために、どのような行政サービスが存在するのか、当該行政サービスの利用方法等について広報する必要があり、特に、災害などの緊急事態においては、迅速かつ適確な情報提供が求められる。このような広報や情報提供に当たっては、専門的・技術的な用語に頼らず、丁寧かつ分かりやすく行うことが重要である。

また、多様な環境にある全ての国民にデジタル社会に参画していただくために、その意義と効用を伝え、その成果が国民に喜ばれるよう、デジタル社会がもたらす価値について丁寧に説明するとともに、政策に国民の意見が反映されるよう不断の検討を行っていく必要がある。

これまでも、Webサイトや講演等を通じてデジタル・ガバメントについて広報等を行ってきたが、より一層認知してもらうためには、スマートフォンなどのモバイル端末からの行政サービスへのアクセス機会の提供、SNS、動画等を活用した的確かつ分かりやすい情報提供、デジタル技術によるWebサイトでの利用者動向の分析等により、個々のニーズに即した情報を行政から利用者へ迅速かつ効果的に情報提供するような取組を強化する必要がある。

内閣官房及び総務省は、こうした取組を率先して推進し、政策情報、情報システムの整備に係る投資状況等のデジタルデータを、積極的に利用者に提供するとともに、利用者の声を聴く機会を設ける。また、こうした取組から得られた経験を、Webサイトガイドラインなどのガイドラインに記載し、公開する。

各府省は、当該ガイドライン等を参考にしつつ、所管の政策に係る情報の広報や情報提供に積極的に取り組む。

(2)戦略的な国際対応(◎内閣官房、◎総務省、◎経済産業省、関係府省)

2013年(平成25年)の政府CIOの設置以降実績を挙げつつある、府省の壁を越えた取組や地方公共団体・民間とも連携した取組等から得られた知見及び成果を広く発信し、国際社会にその効果分析等を提供することは、類似の課題に取り組む諸外国のデジタル・トランスフォーメーションを促進し、持続可能な社会の実現という国際目標にも貢献するものである。

これまで、国際会議などの場において、各国への我が国の取組の紹介や相互の意見交換等を通じ、行政サービスのデジタル化について、我が国の国際的なプレゼンス向上に貢献してきた。また、国際会議への参加後は、諸外国の状況をデジタル・ガバメント分科会等の場を通じて各府省にフィードバックし、業務改革(BPR)の取組等を促すことなどにより、我が国のデジタル・ガバメントの実現に向けた取組を推進してきた。

内閣官房、総務省及び経済産業省をはじめとした各府省は、国際社会におけるデジタル・トランスフォーメーション及び持続可能な社会の実現に寄与するため、国際機関や諸外国の公的専門機関等との連携を強化しながら、国際会議等の機会において、我が国の取組による、利用者の利便性向上、災害時の業務の継続性、データ標準化等の具体的な効果の発信を行うとともに、国際比較に資する効果測定や分析のフレームワークの提案等を行うことを通じて、行政サービスデジタル化のリーダー国としての地位を確立することを目指す。

12 地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進

地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進には、「サービス設計12箇条」に基づくサービスデザイン思考の要素が取りまとめられた標準ガイドライン及び関連文書を参考に、サービスのフロント部分だけでなく、バックオフィスも含め、エンドツーエンドでデジタル化・業務改革(BPR)の取組を徹底することが必要である。その結果、住民の利便性向上及び行政の効率化を図るとともに、地方公共団体が「人材」と「財源」を自ら生み出し、限られた資源を地域の諸課題の解決に対し、効率的に活用していくことが期待される。

国は、上記の観点を踏まえ、地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進のため、以下に掲げる事項について取り組む。

12.1 地方公共団体の行政手続のオンライン化の推進(◎内閣官房、◎総務省、◎内閣府、関係省庁)

地方公共団体は、住民に身近な行政サービスを提供する役割を担っており、地方公共団体の行政手続のオンライン化は、住民の利便性向上という観点から優先して行う必要がある。

デジタル手続法により、デジタルファースト原則などデジタル3原則の下、地方公共団体の行政手続のオンライン化が努力義務となったことを踏まえ、内閣官房、総務省及び内閣府は、地方公共団体の行政手続のオンライン化を支援する。

なお、地方公共団体が行政手続のオンライン化を進めるに当たっては、法令に基づく行政手続だけでなく、条例又は規則に基づく行政手続も含めて対象とすることとし、本計画6.3(1)を参考にしてバックオフィスを含めたデジタル化や窓口の見直し(対面手続において紙に書くことを求めない、いわゆる「書かない窓口」への変更等)を含めた業務改革(BPR)の実施を前提に、本計画6.2.1(1)ア及びイを参考にして本人確認のオンライン化や手数料納付のオンライン化、本計画6.2.2に記載されている添付書類の省略について同時に推進する。

ア. 汎用的電子申請システムの基盤整備

手続の受け手である地方公共団体は、これまでも行政手続のオンライン化の取組を進めてきたものの、2020年(令和2年)4月時点で、手続のオンライン利用可能な情報システムが整備されていない団体が192団体となっている。マイナポータルの「ぴったりサービス」は、地方公共団体等に対する手続について汎用的に活用できることから、内閣官房、総務省及び内閣府は、原則として、全ての都道府県及び市区町村について、マイナポータルの「ぴったりサービス」を活用した手続のオンライン化を進めることができるよう取り組む。

イ. 優先的に取り組むべき手続のオンライン化の推進

内閣官房、総務省及び内閣府は、次に掲げる手続(具体的な手続については、別紙4参照)について、地方公共団体が優先的に、かつ、早急に進めることができるよう、関係府省と連携しガイドラインの作成等により支援する。

  • ①処理件数が多く住民等の利便性の向上や業務の効率化効果が高いと考えられる手続(内閣官房が実施する「行政手続等の棚卸調査」及び総務省が実施する「地方公共団体の行政手続等に係るオンライン利用状況の調査」に基づき、地方公共団体に対する行政手続のうち住民等からの申請の総件数が多いものであり、添付書類等を含め申請等の全てをオンラインで完結することができるもの(添付書類の入手のために請求するものを除く。))
  • ②住民のライフイベントに際し、多数存在する手続をワンストップで行うために必要と考えられる手続
    デジタル化による利便性の向上を国民が早期に享受できるよう、2022年度(令和4年度)末を目指して、原則、全地方公共団体で、特に国民の利便性向上に資する手続について、マイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続を可能にする。
    このため、マイナポータルのUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の抜本改善に加え、全地方公共団体において、マイナンバーカードを用いて子育て・介護等のオンライン手続が可能となるよう、地方公共団体のシステム改修等の支援を行う。
ウ. 様々な手続のオンライン化の推進

内閣官房、総務省及び内閣府は、上記イに掲げる以外の様々な分野の手続について、地方公共団体がマイナポータルの「ぴったりサービス」を活用してオンライン化に取り組むことができるよう、支援する。

KPI:原則として全ての市町村で行政手続のオンライン化のための情報基盤の整備
KPI:上記イ①に掲げる手続のオンライン利用率
KPI:上記イ②に掲げる手続のマイナポータル利用の人口カバー率

12.2 地方公共団体における情報システム等の共同利用の推進

地方公共団体のデジタル・ガバメントの推進に当たっては、単なる手続オンライン化にとどまらず、行政サービスに係る受付・審査・決裁・書類の保存業務といったバックオフィスを含む一連の業務を、エンドツーエンドで、デジタルで処理をすることを可能とするものでなければならない。

これにより、業務を自動化して、職員の事務作業を軽減し、捻出した時間・人材・財源を、国民に寄り添う良質なサービスの提供に充てることが可能となる。

現段階においても、デジタル技術を積極的に活用して先進的な取組を行っている地方公共団体があるものの、デジタル化の取組が進んでいない団体も数多く存在する。このような状況の中で、我が国の地方公共団体全体のデジタル・ガバメント構築を進めるためには、地方公共団体のデジタル・ガバメントを支える情報システム等を個別に整備することは非効率であることから、今後は、地方公共団体における情報システム等の共同利用を推進していくべきである。

(1)地方公共団体における業務プロセス・情報システムの標準化の推進(◎内閣官房、◎総務省、内閣府、文部科学省、厚生労働省、関係省庁)

地方公共団体における情報システム等の共同利用、手続の簡素化、迅速化、行政の効率化等を推進するため、地方公共団体の業務プロセス・情報システムの標準化に取り組む。

具体的には、内閣府、総務省、文部科学省及び厚生労働省は、2020年度(令和2年度)に、部内の検討体制を整備の上、市町村が情報システムを構築している地域情報プラットフォーム標準仕様又は中間標準レイアウト仕様で示されている業務(児童手当(内閣府)、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民税及び軽自動車税(総務省)、就学(文部科学省)、国民健康保険、国民年金、障害者福祉、後期高齢者医療、介護保険、生活保護、健康管理及び児童扶養手当(厚生労働省)並びに子ども・子育て支援(内閣府、厚生労働省))について、行政サービスの利用者の利便性向上並びに行政運営の簡素化及び効率化に立ち返った業務改革(BPR)の徹底を前提に業務プロセス・情報システムの標準化を進める。各府省は以下の事項に取り組み、住民記録、地方税、福祉など、地方公共団体の主要な17業務を処理するシステム(基幹系システム)の標準仕様を、デジタル庁が策定する基本的な方針の下、関係府省において作成する。

これを通じ、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けた検討を踏まえ、各事業者が標準仕様に準拠して開発したシステムを地方公共団体が利用することを目指す。このため、地方公共団体の情報システムの標準化・共通化を実効的に推進するための法律案を、2021年(令和3年)通常国会に提出する。その上で、国が財源面(移行経費等)を含め主導的な支援を行う。その際には、「(仮称)Gov-Cloud」の利用に応じた地方公共団体の負担の在り方について合わせて検討する。また、目標時期を2025年度(令和7年度)とし、それに向け地方公共団体が対応に向け準備を始められる環境をつくる。

その際、17業務の標準化並びに共通化について、地方公共団体が処理する事務が適切かつ効率的に行われるように、それぞれの事務ごとに詳細な検討を深めた上で、デジタル庁が整備方針や標準化法の基本方針の下に全体を調整しつつ推進する。

なお、取組においては、多様な地方公共団体の実情や進捗をきめ細かく把握し、丁寧に意見を聴いて進めるとともに、地方公共団体にわかりやすく目標・取組・スケジュールなどの段取りを示し、適時・適切に調整しつつ、住民サービスの安定・向上と、地方公共団体業務の円滑化・効率化を旨として、推進する。

  • ①住民記録(総務省)
    住民記録システムについては、2020年9月に標準仕様書(第1.0版)を取りまとめたところであるが、他の業務の標準化の状況等を踏まえ、必要に応じて標準仕様書(第1.0版)を改定する。
  • ②地方税(固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税)、選挙人名簿管理(総務省)
    固定資産税、個人住民税等の基幹税務システムについては、「地方自治体業務プロセス・システム標準化等に関する関係府省庁連絡会議」の方針を踏まえ、2021年(令和3年)夏までに標準仕様書を作成する。
    選挙人名簿管理に係るシステムについては、2022年(令和4年)夏までに標準仕様書を作成する。
  • ③社会保障(厚生労働省)
    国民健康保険に係る業務支援システムは、標準システムの導入意義や効果を広く周知するとともに、導入地方公共団体を広げるための機能改善を図るほか、公開されている設計書等について記載の粒度や活用実績等を踏まえ、2022年(令和4年)夏までに標準仕様書の見直しを行う。
    介護保険、障害者福祉に係る業務支援システムは、2021年(令和3年)夏までに標準仕様書を作成する。
    児童扶養手当、生活保護、後期高齢者医療、国民年金、健康管理に係る業務支援システムについても、2022年(令和4年)夏までに標準仕様書を作成する。
  • ④教育(文部科学省)
    就学に係る学齢簿作成、就学援助認定等のシステムは、2021年(令和3年)夏までに標準仕様書を作成する。
  • ⑤児童手当(内閣府)、子ども・子育て支援(内閣府・厚生労働省)
    児童手当、子ども・子育て支援に係る業務支援システムについては、2022年(令和4年)夏までに標準仕様書を作成する。

内閣官房は、内閣府及び総務省の協力を得て、関係府省の検討の支援や府省横断的な事項の処理を行う。
内閣官房及び関係府省は連絡会議を通じて、地方公共団体の業務プロセス・情報システムの標準化に関する政府全体の方針調整及び進捗管理を行う。
内閣官房及び関係府省は、それぞれの事務の業務プロセス・情報システム標準化の検討状況について地方公共団体への適時適切な情報提供を行う。
標準化・クラウド化の効果を踏まえ、地方公共団体の情報システムの運用経費等については、標準準拠システムへの移行完了予定後の2026 年度(令和8年度)までに2018 年度(平成30 年度)比で少なくとも3割の削減を目指すこととする。また、国の削減目標は2025 年度(令和7年度)までに2020 年度(令和2年度)比で3割削減であることを踏まえ、削減目標の更なる上積みを目指す。

KPI:対象業務に対して、実際に標準仕様が作成された業務の割合
KPI:標準仕様が作成された業務における当該標準仕様が利用された情報システムを利用する地方公共団体の割合
KPI:地方公共団体の情報システムの運用経費等(2026年度(令和8年度)に2018年度(平成30年度)比で少なくとも3割削減。更なる削減目標の上積みを目指す)

(2)地方公共団体におけるデジタル・トランスフォーメーションの推進(◎総務省)

情報システムの標準化によって、手続の簡素化、迅速化、行政の効率化などの成果を得るためには、各地方公共団体において、標準化されたシステムを前提とした業務プロセスの見直しや関連業務も含めたシステム最適化、手続のオンライン化などに、全庁的な推進体制を確立して計画的に取り組むことが必要である。総務省は、各地方公共団体における取組の指針と国による支援策及び具体的なKPIを内容とする「自治体DX推進計画」(2020年(令和2年)12月)に基づき各種取組を進める。

KPI:「自治体DX推進計画」に基づく、地方公共団体のデジタル化の取組状況

(3)地方公共団体における地域情報プラットフォーム準拠製品の導入及び中間標準レイアウトの利用の推進(◎総務省)

地方公共団体において地域情報プラットフォーム標準仕様準拠製品を導入することで、ベンダーロックインの解消が可能となり、業務ごとの最適な製品の選定、費用削減及び業務の利便性向上に寄与する。同様に地方公共団体における業務システム更改時に中間標準レイアウト仕様を利用することで、ベンダーロックインの解消が可能となり、将来的なデータ移行費の削減に寄与する。
総務省は、両仕様について各種セミナー等を通じて地方公共団体に対して周知広報し、導入率・利用率の向上を図る。

KPI:地方公共団体における準拠製品の導入率(地域情報プラットフォーム)
KPI:地方公共団体における利用率(中間標準レイアウト)

(4)地方公共団体における適正な情報セキュリティ対策(◎総務省)

地方公共団体においては、2015年(平成27年)以降に実施された、いわゆる「三層の対策」により情報セキュリティ対策の抜本的強化が図られたが、行政手続のオンライン化、テレワーク、クラウド化など新たな時代の要請を踏まえ、業務の利便性・効率性の向上を目的とした見直しを行い、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を改定する。
今後、地方公共団体が、新たなガイドラインに基づき、セキュリティ対策を推進するよう働きかける。また、政府の情報セキュリティ対策の状況等を踏まえ、必要な抜本的見直しを行う。

KPI:地方公共団体における新たな情報セキュリティ対策の検討

12.3 地方公共団体におけるAI・RPA等による業務効率化の推進(◎総務省、◎内閣官房)

本格的な人口減少社会となる2040年頃を見据え、希少化する人的資源を本来注力するべき業務に振り向けるため、地方公共団体の業務の在り方そのものを刷新することが必要である。AIやRPAなどのデジタル技術は地方公共団体の業務を改善する有力なツールであり、限られた経営資源の中で持続可能な行政サービスを提供し続けていくために今後積極的に活用すべきものである。

総務省は、2019年度(令和元年度)から開始した「自治体行政スマートプロジェクト」において、地方公共団体の基幹的な業務(住民基本台帳・税務等)について、人口規模ごとに複数の地方公共団体による検討グループを組み、そのグループ内で、業務プロセスの団体間比較を実施することで、AIやRPAなどのデジタル技術を活用した業務プロセスの標準モデルを構築する。

また、総務省は、地方公共団体に対するAIやRPAなどの活用の先進事例について、横展開を推進する。

KPI:AI、RPAなどの革新的ビッグデータ処理技術を活用する地域数

内閣官房は、総務省と協力して、AIの活用を含めた新たな情報システム等を導入するに当たっては、少数の地方公共団体がそれぞれの分野でバラバラに開発するのではなく、当初から多くの地方公共団体を巻き込み、地方公共団体が共同利用する前提で開発することを促すため、自治体ピッチ~Pitch to Local Governments~(設計段階から、地方公共団体の職員と開発者等が利用者視点に立ったサービスデザイン思考の下、対話を重ねながら、地方公共団体が共同利用することを前提として開発した情報システムやアプリケーション等を、開発者等が複数の地方公共団体に対して提案する場)を2021年度(令和3年度)においても開催する。

KPI:自治体ピッチにおける地方公共団体からの質問・コメント数

12.4 地方公共団体におけるオープンデータの推進(◎内閣官房、関係府省)

官民データ活用推進基本法では、地方公共団体は、国と同様に、保有するデータを国民が容易に利用できるよう必要な措置を講ずるものとされている。地方公共団体は、同法の趣旨、オープンデータ基本指針及び本計画を踏まえ、行政保有データを原則オープン化し、オープンデータを活用した地方発ベンチャーの創出の促進、地域の課題の解決を図る。その際、地方公共団体向けのガイドライン・手引書、「推奨データセット」等も参考にしながら、利用者ニーズに即したオープンデータ化を積極的に進めるとともに、オープンデータ・バイ・デザインの考え方に基づく情報システム(当該情報システムに係る行政手続を含む。)の設計や整備を含めたオープンデータ及び行政内部でのデータ活用を推進することが望ましい。また、各府省は自府省に関連する分野のオープンデータの取組について、地方公共団体に対しても必要な働きかけや支援等を行い、積極的に推進を図っていく。加えて、民間事業者等によるアプリ開発や行政機関自身によるデータ分析、政策立案等の利活用の促進を図るため、公開するデータの量のみならず、データの質の向上を図ることが重要である。

KPI:地方公共団体のオープンデータの質の評価(2021年度(令和3年度)末までに評価指標を設定)

12.5 地方公共団体のガバナンス強化と人材確保・育成(◎総務省、内閣官房)

地方公共団体の中には、ガバナンスの強化のため、政府CIOと同様に、自治体CIOを設置する団体も存在し、2019年(平成31年)4月1日時点で1,528団体が自治体CIOを設置している。

地方公共団体の内部のガバナンスの在り方については、各団体の組織運営に関わることであり、団体によって様々な方法が考えられる。国は、地方公共団体からの相談に応じて、政府CIOによるガバナンスについて情報提供するなど、必要な技術的助言を行う。

また、総務省及び今後設置されるデジタル庁は連携して、地方公共団体のデジタル・ガバメントの推進を支えるデジタル人材の確保・育成のための施策を講ずる。
具体的には、総務省及び今後設置されるデジタル庁は、都道府県と連携して、市町村において複数市町村での兼務を含め、デジタル人材のCIO補佐官等としての任用等が推進されるように支援の仕組みを構築する。あわせて、地方公共団体職員との対話や研修、人事交流等を通じて地方公共団体のデジタル人材育成に寄与する。

また、地方公共団体のデジタル・ガバメントを推進するためには、それを支えるセキュリティ・IT人材の確保・育成が重要である。

総務省は、地方公共団体のデジタル技術の活用等を支援するため、「地域情報化アドバイザー」の活用促進等を図るとともに、地方公共団体職員向け研修等の全国実施の推進及び国立研究開発法人情報通信研究機構が行う実践的サイバー防御演習に協力する。

KPI: 地域情報化アドバイザーの派遣団体数

12.6 地方公共団体のデジタル・ガバメントの構築に向けた地方公共団体の官民データ活用推進計画策定の推進(◎内閣官房、総務省、関係府省)

官民データ活用推進基本法においては、都道府県には官民データ活用の推進に関する施策の基本的な計画についての策定義務が、市町村(特別区を含む。)には同計画の策定の努力義務が定められている。

これまで内閣官房は、地方公共団体の官民データ活用推進計画の策定のための手引を公表し、当該手引等を踏まえ、地方公共団体は計画策定に取り組み、2020年(令和2年)8月時点で、41都道府県、151市町村が計画を策定している。

地方公共団体のデジタル・ガバメントの構築を計画的に進めていくため、地方公共団体の官民データ活用推進計画を地方公共団体のデジタル・ガバメント構築のための総合的な戦略と位置付けることとしている。また、地方公共団体の業務改革(BPR)を前提として、国は、デジタル化の状況の見える化を進め、官民データ活用推進計画に位置付けられた施策に対して積極的に支援すること等により、各地方公共団体の取組を促し、2020年度(令和2年度)末までに、全ての都道府県において計画を策定することを目指す。

内閣官房は、総務省、内閣府及び関係府省と協力して、市町村の官民データ活用度を把握することを促すための基礎的なデータを政府CIOポータルに公表する。

KPI:都道府県における官民データ活用推進計画の策定状況(2020年度(令和2年度)末までに全ての都道府県での計画策定を達成)

13 民間手続デジタル化の推進のフォローアップ(◎内閣官房、関係府省)

社会全体のデジタル化を実現するためには、行政手続にとどまらず、民間手続のオンライン化を進めることが重要である。そのため、デジタル手続法においては、国に対して、民間事業者による情報提供が適正になされるよう指導することや、オンライン取引における注意点の一般消費者への啓発活動の実施といった、民間手続におけるデジタル化の促進のための環境整備を義務付けるとともに、デジタル技術の安全かつ適正な利用に支障がないと認める場合には、法令に基づく民間手続をデジタルで行うことが可能となるよう法制上の措置を講ずることを義務付けている。

また、規制改革推進会議においては、民間手続におけるデジタル化が進むよう、押印についての考え方の整理や、電子署名の活用推進、書面や押印を義務付けている規制の見直しについて議論を行っているところである。

各府省は、デジタル手続法に基づき、法令に基づく民間手続のデジタル化に向けた検討状況を、各府省中長期計画の改定の際に記載する。
内閣官房は、民間手続のデジタル化の取組が政府全体で推進されるように、その進捗状況を確認し、フォローアップを行う。

14 フォローアップと見直し

デジタル・ガバメントの実現に向けた取組を政府全体として着実に進めていくため、行政手続等の棚卸を継続的に実施し、本計画及び各府省中長期計画の両者を一体として取組を進める。

取組に当たっては、一元的なプロジェクト管理において、年間を通じて常に進捗状況を把握するほか、政府全体で進めるべき施策や重要な施策については、政府CIOが直接レビューを行うことで、内容の適切な見直し、段階的な拡充及び詳細化を行う。

各府省の施策については、各府省CIO及び副CIOのリーダーシップの下、政府CIO補佐官(各府省担当)の助言を得つつ、PMOにおいて進捗状況の把握を実施し、PJMOと密接に連携しながら内容の適切な見直し、段階的な拡充及び詳細化を行う。

こうしたフォローアップの状況やデジタル庁の設置を踏まえ、本計画について、その在り方を含めて見直しを検討するとともに、必要に応じて随時、改定等を行う。また、内閣官房及び総務省は、各府省中長期計画の取組状況について取りまとめ、CIO連絡会議に報告する。

なお、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(令和2年7月17日閣議決定)に基づく施策のうち、本計画及び各府省中長期計画に記載されているものについては、上記に定めるところによりフォローアップ及び見直しを行う。

改定履歴

2018年(平成30年)1月16日 初版 eガバメント閣僚会議決定
2018年(平成30年)7月20日 改定 デジタル・ガバメント閣僚会議決定
2019年(令和元年)12月20日 改定 閣議決定
2020年(令和2年)12月25日 改定 閣議決定

参照

https://cio.go.jp/digi-gov-actionplan

 

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