ビジネス全般

スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針の必要性と構成

1 本指針の必要性

大企業とスタートアップの連携により、チャレンジ精神のある人材の育成や活用を図り、我が国の競争力を更に向上させることが重要である。他方、大企業とスタートアップが連携するに当たり、スタートアップからは、大企業と共同研究すると、特許権が大企業に独占されたり、周辺の特許を大企業に囲い込まれたりする、といった偏った契約実態を指摘する声がある。

このような現状を踏まえ、未来投資会議(令和2年4月3日開催)において、政府としてオープンイノベーションの促進及び公正かつ自由な競争環境の確保を目指す方針が掲げられ、企業連携によるイノベーションを成功させるため、スタートアップが大企業から一方的な契約上の取決めを求められたりしないよう、問題事例とその具体的改善の方向や独占禁止法の考え方を整理したガイドラインを策定するとされ、成長戦略実行計画(令和2年7月17日閣議決定)において、ガイドラインについて、公正取引委員会と経済産業省連名で年内を目途に案を作成し、意見公募手続を開始するとされた。

また、公正取引委員会は、「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」(令和2年11月27日)において、スタートアップと事業連携を目的とする事業者(以下「連携事業者」という。)との間の秘密保持契約(以下「NDA」という。)、技術検証(以下「PoC」という。)契約、共同研究契約及びライセンス契約並びに出資者との出資契約に係る問題事例等を公表した。

このような経緯を経て、公正取引委員会及び経済産業省は、令和3年3月29日、「スタートアップとの事業連携に関する指針」を策定した。

その後、出資に係る取引慣行の重要性に鑑み、成長戦略実行計画(令和3年6月18日閣議決定)において、スタートアップと出資者との契約の適正化に向けて、新たなガイドラインを策定することとされた。これを受け、同指針を改正し、今般、「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」(以下「本指針」という。)を策定した。

本指針は、事業連携や出資によるイノベーションを成功させるため、スタートアップと連携事業者や出資者との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを目的としている。特に連携事業者とのNDA、PoC契約、共同研究契約及びライセンス契約並びに出資者との出資契約に着目し、これらの契約において生じる問題事例とその事例に対する独占禁止法・競争政策上の考え方を整理するとともに、それらの具体的改善の方向として、問題の背景及び解決の方向性を示した。

本指針が広く普及することで、契約や交渉に係るスキルが向上するのみならず、スタートアップと連携事業者・出資者の双方において、公平で継続的な関係を基礎としたオープンイノベーションが促進されることが期待される。

2 本指針の構成

本指針においては、前記1で本指針の必要性を示し、第2において、NDA、PoC契約、共同研究契約及びライセンス契約の4つの契約段階ごとに、「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」に基づく事例及び独占禁止法上の考え方を示すとともに、各契約段階における取引上の課題と解決方針を「スタートアップと連携事業者の連携を通じ、知財等から生み出される事業価値の総和を最大化すること」等のオープンイノベーション促進の基本的な考え方に基づき示している。また、第3において、出資者との出資契約について、事例、独占禁止法・競争政策上の考え方及び取引上の課題と解決方針を示している。さらに、第4において、スタートアップと連携事業者との事業連携及び出資者との出資契約に当たって参考となる各種ガイドライン等を示している。

なお、第2及び第3において、独占禁止法・競争政策上の考え方及び事例については公正取引委員会が担当し、各契約の概要並びに問題の背景及び解決の方向性についてはオープンイノベーションを促進する観点から経済産業省が担当している。

参照

「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針(案)」に対する意見募集について

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