エビデンス全般

日本でのpreference studyの事例(民間企業所属の著者あり)

民間企業(製薬企業やコンサルティング会社)に所属する者が著者に入っている、patient preference study について、日本人集団を対象に実施されたものをピックアップしました。

PubMedで検索して見つかったものを3つ取り上げていますが、徐々に更新して内容を充実させる予定です。

Patient Preference for Treatment Mode of Biologics in Rheumatoid Arthritis: A 2020 Web-based Survey in Japan (田辺三菱製薬&ヤンセンファーマ)

Rheumatol Ther. 2021 Sep;8(3):1095-1111. doi: 10.1007/s40744-021-00325-9. Epub 2021 Jun 5. [https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34089509/]

この研究は、日本の関節リウマチ(RA)患者における生物学的製剤(bDMARDs)の投与方法に対する患者の好みを調査したものです。具体的には、病院での点滴投与(infusion)病院での皮下注射(in-hospital injection)自己注射(self-injection)の3つの投与方法について、患者の背景因子との関連性を明らかにすることを目的としています。

研究は、インターネット調査会社を通じて募集された、bDMARDs治療を受けている20歳以上のRA患者を対象としたウェブベースのアンケート調査として実施されました。調査項目には、患者の基本的な情報、疾患の特徴、現在の治療状況、希望する治療方法、その理由などが含まれていました。得られたデータに対して、多項ロジスティック回帰分析などの統計解析が行われ、好ましい投与方法に関連する因子が検討されました。

主な結果として、回答した400名の患者のうち、自己注射を希望する患者が最も多く(66.8%)、次いで病院での皮下注射(18.0%)、点滴(15.3%)の順であることがわかりました。点滴や病院での皮下注射の好みは、現在の病院への通院頻度が高いこと、そして自己注射に対する不安やその他のハードルと有意に関連していました。一方、自己注射の好みは、投与場所や時間の柔軟性と有意に関連していました。また、年齢が若いほど自己注射を好む傾向も見られました。多くの患者は現在の治療法に特に不満はないと回答しましたが、90%以上の患者が、医療従事者の推奨、加齢、RA症状の変化などがあれば、将来的に投与方法を変更したいと回答しました。

結論として、RA患者におけるbDMARDsの投与方法の好みは、年齢、病院への通院頻度、投与の柔軟性、自己注射への不安などの患者背景因子と有意に関連していることが示されました。RA治療における意思決定においては、患者の背景の変化と好みを考慮した Shared decision-making (SDM) の重要性が改めて示唆されました。

Patient preference for biologic treatments of psoriasis in Japan (AbbVie)

J Dermatol. 2019 Jun;46(6):466-477. doi: 10.1111/1346-8138.14870. Epub 2019 Apr 15. [https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30985030/]

この研究は、日本の尋常性乾癬患者における生物学的製剤の治療に対する患者の好みを明らかにするために、離散選択実験(Discrete Choice Experiment; DCE)という手法を用いたものです。DCEは、製品やサービスの特性(属性)の異なる複数の仮想的な選択肢を提示し、回答者がどの選択肢を最も好むかを選ぶことで、各属性の重要度や患者の選好を定量的に評価する方法です。

研究では、尋常性乾癬の治療に用いられる生物学的製剤について、効果発現の早さ、長期効果、薬剤中止後の効果持続性、投与の簡便性、医療費の自己負担、重篤な感染症のリスクの6つの重要な属性が設定されました。これらの属性にはそれぞれ複数の水準が設けられ、それらを組み合わせた16の仮想的な治療選択シナリオが作成されました。日本のインターネットパネルに登録されている乾癬患者395名がこの調査に参加し、各シナリオで提示された2つの治療オプションのうち、どちらを好むかを選択しました。

主な結果として、全体として最も重要視された属性は「薬剤中止後の効果持続性」(相対重要度:25.4%)であり、次いで「投与の簡便性」(19.0%)、「医療費の自己負担」(18.2%)、「長期効果」(17.5%)、「効果発現の早さ」(13.0%)、「重篤な感染症のリスク」(6.8%)の順となりました。統計分析の結果、患者は効果が長く持続し、投与頻度が少なく、医療費の自己負担が低い治療オプションを好む傾向が明らかになりました。サブグループ分析では、年齢や疾患の重症度、現在の治療状況などによって、各属性の重要度に若干の違いが見られました。例えば、60歳未満の患者では投与の簡便性の重要性が相対的に高まる傾向がありました。

結論として、日本の尋常性乾癬患者は生物学的製剤を選択する際に、治療効果の持続性と治療に伴う負担の軽減を特に重視する傾向があることが示されました。この研究結果は、乾癬治療における患者と医師との共有意思決定を支援し、患者の満足度と治療アウトカムの向上に貢献することが期待されます。

Patient Preference for Once-Weekly Dosing in Type 2 Diabetes Mellitus in Japan (Adelphi Values)

J Health Econ Outcomes Res. 2016 Mar 18;4(1):55-66. doi: 10.36469/9826. eCollection 2016. [https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37663012/]

この研究は、日本の2型糖尿病(T2DM)患者における経口血糖降下薬の投与頻度に対する患者の好みを調査したものです。具体的には、週1回投与(QW)1日1回、2回、または3回投与(QD、BID、TID)のレジメンについて、患者の特性と好みの関連性を明らかにすることを目的としています。

研究は、オンラインでの横断的調査として実施され、経口血糖降下薬のみを使用している患者、経口血糖降下薬とインスリンを併用している患者、そして過去にT2DM治療の経験がない(治療ナイーブ)患者の3つのグループに分類されました。予備的なロジスティック回帰分析とCART(Classification and Regression Tree)分析を用いて、投与頻度の好みを予測する要因が特定されました。

主な結果として、現在の治療レジメン、年齢、就労状況がQWの好みを予測する主要な要因であることがわかりました。全体としてはQDを好む患者が多かったものの(55.5%)、治療ナイーブな患者群(68.67%)、若年層(≤64歳)フルタイムで働いている患者、そして服用薬剤数が少ない(0または1剤)または多い(6剤以上)患者群において、QWの好みがより高い傾向が見られました。QWを好む理由としては、「毎日服用する必要がないため負担が少ない」(47.8%)、「心理的な負担が少ない」(14.6%)、「飲み忘れが少ない」(12.5%)などが挙げられました。

結論として、T2DM患者は投与レジメンの好みが多様であることが示されました。全体的にはQDが好まれましたが、特定の患者サブグループにおいてはQWがより好まれることが明らかになりました。この知見は、医師が患者の特性を考慮して投与レジメンを選択する際に役立ち、アドヒアランスの向上に繋がる可能性があります。

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