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論文を読む際に押さえるべき3つのポイント―観察研究の場合―

2021年2月19日

観察研究の論文を読むときに、最低限押さえるべきポイントは3つです。

  1. 曝露因子
  2. アウトカム
  3. 調整された交絡因子(と調整されていない交絡因子)

0.観察研究とは

観察研究には、コホート研究、縦断研究、横断研究、症例対照研究、クロスセクショナルスタディー、ケースコントロールスタディー、コホート内症例対照研究、ネステッドケースコントロールスタディー、ケースコホートスタディーなど、実に多種多様なデザインの研究があります。

一見すると頭が痛くなりそうなほど多種多様でどこから手を付けたらよいか分からなくなってしまいそうですね。

とはいえ、いくつかの基本的なデザインを押さえることで、応用デザインに対する理解も進みます。

そして、観察研究の根底にあるものは、デザインが異なっても同じです。

観察研究とは、「曝露因子とアウトカムの関係を、交絡因子で調整しながら検討する研究」です。

そのため、曝露因子、アウトカム、交絡因子を押さえれば、見かけ上のデザインに右往左往せず、その研究の本質を捉えられます。

研究デザインは、「曝露因子とアウトカムの関係を、交絡因子で調整しながら検討する」ために最も相応しいものを選んだだけ、と思っておけば怖くありません。

1.曝露因子

曝露因子は何か

健康状態に影響を与えるかもしれない、と注目する「原因」の部分ですね。

曝露因子について調べて、その良し悪しがわかったら、「その曝露因子を避けるべきかどうか、あるいは逆に積極的に曝露された方が良いのか」を判断する材料になります。

試しにタバコを題材において考えてみましょう。

「タバコは身体にどんな影響を及ぼすか」では、曝露因子としては踏み込みが浅いです。

「摂取するニコチン量」なのか「摂取するタールの量」なのか。

「タバコに火をつけて自ら煙を吸うという行為」なのか「受動喫煙によって煙に曝露される行為」なのか。

はたまた「ニコチンへの依存度の高さ」を要因として考えて、その結果生じるさまざまな影響を考えるような研究なのか。

タバコそのものは、パッケージを開封せず、火もつけずに置いておくだけなら健康に影響を与えることはありません。

コンビニでタバコを購入するだけで肺に影響が出るはずもありません。

隣にいる人のタバコの煙をひと呼吸だけ不意に吸い込んだだけでニコチン依存に陥ることもないでしょう。

タバコがどんな状況で、どのように使われた時の健康への影響を調べているのか、という部分を正確に把握することが研究を正しく理解する第一歩です。

曝露因子はどのように調査されたか

どの程度曝露されたかを調べる方法は複数あります。

分かりやすくするために、引き続きタバコを題材に考えてみます。

自己申告なのか、禁煙外来等で臨床の専門家によるインタビューを受けながら回答したものなのか、タバコの購入履歴などの事実を使った評価なのか、血液検査値を使って調べたのか、様々あります。

  • 自己回答:アンケート用紙を配って得られた自己回答を用いているのか。
  • 他者回答:医療専門家が患者さんの話を聞き、専門家としての判断や評価を行っているのか。ニコチン依存度テストなど。
  • イベント:タバコの購入履歴をもとに、「タバコを購入した人はタバコを吸っている」と仮定して用いる、など。
  • 検査数値:血液検査や尿検査の結果を用いているのか。血中のニコチン濃度など。

2.アウトカム

アウトカムは何か

アウトカムとして注目しているものは何なのかを確認しましょう。

風邪についての研究、といっても、そのアウトカムとしては何パターンも考えられます。

風邪にかかったかどうかを見るのか、風邪にかかった後に生じる鼻水や喉の痛みのような症状の有無をみるのか、あるいは喉の痛みの程度をみるのか。

「風邪に効くかどうかを調べる!」と意気込んでも、罹患有無なのか症状有無なのか症状の程度なのか、どのレベルでの「効く」を注目しているのかを見誤らないようにしましょう。

医療専門家なら当たり前過ぎてスルーしているかもしれませんが、一般向けのテレビ番組やテレビCMなどを見ているとこの辺りが巧妙にぼやかされています。

  • 病気の有無:病気になったかどうか
  • 症状の有無:病気の結果生じる症状があるかどうか
  • 症状の程度:症状の程度が軽いか重いか

アウトカムは何で測定されたか

エンドポイント、という言葉が用いられることもあります。

要するに、「良し悪しを何で評価しているか」ですね。ものさしのことです。

  • 自己回答:アンケート用紙を配って得られた自己回答を用いているのか。
  • 他者回答:医療専門家が患者さんの話を聞き、専門家としての判断や評価を行っているのか。
  • イベント:死亡や入院のような重大な出来事が起きたかどうかで判断しているのか。
  • 検査数値:血液検査や尿検査の結果を用いているのか。
  • 画像判断:X線画像やCTスキャン画像を見て専門家が評価しているのか。

3.交絡因子

調整された交絡因子は何か

調整された交絡因子は、論文中の多変量解析結果の表を見ればおおよそわかります。

年齢、性別、身長、体重、併存症、飲酒習慣、婚姻状況といった、曝露因子とアウトカムの両方と関係を持っていると思われる変数が多数、統計解析モデルに組み込まれているはずです。

英語の文献なら、RESULTs were adjusted for *****, *****, *****, *****. のような表記があるでしょうから、adjust という単語で調べると見つけやすいです。

調整された交絡因子はどのように調査されたか

交絡因子に関するデータや情報は、いつ、どのように調査されたかも重要です。

数年にわたるコホート研究の場合、交絡因子に関する情報は研究に参加した最初の時点であらかた集めていたりします。

そうすると、数年経ってすべてのデータが集まり、いざ解析するとなったときに、交絡因子に関する情報は数年前の情報だったりします。

よくあることですし、それだけで研究の価値が棄損されるというわけではありませんが、「いつ」「どうやって」集められたデータなのかは常に注視しましょう。

調整されていない交絡因子は何か

論文のディスカッションの項に、リミテーションとして記載されていることが多いです。

想定される交絡因子はすべて解析モデルに盛り込んだ!と豪語する研究も少なくありませんが、「こんな交絡因子も想定されるが本研究では統計解析モデルに盛り込めていない」と控えめに論じている各研究の方が好印象だったりもします。

あまりにも「あれもこれも盛り込めていない」となると、それじゃこの研究の結果はあまり信用できないじゃないか、となってしまうので書きすぎもよくありませんが。

調整されていない交絡因子があるということは、それらの情報を集めて同様の研究を実施すれば、さらに発展した研究となるので、研究という科学の長い歴史を紡ぐ営みを考えたときに、「この研究では調整されていない交絡因子」の情報は、将来の研究のヒントでもあります。

終わりに

観察研究は、ヘルスケア分野の研究の大多数を占めます。

曝露因子、アウトカム、交絡因子という三大要素を押さえて、先人たちの研究結果のエッセンスを掴んでみましょう。

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