医薬品医療機器等

バキスゼブリア筋注 [コロナウイルスワクチン](審議結果報告書2021年5月20日)

審議結果報告書

令 和 3 年 5 月 2 0 日
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課

[販売名]

バキスゼブリア筋注

[一般名]

コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(遺伝子組換えサルアデノウイルスベクター)

[申請者名]

アストラゼネカ株式会社

[申請年月日]

令和3年2月5日

[審議結果]

本品目は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症が世界的に流行している昨今の状況において、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第 14 条の3第1項に基づく承認に該当することが見込まれるとして、承認申請があったものである。

本品目については、令和3年5月 20 日に開催された医薬品第二部会において、医薬品医療機器等法第 14 条の3第1項の規定による特例承認の可否について審議された。その結果、下記の承認条件が付されることを前提として、承認して差し支えないものとされ、薬事・食品衛生審議会薬事分科会に報告することとされた。

本品目は生物由来製品に該当し、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当するとされた。

[承認条件]
  1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
  2. 現時点での知見が限られていることから、製造販売後、副反応情報等の本剤の安全性に関するデータを、あらかじめ定めた計画に基づき早期に収集するとともに、独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。その際、国が実施する健康調査等により得られた情報についても適切に反映すること。
  3. 現在国内外で実施中又は計画中の臨床試験の成績が得られた際には、速やかに当該成績を独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出するとともに、本剤の有効性及び安全性に係る最新の情報を、医療従事者及び被接種者が容易に入手可能となるよう必要な措置を講じること。また、国が行う本剤の有効性及び安全性に係る情報の発信について、適切に協力すること。
  4. 本剤は、医薬品医療機器等法第 14 条の 3 第 1 項の規定に基づき承認された特例承認品目であり、承認時において長期安定性等に係る情報は限られているため、製造販売後も引き続き情報を収集し、報告すること。
  5. 本剤の接種に際し、本剤の有効性及び安全性については今後も情報が集積されることを踏まえ、あらかじめ被接種者又は代諾者に最新の有効性及び安全性に関する情報が文書をもって説明され、予診票等で文書による同意を得てから接種されるよう、医師に対して適切に説明すること。
  6. 医薬品医療機器等法施行規則第 41 条に基づく資料の提出の猶予期間は、承認取得から起算して 6 カ月とする。上記に基づいて提出された資料等により、承認事項を変更する必要が認められた場合には、医薬品医療機器等法第 74 条の 2 第 3 項に基づき承認事項の変更を命ずることがあること。

参照 特例承認に係る報告(1)

起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等

コロナウイルスは、ニドウイルス目コロナウイルス科に属する一本鎖ポジティブ鎖 RNA ウイルスである。これまで、ヒトに日常的に感染し、風邪を引き起こすコロナウイルスとして、HCoV-229E、HCoVOC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1 の 4 種類が知られていたが、近年になり動物からヒトに感染し重症肺炎を引き起こすコロナウイルスとして、2003 年に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、2012 年に中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)が同定されている。

2019 年 12 月 31 日、中国湖北省武漢市において原因不明の肺炎が発生したことが WHO に報告され、2020 年 1 月 12 日、WHO は当該肺炎が新型コロナウイルスによるものであると発表した(https://www.who.int/csr/don/12-january-2020-novel-coronavirus-china/en/(最終確認日:2021 年 4 月 6 日))。同年 1 月 30 日、WHO は、中国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎の発生状況が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当すると発表し(https://www.who.int/news/item/30-01-2020-statement-on-the-second-meeting-of-the-international-health-regulations-(2005)-emergency-committee-regarding-the-outbreak-of-novel-coronavirus-(2019-ncov)(最終確認日:2021 年 4 月 6 日))、同年 2 月 11 日、新型コロナウイルスを severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)、SARS-CoV-2 による疾患を coronavirus disease(COVID-19)と命名した(https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/technical-guidance/naming-the-coronavirus-disease-(covid-2019)-and-the-virus-that-causes-it(最終確認日:2021年 4 月 6 日))。2021 年 4 月 4 日時点で、世界での総感染者数は 130,459,184 例、総死亡例は 2,842,325例であり、WHO の国・地域分類における感染者数及び死亡者数の、総感染者数及び総死亡者数に対する割合は、アメリカ地域 43%及び 48%、ヨーロッパ地域 35%及び 34%、東南アジア地域 11%及び 7%、東地中海地域 5%及び 5%、アフリカ地域 2%及び 2%、西大西洋地域 1%及び 1%である(https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---6-april-2021(最終確認日:2021 年 4 月 6日))。

本邦では、2020 年 1 月 15 日に 1 例目の SARS-CoV-2 に関連した肺炎の患者が確認され、同年 2 月 1日、新型コロナウイルス感染症が感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成 10年法律第 114 号)(感染症法)に基づく指定感染症及び検疫法(昭和 26 年法律第 201 号)に基づく検疫感染症に指定された。また、同年 4 月 7 日に改正新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成 24 年法律第 31 号)に基づく 1 度目の緊急事態宣言が、2021 年 1 月 7 日に 2 度目の緊急事態宣言が行われ、それぞれ 2020 年 5 月 25 日、2021 年 3 月 22 日に解除された。

2021 年 4 月 6 日時点で、本邦での SARS-CoV-2 の感染者数の累計は 485,085 例、死亡者数は 9,246 例である。これに加え、空港・海港検疫で 2,445 例の感染と 3 例の死亡、チャーター便による海外からの帰国者で 15 例の感染が確認されているhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17903.html(最終確認日:2021 年 4 月 6 日))。

COVID-19 の初期症状は、インフルエンザや感冒に似ており、発症初期に判別することは困難である。SARS-CoV-2 曝露から発症までの潜伏期間は 1~14 日間であり、通常は 5 日程度で発症することが多い(https://www.who.int/publications/i/item/modes-of-transmission-of-virus-causing-covid-19-implications-for-ipcprecaution-recommendations(最終確認日:2021 年 4 月 6 日))。発症前から感染性があり、発症から間もない時期の感染性が高いこと及び無症候性の場合もあることが市中感染の原因とされており、ウイルスの伝染を制御することを困難にしている。発熱、咳嗽、倦怠感、呼吸困難、味覚障害、嗅覚障害等の症状が多くの患者に認められ、約 80%の患者は軽症のまま 1 週間程度で治癒するが、約 20%は肺炎症状が増悪し、約 5%は人工呼吸器を必要とする急性呼吸窮迫症候群や多臓器不全に至り、2~3%が致命的な経過をたどる(JAMA 2020; 323: 1239-42)。2021 年 3 月 2 日時点において本邦で「SARS-CoV-2 による感染症」の治療に対して承認されている医薬品としてレムデシビルがあり、デキサメタゾンは既承認の効能・効果の範囲で使用可能であるが、これらの治療を行っても、本邦の感染者、重症者及び死亡者の報告数は増加が続いており、医療体制のひっ迫も問題となっている。そのため、感染拡大対策として、SARS-CoV-2ワクチンによるCOVID-19の発症予防が期待され、早期のワクチン開発が求められている。

2021 年 3 月時点で、本邦では SARS-CoV-2 による感染症の予防等を目的とするワクチンとして、コミナティ筋注(ファイザー株式会社)が承認されているものの、SARS-CoV-2 感染の規模、持続的で急速な感染拡大、世界的大流行による医療及び社会経済への影響の大きさ、並びに世界規模のワクチン接種に伴う供給量の課題から、複数種類のワクチンの迅速な供給が求められている。

本剤は、SARS-CoV-2 の S タンパク質をコードする非増殖型遺伝子組換えチンパンジーアデノウイルスベクターワクチンである。多くのヒトはヒトアデノウイルス血清型に対する免疫を既に獲得しており、ヒトアデノウイルスを用いたウイルスベクターでは免疫応答が誘導されない懸念があることから、本剤ではチンパンジーアデノウイルスが用いられた。標的抗原として選択された S 糖タンパク質サブユニットは、受容体結合ドメインを介して細胞受容体 ACE2 と結合し、ウイルスと細胞の膜融合を誘導する。

本剤の発現する遺伝子組換え S 糖タンパク質の核酸配列は、ChAdOx1 ウイルスベクターへ挿入され、その他の SARS-CoV-2 の成分は本剤には含まれていない。S 糖タンパク質の導入遺伝子及び遺伝子産物は毒性又は病原性を有さず、ウイルスベクターの複製又は組換えに寄与しない。

海外では、SARS-CoV-2 による感染症の予防を目的として、英国オックスフォード大学により開発が開始され、オックスフォード大学を治験依頼者とする海外臨床試験 5 試験(COV001、COV002、COV003、COV004 及び COV005 試験)が継続中であるが(2021 年 3 月末時点)、現在はオックスフォード大学からアストラゼネカ社に開発が移管されている。国内では、2020 年 8 月よりアストラゼネカ社により国内臨床試験(D8111C00002 試験)が開始され、2021 年 3 月末時点で試験継続中である。

海外臨床試験 4 試験(COV001、COV002、COV003 及び COV005 試験)の併合解析における COVID19 発症予防効果及び安全性のデータに基づき、COVID-19 の予防に対して、英国では 2020 年 12 月 29 日に暫定的使用が許可され、欧州では 2021 年 1 月 29 日に条件付き承認がなされた。

今般、欧州において条件付き承認がなされたこと、免疫原性及び安全性を評価する国内 D8111C00002試験の成績の一部が得られたこと等から、2021 年 2 月 5 日にアストラゼネカ株式会社により、海外臨床試験 4 試験(COV001、COV002、COV003 及び COV005 試験)の併合解析の成績を主要な根拠として、本邦での製造販売承認申請がなされた。なお、国内 D8111C00002 試験の一部の試験結果は本承認審査中に提出された。

本報告書は、「特例承認の検討がなされている医薬品の取扱いについて(依頼)」(令和 3 年 4 月 1日付け薬生薬審発 0401 第 1 号)を踏まえ、申請者から提出された資料に基づき審査を行ったものである。

臨床的有効性及び臨床的安全性に関する資料並びに機構における審査の概略

機構における審査の概略

臨床データパッケージ及び審査方針について

COVID-19 の世界的な流行下において、迅速な SARS-CoV-2 ワクチンの開発が求められており、その加速化のために ICMRA、WHO、各国の規制当局は開発についてのガイダンス等を公表している。本邦では、令和 2 年 9 月 2 日に機構が「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの評価に関する考え方」(https://www.pmda.go.jp/files/000236327.pdf(最終確認日:2021 年 4 月 6 日))を公表し、臨床試験に関して主に以下の考え方を提示している。

  • 感染症予防ワクチンの有効性については、原則として発症予防効果を主要評価項目として評価を行うものであり、COVID-19 の発症予防効果について代替となる評価指標が明らかになっていない現状においては、原則として COVID-19 の発症予防効果を評価する臨床試験を実施する必要がある。
  • COVID-19 の流行の程度が国・地域によって異なること、ウイルス株が地理的・時間的条件によって異なる可能性があること、COVID-19 が重症化する患者の割合が国・地域によって大きく異なること等を踏まえると、SARS-CoV-2 ワクチンのベネフィット・リスクの判断は、各国・地域の状況によって異なる可能性がある。また、民族的要因の差異が SARS-CoV-2 ワクチンの有効性及び安全性に影響することも考えられる。そのため、海外で発症予防効果を評価するための大規模な検証的臨床試験が実施される場合においても、国内で臨床試験を実施し、日本人被験者においてワクチンの有効性及び安全性を検討する必要性は高い。
  • 海外で発症予防効果を主要評価項目とした大規模な検証的臨床試験が実施される場合には、国内で日本人における発症予防効果を評価することを目的とした検証的臨床試験を実施することなく、日本人における免疫原性及び安全性を確認することを目的とした国内臨床試験を実施することで十分な場合がある。

機構は、以下の 7.R.1.1 及び 7.R.1.2 項での検討結果も踏まえ、本剤の審査方針について、以下のように判断した。

現時点で COVID-19 の発症予防効果の代替となる評価指標が明らかになっておらず、発症予防効果と免疫原性との関連は明確ではないものの、迅速な SARS-CoV-2 ワクチンの開発が求められている状況等を考慮して、本剤の有効性及び安全性については発症予防効果が評価された海外試験の併合解析の結果を主要な試験成績として評価し(7.R.1.1 項参照)、それに加えて国内 D8111C00002 試験成績から日本人の免疫原性及び安全性を確認することで、日本人における本剤の有効性及び安全性を評価する。なお、米国では 18 歳以上の成人を対象に本剤 SD を 4 週間隔で 2 回接種したときの有効性及び安全性をプラセボ対照と比較する第Ⅲ相試験(D8110C00001 試験)が実施中であり、2021 年 4 月頃に有効性の速報結果が得られる予定であることから、本申請の臨床データパッケージには含まれないものの、D8110C00001試験の結果については速報結果が得られ次第、確認する方針とした。

参照

新医薬品の承認品目一覧

https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/p-drugs/0010.html

PMDA医療用医薬品 情報検索

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

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