ビジネス全般

臨床研究中核病院の概要とその取組状況―千葉大学医学部附属病院

千葉大学医学部附属病院

病院概要

  • 臨床研究中核病院承認日:
  • 所在地:千葉市中央区亥鼻1ー8ー1
  • 専門領域等の病院の特徴:がん、難治性疾患に対する先進医療
  • 臨床研究支援部門の体制:48.1名

内訳

  • 医師又は歯科医師5.2名
  • 薬剤師12.7名
  • 看護師16.2名
  • 臨床研究コーディネーター14名
  • モニター3名
  • プロジェクトマネージャー(スタディーマネージャー) 1名
  • 治験・臨床研究業務担当者ー
  • メディカルライターー
  • 研究倫理相談員ー
    臨床検査専門員ー
  • 研究監査担当者ー
    データマネージャー6名
  • 生物統計家3名
  • 薬事承認審査機関経験者2名

臨床研究中核病院としての特徴、ビジョン

  • 千葉大学医学部附属病院は、医療法上の臨床研究中核病院の一つとして、革新的医療技術開発を拠点外の他の研究機関や大学と連携して臨床研究を推進する役割を担っている。AROにおいては、臨床研究中核病院としての役割を果たすためにその機能を有機的に連動させつつ、その上で他の研究機関・医療機関とオープンな連携関係を築き、「拠点としての人材育成とシーズ開発を恒久的に行いつつ、多くの基礎成果を継続的に医療現場、すなわち患者さんの治療へ還元する」ことを目標としている。
  • 本院の理念である、「人間の尊厳と先進医療の調和を目指し、臨床医学の発展と次世代を担う医療人の育成に努める」ことを基礎とし、革新的医療技術を創出する拠点として、難治性疾患のように未だ医療満足度の低い領域に対してあらゆる手法をもってチャレンジし、研究者、ARO、行政、企業が連携した「知の循環」により患者さんに対して新しい治療法を着実に発信していく。拠点としての特色は、限られた資源を効果的に投入するための“選択と集中” という基本的な考え方のもと、5つの方向性[リポジショニング、再生医療、革新的医療機器・医療技術、エビデンスに基づいた提言、人材育成]を掲げ、推進している。

支援内容の紹介

  • 本院では、臨床研究推進本部を設置するとともに、支援部門として臨床研究開発推進センターとデータセンター、臨床試験部、未来開拓センターなどがある。臨床研究開発推進センターとデータセンターは主に、臨床研究法上の特定臨床研究や早期の試験を支援している。医師主導治験、先進医療の支援は、臨床試験部で実施しており、研究計画立案・出口を見据えたコンサルティング、プロトコル作成、PMDA相談、スタディマネジメントをはじめ、GCPなど法規制を遵守し、試験を完遂させる支援体制を整えている。未来開拓センターではCPC設備3室を有し再生医療を支援している。メドテック・リンクセンターは、千葉大学フロンティア医工学センター(医工学部局)と連携し、外部機関と連携しながら研究者、企業と連携し医療機器開発を行う組織である。
  • AROとしては、医師主導治験の再生医療分野、ドラッグ・リポジショニング分野、医療機器分野を中心に支援を行っており、本院に所属する専門家が調整業務、モニタリング業務、DM業務、統計業務などを行っている。また、研究のスタートにあたり、PMDA相談やAMEDの研究費獲得においても積極的な支援を実施している。さらに外部の研究者が主導する医師主導治験についても積極的に支援している。これらの支援を行うための若手人材(Study manager, DM, monitorなど)のOJT教育研修による育成を積極的に行っており、包括的なARO支援業務を原則として全て本院スタッフで行っている。また、ベンチャー支援については、AROに相談窓口を設置して学内外連携を通じた、研究者やベンチャー企業への相談・支援を強化している。

先進医療への対応

  • 先進医療に関する相談窓口を臨床試験部企画調整室に設置し専門職を配置することで、研究者への相談、計画書作成支援など”ワンストップサービス体制” を構築し、千葉大学病院および他の医療機関の先進医療実施に向けた、迅速かつ精度の高い支援を提供する体制としている。
  • 種々の先進医療実施に向けた試験実施計画書等の作成は、当院の医師主導治験の支援体制に準じて行っている。骨子作成から段階的にデータマネジメント、統計解析、品質管理(モニタリング)担当者、臨床研究コーディネーターなどが参加して、試験実施計画書、同意説明文書等の作成を行い、相談窓口では先進医療の開発全般のロードマップ作成等の支援を行っている。また先進医療に関する啓発活動の一環で、倫理審査委員会研修として公開研修(集合+Web)を開催し、研究者及び研究に携わる全職員を対象とした先進医療セミナーをイントラネットを用いて開催している。

国際共同臨床研究・治験の実施状況

  • 当拠点が支援し、令和2年2月に効能追加の薬事承認を得た「川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)に対するシクロスポリン療法」について、未だ治療適応が未承認のアジア諸国への展開をはかるべく、医療技術実用化総合促進事業/国際共同臨床研究実施推進プログラムを核に、2019年11月当拠点が主催した“REACTA(日本、マレーシア、台湾、韓国のアカデミアを中心とした国際臨床研究)フォーラム” で培ったアジアの各拠点との連携・活動を通して、疾病レジストリなどデータの構築、及び臨床上の位置づけについて明確化し、アジア地域での川崎病治療に貢献していくための活動を進めている。

ベンチャー企業への支援実施状況

  • 臨床研究中核病院として設置する病院内の「ベンチャー支援窓口(相談窓口)」は、学内の「産学連携拠点(IMO)」、「知財」、「臨床評価(薬事、治験)」などの各組織との仲介役を果たすことで、出口に向けた開発が円滑かつ迅速に進むよう支援している。同時に千葉大亥鼻イノベーションプラザ(中小機構)と連携し、VC情報や経営に関する人材確保についての情報提供を行い、さらにはMEDISOを始めとする学外の支援基盤を活かすべく、それらとの連携体制を強化している。また、ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミットへの出展などを通じ、拠点外からの支援依頼を広く受け付けている。
  • 支援の具体例としては、医学部、看護学部、薬学部の「医療系学部」と「病院」が隣接して存在する亥鼻キャンパスにある“千葉大亥鼻イノベーションプラザ” を核とし、本学発ベンチャー企業であるセルジェンテック社が実施する医師主導治験の包括的支援を展開している。

拠点の支援を活用し、薬事承認等に結びついた事例

重症川崎病患児を対象としたCsAの医師主導治験(LANCET誌掲載)の支援とCsAの薬事承認(効能追加)

治験課題名:重症川崎病患児を対象とした免疫グロブリンと免疫グロブリン+シクロスポリン併用療法の多施設共同非盲検ランダム化比較試験(n=175)

本治験の背景:
標準治療である免疫グロブリン(IVIG)に対する不応例が15-20%に見られることや、深刻な合併症である冠動脈病変がIVIG不応例を中心に発生することが明らかとなっており、IVIG不応例といった重症川崎病患児に対する有効な治療法の確立が最大かつ喫緊の課題であった。本治験では、重症川崎病患児に対する治療法としてIVIGとシクロスポリン併用療法の有効性を検証した。

支援の一部分を紹介
  • 約10名のモニターが全国22施設を訪問し、参加医師ひとつになって研究を行えるよう環境整備に注力しました。
  • 千葉大学医学部附属病院と他2施設の責任医師を交えた調整会議を定期的に開催し、治験の円滑な実施のため管理を行いました。
  • 本治験が円滑に実施されるように、研究計画の初期段階からコンサルテーションを行い、研究責任者や関連部門と連携して、プロトコルを作成しました。
  • 治験の方向性について事前にPMDAから合意を得る必要があります。そのための相談支援を行っています。
  • 研究費獲得のため、AMED等への申請支援を行っています。
  • 医師主導治験では、企業から治験薬と安全性情報を提供いただくことが必要です。臨床試験部⾧およびスタッフが研究者と共に製薬企業を訪問し、開発の意義・必要性をプレゼンした結果、研究実施のための契約を締結することができました。
  • 全体の組入れ状況や注意点周知の他、登録が順調な施設から共有いただいた組み入れのポイント等を掲載したNews Letterを継続的に発行し、登録を促進しました。
    その他、登録促進の取り組みとして、地域ごとに治験実施施設と川崎病患者の多い施設(紹介元)を繋ぐネットワークを構築することや学会を活用し、治験実施施設を増やす等の工夫をしました。
  • 文献、学会報告など各種情報源から収集した安全性情報を一次評価し、PMDAへ提出する報告書作成を支援しました。
  • 被験者の組み入れの際には、リクルートの支援、スクリーニングの補助(適格、除外基準の確認)、併用禁止薬はないかの確認等を行いました。治験責任医師から被験者候補の方に同意説明をする際に、補助を行いました。診察時には検査の補助やその他、治験の円滑な実施のため、入院、画像検査、薬剤部等との院内調整や医事課の医療費の調整も行いました。
  • 生物統計の専門家が、治験で収集したデータを解析しました。
  • 2019年8月にPMDA信頼性保証部による調査が行われ、GCP実地調査及び適合性書面調査に対応しました。
  • eCRFで収集したデータについて、データクリーニングを行い、データの品質管理を行いました。主要評価項目である冠動脈病変(心エコーデータ)は、中央判定を実施していたため、マニュアルや手順書を作成し、それらに基づきデータの管理を行いました。また、小児を対象とした試験であったため、臨床検査値の施設基準値の管理・確認に注力しました。
千葉大学医学部附属病院は、研究計画立案・出口を見据えたコンサルティング、プロトコル作成、PMDA相談、スタディマネジメントをはじめ、GCPなど法規制を遵守し、試験を完遂させる支援体制を整えています。

参照

-ビジネス全般

© 2024 RWE